過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
第69回臨床検査総論AM問1~10
1:EDTA-2K採血管で採取した血漿を用いた場合、測定値が血清より高くなるのはどれか。
- ALP
- Ca
- CRP
- Mg
- TP
解説:初手からイジワルな問題な気がしました。知っておけば余裕ですが、僕の場合は消去法で導きました。
EDTA2Kで採血した場合、何がどうなるかを知っておくと、こういった問題に強くなります。
★EDTAの影響
- EDTA(エチレンジアミン4酢酸)は2~4価の金属イオンとをキレート作成し減少する(ここではCa2+とMg2+)
- ALPは補酵素として消費され、減少する
- EDTA-2Kの場合はKが上昇する(EDTA-2NaであればNaが増加)
これらがEDTA-2Kを使う場合のメジャーな変動項目です。これを知っていると①②④は違うことがわかります。
CRPは実は血漿測定がOKな項目で、測定値が不変です。
従って、残るTPが正解となります。
答え:5
2:パニック値として報告すべきなのはどれか。
- K 7.0mmol/L
- Na 130mmol/L
- LD 300U/L
- 血小板 50万/μL
- ヘモグロビン 15.0g/dL
解説:「パニック値とは何か」を念頭に考えましょう。またおおよその基準値も知っておく必要があります。
パニック値(panic value、critical value)とは
生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値で、直ちに治療を開始すれば救命しうるが、その診断は臨床的な診察だけでは困難で検査によってのみ可能である
また参考までに基準値も見ておきましょう。
これらを踏まえて考えると①のKがパニック値になります。(3.6~4.8mmol/L)
②のNaは少し低値ではありますが、パニック値とは言えません。(138~145mmol/L)
③のLDも少し高値ですが、パニック値とは言えません(124~222U/L)
④の血小板も少し高値ですが、パニック値とは言えません(158~348103/μL)
⑤のヘモグロビンはほぼ基準値であるため、パニック値ではありません(M13.7~16.8g/dL、F11.6~14.8g/dL)
答え:1
3:クレアチニン(酵素法)の内部精度管理図(x̄ 管理図)を示す。原因として最も考えられるのはどれか。
- 第1試薬と第2試薬を逆にして測定した。
- 管理試料を半分の溶解液量で溶解した。
- 標準物質の濃度を2倍にして測定した。
- 使用期限が切れた試薬で測定した。
- 未熟なスタッフが測定した。
解説:管理図を見ると、途中(11plot)までは良い値が出ているが、それからは徐々に下降していっている。(trend現象)
この現象から設問を見ていく。
①の第一試薬と第二試薬を逆にして測定は、そもそも正しい数値が出ず、管理限界を超える数値が出るはず
②の管理試料を半分の溶解液量で溶解は、濃度が二倍になり、測定値も約2倍の数値となるはず
③標準物質の濃度を2倍にして測定は、検量線の傾きが変わり測定値が約1/2の数値となるはず
④使用期限が切れた試薬で測定は、試薬の劣化により、測定値が徐々に下降した可能性がある
⑤未熟なスタッフの測定は可能性は0ではないが、あるとすればもっと部分的に失敗など、バラバラになることが考えられる(trend現象にはなり辛い)
よって④がもっとも可能性としては高い。
答え:4
4:尿沈渣の無染色標本(別冊No.1A)及びSternheimer染色標本(別冊No.1B)を別に示す。この構造物はどれか。
- 硝子円柱
- 顆粒円柱
- 脂肪円柱
- 上皮円柱
- 赤血球円柱
解説:それぞれの円柱の鑑別点はなにか。
- ①ガラス円柱:円柱細胞の中に細胞が2つ未満、顆粒1/3未満のもの
- ②顆粒円柱:ガラス円柱ないに顆粒成分が1/3以上封入されている円柱
- ③脂肪円柱:脂肪顆粒が3つ以上もしくは卵円形脂肪体が封入されている円柱
- ④上皮円柱:ガラス円柱内に上皮細胞(主に尿細管上皮)が3つ以上封入されている円柱
- ⑤赤血球円柱:ガラス円柱に赤血球が3つ以上封入されている円柱
これらの鑑別点を踏まえて見てみると、硝子円柱内に上皮細胞が大量に封入されています。上皮と白血球は鑑別しづらいですが、設問では白血球円柱はありませんね。
知っていると、1秒で解ける問題です。
答え:4
5人獣共通感染症をきたすのはどれか。
- 蟯虫
- ズヒニ鉤虫
- 三日熱マラリア原虫
- ガンビアトリパノソーマ
- エキノコックス
解説:人獣共通感染症をまとめてみました。
この表より、設問ではエキノコックスが該当します。
答え:5
6:61歳の女性。有機農業従事者。腹痛で来院し、虫卵検査を行った。糞便の直接塗抹標本(別冊No.2)を別に示す。考えられるのはどれか。
- 回虫卵
- 鉤虫卵
- 条虫卵
- 鞭虫卵
- 横川吸虫卵
解説:有機農業従事者がまずポイント。野菜に付着した虫卵を経口摂取して感染するもの。そして、画像を見ると卵殻は金平糖状を示しており、大きさも約50μmで回虫卵が鑑別にあがります。
答え:1
7:コンパニオン検査の特徴について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 薬局で個人購入できる。
- 疾患の重症度を評価できる。
- 分子標的薬の有効性を予測できる。
- ベッドサイドで結果を評価できる。
- 医薬品の副作用リスクを評価できる。
解説:コンパニオン検査とは何かをおさらいしましょう。2011年ごろより開始された新しい検査です。
コンパニオン診断とは、使用したい薬の効果に関連する一つの遺伝子変異の有無を調べて、患者さんにその薬の効果が見込めるかどうかを調べる検査のこと(分子標的薬の有効性)
設問を見てみると
①は遺伝子検査が薬局で個人購入できるはずがありません。
②は薬が有効かどうかを調べる検査なので、疾患の重症度をみるわけではありません。
③分子標的薬の有効性を予測できる
④ベッドサイドで検査はできません
⑤医薬品の副作用リスクを評価できる
答え:3と5
8:標準予防策に追加の感染予防策が必要な感染症はどれか。
- 梅毒
- B型肝炎
- C型肝炎
- 帯状疱疹
- HIV感染症
解説:標準予防策に加えて、空気感染予防策が必要な感染症はどれか。ということです。
①②③⑤は全てSTD(Sexual Transmitted Disease)であり、体液感染です。
④の帯状疱疹だけ、飛沫感染と接触感染です。
★標準予防策
標準予防策は、患者の血液、体液(唾液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液等すべての体液)、分泌物(汗は除く)、排泄物、あるいは傷のある皮膚や、粘膜を感染の可能性のある物質とみなし対応することで、患者と医療従事者双方における病院感染の危険性を減少させる予防策
★空気感染予防策
空気感染予防策が必要なのは、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、結核菌などである。 標準予防策に加えて飛沫感染の感染経路別予防策を講じる必要のある病原体
答え:4
9:培養検査で検出された細菌が起炎菌である可能性の最も高い検体はどれか。
- 便
- 喀痰
- 髄液
- 自然尿
- 鼻咽頭粘液
解説:設問の中で、通常無菌のものを探すと答えが導き出せます。
①便は大腸菌を始め様々な菌がいます、加えてコンタミによる混入菌もあり得ます。
②喀痰も、常在菌以外に採痰の際にコンタミによる混入菌があり得ます。
③髄液は基本的に無菌のはずです。穿刺の際も基本的には無菌的に行われるはずです。
④自然尿は尿道口などに常在菌もいますし、無菌でないこともあります。
⑤鼻咽頭粘液は、当然外気と接しているし常在菌もいます。
つまり、それぞれの材料で培養検査をした際、本来育つはずのない材料は③の髄液になります。
答え:3
10:臥位に比べて座位で採血したときに高値となる血清成分はどれか。
- 尿酸
- 尿素窒素
- アルブミン
- ナトリウム
- クレアチニン
解説:立位(今回は座位ですが)と臥位(寝る)の体位での採血による影響です。国家試験の過去問を解いていてもしばしば目にするのでしっかり覚えておきましょう。
★立位の方が臥位よりも10~15%高くなる項目3つ
- TP
- ALB
- Ca
答え:3
なぜ体位によって違いが出るのか?
臥位と比べ立位では血液が下肢にたまり、血管内の水および小分子成分が水圧を受けて血管外に漏出する。このため、血管内の水分が減少し、血球や蛋白成分など血管壁を自由に通過できない成分の濃縮が起こる。