こんにちは、臨床検査技師のさいです。
本記事では、第72回臨床検査技師国家試験の午前問題より「臨床免疫学」の全問解説、まとめをお届けします。
午前の免疫学分野は、各種免疫細胞の働きや、標識免疫測定法をはじめとする抗原抗体反応の基本原理など、検査の根幹をなす土台の知識が中心に出題されていました。
問われているメカニズムを正確に理解しておくことが、応用的なデータ判読や、実際の臨床現場でのトラブルシューティングに直結します。
解説を読んで疑問に思ったことなどがあれば、各SNSのDM等でいつでもお気軽にお知らせください。
僕自身が受験生だった頃、文字ばかりの参考書を読んで「結局どうやって暗記すればいいの?」と悩んだ経験から、ちょい無理矢理感がありますが、ゴロ合わせや図解のイメージを盛り込んで作成しています。
皆様の国試合格に向けた学習のお役に立てれば幸いです。
※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第72回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。
第72回 臨床検査技師国試 午前【臨床免疫学】
全選択肢の正誤理由と解説まとめ
問79:抗原提示細胞と各種免疫細胞の役割
【問題】
抗原提示細胞はどれか。
- 1.好酸球
- 2.NK細胞
- 3.樹状細胞
- 4.肥満細胞
- 5.ヘルパーT細胞
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正答:3
【解説】獲得免疫のスイッチを入れる「プロ」の細胞
抗原提示細胞とは、体内に侵入した病原体を貪食・分解し、その断片(抗原)を細胞表面に提示して、T細胞(獲得免疫の司令塔)に「こんな敵が来ましたよ」と知らせる役割を持つ細胞です。この問題は、免疫学における超基本かつ最重要事項を問う良問です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(寄生虫・アレルギー)
好酸球は、寄生虫感染に対する防御や、アレルギー疾患(気管支喘息など)の炎症に関与する白血球です。 - 2.誤り(自然免疫)
NK(ナチュラルキラー)細胞は、ウイルス感染細胞やがん細胞を抗原提示なしに単独で発見し、直接攻撃する自然免疫系のリンパ球です。 - 3.正しい(抗原提示)
樹状細胞は、最も強力な抗原提示能力を持つプロフェッショナルな抗原提示細胞です。周囲に突起を伸ばした樹木のような形をしており、リンパ節へ移動してT細胞を活性化させます。 - 4.誤り(I型アレルギー)
肥満細胞(マスト細胞)は、IgE抗体が結合するとヒスタミンなどの化学伝達物質を放出し、花粉症やアナフィラキシーなどのI型アレルギー(即時型アレルギー)を引き起こします。 - 5.誤り(司令塔)
ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞から「提示を受ける」側の細胞です。情報を受け取ると、サイトカインを放出してB細胞やキラーT細胞に攻撃の指令を出します。
暗記方法・覚え方のコツ(プロフェッショナル抗原提示細胞)
国家試験で「抗原提示細胞はどれか」と聞かれたら、この3つをゴロ合わせで一発解決👍
- 抗原提示は美魔女(B・マ・樹)!
- B:B細胞
- マ:マクロファージ
- 樹(ジュ):樹状細胞(最強)
さいの補足(弱点補強:MHCクラスII分子)
プロフェッショナル抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、B細胞)の最大の共通点は、細胞表面に「MHCクラスII分子」を持っていることです。このMHCクラスII分子のくぼみに抗原の断片を乗せて、CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)に見せます。
問80:標識免疫測定法の原理と特徴
【問題】
標識免疫測定法で正しいのはどれか。
- 1.化学発光免疫測定法は散乱光を測定する。
- 2.不均一測定法はB/F分離を必要としない。
- 3.均一測定法はハプテンの定量に用いられる。
- 4.蛍光免疫測定法は励起光の強度を測定する。
- 5.生物発光免疫測定法にはルテニウム錯体が用いられる。
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正答:3
【解説】均一法と不均一法(B/F分離の有無)
免疫測定法において、抗原と抗体が結合したもの(Bound)と、結合せずに遊離しているもの(Free)を分離する操作を「B/F分離」と呼びます。このB/F分離の有無による分類と、各測定法の「標識物質」を正しく結びつけることがポイントです。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
化学発光免疫測定法(CLIA)は、化学反応によって生じる「発光(フォトン)の強度」を測定します。「散乱光」を測定するのは、抗原抗体複合体の濁りを利用する免疫比ろう法などです。 - 2.誤り
不均一測定法(ヘテロジニアス法)は、反応終了後に洗浄操作などを行って「B/F分離」を行うことが必須です。(均一とのひっかけですね) - 3.正しい
均一測定法(ホモジニアス法)はB/F分離が不要な測定法です。抗体が結合した際の立体障害などを利用するため、TDM(治療薬物モニタリング)の対象となる薬物など、分子量の小さい「ハプテン」の定量に用いられます。 - 4.誤り
蛍光免疫測定法(FIA)は、標識した蛍光物質に励起光を当てた結果として放出される「蛍光の強度」を測定します。励起光そのものを測るわけではありません。 - 5.誤り
ルテニウム錯体は、電極表面で酸化還元反応を起こして発光する「電気化学発光免疫測定法(ECLIA)」の標識物質です。生物発光にはルシフェラーゼ(ホタルの発光酵素)などが用いられます。
ポイント
- B/F分離:「不均一(ヘテロ)は分離する。均一(ホモ)は仲良しだから分離不要!」
- ハプテン測定:「ハプテン(小さい分子)の測定は均一法(ホモジニアス法)」
- 電気化学発光:「電気を流すと、ルテニウムが光る(ECLIA)」
さいの補足(弱点補強:代表的な標識物質まとめ)
よく問われる標識物質の組み合わせも整理しておきましょう。
- 酵素免疫測定法(EIA)=ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ。
- 蛍光免疫測定法(FIA)=FITC。
- 化学発光免疫測定法(CLIA)=アクリジニウムエステルやルミノール。
問81:原発性免疫不全症候群の分類
【問題】
食細胞機能が障害されるのはどれか。
- 1.慢性肉芽腫症
- 2.DiGeorge症候群
- 3.重症複合免疫不全症
- 4.無γ-グロブリン血症
- 5.Wiskott-Aldrich症候群
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正答:1
【解説】どの免疫細胞がサボっているかを見極める
生まれつき免疫系の細胞がうまく働かない病気を「原発性免疫不全症候群」と呼びます。国家試験では、異常が起きている細胞が「食細胞(好中球など)」「B細胞」「T細胞」のどれに該当するかを分類する問題がよく出ます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.正しい(食細胞の異常)
慢性肉芽腫症は、食細胞(好中球やマクロファージ)が細菌を殺すための「活性酸素」を作れなくなる病気(NADPHオキシダーゼの欠損)です。そのため、食細胞機能障害に分類されます。 - 2.誤り(T細胞の異常)
DiGeorge(ディジョージ)症候群は、胸腺が生まれつき形成されないため、そこで育つはずの「T細胞」が成熟できず機能不全となる病気です。 - 3.誤り(T細胞・B細胞の複合異常)
重症複合免疫不全症(SCID)は、獲得免疫の主役である「T細胞とB細胞」の両方が著しく減少・機能低下する、最も重篤な免疫不全症です。 - 4.誤り(B細胞の異常)
無γ-グロブリン血症(ブルトン型など)は、「B細胞」が成熟できないため、抗体(免疫グロブリン:IgGなど)が全く作られなくなる病気です。 - 5.誤り(T細胞・B細胞の複合異常)
Wiskott-Aldrich(ウィスコット・アルドリッチ)症候群は、T細胞とB細胞の両方の機能異常に加え、血小板減少と湿疹を伴うのが特徴の疾患です。
【頻出】原発性免疫不全症の分類まとめ
| 障害される細胞 | 代表的な疾患名 |
|---|---|
| 食細胞(好中球等) | 慢性肉芽腫症、Chediak-Higashi症候群 |
| B細胞(液性免疫) | X連鎖無γ-グロブリン血症(Bruton型) |
| T細胞(細胞性免疫) | DiGeorge症候群 |
| T細胞・B細胞(複合) | 重症複合免疫不全症(SCID)、Wiskott-Aldrich症候群 |
暗記方法・覚え方のコツ
- ブルトン型:「B細胞のBは、Bruton(ブルトン)のB」
- DiGeorge症候群:「ディジョージは胸トレが大好き。胸腺(Thymus)のT」
- Wiskott-Aldrich症候群:三大症状の「血小板減少、湿疹、易感染性」が特徴。
さいの補足(弱点補強:NBT還元試験)
慢性肉芽腫症のスクリーニング検査として「NBT(ニトロブルーテトラゾリウム)還元試験」が用いられます。正常な食細胞は活性酸素を出してNBTを青黒く染めますが、慢性肉芽腫症の患者さんの好中球では活性酸素が出ないため染まりません。
問82:最新のがん免疫療法(CAR-T療法)
【問題】
抗体のがん抗原結合部分とT細胞刺激伝達分子を融合させたキメラ抗原受容体でがん細胞を攻撃する治療法はどれか。
- 1.減感作療法
- 2.CAR-T療法
- 3.中和抗体療法
- 4.分子標的療法
- 5.ステロイドパルス療法
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正答:2
【解説】抗体の「標的認識力」とT細胞の「攻撃力」の融合
CAR-T(カーティー)療法は、患者自身の血液からT細胞を取り出し、がん細胞の表面にある目印(抗原)を認識する「抗体の一部」と、T細胞を活性化させる「刺激伝達部分」を人工的に結合させた「キメラ抗原受容体(CAR)」を遺伝子改変によって組み込み、再び体内に戻すという最新のがん免疫療法です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(アレルギー治療)
減感作療法(アレルゲン免疫療法)は、アレルギーの原因物質を少量ずつ長期間にわたって投与して体を慣らし、アレルギー反応を和らげる治療法です。 - 2.正しい(がん免疫療法)
CAR-T療法(キメラ抗原受容体T細胞療法)です。抗体の「標的を正確に見つける能力」と、T細胞の「強力な攻撃力」を兼ね備えた細胞を作り出します。 - 3.誤り(ウイルス・毒素など)
中和抗体療法は、人工的に作製した抗体を投与し、ウイルスや毒素などに結合してその働き(感染力や細胞への結合)を無効化する治療法です。 - 4.誤り(がん薬物療法)
分子標的療法は、がん細胞の増殖に関わる特定の分子(タンパク質や遺伝子)をピンポイントで阻害する薬を用いる治療法です。 - 5.誤り(自己免疫疾患など)
ステロイドパルス療法は、大量のステロイド薬を3日間などの短期間で集中的に点滴し、強力に炎症や免疫反応を抑え込む治療法です。
学習のポイント:CAR-T療法のキーワード
- 「キメラ」とは、ギリシャ神話に登場する別々の動物が合体した魔物のことです。医療では「異なる由来のものを融合させた」という意味で使われます。
- 代表的な薬剤に、B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)などに用いられる「キムリア(一般名:チサゲンレクルユーセル)」があります。
さいの補足(弱点補強:副作用について)
CAR-T療法の特有かつ重篤な副作用として「サイトカイン放出症候群(CRS)」があります。活性化されたT細胞が大量のサイトカインを放出することで、高熱や血圧低下などを引き起こします。臨床現場ではこの合併症の管理が非常に重要となります。
問83:免疫検査の測定原理(溶解反応と凝集反応)
【問題】
溶解反応を原理とする検査はどれか。2つ選べ。
- 1.寒冷凝集反応
- 2.RPRカードテスト
- 3.直接抗グロブリン試験
- 4.血清補体価〈CH50〉測定
- 5.Donath-Landsteiner試験
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正答:4、5
【解説】検査のエンドポイント(最終判定)を見極める
免疫学的な検査は、抗原抗体反応の結果をどのように可視化するかによって分類されます。赤血球などがくっつき合う「凝集反応」と、補体の働きなどによって細胞膜が破壊され中身が漏れ出す「溶解(溶血)反応」の違いを正確に区別することがポイントです。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(凝集反応)
寒冷凝集反応は、マイコプラズマ肺炎などで増加する自己抗体(寒冷凝集素)が、低温下で自分自身の赤血球を「凝集」させる現象を利用した検査です。 - 2.誤り(凝集反応・沈降反応)
RPR(Rapid Plasma Reagin)カードテストは、梅毒のスクリーニング検査です。カルジオリピンなどの脂質抗原と患者血清中の抗体が反応し、黒色の炭素粒子を巻き込んで目に見える「凝集(正確には凝集沈降)」を起こします。 - 3.誤り(凝集反応)
直接抗グロブリン試験(直接クームス試験)は、生体内で自己抗体が結合した赤血球に「抗ヒトグロブリン血清」を加え、赤血球同士を橋渡しして「凝集」させる検査です。自己免疫性溶血性貧血(AIHA)などの診断に用います。 - 4.正しい(溶解反応)
血清補体価〈CH50〉測定は、あらかじめ抗体を結合させたヒツジ赤血球(感作赤血球)に患者血清を加えた際、血清中の「補体」が活性化して赤血球を「溶血(溶解)」させる度合いを測定する検査です。 - 5.正しい(溶解反応)
Donath-Landsteiner(ドナート・ランドシュタイナー)試験は、発作性寒冷ヘモグロビン尿症の診断に用います。温度変化によって補体が活性化し、赤血球が「溶血」する現象を証明する検査です。
ポイント:補体が関与すると「溶血」が起きる
- 赤血球膜上で抗原抗体反応が起き、そこに「補体」が結合して最後まで活性化(膜攻撃複合体:MACの形成)すると、細胞膜に穴が開いて「溶解(溶血)」します。
- 「CH50」と「Donath-Landsteiner試験」は、この補体による溶血現象をダイレクトに利用している代表的な2大検査です。
さいの補足(弱点補強:二相性溶血とは?)
Donath-Landsteiner試験は「二相性溶血反応」とも呼ばれます。患者の血液をまず【低温(4℃)】に置くと、自己抗体(D-L抗体:IgG型)が赤血球に結合します。その後、【体温(37℃)】に温めると補体が活性化して一気に溶血が起こります。このように「冷やして、温める」という2つの温度相(フェーズ)を経るため二相性と呼ばれます。
問84:急性B型肝炎のマーカー推移(ウイルス学)
【問題】
急性B型肝炎の自然経過における各マーカー相対量の推移(別冊No. 16)を別に示す。HBs抗体はどれか。
- 1.a
- 2.b
- 3.c
- 4.d
- 5.e
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正答:5
【解説】マーカー出現のタイムラインを読み解く
急性B型肝炎の感染経過を示すこのグラフは、国家試験におけるウイルス学の最重要頻出図です。過去にも類似問題は複数出ています。
ウイルスそのものを表す「抗原」と、生体が作り出す「抗体」が、時間経過とともにどのように入れ替わるかを理解する必要があります。
【グラフの各曲線の正体】
- a:HBs抗原(感染の現在進行形)
HBV-DNAとほぼ同時期に上昇し、急性期にピークを迎えます。これが陽性である期間は、体内にウイルスが存在していることを示します。 - b:HBe抗原(強い感染力の指標)
HBs抗原の次に現れ、ウイルスが活発に増殖しており、他者への感染力が非常に強い状態を示します。 - c:IgM-HBc抗体(急性感染の指標)
感染初期に最も早く作られる抗体です。急性期に鋭いピークを描き、その後数ヶ月で消失するため、最近の感染(急性肝炎)を証明する重要なマーカーです。 - d:HBc抗体(IgG型:感染の既往)
IgM型に遅れて上昇し、一度作られると生涯にわたって高値を持続します。現在感染中か、過去に感染したことがあるかを示します。 - e:HBs抗体(治癒と免疫獲得の証明)
HBs抗原が消失し、完全に回復期に入ってから最後にゆっくりと出現します。これが陽性になれば「ウイルスの排除完了(治癒)」および「二度と感染しない(中和抗体の獲得)」を意味します。したがって正解は5です。
ポイント(出現の順番)
マーカーは以下の順番で出現します。
意味深ですが、順番の法則を整理しましょう。
- 抗原の出現順:「S」→「e」(「セ」と覚える)
- 抗体の出現順:「c」→「e」→「S」(cesセス)
さいの補足(弱点補強:ウィンドウ期)
グラフ上で、a(HBs抗原)が消えてから、e(HBs抗体)が出現するまでの間、両方が「陰性」となる空白の期間が存在します。これを「ウィンドウ期(空白期)」と呼びます。この時期にB型肝炎の診断をつけるためには、持続して陽性となっている「c(IgM-HBc抗体)」や「d(HBc抗体)」の測定が不可欠です。
問85:ABO血液型抗原の基礎
【問題】
ABO血液型抗原で正しいのはどれか。
- 1.発現は赤血球膜上に限局している。
- 2.遺伝子は第9染色体の長腕に存在する。
- 3.A1型の抗原発現量は成人より新生児の方が多い。
- 4.A遺伝子はB遺伝子に対して潜性〈劣性〉である。
- 5.B型はN-アセチルガラクトサミンと結合している。
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正答:2
【解説】輸血検査の基本!ABO抗原の性質と遺伝
ABO式血液型は、輸血医療において最も重要な検査項目です。遺伝子の位置、抗原の発現量や分布、そして抗原性を決定する「型特異糖」の種類は、国家試験で繰り返し問われる必須知識です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
ABO抗原は赤血球膜上だけでなく、血管内皮細胞や各種臓器の上皮細胞など、全身の組織に広く分布しています。また、分泌型(Se)の人では、唾液や胃液などの体液中にも水溶性抗原として存在します。 - 2.正しい
ABO式血液型の遺伝子(ABO遺伝子)は、「第9染色体の長腕(9q34)」に存在します。 - 3.誤り
新生児の赤血球におけるABO抗原の発現量は、成人の約3分の1程度しかありません。成長とともに抗原量が増加し、2〜4歳頃に成人と同じレベルに達します。そのため、新生児の血液型検査(オモテ試験)は反応が弱くなる傾向があります。 - 4.誤り
A遺伝子とB遺伝子の間には優劣の差がなく、両方の遺伝子を持つとA抗原もB抗原も作られる「共優性(等顕性)」の関係にあります。なお、AおよびB遺伝子はO遺伝子に対して優性です。 - 5.誤り
B型の抗原特異性を決定する末端糖は「D-ガラクトース」です。「N-アセチルガラクトサミン」が結合しているのはA型です。
暗記方法・覚え方のコツ(型特異糖の組み合わせ)
- A型:N-アセチルガラクトサミン(Aで始まる!)
- B型:D-ガラクトース(B型はガラガラ)
- O型(H抗原):L-フコース(O型はフーフー)
さいの補足(弱点補強:新生児のウラ試験)
新生児は抗原量が少ないだけでなく、自分自身の規則抗体(抗A抗体や抗B抗体)をまだ産生していません。生後数ヶ月は母親から移行したIgG抗体が検出されることがあるため、原則として新生児(生後4ヶ月未満)にはウラ試験(血清中の抗体検査)は行いません。これも国試頻出です。
問86:カラム凝集法による不規則抗体スクリーニング(輸血検査学)
【問題】
間接抗グロブリン試験による不規則抗体スクリーニングのカラム凝集像(別冊No. 17)を別に示す。考えられるのはどれか。
- 1.連銭形成
- 2.寒冷凝集反応
- 3.不規則抗体を保有
- 4.フィブリンの析出
- 5.抗血小板抗体を保有
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正答:3
【解説】カラム凝集法(ゲル法)の判定基準
提示された画像は、輸血検査で広く用いられている「カラム凝集法(ゲル法)」による不規則抗体スクリーニングの結果です。この検査では、抗原抗体反応による赤血球の凝集の有無を、マイクロチューブ内のゲルの網目を利用して判定します。凝集した赤血球は上部にとどまり(陽性)、凝集しなかった赤血球は遠心力ですり抜けて底に沈みます(陰性)。
不規則抗体陰性では「Ⅰ〜Ⅲまで全て陰性」でなくてはなりません。
【画像所見と各選択肢の解説】
- 画像の所見:スクリーニング赤血球Ⅰは底に沈んでいるため「陰性」。
ⅡとⅢはゲルの上部〜中部に赤い層(凝集像)を作ってとどまっているため完全に「陽性」と判定できます。
弱陽性やJ現象などでは、連銭なども考慮しまずが、これだけ強い陽性だと答えは一択です。 - 1.誤り
連銭形成は赤血球が重なって見える現象ですが、カラム凝集法では通常、遠心操作によって分散するため、このような明瞭な陽性像の原因にはなりにくいです。 - 2.誤り
寒冷凝集反応は低温で反応する自己抗体によるものですが、間接抗グロブリン試験は37℃で行われるため、この画像の直接的な解釈としては不適切です。 - 3.正しい
スクリーニング細胞ⅡおよびⅢに対して陽性反応を示しているため、患者血清中に何らかの「不規則抗体」を保有していることが確実です。次の検査は抗体同定検査に進む必要があります。 - 4.誤り
血漿の分離不十分などでフィブリンが析出した場合、ゲル上部に膜状のモヤがかかったような像(偽陽性)になることがありますが、本画像のような典型的な凝集像(赤い帯)とは異なります。 - 5.誤り
この検査は「スクリーニング赤血球」を使用しているため、検出されるのは赤血球に対する抗体です。血小板に対する抗体は検出できません。
学習のポイント:カラム凝集法の判定
- 陽性(+):赤血球がくっついて大きくなり、ゲルの網目を通り抜けられず「上(または途中)」で止まる。
- 陰性(-):赤血球がバラバラのまま、遠心力でゲルの網目をすり抜けて「底」に沈む。
さいの補足(弱点補強:抗体同定へのステップ)
不規則抗体スクリーニングで「陽性(抗体保有)」と判定された場合、次に行うのは「抗体同定検査」です。
10〜11本程度のパネル赤血球を用いて、その抗体がRh系の抗E抗体なのか、Kidd系の抗Jka抗体なのかといった具体的な種類(特異性)を特定し、必要な場合は適合する輸血用血液を準備します。
問87:ABO血液型検査の手技(試験管法)
【問題】
ABO血液型検査で正しいのはどれか。
- 1.ウラ検査はスライド法で行う。
- 2.ウラ検査は37℃で反応させる。
- 3.オモテ検査の試薬は2滴滴下する。
- 4.ウラ検査は血漿(血清)を2滴滴下する。
- 5.オモテ検査の試験管法は10%赤血球浮遊液を作製する。
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正答:4
【解説】血液型検査の基本手技(滴数と濃度)
ABO式血液型検査における試験管法の基本操作を問う問題です。オモテ試験(赤血球側の抗原を調べる)と、ウラ試験(血清側の抗体を調べる)の手技の違い、特に加える「滴数」や「血球濃度」は実務に直結するため確実な暗記が必要です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(試験管法など)
ウラ検査は、血清中の抗体を検出するため、試験管法またはカラム凝集法などで行います。乾燥しやすく反応が弱い抗体を見逃す恐れがあるため、スライド法は用いられません。
※スライド法→患者の赤血球と抗血清をガラス板上で混ぜ、肉眼で凝集の有無を判定する簡便な血液型検査(オモテ検査) - 2.誤り(室温反応)
ABO血液型の抗体(抗A、抗B)は主にIgM型であり、低温〜室温でよく反応する「冷式抗体(完全抗体)」です。そのため、37℃ではなく「室温(20〜25℃)」で反応させます。 - 3.誤り(各1滴)
試験管法によるオモテ検査では、抗Aまたは抗B試薬を「1滴」、そこに患者の3〜5%赤血球浮遊液を「1滴」加えます。 - 4.正しい(血清は2滴)
ウラ検査では、患者の血清(または血漿)を「2滴」、そこに試薬赤血球(A血球、B血球)を「1滴」加えて反応させます。抗原抗体反応の至適比率を保つため、血清を多めに入れます。 - 5.誤り(2〜5%)
試験管法では、抗原抗体比を最適化し、反応性と判定性を保つため、「3〜5%」の赤血球浮遊液を作製します。10%といった濃い浮遊液はスライド法などで用いられます。
学習のポイント:試験管法の数字まとめ
- オモテ試験:血球1滴 + 試薬1滴
- ウラ試験:血清2滴 + 試薬血球1滴(抗体を見逃さないよう血清が多め!)
- 赤血球浮遊液の濃度:試験管法は2〜5%、スライド法は10%
さいの補足(弱点補強:スライド法)
スライド法は現在あまり主流ではありませんが、緊急時のオモテ検査などで用いられることがあります。試験管法とは異なり、遠心操作を行わずに肉眼で凝集を見るため、血球濃度を高く(10%)して反応を分かりやすくする必要があります。
問88:血液製剤の外観検査と保存条件
【問題】
血液製剤と外観検査項目との関係で誤っているのはどれか。
- 1.血小板製剤 凝固物
- 2.血小板製剤 色調
- 3.赤血球製剤 溶血
- 4.新鮮凍結血漿 スワーリング
- 5.新鮮凍結血漿 融解時の異物
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正答:4
【解説】スワーリングは血小板の特権
スワーリング(渦巻き現象)とは、血小板製剤を光に透かして揺り動かした際に、円盤状の健康な血小板が光を反射してキラキラと渦を巻くように見える現象です。これは血小板製剤特有の外観検査であり、-20℃以下でカチカチに凍結されている新鮮凍結血漿(FFP)では観察できません。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.正しい
血小板製剤は凝固物(フィブリンの塊など)が析出していないかを目視で確認します。 - 2.正しい
血小板製剤は通常淡黄色ですが、赤血球が混入して赤みを帯びていないか、細菌汚染によって緑色や暗褐色に変色していないかを確認します。 - 3.正しい
赤血球製剤は、保存中に赤血球が破壊されて中のヘモグロビンが漏れ出す「溶血(上澄みの赤染)」がないかを確認します。 - 4.誤り
新鮮凍結血漿は凍結されているため、スワーリングは観察不可能です。スワーリングの有無は血小板製剤の検査項目です。 - 5.正しい
新鮮凍結血漿を使用前に37℃の恒温槽などで融解した際、バッグ内に不溶性の異物(クリオプレシピテートの溶け残りや凝固物)がないか確認します。
【最新版】血液製剤の保存条件と有効期間まとめ
※日本赤十字社の規定改定(2023年)により、赤血球液-LR等の有効期間が「21日間」から「28日間」に延長されました。国試でも狙われやすい最新情報です!
| 製剤名 | 保存温度と方法 | 有効期間(最新) | 主な外観検査 |
|---|---|---|---|
| 赤血球製剤(RCC) | 2〜6℃(冷蔵) | 採血後28日間 | 溶血、凝固物、色調異常 |
| 血小板製剤(PC) | 20〜24℃(要水平振とう) | 採血後4日間 | スワーリング、凝固物、色調 |
| 新鮮凍結血漿(FFP) | -20℃以下(冷凍) | 採血後1年間 | 容器破損、融解時の異物 |
さいの補足(スワーリングの消失)
血小板製剤を保存している間にpHが低下したり、温度管理を誤ったりすると、血小板が円盤状から球状に変化し、スワーリング(光のキラキラ)が見られなくなります。つまり、スワーリングの消失は「血小板の機能低下」を意味する重要なサインとなります。
問89:抗HLA抗体と血小板関連疾患
【問題】
抗HLA抗体が関与する疾患または病態はどれか。
- 1.輸血後紫斑病〈PTP〉
- 2.血小板輸血不応〈PTR〉
- 3.自己免疫性溶血性貧血〈AIHA〉
- 4.特発性血小板減少性紫斑病〈ITP〉
- 5.血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉
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正答:2
【解説】標的となる抗原と疾患の関係
血小板が減少したり、輸血の効果が得られなくなったりする疾患には、それぞれ原因となる「抗体(ターゲット)」が存在します。これらを正確に関連付けることは、輸血検査学の重要事項です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(抗HPA抗体)
輸血後紫斑病〈PTP〉は、輸血の約1週間後に急激な血小板減少をきたす病態です。原因は、血小板特異抗原に対する「抗HPA抗体」です。 - 2.正しい(抗HLA抗体)
血小板輸血不応〈PTR〉は、頻回輸血や妊娠によって産生された「抗HLA抗体(クラスI)」が、輸血された血小板を異物とみなして破壊し、血小板数が増加しない病態です。 - 3.誤り(赤血球自己抗体)
自己免疫性溶血性貧血〈AIHA〉は、自分自身の「赤血球」に対する自己抗体が産生され、赤血球が破壊(溶血)される疾患です。 - 4.誤り(抗GPIIb/IIIa抗体など)
特発性血小板減少性紫斑病〈ITP〉は、自分自身の血小板の膜タンパク質(GPIIb/IIIaなど)に対する「自己抗体」が原因で血小板が破壊される自己免疫疾患です。 - 5.誤り(ADAMTS13阻害抗体)
血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉は、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)を切断する酵素である「ADAMTS13」に対する自己抗体ができ、酵素活性が著しく低下することで全身に微小血栓が生じる疾患です。
【頻出】血小板関連疾患と原因抗体のまとめ
| 疾患・病態 | 略語 | 原因となる抗体・物質 |
|---|---|---|
| 血小板輸血不応 | PTR | 抗HLA抗体(クラスI) |
| 輸血後紫斑病 | PTP | 抗HPA抗体 |
| 特発性血小板減少性紫斑病 | ITP | 抗GPIIb/IIIa抗体など(自己抗体) |
| 血栓性血小板減少性紫斑病 | TTP | ADAMTS13阻害抗体 |
ポイント(PTRとPTPの鑑別)
- PTR:「効果があR(アール:R)りません、HLAが合わなくて(輸血不応)」
- PTP:「パパ(HPA)のPTP(紫斑病)」
さいの補足(弱点補強:TRALI)
抗HLA抗体が関与するもう一つの重大な輸血副作用として「輸血関連急性肺障害(TRALI)」があります。PTRは患者側に抗体があるのに対し、TRALIは主に「ドナー(供血者)側の血液に含まれていた抗HLA抗体や抗HNA抗体」が原因で患者の肺毛細血管が障害されるという決定的な違いがあります。
臨床免疫学(午前)の解説は以上です
第72回の臨床免疫学(午前問題)、お疲れ様でした。免疫細胞の分化や役割、自己抗体と疾患の組み合わせ、そしてB/F分離などの測定原理の基本について、頭の中はスッキリ整理できたでしょうか。
免疫学は目に見えないミクロな世界の話が多く、最初はとっつきにくく感じるかもしれません。しかし、「どの細胞がサボっているのか」「抗体は何を攻撃しているのか」といった「免疫の働き方」を掴むことで、暗記の負担が減り、得点源に変わる科目でもあります。
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