こんにちは、臨床検査技師のさいです。
今回は第72回臨床検査技師国家試験より「公衆衛生学・関係法規(午前・午後 問90〜94)」の全問解説まとめを1つの記事にまとめてお届けします。
公衆衛生の分野は、法律の改正や最新の統計データがそのまま国試のトレンドに直結します。例えば今回の問題では、長年の常識だった有訴者率のランキングが「男女ともに腰痛が1位」へと変化した最新データが早速出題されました。また、健康増進法の改正による受動喫煙防止ルールの厳格化など、古い過去問の丸暗記では足元をすくわれてしまうため、知識のアップデートが不可欠です。(厚労省ホームページにあったりします)
ややこしいワクチンの分類や各種統計の違い、さらには四大公害病から医療倫理の宣言(ヘルシンキ宣言など)に至るまで、一発で覚えられるゴロ合わせやスッキリ整理された比較表をたっぷり用意しました。サクッと得点源にしてしまいましょう!
解説を読んで分かりにくい点などがございましたら、各SNSのDM等で気軽にお声がけください。皆様の国試合格に少しでも貢献できれば嬉しいです。
※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第72回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。
第72回 臨床検査技師国試【公衆衛生学】
全選択肢の正誤理由と解説まとめ
午前:公衆衛生学(問90〜94)
問90:国民生活基礎調査(有訴者率)
【問題】
2022年(令和4年)の国民生活基礎調査で、有訴者率が男女とも第1位だった症状はどれか。
- 1.頭 痛
- 2.頻 尿
- 3.腰 痛
- 4.鼻づまり
- 5.目のかすみ
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正答:3
【解説】2022年調査の最大の変更点(ひっかけ注意!)
国民生活基礎調査は、厚生労働省が3年ごとに実施する大規模な調査です。病気やけがなどで自覚症状がある人の割合を「有訴者率(ゆうそしゃりつ)」と呼びます。この有訴者率のランキングは2022年(令和4年)のデータから順位に変動があったため注意が必要です。
【男女別の有訴者率ランキング(2022年)】
- 男性のランキング
第1位:腰痛
第2位:肩こり
第3位:頻尿 - 女性のランキング
第1位:腰痛
第2位:肩こり
第3位:関節痛
【頻出】2019年調査からの変更点まとめ
| 調査年 | 男性の第1位 | 女性の第1位 |
|---|---|---|
| 2019年(前回) | 腰痛 | 肩こり |
| 2022年(今回) | 腰痛 | 腰痛(逆転!) |
暗記方法・覚え方のコツ(古い過去問に騙されない)
長年、有訴者率の1位は「男性=腰痛」「女性=肩こり」という法則がありました。しかし、2022年の調査で初めて女性も「腰痛」が1位に躍り出ました!古い過去問や参考書を解いていると「女性の1位は肩こり」と解説されていることが多いため、最新のデータに上書きアップデートしておくことが合否を分けます。
さいの補足(患者調査との違い)
「国民生活基礎調査」とよく似た調査に「患者調査」があります。国民生活基礎調査が「自覚症状(有訴者率)や通院率」を調べるのに対し、患者調査は、医療機関を受療している患者数や受療率、傷病構造を把握する調査です。どちらも3年ごとに実施されますが、目的と指標が違うのでセットで整理しておくといいかもしれません。
問91:食事バランスガイドの料理区分
【問題】
食事バランスガイド(厚生労働省・農林水産省決定)における主菜はどれか。
- 1.ごはん
- 2.チーズ
- 3.みかん
- 4.焼き魚
- 5.野菜サラダ
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正答:4
【解説】コマのイラストが示す5つの区分
「食事バランスガイド」は、1日に何をどれだけ食べたらよいかを「コマ」のイラストで分かりやすく示したものです。食事を5つのグループ(主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物)に分け、コマの軸となる水分(水・お茶)や、コマを回すヒモ(運動)を組み合わせてバランスの大切さを表現しています。(以下画像は農林水産省より引用)
【各選択肢の分類と正誤理由】
- 1.誤り(主食)
ごはんは、炭水化物の供給源となる「主食」に分類されます。コマの一番上の段です。 - 2.誤り(牛乳・乳製品)
チーズは、カルシウムの供給源となる「牛乳・乳製品」に分類されます。コマの下段の右側です。 - 3.誤り(果物)
みかんは、ビタミンCやカリウムの供給源となる「果物」に分類されます。コマの下段の左側です。 - 4.正しい(主菜)
焼き魚は、魚・肉・卵・大豆などを主材料とする「主菜」に分類されます。タンパク質の主な供給源であり、コマの3段目に位置します。 - 5.誤り(副菜)
野菜サラダは、野菜・きのこ・海藻などを主材料とする「副菜」に分類されます。ビタミンやミネラル、食物繊維の供給源であり、コマの2段目に位置します。
【頻出】食事バランスガイドの5区分まとめ
| 料理区分 | 主な栄養素 | 代表的な食品・料理 |
|---|---|---|
| 主食 | 炭水化物 | ごはん、パン、麺類 |
| 副菜 | ビタミン・ミネラル等 | 野菜サラダ、おひたし、味噌汁 |
| 主菜 | タンパク質 | 焼き魚、ハンバーグ、目玉焼き |
| 牛乳・乳製品 | カルシウム | 牛乳、ヨーグルト、チーズ |
| 果物 | ビタミンC等 | みかん、りんご |
暗記方法・覚え方のコツ(主菜と副菜の見分け方)
定食をイメージしてください。メインとなるお肉や魚のガッツリしたおかず(タンパク質)が「主菜」。その横に添えられているサラダや小鉢のおひたし(野菜)が「副菜」です。「主菜=メインのおかず=肉・魚・卵・豆」と結びつけておけば迷いません。
さいの補足(公衆衛生の勉強は「厚労省HP」が命!)
公衆衛生学や関係法規の分野は、法律の改正や新しいガイドラインの策定、各種統計データなど、情報が年々アップデートされていきます。問90の有訴者率の順位変動のように、数年前の過去問の正解が今の不正解になることは日常茶飯事です。古い参考書や過去問集の解説をそのまま丸暗記するのではなく、少しでも迷ったり新しい数値を覚える時は、必ず「厚生労働省(場合によっては農林水産省や環境省も)のホームページ」で最新の情報を確認するクセをつけておくことが、この分野で確実に得点するためには重要ポイントです。
問92:労災保険〈労働者災害補償保険〉の基本
【問題】
労災保険〈労働者災害補償保険〉で正しいのはどれか。
- 1.保険料は労働者が負担する。
- 2.通勤中の負傷は対象外である。
- 3.パート職員は給付対象外である。
- 4.治療費の自己負担割合は3割である。
- 5.業務上の事由による障害は対象である。
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正答:5
【解説】労災保険は「労働者を守る最強の盾」
社会保険の中でも、労災保険(労働者災害補償保険)は特別な立ち位置にあります。仕事中や通勤中のケガ・病気に対して、労働者を強力に保護するための制度であり、一般的な健康保険とは保険料の負担者や自己負担の割合が全く異なります。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(事業主が全額負担)
労災保険の保険料は、被保険者(労働者)ではなく「事業主(会社)」が全額負担します。給料から天引きされることはありません。 - 2.誤り(通勤災害も対象)
業務中の「業務災害」だけでなく、家と職場の往復などの「通勤災害」も労災保険の対象に含まれます。 - 3.誤り(すべての労働者が対象)
正社員だけでなく、パート、アルバイト、日雇いなど、雇用形態に関わらず「すべての労働者」が対象となります。 - 4.誤り(自己負担は原則なし)
治療費、薬代、手術費用などは労災保険から全額補償されるため、原則として自己負担はありません(0割)。3割負担となるのは健康保険を利用した場合です。 - 5.正しい(障害補償の対象)
業務上の事由による負傷や疾病だけでなく、治った後に残った「障害」に対しても給付の対象となります。
【頻出】労災保険と健康保険の比較まとめ
| 比較項目 | 労災保険 | 健康保険(医療保険) |
|---|---|---|
| 適用される場面 | 業務中・通勤中のケガや病気 | 業務外(プライベート)のケガや病気 |
| 保険料の負担 | 事業主(会社)が全額負担 | 事業主と労働者で折半(半分ずつ) |
| 治療費の自己負担 | 原則なし(0割) | 原則3割負担 |
| 対象者 | アルバイト含むすべての労働者 | 一定の労働時間・日数を満たす者など |
暗記方法・覚え方のコツ(仕事のケガは会社の責任)
仕事のために働いていてケガをしたのだから、その治療費や保険料は「働かせている会社(事業主)が全額持つべき」というのが労災保険の基本的な考え方です。だから労働者の自己負担はゼロですし、保険料を給料から引かれることもありません。
さいの補足(業務遂行性と業務起因性)
業務災害として認定されるには、2つのハードルをクリアする必要があります。1つ目は「業務遂行性(事業主の支配・管理下にある状態での事故か)」、2つ目は「業務起因性(その仕事をしたことが原因で起きた事故か)」です。例えば、仕事の休憩中に同僚とふざけ合って骨折した場合、事業主の管理下にはいますが仕事が原因ではない(業務起因性がない)ため、労災にはならず健康保険扱いになることが多いです。ただし以下の場合は認定されることもあります。
- 事業場内か
- 施設利用中か
- 業務関連性が残るか
など
問93:ワクチンの種類(生ワクチンと不活化ワクチン)
【問題】
予防接種で不活化ワクチンが使用されているのはどれか。
- 1.黄 熱
- 2.風 疹
- 3.麻 疹
- 4.日本脳炎
- 5.流行性耳下腺炎
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正答:4
【解説】生ワクチンと不活化ワクチンの違い
予防接種に使用されるワクチンには、毒性を弱めた生きた病原体を用いる「生ワクチン」と、感染力をなくした(殺菌・不活化した)病原体やその成分を用いる「不活化ワクチン」があります。国家試験では、どの疾患の予防にどちらの種類のワクチンが使われているかが非常によく問われます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(生ワクチン)
黄熱は、主に海外渡航時などに接種される生ワクチンです。 - 2.誤り(生ワクチン)
風疹は、定期接種(MRワクチンなど)で用いられる生ワクチンです。 - 3.誤り(生ワクチン)
麻疹(はしか)は、風疹と同様に定期接種で用いられる生ワクチンです。 - 4.正しい(不活化ワクチン)
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを不活化させた不活化ワクチンを使用します。定期接種として幼児期から学童期にかけて数回接種します。 - 5.誤り(生ワクチン)
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は、生ワクチンを使用します。
【頻出】主要なワクチンの分類まとめ
| ワクチンの種類 | 対象となる主な疾患 |
|---|---|
| 生ワクチン | 麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、水痘、BCG、黄熱、ロタウイルス |
| 不活化ワクチン | 日本脳炎、インフルエンザ、ポリオ、百日咳、B型肝炎、肺炎球菌など |
暗記方法・覚え方のコツ(生ワクチンのゴロ合わせ)
不活化ワクチンは種類が多すぎるため、数の少ない生ワクチンを覚えて消去法で解くのがセオリーです。
「生の風呂で水浴びて、麻痺、おたふく、黄色
(生=生ワクチン、風=風疹、呂=ロタ、水=水痘、麻=麻疹、痺=BCG、おたふく=流行性耳下腺炎、黄=黄熱)」
一応、一覧も載せておきます
生ワクチン
- 麻疹
- 風疹
- 水痘
- おたふく
- BCG
- 黄熱
- ロタ
不活化
- 日本脳炎
- IPV(ポリオ)
- インフルエンザ
- B型肝炎
- HPV
- 肺炎球菌
さいの補足(予防接種の情報も厚労省HPで!)
予防接種のルール(どのワクチンが定期接種か任意接種かなど)は、新しいワクチンの開発や感染症の流行状況によって数年単位でどんどんアップデートされていきます。例えば、ロタウイルスワクチンも近年になって定期接種化されました。常に最新の情報を「厚生労働省のホームページ」で確認する習慣をつけておくことが非常に重要です。
問94:人口統計(国勢調査と人口動態調査)
【問題】
国勢調査で分かるのはどれか。
- 1.粗死亡率
- 2.平均寿命
- 3.総再生産率
- 4.老年化指数
- 5.合計特殊出生率
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正答:4
【解説】「静態統計」と「動態統計」の違い
公衆衛生学の人口統計では、「国勢調査(人口静態統計)」と「人口動態調査(人口動態統計)」の区別が超頻出です。この2つは調査の目的が全く異なります。
【各選択肢の分類と正誤理由】
- 1.誤り(人口動態統計)
死亡に関する指標です。死亡数は1年間の変化を測る「人口動態統計」から得られます。 - 2.誤り(生命表)
平均寿命は、人口動態統計の死亡データなどを基に作成される「生命表」から得られます。(平均寿命、平均余命) - 3.誤り(人口動態統計など)
総再生産率(1人の女性が一生に産む「女の子」の数)は、出生に関する指標です。「人口動態統計」の出生データをもとに算出されます。 - 4.正しい(国勢調査:人口静態統計)
老年化指数は「老年人口 ÷ 年少人口 × 100」で計算されます。これらの年齢別人口のデータは、一時点での人口規模を測る国勢調査(人口静態統計)から直接得られます。 - 5.誤り(人口動態統計)
合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数の目安)も、出生に関する指標です。分子となる出生数は「人口動態統計」から得られます。
【頻出】静態統計と動態統計の比較まとめ
| 分類 | 主な調査名 | 管轄と頻度 | 把握できる内容 |
|---|---|---|---|
| 静態統計 | 国勢調査 | 総務省(5年ごと) | 一時点の総人口、年齢構成、世帯数など |
| 動態統計 | 人口動態調査 | 厚生労働省(毎年) | 出生、死亡、死産、婚姻、離婚の5事象 |
暗記方法・覚え方のコツ(写真かビデオか)
静態統計(国勢調査)は「ある一瞬を切り取った写真」です。10月1日時点での「いま何人いるか?何歳か?」を測ります。
一方、動態統計(人口動態調査)は「1年間の変化を記録したビデオ」です。1年間で「何人生まれたか?何人亡くなったか?」という出来事の積み重ねを測ります。
「出生・死亡・死産・婚姻・離婚」の5つはすべて1年間の出来事なので動態統計だと一瞬で見分けられます。
国勢調査(静態)
→ 人口の構造
- 総人口
- 年齢構成
- 性比
- 老年人口割合
- 老年化指数
人口動態統計(動態)
→ 人口の変化
- 出生率
- 死亡率
- 乳児死亡率
- 死産率
- 合計特殊出生率
さいの補足(弱点補強:公衆衛生データのアップデート)
今回の問題に出た「合計特殊出生率」や、問90で解説した「有訴者率」など、公衆衛生の各種統計データは毎年(または数年ごとに)発表され、順位や数値が常に変動しています。繰り返しになりますが、古い参考書を丸暗記せず、厚生労働省」や「総務省」の公式ホームページで最新の統計情報や主要な数値をチェック(アップデート)しておきましょう。
午後:公衆衛生学・関係法規(問90〜94)
問90:WHOによる健康の定義
【問題】
世界保健機関〈WHO〉による1948年の憲章では、健康を「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、( a )にも、そして( b )にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義している。aとbの組合せで正しいのはどれか。
- 1.社会的 ―― 医学的
- 2.身体的 ―― 環境的
- 3.心理的 ―― 経済的
- 4.精神的 ―― 社会的
- 5.知性的 ―― 経済的
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正答:4(a:精神的、b:社会的)
【解説】健康を構成する「3つの要素」
世界保健機関(WHO)憲章の前文における、非常に有名な「健康」の定義です。原文の英語では以下のように記されています。
“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”
単に病気がない状態のことではなく、「肉体的(身体的:physical)」「精神的(mental)」「社会的(social)」の3つの側面すべてにおいて、良好で満たされた状態(well-being)であることを健康と定義しています。
【各選択肢の正誤理由】
- 1、2、3、5.誤り
「医学的」「環境的」「経済的」「知性的」「心理的」といった言葉は、WHOの健康の定義の3要素には含まれません。 - 4.正しい
mentalの和訳である「精神的」、socialの和訳である「社会的」の組み合わせが正解となります。
【頻出】健康の3要素の具体的なイメージ
| 要素 | 英単語 | 満たされた状態(well-being)の例 |
|---|---|---|
| 肉体的(身体的) | physical | 病気や障害がなく、体力があり元気に活動できる状態。 |
| 精神的 | mental | 過度なストレスがなく、心が穏やかで充実感がある状態。 |
| 社会的 | social | 家庭、学校、職場などの人間関係や環境が良好で、社会に参加できている状態。 |
暗記方法・覚え方のコツ(体・心・人)
難しく考えず、「体(肉体的)」と「心(精神的)」と「人との繋がり(社会的)」の3つが揃ってはじめて健康だ、とシンプルにイメージしておきましょう。お金(経済的)や頭の良さ(知性的)はWHOの定義には入っていません。
さいの補足(健康観のアップデートとQOL)
この「すべてが満たされた状態(well-being)」というWHOの定義は素晴らしい理想ですが、現実には加齢による不調や、慢性疾患、障害を持つ人々も多くいます。そのため近年では、病気や障害を完全に無くすことだけを目指すのではなく、病気と共存しながらでも自分らしく生きる「QOL(Quality of Life:生活の質)」をいかに高めていくか、という新しい健康観が重要視されています。
問91:四大公害病と原因物質
【問題】
四日市喘息の原因物質はどれか。
- 1.ヒ素
- 2.硫黄酸化物
- 3.カドミウム
- 4.メチル水銀
- 5.ダイオキシン類
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正答:2
【解説】日本の環境行政の出発点「四大公害病」
戦後の高度経済成長期に発生した「四大公害病」は、現在の日本の環境保健や公害対策がスタートするきっかけとなった極めて重大な出来事です。国家試験でも、原因物質と発生地域、疾患名の組み合わせがよく問われます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(慢性ヒ素中毒)
ヒ素は、宮崎県の土呂久(とろく)や島根県の笹ヶ谷などの鉱山から排出され、慢性ヒ素中毒(皮膚症状や呼吸器障害)の原因となりました。 - 2.正しい(四日市喘息)
三重県四日市市の石油化学コンビナートから排出された大気汚染物質である「硫黄酸化物(SOx)」が原因となり、周辺住民に深刻な集団喘息障害を引き起こしました。 - 3.誤り(イタイイタイ病)
カドミウムは、富山県の神通川流域で発生した「イタイイタイ病」の原因物質です。腎障害や、骨がもろくなる骨軟化症を引き起こします。 - 4.誤り(水俣病・新潟水俣病)
メチル水銀(有機水銀)は、熊本県の水俣湾や新潟県の阿賀野川流域で発生した「水俣病(新潟水俣病)」の原因物質です。工場排水から海や川に流れ出て魚介類に蓄積し、重篤な中枢神経障害を引き起こしました。 - 5.誤り(カネミ油症事件など)
ダイオキシン類(特にPCDF)は、PCBに汚染された食用油によるカネミ油症事件で問題となった物質です。
【頻出】四大公害病の組み合わせ一覧
| 公害病名 | 原因物質 | 発生地域 |
|---|---|---|
| 水俣病 | メチル水銀 | 熊本県(水俣湾沿岸) |
| 新潟水俣病(第二水俣病) | メチル水銀 | 新潟県(阿賀野川流域) |
| イタイイタイ病 | カドミウム | 富山県(神通川流域) |
| 四日市喘息 | 硫黄酸化物(SOx) | 三重県(四日市市) |
暗記方法・覚え方のコツ(大気か水か)
四大公害病のうち、四日市喘息だけが唯一の「大気汚染(煙突からの煙)」で、残りの3つ(水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病)はすべて「水質汚濁(川や海への工場排水)」による公害です。
空気を吸って肺や気管支がやられるから「喘息」なのだと直感的に分類しておきましょう。
さいの補足(有機水銀と無機水銀の違い)
水俣病の原因はただの水銀ではなく「メチル水銀」です。メチル水銀は「有機水銀」の一種であり、脂に溶けやすいため、プランクトンから小魚、大きな魚へと食物連鎖を通じて体内に高度に濃縮(生物濃縮)されます。
これが人間の脳(中枢神経)に入り込むことで、ハンター・ラッセル症候群と呼ばれる深刻な感覚障害や運動失調を引き起こします。
問92:精神保健福祉センターの役割
【問題】
精神保健福祉センターで正しいのはどれか。
- 1.設置主体は市町村である。
- 2.入院治療を行う施設である。
- 3.地域保健法に規定されている。
- 4.精神障害者への障害年金の給付を行う。
- 5.精神保健福祉の知識について普及・啓発を行う。
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正答:5
【解説】精神保健福祉センターとは?
精神保健福祉センターは、精神保健福祉法を根拠として各都道府県および政令指定都市に設置される、精神保健分野の「専門的・技術的な中核機関」です。保健所など地域の第一線機関をバックアップし、より複雑で専門的な業務を担います。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(都道府県・指定都市)
設置主体は「都道府県」および「政令指定都市」です。市町村ではありません。 - 2.誤り(医療機関ではない)
相談支援、手帳の判定、普及啓発などを行う行政機関(専門機関)です。精神科病院のような入院治療は行いません。 - 3.誤り(精神保健福祉法)
根拠法は「精神保健福祉法」です。地域保健法に規定されている代表的な機関は「保健所」や「市町村保健センター」です。 - 4.誤り(年金給付は年金機構)
精神障害者保健福祉手帳の判定業務などは行いますが、障害年金の給付(お金の支給事務)を行うのは日本年金機構です。 - 5.正しい(普及・啓発)
精神保健福祉に関する知識の普及・啓発は、本センターの主要な業務の一つです。
【頻出】保健所との比較まとめ
| 比較項目 | 精神保健福祉センター | 保健所 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 精神保健福祉法 | 地域保健法 |
| 設置主体 | 都道府県・指定都市 | 都道府県・指定都市・中核市・特別区 |
| 役割のイメージ | 精神保健の「高度な専門機関・判定機関」 | 公衆衛生全般の「地域の第一線機関」 |
暗記方法・覚え方のコツ(専門医とクリニック)
地域の住民が最初にアクセスする身近なクリニック(第一線機関)が「保健所」で、そこでは対応しきれない複雑なケースや高度な判定業務を引き受ける専門病院(中核機関)が「精神保健福祉センター」だとイメージすると関係性が分かりやすくなります。
さいの補足(法律や制度の最新情報を確認!)
関係法規の分野は、社会情勢に合わせて法律が頻繁に改正されます。過去には「精神保健法」から「精神保健福祉法」への名称変更など、制度の枠組みそのものが変わることもありました。
問93:受動喫煙防止と健康増進法
【問題】
受動喫煙の防止を規定している法律はどれか。
- 1.環境基本法
- 2.健康増進法
- 3.健康保険法
- 4.地域保健法
- 5.医薬品医療機器等法
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正答:2
【解説】2020年改正でルールが厳格化!
国民の健康維持と生活習慣病予防を目的とした「健康増進法」には、望まない受動喫煙を防止するための規定が盛り込まれています。特に2020年(令和2年)4月の改正健康増進法の全面施行により、多くの施設で原則屋内禁煙となったほか、「20歳未満は喫煙目的室・加熱式たばこ専用喫煙室への立入り禁止」、違反者への罰則(50万円以下の罰金など)が定められ、これまでの努力義務から大きく厳格化されました。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(公害防止など)
環境基本法は、公害の防止や自然環境の保全など、国の環境対策の基本となる事項を定めた法律です。 - 2.正しい(受動喫煙防止など)
上記の通り、健康増進法には受動喫煙の防止が規定されています。このほか「国民健康・栄養調査」の実施根拠となっていることも重要事項です。 - 3.誤り(公的医療保険)
健康保険法は、働く人とその家族が病気やケガをした際に医療費の給付などを行う「公的医療保険制度」を定めた法律です。 - 4.誤り(保健所の設置など)
地域保健法は、保健所や市町村保健センターの設置など、地域保健対策の基本を定めた法律です。 - 5.誤り(医薬品の安全など)
医薬品医療機器等法(旧:薬事法)は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などの品質、有効性、安全性を確保するための法律です。
【頻出】よく出る関係法規とその目的
| 法律名 | 国試で問われる代表的なキーワード・目的 |
|---|---|
| 健康増進法 | 受動喫煙の防止、国民健康・栄養調査 |
| 地域保健法 | 保健所、市町村保健センターの設置 |
| 精神保健福祉法 | 精神保健福祉センターの設置、精神障害者の保護 |
| 労働基準法 | 労働時間、休日、賃金などの最低基準 |
暗記方法・覚え方のコツ(健康を増進するための2本柱)
「健康増進法」と聞いたら、反射的に「受動喫煙の防止」と「国民健康・栄養調査」の2つがセットで浮かぶようにリンクさせておきましょう。タバコの煙をなくし、国民が何を食べているか調べることで健康を「増進」する、とイメージすると頭に残りやすいです。
さいの補足(弱点補強:労働安全衛生法との違い)
受動喫煙の防止を定めている法律として、実は「労働安全衛生法」にも職場の受動喫煙防止対策についての規定があります。しかし、こちらはあくまで「快適な職場環境を形成するための努力義務」にとどまっています。対して、健康増進法は「罰則付きの義務」である点が大きく異なります。国試で「規定している法律はどれか」とシンプルに問われた場合は、より強力なメインの根拠法である「健康増進法」を迷わず選んでください。
問94:医療倫理に関する宣言
【問題】
ヘルシンキ宣言で提唱されたのはどれか。
- 1.バリアフリー
- 2.セカンドオピニオン
- 3.ノーマライゼーション
- 4.ユニバーサルデザイン
- 5.インフォームドコンセント
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正答:5
【解説】被験者を守るためのヘルシンキ宣言
世界医師会(WMA)が採択した「ヘルシンキ宣言」は、ヒトを対象とする医学研究(人体実験や臨床試験など)における倫理的原則を定めたものです。研究に参加する被験者の人権と安全を守るため、十分な説明とそれに基づく自発的な同意、すなわち「インフォームド・コンセント」が強く提唱されました。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(バリアフリー)
高齢者や障害者が生活する上での物理的・心理的な障壁(バリア)を取り除く考え方です。 - 2.誤り(セカンドオピニオン)
主治医以外の医師に意見を求めることです。患者の自己決定権などを定めた「リスボン宣言」に深く関連します。 - 3.誤り(ノーマライゼーション)
障害の有無に関わらず、誰もが社会の一員として普通の生活を送れる社会を目指す理念です。 - 4.誤り(ユニバーサルデザイン)
すべての人が最初から利用しやすいように施設や製品を設計するという考え方です。 - 5.正しい(インフォームドコンセント)
上記の通り、ヘルシンキ宣言の最重要キーワードです。
【頻出】医療倫理の3大宣言まとめ
| 宣言名 | 主な対象と内容 | 国試のキーワード |
|---|---|---|
| ヘルシンキ宣言 | 「医学研究」における被験者の保護 | インフォームド・コンセント |
| リスボン宣言 | 「日常医療」における患者の権利 | 自己決定権、セカンドオピニオン |
| ジュネーブ宣言 | 「医師」の職業倫理(ヒポクラテスの誓いの現代版) | 医師の義務、人道主義 |
暗記方法・覚え方のコツ(誰を守る宣言か?)
宣言問題は「誰に向けられたものか」で簡単に区別できます。新しい薬のテストなどで「モルモットのように扱われる被験者」を守るのがヘルシンキ宣言。普段の病院通いで「医師の言いなりにならないよう患者」を守るのがリスボン宣言。そして「医者自身の心構え」を説いたのがジュネーブ宣言です。
さいの補足(弱点補強:ニュルンベルク綱領からの歴史)
なぜヘルシンキ宣言が生まれたかという歴史的背景も非常に重要です。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツがユダヤ人らに対して非人道的な人体実験を行いました。その反省から、戦後の裁判で「被験者の自発的な同意が絶対に不可欠である」とする『ニュルンベルク綱領(1947年)』が生まれました。この精神を医学界が受け継ぎ、さらに発展させて文書化したものが『ヘルシンキ宣言(1964年)』です。この歴史の繋がりを知っておくと、インフォームド・コンセントの重みがより深く理解できますね。
公衆衛生学の解説まとめは以上です
第72回の公衆衛生学(午前・午後 問90〜94)、お疲れ様でした。暗記要素が多くて苦手意識を持つ方も多い分野ですが、歴史的背景(なぜその法律や宣言ができたのか)を知ることで、丸暗記の労力をグッと減らすことができます。
そして何度も繰り返しますが、この分野で確実に得点するための最大の鉄則は「厚生労働省や総務省、環境省などの公式ホームページで最新の情報を確認する」ことです。試験直前には、もう一度各種統計データや法律の変更点などをチェックしておくことを強くおすすめします!
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