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第72回臨床検査技師国試 午前【臨床生理学】全選択肢の正誤理由と解説まとめ

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こんにちは、臨床検査技師のさいです。

今回は第72回臨床検査技師国家試験の午前問題より「臨床生理学(問16〜28)」の全問解説をお届けします。

午前の分野では、心エコーのSTC調整やドプラ波形、心電図のマス目読影と梗塞部位、脳波のアーチファクト、呼吸機能検査のノーズクリップなど、実際の検査業務に関係する実践的な問題が多く出題されています。

単なる語句の暗記にとどまらず、波形の意味や検査の原理から患者の病態を論理的に推測する力が求められていると感じました。

解説を読んで分かりにくい点などがございましたら、各SNSのDM等で気軽にお声がけください。

僕自身、学生時代に心電図の波形や脳波の種類の多さに苦労した経験があります。当時の自分が読みたかったと思えるような、ゴロ合わせや図解イメージを交えた視覚的な解説まとめを心がけました。皆様の国試合格に少しでも貢献できれば嬉しいです。

※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第72回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。

第72回 臨床検査技師国試 午前【臨床生理学】
全選択肢の正誤理由と解説まとめ

問16:組織ドプラ法による僧帽弁輪運動速度(e’波)

【問題】
僧帽弁輪運動速度のe’波で正しいのはどれか。

  • 1.左室拡張末期にみられる。
  • 2.心尖部四腔像で計測する。
  • 3.連続波ドプラ法を使用する。
  • 4.基線より上向きの波形である。
  • 5.僧帽弁輪部の心尖部方向への運動を表す。
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正答:2

【解説】左室の「広がりやすさ」をみる超重要指標

組織ドプラ法(TDI)は、血流ではなく「心筋そのものの動き(速度)」を記録する検査です。特に僧帽弁輪部の運動速度である「e’波(イープライム)」は、左心室がどれだけしなやかに広がるか(左室拡張能)を評価する上で欠かせない指標です。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(拡張早期)
    e’波の「e」はearly(早期)の略で、左室拡張「早期」にみられます。拡張「末期(心房収縮期)」にみられるのはa’波(aはatrial)です。
  • 2.正しい(心尖部四腔像)
    心筋の長軸方向の動きをエコービームと平行に捉えるため、心尖部四腔像(Apical 4-chamber view)で計測します。
  • 3.誤り(パルスドプラ法)
    僧帽弁輪部という「特定の場所」の速度をピンポイントで測定する必要があるため、深さの指定ができるパルスドプラ法(パルス組織ドプラ法)を使用します。
  • 4.誤り(下向き波形)
    拡張期には心室が広がるため、僧帽弁輪はプローブを当てている心尖部から遠ざかる方向に動きます。遠ざかる動きは基線より「下向き」の波形として記録されます。
  • 5.誤り(心基部方向への運動)
    前述の通り、拡張期の弁輪は心尖部から遠ざかる「心基部方向」へ動きます。心室がギュッと縮む収縮期(s’波)には、弁輪は心尖部方向へ近づくように動きます(このときは上向きの波形になります)。

【頻出】組織ドプラ法の3つの波形まとめ

波形 出現する時相 弁輪の動く方向 波形の向き
s’波 (systole) 心室収縮期 心尖部へ近づく 上向き
e’波 (early) 心室拡張早期 心基部へ遠ざかる 下向き
a’波 (atrial) 心室拡張末期(心房収縮期) 心基部へ遠ざかる 下向き

暗記方法・覚え方のコツ(エコー波形の原則)

ドプラ法の原則として「プローブに近づく血流や運動は上向き、遠ざかるものは下向き」となります。心尖部(胸の表面)にプローブを当てていることをイメージすれば、心室が広がる拡張期には壁が奥(心基部側)へ遠ざかるため「下向き」になることが直感的に分かります。

さい
さい
この原則を理解しておけば、丸暗記しなくても試験中にプローブの位置と心筋の動きをイメージするだけで波形の向きが導き出せるようになります。

さいの補足(実務と国試のリンク知識:E/e’比)

左室拡張能の評価において、e’波は単独ではなく、僧帽弁口血流速度の「E波」と組み合わせて「E/e’(イー・オーバー・イープライム)」として計算されるのが基本です。正常では14未満ですが、E/e’が14を超える場合、左室充満圧の上昇(心不全など)を強く疑います。

問17:超音波検査の画像調整(STC/TGC)

【問題】
右肋骨弓下走査の超音波像(別冊No. 3)を別に示す。適正な画像調整で正しいのはどれか。

  • 1.ゲインを高くする。
  • 2.ゼロシフトを行う。
  • 3.スラント走査を行う。
  • 4.ダイナミックレンジを広くする。
  • 5.STC〈sensitivity time control〉を調整する。
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正答:5

【読影のポイント】深さによる明るさの不自然なムラ

提示された右肋骨弓下走査(肝臓)の画像を見ると、画面の上から下(深部)に向かって、白っぽい帯(高エコー)と黒っぽい帯(低エコー)が横縞模様のように交互に現れています。超音波は深く進むほど減衰して暗くなる性質があるため、深さに応じて増幅率(明るさ)を細かく変える必要がありますが、この画像はその調整つまみがジグザグになっている状態が予想される例です。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(ゲインは全体調整)
    ゲイン(Gain)は画面「全体」の明るさを一律に調節する機能です。横縞のムラがある状態でゲインを上げても、明るい部分はより白く飛んでしまい、根本的な解決になりません。
  • 2.誤り(ドプラ法の調整)
    ゼロシフト(ベースラインシフト)は、カラードプラ法やパルスドプラ法において、血流速度が速すぎて波形が折り返す「エイリアシング現象」が起きた際に、基準線を上下にずらして補正する機能です。
  • 3.誤り(ドプラ法の調整)
    スラント走査(ビームステアリング)は、リニア探触子を用いて超音波ビームを電気的に斜めに打ち出す機能です。主に頸動脈などの血管エコーで、血流に対して適切なドプラ角度(60度以下)をつけるために使用します。
  • 4.誤り(コントラストの調整)
    ダイナミックレンジは、画面に表示するエコー信号の強弱の幅(階調・コントラスト)を調節する機能です。広くすると白黒の境目が滑らかな柔らかい画像になり、狭くすると白黒がハッキリした硬い画像になります。
  • 5.正しい(STC/TGC)
    STC(Sensitivity Time Control)は、別名TGC(Time Gain Compensation)とも呼ばれ、深さごとにスライド式のつまみ等でゲイン(明るさ)を個別に微調整できる機能です。深さによるエコーの減衰や横縞のムラを補正し、均一な画像を作るために最も適しています。

【頻出】超音波装置の主な調整機能まとめ

調整機能 目的・役割
STC (TGC) 深さごとの明るさを個別に調整(減衰の補正)
ゲイン (Gain) 画面全体の明るさを一律に調整
ダイナミックレンジ 画像のコントラスト(階調の滑らかさ)を調整
ゼロシフト ドプラ法の折り返し(エイリアシング)を補正
スラント走査 ビームを斜めにしてドプラ角度を調整(血管など)

ポイント

メーカーによって呼び方が異なりますが、「STC(Sensitivity Time Control)」と「TGC(Time Gain Compensation)」は全く同じ機能です。多くの場合はSTCな気がします。

さい
さい
エコーの画像調整機能は、それぞれの「ツマミ」が何を変化させるのかを覚えましょう。特にSTC(TGC)、全体ゲイン、ダイナミックレンジの3つはBモード画像の基本中の基本です!

さいの補足(弱点補強:周波数と減衰の関係)

超音波はプローブの「周波数」が高いほど分解能(画質)は良くなりますが、その分だけ組織に吸収されやすく、深部での「減衰(暗くなる現象)」が早く起こります。そのため、高周波プローブを使用する際は、低周波プローブの時よりもSTCのツマミを浅い位置から早めに(急激に)上げて明るさを補正する必要があります。

問18:肝腫瘤の超音波所見と特異的サイン

【問題】
超音波検査でカメレオンサインがみられるのはどれか。

  • 1.肝囊胞
  • 2.肝膿瘍
  • 3.肝血管腫
  • 4.肝細胞がん
  • 5.転移性肝がん
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正答:3

【解説】疾患特有のエコーサインを紐付ける

腹部エコー検査において、肝臓にできる腫瘤には、疾患ごとに特徴的な「サイン(見え方)」が存在します。これらをセットで暗記することは、国家試験の超音波分野における最大の得点源となります。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(後方エコー増強)
    肝囊胞は内部に水(液体)が溜まっているため、エコーが反射せずに通り抜け、内部は真っ黒(無エコー)に抜けます。通り抜けたエコーが奥で強く反射するため「後方エコーの増強」が認められます。
  • 2.誤り(経時的な変化)
    肝膿瘍は細菌感染で膿が溜まる疾患です。初期は充実性(中身が詰まっている)に見えますが、膿がドロドロに溶けるにつれて経時的に内部が「無エコー」へと変化していきます。特定のサイン名はありません。
  • 3.正しい(カメレオンサイン)
    肝血管腫は、体位変換(寝返りなど)や探触子での圧迫によって内部の血流状態が変化し、エコーレベル(白さ)が変わる現象が見られます。これを色が変化する動物に見立てて「カメレオンサイン」と呼びます。辺縁が高エコー(白く縁取られる)になるのも特徴です。
  • 4.誤り(ハロー、モザイクパターン)
    肝細胞がん(HCC)は、腫瘍の周囲が薄黒く縁取られる「ハロー(halo)」や、内部がモザイク状に見える「モザイクパターン」、音波が脇に逃げる「外側陰影(側方陰影)」などの特徴的なサインが認められます。
  • 5.誤り(ブルズアイサイン)
    他臓器から転移してきた転移性肝がんでは、中心部が高エコー(白)、辺縁部が低エコー(黒)という二重丸のような模様が見られます。これを牛の目やダーツの的になぞらえて「ブルズアイサイン(bull’s eye sign)」または標的サインと呼びます。

【頻出】肝腫瘤の超音波サインまとめ

疾患名 特徴的な超音波所見(サイン)
肝囊胞 内部無エコー、後方エコー増強
肝血管腫 カメレオンサイン、辺縁高エコー
肝細胞がん ハロー (halo)、モザイクパターン
転移性肝がん ブルズアイサイン (標的サイン)
さい
さい
この4つの疾患とサインの組み合わせは、国試の腹部超音波分野でよく出題されます。名前だけでなく「なぜそう見えるのか」を理解しておくと、実際の画像の読影問題が出たときにも対応できると思います☺️

さいの補足(弱点補強:カメレオンサインの原理)

肝血管腫は、その名の通り「血管がスポンジ状に集まった塊」です。そのため、患者さんに横を向いてもらったり(体位変換)、プローブでグッと押したりすると、スポンジの中の血液が移動したり潰れたりします。血液の量が変化すると超音波の反射の仕方も変わるため、黒っぽく見えたり白っぽく見えたりと「カメレオン」のように変化します。

問19:循環生理の基本(心臓の構造と血行動態)

【問題】
循環生理で正しいのはどれか。

  • 1.肺動脈圧と大動脈圧は等しい。
  • 2.三尖弁は左房と左室の間にある。
  • 3.肺静脈から右房に血液が流入する。
  • 4.心拍出量は左室1回拍出量と心拍数の積で決まる。
  • 5.肺動脈には酸素飽和度の高い動脈血が流れている。
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正答:4

【解説】心臓の解剖と血流のルール

心臓の4つの部屋、弁の名前、つながっている血管、そして流れている血液の種類(動脈血か静脈血か)を問う、生理学の超基本問題です。ここで確実なイメージを作っておくことが今後の全ての応用に繋がります。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(大動脈圧が圧倒的に高い)
    全身に血液を送り出す大動脈圧(約120/80mmHg)に対し、すぐ隣の肺にだけ血液を送る肺動脈圧(約20/10mmHg)は非常に低圧です。
  • 2.誤り(右房と右室の間)
    三尖弁は「右心房と右心室」の間にあります。左心房と左心室の間にあるのは「僧帽弁(二尖弁)」です。
  • 3.誤り(左房へ流入)
    肺で酸素をたっぷり受け取った血液は、肺静脈を通って「左心房」に返ってきます。右心房に入ってくるのは、全身から戻ってきた大静脈です。
  • 4.正しい(心拍出量の公式)
    心拍出量(CO)は、1回の拍動で送り出される量(SV)と、1分間の拍動回数(HR)の掛け算(積)で決まります。CO=SV×HR
  • 5.誤り(静脈血が流れる)
    血管の名前は「心臓から出る=動脈」「心臓へ戻る=静脈」と決まっています。肺動脈は右心室から出ていく血管ですが、中身は全身から戻ってきたばかりの「酸素の少ない静脈血」です。

【頻出】心臓の左右の比較まとめ

項目 右心系(右房・右室) 左心系(左房・左室)
流れる血液 静脈血(酸素が少ない) 動脈血(酸素が豊富)
房室弁(心房と心室の間) 三尖弁 僧帽弁(二尖弁)
出ていく血管 肺動脈(中身は静脈血) 大動脈(中身は動脈血)

暗記方法・覚え方のコツ(左右の弁)

弁の左右は「右に三つ編み、左に誘う(右=三尖弁、左=僧帽弁)」
ゴロ合わせで覚えましょう👍

さい
さい
肺動脈と肺静脈は、名前と流れている血液の中身(動脈血か静脈血か)が「逆転」します。ひっかけポイントなので、表を見てしっかり整理してください。

問20:針筋電図検査の基本(波形の出現条件)

【問題】
針筋電図検査で随意収縮により記録されるのはどれか。

  • 1.陽性鋭波
  • 2.運動単位電位
  • 3.線維自発電位
  • 4.線維束自発電位
  • 5.ミオトニー放電
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正答:2

【解説】「いつ」出る波形なのかを分類する

針筋電図検査の波形は、針を刺した瞬間(刺入時)、力を抜いている時(安静時)、力を入れている時(随意収縮時)の3つのフェーズに分けて記録・分類されます。国家試験では、この出現タイミングの分類がよく問われます。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(安静時の異常波形)
    陽性鋭波(Positive Sharp Wave)は、筋肉が神経の支配を失った状態(脱神経)などで、力を入れていない「安静時」に出現する異常な自発電位です。
  • 2.正しい(随意収縮時の波形)
    運動単位電位(MUP)は、患者さんが自分の意志で筋肉に力を入れた際(随意収縮時)に記録される、筋電図の基本となる正常波形です。力を強くするほどMUPの数が増え、最終的に干渉波形となります。
  • 3.誤り(安静時の異常波形)
    線維自発電位は、陽性鋭波と同じく「安静時」に記録される脱神経のサインです。1本の筋線維が勝手にピクピク動いている状態です。
  • 4.誤り(安静時の異常波形)
    線維束自発電位は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経原性疾患において、「安静時」に記録される異常波形です。運動単位ごとのまとまったピクつき(筋線維束攣縮)として皮膚の上からも観察できます。
  • 5.誤り(安静時・刺入時の異常波形)
    ミオトニー放電は、急降下爆撃音と呼ばれる特徴的な音を伴う波形で、針の「刺入時」や筋肉の叩打、あるいは「安静時」に出現します。

【頻出】針筋電図の波形分類まとめ

記録条件(タイミング) 記録される主な波形
随意収縮時(力を入れる) 運動単位電位(MUP)、干渉波形
安静時(力を抜く)
※出たら異常所見!
陽性鋭波、線維自発電位、線維束自発電位、ミオトニー放電、複合反復放電など

暗記方法・覚え方のコツ(消去法で解く)

針筋電図の波形は種類が多くて混乱しがちですが、「力を入れたときに出る波形はMUPと干渉波形くらいしかない」と割り切って覚えるのが一番楽です。
漢字が多くていかにも「病的な名前の波形(自発電位など)」は、安静時の異常所見だと判断してもいいかもしれません。
過去問解きまくって対応していきましょう。

さい
さい
「安静時か、収縮時か」の分類は、筋電図の問題の第一歩。ここをクリアしたら、次はMUPの「形」から病気を推理するステップに進みます!

さいの補足(弱点補強:MUPの形による疾患の鑑別)

随意収縮時に出るMUPですが、実はその「形(振幅と持続時間)」で病気の種類が分かります。神経が原因の病気(神経原性変化:ALSなど)では、生き残った神経が頑張って多くの筋線維を支配しようとするため、MUPは「高振幅・長持続」の巨大な波(Giant spike)になります。逆に筋肉そのものの病気(筋原性変化:筋ジストロフィーなど)では、筋線維の数が減ってしまうため、MUPは「低振幅・短持続」の小さくて細かい波になります。

問21:反復神経刺激検査(漸増現象とカルシウムイオン)

【問題】
反復神経刺激検査の小指外転筋における記録波形(別冊No. 4)を別に示す。この現象に関わるのはどれか。

  • 1.Ca2+
  • 2.Cl
  • 3.K+
  • 4.Mg2+
  • 5.Na+
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正答:1

【読影のポイント】波形が大きくなる「漸増現象」

別冊の記録波形を見ると、刺激を繰り返すにつれて複合筋活動電位(CMAP)の振幅が第1刺激の2倍以上に大きく成長していく「漸増現象(waxing)」が確認できます。これはLambert-Eaton(ランバート・イートン)筋無力症候群に特異的な所見です。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.正しい(Ca2+の蓄積)
    Lambert-Eaton筋無力症候群は、運動神経の末端(シナプス前膜)にある「電位依存性カルシウム(Ca2+)チャネル」が自己抗体によって破壊される病気です。高頻度で反復刺激を行うと、神経終末内にCa2+が徐々に蓄積し、減少していたアセチルコリンの放出量が一気に増えるため、波形が次第に大きくなります。
  • 2.誤り
    クロール(Cl)は、筋強直性ジストロフィーなどのミオトニー現象(Clチャネルの異常)に関与しますが、漸増現象の直接の原因ではありません。
  • 3.誤り
    カリウム(K+)は静止膜電位の維持や再分極に関わりますが、この現象の主役ではありません。
  • 4.誤り
    マグネシウム(Mg2+)はCa2+の拮抗薬として働き、アセチルコリンの放出を抑える作用があります。
  • 5.誤り
    ナトリウム(Na+)は活動電位の発生(脱分極)に不可欠ですが、漸増現象という特異な波形変化を引き起こす原因物質ではありません。

【頻出】2大・神経筋接合部疾患の比較まとめ

項目 Lambert-Eaton症候群 重症筋無力症(MG)
波形の特徴 漸増現象(waxing) 漸減現象(waning)
刺激の条件 高頻度刺激(20〜50Hz)で著明 低頻度刺激(3〜5Hz)で著明
障害部位 シナプス前膜(Ca2+チャネル シナプス後膜(アセチルコリン受容体)
初期のCMAP振幅 極めて低い ほぼ正常

暗記方法・覚え方のコツ(病態イメージ)

ランバート・イートン症候群は「カルシウム不足で最初は力が出ない(低振幅)けれど、何度も何度もビシバシ叩かれる(高頻度刺激)と、Ca2+が溜まってきて調子が出てくる(漸増する)」とイメージするといいです👍

さい
さい
MG(重症筋無力症)とのひっかけに注意です。「前膜か後膜か」「Ca2+か受容体か」「増えるか減るか」という対比で整理しときましょう

さいの補足(弱点補強:肺小細胞がんとの合併)

実はLambert-Eaton症候群の患者さんの半数以上は「肺小細胞がん」を合併しています。
がん細胞が作り出した異常なタンパク質に対して免疫が反応し、その自己抗体が誤って自分の運動神経のCa2+チャネルを攻撃してしまう(腫瘍随伴症候群)ことが原因の一つと言われています。

問22:心電図の基本波形とマス目による視覚的読影

【問題】
心電図所見で基準範囲内であるのはどれか。

  • 1.P波幅 0.20秒
  • 2.PR時間 0.26秒
  • 3.QRS時間 0.16秒
  • 4.補正QT時間〈QTc〉 0.42秒
  • 5.R-R間隔 0.40秒
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正答:4

【解説】現場の鉄則:秒数ではなく「マス目」で判断する

心電図の記録紙は通常25mm/秒で送られるため、小さな1マス(1mm)は「0.04秒」、太い線で囲まれた大きな1マス(5mm)は「0.20秒」となります。臨床現場では数字を計算するのではなく、「何マス分か」という視覚的な幅で瞬時に異常を判断します。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(基準:3マス未満)
    P波の正常値は0.11秒以内、つまり「小さな3マス未満」です。0.20秒は大きな1マス分(5マス分)もあり、明らかに広すぎます。この場合、左心房に負荷がかかる「左房負荷」を疑います。
  • 2.誤り(基準:3〜5マス)
    PR時間の正常値は0.12〜0.20秒、つまり「3マスから大きな1マス(5マス)に収まる」のが正常です。0.26秒(6.5マス分)は長すぎるため、「I度房室ブロックなど房室ブロック」と即座に鑑別できます。
  • 3.誤り(基準:3マス未満)
    QRS時間の正常値は0.10秒以内、つまり「3マス未満(シュッとしている)」のが正常です。0.16秒(4マス分)は幅が広すぎるため、心室内の伝導が遅れる「脚ブロック」などを疑います。もちろん波形の形によって期外収縮なども他の病態も考えます。
  • 4.正しい(基準:0.35〜0.44秒)
    QTc0.42秒は基準範囲内に収まっています。なお、視覚的な目安として「QT時間は、前のR-R間隔の半分未満に収まるのが正常」というざっくりとした判定法もよく使われます。
  • 5.誤り(基準:15〜25マス)
    R-R間隔の正常値は0.60〜1.00秒です。0.40秒は「10マス分(大きな2マス分)」しかなく、これは心拍数150回/分の著明な頻脈状態を意味します。
    通常はR-R間隔の正常値というよりかは、HRの基準値で考えますけどね。

【頻出】心電図の基準範囲(マス目換算表)

指標 正常な基準範囲 マス目の目安(小1マス=0.04秒) 異常時の所見
P波幅 0.11秒以内 3マス未満 左房負荷など
PR時間 0.12〜0.20秒 3〜5マス(大きな1マスまで) 房室ブロックなど
QRS時間 0.10秒以内 3マス未満 脚ブロックなど

暗記方法・覚え方のコツ(3の法則)

心電図の基本的な波形(P波とQRS波)は「3マス(0.12秒)以上あったら異常」とスクリーニングするといいです。
※心電図はこれで見極められるほど単純ではないですが、あくまで国試対策としてという意味

さい
さい
国試の問題用紙に心電図の波形が載っていたら、数字をこねくり回す前に、まずは波形の幅が「小さなマスいくつ分か」を数えてください。それだけで房室ブロックや脚ブロックの選択肢を瞬時に絞り込めます

さいの補足(弱点補強:心拍数の一発計算)

R-R間隔から心拍数を求める公式は「60 ÷ R-R間隔(秒)」ですが、これも現場では「マス目」で暗算します。R波から次のR波までの間に「大きなマス(5mm)」がいくつ入るかを数え、300をその数で割るだけです。

  • 大2マス:300 ÷ 2 = 心拍数150(頻脈)
  • 大3マス:300 ÷ 3 = 心拍数100
  • 大4マス:300 ÷ 4 = 心拍数75(正常ど真ん中)
  • 大5マス:300 ÷ 5 = 心拍数60

選択肢5はR-R間隔が0.40秒(=大2マス)なので、一瞬で「心拍数150だな」と見抜くことができます。
僕もルーチンで、マス目を使ったHR計算は常時使っています。

問23:呼吸生理(換気と化学受容器)

【問題】
換気で正しいのはどれか。2つ選べ。

  • 1.換気は内呼吸である。
  • 2.肺胞換気量とPaCO2は反比例する。
  • 3.無意識下の換気は小脳で調節される。
  • 4.末梢化学受容器は酸素の低下を検出する。
  • 5.一回換気量と呼吸数の積で肺胞換気量になる。
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正答:2、4

【解説】呼吸の調節と換気量の計算

呼吸生理学における「どこで呼吸をコントロールしているか(中枢と受容器)」と「換気量の定義・計算」を問う複合問題です。PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)と換気量の関係は、臨床現場で人工呼吸器の設定を考える際にも必須の知識となります。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(外呼吸である)
    肺で行われるガス交換(空気中の酸素を血液に取り込み、二酸化炭素を排出する過程)は「外呼吸」です。「内呼吸」は、全身の細胞が血液から酸素を受け取ってエネルギーを作り出す代謝過程を指します。
  • 2.正しい(反比例の関係)
    肺胞換気量(実際にガス交換に関与する換気量)とPaCO2は綺麗な反比例の関係にあります。換気量が増えれば二酸化炭素はどんどん吐き出されてPaCO2は下がり、換気量が減れば二酸化炭素が体内に蓄積してPaCO2は上がります。
  • 3.誤り(延髄・橋で調節)
    無意識の呼吸(自律呼吸)をコントロールしている呼吸中枢は、脳幹にある「延髄」と「橋」です。小脳は体のバランスや運動の調節を担う部分です。
  • 4.正しい(低酸素を感知)
    頸動脈小体や大動脈小体にある「末梢」化学受容器は、血液中の酸素(O2)の低下(低酸素血症)を素早く感知します。一方、脳にある「中枢」化学受容器は、PaCO2の上昇(およびpHの低下、水素イオンH+の上昇)を感知します。
  • 5.誤り(分時換気量の公式)
    「一回換気量 × 呼吸数」で求められるのは、1分間に出入りする空気の総量である「分時換気量」です。実際にガス交換に使われる「肺胞換気量」を求めるには、ガス交換に関与しない空気の通り道(解剖学的死腔)の分を引き算する必要があります。

【頻出】2つの換気量計算公式

■ 分時換気量 = 一回換気量 × 呼吸数

■ 肺胞換気量 = (一回換気量 - 死腔量) × 呼吸数

暗記方法・覚え方のコツ(化学受容器の分担)

末梢は「酸素(O2)」、中枢は「二酸化炭素(CO2)」と役割分担されています。
「まっそー(末梢=酸素)」
「ちゅーし(中枢=CO2)」
という無理矢理な語呂ですが、これで暗記しておくと、ひっかけ問題に強くなります。

さい
さい
死腔(しくう)とは、気管や気管支など「空気は通るけれどガス交換はできない空間」のことです。成人の場合、約150mLが死腔となります。これを引かないと本当の換気能力(肺胞換気量)は計算できないです。

さいの補足(弱点補強:CO2ナルコーシス)

慢性的にPaCO2が高い患者さん(COPDなど)は、中枢化学受容器がCO2に慣れてしまい反応しなくなっています。代わりに、末梢化学受容器の「低酸素」への反応だけで呼吸を維持している状態です。この患者さんに不用意に高濃度の酸素を吸わせると、「酸素が足りた!」と体が勘違いして呼吸を止めてしまい、さらにCO2が蓄積して意識障害を起こす「CO2ナルコーシス」という危険な状態に陥ります。これは本当に重要です!

問24:呼吸機能検査におけるノーズクリップの要否

【問題】
ノーズクリップが必要な検査はどれか。2つ選べ。

  • 1.パルスオキシメータ
  • 2.ピークフローメータ
  • 3.一回呼吸法によるDLco測定
  • 4.呼気一酸化窒素濃度〈FeNO〉測定
  • 5.オシロメトリー〈強制オシレーション法〉による呼吸抵抗測定
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正答:3、5

【解説】鼻からの息漏れとガス混入を防ぐ

呼吸機能検査においてノーズクリップ(鼻栓)を使用する最大の理由は「口だけで呼吸をさせ、鼻からの息漏れ(圧力や空気の逃げ)を完全に防ぐ」ためです。逆に、特定の理由で「あえてつけない」検査もあるため、その理由をセットで暗記しましょう。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(不要)
    パルスオキシメータは、指先や耳たぶに光を当てて動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測る装置です。呼吸の「量」や「圧」を測るわけではないため、当然ノーズクリップは不要です。
  • 2.誤り(原則不要)
    ピークフローメータは、喘息の日常管理などで「一瞬の最大の吐く勢」を測る簡易器具です。一瞬の努力呼気のみを測るため、一般的にノーズクリップは使用しません。
  • 3.正しい(必須)
    肺拡散能(DLCO)測定は、テストガス(微量の一酸化炭素など)を吸い込んで約10秒間息を止め、吐き出したガスを分析します。鼻からガスが漏れると正確な移動量が計算できなくなるため、ノーズクリップは必須です。
  • 4.誤り(つけてはいけない)
    呼気一酸化窒素濃度(FeNO)測定は、気道(気管支)の好酸球性炎症を評価する検査です。鼻腔(副鼻腔)にはもともと高濃度のNOが存在するため、ノーズクリップをつけると鼻の奥のNOが口側に押し出されて混入してしまう恐れがあります。そのため「つけない」のが原則です。
  • 5.正しい(必須)
    オシロメトリー(強制オシレーション法:FOT)は、口元から細かい振動(圧力波)を送り込んで気道の抵抗を測る検査です。鼻が開いていると圧力が逃げてしまうためノーズクリップが必須であり、さらに振動が頬から逃げないよう「両手で頬を軽く押さえる」のが特徴です。

ノーズクリップの要否まとめ

ノーズクリップが【必須】の検査 ノーズクリップが【不要・禁止】の検査
・スパイロメトリー(肺活量など)
・肺拡散能(DLCO)測定
・機能的残気量(FRC)測定
・オシロメトリー(FOT)
FeNO測定(鼻腔NO混入防止)
・ピークフローメータ(簡易検査)
・パルスオキシメータ

暗記方法・覚え方のコツ(FeNOのひっかけ)

呼吸機能検査は基本的に「全部ノーズクリップをつける」のが原則です。だからこそ、国試では例外である「FeNO測定(つけてはいけない)」が強烈なひっかけとして頻出します。以下のゴロで整理して覚えましょう。

『フェノは鼻をふさがない』
※僕の職場では「エヌオーや、フィーノ」と呼んでいます。覚え方として、便宜上フェノとしています。

  • フェノ:FeNO測定(呼気一酸化窒素濃度)
  • 鼻:ノーズクリップ
  • ふさがない:使用しない(禁止)
さい
さい
オシロメトリーの「頬を手で押さえる」という特徴も画像問題などでよく狙われます。振動エネルギーを気道の奥までしっかり届けるための工夫ですね。

さいの補足(弱点補強:FeNO測定のもう一つの条件)

FeNO測定で「ノーズクリップをつけない」ことと並んで国試で頻出なのが「息を吐くスピード」です。測定中は息を吐くスピードを「50mL/秒」という一定の流量に保つ必要があります。速すぎても遅すぎても気道からのNOが正確に測れないため、画面のアニメーションなどを見ながら患者さんに一定のスピードで吐き出してもらう工夫がされています。
ちなみに僕は一回でできませんでした笑普通にむずいです。

問25:脳波の基本所見(α波と瞬目アーチファクト)

【問題】
脳波(別冊No. 5)を別に示す。認められるのはどれか。2つ選べ。

  • 1.α 波
  • 2.瞬 目
  • 3.紡錘波
  • 4.徐波群発
  • 5.高振幅速波
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正答:1、2

【読影のポイント】開閉眼に伴う脳波の変化

問題の脳波記録は、患者さんが目を開けている状態(開眼)から、目を閉じた状態(閉眼)へと移行する瞬間を捉えた所見です。
前頭部(Fp1、Fp2)のアーチファクトと、後頭部(O1、O2)の基礎律動の変化に注目します。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.正しい(α波の出現)
    記録の後半部分を見ると、後頭部(O1、O2)や頭頂部(P3、P4)を中心に、約10Hz(1秒間に約10個の波)の規則正しいサインカーブのような波形が連続して現れています。これが閉眼・安静時に出現する「α(アルファ)波」です。
  • 2.正しい(瞬目アーチファクト)
    記録の前半部分で、前頭極(Fp1、Fp2)や前頭部(F3、F4、F7、F8)に同期して見られる「下向きの大きな振れ」は、まばたきをした際に混入する「瞬目(しゅんもく)アーチファクト」です。
  • 3.誤り(睡眠時の波形)
    紡錘波(睡眠紡錘波)は、浅い睡眠(睡眠第2段階)に入った際に、中心部(C3、C4)付近に現れる12〜14Hzの細かく尖った波の集まりです。本記録は覚醒時のものです。
  • 4.誤り(異常波形)
    徐波群発(FIRDAやOIRDAなど)は、脳機能の低下や脳腫瘍などの異常時に見られる、高い振幅を持ったゆっくりとした波(徐波)の連続です。本記録には認められません。
  • 5.誤り(薬物影響など)
    速波(β波など)は通常、振幅が低い(小さい)のが特徴です。高振幅の速波が連続して見られる場合は、睡眠薬や抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)などの薬物影響を疑いますが、本記録には該当しません。

【頻出】正常脳波と主なアーチファクトまとめ

波形・アーチファクト 出現しやすい部位 特徴・出現条件
α波(アルファ波) 後頭部(O1, O2)優位 8〜13Hz。閉眼・安静時に出現。開眼で抑制(消失)される。
β波(ベータ波) 前頭部(Fp1, Fp2など)優位 14Hz以上。開眼時や精神活動時(計算など)に出現。
瞬目(まばたき) 前頭極(Fp1, Fp2) 左右対称に大きく下向きに振れる。
筋電図(力み) 側頭部(T3, T4など)や前頭部 非常に速く細かいギザギザした波。

読影のコツ(場所の略語)

脳波の電極記号は英単語の頭文字です。FpはFrontal pole(前頭極=おでこ)、OはOccipital(後頭部=後頭部)、CはCentral(中心部=頭頂部付近)です。まばたきは目のすぐ上にある「おでこ(Fp)」に強く出るとイメージしましょう。

さい
さい
この画像の前半ではα波が消えてバラバラの波形(β波など)になっていますね。これを目を開けたことによる「α波抑制(アルファ・ブロッキング)」と呼びます。瞬目とセットで起こる現象です。

さいの補足(弱点補強:なぜまばたきは「下向き」なのか?)

眼球は、角膜側(前)がプラス、網膜側(奥)がマイナスの電気を帯びた一種の電池(角膜網膜電位)になっています。人がまばたきをすると、眼球は反射的に上を向きます(ベル現象)。すると、プラスの電気を帯びた角膜が、おでこにある電極(Fp1, Fp2)に近づきます。脳波計のルールとして「探査電極にプラスの電気が近づくと波形は『下向き』に描かれる」という決まりがあるため、まばたきのアーチファクトは必ず下向きの大きな波になります。

問26:体性感覚誘発電位(SEP)の由来部位

【問題】
健常者の正中神経を手関節部で電気刺激したときに大脳皮質で最初に生じる反応はどれか。

  • 1.N9
  • 2.N13
  • 3.N20
  • 4.P31
  • 5.P37
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正答:3

【解説】電気信号が脳へ向かって駆け上がるルート

体性感覚誘発電位(SEP)は、手首や足首の神経に電気刺激を与え、その信号が脊髄を通って脳(大脳皮質)へ到達するまでの経路を評価する検査です。波形についた数字(9や20など)は「刺激してからその波が出るまでの時間(ミリ秒)」を表しています。神経の距離が遠い部位ほど、数字が大きくなります。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(腕神経叢由来)
    N9は、刺激から約9ミリ秒後に首の付け根(Erb点)で記録される波形です。まだ脳や脊髄には到達しておらず、末梢神経(腕神経叢)を走っている段階の電位です。
  • 2.誤り(頸髄由来)
    N13は、刺激から約13ミリ秒後に首の後ろ(第5頸椎付近)で記録される波形です。電気信号が「脊髄(頸髄)」に突入したことを示します。
  • 3.正しい(大脳皮質由来)
    N20は、刺激から約20ミリ秒後に頭頂部付近で記録される波形です。電気信号が脳幹を抜け、目的地の「大脳皮質(一次体性感覚野)」に一番乗りで到着した瞬間の反応です。
  • 4.誤り(下部脳幹・内側毛帯由来)
    P31は、足首の神経(後脛骨神経)を刺激した際に、脳幹付近を通過していることを示す波形です。正中神経(手)の刺激ではありません。
  • 5.誤り(下肢刺激時の大脳皮質由来)
    P37は、足首の神経(後脛骨神経)を刺激した際に、「大脳皮質」に到着して最初に記録される波形です。今回は手の神経の刺激であるため除外されます。

【頻出】上肢と下肢のSEP由来部位まとめ

由来部位(通過点) 上肢(正中神経刺激) 下肢(後脛骨神経刺激)
末梢神経(神経叢) N9
脊髄への進入 N13(頸髄) N21(腰髄)
脳幹(皮質下) P13/P14など P31
大脳皮質(最終地点) N20 P37

暗記方法・覚え方のコツ(距離と時間)

手首から脳までの距離よりも、足首から脳までの距離のほうが圧倒的に遠いですよね。だからこそ、大脳皮質に到達するまでの時間は、手(正中神経)なら「20ミリ秒」、足(後脛骨神経)なら「37ミリ秒」と、足のほうが時間がかかります。この距離感をイメージすることも攻略法の一つです。

さいの補足(弱点補強:NとPの意味)

波形の名前についている「N」はNegative(陰性)、「P」はPositive(陽性)を意味します。ここで注意が必要なのが、脳波や誘発電位の記録ルールです。心電図などとは逆で、探査電極がマイナス(陰性)になったとき、波形は「上向き」に描かれます。つまり「N20」は上向きの波、「P37」は下向きの波として記録されるという引っ掛け問題も出る可能性があるため、脳波のルールと合わせて覚えておきましょう。

問27:心筋梗塞の心電図(梗塞部位の診断)

【問題】
心筋梗塞の心電図(別冊No. 6)を別に示す。推定される梗塞領域はどれか。

  • 1.下壁と後壁
  • 2.下壁と側壁
  • 3.後壁と側壁
  • 4.前壁中隔と下壁
  • 5.前壁中隔と側壁
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正答:4

【読影のポイント】12個のカメラが心臓のどこを見ているか

12誘導心電図は、心臓を12個の異なる角度(カメラ)から観察している検査です。心筋梗塞の所見(ST上昇や異常Q波など)が「どの誘導に現れているか」を確認するだけで、心臓のどの血管が詰まり、どの壁が壊死しているのかをピンポイントで特定できます。

【別冊画像(No.6)の所見と部位診断】

  • 所見1:V1〜V4誘導の異常(前壁中隔)
    胸部誘導のV1からV4にかけて、深い下向きの波(異常Q波・QSパターン)と、基準線よりも持ち上がったST上昇がはっきりと認められます。V1〜V4は心臓の「前壁中隔(左室の前側と真ん中の壁)」を観察するカメラです。
  • 所見2:II、III、aVF誘導の異常(下壁)
    四肢誘導のII、III、aVFの3箇所にも、幅が広く深い「異常Q波」が認められます。この3つの誘導は心臓を真下から見上げる「下壁(心臓の底面)」を観察するカメラです。
  • 結論:前壁中隔 + 下壁の合併
    以上の2つの部位に明らかな梗塞所見があるため、正解は「4.前壁中隔と下壁」となります。

【頻出】誘導と梗塞部位の対応表(絶対暗記)

異常がみられる誘導 梗塞部位(心臓の壁) 原因となる冠動脈
V1、V2、V3、V4 前壁中隔 左前下行枝(LAD)
I、aVL、V5、V6 側壁 左回旋枝(LCX)
II、III、aVF 下壁 右冠動脈(RCA)
V1、V2(ST低下、高いR波) 後壁 右冠動脈 または 左回旋枝

暗記方法・覚え方のコツ(下壁梗塞のゴロ)

国試で最も問われる「下壁」の誘導は、以下の定番ゴロで確実に記憶に定着させましょう。

『兄さん、あぶない!下を見て』

  • 兄さん:II、III 誘導
  • あぶない:aVF 誘導
  • 下を見て:下壁(かへき)梗塞
さい
さい
この表さえ丸暗記しておけば、心筋梗塞の下壁梗塞は瞬殺できるボーナス問題に変わります。現場でも毎日使う知識なので絶対に覚えてください!

さいの補足(弱点補強:異常Q波とST上昇の「時間差」)

心電図のマス目読影からのステップアップ知識です。「ST上昇」は心筋が現在進行形でダメージを受けている「急性期」のサインですが、「異常Q波」は心筋がすでに死んでしまった(壊死した)ことを示す「陳旧期(過去の傷跡)」のサインです。今回の心電図のように両方が混在している場合、過去に下壁梗塞を起こした患者さんが、新たに前壁中隔の急性梗塞を起こしたか、あるいは発症から数日経過して壊死と虚血が入り混じっている状態などが推測できます。波形の「形」だけでなく、発症からの「時間」も読めるようになると臨床力がグッと上がります。

問28:心電図の読影(心房細動と完全右脚ブロック)

【問題】
心電図(別冊No. 7)を別に示す。心電図所見はどれか。2つ選べ。

  • 1.洞停止
  • 2.心室頻拍
  • 3.心房細動
  • 4.洞不整脈
  • 5.完全右脚ブロック
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正答:3、5

【読影のポイント】国試で超定番の合併パターン

問題の心電図は「心房細動(Af)」と「完全右脚ブロック(cRBBB)」が合併した、国家試験によく出る定番問題です。パッと見の全体像(R-R間隔)と、特定の誘導(V1)の形を確認するだけで一瞬で正解を導き出せます。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(平坦な直線がない)
    洞停止は、心臓のペースメーカー(洞結節)が一時的に休んでしまう病態です。心電図上ではP波もQRS波も出ない「平坦な直線(ポーズ)」が2秒以上見られますが、本画像にはそのような空白期間はありません。
  • 2.誤り(規則正しさがない)
    心室頻拍(VT)は、幅の広いQRS波が「規則正しく」連続して出現する危険な不整脈です。本画像のようにR-R間隔がバラバラな状態とは明らかに異なります。
  • 3.正しい(P波消失、R-R不整)
    心房細動(Af)の2大特徴である「P波が消失し、基線が細かく震える細動波(f波)がある」「R-R間隔が完全にバラバラ(絶対的不整脈)」がはっきりと確認できます。
  • 4.誤り(正常なP波がない)
    洞不整脈は、呼吸に合わせてR-R間隔が変動する正常な生理現象です。R-R間隔は不規則になりますが、心房細動とは異なり「すべてのQRS波の前に、正常なP波が必ず存在」します。
  • 5.正しい(V1誘導のM字パターン)
    胸部誘導のV1を見ると、ウサギの耳のような「M字型(rsR’パターン)」の幅広いQRS波(0.12秒以上)が確認できます。これは右心室への電気の通り道が途切れている「完全右脚ブロック」の典型的な所見です。

【頻出】鑑別が必要な不整脈まとめ

不整脈の名称 R-R間隔(規則性) P波の有無 QRS波の特徴
心房細動(Af) バラバラ(絶対的不整) なし(f波が出現) 通常は幅が狭い(正常)
洞不整脈 不規則に変動 あり(正常) 幅が狭い(正常)
心室頻拍(VT) 規則正しい 判別困難(埋もれる) 幅が広い(異常)

読影のコツ(パッと見の2ステップ)

国試の心電図問題が出たら、まずは以下の2ステップで画面をスキャンする癖をつけましょう。

『国試必勝の2ステップ読影法』

  • ステップ1(全体を見る):R-R間隔がバラバラでP波がなければ「心房細動」
  • ステップ2(V1を見る):幅広いM字型(ウサギの耳)があれば「完全右脚ブロック」
さい
さい
この2つの組み合わせは、臨床現場で高齢の患者さんの心電図をとっていると割とよく遭遇します。

さいの補足(弱点補強:なぜV1誘導を見るのか?)

右脚ブロックを疑ったとき、なぜ真っ先に「V1誘導」を見るのかご存知ですか?それは、12個あるカメラ(誘導)の中で、V1誘導が「右心室を真上から見下ろす位置」に貼られているからです。右脚(右心室への電線)が切れると、右心室の興奮が通常よりも遅れてやってきます。その「遅れて近づいてくる大きな電気的興奮」を、真上にいるV1カメラが真正面から捉えるため、上に大きく突き出たM字型(後半のR’波が高い形)として記録されます。

臨床生理学(午前)の解説は以上です

第72回の午前問題、本当にお疲れ様でした。心電図やエコー、脳波など、図や波形から情報を読み取る実践的な力が試される内容でした。

特に生理機能検査分野は、波形の基準値やアーチファクトの原理など、一度理論とルールを理解してしまえば確実な得点源になります。丸暗記に頼らず、なぜその波形になるのかという背景に目を向けて復習を進めてみてください。

さい
さい
生理学は覚える数字や波形が多くて大変ですが、それぞれの仕組みや現場での見方を知ることで一気に理解が深まります。焦らず一つずつマスターしていきましょう!

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