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第71回臨床検査技師国試 午後【臨床血液学】全選択肢の正誤理由と覚え方まとめ

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こんにちは、臨床検査技師のさいです。

第71回臨床検査技師国家試験 午後「臨床血液学(問59〜67)」を1問ずつ詳しく解説まとめしました。

午後の臨床血液学は、CMLの染色体異常、鉄動態のグラフ読み取り、APTTクロスミキシング試験の解釈、血清と血漿の違いなど、実務でも重要となる幅広い知識が問われました。一見すると複雑なデータやグラフに戸惑うかもしれませんが、「正常な造血の仕組み」や「なぜその検査結果になるのか」という原理を理解すると、一気に問題が解きやすくなります。

本記事では、現場で働く臨床検査技師の視点も交えながら、できるだけイメージしやすい言葉で解説しました。国家試験対策はもちろん、血液学実習や日々の復習にも活用していただければ幸いです。

※本記事の問題文および選択肢は、厚生労働省が公開している「第71回臨床検査技師国家試験問題および正答」をもとに掲載しています。

問59:自動血球計数装置の原理と限界

【問題】
自動血球計数装置による測定で誤っているのはどれか。

  • 1.散乱光法は白血球分画の分類に適する。
  • 2.血小板数の測定に破砕赤血球が影響する。
  • 3.ヘモグロビンの測定では溶血処理をする。
  • 4.赤血球数測定において白血球の影響は小さい。
  • 5.目視より正確に血球の形態異常を判別できる。
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正答:5

【問題の考え方】

自動血球計数装置は、測定原理ごとの特徴と限界を理解しているかを問う問題です。各測定項目がどの原理で測定されるかを整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.正しい(白血球の分類)
    白血球の5分類(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球)には、細胞にレーザー光を当てて内部構造や大きさを測るフローサイトメトリー法(散乱光法)が用いられます。
  • 2.正しい(血小板測定への影響)
    血小板は電気抵抗法(体積の大きさで分ける方法)で測定されることが多いですが、赤血球が細かく砕けた「破砕赤血球」があると、血小板と同じくらいの大きさになってしまうため、機械が血小板と勘違いして偽高値となることがあります。
  • 3.正しい(ヘモグロビン測定)
    ヘモグロビン(Hb)は赤血球の中にあります。これを吸光光度法で測定するためには、試薬(SLS液など)を用いて赤血球を溶血させ、中のヘモグロビンを外へ溶かし出す必要があります。
  • 4.正しい(赤血球測定への影響)
    血液中の細胞は、赤血球が約500万/μL、白血球が約5,000/μLと、約1000:1の比率です。赤血球を数える際、機械は白血球も一緒に数えてしまいますが、白血球の数は赤血球の1/1000程度なので、結果に与える影響は無視できるほど小さくなります(※極端な白血球増加症の例外を除く)。
  • 5.誤り(形態異常の判別)
    病的な状態で出現する芽球や幼若顆粒球、異型リンパ球などの「細胞の顔つき(形態異常)」について、自動血球計数装置は異常細胞を「フラグ(Flag:警告)」として検出することはできますが、最終的な形態判定や確定診断には、臨床検査技師による血液塗抹標本の鏡検が必要です。

【関連知識】自動血球計数装置の測定原理まとめ

どの血球をどの原理で測っているかを整理しておきましょう。

測定項目 主な測定原理 ポイント・注意点
RBC・PLT 電気抵抗法
(コールター原理)
パルスの高さ(体積)で区別する。
破砕赤血球は血小板の偽高値の原因となる。
WBC分類 散乱光法
(フローサイトメトリー法)
レーザー光を当てて内部構造や大きさを解析する。
異常細胞の正確な判定はできない。
Hb SLS-Hb法(吸光光度法) 溶血処理が必須。
乳び(高脂血症)で偽高値になることがある。

間違えやすいところ

機械の「万能感」を利用した引っかけに注意しましょう。

  • 自動装置で白血病細胞を確定診断できる → 誤り(あくまでスクリーニングであり、目視での確認が必要です。)
  • 有核赤血球は白血球として計数されることがある → 正しい(核が残るため、機械が白血球と誤認することがあります。頻出の注意点です。)
  • 破砕赤血球は血小板測定に影響しない → 誤り(大きさが同じになるため、影響を与えます。)
  • 白血球の分類には電気抵抗法を用いる → 誤り(電気抵抗法は大きさしか分からないため、5分類には内部構造が分かる「散乱光法」を用います。)

覚えるべきポイント

  • RBC・PLT = 電気抵抗法
  • Hb = 吸光光度法
  • 白血球分類 = 散乱光法
  • 異常細胞は鏡検で確認する
さい
さい
機械がフラグを出した場合は、最終確認として血液塗抹標本を鏡検します。これは現在でも血液検査室の基本的な流れです。

さいの補足:測定に影響を与える要因(偽高値・偽低値)

自動血球計数装置の問題では、「何が偽高値・偽低値になるか」が非常によく出題されます。

影響するもの 結果(異常値)
破砕赤血球 PLT 偽高値
巨大血小板 PLT 偽低値
血小板凝集 PLT 偽低値
有核赤血球 WBC 偽高値

特に「有核赤血球(NRBC)」には注意が必要です。白血球を数える際、機械は溶血剤で赤血球を壊し、残った細胞(核がある細胞)を白血球として数えます。しかし、重度の貧血などで骨髄から未熟な「有核赤血球」が出てくると、溶血処理をしても核が残ってしまい、機械はこれを「白血球」と勘違いしてカウントしてしまいます。

その結果、白血球数が実際よりも高く出てしまう(偽高値)ため、目視で有核赤血球の出現率を確認し、補正白血球数(Corrected WBC)を算出します。これも機械の限界を示す重要な現象です。

問60:赤血球恒数の計算と貧血の分類

【問題】
末梢血検査で赤血球数200万/μL、ヘモグロビン濃度7.5g/dL、ヘマトクリット値24.0%を認めた。原因の特定に有用な検査項目はどれか。

  • 1.鉛
  • 2.葉 酸
  • 3.フェリチン
  • 4.エリスロポエチン
  • 5.セルロプラスミン
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正答:2

【問題の考え方】

まずMCVを計算して貧血を「小球性・正球性・大球性」に分類し、その分類から原因を推測する問題です。血液検査室で自動血球計数装置のデータを見たときに、最初に行う臨床的な思考プロセスそのものです。

解答のコツ

赤血球恒数は3種類ありますが、この問題はMCVだけ計算すれば十分です。MCVで貧血を分類し、その分類から原因を選ぶのが最短ルートになります。

【計算のステップ(MCVの算出)】

貧血の形態分類を行うため、赤血球1個の「大きさ」を示すMCVを計算します。

MCV
= Ht(%) ÷ RBC(百万) × 10
= 24.0 ÷ 2.00 × 10
120 fL

MCVの基準値は約80〜100 fLです。計算結果の120 fLは基準値を大きく超えているため、この患者さんの貧血は赤血球が巨大化する「大球性貧血」であると判断できます。

【各選択肢の解説(病態と関連検査)】

「大球性貧血」の原因を探るための検査項目を選択します。

  • 1.誤り(鉛)
    鉛中毒は、ヘムの合成を阻害するため、赤血球が小さくなる小球性低色素性貧血を引き起こします。さらに、細胞診の項目でも出題される「好塩基性斑点」がみられるのが特徴です。
  • 2.正しい(葉酸)
    葉酸やビタミンB12は、細胞が分裂する際のDNA合成に不可欠なビタミンです。これが欠乏すると、核の分裂は遅れる一方で細胞質は成長を続ける「核と細胞質の非同期」が起こります。そのため細胞分裂が遅れ、赤血球は大きいまま成熟するため大球性貧血となります。大球性貧血(巨赤芽球性貧血)の原因を特定するうえで最も有用な検査です。
  • 3.誤り(フェリチン)
    フェリチンは体内の「貯蔵鉄」を反映するマーカーです。低下している場合は鉄欠乏性貧血を疑いますが、鉄が足りない場合は赤血球が作れず小さくなるため小球性低色素性貧血(MCV低下)となります。
  • 4.誤り(エリスロポエチン)
    エリスロポエチン(EPO)は腎臓で作られる赤血球増生ホルモンです。これが不足して起こる腎性貧血などは、赤血球の大きさは変わらない正球性正色素性貧血(MCV正常)を示します。
  • 5.誤り(セルロプラスミン)
    銅を運搬するタンパク質です。銅欠乏による貧血は稀ですが、生じた場合は小球性〜大球性など様々な形態をとることがあります。第一選択の検査ではありません。

【頻出】貧血の形態学的分類と代表疾患

MCVによる分類と疾患の結びつきは、血液学の最重要事項です。

分類 MCVの目安 代表的な疾患・原因 第一選択検査
小球性 80未満 鉄欠乏性貧血、サラセミア フェリチン
正球性 80〜100 再生不良性貧血、腎性貧血、溶血性貧血 網赤血球
大球性 100超 ビタミンB12・葉酸欠乏 葉酸、ビタミンB12

間違えやすいところ

公式に代入する際の「単位」の引っかけに注意しましょう。

  • MCVは「100」を掛けて計算する → 誤り(最後に掛ける定数は「10」です。100を掛けるのはMCHCです)
  • 赤血球数の単位をそのまま計算する → 誤り(公式のRBCは「10の6乗(百万)」単位で代入します。200万なら「2」を代入します)
  • MCV120で鉄欠乏性貧血を疑う → 誤り(鉄が足りないと赤血球は小さくなるため小球性になります)
  • 葉酸欠乏は小球性になる → 誤り(DNA合成障害により赤血球が大きいまま成熟するため大球性になります)

覚えるべきポイント

計算結果から鑑別する流れは、この2つの組み合わせが定番です。

  • MCV<80 → 鉄欠乏性貧血を疑う
  • MCV>100 → 葉酸・ビタミンB12欠乏を疑う
さい
さい
血液検査室の分析装置も、全く同じ計算式でMCVを瞬時に算出して画面に出してくれます。機械が算出した異常値を見て「MCVが高いから、まず葉酸やビタミンB12欠乏を疑おう」と推理するのが臨床検査技師の仕事です。

さいの補足:MCHとMCHCの計算方法

今回はMCVだけで解けましたが、残りの2つの赤血球恒数(MCH・MCHC)の公式も必ず覚えておきましょう。

  • MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)
    赤血球1個に入っているHbの量です。
    = Hb(g/dL) ÷ RBC(百万) × 10
    (本問では 7.5 ÷ 2 × 10 = 37.5 pg)
  • MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)
    赤血球の容積に対するHbの濃さ(詰まり具合)です。
    = Hb(g/dL) ÷ Ht(%) × 100
    (本問では 7.5 ÷ 24 × 100 = 31.3 %)

今回の問題ではMCVだけで十分に解答できますが、国家試験ではMCH・MCHCも計算問題として出題されるため、3つの公式はセットで覚えておきましょう。

問61:APTTクロスミキシング試験の解釈

【問題】
APTT延長を認めたため、APTTにてクロスミキシング試験を実施した。結果を表に示す。考えられるのはどれか。

  • 1.血友病B
  • 2.von Willebrand病
  • 3.ビタミンK欠乏症
  • 4.抗リン脂質抗体症候群
  • 5.播種性血管内凝固(DIC)
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正答:4

【問題の考え方】

クロスミキシング試験は「凝固因子が不足しているのか、それとも凝固を妨げる抗体(インヒビター)が存在するのか」を見分けるための検査です。まず、正常血漿を混ぜてAPTTが補正されるかどうかを確認します。補正されれば凝固因子欠乏、補正されなければインヒビターを疑います。その後、時間依存性の有無からインヒビターの種類を判断する3ステップで解けます。

【表の読解ステップ】

ステップ1:1対1(5対5)混合の「混和直後」を見る
表の中央、「5対5」の混和直後の結果に注目します。患者血漿(88秒)に正常血漿(26秒)を半分混ぜています。
・結果は「72秒」であり、正常値(26秒)に近づくことなく、大きく延長したままです。
・もし単なる「因子欠乏」であれば、正常血漿から半分補充されるだけでAPTTは明らかに短縮し、グラフは「下に凸」になります。
・今回は回復していないため、補充した正常因子まで邪魔されている「インヒビターパターン(上に凸)」だと判定できます。

ステップ2:「37℃・2時間後」を見る
次に、インヒビターの種類を見分けます。「5対5」の37℃・2時間後の結果は「74秒」であり、直後の72秒とほぼ同じです。
第Ⅷ因子インヒビター(後天性血友病など)の場合は、時間と温度に依存して邪魔する力が強くなるため、2時間後にはさらに大きく延長します(時間依存性・遅延反応)。
・今回は変化がない(時間依存性がない)ため、混ぜた直後からすぐに邪魔をする即時反応型のインヒビター(ループスアンチコアグラント:LAなど)の存在が強く疑われます。

ステップ3:疾患の特定
「即時型のインヒビター」が存在する代表的な疾患は、選択肢4の抗リン脂質抗体症候群です。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(血友病B)
    第Ⅸ因子が先天的に不足する疾患です。純粋な「凝固因子欠乏」であるため、正常血漿を混ぜるとAPTTは正常化し、下に凸のパターンになります。
  • 2.誤り(von Willebrand病)
    フォン・ヴィルブランド因子の異常により、二次的に第Ⅷ因子も低下する疾患です。これも「凝固因子欠乏」の扱いとなるため、下に凸のパターンになります。
  • 3.誤り(ビタミンK欠乏症)
    第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子が作れなくなる後天性の「凝固因子欠乏」です。下に凸のパターンになります。
  • 4.正しい(抗リン脂質抗体症候群)
    自己抗体であるループスアンチコアグラント(LA)が、検査試薬のリン脂質に結合して凝固反応を邪魔します。時間依存性のない即時型のインヒビターパターン(上に凸)を示します。
  • 5.誤り(播種性血管内凝固:DIC)
    全身で血栓が多発し、凝固因子が使い果たされてしまう消費性凝固障害であり、クロスミキシング試験では因子欠乏パターン(補正される:下に凸)を示します。

【頻出】クロスミキシング試験の判定パターンまとめ

パターン 代表疾患
下に凸(補正される) 血友病、vWD、DIC、ビタミンK欠乏など
上に凸(即時型) 抗リン脂質抗体症候群(APS)
上に凸(遅延型) 後天性血友病(第Ⅷ因子インヒビターなど)

間違えやすいところ

「上に凸・下に凸」という言葉の解釈を間違えないようにしましょう。

  • 正常血漿を混ぜて短縮したらインヒビターである → 誤り(短縮=補正された=「ただの因子欠乏」です。)
  • 血友病はインヒビターパターンを示す → 誤り(先天性の血友病は「下に凸(因子欠乏)」です。※ただし、補充療法を長く続けて抗体ができてしまった場合や、「後天性」血友病の場合は上に凸になります。)
  • ループスアンチコアグラントは遅延反応を示す → 誤り(LAは即時反応です。時間とともに延長する遅延反応は第Ⅷ因子インヒビターの特徴です。)
  • APTTが延長しているから必ず出血傾向を示す → 誤り(APSでは血栓傾向になります。国試でも臨床でも非常に重要です。)

覚えるべきポイント

クロスミキシング試験は、この4つだけで確実に解けます。

  • 補正される = 因子欠乏
  • 補正されない = インヒビター
  • 時間依存性あり = 第Ⅷ因子インヒビター
  • 時間依存性なし = ループスアンチコアグラント
さい
さい
クロスミキシング試験は「足りないだけなら補充で治る」「邪魔するものがいるなら補充しても治らない」というイメージが一番大切です。このイメージを持っておくとグラフの「上に凸・下に凸」も自然と頭に入ってきますよ!

さいの補足:抗リン脂質抗体症候群の「パラドックス」

抗リン脂質抗体症候群(APS)は、自己抗体であるループスアンチコアグラント(LA)などが原因で起こる病気です。

この病気の面白い(そして怖い)ところは、「試験管の中の検査(APTT)では血が固まりにくく(延長)なるのに、実際の患者さんの体の中では血栓(血の塊)ができやすくなる」というパラドックス(矛盾)がある点です。

試験管の中では、LAが検査試薬のリン脂質を邪魔するためAPTTが延長します。しかし体内では、抗体が血小板や血管内皮細胞を刺激してしまうため、逆に血栓症(深部静脈血栓症や脳梗塞)や習慣流産を引き起こします。このためAPSでは「APTT延長=出血しやすい」と考えると誤答につながります。

問62:血清と血漿の違い

【問題】
血清に含まれないのはどれか。

  • 1.アルブミン
  • 2.γ-グロブリン
  • 3.ハプトグロビン
  • 4.フィブリノゲン
  • 5.トランスフェリン
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正答:4

【問題の考え方】

臨床検査の基本中の基本である「血清」と「血漿」の違いを問う問題です。両者はどちらも血液の液体成分ですが、「血液が凝固した後の上澄みか、凝固する前の上澄みか」という決定的な違いがあります。凝固のメカニズムと関連付けて成分の違いを整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(含まれる:アルブミン)
    血液の浸透圧を維持したり、様々な物質(ビリルビンや遊離脂肪酸など)を運搬したりする、血液中で最も量の多いタンパク質です。血液凝固には関与せず消費されないため、血清中にも血漿中にも豊富に含まれます。
  • 2.誤り(含まれる:γ-グロブリン)
    主に免疫グロブリン(抗体)として働き、体を感染から守る役割を担っています。これも血液凝固には関与しないため、血清中に含まれます。
  • 3.誤り(含まれる:ハプトグロビン)
    赤血球が壊れた際に放出される遊離ヘモグロビンと結合し、鉄の損失を防ぐタンパク質です。そのため溶血性貧血で低下します。血液凝固には関与しないため、血清中に含まれます。
  • 4.正しい(含まれない:フィブリノゲン)
    フィブリノゲン(第Ⅰ因子)は、血液凝固の中心的な役割を果たすタンパク質です。血液が凝固する際、フィブリノゲンは網目状の「フィブリン」に変化し、血球を絡め取って血餅(血の塊)を作ります。つまり、凝固の過程で「材料」として使い果たされてしまうため、凝固した後の上澄みである「血清」にはフィブリノゲンはほとんど残っていません。
  • 5.誤り(含まれる:トランスフェリン)
    体内で鉄イオン(Fe³⁺)を運搬する役割を持つタンパク質です。血液凝固には関与しないため、血清中に含まれます。

【頻出】血清と血漿の比較まとめ

検体の作り方と成分の違いを整理しておきましょう。

項目 血清(Serum) 血漿(Plasma)
血液の状態 凝固させた後の上澄み 凝固させない血液の上澄み
採血管(抗凝固剤) 抗凝固剤:なし
(凝固促進剤入りなど)
抗凝固剤:あり
(クエン酸、ヘパリン、EDTAなど)
フィブリノゲン 含まれない(消費されるため) 含まれる(そのまま残る)
その他の凝固因子 第Ⅴ、Ⅷ因子なども消費されて低下 すべて含まれる

間違えやすいところ

  • 血清にはタンパク質が含まれない → 誤り(含まれないのはフィブリノゲンなどの一部の凝固因子だけで、アルブミンなどの多くのタンパク質は残っています。)
  • 血漿は凝固した後の上澄みである → 誤り(名前が似ていますが、凝固した後は「血清」です。)
  • 凝固検査には血清を用いる → 誤り(血清はすでに凝固因子を使い果たしているので、凝固検査はできません。凝固検査にはクエン酸ナトリウムを加えた「血漿」を用います。)

覚えるべきポイント

このシンプルな考え方を頭に入れておきましょう。

「血清」 = 「血漿」からフィブリノゲンなどの凝固因子が消費されたもの
さい
さい
血液が固まる(血餅ができる)とき、フィブリノゲンは「糊(のり)」として使われてしまいます。だから残った上澄み(血清)には糊が残っていないんです。

さいの補足:なぜ凝固検査は血漿なの?

「血清」ではフィブリノゲンをはじめとする第Ⅴ・第Ⅷ因子などの凝固因子がすでに消費されているため、PTやAPTTなど凝固能を評価する検査には使用できません。凝固検査ではフィブリノゲンをはじめとする凝固因子そのものを測定するため、凝固因子が消費された血清ではなく、クエン酸ナトリウムで凝固を防いだ「血漿」を使用します。

一方、生化学検査や免疫検査では凝固因子は不要なので、凝固促進剤入りの採血管(キャップの色は施設やメーカーにより異なります)で採血した血清が主に用いられます。

ちなみに、血清にはフィブリノゲンが含まれていないため、生化学検査で測定する総蛋白(TP)の値は、血漿で測定した総蛋白よりも約 0.2〜0.4 g/dL(フィブリノゲンに相当する量)だけ低くなります。この違いも国試や臨床現場で役立つ知識です。

問63:フローサイトメトリーによるCD45ゲーティング

【問題】
骨髄穿刺液のフローサイトメトリ法のCD45ゲーティング(別冊No. 12)を別に示す。黒い円で囲まれている部分の細胞はどれか。

  • 1.単 球
  • 2.顆粒球
  • 3.赤芽球
  • 4.骨髄芽球
  • 5.リンパ球
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正答:4

【問題の考え方】

この問題は、フローサイトメトリーのCD45/SSC(側方散乱光)プロットの基本的な見方を理解しているかが問われます。縦軸のCD45と横軸のSSCがそれぞれ「細胞のどんな特徴」を表しているのかを組み合わせることで、各細胞集団がプロット上のどの位置に現れるかを特定できます。

【グラフの縦軸と横軸の意味】

縦軸 (Y軸):CD45(白血球共通抗原)
CD45は白血球の表面にあるマーカーです。発現強度は細胞の系統や成熟度によって異なります。一般に未熟な芽球ではCD45発現は弱く(Dim)、成熟リンパ球や単球では強く(Bright)発現します。顆粒球は中等度(Moderate)です。赤血球系の細胞(赤芽球など)や血小板は白血球ではないため、CD45は陰性(Negative)になります。

横軸 (X軸):側方散乱光 (SSC)
レーザー光が細胞内の構造に当たって散乱する光の強さを示します。細胞内構造(顆粒や核構造など)の複雑さを反映します。したがって、顆粒の少ないリンパ球や芽球はSSCが低く(左側)、豊富な顆粒を持つ顆粒球はSSCが高く(右側)なります。

【各選択肢の解説(プロット上の位置)】

  • 1.誤り(単球)
    CD45強陽性(Bright)で、SSCはリンパ球より少し高い中等度です。リンパ球集団のすぐ右側に位置します。
  • 2.誤り(顆粒球)
    CD45は中等度陽性で、顆粒を豊富に持つためSSCが高くなります。グラフの右側へ大きく広がっている集団です。
  • 3.誤り(赤芽球)
    赤芽球(赤血球系細胞)はCD45陰性でSSCも低いため、最下部(ベースライン付近)に分布します。
  • 4.正しい(骨髄芽球)
    顆粒を持たないためSSCが低く、未熟な細胞であるためCD45の発現は弱陽性(Dim)です。リンパ球の集団よりも少し下にある「黒い円で囲まれた部分(Blast gate:ブラスト領域)」が骨髄芽球の典型的な位置です。白血病細胞はこの領域に集まりやすいため、最初にこの部分をゲーティングして解析を進めます。
  • 5.誤り(リンパ球)
    CD45が最も強く発現(強陽性:Bright)し、顆粒を持たないためSSCは低いです。グラフの左上の最も濃い集団です。

【頻出】各細胞のCD45とSSCの特徴まとめ

細胞の種類とプロット上の位置関係を整理しておきましょう。

細胞の種類 CD45発現強度 (縦軸) 側方散乱光:SSC (横軸) プロット上の位置
骨髄芽球 弱陽性(Dim) 低い(Low) 左下(ブラスト領域)
リンパ球 強陽性(Bright) 低い(Low) 左上
単球 強陽性(Bright) 中等度(Moderate) 中央上部
顆粒球 中等度(Moderate) 高い(High) 右側に広く分布
赤芽球 陰性(Negative) 低い(Low) 最下部

間違えやすいところ

「一番下=芽球」という思い込みによる引っかけに注意しましょう。

  • 骨髄芽球はCD45が陰性である → 誤り(芽球も白血球の仲間なので、弱いながらも発現しています。完全に陰性になるのは赤芽球などの非白血球系です。)
  • SSCが高い細胞はリンパ球である → 誤り(SSCは細胞内構造の複雑さを反映します。顆粒を持たないリンパ球はSSCが低くなります。)
  • 一番左下のベースラインにいるのが芽球である → 誤り(ベースラインはCD45陰性の赤芽球・赤血球系です。芽球はその少し上に浮いています。)

覚えるべきポイント

プロット問題はこの特徴(強さの順番)を覚えておけばほぼ解けます。

  • リンパ球 = CD45 Bright・SSC Low
  • 芽球 = CD45 Dim・SSC Low
  • 顆粒球 = CD45 Moderate・SSC High
  • 赤芽球 = CD45 Negative・SSC Low

【CD45の強さ】
リンパ球(最強) > 単球 > 顆粒球 > 芽球 > 赤芽球(陰性)

【SSCの高さ】
顆粒球(最高) > 単球 > リンパ球・芽球・赤芽球(低い)

さい
さい
白血病の検査では、まずこのCD45/SSCプロットを展開して、リンパ球の下にある「ブラスト領域(Blast gate)」に異常な細胞の集団(腫瘍細胞)がいないかを確認します。これが白血病細胞を見つける第一歩です!

さいの補足:CD45ゲーティングの臨床的意義

なぜわざわざCD45とSSCでグラフを作るのでしょうか?それは、白血病細胞(芽球)だけを「えり分け(ゲーティング)」するためです。

骨髄液の中には、正常なリンパ球や顆粒球、赤血球などがたくさん混ざっています。そのまま他のマーカー(CD33やCD34など)を調べようとすると、正常な細胞の反応まで拾ってしまい、がん細胞の特徴がぼやけてしまいます。そこで、芽球特有の「CD45 Dim, SSC Low」という性質を利用して、そのエリア(ブラスト領域)にいる細胞だけをPC上で囲み、「この枠の中の細胞だけを詳しく解析する」という設定を行います。これがCD45ゲーティング法です。このひと手間をかけることで、白血病細胞の正確な性質(細胞表面マーカー)を突き止めることができるのです。

問64:慢性骨髄性白血病(CML)の所見と染色体異常

【問題】
28歳の男性。血液検査で異常を指摘されたため来院した。血液所見:白血球199,000/μL、赤血球228万/μL、Hb8.2g/dL、血小板25.7万/μL。末梢血のMay-Giemsa染色標本の弱拡大写真(別冊No. 13A)と強拡大写真(別冊No. 13B)を別に示す。染色体検査で予想される所見はどれか。

  • 1.t(8;21)
  • 2.t(9;22)
  • 3.t(12;21)
  • 4.t(15;17)
  • 5.inv(16)
タップして正答と解説を見る

正答:2

【問題の考え方】

この問題は、血液検査データと末梢血塗抹標本の画像所見から、慢性骨髄性白血病(CML)を正しく診断し、その原因となる特異的な染色体異常を選択できるかが問われる総合的な問題です。

【臨床所見と画像所見の解釈】

まず、与えられた情報から病態を推理します。

  • 白血球の著増:白血球 199,000/μL と、正常上限をはるかに超える異常な増加を示しています。
  • 貧血:赤血球 228万/μL、Hb 8.2g/dL と貧血を認めます。骨髄で白血病細胞が異常増殖し、正常な赤血球造血が圧迫されているためです。
  • 血小板は正常:CMLの慢性期では、血小板数は正常または増加することが多いのが特徴です。

次に、末梢血の染色標本(画像)を確認します。

  • 弱拡大像(A):画面全体が多数の白血球で埋め尽くされています。
  • 強拡大像(B):骨髄球・後骨髄球・桿状核球など様々な成熟段階の顆粒球が混在しています。あたかも骨髄を直接見ているような状態です。(※CMLの慢性期では骨髄芽球は10%未満です)。さらに、濃紫色の粗大顆粒を持つ好塩基球の増加も認められます。

これらの「著しい白血球増加」「様々な成熟段階の顆粒球の出現」「好塩基球の増加」は、慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期に極めて特徴的な所見です。

さらに、CMLでは好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコアが低値を示すことも、国家試験では非常に重要な鑑別ポイントになります。

【各選択肢の解説(染色体異常と疾患)】

  • 1.誤り(t(8;21))
    急性骨髄性白血病(AML)のM2に特徴的な染色体異常です。RUNX1-RUNX1T1融合遺伝子が形成されます。アウエル小体を認める大型の芽球が増殖します。
  • 2.正しい(t(9;22))
    CMLの95%以上で認められるフィラデルフィア(Ph)染色体です。9番染色体のABL1遺伝子と22番染色体のBCR遺伝子が相互転座を起こし、BCR-ABL1融合遺伝子が作られます。この異常な遺伝子から作られるチロシンキナーゼが「増殖し続けろ」という命令を出し続けるため、CMLを発症します。一部の急性リンパ性白血病(Ph陽性ALL)でも認められます。
  • 3.誤り(t(12;21))
    小児のB細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)で高頻度に見られる染色体異常です。ETV6-RUNX1融合遺伝子が形成されます。予後は比較的良好です。
  • 4.誤り(t(15;17))
    急性前骨髄球性白血病(APL / AML-M3)に特異的な染色体異常です。PML-RARA融合遺伝子が形成されます。ファゴット細胞(アウエル小体の束)が出現し、DICを合併しやすいのが特徴です。
  • 5.誤り(inv(16))
    16番染色体の逆位であり、好酸球増加を伴う急性骨髄単球性白血病(AML-M4Eo)に特徴的です。CBFB-MYH11融合遺伝子が形成されます。

【頻出】白血病と染色体異常まとめ

国家試験で確実に得点すべき「染色体と疾患のペア」です。

染色体異常 融合遺伝子 関連する主な血液疾患
t(9;22) BCR-ABL1 慢性骨髄性白血病(CML)、Ph陽性ALL
t(15;17) PML-RARA 急性前骨髄球性白血病(APL / M3)
t(8;21) RUNX1-RUNX1T1 急性骨髄性白血病(AML-M2)
inv(16) CBFB-MYH11 好酸球増加を伴うAML(AML-M4Eo)
t(12;21) ETV6-RUNX1 小児B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)

間違えやすいところ

数字の組み合わせが似ているため、引っかけに注意しましょう。

  • t(9;22)はAPLの染色体異常である → 誤り(APLは「t(15;17)」、CMLが「t(9;22)」です。)
  • t(8;21)は小児ALLでよく見られる → 誤り(t(8;21)はAML-M2です。小児ALLは「t(12;21)」です。)
  • CMLでは白血球裂孔がみられる → 誤り(白血球裂孔は「急性白血病(AML)」の所見です。AMLでは芽球が主体で成熟顆粒球が少ないため白血球裂孔を認めますが、CMLでは様々な成熟段階の細胞が途切れることなく出現します。)

覚えるべきポイント

国家試験対策として、CMLとAPLのポイントを確実に押さえておきましょう。

CMLで絶対に覚えるべき5つのポイント

  • 好塩基球の増加(↑)
  • NAP(好中球アルカリホスファターゼ)スコア低値
  • t(9;22)(フィラデルフィア染色体)
  • BCR-ABL1融合遺伝子
  • TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)が著効

APL(M3)のポイント

  • APL(M3) = t(15;17) = PML-RARA
さい
さい
末梢血の塗抹標本を見たときに「あれ、これ骨髄の標本だっけ?」と錯覚するくらい、いろんな成長段階の細胞がワサワサいるのがCMLの典型的なパターンです。

さいの補足:CMLの特効薬(チロシンキナーゼ阻害薬)

t(9;22)によって作られる「BCR-ABL1チロシンキナーゼ」は、CMLの細胞を無限に増殖させる元凶です。逆に言えば、この酵素の働きさえ止めてしまえば、CMLの進行を止めることができます。

そこで開発されたのが、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI:イマチニブなど)という分子標的薬です。この薬はBCR-ABL1チロシンキナーゼを阻害することで白血病細胞の増殖を抑え、アポトーシス(細胞死)を誘導します。この薬の登場により、かつては骨髄移植しか助かる道がなかったCMLの治療成績は劇的に改善し、薬を飲みながら通常の生活を送れるようになりました。染色体異常の発見が、そのまま画期的な治療薬の開発につながった医学の歴史的な成功例です。

問65:鉄動態のグラフと貧血の鑑別

【問題】
血清鉄と鉄結合能の関係(別冊No. 14)を別に示す。この患者で考えられるのはどれか。

  • 1.感染症
  • 2.尿毒症
  • 3.溶血性貧血
  • 4.鉄欠乏性貧血
  • 5.再生不良性貧血
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正答:4

【問題の考え方】

提示されたグラフから「血清鉄」と「総鉄結合能(TIBC)」の増減を読み取り、貧血の種類を分類する問題です。特に「鉄欠乏性貧血」と「感染症などの慢性疾患に伴う貧血」の鉄動態の違いは超頻出なので、セットで整理しておきましょう。

【グラフの読解とメカニズム】

まず、グラフが何を示しているかを「電車の座席」に例えて理解します。

  • 灰色の部分(血清鉄:Fe):血液中に存在する鉄の量。電車の「乗客」です。
  • 白色の部分(不飽和鉄結合能:UIBC):鉄を運ぶタンパク質(トランスフェリン)のうち、まだ鉄と結合していない部分。電車の「空席」です。
  • グラフ全体の高さ(総鉄結合能:TIBC):乗客と空席を足したもの(Fe+UIBC)。電車の「全座席数」を意味します。

健常人と患者のグラフを比較します。

  • ・患者の血清鉄(灰色)は、健常人に比べて著しく低くなっています(乗客が少ない)。
  • ・患者のTIBC(グラフ全体の高さ)は、健常人より明らかに高くなっています(全座席数が多い)。
  • ・結果として、患者のUIBC(白色の空席)は非常に大きくなっています。

つまり、この患者の血液データは「低血清鉄」かつ「高TIBC」という特徴を示しています。体内の鉄が枯渇すると、体は「少しでも多くの鉄を効率よく捕まえて運びたい!」と危機感を覚え、肝臓でのトランスフェリン(座席)の産生を代償的に増やします。肝臓ではトランスフェリン産生が増加するため、TIBCが上昇します。このパターンは鉄欠乏性貧血の典型的な所見です。

【各選択肢の解説(他疾患との鑑別)】

  • 1.誤り(感染症)
    感染や炎症が続くと、体は病原菌に鉄を利用されないように、鉄を貯蔵庫(マクロファージ)の中に隠してしまいます。そのため血清鉄は低下しますが、同時にトランスフェリンの産生も抑制されるため、TIBCも低下します。この病態を「慢性疾患に伴う貧血(ACD)」と呼びます。
  • 2.誤り(尿毒症)
    慢性腎不全に伴う貧血(腎性貧血)は主因はエリスロポエチン低下であり、慢性炎症を伴う症例では低Fe・低TIBCを示すことがあります。
  • 3.誤り(溶血性貧血)
    赤血球が異常に壊されるため、中に入っていたヘモグロビン由来の鉄が血液中に溢れ出し、血清鉄は上昇することが多いです。TIBCは正常です。
  • 4.正しい(鉄欠乏性貧血)
    上記の通り、「血清鉄低下・TIBC上昇」は鉄欠乏性貧血の典型的なパターンです。
  • 5.誤り(再生不良性貧血)
    骨髄で造血が低下し鉄が利用されないため、血清鉄・フェリチンは上昇しやすい状態となります。UIBC(空席)はほとんどなくなります。

【頻出】国家試験で覚える鉄動態まとめ

フェリチン(貯蔵鉄)も含めて、貧血の鑑別パターンを整理しておきましょう。

病態 Fe TIBC Ferritin
鉄欠乏性貧血
慢性炎症(ACD)
鉄芽球性貧血 ↓〜→
再生不良性貧血 ↓〜→
溶血性貧血

間違えやすいところ

「血清鉄が低い=鉄欠乏性貧血」と即答しないように注意が必要です。

  • 血清鉄が低下していればTIBCは必ず上昇する → 誤り(慢性疾患に伴う貧血では、血清鉄もTIBCも一緒に低下します。)
  • 再生不良性貧血では血清鉄が低下する → 誤り(骨髄で鉄が使われないため、血液中に鉄が余って「上昇」します。)

ここだけ覚えておけば大丈夫

鉄欠乏性貧血と慢性疾患に伴う貧血は、「TIBCとフェリチンの動き」で区別します。

  • 鉄欠乏性貧血 = TIBC上昇、フェリチン低下(体の中から本当に鉄が消えている)
  • 慢性疾患に伴う貧血 = TIBC低下、フェリチン上昇(鉄はあるのに蔵に隠して使えない状態)

この2つの対比は血液学の最重要事項です。

さい
さい
血液検査のデータを見るとき、血清鉄だけを見ても「本当に鉄が足りないのか」は分かりません。TIBCが上がっていれば「あ、体が必死に鉄を集めようとしているな」と判断できるわけです。

さいの補足:鉄欠乏のプロセス(財布と貯金)

体内の鉄を「お金」に例えてみましょう。

  • フェリチン:銀行の「貯金」
  • 血清鉄:財布の中の「現金」
  • ヘモグロビン:生活に必要な「生活費」

鉄不足になると、まず銀行の貯金(フェリチン)を崩して生活費に回します。貯金が底をつくと、今度は財布の現金(血清鉄)が減り始めます。それでも足りなくなって初めて、生活費(ヘモグロビン)が低下し「貧血」という症状が現れます。

つまり、鉄欠乏性貧血の最も早期のサインは「血清フェリチンの低下」なのです。貧血と診断される前からすでに体の中では鉄不足が始まっている、というプロセスを理解しておきましょう。

問66:真性赤血球増加症(PV)の検査所見

【問題】
真性赤血球増加症における検査項目とその結果の組合せで正しいのはどれか。

  • 1.血清LD ―― 低 値
  • 2.赤血球数 ―― 低 値
  • 3.NAPスコア ―― 高 値
  • 4.血清ビタミンB12 ―― 低 値
  • 5.血清エリスロポエチン ―― 高 値
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正答:3

【問題の考え方】

真性赤血球増加症(PV)という骨髄増殖性腫瘍に特徴的な検査所見を正しく理解しているかが問われる問題です。PVは赤血球が自律的に(エリスロポエチン非依存性に)増加する疾患ですが、それに伴い白血球や血小板も増加することが多く、様々な検査項目に特徴的な変動が現れます。疾患のメカニズムと関連付けてデータの動きを整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(血清LD / LDH)
    PVでは、骨髄での造血が著しく亢進し、血球のターンオーバー(細胞回転)が増加するため、細胞内酵素であるLDは高値を示します。
  • 2.誤り(赤血球数)
    病態の根幹が赤血球の自律的な増加であるため、赤血球数は著しく高値となります。これが診断の出発点となる所見です。
  • 3.正しい(NAPスコア)
    NAP(好中球アルカリホスファターゼ)は、成熟好中球に存在する酵素です。その活性を点数化したNAPスコアは、PVを含む多くの骨髄増殖性腫瘍で高値を示します。逆に、慢性骨髄性白血病(CML)では著しい低値を示すため、両者の鑑別に非常に有用な検査です。
  • 4.誤り(血清ビタミンB12)
    PVでは、好中球由来のビタミンB12結合蛋白(トランスコバラミンI / ハプトコリン)が増加するため、血清ビタミンB12は高値となります。
  • 5.誤り(血清エリスロポエチン:EPO)
    PVでは、骨髄がEPOからの指令とは無関係に赤血球を過剰産生します。その結果、増えすぎた赤血球が体内の酸素運搬を十分に行うため、腎臓は「これ以上赤血球は必要ない」と判断し、EPOの産生を抑制します(ネガティブフィードバック機構)。そのため、血清EPO値は低値となるのが特徴です。これは、EPOが過剰に作られる二次性赤血球増加症との鑑別に極めて重要です。

【頻出】主な血球増加性疾患における検査所見の比較

PV、二次性赤血球増加症、CMLの検査データの違いは国家試験で頻出です。

検査項目 真性赤血球増加症
(PV)
二次性赤血球増加症 慢性骨髄性白血病
(CML)
赤血球数 著増 (↑↑) 増加 (↑) 正常〜軽度低下
白血球・血小板数 増加 (↑) 正常 (→) 著増 (↑↑)
NAPスコア 高値 (↑) 正常〜高値 著減 (↓↓)
血清EPO 低値 (↓) 高値 (↑) 正常〜高値
血清ビタミンB12 高値 (↑) 正常 (→) 著増 (↑↑)
原因遺伝子など JAK2変異 低酸素血症、EPO産生腫瘍など BCR-ABL1融合遺伝子

間違えやすいところ

PVのデータは「低下するもの」を確実に覚えておくのがコツです。

  • PVではエリスロポエチンが高値になる → 誤り(赤血球が増えすぎているため、体は血を作るのをやめようとしてEPOは「低値」になります。)
  • PVではNAPスコアが低値になる → 誤り(NAPスコアが低下するのは「CML」の典型的な特徴です。PVは高値です。)
  • PVでは血清ビタミンB12が低下する → 誤り(トランスコバラミンIが増加するため、結果として血清B12は「高値」になります。)

ここだけ覚えておけば大丈夫

真性赤血球増加症(PV)で国家試験に出題されるポイントはこの5つです。

  • 赤血球だけでなく白血球・血小板も増加する(汎血球増加)
  • NAPスコア = 高値(CMLとの鑑別)
  • エリスロポエチン(EPO) = 低値(二次性との鑑別)
  • ビタミンB12 = 高値
  • JAK2遺伝子変異(約95%で陽性)
さい
さい
PVの患者さんは血液がドロドロになるため、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を起こしやすくなります。治療として、血を抜いてサラサラにする「瀉血(しゃけつ)療法」が行われるのも特徴の一つです。

さいの補足:JAK2遺伝子変異とWHO診断基準

通常、赤血球が作られるためには、腎臓から分泌されるエリスロポエチン(EPO)が造血幹細胞の受容体に結合し、「血を作れ!」というスイッチ(シグナル伝達)をオンにする必要があります。このスイッチの役割を果たしているのが「JAK2」というチロシンキナーゼ(酵素)です。

PVの患者さんの大部分は、このJAK2遺伝子に点突然変異(V617F変異など)が生じています。この変異が起こると、EPOが受容体に結合していなくても、JAK2のスイッチが常に「オン」の状態になりっぱなしになります。その結果、外部からの指令に関係なく赤血球が勝手に増殖し続けるため、PVを発症します。このメカニズムが分かれば、「なぜEPOが低くても赤血球が増え続けるのか」が論理的に理解できるはずです。

現在のWHO診断基準では、JAK2変異の証明はPV診断の主要項目(大基準)となっています。

問67:線溶亢進による出血傾向(PAI-1欠損症)

【問題】
線溶亢進による出血傾向を認める先天性疾患はどれか。

  • 1.PAI-1欠損症
  • 2.プロテインS欠損症
  • 3.高ホモシステイン血症
  • 4.プラスミノゲン欠損症
  • 5.アンチトロンビン欠損症
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正答:1

【問題の考え方】

先天性に出血傾向を示す疾患なのか、血栓傾向を示す疾患なのかを判定する問題です。血液の「凝固(血を固める)」と「線溶(固まった血栓を溶かす)」のバランスを理解しているかが問われます。それぞれにアクセルとブレーキが存在するため、どのブレーキが壊れたかを論理的に導き出せるようにしておきましょう。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.正しい(PAI-1欠損症)
    血栓を溶かす線溶のプロセスは、
    「t-PA」 → 「プラスミノゲン」 → 「プラスミン」 → 「フィブリン(血栓)分解」
    という流れで進みます。PAI-1(プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1)は、このスタート地点である「t-PA」を止めることで、「線溶系のブレーキ」の役割を担っています。これが生まれつき欠損すると、ブレーキが効かなくなり線溶が止まらず暴走します(線溶亢進)。せっかく作った血栓がすぐに溶かされてしまうため、血が止まりにくく「出血傾向」となります。
  • 2.誤り(プロテインS欠損症)
    プロテインSは、プロテインCと共に凝固因子(第Ⅴa因子、第Ⅷa因子)を破壊し、「凝固系のブレーキ(抗凝固)」として働きます。これが欠損すると、血を固める働きが止まらなくなるため「血栓傾向」となります。
  • 3.誤り(高ホモシステイン血症)
    アミノ酸の一種であるホモシステインが血中で高値になると、血管内皮細胞を傷つけ、血小板の凝集や凝固系を活性化させてしまいます。その結果、「血栓傾向」(動脈・静脈両方の血栓症リスク)となります。
  • 4.誤り(プラスミノゲン欠損症)
    プラスミノゲンは、血栓を溶かす主役である「プラスミン」の前駆体です。つまり「線溶系のアクセル(材料)」です。これが欠損すると血栓を溶かすことができなくなるため、不要な血栓が体に残りやすくなり「血栓傾向」や、創傷治癒の異常(木様結膜炎など)をきたします。
  • 5.誤り(アンチトロンビン欠損症)
    アンチトロンビン(AT)は、トロンビンをはじめとする多くの凝固因子の働きを強力に抑え込む「凝固系のメインブレーキ」です。これが欠損すると、凝固系の暴走を止められなくなり、重篤な「血栓傾向」を示します。

【頻出】主な凝固・線溶因子の働きと欠損時の症状

「何の欠損症か」と「出血か血栓か」の組み合わせは国家試験の定番です。この6つは必ず整理しておきましょう。

因子名 本来の働き 欠損するとどうなるか?
アンチトロンビン(AT) 凝固抑制 血栓
プロテインC(PC) 凝固抑制 血栓
プロテインS(PS) プロテインCの補助 血栓
PAI-1 線溶抑制 出血
α2-PI プラスミン抑制 出血
プラスミノゲン 線溶促進 血栓

間違えやすいところ

「線溶系の因子の欠損だから出血傾向だろう」という思い込みによる引っかけに注意しましょう。

  • プラスミノゲン欠損症は出血傾向になる → 誤り(血栓を溶かす材料がないため、血栓が残ってしまい「血栓傾向」になります。)
  • アンチトロンビン欠損症は出血傾向になる → 誤り(凝固のブレーキがないため、血が固まりすぎて「血栓傾向」になります。)
  • プロテインC欠損症は出血傾向になる → 誤り(これも凝固のブレーキなので、欠損すると「血栓傾向」になります。)

ここだけ覚えておけば大丈夫

それぞれの「ブレーキ」が壊れたらどうなるかをイメージしましょう。

  • 凝固のブレーキが壊れる → 血栓
  • 線溶のブレーキが壊れる → 出血
さい
さい
血液の中では、血を固める力(凝固)と血を溶かす力(線溶)が常に綱引きをしてバランスを取っています。このシーソーのどちらに傾くかを考えるのが、凝固・線溶疾患を理解する一番の近道です!

さいの補足:後出血(再出血)というキーワード

PAI-1欠損症や、同じく線溶のブレーキであるα2-プラスミンインヒビター(α2-PI)欠損症の患者さんでは、ケガをした直後は正常に血栓ができて血が止まります(凝固系は正常だからです)。

しかし、線溶のブレーキが効かないため、できたばかりの血栓がすぐに溶かされてしまい、ある程度時間が経ってから再び出血が始まってしまいます。これを「後出血(再出血)」と呼びます。この「止まったと思ったらまた出血した」というエピソードは、線溶亢進の疾患を疑う非常に重要なサインとして国家試験でもよく登場します。

臨床血液学(午後)の解説は以上です

お疲れ様でした。

今回の午後の臨床血液学は、白血病の染色体異常、鉄動態のグラフ問題、APTTクロスミキシング試験の解釈、凝固・線溶系の異常など、国家試験で繰り返し出題される重要テーマが中心でした。暗記だけでは対応しにくい問題もありますが、「TIBCがなぜ上がるのか」「インヒビターがあるとなぜグラフが上に凸になるのか」を理解しておくと、初見の問題や少しひねった問題でも落ち着いて考えられるようになります。

疾患と検査データ・染色体異常の組み合わせは、一つひとつの疾患の「決定的な目印」を覚えることが得点への近道です。CMLならPh染色体やNAPスコア低値、鉄欠乏性貧血なら低フェリチンとTIBC上昇というように、特徴とセットで整理しながら復習してみてください。

臨床血液学は覚えることが多い分野ですが、一つひとつの知識が正常な造血機能や止血メカニズムとつながると大きな得点源になります。ぜひ過去問を繰り返し解きながら、自分の中で「なぜそうなるのか」を説明できるレベルまで理解を深めていきましょう。

さい
さい
お疲れ様でした!一見複雑なグラフや凝固検査の解釈も、焦らず「このパターンの特徴はこれ!」と自信を持てるレベルまで、この解説で一緒に仕上げていきましょう。

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