尿沈渣って何をどうしたいいの?細胞たくさん種類があって全然わからない!
沈渣くらいさっさと見れるようになれっていうけど、そんな簡単にいかないよ・・・。
僕が初めて尿沈渣を見る時は本当にこんな感じでした。
学生の頃にそれなりに経験を積んでいる人はここまでならないかもしれませんが、僕は本当に経験が少なく、右も左もわからない状態でした。
この記事は、そういった人向けに尿沈渣を見るコツ・ノウハウを紹介していこうと思います。
☝画像を用意しましたが、画質が極めて悪いため僕がよく見るサイトのURLを添付しておきます。
- 僕が勤めている施設のやり方であったり、教科書の内容と外れた表記もあるかもしれません
- あくまで新米臨床検査技師向けの尿沈渣のコツを伝えるのが本記事の目的ですので参考程度にお願いします。
- 中級者以上の方には物足りない内容となっています。
Contents
尿沈渣の参考書籍
尿沈渣の検査を始めて5年、もし五年前の自分にアドバイスできるならこう言います。
「教材をケチるな、経験も大切だけど教材も大切」だと。
一番おススメの教材「そこが知りたい尿沈渣検査」のレビューはこちら
この事実に気付くまで少々の時間がかかりました。僕の職場はアトラスがあるのでそれに甘えていました。アトラスと経験でどうにかなると思っていましたが、甘かったです。
やはり、専門的な考え方が重要なので、教材は熟読すべきでした。
初めての尿沈査の見方
- 尿カップにある尿をよく混ぜる(沈殿物を浮遊させる)
- 遠沈管に10mL程分注する
- 1500rpmで10分間遠心する
- デカントで上清を捨て、沈査部分を残す(3秒逆さまにして200μL程残す)
- スポイト等で沈査成分をよく混ぜる
- スライドグラスに無染色とS染色の2パターン滴下(約15μL)し、カバーガラスを載せる(尿沈渣部分と染色液の割合は4:1)
- 弱拡大(100倍)で全体を見る
- 強拡大(400倍)で1視野ずつ見る(20-30視野)
- 無染色でカウント報告する
教科書にもこういった内容で記載があると思います。
要は
- 遠心前に検体をよく混ぜて、適量を正しく遠心する
- 沈渣成分と染色液の2パターンで見落としを無くす
- 弱拡大で全体を把握して印象付けた上で、強拡大で確認
- 無染色で報告
これが簡単な手順の流れってことだね。
尿沈渣を見るコツ
尿沈渣を見る上で、1番のキーとなるのが尿一般です。
加えて、性別や年齢も加味することで、顕微鏡を見ずともすでに尿沈渣の結果がうっすら見えてきます。
しかし、これでは結果の捏造になってしまうので、当然ながらしっかりと見ていきます(笑)
- 顕微鏡の使い方(コンデンサ、開口絞り、視野絞り)
- 尿一般の潜血、たんぱく、糖などを事前にしっかり把握しておく
- 混濁やにおいも確認する(細菌尿だと嫌でもにおいはわかります)
- 女性は扁平上皮多め=常在菌の可能性あり
- 男性(中年以上の潜血は注意)
顕微鏡の使い方ですが、尿沈査の場合は、開口絞りは8~9割絞ります。(暗め)明るいと細菌などを見落とします。
また、視野絞りに関しては、見やすい明るさに調節しましょう。
患者の属性(年齢、性別)と尿一般の検査結果はしっかり把握しておきましょう。
また、検体の出どころ(受診している科)がわかるのであれば、そこにもヒントが隠れています。泌尿器はもちろん腎臓内科などでは異常細胞が出現している可能性がUPします。
さて、それでは次は尿沈渣を実際に見るステップにいきましょう。
尿沈渣を見るにあたって最低限鑑別が必要なもの
- 赤血球
- 白血球
- 扁平上皮
- 尿路上皮(移行上皮)
- 尿細管上皮
- 細菌
- 真菌
- 円柱類
- 結晶類
僕がこれらの細胞で、沈査を初めて見た時や、研修期間時に悩んだ事や鑑別の助けになったポイント等を紹介していこうと思います。
赤血球鑑別のポイント・コツ

- 顕微鏡の調節が甘いと気泡との鑑別が難しい
- 脂肪球やシュウ酸カルシュウム結晶、酵母様真菌との鑑別が必要
- サーベイでは毎回糸球体性か非糸球体性の鑑別を求められる
- S染色では無~赤色と決まっていない
- 尿一般で̟±であれば1~4以上で取る事が多い(なければ取らない)
まずは顕微鏡の使い方を押さえましょう。
僕は顕微鏡を学校を卒業して10年近く触っていなかったので、使い方が滅茶苦茶でした(笑)ピントがしっかりあっていないと、非糸球体性の赤血球のように円形のものと、気泡は区別がつかないです。慣れてくると一目でわかるようになりますが、最初はここがわかりません。一般の結果と照らし合わせて慎重に見てみましょう。
また、赤血球に類似した沈渣成分もあります。

シュウ酸カルシウム結晶はPHなどによってその姿を換えますが、中には赤血球に類似した球形を呈するものもあります。しかし、よくみるとシュウ酸カルシウム結晶はドーナツっぽく見えるので、鑑別が付きやすいかと思います。
酵母様真菌も、間違えやすい沈査成分の一つです。
酵母様真菌が大量に(2+)以上出ている検体では間違えないと思いますが、数視野に1個ポツンとあるようなケースが危険です。
酵母様真菌の特徴ですが、赤血球に比べて大小不の楕円形です、染色性はあまり無いのですが、赤血球も染まっていないケースも多々あるので染色はあてにしないほうが良いでしょう。
また、サーベイでは毎年確実に糸球体性と非糸球体性の鑑別が出題されています。
糸球体性は大小、形状も不同であり、ミッキーマウスのような見た目をした赤血球が代表的でしょう。
非糸球体性の赤血球は、大きさや形が揃っていてるので、そこが鑑別のポイントになるかと思います。
色んなパターンがあるので、沈査オーダーに糸球体性か非糸球体性の鑑別が無ければ、特に気にせずカウントしていって大丈夫です。(少なくともうちの病院は鑑別を必要としていません)
まずは、尿一般の潜血みて、±以上で赤血球をカウントする意気込みで見てみてください。
中には、尿一般潜血(2+)とかで顕微鏡を見ると赤血球が無いパターンや、尿一般は(-)なのに沈渣は各視野に散在していることもあります。
詳しくは教本に記載があるので、気になる方は見てみて下さいね。
白血球鑑別のポイント・コツ
- PHや浸透圧によって形状を変える
- 球状、棒状、短冊状、アメーバ様など形は不定
- 生細胞と死細胞でも見えやすさは違う(生>死)
- 好中球、リンパ球、好酸球、単球があるが、その鑑別は慣れてからでよい
- 尿細管上皮と類似している
- 膣トリコモナスと類似している
尿中にも白血球は存在し、その形状は尿のPHや浸透圧、生細胞、死細胞によってさまざまです。
病院と検査センターでの決定的な違いは生細胞と死細胞の違いだと思う。病院の尿沈渣は外来などでは極めて新鮮なため、貪食像や偽足をだしている所を見る事も多い。
また、白血球の内部がうごめいているのもよく観察できます。
逆に検査センターでは採取から時間が経っているため、まず白血球は生きていないです。
条件が重なると白血球の観察自体も難しくなることもあるため、やはり新鮮な検体での鏡検が望ましと思います。
さて、白血球はS染色で核が青~紫に染まり、分葉しているので鑑別は簡単です。
しかし、注意すべきは尿細管上皮です。
慣れたら尿細管上皮と白血球は似ていないと思うのですが、最初は似ていると思ってしまうんです。
鑑別のポイントですが、白血球は細胞質が円形でふわふわした感じであり、核は青紫。
尿細管上皮は細胞質が良く染まるため基本的にはピンクで少しザラザラした感じ、核は青みが強いです。そして一番の特徴はその核の青みがギラギラしている所です。
僕が尿細管上皮と白血球の鑑別ができるようになったのは、この「ギラギラした感じ」を見る様になってからだったと思います。
膿尿では白血球が大量にあり、染色性がいつもより悪くなる事もあるので、注意してくださいね。

扁平上皮鑑別のポイント・コツ

- 大きさ60~100μm(表層型)20~70μm(中層~深層型)
- 女性は扁平上皮が多い(外陰部、膣部由来)
- 細菌尿では扁平上皮の出現量が増える
- 表層型、中層型、深層型からなる
膣トリコモナス原虫や細菌感染などによる尿道炎、尿道の結石症などで多く出現します。
扁平上皮は比較的鑑別しやすい細胞だと思います。
注意するとすれば、表層型と中層、深層型では形状が変わってくるという事くらいでしょうか。
形状は表層型は特に定まってはいないが、薄い。ただただ薄い感じがします。
そして細胞質は薄いピンク色、核は青っぽく染まります。そして核は小さめです。
しわが見えたり、折り込みが見えるのも特徴でしょう。
中層型と深層型は、表層型に比べると小さめ。
形は円形か楕円っぽい感じです。
染色は、細胞質は表層と同じく薄いピンクで、核は青です。
中層と深層型は、薄さは感じないですが、丸っこくて、きれいな見た目が中層~深層の扁平上皮細胞です。
尿路上皮鑑別のポイント・コツ


- 大きさ60~150μm(表層型)、中層~深層型(15~60μm)
- 細胞質は辺縁がカクカクしている感じ
- 表面構造は少しザラザラしている感じ
- 多核(2~3核)が多い
- 核は少し大きい
膀胱炎、腎盂腎炎、尿管結石、腎盂・腎杯から内尿道口までの炎症、カテーテル挿入による損傷などで多く出現します。
尿路上皮は、最初は扁平上皮と尿細管上皮との鑑別が難しいかもしれません。
多核であったり、角ばった尿路上皮の特徴が強く出ている細胞であれば簡単ですが、核が一つで雰囲気が扁平上皮だったり、中層型や深層型の尿路上皮は尿細管上皮にも似ています。
一つの細胞で判断せずに、多くの視野で確認し、細胞質や核の特徴をよく観察してみてください。
尿路上皮の細胞質はややざらついた感じで、核は大きめで多核が多いのが特徴です。
中層型や深層型も細胞質こそ尿細管上皮に似ていますが、核が違うのでそこが鑑別ポイントだと思います。
尿細管上皮鑑別のポイント・コツ

- 大きさ10~35μmほど(小さい)
- 形状は様々
- 核がS染色で青く染まり、ギラギラして見える
- 白血球と混同しない
- 細胞質はギザギザした感じ
- 表面構造は顆粒が集まった感じ
糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎硬化症、ループス腎炎、のう胞腎などで多く出現します。
尿細管上皮は、慣れるまでは白血球と尿路上皮(中層~深層型)との鑑別が難しいです。
鑑別ポイントは「ギラギラして見える、細胞質のみでザラザラした小さい細胞」といったところでしょうか。
細胞質が特徴的で、S染色ではピンク色の顆粒成分が凝集したように見えます。
また、核も良く染まります。青~青黒っぽく染まり、大きさは小さいのでそこが尿路上皮との鑑別ポイントになるでしょう。
細菌鑑別のポイント・コツ

- 開口絞りは8~9割絞る事(暗め)
- 形状は球菌、桿菌がほとんどだが、フィラメント状の細菌もある
- 臭いので沈査を見る前からわかる事もしばしばある
- 無晶性塩類との鑑別が難しい
球菌、桿菌や薬剤によって変形した変形細菌が観察できます。
細菌は、尿の外観で混濁(+)であったり、ツンとする独特の匂いがあると陽性の場合が多いです。
また、扁平上皮の細胞質をよく観察すると、常在菌が見られることがよくあります。従って、扁平上皮が多い沈渣では細菌がいることが多いです。ただし、この場合だと(2+)以上となることはほとんどありません。
細菌と無晶性塩類の鑑別が難しく、新鮮な尿であれば細菌の運動を見たり、尿の匂いだったりで鑑別がききますが、時間が経った尿だと匂いくらいしか判断材料がありません。
慣れている先輩や上司に相談をするか、グラム染色ができる環境であればグラム染色をすると確実に鑑別することができます。
真菌鑑別のポイント・コツ

- 酵母様真菌
- 赤血球や、脂肪球、気泡に似ているがよく見ると形状が違う
真菌は、細菌と比べると出現頻度は低いですがよく見る成分です。
抵抗力の落ちた老人などに多く見られるので、入院患者の尿などはかなり出現頻度が高い印象です。
赤血球との鑑別が難しいですが、色調は灰白色~極々薄い緑色をしており、形状は円形よりも楕円形が多いです。
また、2つ連なっている酵母様が多く、慣れてくるとすぐに発見できるようになるでしょう。
一見、何も無い沈渣成分でもよく見ると酵母様真菌が散在していることはあるので、多くの視野全体をしっかり見るようにしましょう。
糸状の真菌は、酵母様の球体からポコポコと糸状の桿状体が伸びて枝分かれしているのですぐにわかると思います。
円柱類鑑別のポイント・コツ
- ガラス円柱とアーチファクトを鑑別すること
- 白血球円柱や上皮円柱などの条件を知っておくこと
- ろう様、顆粒円柱は、上皮円柱を経て出現する
- 尿蛋白が陰性なのに、円柱が大量に見える時はアーチファクトを疑う
- ろう様円柱など、極めて診断に直結するような細胞は出現しても、そのまま報告するのではなく、相談やカルテを見て確認をしてから報告したほうが良い
円柱類は尿細管腔を鋳型として形成される有形成分です。
円柱の基本成分は、尿細管上皮細胞から分泌される「Tamm-Horsfall(T-H)ムコ蛋白と少量の血漿蛋白とがゲル状に凝固沈殿したものです。
つまり、尿一般で蛋白が(+)になる時に多く出現する特徴があります。
アーチファクトとの鑑別が最初は難しいので、尿一般の蛋白の結果を参考にするといいかもしれません。(蛋白(-)でも円柱が出ることはあるので、参考程度)
円柱の内部に何の細胞も無いものをガラス円柱、上皮が3個以上あるものを上皮円柱、顆粒成分が1/3以上封入されているものを顆粒円柱としている。
また、顆粒円柱からさらに長期閉塞を経てろう様円柱が出現する。
赤血球が3つ以上封入で赤血球円柱、白血球が3つ以上封入で白血球円柱。
脂肪顆粒が3つ以上封入で脂肪円柱。
結晶類鑑別のポイント・コツ
- PHで出現する結晶は決まっている
- よく見るのはシュウ酸カルシウム結晶とリン酸アンモニウムMg結晶
- 異常結晶は基本的には出現しないので、出現時には一人で確定せずになるべく相談する事(チロシン、コレステロール、シスチン、2,8-DHA、ビリルビン、ロイシンなど)
結晶は病院と検査センターでは状況が大きく変わってきます。
病院は提出されてすぐに遠心、鏡検するので結晶はあまり見かけないのですが(もちろん出るときは出る)、検査センターは、採尿から時間が経っており、しかも冷蔵保存しているので結晶が析出してきます。
結晶があるのとないのでは、他の沈渣成分の鑑別がしにくくなるので、沈渣を除去する手間が増えます。
ですので、結晶成分を鑑別し、除去するために酢酸や塩酸、水酸化ナトリウムなどを用いて除去してから鏡検を行います。
まとめ
尿沈渣は、上記項目以外にもまだまだたくさんの細胞が存在します。
僕も未だにわからない細胞に出くわしたり、異形細胞が出るとドキッとすることもあります。
今回紹介した細胞はルーチンで頻繁に出会うものばかりなので、最低限これらは鑑別できるようになってください。
新米技師や、異動で初めて尿沈渣を担当する!という方にこの記事が少しでも役立てば幸いです。
上達のコツはとにかく目を慣らす事と、細胞に対する知識です。
ウェブでも十分に知識は得られますが、やはり画像となると書籍の方が見やすいです。
尿沈渣を早く習得するためには参考書を一冊程度はもっておくべきだと思います。