こんにちは、臨床検査技師のさいです。
今回は第72回臨床検査技師国家試験の午後問題より「臨床生理学(問16〜28)」の全問解説をお届けします。
午後の生理機能検査分野は、午前と同様に一歩踏み込んだ応用力や、疾患と波形・画像を論理的に結びつける力が試される実践的な内容になっています。今回は、採点除外となった不適切問題(問28のIMT測定)も含まれており、正しい知識を持っていなければ現場で混乱してしまうような問題も出題されました。
単なる語句の暗記にとどまらず、患者さんの体の中で何が起きているのかという物理的なメカニズムから病態を推測できるよう、「筋トレ(僕がハマっているので)と水風船」や「マラソン大会」といった分かりやすい例えや図解イメージをたっぷり交えて解説を作成しました。
解説を読んで分かりにくい点などがございましたら、各SNSのDM等で気軽にお声がけください。皆様の国試合格に少しでも貢献できれば嬉しいです。
※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第72回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。
第72回 臨床検査技師国試 午後【臨床生理学】
全選択肢の正誤理由と解説まとめ
問16:疾患と超音波所見の組合せ
【問題】
疾患と超音波所見の組合せで誤っているのはどれか。
- 1.高血圧性心疾患 左室の求心性肥大
- 2.心房中隔欠損症 右房の拡大
- 3.僧帽弁狭窄症 僧帽弁のドーミング
- 4.大動脈弁狭窄症 左室壁の菲薄化
- 5.肺高血圧症 右室の拡大
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正答:4
【解説】心臓への負荷の種類と心筋の変化ルール
心エコー検査において、各疾患が心臓にどのような物理的負荷をかけるかを理解することがポイントです。負荷には、高い圧力に抗う「圧負荷」と、血液の量が増える「容量負荷」の2種類があり、それぞれ心筋の変化パターンが決まっています。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.正しい(圧負荷による肥大)
高血圧性心疾患では、全身の血圧(後負荷)が高いため、左心室は強い圧力に逆らって血液を送り出す必要があります。左室壁全体が均一に分厚くなる「求心性肥大」を起こします。 - 2.正しい(容量負荷による拡大)
心房中隔欠損症(ASD)では、左心房から右心房へと血液が漏れ出すため、右心系に流れ込む血液の量(容量負荷)が増加します。これにより、右心房や右心室の拡大がみられます。 - 3.正しい(MS特有の弁運動)
僧帽弁狭窄症(MS)では、弁の先端が癒着して開きにくくなります。拡張期に左心房からの血液に押されて、弁の根元が左心室側へドーム状にぽっこり膨らむ「ドーミング(Doming)現象」が特徴的です。 - 4.誤り(左室壁は肥厚する)
大動脈弁狭窄症(AS)では、左心室からの出口が狭くなるため、強い圧力をかけないと血液を送り出せません(圧負荷)。したがって、1の高血圧と同様に左室壁は「肥厚(肥大)」します。選択肢の「菲薄化(薄くなること)」は心筋梗塞の陳旧期などでみられる所見です。 - 5.正しい(右室の圧・容量負荷)
肺高血圧症では、肺動脈の圧力が異常に高くなるため、肺へ血液を送る右心室に強い負荷がかかります。これに耐えるために、右心室や右心房が著しく拡大します。
【頻出】圧負荷と容量負荷の比較まとめ
| 負荷の種類 | 主な原因疾患 | 心エコーの代表的所見 |
|---|---|---|
| 圧負荷(高い圧力に抗う) | 大動脈弁狭窄症(AS)、高血圧症 | 心筋の肥厚(壁が厚くなる) |
| 容量負荷(血液の量が増える) | 心房中隔欠損症(ASD)、弁逆流症など | 心腔の拡大(部屋が広くなる) |
暗記方法・覚え方のコツ(筋トレと水風船)
言葉の響きで無理に暗記するのではなく、心臓を「筋肉でできたポンプ」として物理的にイメージするのが最も確実で忘れにくい方法です。
1. 圧負荷は「筋トレ(壁が分厚くなる)」
大動脈弁狭窄症(AS)や高血圧症では、血液を押し出す先の「扉が重い・狭い」状態になります。心臓はなんとか血液を押し出そうと、毎日ハードな筋トレをしているのと同じ状態になるため、心筋の壁がムキムキに分厚くなります(=肥大・肥厚)。
2. 容量負荷は「水風船(部屋が伸びて広がる)」
心房中隔欠損症(ASD)や弁の逆流症では、本来よりも多くの血液が部屋の中に流れ込んでダブついてしまいます。溢れそうな血液をなんとか溜め込むために、心臓の部屋は水風船のようにゴムを伸ばして容量を確保しようとします。そのため、壁が厚くなるのではなく、部屋そのものがパンパンに広がります(=拡大)。
- 高い圧力に逆らう(圧負荷) = 壁が分厚くなる(肥厚・肥大)
- 大量の血液を溜め込む(容量負荷) = 部屋が広がる(拡大)
さいの補足(弱点補強:右室圧負荷とD-shape)
選択肢5の肺高血圧症のように、右心室の圧力が極端に高くなると、本来はきれいな円形をしている左心室が、室中隔を介して右側からギューッと押されてしまいます。その結果、左心室の短軸像がアルファベットの「D」の形に変形する「D-shape(ディー・シェイプ)」という現象が観察されます。
問17:パルスドプラ法によるE/Aの計測部位
【問題】
心尖部長軸像(別冊No. 3)を別に示す。パルスドプラ法によるE/Aの計測部位はどれか。
- 1.①
- 2.②
- 3.③
- 4.④
- 5.⑤
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正答:2
【解説】血流のスピードを最も正確に測る「ドア」の位置
E/A(イー・オーバー・エー)は、心室が拡張期にどれくらいスムーズに血液を吸い込めるか(左室拡張能)を評価する重要な指標です。この検査では、心尖部断面(心尖部長軸像や四腔像など)において、左心房から左心室へと血液が流れ込むスピードをパルスドプラ法で計測します。
【別冊画像(No.3)の解剖と各番号の意味】
- 1.誤り(①:左心房)
ここは肺から戻ってきた血液が一時的にストックされる部屋(左心房)です。まだ部屋の中にいる状態なので、流れ込むスピードを測る場所としては不適切です。 - 2.正しい(②:僧帽弁口部)
ここが左心室への入り口のドア(僧帽弁の先端部分)です。狭いドアを通り抜ける瞬間が最も血流スピードが速く明確になるため、E波・A波を計測する際の関心領域(サンプルボリューム)は必ずここに置きます。 - 3.誤り(③:左心室)
血液が流れ込んでくるメインの部屋(左心室の中心部)です。ドアから離れてしまうと血流が拡散してしまい、正確なピーク速度が測れません。 - 4.誤り(④:大動脈弁 / 左室流出路)
ここは左心室から全身へ血液を「送り出す」ための出口のドアです。E波やA波は「吸い込む」拡張期の血流なので場所が全く異なります。 - 5.誤り(⑤:上行大動脈)
大動脈弁から送り出された血液が通る太い血管です。
暗記方法・覚え方のコツ(すきま風の法則)
血流を「すきま風」に例えて物理的にイメージしましょう。
部屋の中(左心房や左心室)に立っていても風の強さはぼんやりとしか分かりませんが、ドアの隙間(僧帽弁の先端)に顔を近づければ、一番強い風(最高血流速度)を正確に測ることができます。だから計測部位は「弁の先端(弁口部)」なのです。
さいの補足(弱点補強:E波とA波の意味)
E波(Early diastolic wave)は、左室が自らスッと膨らむ力で血液を「シュッ」と吸い込む拡張早期の波です。一方、A波(Atrial contraction wave)は、左室が十分に膨らめなかった時に、左心房が「ギュッ」と収縮して無理やり血液を押し込む拡張後期の波です。健康な心臓は吸い込む力(E)が強いため「E>A」となりますが、心筋が硬くなると吸い込めなくなり、左心房の押し込み(A)に頼るようになるため「E<A」へと逆転します。波形の意味が分かると、エコー所見から心臓の硬さ(拡張不全)が読めるようになります。
問18:心窩部縦走査のエコー解剖
【問題】
心窩部縦走査の超音波像(別冊No. 4)を別に示す。矢印で示すのはどれか。
- 1.胃
- 2.肝臓
- 3.膵臓
- 4.胆囊
- 5.横行結腸
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正答:1
【解説】画面内に写っている臓器の位置関係(解剖)
腹部エコーの心窩部(みぞおち)縦走査では、体の表面(腹側)から背中側に向かって、臓器がミルフィーユのように重なって観察されます。画面の上側がプローブを当てている体表側、下側が背中側(深部)となります。まずはこの画像に写っている全臓器を上から順に整理しましょう。
- ■ 画面上部(体表側)の大きな臓器:肝臓(左葉)
プローブに最も近く、画面の上の領域を広く占めている均一な実質臓器です。 - ■ 肝臓の下(背側)にある管腔臓器:胃(正解の矢印)
肝臓の左葉のすぐ裏側に接している、白・黒の「層構造」を持つ管状の臓器です。これが矢印の指す「胃」になります。 - ■ 胃のさらに下(背側)の実質臓器:膵臓(体部)
胃の裏側に位置する、やや白っぽい(高エコーな)臓器です。 - ■ 最深部(画面最下部)の管:血管系
膵臓のさらに裏側を通る脾静脈や、大動脈・上腸間膜動脈(SMA)などの太い血管の断面が見えます。
【各選択肢の正誤理由】
- 1.正しい(胃)
上記の通り、肝左葉の背側に位置し、特徴的な消化管の「壁の層構造」が確認できるため胃と判断できます。 - 2.誤り(肝臓)
肝臓は矢印の部位より体表側(画面上部)にある大きな臓器です。 - 3.誤り(膵臓)
膵臓は胃よりもさらに深部(画面下側)に位置します。 - 4.誤り(胆囊)
胆囊は通常、右肋骨弓下走査などで肝臓の右葉の下(胆囊窩)に黒く抜けた袋状の構造として観察されます。心窩部の正中付近の縦断面には通常描出されません。 - 5.誤り(横行結腸)
横行結腸も層構造を持ちますが、胃よりも尾側(足側)に位置し、内部にガスや便の強いエコー(ハレーションや音響陰影)を伴うことが多いため、この画像の綺麗な構造とは異なります。
読影のコツ(サンドイッチ構造)
心窩部の縦走査では「肝臓」と「膵臓」という2つの実質臓器の間に、管腔臓器である「胃」がサンドイッチのように挟まれているとイメージすると、位置関係が分かりやすいです。
さいの補足(弱点補強:消化管の5層構造)
矢印の先をよく見ると、壁が何層にも重なっているのが分かります。超音波検査において、正常な消化管(胃や腸)の壁は「5つの層」として観察され、内側(粘膜側)から順番に白・黒・白・黒・白のエコーレベルを示します。なかなか綺麗に描出はできないですが、ルーチンでも重要所見です。
- 第1層(高エコー・白):粘膜界面
- 第2層(低エコー・黒):粘膜固有層・粘膜筋板
- 第3層(高エコー・白):粘膜下層
- 第4層(低エコー・黒):固有筋層(分厚い)
- 第5層(高エコー・白):漿膜下層・漿膜
問19:下肢静脈の超音波検査
【問題】
下肢静脈の超音波検査で誤っているのはどれか。
- 1.主にリニア型プローブを使用する。
- 2.圧迫法では静脈の虚脱の有無を確認する。
- 3.バルサルバ法は吸気後に息ごらえをする。
- 4.カラードプラ法では流速レンジを上げて血流を確認する。
- 5.ミルキング法はプローブより末梢側を握って放し血流を誘発させる。
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正答:4
【解説】静脈エコー特有の手技と設定を理解する
下肢静脈エコーは、主に「深部静脈血栓症(DVT:エコノミークラス症候群の原因)」や「下肢静脈瘤(血液の逆流)」を見つけるための検査です。勢いよく流れる動脈とは異なり、静脈は「血流が遅く、壁が柔らかい」という特徴があるため、それに合わせた機械の設定や特殊な手技が必要になります。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.正しい(リニア型プローブ)
下肢の静脈(大伏在静脈や大腿静脈など)は体の表面に近い浅い層を走っています。浅い部分を高画質(高分解能)で観察するためには、周波数の高いリニア型プローブを使用するのが第一選択です。 - 2.正しい(圧迫法=血栓の確認)
正常な静脈は壁がペラペラで柔らかいため、プローブで上から軽く押すだけでペチャンコにつぶれます(虚脱)。もし中に硬い血栓(DVT)が詰まっていると、いくら押してもつぶれなくなります。最もシンプルで確実な血栓の確認方法です。 - 3.正しい(バルサルバ法=逆流の確認)
大きく息を吸って止める(腹圧をかける)と、足から心臓へ戻ろうとする静脈血がせき止められます。このとき、静脈の逆流防止弁が壊れている(下肢静脈瘤など)と、血液が足先に向かって逆流してしまいます。この逆流の有無をカラードプラ等で確認します。 - 4.誤り(流速レンジを下げる)
静脈の血流は動脈に比べて非常に「遅い」です。カラードプラ法で遅い血流に色をつけるためには、流速レンジ(パルス反復周波数:PRF)を「低く下げる(5〜10 cm/s程度)」必要があります。レンジを高くしすぎると、機械が遅い血流をノイズとして切り捨ててしまい、色が乗らなくなります。 - 5.正しい(ミルキング法=血流の誘発)
プローブを当てている場所より足先側(末梢側)のふくらはぎなどを、手でギュッと握ってパッと離す手技です。乳搾り(Milking)のように血液を物理的に上へ押し上げることで、自発的な流れが弱い静脈の血流を人工的に誘発して観察しやすくします。
【頻出】動脈と静脈のエコー比較まとめ
| 評価項目 | 下肢【静脈】の原則 | 下肢【動脈】の原則 |
|---|---|---|
| 流速レンジ(PRF) | 低く下げる(遅いから) | 高く上げる(速いから) |
| プローブでの圧迫 | 簡単につぶれる(虚脱する) | 拍動があり、つぶれにくい |
| 主な検査対象疾患 | 深部静脈血栓症(DVT)、静脈瘤 | 閉塞性動脈硬化症(ASO) |
暗記方法・覚え方のコツ(川とホース)
動脈は「水圧の高い硬いホース(速い・つぶれない)」、静脈は「ゆるやかに流れる小川(遅い・すぐつぶれる)」とイメージしましょう。小川の遅い流れをカメラで撮るには、シャッタースピード(流速レンジ)を落とさないと映らない、という物理現象を理解すれば丸暗記は不要です。
さいの補足(弱点補強:DVTと肺血栓塞栓症の繋がり)
なぜ下肢の深部静脈血栓(DVT)を必死に探すのでしょうか?それは、足の静脈にできた血栓が血流に乗って流れていくと、心臓(右心房→右心室)を通り抜けて、最終的に「肺動脈」にすっぽりと詰まってしまうからです。これを「肺血栓塞栓症(PE:エコノミークラス症候群)」と呼び、突然死の原因となる非常に恐ろしい病気です。下肢静脈エコーは、足の検査でありながら、実は「肺と命を守る」ための最前線の検査だということを知っておきましょう。
問20:機能からみた脳幹の構成
【問題】
機能からみた場合の脳幹に含まれないのはどれか。
- 1.橋
- 2.延髄
- 3.間脳
- 4.小脳
- 5.中脳
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正答:4
【解説】解剖学的な脳幹と機能的な脳幹の違い
脳幹は、大脳と脊髄の間に位置する生命維持に不可欠な中枢です。解剖学的な構造として「中脳・橋・延髄」の3つを総称して脳幹と呼びますが、機能的な観点から分類する場合には、これらに加えて「間脳」も含めるのが一般的です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.含まれる(橋)
解剖学的にも機能的にも脳幹の一部です。 - 2.含まれる(延髄)
解剖学的にも機能的にも脳幹の一部です。 - 3.含まれる(間脳)
解剖学的には大脳の一部として扱われることがありますが、「機能からみた場合」は脳幹に含めて分類されます。(ちょいむずポイント) - 4.含まれない(小脳:正解)
小脳は脳幹の背側(大脳の尾側)に位置する独立した器官です。知覚と運動機能の統合という独自の機能を担っており、脳幹には含まれません。 - 5.含まれる(中脳)
解剖学的にも機能的にも脳幹の一部です。
【頻出】脳の各部位と主な機能まとめ
| 部位 | 主な機能・役割 |
|---|---|
| 間脳(視床・視床下部) | 自律神経系・内分泌系(ホルモン)の最高中枢、体温調節 |
| 中脳 | 視覚・聴覚の反射、眼球運動(対光反射など)、姿勢反射 |
| 橋(きょう) | 大脳と小脳の連絡路、呼吸調節の一部 |
| 延髄 | 呼吸・循環(心拍・血圧)の中枢、嚥下・嘔吐・咳の反射 |
| 小脳 | 運動の円滑な調節、平衡感覚(姿勢の維持) |
暗記方法・覚え方のコツ(脳幹の構成)
脳幹の基本構成は上から順に「中・橋・延(ちゅう・きょう・えん)」と覚えましょう。
この基本の3つに、機能的に「間脳」が追加されるという2段階で整理するとOKです。
さいの補足(弱点補強:小脳の役割)
選択肢4の小脳は、脳幹の背側にコブのようにくっついている臓器です。生命維持そのものには直接関与しませんが、大脳からの「こう動け」という指令と、手足からの「今こう動いている」という感覚情報を照らし合わせ、ズレを修正してスムーズな運動を実現する(知覚と運動機能の統合)という領域を担っています。お酒を飲みすぎると千鳥足になるのは、アルコールでこの小脳の働きが一時的に麻痺するからです。
問21:感覚神経活動電位(SNAP)の振幅低下の機序
【問題】
健常者の尺骨神経で行った逆行性記録法による感覚神経伝導検査の記録波形(別冊No. 5)を別に示す。感覚神経活動電位〈SNAP〉の振幅が刺激部位によって図示するように低下する機序はどれか。2つ選べ。
- 1.不応期
- 2.位相相殺
- 3.逆行性伝導
- 4.伝導ブロック
- 5.生理的な時間的分散
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正答:2、5
【解説】遠くなるほど波が小さくなる物理的な理由
感覚神経活動電位(SNAP)の検査において、記録部位から遠い場所(近位部)を刺激するほど、波形(振幅)が小さく、横にダラっと広がる現象が起きます。これは病気ではなく、健常者でも必ず起こる生理現象です。
【正解選択肢のメカニズム】
- 5.生理的な時間的分散(正しい)
1本の神経の束の中には、伝導が速い(太い)線維と、遅い(細い)線維が混ざっています。距離が長くなるほど、速い線維と遅い線維の到着時間にズレ(ばらつき)が生じます。これを「生理的な時間的分散」と呼びます。 - 2.位相相殺(正しい)
到着時間がズレた結果、速い線維の「波の谷(陰性相)」と、遅い線維の「波の山(陽性相)」が重なってしまうタイミングが発生し、お互いの電気を打ち消し合ってしまいます。これを「位相相殺(フェイズ・キャンセレーション)」と呼び、結果として全体の波の高さ(振幅)が小さくなります。
【誤り選択肢の解説】
- 1.誤り(不応期)
神経が一度興奮した直後に、一時的に次の刺激に反応しなくなる休み時間のことです。距離による振幅低下の原因ではありません。 - 3.誤り(逆行性伝導)
刺激点から通常とは逆の方向に向かって興奮が伝わる現象です。今回の検査法そのものを指しますが、振幅が低下するメカニズムの答えではありません。 - 4.誤り(伝導ブロック)
神経の局所的な圧迫などで、興奮が途中でパタリと伝わらなくなる「病的」な状態です。健常者には見られません。
暗記方法・覚え方のコツ(マラソン大会の例え)
神経の束を「マラソン大会に参加する大勢のランナー」に例えてみましょう。
- 手関節(スタート直後):みんな固まって走っているので大きな一団に見える(振幅が大きい)。
- 腋窩(ゴール直前):速い人と遅い人の差が広がり(時間的分散)、バラバラに走っているため一団が小さく見えてしまう(位相相殺・振幅低下)。
さいの補足(弱点補強:逆行性と順行性)
感覚神経伝導検査には、指先を刺激して手首で拾う「順行性(本来の感覚が伝わる方向)」と、手首を刺激して指先で拾う「逆行性」があります。実は、逆行性の方が得られる波形(振幅)が大きく、記録がしやすいというメリットがあるため、臨床ではしばしば逆行性記録法が用いられています。(施設にもよるかも)
問22:MRI検査における脳脊髄液の信号強度
【問題】
MRI検査で脳脊髄液が高信号となる撮像法はどれか。
- 1.FLAIR
- 2.T1強調画像
- 3.T2強調画像
- 4.拡散強調画像
- 5.プロトン密度強調画像
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正答:3
【解説】「水(液体)」がどう見えるかが読影の基本
MRI画像は、組織のどの特性を強調して撮像するかによって、同じ断面でも白黒のコントラストが全く異なります。国家試験では、脳脊髄液(CSF)などの「水(液体)」が白く(高信号に)写るのか、黒く(低信号に)写るのかを判別できるかが頻繁に問われます。
【各撮像法の解説と正誤理由】
- 1.誤り(低信号)
FLAIR(フレア)は、液体の信号を意図的に抑制させた撮像法です。そのため、脳脊髄液は黒く(低信号に)なります。 - 2.誤り(低信号)
T1強調画像では、液体は低信号に描出されるため、脳脊髄液は黒く(低信号に)写ります。 - 3.正しい(高信号)
T2強調画像では、液体は高信号(白く)に描出されます。したがって、脳脊髄液は鮮やかな白(高信号)となります。 - 4.誤り(低信号)
拡散強調画像(DWI)は、水分子の拡散を強調した画像であり、自由に動ける脳脊髄液は低信号(黒)となります。急性期脳梗塞の診断に非常に有用です。 - 5.誤り(軽度の低信号)
プロトン密度強調画像はプロトンの密度を反映した画像で、液体は軽度の低信号を示します。主に骨関節領域で用いられます。
【頻出】MRIの主要な撮像法と水(脳脊髄液)の信号
| 撮像法 | 水(脳脊髄液)の色 | 特徴と主な用途 |
|---|---|---|
| T1強調画像 | 黒(低信号) | 解剖学的な構造(形)が綺麗に見える。 |
| T2強調画像 | 白(高信号) | 水分(浮腫や炎症など)を見つけるのに適している。 |
| FLAIR | 黒(低信号) | T2の画像から、純粋な水(脳脊髄液)の白さだけを消したもの。 |
| 拡散強調画像(DWI) | 黒(低信号) | 急性期脳梗塞(細胞が腫れて水が動けない部分)が白く光る。 |
暗記方法・覚え方のコツ(ツーっと流れる水は白)
一番基本となるT1とT2の違いは「ツー(T2)っと流れる水は白(高信号)」というゴロで瞬殺できます。水が真っ白に光っている脳の画像を見たら、それはT2強調画像です。
問23:心電図の読影(心室期外収縮)
【問題】
肢誘導心電図(別冊No. 6)を別に示す。心電図所見はどれか。
- 1.心房細動
- 2.心房粗動
- 3.上室期外収縮
- 4.Ⅲ度房室ブロック
- 5.心室期外収縮
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正答:5
【読影のポイント】早く割り込む「幅広い異常波形」
別冊の心電図を見ると、左から数えて4拍目に、本来のタイミングよりも早く(早期に)幅広い異常な形のQRS波が出現しています。この波形には先行するP波が認められないことから、「心室期外収縮(PVC)」と診断できます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(心房細動)
P波が消失し、基線が細かく震えるf波が見られ、R-R間隔が完全にバラバラになります。本画像のような規則正しいベースリズム(洞調律)は存在しません。 - 2.誤り(心房粗動)
P波の代わりに、ノコギリの歯のような規則正しいF波(鋸歯状波)が連続して出現します。本画像にはその所見はありません。 - 3.誤り(上室期外収縮)
予定より早く波形が割り込む点は同じですが、心房など(上室)から正規のルートを通って伝わるため、QRS波の幅は正常(細くシュッとしている)になります。また、直前に変形したP波が先行することが多いです。 - 4.誤り(Ⅲ度房室ブロック)
心房と心室の電気的連絡が完全に途切れた状態です。P波とQRS波がそれぞれ勝手な(独立した)リズムで規則正しく現れ、脈は極端に遅くなります。 - 5.正しい(心室期外収縮)
解説書の通り、4拍目に早期に出現した幅広いQRS波(先行P波なし)があるため正解です。
【頻出】2大・期外収縮の鑑別まとめ
| 不整脈の種類 | QRS波の幅(形) | 先行するP波 |
|---|---|---|
| 心室期外収縮(PVC) | 広い(0.12秒以上・変形) | なし |
| 上室期外収縮(PAC) | 狭い(通常と同じ形) | あり(形は少し変わる) |
読影のコツ(なぜ幅が広くなるのか?)
通常の電気信号は「刺激伝導系」という高速道路を通るため、あっという間に心室全体に伝わり、細くてシュッとしたQRS波になります。しかし、心室期外収縮は心室の普通の筋肉(一般道)から発生するため、電気が伝わるのに時間がかかり、結果として横にデブっと太った幅広い波形になるのです。
さいの補足(代償性休止期)
心室期外収縮が起きた直後には「休む時間(ポーズ)」が長く入ります。これを「代償性休止期」と呼びます。心室期外収縮を挟む前後の正常なR波の間隔が、正常なR-R間隔のちょうど2倍の長さになるのが特徴です。
問24:ヘモグロビン酸素解離曲線
【問題】
ヘモグロビン酸素解離曲線で正しいのはどれか。
- 1.横軸は時間である。
- 2.縦軸はPaO2である。
- 3.体温上昇で左方偏移する。
- 4.アルカレミアで右方偏移する。
- 5.右方偏移すると末梢組織での酸素放出が増える。
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正答:5
【解説】ヘモグロビンを「酸素の宅配トラック」として考える
ヘモグロビン酸素解離曲線は、S字型のカーブを描くグラフです。このグラフが「右にズレるか、左にズレるか」は、ヘモグロビンという宅配トラックが、末梢組織に酸素の荷物を「下ろしやすくなるか、抱え込んでしまうか」を表しています。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(横軸は酸素分圧)
グラフの横軸は時間ではなく、酸素分圧(PO2)です。 - 2.誤り(縦軸は酸素飽和度)
グラフの縦軸は、ヘモグロビンが酸素と結びついている割合を示す酸素飽和度(SO2)です。 - 3.誤り(右方偏移する)
体温が上昇した時は、組織が酸素を欲しがっている状態なので、酸素を放出しやすい「右方偏移」が起こります。 - 4.誤り(左方偏移する)
アルカレミア(血液がアルカリ性に傾いた状態)では、逆に酸素を抱え込んでしまう「左方偏移」が起こります。 - 5.正しい(酸素放出の増加)
右方偏移(右にズレる)とは、ヘモグロビンと酸素の親和性(くっつく力)が弱まることを意味します。くっつく力が弱まるため、末梢組織へ酸素の荷物をたくさん下ろせる(放出量が増える)ようになります。
【頻出】解離曲線がシフトする条件まとめ
| 条件 | 右方偏移(酸素を離しやすい) | 左方偏移(酸素を抱え込む) |
|---|---|---|
| 血液のpH | 低下(酸性・アシデミア) | 上昇(アルカリ性・アルカレミア) |
| CO2分圧 | 上昇(高炭酸ガス血症) | 低下(低炭酸ガス血症) |
| 体温 | 上昇(発熱・運動) | 低下(低体温) |
| 2,3-DPG | 増加(高地順応など) | 減少(保存血など) |
暗記方法・覚え方のコツ(右方偏移=激しい運動中)
右にズレる条件は「全力疾走している時の体の状態」をイメージすると一発で覚えられます。運動すると体温が上がり、息が上がってCO2が溜まり、乳酸が溜まって体は酸性(pH低下)になります。筋肉が酸素を大量に消費するため、ヘモグロビンが気を利かせて酸素の荷物をどんどん下ろしてくれている(右方偏移)状態です。
さいの補足(弱点補強:ボーア効果)
血液中のCO2濃度が上がったり、pHが低下(酸性化)したりすることで、ヘモグロビンの酸素親和性が低下し、酸素を放出しやすくなる(右方偏移する)物理的な現象のことを、発見者の名をとって「ボーア効果(Bohr effect)」と呼びます。
問25:スパイロメトリ(1秒率低下の疾患)
【問題】
1秒率低下を特徴とするのはどれか。
- 1.肺水腫
- 2.肺切除後
- 3.間質性肺炎
- 4.慢性閉塞性肺疾患
- 5.睡眠時無呼吸症候群
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正答:4
【解説】閉塞性と拘束性の違いをイメージする
呼吸機能検査(スパイロメトリ)では、息を吐き出す勢いや効率が落ちる「閉塞性換気障害」と、肺が十分に膨らまなくなる「拘束性換気障害」の鑑別が最も重要です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 4.正しい(閉塞性換気障害)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、1秒率(FEV1%)が70%未満に低下する閉塞性換気障害を呈するのが最大の特徴です。タバコの煙などが原因で気道(空気の通り道)が狭くなり、息をスムーズに外へ吐き出せなくなる病気です。 - 1、2、3.誤り(拘束性換気障害)
肺水腫、肺切除後、間質性肺炎は、いずれも%肺活量(%VC)が80%未満に低下する拘束性換気障害を呈します。肺胞に水が溜まったり、手術で肺を切り取ったり、肺の壁(間質)が硬く繊維化したりすることで、肺がゴム風船のように広がらなくなり、空気を十分に吸い込めなくなる状態です。 - 5.誤り(通常は正常)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠時に上気道の閉塞や呼吸中枢の換気ドライブの減少によって一時的な無呼吸を引き起こす病態です。しかし、肺や気道そのものの換気機能には異常がないため、通常、換気機能障害は呈しません。
【頻出】換気障害の分類と指標まとめ
| 換気障害の分類 | 低下する指標(基準値) | 病態のイメージ | 代表的な疾患名 |
|---|---|---|---|
| 閉塞性換気障害 | 1秒率(FEV1%)< 70% | 奥にある息が「吐けない」 | COPD、気管支喘息 |
| 拘束性換気障害 | %肺活量(%VC)< 80% | 肺が広がらず「吸えない」 | 間質性肺炎、肺切除後 |
暗記方法・覚え方のコツ(ストローとコルセット)
閉塞性は「ものすごく細いストローを咥えて一気に息を吐き出そうとしている状態」です。出口が狭いため、最初の1秒間で吐き出せる量が激減します(1秒率低下)。拘束性は「胸の周りにガチガチの硬いコルセットを巻かれた状態」です。胸の檻が広がらないため、そもそも空気をたくさん吸い込むことができません(%肺活量低下)。
さいの補足(弱点補強:フローボリューム曲線の形)
換気障害は数値だけでなく、フローボリューム曲線の「波形の形」を見せる視覚問題としても非常によく狙われます。閉塞性(COPDなど)は、息を吐き出す途中で狭い気道がつぶれて急激にブレーキがかかるため、下り坂のラインが内側にポッカリとえぐれたような「下に凸」の波形になります。一方、拘束性(间質性肺炎など)は、肺が広がらないだけで気道の通り道は良いため、吐き出す勢いのバランスは保たれます。そのため、正常な波形の美しい形のまま、全体が均一に小さく縮んだ「ミニチュア型(相似形)」になります。ストロー(下に凸)とコルセット(ミニチュア)のイメージを覚えておきましょう!
問26:過呼吸賦活法による脳波変化
【問題】
過呼吸賦活法開始前の脳波(別冊No. 7A)と開始2分後の脳波(別冊No. 7B)を別に示す。最も考えられるのはどれか。
- 1.三相波
- 2.build up
- 3.3Hz棘徐波複合
- 4.ヒプスアリスミア
- 5.周期性同期性放電〈PSD〉
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正答:2
【読影のポイント】深呼吸による高振幅・徐波化
過呼吸賦活開始前の図Aでは、9〜10Hz、20〜60μV前後の正常なα波が出現しています。一方、開始2分後の図Bでは、基本となる波の振幅が増大し、前頭部優位に高振幅徐波が混入しているため、build up(ビルドアップ)と考えられます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(三相波)
三相波は、肝性脳症などの代謝性脳症で認められる、3つの相(山と谷)を持つ特徴的な異常波形です。 - 2.正しい(build up)
上記の通り、過呼吸によって前頭部優位に高振幅徐波が混入する生理的な反応(build up)です。脳の血管が一時的に収縮することで起こり、若年者ほど顕著に現れます。 - 3.誤り(3Hz棘徐波複合)
3Hz棘徐波複合は、欠神てんかんの欠神発作時に見られる異常波形です。過呼吸によって全般性の規則正しい棘徐波が誘発されやすい特徴がありますが、本画像のような波形ではありません。 - 4.誤り(ヒプスアリスミア)
ヒプスアリスミアは、ウエスト症候群(West症候群・点頭てんかん)で認められる、背景が著しく乱れた非常に高振幅な異常脳波(非同期性・不規則)です。 - 5.誤り(周期性同期性放電:PSD)
周期性同期性放電(PSD)は、Creutzfeldt-Jakob(クロイツフェルト・ヤコブ)病などで認められる、一定の周期で脳全体に同期して出現する高振幅の異常波形です。
【頻出】疾患と異常脳波の対応まとめ(絶対暗記)
| 疾患名 | 特徴的な脳波所見 |
|---|---|
| 肝性脳症(代謝性脳症) | 三相波 |
| 欠神てんかん | 3Hz棘徐波複合(過呼吸で誘発) |
| West症候群(点頭てんかん) | ヒプスアリスミア |
| Creutzfeldt-Jakob病(CJD) | 周期性同期性放電(PSD) |
暗記方法・覚え方のコツ(なぜ過呼吸で脳波が変わる?)
深呼吸を繰り返すと、血液中のCO2(二酸化炭素)が肺からどんどん外に排出されて減少します(呼吸性アルカローシス)。CO2が減ると脳の血管がギュッと細く収縮するため、脳への血流が一時的に低下し、脳が酸欠状態のようになります。これに反応して脳波の基本の波が大きくゆっくり変化していく(高振幅徐波化)、とメカニズムで覚えましょう。
さいの補足(弱点補強:モヤモヤ病とRe-build up)
過呼吸を終了すると、通常はCO2濃度が元に戻るため、build upは速やかに消失して元の波形(α波)に戻ります。しかし、脳の主要な血管が細く詰まりやすくなるモヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)の患者さんの場合、過呼吸終了後に一度消えかけた徐波が再び出現したり、いつまでも長引いたりすることがあります。これを「Re-build up(再ビルドアップ)」と呼び、モヤモヤ病に極めて特異的な異常所見です。この波形が出ると脳虚血発作の危険があるため、臨床検査の現場では発見次第すぐに過呼吸を中止させる必要があります。
問27:睡眠ポリグラフィ(PSG)の睡眠ステージ所見
【問題】
健常者のレム睡眠時にみられる睡眠ポリグラフィ〈PSG〉の所見はどれか。
- 1.K-複合
- 2.紡錘波
- 3.高振幅徐波
- 4.急速眼球運動
- 5.オトガイ筋表面筋電図振幅上昇
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正答:4
【解説】レム睡眠の「REM」は何の略か?
睡眠ポリグラフィ(PSG)は、脳波、眼球運動、オトガイ筋(あごの筋肉)の筋電図などを同時に記録し、睡眠の深さ(ステージ)を判定する検査です。レム睡眠の「REM」は、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)の頭文字をとったものであり、名前そのものが最大の所見となっています。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(K-複合)
K-複合(K-complex)は、ノンレム睡眠の「Stage N2」で認められる、大きく鋭い波とそれに続く緩やかな波の複合体です。外部からの物音などの刺激に反応して出現します。 - 2.誤り(紡錘波)
紡錘波(sleep spindle)は、ノンレム睡眠の「Stage N2」で認められる、12〜14Hz前後のギザギザした波の集まりです。これもレム睡眠の所見ではありません。 - 3.誤り(高振幅徐波)
高振幅徐波(デルタ波)は、最も深いノンレム睡眠である「Stage N3(深睡眠)」で脳波の大半を占める、ゆったりとした大きな波です。 - 4.正しい(急速眼球運動)
解説の通り、レム睡眠時に特徴的に出現する眼球の素早い動きです。これに伴い、脳波はStage N1に類似した低振幅の様々な周波数が混在する波(LAMF)になります。 - 5.誤り(振幅は低下する)
レム睡眠中は全身の筋肉の緊張が完全に抜けるため、オトガイ筋表面筋電図の振幅は「上昇」ではなく「低下(消失)」します。
【頻出】睡眠ステージとPSG所見まとめ
| 睡眠ステージ | 特徴的な脳波・所見 |
|---|---|
| Stage W(覚醒) | α波(閉眼時)、瞬目(まばたき) |
| Stage N1(浅い睡眠) | α波の消失、頭頂鋭波(瘤波)、緩徐眼球運動(SEM) |
| Stage N2(中等度睡眠) | 睡眠紡錘波、K-複合 |
| Stage N3(深睡眠) | 高振幅徐波(デルタ波)が20%以上 |
| Stage R(レム睡眠) | 急速眼球運動(REM)、オトガイ筋電図の著明な低下 |
暗記方法・覚え方のコツ(脳と体のオンオフ)
レム睡眠は「体は寝ているのに、脳は起きている」状態です。夢を見ているため眼球はキョロキョロ動き(REM)、脳波は覚醒時に近い活発な波になります。しかし、夢の通りに体が動いてしまわないように、体のスイッチは完全にオフになり筋肉はダラーンと脱力します(筋電図低下)。ノンレム睡眠は逆に「脳が寝ている(深い徐波)」状態です。
さいの補足(弱点補強:レム睡眠行動異常症)
通常、レム睡眠中には筋肉の緊張が完全に抜ける(脱力する)ため、夢の内容に合わせて体が動いてしまうことはありません。しかし、この筋肉のストッパーが壊れてしまい、寝ているのに大声で叫んだり、隣の人を殴ってしまったり(?)する病気があります。これを「レム睡眠行動異常症(RBD)」と呼びます。PSG検査で、レム睡眠中なのにオトガイ筋電図の振幅が低下しない(筋肉に力が入っている)ことが診断の決め手となります。パーキンソン病などの神経難病の初期症状としても知られる重要な疾患です。
問28:総頸動脈エコー像(IMTの計測)※採点除外問題
【問題】
総頸動脈の超音波像(別冊No. 8)を別に示す。内中膜複合体厚〈IMT〉はどれか。
- 1.①
- 2.②
- 3.③
- 4.④
- 5.⑤
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正答:解なし(不適切問題として除外)
【解説】なぜ「正解なし」になったのか?
この問題は、厚生労働省より「選択肢に正解がないため採点対象から除外する」と公式に発表された問題です。その理由は、画像に描かれた①〜⑤のカッコが、どれもIMT(内中膜複合体厚)の正しい範囲を示していなかったからです。
【血管壁の3層構造とIMTの定義】
頸動脈のエコー画像(遠位壁)は、音響インピーダンスの差によって「白・黒・白」の3層構造(Double-line pattern)に見えます。
- 第1層(白・高エコー):血管の内腔と壁の境界(内膜)
- 第2層(黒・低エコー):中膜(筋肉の層)
- 第3層(白・高エコー):外膜(周りの組織との境界)
IMT(内中膜複合体厚)は、その名の通り「内膜と中膜を合わせた厚さ」です。つまりエコー画像上では第1層の白と第2層の黒を足した幅を計測するのが正解となります。
【①〜⑤はそれぞれどこを指している?】
- ①と②:内膜のみ(第1層)
一番内側の白い線(第1層)だけを囲んでいます。中膜(黒)が含まれていないため不正解です。 - ③:中膜+外膜(第2層+第3層)
黒い層から外側の白い層にかけて囲んでいます。本来含めるべき内膜(第1層)が入っていないため不正解です。 - ④:外膜のみ(第3層)
一番外側の白い線(第3層)とその奥を囲んでいます。IMTとは全く関係のない場所です。 - ⑤:壁全体(第1層+第2層+第3層)
内膜・中膜・外膜のすべてをすっぽり囲んでしまっています。外膜(第3層)はIMTには含めないため不正解です。
暗記方法・覚え方のコツ(白黒つける)
IMTの計測は「白・黒・白」のサンドイッチのうち、「手前の白から黒まで」と覚えましょう。第1層の立ち上がり(血管内腔側の縁)から、第2層と第3層の境界(黒から白に変わる縁)までをキャリパーで測るのが臨床現場での正しいルールです。1.1mm以上で動脈硬化(肥厚)と判定されます。
さいの補足(弱点補強:なぜ奥側の壁で測るのか)
IMTの測定は、プローブに近い側の壁(前壁・近位壁)ではなく、必ず奥側の壁(後壁・遠位壁)で行います。前壁は超音波の多重反射(アーチファクト)の影響を強く受けるため、白と黒の境界がぼやけてしまい、正確なミリ単位の測定が困難になるからです。
臨床生理学(午後)の解説は以上です
第72回の午後問題(問16〜28)、本当にお疲れ様でした。午前以上に、疾患のメカニズムを深く理解しているかが問われる手応えのある問題ばかりでした。
生理機能検査は、心臓の「筋トレと水風船」や呼吸機能の「ストローとコルセット」のように、身近な物理現象に置き換えてイメージすることで理解度が上がります。丸暗記の知識を、現場で使える「生きた知識」へとブラッシュアップして復習を進めてみてください。
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