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第71回臨床検査技師国試 午後【病理組織細胞学】全選択肢の正誤理由と解説まとめ

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こんにちは、臨床検査技師のさいです。

今回は第71回臨床検査技師国家試験 午後「病理組織細胞学(問45〜58)」を1問ずつ解説まとめしていきます。

今回の病理分野は、細胞診や組織学の画像問題だけでなく、標本作製の工程、FISH法、電子顕微鏡、医療安全、関連法規まで幅広く出題されました。丸暗記だけでは解きにくい問題も多く、「なぜそうなるのか」を理解しているかが問われる内容だったと思います。

この解説では、正解を覚えるだけではなく、次に似た問題が出ても解けるように、できるだけ理由や考え方から説明しています。現場で働く中でのイメージや覚え方も交えながらまとめました。

勉強のお供として活用していただければ嬉しいです。もし解説の誤りや分かりにくい点がありましたら、XやInstagramなどのDMからお気軽にご連絡ください。

※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第71回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。

問45:組織標本作製における薄切のトラブルと対処法

【問題】
薄切で切片に傷ができる場合の対処法はどれか。

  • 1.逃げ角を変える。
  • 2.刃を取り替える。
  • 3.薄切する厚さの設定を変える。
  • 4.パラフィンブロックを冷却する。
  • 5.ミクロトーム刀の滑走速度を速くする。
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正答:2

【問題の考え方】

薄切(ミクロトームでのスライス)中に起こるトラブル(アーチファクト)と、その対処法を問う問題です。病理検査室で毎日行われるルーチン作業の知識であり、トラブルの原因が「刃」にあるのか「温度」にあるのか「角度」にあるのかを論理的に結びつけることがポイントです。

【各選択肢の解説(原理)】

  • 1.誤り(逃げ角を変える)
    逃げ角(クリアランスアングル)は、ブロックと刃の間の角度です。通常3〜5度に設定します。この角度が不適切だと、切片に洗濯板のような縞模様ができる現象(チャタリング)などの原因になりますが、線状の傷の直接的な原因ではありません。
  • 2.正しい(刃を取り替える)
    切片に縦の線状の傷(メス傷、スコア)が入る最大の原因は、刃先に目に見えない微細な欠け(ニック)があるか、硬い異物(石灰化など)が刃先に付着しているためです。最も確実な対処法は、新しい刃に交換するか、刃の未使用部分へずらすことです。
  • 3.誤り(厚さの設定を変える)
    切片の厚さは目的の組織(腎糸球体を見るなら薄く、中枢神経系なら厚くなど)に応じて変えますが、刃の欠陥による傷を解消することはできません。
  • 4.誤り(パラフィンブロックを冷却する)
    パラフィンブロックが十分に冷えていないと、組織が押しつぶされるように切れて切片が伸びず、「圧縮(compression)」が起こります。そのため薄切前には氷水などで冷却しますが、線状の傷の対処法ではありません。
  • 5.誤り(滑走速度を速くする)
    滑走速度を変えても刃先の欠けや異物は解消できないため、傷の対処にはなりません。

【関連知識】薄切時の主な不具合(アーチファクト)と対処法

トラブルの原因と対処法をセットで整理しておきましょう。

不具合(アーチファクト) 主な原因 適切な対処法
切片の傷(スコア・メス傷) 刃の欠け(ニック)、異物付着 刃を取り替える、位置をずらす
切片の圧縮(潰れ) ブロックの冷却不足、刃の切れ味低下 ブロックを再冷却する、刃を替える
チャタリング(厚薄の縞模様) 逃げ角が不適切、各部のネジの緩み 逃げ角を調整する、各部をしっかり固定する
切片が粉々に砕ける ブロックの過冷却 ブロックを少し温める

国試で間違えやすいポイント

トラブルの対処法をすり替える引っかけに注意しましょう。

  • チャタリングの対処法で刃を替える → 誤り(逃げ角や固定の緩みが原因です)
  • 切片が圧縮されるから逃げ角を変える → 誤り(まずはブロックの冷却不足を疑います)

覚えておきたいポイント

トラブルとその原因を1対1で結びつけておきましょう。

  • 傷が入る → 刃を疑う
  • 潰れる → 温度を疑う
  • 波打つ → 角度を疑う
さい
さい
「今日は切れないな…」という日はあります。そんな時は焦って設定を全部変えるのではなく、「刃・温度・角度」の順番で確認すると原因が見つかることもあります。

さいの補足:石灰化組織によるメス傷

乳がんや血管など、組織の中に石灰化(カルシウムの塊)が残っていると、事前の脱灰が不十分だった場合、薄切した瞬間に刃が欠けてしまいます。石灰化が残ったまま薄切すると、刃先が欠けてしまい、その後に切る標本にも同じ傷が入り続けます。そのため、刃を少しずらすか、新しい刃へ交換する必要があります。病理検査室で「メスがこぼれた(欠けた)」という言葉を耳にするのは、このような場面です。

問46:膵臓の特殊染色(好銀性細胞の同定)

【問題】
膵臓の特殊染色(別冊No. 8)を別に示す。染色法はどれか。

  • 1.PAM染色
  • 2.Bodian染色
  • 3.Grimelius染色
  • 4.Warthin-Starry染色
  • 5.Masson-Fontana染色
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正答:3

【問題の考え方】

この問題は、画像から「膵臓」であることを見抜き、その中で黒く染まっている細胞が何かを判断できるかがポイントです。銀染色にはいくつか種類がありますが、「何を染める染色か」を整理しておけば迷いません。

【画像所見の読解】

画像(別冊No.8)の構造を観察します。

  • 背景の組織:周囲に広がるピンク色(好酸性)の細胞群は、消化酵素を分泌する膵臓の「外分泌腺」です。
  • 中央の構造:外分泌腺に囲まれるようにして、白っぽく抜けた島状の細胞集団があります。これが「ランゲルハンス島(膵島)」です。
  • 黒く染まっているもの:ランゲルハンス島の細胞の一部に黒褐色の顆粒が染まっています。

これはA細胞のグルカゴン顆粒などを同定する染色です。

【各選択肢の解説(原理と対象)】

  • 1.誤り(PAM染色)
    過ヨウ素酸メセナミン銀染色は、主に腎臓の糸球体基底膜など、糖タンパク質を黒く染め出す染色法です。神経内分泌顆粒の染色には使いません。
  • 2.誤り(Bodian染色)
    神経組織における神経線維(軸索)を黒褐色に染め出すための代表的な銀染色です。
  • 3.正しい(Grimelius染色)
    グリメリウス染色は、「好銀性(Argyrophil)」の性質を利用した銀染色法です。Grimelius染色は神経内分泌顆粒を持つ細胞を染める代表的な銀染色です。ランゲルハンス島のA細胞(グルカゴン顆粒)や、カルチノイドなどの神経内分泌腫瘍はこの性質を持つため、黒褐色に染め出されます。
  • 4.誤り(Warthin-Starry染色)
    ワーチンスターリー染色は、ヘリコバクター・ピロリや梅毒トレポネーマ(スピロヘータ)といった特殊な細菌を検出するために用いられる銀染色です。
  • 5.誤り(Masson-Fontana染色)
    マッソン・フォンタナ染色は、「銀親和性(Argentaffin)」の性質を利用した銀染色法です。メラニンや腸クロム親和性(EC)細胞などを染色します。ランゲルハンス島の細胞を染め分ける目的では通常用いられません。

【関連知識】好銀性と銀親和性の決定的な違い

銀染色において「どうやって黒く(還元)しているか」の原理の違いは国家試験で頻出です。

性質 原理(メカニズム) 代表的な染色法 主な染色対象
好銀性
(Argyrophil)
銀イオンを吸着するが、自分で還元して黒くなる力はない。外部から還元剤が必要。 Grimelius染色 膵島A細胞
カルチノイドなど
銀親和性
(Argentaffin)
組織自体が銀イオンを還元する能力を持っている。還元剤を加えなくても自力で黒くなる。 Masson-Fontana染色 メラニン
EC細胞(セロトニン)

国試で間違えやすいポイント

染色法とターゲットのすり替えに注意しましょう。

  • Grimelius染色は銀親和性を利用する → 誤り(還元剤が必要な「好銀性」です)
  • Masson-Fontana染色は還元剤を加える → 誤り(自力で還元できるため、外部から還元剤を加える必要はありません)
  • Warthin-Starry染色はメラニンを染める → 誤り(細菌を染める方法です)

ポイント

  • Grimelius = 好銀性 = 還元剤が必要 = 膵島A細胞など
  • Masson-Fontana = 銀親和性 = 自力で還元 = メラニン・EC細胞
さい
さい
HE染色では膵島は白っぽい島にしか見えませんが、Grimelius染色をするとA細胞を代表とする好銀性細胞が黒く染まります。

さいの補足:その他のランゲルハンス島の特殊染色

膵臓のランゲルハンス島にはA細胞以外にも様々な細胞があり、それぞれを染め分ける特殊染色が存在します。

  • アルデヒドフクシン染色:B細胞(インスリン顆粒)を紫赤色に染めます。
  • ビクトリア青染色:これもB細胞(インスリン顆粒)を青色に染める方法です。

現場ではIHC(免疫組織化学染色)が主流ですが、国家試験では古典的な特殊染色も頻出です。

問47:細胞診におけるヘルペスウイルス感染の所見

【問題】
子宮頸部細胞診のPapanicolaou染色標本(別冊No. 9)を別に示す。考えられる感染はどれか。

  • 1.カンジダ
  • 2.クラミジア
  • 3.トリコモナス
  • 4.ヘルペスウイルス
  • 5.ヒトパピローマウイルス
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正答:4

【問題の考え方】

子宮頸部細胞診では、それぞれの感染症に特徴的な細胞像があります。この問題は、ヘルペスウイルス感染に特徴的な核の変化を読み取れるかがポイントです。

【画像所見の読解】

画像(別冊No.9)の細胞には、以下の特徴的な変化が観察されます。

  • 多核巨細胞(Multinucleation)
  • 核同士が押し合う相互圧排(Molding)
  • クロマチンが核縁へ集まる核縁肥厚(Margination)
  • すりガラス状核(Ground-glass nucleus)

これら「多核・相互圧排・核縁肥厚・すりガラス状核」は、HSV感染の4徴候として頻出です。これらが認められる場合、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染と確定できます。

【各選択肢の解説(他病原体との鑑別点)】

  • 1.誤り(カンジダ)
    真菌(カビ)の感染です。細胞診では、細胞に刺さるように伸びる「仮性菌糸」や、丸い「胞子(分芽胞子)」が淡い赤紫色に染まって観察されます。
  • 2.誤り(クラミジア)
    細菌の感染です。頸管腺細胞などの細胞質の中に、「細胞質内封入体(星雲状:nebular inclusion)」を作りますが、核の異常(すりガラス状など)は起こしません。
  • 3.誤り(トリコモナス)
    原虫の感染です。細胞の間に、淡い青緑色に染まる小さな「洋梨状」の虫体が観察されます。背景が非常に汚く(dirty background)なることも特徴です。
  • 4.正しい(ヘルペスウイルス)
    画像の通り、「多核」「相互圧排」「核縁肥厚」「すりガラス状核」はHSV感染の4徴候であり、典型的な所見です。
  • 5.誤り(ヒトパピローマウイルス:HPV)
    HPV感染による代表的な細胞で、核周囲に明瞭な空胞(halo)が形成される「コイロサイト」が特徴です。核が大きくなり(腫大・濃染)ますが、多核巨細胞とは形態が全く異なります。

【頻出】子宮頸部細胞診における感染症所見まとめ

原因となる病原体と特徴的なキーワードをセットで覚えておきましょう。

病原体 分類 特徴的な細胞所見・キーワード
ヘルペスウイルス (HSV) ウイルス 多核巨細胞、相互圧排、すりガラス状核、核縁肥厚
ヒトパピローマウイルス (HPV) ウイルス コイロサイト(核周囲空胞:halo)
カンジダ 真菌 仮性菌糸、胞子(串団子状)
トリコモナス 原虫 洋梨状の虫体、dirty background
クラミジア 細菌 細胞質内封入体(星雲状)

間違えやすいポイント

2大ウイルス(ヘルペスとHPV)の所見のすり替えに注意しましょう。

  • ヘルペス感染でコイロサイトが見られる → 誤り(コイロサイトはHPVのサインです)
  • HPV感染ですりガラス状核が見られる → 誤り(すりガラス状核はヘルペスのサインです)
  • トリコモナスは多核巨細胞を作る → 誤り(原虫そのものが見えます)

ヘルペス鑑別ポイント

画像からこのHSVの4徴候を見つけたら「ヘルペス」一択です。

  • 多核(核がいっぱい)
  • 相互圧排(核同士が押し合う:Molding)
  • 核縁肥厚(核のフチが太い:Margination)
  • すりガラス状(核の中がのっぺりしている:Ground-glass nucleus)
さい
さい
子宮頸部細胞診では、画像問題が出たらまず「コイロサイトか」「多核巨細胞か」を探すクセをつけましょう。

さいの補足:Cowdry(カウドライ)A型封入体

ヘルペスウイルス感染が進行すると、すりガラス状になった核の真ん中に、ポツンと目玉のような赤い塊(好酸性核内封入体)ができることがあります。
Cowdry A型封入体は、ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルス感染でみられる代表的な核内封入体です。設問の画像でも一部の核の中に観察されます。国試で出題されることもあるので、言葉として覚えておくと便利です。

問48:細胞内小器官の構造と機能

【問題】
細胞内小器官で正しいのはどれか。

  • 1.核は蛋白合成の場である。
  • 2.細胞膜は脂質単層の構造を持つ。
  • 3.リボソームは蛋白分解の場である。
  • 4.ゴルジ装置には電子伝達系が存在する。
  • 5.ミトコンドリアは独自の遺伝情報を有する。
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正答:5

【問題の考え方】

細胞小器官(オルガネラ)の構造と役割を問う基本問題です。国家試験では、それぞれの小器官の働きを入れ替えた選択肢が頻出します。「DNAを保存する」「タンパク質を作る」「ATPを作る」など、それぞれの役割を整理して覚えておけば確実に得点できます。

下の模式図を見ながら、それぞれの小器官の位置と役割を対応させると覚えやすくなります。国試では図そのものが出題されることは少ないですが、小器官の名称と機能の組み合わせは頻出です。

【各選択肢の解説(構造と機能)】

  • 1.誤り(核)
    核は細胞の設計図である遺伝情報(DNA)を保存・伝達する役割を担います。蛋白(タンパク質)合成の場は「リボソーム」です。
  • 2.誤り(細胞膜)
    細胞膜は、水になじむ部分と油になじむ部分を持つリン脂質が、向かい合わせに並んでできた「脂質二重層」という構造を持っています。単層ではありません。この構造により、細胞内外の物質の出入り(恒常性)をコントロールしています。
  • 3.誤り(リボソーム)
    リボソームは、核から送られてきたmRNAの遺伝情報をもとにアミノ酸を繋ぎ合わせる、「タンパク質合成の場」です。タンパク質の分解を行うのは、プロテアソームやリソソームなどです。
  • 4.誤り(ゴルジ装置)
    ゴルジ装置(ゴルジ体)は、作られたタンパク質に糖鎖を付けるなどの「加工(修飾)」を行い、目的地へ運ぶ役割を担当します。呼吸を司りATPを作るための「電子伝達系」が存在するのはミトコンドリアです。
  • 5.正しい(ミトコンドリア)
    ミトコンドリアは細胞内でATPを産生するエネルギー工場です。また、核DNAとは独立した環状DNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持ち、自ら複製・転写・翻訳の一部を行うことができます。この特徴は細胞内共生説を裏付ける重要な根拠でもあります。

【頻出】主な細胞小器官の役割まとめ

小器官 主な構造と機能
DNAの保持・転写
細胞膜 脂質二重層、細胞内外の物質輸送の制御
リボソーム タンパク質合成(翻訳)
粗面小胞体 合成したタンパク質の折りたたみ・輸送
ゴルジ装置 タンパク質の修飾・分泌
ミトコンドリア ATP産生・mtDNA保有
リソソーム 細胞内消化
滑面小胞体 脂質合成・解毒

国試で間違えやすいポイント

名前の響きが似ている器官の働きを入れ替えた選択肢が頻繁に登場します。

  • リソソームでタンパク質を合成する → 誤り(合成は「リボソーム」です。リソソームはゴミ処理係です。)
  • ゴルジ装置でATPを産生する → 誤り(ATP産生は「ミトコンドリア」です。)
  • 細胞膜は脂質単層である → 誤り(水と油の性質を持つリン脂質が「二重層」を作っています。)

覚え方のコツ(タンパク質の工場ライン)

細胞内ではタンパク質は次の順番で作られます。

① 核(DNAをmRNAへ転写)

② リボソーム・粗面小胞体(タンパク質を合成)

③ ゴルジ装置(糖鎖付加・修飾・仕分け)

④ 分泌小胞(細胞外へ分泌)
さい
さい
ミトコンドリアが独自のDNAを持っているのは、もともと別の細菌だったものが、大昔に僕たちの細胞の中に共生し始めたからだと言われています(細胞内共生説)。

さいの補足:ミトコンドリアDNAと母系遺伝

ミトコンドリアは独自のDNAを持つだけでなく、その遺伝の仕方にも特徴があります。

ミトコンドリアは独自のDNA(mtDNA)を持つ数少ない細胞小器官です。精子のミトコンドリアは受精時に卵子内に入らない(あるいは分解される)ため、受精卵が持つミトコンドリアはすべて卵子由来、つまり「母親由来」になります。

そのため、ミトコンドリアDNAの異常によって引き起こされる病気(ミトコンドリア病)は、必ず母親から子どもへと遺伝する「母系遺伝」を示すことが知られています。この特徴は国家試験の遺伝分野でも頻出なので、合わせて覚えておきましょう。

問49:上腹部CT画像における主要臓器の同定

【問題】
上腹部の単純CT画像(第12胸椎の高さの横断面)とその模式図(別冊No. 10)を別に示す。矢印で示す臓器はどれか。

  • 1.胃
  • 2.肝 臓
  • 3.心 臓
  • 4.脾 臓
  • 5.大動脈
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正答:2

【問題の考え方】

CT画像問題では、まず矢印を見るのではなく、「画像の向き(左右)」「ランドマーク(目印)」を確認することが重要です。CTやMRIの横断像は患者さんを足側から見上げた向きで表示されるため、画像の左側=患者さんの右側になります。このルールを理解したうえで、主要臓器の位置関係を確認すれば、迷わず解答できます。
(肝臓はランドマークなしでも即答したい臓器ですが)

【画像所見の読解】

画像(別冊No.10)を順番に確認していきます。

  • 画像の向き:CT横断像は足側から見上げる表示のため、画像左側が患者さんの右側、画像右側が患者さんの左側です。
  • ランドマーク:画像中央後方には、第12胸椎の椎体が白く描出されています。
  • 矢印の臓器:画像左側(患者さんの右上腹部)を大きく占める均一な実質臓器を示しています。

この位置関係から、矢印の臓器は肝臓と判断できます。

【各選択肢の解説(他臓器との鑑別点)】

  • 1.誤り(胃)
    胃は体の「左側(画像の右側)」に位置します。CT画像では、内部に含んだ空気(黒色)や内容物が映ることが多く、肝臓と隣接して画像の右側前方に描出されます。
  • 2.正しい(肝臓)
    腹腔内の右上方を占める人体最大の実質臓器です。画像の左側(患者の右側)の大部分を占めているため、これが正解です。
  • 3.誤り(心臓)
    心臓は横隔膜よりも上(頭側)の胸腔内に存在します。この画像は第12胸椎レベル(上腹部)の断面なので、心臓は映りません。
  • 4.誤り(脾臓)
    脾臓は体の「左側(画像の右側)」の後方(背中側)に位置します。画像右側の背中側に三日月型に見えている実質臓器が脾臓です。
  • 5.誤り(大動脈)
    大動脈(腹部大動脈)は、背骨(胸椎)のすぐ腹側(前)を走行する太い血管です。画像中央の胸椎のすぐ上に、きれいな円形の構造物として見えています。

【関連知識】上腹部CTにおける主要臓器の配置

「画像のどっち側にあるか」を整理しておきましょう。

画像上の位置 患者さん側 主な臓器
左側 右側 肝臓、右腎
右側 左側 胃、脾臓、左腎
中央前方 正中 膵臓、胃の一部
中央後方 正中 大動脈、下大静脈、脊椎

間違えやすいところ

「画像の右=右半身」という思い込みが一番の落とし穴です。

  • 画像の右側に大きく見えるから肝臓である → 誤り(画像の左側が肝臓です)
  • 心臓は第12胸椎のレベルで観察できる → 誤り(心臓は胸にあります。第12胸椎はお腹の少し上あたりです)

この問題のポイント

CT画像では、この3点だけ覚えておけば十分得点できます。

  • CTは足側から見上げた向きで表示される
  • 画像左側 = 患者さんの右側 = 肝臓がある
  • 画像右側 = 患者さんの左側 = 胃・脾臓がある
さい
さい
超音波(エコー)検査のテキストなどでも、プローブを横に当てた時の画像はCTと同じように「画面左側=患者の右」というルールで描かれます。

さいの補足:まず骨を探すクセをつけよう

CT画像で迷ったら、最初に脊椎(白い骨)と大動脈(脊椎の前方にある円形構造)を探すクセをつけましょう。

この2つを見つけるだけで前後左右が分かり、肝臓・胃・脾臓・腎臓などの位置関係を自然に判断できるようになります。

問50:創傷治癒のプロセスと治癒様式

【問題】
創傷治癒で正しいのはどれか。

  • 1.ケロイドは柔らかい組織である。
  • 2.肉芽組織には毛細血管が乏しい。
  • 3.創傷面が小さいほど瘢痕が形成されやすい。
  • 4.二次的治癒では肉芽組織に依存して創傷が修復される。
  • 5.一次的治癒は異物や細菌で汚染された創傷の治癒である。
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正答:4

【問題の考え方】

創傷治癒の問題は、傷の治り方のパターン(一次治癒と二次治癒)をイメージできるかがポイントです。「組織欠損が少なく縫合できる傷(一次)」と、「組織欠損が大きく縫合できない傷(二次)」を想像すると、どちらに肉芽組織がたくさん必要か(瘢痕が残りやすいか)が自然と分かります。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(ケロイド)
    ケロイドは、傷が治る過程でコラーゲン(膠原線維)が過剰に増生し、創縁を越えて増殖して硬く盛り上がった状態です。柔らかくはありません。
  • 2.誤り(肉芽組織の構成)
    肉芽(にくげ)組織は、欠損した傷口を埋めるために新しく作られる組織です。新生毛細血管と線維芽細胞が豊富に増殖するため、毛細血管に富んでいます正常な創傷治癒過程で形成される組織であり、傷口が赤くてすぐに出血するのはこのためです。
  • 3.誤り(瘢痕形成と創傷面)
    瘢痕(はんこん)は、傷を埋めたコラーゲンの塊(いわゆる傷跡)のことです。創傷面が大きいほど、修復に必要なコラーゲンが多くなるため、大きな瘢痕が形成されやすくなります。
  • 4.正しい(二次的治癒)
    組織の欠損が大きい傷や化膿した傷では、まず傷口を埋めるための「肉芽組織」が底の方から増殖して足場を作り、そこに皮膚が被さっていく(上皮化)ことで修復されます。これを二次的治癒(二次癒合)と呼びます。
  • 5.誤り(一次的治癒)
    一次的治癒(一次癒合)は、手術のメス傷のように清潔で組織の欠損が少なく、傷口がピタッと合わさって綺麗に治る様式です。異物や細菌で汚染された傷は、二次的治癒のプロセスをたどります。

【関連知識】一次治癒と二次治癒の違い

傷の状態によって、治るまでの道のりが異なります。

項目 一次治癒(一次癒合) 二次治癒(二次癒合)
代表的な傷 手術の縫合創など 大きな擦り傷、えぐれ傷、汚染創
傷の状態 清潔、組織欠損が少ない 汚染、組織欠損が大きい
肉芽組織の役割 軽微 必須(創を埋める足場となる)
治癒期間 短い 長い
瘢痕形成(傷跡) 最小限で綺麗に治る 大きく残る

国試で間違えやすいポイント(超重要)

名前がそっくりな「肉芽組織(にくげそしき)」と「肉芽腫(にくげしゅ)」のすり替えはよく出ます。

  • 肉芽組織:傷を治すための新しい血管と線維の塊です。(正常な修復プロセス
  • 肉芽腫:結核やサルコイドーシスなどで、マクロファージ(類上皮細胞)が異物を囲むように集まってできる結節です。(病的な異物反応

全くの別物なので、国試で「肉芽〜」という言葉を見た時は、どちらを指しているのか必ず確認しましょう。

ここだけ覚えておけば大丈夫

  • 一次治癒 = 縫える傷(瘢痕は最小限)
  • 二次治癒 = 縫えない傷(肉芽組織が必要・大きな瘢痕が残る)
  • ケロイド = コラーゲン過剰で創縁を越えて硬く盛り上がる
さい
さい
転んで膝を擦りむいた時にできる、赤くて浸出液を伴う組織が「肉芽組織」です。あれは化膿しているのではなく、新しい血管と細胞が一生懸命傷を埋めようとする正常な創傷治癒過程で形成される組織です!

さいの補足:肉芽組織から瘢痕組織への変化

傷を埋めるためにできた肉芽組織は、いつまでも赤くジュクジュクしているわけではありません。傷が塞がってくると、豊富だった毛細血管は徐々に消退(消えていく)し、代わりに線維芽細胞が作ったコラーゲン線維(膠原線維)が蓄積していきます。

このように創傷治癒は、肉芽組織 → コラーゲン増加 → 瘢痕組織という流れで進みます。この流れを理解しておくと、肉芽組織と瘢痕組織の違いを整理しやすくなります。

ちなみに、過剰に増殖したコラーゲンが創縁内に留まるものを「肥厚性瘢痕」、創縁を越えて周囲の正常組織へ拡大するものを「ケロイド」と呼び、この違いも国家試験で問われるかもしれません。

問51:病理解剖の基本原則と注意点

【問題】
病理解剖で誤っているのはどれか。

  • 1.遺体に畏敬の念を持つ。
  • 2.臨床経過の把握は不要である。
  • 3.感染の危険性があることを認識する。
  • 4.準備が整うまで遺体は冷蔵庫に保存する。
  • 5.死後変化を少なくするため速やかに実施する。
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正答:2

【問題の考え方】

病理解剖(剖検:Autopsy)は、死因や病態を明らかにするだけでなく、生前の診断や治療内容を病理学的に検証し、今後の医療の質向上につなげるために行われます。そのため、臨床経過や検査結果を十分に把握した上で実施することが重要です。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.正しい(畏敬の念)
    病理解剖は、尊いご献体とご遺族の承諾があって初めて成り立つものです。故人への敬意と感謝の念(畏敬の念)を忘れないことは、医療従事者として最も基本的な倫理です。
  • 2.誤り(臨床経過の把握)
    病理解剖の最大の目的は、生前の臨床診断と死後の病理診断を突き合わせること(臨床病理検討会:CPC)です。そのため、患者さんがどのような症状で、どんな検査や治療を受けてきたかという「臨床経過の把握」は絶対に必要です。情報なしに解剖を行うことはあり得ません。
  • 3.正しい(感染の危険性)
    ご遺体は、結核菌や肝炎ウイルス、HIVなどの病原体を保有している可能性があります。執刀医や介助する臨床検査技師は、標準予防策(スタンダードプリコーション)を徹底し、手袋やガウンなどの個人防護具を適切に着用する必要があります。
  • 4.正しい(遺体の保存)
    ご遺体は自己融解や腐敗の進行を抑えるため、解剖まで4℃前後で冷蔵保存します。
  • 5.正しい(実施のタイミング)
    死後、時間が経つほど細胞自身の持つ酵素による自己融解が進み、正確な病理組織学的な評価が困難になります。そのため、ご遺族の承諾が得られ次第、できる限り速やかに解剖を実施することが求められます。

【関連知識】病理解剖の基本ルールまとめ

国家試験でよく問われるポイントを整理しておきましょう。

項目 ルールと理由
遺族の承諾 必須(死体解剖保存法に基づく)
臨床情報の把握 必須(生前の診断や治療効果との対比・検証のため)
保存温度 4℃(冷蔵保存)
実施のタイミング 速やかに(自己融解と腐敗を防ぐため)
感染対策 標準予防策(スタンダードプリコーション)の徹底

国試で間違えやすいポイント(超重要)

「冷蔵」と「冷凍」のすり替えは、病理学で定番の引っかけです。

  • 遺体は冷凍庫で保存する → 誤り(冷凍すると細胞内の水分が凍って氷の結晶(氷晶)ができ、細胞の構造がズタズタに破壊されてしまいます。そのため、凍らせない「冷蔵(4℃)」で保存します。)
  • 病理解剖は死因が明らかな場合は行わない → 誤り(死因が明らかでも、治療効果の判定や隠れた合併症の発見のために行う意義は大きいです。)

この問題のポイント

  • 臨床経過の把握は絶対に必要!
  • 保存は「冷蔵(4℃)」。冷凍は細胞が壊れるからダメ!
  • 自己融解を防ぐため「速やかに」行う!
さい
さい
CPC(Clinicopathological Conference:臨床病理検討会)は、生前の症状・検査結果・画像診断・治療経過と、病理解剖の結果を照らし合わせ、診断や治療が適切であったかを検証するカンファレンスです。病態を深く理解し、医療の質向上につなげる重要な役割があります。

さいの補足:解剖の3つの種類

一口に「解剖」と言っても、目的によって大きく3種類に分けられます。国試の法規などでも問われることがあるので整理しておきましょう。

  • 病理解剖(剖検):病院で死亡した患者を対象に、病態や死因を明らかにするために行う。原則として遺族の承諾が必要。
  • 司法解剖:犯罪性が疑われる異状死などを対象に、刑事司法のために行う。遺族の承諾は不要。
  • 行政解剖:公衆衛生上の必要性などから行政機関の判断で行われる解剖。死因究明を目的として実施される。

問52:術中迅速組織標本作製の工程

【問題】
術中迅速組織標本作製で最初に行うのはどれか。

  • 1.固 定
  • 2.脱 灰
  • 3.脱 脂
  • 4.脱 水
  • 5.切り出し
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正答:5

【問題の考え方】

術中迅速組織標本作製は、手術中に「数分〜数十分」でがんの広がりなどを判断するための特別な検査です。通常の標本(パラフィン標本)のように時間をかけてホルマリンに浸ける(固定する)ことはせず、生の組織をいきなり凍らせて切るのが最大の特徴です。「通常の標本作りとの違い」を意識すると解きやすくなります。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(固定)
    通常の標本作りでは、腐敗を防ぐためにまずホルマリンに浸ける「固定」が最初の工程になります。しかし、術中迅速では時間短縮のため最初の固定は行いません。クリオスタット(冷凍ミクロトーム)で凍ったまま薄切し、スライドガラスに貼り付けた後に、アルコール等で数秒〜数十秒のごく短時間だけ固定を行います。
  • 2.誤り(脱灰)
    骨組織などからカルシウムを除く処理です。非常に時間がかかるため、スピードが命の術中迅速では行えません。
  • 3.誤り(脱脂)
    脂肪分を溶かし出す工程です。これも時間がかかるため、標準的な術中迅速のフローには含まれません。
  • 4.誤り(脱水)
    パラフィンを組織に浸透させるために、組織内の水分をアルコールに置き換える工程です。パラフィンを使わず、「水分の凍結」を利用して組織を硬くする術中迅速では、脱水は行いません。
  • 5.正しい(切り出し)
    手術室から届いた「生のままの(未固定の)」検体を肉眼で観察し、診断に必要な部分をメスで切り取る作業です。この「切り出し」が、術中迅速標本作製の最初のステップとなります。

【関連知識】通常標本と迅速標本の工程比較

「最初に行うこと」の違いが国試で非常によく狙われます。

項目 通常標本(パラフィン) 術中迅速標本(凍結)
最初の工程 固 定(ホルマリン液へ) 切り出し(生のまま)
組織を硬くする方法 パラフィン浸透 急速凍結(OCTコンパウンドなどの水溶性包埋剤)
薄切する機械 ミクロトーム クリオスタット(冷凍庫付き)
省略される工程 なし 脱水・脱脂・透徹 など
所要時間 数日(最終的な確定診断) 約10~20分(手術方針の決定)

国試で間違えやすいポイント

  • 術中迅速標本でも最初はホルマリン固定を行う → 誤り(術中迅速では時間短縮が最優先となるため、ホルマリン固定は行わず、生の組織をそのまま切り出して凍結します)
  • 術中迅速標本では固定を一切行わない → 誤り(薄切してスライドガラスに貼った後に、染色液で細胞が流れないようにアルコール等で一瞬だけ固定します)
  • 凍結前に脱水を行う → 誤り(組織の中の「水」を凍らせて硬くするため、脱水してはいけません)

この問題のポイント

工程の流れを整理しておきましょう。

  • 通常標本 = 固定 → 切り出し → 包埋 → 薄切
  • 術中迅速 = 切り出し → 凍結 → 薄切
さい
さい
スーパーで半解凍の肉が薄くスライスされているのを見たことがあると思います。柔らかい生肉より、少し凍っている方がきれいに薄切りできます。術中迅速も同じ原理です!

さいの補足:術中迅速診断のプレッシャー

手術中、患者さんはお腹を開いたまま麻酔で眠って待っています。病理医と臨床検査技師は、提出された検体から「がん細胞が取り切れているか(断端陰性か)」「リンパ節に転移していないか」を10分程度で判断し、外科医に報告しなければなりません。

この報告によって、その場で手術で切除する範囲が変わるため、病理検査室が最も緊張感に包まれる瞬間です。だからこそ、数日かかるパラフィン標本の工程を極限まで省略した「凍結切片」の技術が使われているのです。

問53:免疫組織化学染色の検査対象

【問題】
免疫組織化学染色の検査対象となるのはどれか。

  • 1.DNA
  • 2.RNA
  • 3.重金属
  • 4.蛋白質
  • 5.酵素活性
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正答:4

【問題の考え方】

免疫組織化学染色(IHC)は、病理診断で毎日のように使われる重要な検査です。HE染色だけでは判断が難しい腫瘍でも、「その細胞がどんな蛋白質を発現しているか」を調べることで、腫瘍の種類や由来を特定できます。
この問題では、「免疫染色は何を検出する検査なのか」という基本原理が理解できているかが問われています。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(DNA)
    DNAは核酸です。特定のDNA配列(遺伝子)を組織上で検出する場合には、相補的な核酸プローブを用いるin situ ハイブリダイゼーション(ISH)法やFISH法が使われます。IHCの直接の対象ではありません。
  • 2.誤り(RNA)
    RNAもDNAと同じく核酸であり、組織上での検出にはISH法が用いられます。
  • 3.誤り(重金属)
    銅や鉄などの重金属は元素であり、抗原抗体反応の対象にはなりません。これらを検出するには、ロダニン染色(銅)やベルリン青染色(鉄)といった、化学反応を利用した特殊染色が用いられます。
  • 4.正しい(蛋白質)
    免疫組織化学染色(IHC)は、抗体が目的の抗原(蛋白質)と特異的に結合する性質を利用した染色法です。
    例えば、サイトケラチン、Ki-67、HER2、ER・PR、CD3・CD20など、多くの診断マーカーは蛋白質です。HE染色では形しか分からなくても、IHCを追加することで「この細胞は何者なのか」を判定できるため、現在の病理診断では欠かせない検査となっています。
  • 5.誤り(酵素活性)
    IHCは、酵素という「蛋白質の存在」を証明することはできますが、その酵素がしっかり働いているかどうか、つまり「活性」を直接見ることはできません。酵素活性を組織上で検出するには、その酵素の基質を与えて反応産物を見る酵素組織化学という別の手法を用います。

【関連知識】主な生体物質と組織化学的検出法

免疫組織化学染色(IHC)は「蛋白質」、ISHは「核酸」を調べる検査です。この違いは国家試験でも非常によく問われるため、セットで整理して覚えておきましょう。

ターゲット(検査対象) 主な検出法 原理
蛋白質(抗原) 免疫組織化学染色 (IHC) 抗原抗体反応
核酸(DNA / RNA) in situ ハイブリダイゼーション (ISH) 塩基配列の相補的結合
重金属(鉄、銅など) 特殊染色(ベルリン青染色など) 化学反応による発色
酵素活性 酵素組織化学 酵素と基質の反応
多糖類(グリコーゲンなど) PAS染色 酸化とシッフ試薬の反応

間違えやすいところ

IHC法とISH法のすり替えは国家試験の定番です。

  • 免疫染色はDNAを検出する → 誤り(DNAはISH法です)
  • ISH法は抗原抗体反応を利用する → 誤り(ISH法は核酸同士の結合を利用します)
  • 免疫染色で酵素活性が分かる → 誤り(酵素という「物質の存在」は分かりますが、「機能(活性)」は分かりません)

この問題のポイント

  • IHC(免疫染色)= 蛋白質
  • ISH = DNA・RNA(核酸)

「抗体がくっつく相手は蛋白質」と覚えておくと、ほとんどの問題に対応できます。

さい
さい
病理医はHE染色だけで診断が難しいと感じたら、次にIHCを追加します。「この腫瘍は上皮由来?リンパ球由来?神経内分泌?」という疑問を、蛋白質(マーカー)の発現を調べながら一つずつ絞り込んでいくイメージです。

さいの補足:抗原賦活化(Antigen Retrieval)

ホルマリン固定では蛋白質同士が架橋され、抗体が結合する部位(エピトープ)が隠れてしまいます。
そのため、多くのIHCでは染色前に抗原賦活化を行います。

方法は主に2種類です。
① 加熱処理(HIER):電子レンジ・圧力鍋・オートクレーブなど
② 酵素処理(PIER):プロテアーゼなど

国家試験では「ホルマリン固定で隠れた抗原を再び露出させる処理」という目的を理解しておけば十分です。

問54:細胞学的検査法(細胞診)の特徴

【問題】
細胞学的検査法の特徴で誤っているのはどれか。

  • 1.患者への侵襲が少ない。
  • 2.検体採取が容易である。
  • 3.液状検体の検査ができる。
  • 4.腫瘍の病期を確定できる。
  • 5.腫瘍の組織型を類推できる。
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正答:4

【問題の考え方】

細胞診が「どんな検査か」という本質を問う問題です。細胞診はバラバラになった個々の細胞の顔つきを観察する「木を見て森を類推する」検査です。一方、病理組織学的検査(組織診)は細胞の並び方や広がりなどの構造を観察する「森そのものを見る」検査です。この違いが、それぞれの検査法の長所と限界を決定しています。

【各選択肢の解説(特徴と限界)】

  • 1.正しい(侵襲性)
    細胞診は、子宮頸部を綿棒でこする、尿や喀痰を集める、細い注射針で吸引する(穿刺吸引細胞診)といった方法で検体を採取します。メスで組織を切り取る組織診(生検)に比べて、患者さんの身体的な負担や痛み(侵襲)が格段に少ないのが最大の利点です。
  • 2.正しい(採取の容易さ)
    侵襲が少ないことと関連して、特別な設備や麻酔を必要とせず、外来などで短時間かつ容易に検体を採取できます。患者さんの負担が軽いため、経過観察などのための反復検査を行いやすいのも大きなメリットであり、がんのスクリーニング検査に非常に適しています。
  • 3.正しい(対象検体と迅速性)
    尿、胸水・腹水などの穿刺液や滲出液、乳汁、脳脊髄液、分泌物といった「液状の検体」には、剥がれ落ちた細胞が浮遊しています。これを遠心分離などで集めて標本にするのは細胞診の得意分野です。また、組織診に比べて標本作製時間が短く、結果が早く得られるという利点もあります。
  • 4.誤り(病期の確定)
    腫瘍の病期(ステージ)は、腫瘍の大きさや「周囲の組織へどれだけ深く入り込んでいるか(深達度)」、リンパ節や他臓器への転移によって決まります。バラバラの細胞だけを観察する細胞診では、腫瘍の全体像や深達度を把握することは不可能です。病期の確定には、組織全体の構造が分かる組織診やCTなどの画像診断が不可欠です。
  • 5.正しい(組織型の類推と効果判定)
    細胞の形態(核の大小不同、クロマチンの状態、細胞質の異常など)を詳しく観察することで、その細胞が「腺癌」なのか「扁平上皮癌」なのかといった組織型をある程度「類推(推定)」することは十分に可能です。また、抗がん剤や放射線治療で細胞がどう変化したかを見る治療効果の判定にも利用されます。ただし、最終的な組織型の「確定診断」は組織診の役割です。

【関連知識】細胞診と組織診の比較

それぞれの得意なこと、できないことを整理しておきましょう。

特徴 細胞診 組織診(生検・手術材料)
観察の対象 個々の細胞、細胞集団 組織の構造(構築・細胞の並び方)
患者への侵襲 少ない(採取・反復が容易) 大きい(メスや太い針を使う)
診断の役割 スクリーニング、類推(推定)、治療効果判定 確定診断
病期(ステージ)の確定 不可能(深達度や全体像が不明) 可能
検査のスピード 短い(結果が早く出る) パラフィン包埋などに時間がかかる

国試で間違えやすいポイント

「できること」と「できないこと」の線引きを狙った引っかけに注意です。

  • 細胞診で腫瘍の組織型を確定できる → 誤り(あくまで「類推・推定」にとどまります。確定は組織診です)
  • 細胞診でがんの深達度を評価できる → 誤り(バラバラの細胞を見ているので、周りの組織にどれだけ深く食い込んでいるかは分かりません)
  • 細胞診はスクリーニングには不向きである → 誤り(侵襲が少なく簡単に採れるため、子宮がん検診などのスクリーニングに最適です)

この問題のポイント

細胞診の限界として、「病期の確定」「組織型の確定」「深達度(浸潤)の把握」はできないと覚えておきましょう。これらはすべて、森全体の構造を見なければ分からない情報です。

さい
さい
どれだけ細胞診で「絶対がん細胞だ!」と分かっても、手術の術式や抗がん剤の種類を決めるための「最終決定」は、原則として組織を採取して行う生検(組織診)の結果を待つことになります。

さいの補足:臨床現場での役割分担

実際の医療現場では、細胞診と組織診は対立するものではなく、協力し合って診断を進めます。

例えば肺がんを疑う場合、まずは痛みのない「喀痰細胞診」でがん細胞がいないかチェックします。そこで怪しい細胞が出たら、今度は気管支鏡カメラを使って直接組織をつまみ取る「生検(組織診)」を行い、どんな種類のがんが、どこまで広がっているかを確定させます。「細胞診で拾い上げ、組織診で白黒つける」という流れが、病理検査の基本ルートです。

問55:H-E染色標本による臓器の鑑別(皮膚)

【問題】
H-E染色標本(別冊No. 11)を別に示す。この臓器はどれか。

  • 1.気 管
  • 2.食 道
  • 3.大 腸
  • 4.皮 膚
  • 5.膀 胱
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正答:4

【問題の考え方】

組織の画像問題で臓器を当てるための手順は、「① 表面を覆う上皮の種類」「② 組織内にある付属器(おまけ)」の2つを探すことです。上皮と付属器を順番に確認すると、臓器はほぼ絞り込めます。

【画像所見の読解】

画像(別冊No.11)の構造を上から順番に観察します。

  • 最表層(上皮):細胞が何層にもレンガのように重なった「重層扁平上皮」で覆われています。さらにその一番上には、細胞の核が抜けたピンク色の層(角化層)が乗っています。これを「角化重層扁平上皮」と呼びます。
  • 基底膜と真皮:表皮と真皮の境界はギザギザしており、この突出部を真皮乳頭といいます。その下には太い膠原線維(コラーゲン)が広がる真皮層が見えます。
  • 付属器:画像の中央に、表皮から深く入り込んだ「毛包」が明瞭に認められます。さらにその脇には、明るく泡状に見える「脂腺(皮脂腺)」や、管状の「汗腺」などが確認できます。

「角化層を持つ重層扁平上皮」と、そこに付属する「毛包」や「脂腺」が見えることから、この臓器は「皮膚」であると判断できます。

【各選択肢の解説(他臓器との鑑別点)】

  • 1.誤り(気管)
    気管の表面は、細かい毛(線毛)が生えた「多列線毛円柱上皮」で覆われています。また、組織内には特徴的な軟骨(硝子軟骨)が存在します。
  • 2.誤り(食道)
    食道も皮膚と同じく摩擦に強い「重層扁平上皮」で覆われていますが、表面に垢のような角化層がない「非角化重層扁平上皮」である点が決定的な違いです。また、毛包や皮脂腺もありません。
  • 3.誤り(大腸)
    大腸の表面は、粘液を出す杯(さかずき)細胞を多数含んだ「単層円柱上皮」で覆われています。この上皮が深く入り込んで「陰窩(いんか)」という試験管のような構造を作ります。
  • 4.正しい(皮膚)
    画像の通り、角化重層扁平上皮皮膚付属器(毛包・脂腺・汗腺)が揃っているため皮膚です。
  • 5.誤り(膀胱)
    膀胱は、尿の量に合わせて伸び縮みできる特殊な「尿路上皮(移行上皮)」で覆われています。最表層には傘のように大きな「被蓋細胞(傘細胞)」が見られるのが特徴です。

【関連知識】主な臓器の上皮まとめ

「臓器名」と「上皮の種類」の組み合わせは、組織学の最も基本的な暗記ポイントです。

上皮の種類 特徴的な臓器 役割・特徴
角化重層扁平上皮 皮膚 表面が死んだ細胞(角化層)で覆われ、乾燥や摩擦に極めて強い。
非角化重層扁平上皮 食道、口腔、膣 物理的な摩擦に強いが、角化層はない(湿っている)。
単層円柱上皮 胃、小腸、大腸 消化液の分泌や栄養の吸収に優れる。
多列線毛円柱上皮 気管、気管支、鼻腔 線毛の運動で異物や粘液(痰)を外へ運び出す。呼吸上皮とも呼ばれる。
尿路上皮(移行上皮) 腎盂、尿管、膀胱 内容物(尿)の量によって細胞の形を変え、伸び縮みできる。

国試で間違えやすいポイント

「皮膚」と「食道」は同じ重層扁平上皮であるため、比較する引っかけが出やすいと予想できます。

  • 食道は角化重層扁平上皮である → 誤り(食道は「非角化」です。角化するのは皮膚です)
  • 膀胱は単層扁平上皮である → 誤り(膀胱は「尿路上皮(移行上皮)」です。単層扁平上皮は血管の内皮や肺胞などに見られます)

この問題のポイント

組織の画像問題で迷ったら、以下のキーワードを探してみてください。
皮膚を示す3つのキーワード

  • 角化重層扁平上皮
  • 毛包
  • 皮脂腺(汗腺)

この3つがそろえば皮膚と判断できます。

さい
さい
組織学は「なぜその形をしているのか」という機能とセットで考えるとわかりやすいかもしれないです。

さいの補足:なぜ重層扁平上皮なのか?

細胞が何層にもレンガのように積み重なった「重層扁平上皮」は、物理的な摩擦に対して非常に強いという特徴があります。

硬い食べ物が通過する「口腔・食道」や、外部の刺激に常にさらされる「皮膚」がこの上皮を採用しているのは、一番上の細胞が摩擦で剥がれ落ちても、下の細胞が次々とせり上がってきてバリアを保つためです。皮膚では、さらに最表層が角化して角化層(角質層)となるため、乾燥や摩擦に対する強いバリア機能を発揮します。

問56:アスベスト曝露と関連する腫瘍

【問題】
アスベストばく露と関連する腫瘍はどれか。

  • 1.胃 癌
  • 2.肝 癌
  • 3.乳 癌
  • 4.悪性黒色腫
  • 5.悪性中皮腫
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正答:5

【問題の考え方】

発がん因子と関連する腫瘍の組み合わせを問う定番問題です。「アスベスト=悪性中皮腫」は国家試験で頻出の組み合わせなので、まず押さえておきましょう。

【各選択肢の解説(代表的なリスク因子)】

  • 1.誤り(胃癌)
    胃癌の最大のリスク因子はヘリコバクター・ピロリ菌(細菌)の感染です。その他、高塩分食や喫煙などが関与します。
  • 2.誤り(肝癌)
    肝細胞癌の主要なリスク因子は、B型・C型肝炎ウイルスの持続感染、およびアルコールの多飲や脂肪肝による慢性的な肝障害です。
  • 3.誤り(乳癌)
    乳癌のリスク因子には、エストロゲン(女性ホルモン)への過剰な曝露(初経が早い、閉経が遅い、出産歴がないなど)、遺伝子変異(BRCA1/2など)、肥満といった生活習慣が挙げられます。
  • 4.誤り(悪性黒色腫)
    悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚がんの一種であり、最大のリスク因子は紫外線への過剰な曝露です。
  • 5.正しい(悪性中皮腫)
    悪性中皮腫は、胸膜(肺を包む膜)や腹膜などの「漿膜(しょうまく)」を構成する中皮細胞から発生する非常に悪性度の高い腫瘍です。発症との関連が非常に強いことが知られています。造船業や建設業など、過去にアスベストを扱う職歴を持つ患者で多くみられます。

【関連知識】アスベストが引き起こす主な疾患

アスベスト(石綿)は、かつて断熱材や建材として広く使用されていた鉱物繊維です。吸入すると肺や胸膜に長期間残留し、数十年後に悪性中皮腫や肺癌を発症することがあります。

疾患名 病態・特徴
悪性中皮腫 胸膜や腹膜から発生する悪性腫瘍。アスベスト特異性が極めて高い。
原発性肺癌 肺の組織から発生するがん。喫煙が加わるとリスクが相乗的に跳ね上がる。
石綿肺(アスベスト肺) 肺が硬く線維化してしまう「じん肺」の一種。
良性石綿胸水・胸膜肥厚 胸水が溜まったり、胸膜が広範囲に分厚くなったりする(プラーク形成)。

間違えやすいところ

  • アスベストが原因となるのは悪性中皮腫のみである → 誤り(原発性の肺癌も引き起こします。)
  • 悪性中皮腫は肺癌の一種である → 誤り(胸膜や腹膜などの中皮から発生します。肺の実質から発生する肺癌とは異なります。)
  • 悪性中皮腫は肺の内部から発生する → 誤り(肺の内部ではなく、肺の表面を包む「胸膜」などの漿膜から発生します。)

この問題のポイント

がんの原因(リスク因子)の代表例はこの組み合わせで完璧です。

  • アスベスト = 悪性中皮腫、肺癌
  • ピロリ菌 = 胃癌
  • 肝炎ウイルス = 肝癌
  • 紫外線 = 悪性黒色腫などの皮膚がん
  • 喫煙 + アスベスト曝露 = 肺癌リスクが相乗的に増加する
さい
さい
悪性中皮腫は30〜40年という長い潜伏期間があるため、アスベストの使用が禁止された現在でも患者さんがみられます。

さいの補足:病理検査室で見つける「アスベスト小体」

病理検査室に喀痰や肺の組織が提出されたとき、
「アスベスト小体(石綿小体)」というものがないかもスクリーニングします。

肺の奥に刺さったアスベスト線維は、マクロファージに貪食されても消化されず、逆にタンパク質や鉄分でコーティングされてしまいます。これが「アスベスト小体」であり、顕微鏡で見ると鉄アレイや数珠のような特徴的な形をしています。鉄を含んでいる(含鉄小体の一種)ため、ベルリン青染色(鉄染色)を行うと鮮やかな青色に染まり、非常に見つけやすくなります。

問57:神経疾患と特徴的な蓄積タンパク質

【問題】
アミロイドβ蛋白の沈着を特徴とする疾患はどれか。

  • 1.Alzheimer病
  • 2.Creutzfeldt-Jakob病
  • 3.Guillain-Barré症候群
  • 4.進行性多巣性白質脳症
  • 5.筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉
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正答:1

【問題の考え方】

神経疾患では、「原因となる異常蛋白」と「原因病原体」の組み合わせが頻出です。それぞれの疾患を代表するキーワードで覚えておくと、迷わず解答できます。

【各選択肢の解説(病態・原因物質)】

  • 1.正しい(Alzheimer病)
    アルツハイマー病は、主に大脳皮質の神経細胞が変性する初老期の代表的な認知症です。脳の組織にアミロイドβ蛋白が細胞外に沈着して「老人斑」を形成するのが最大の特徴です。
  • 2.誤り(Creutzfeldt-Jakob病:CJD)
    クロイツフェルト・ヤコブ病は、感染性を持つ「異常プリオン蛋白」が脳に蓄積する致死的な疾患です。脳組織がスポンジのようにスカスカになる「海綿状変性」が特徴です。
  • 3.誤り(Guillain-Barré症候群:GBS)
    ギラン・バレー症候群は、カンピロバクター感染などを契機として自己免疫反応が生じ、末梢神経の髄鞘が障害される急性炎症性脱髄性ニューロパチーです。脳にタンパク質が蓄積する病気ではありません。
  • 4.誤り(進行性多巣性白質脳症:PML)
    免疫力が著しく低下した患者において、体内に潜伏していた「JCウイルス」が脳内で再活性化し、大脳白質に多発性の脱髄病変を引き起こす感染症です。
  • 5.誤り(筋萎縮性側索硬化症:ALS)
    全身の筋肉を動かす「上位・下位運動ニューロン」だけが選択的に壊れていく病気です。原因は完全には解明されていません。「TDP-43」などの異常蛋白質の蓄積がみられるのが特徴です。

【頻出】主要神経疾患と原因物質まとめ

疾患名 原因物質・病原体など 主な病理学的特徴
アルツハイマー病 アミロイドβ蛋白
リン酸化タウ蛋白
老人斑(細胞外)
神経原線維変化(細胞内)
クロイツフェルト・ヤコブ病 異常プリオン蛋白 大脳皮質の海綿状変性
進行性多巣性白質脳症 (PML) JCウイルス 大脳白質の多巣性脱髄
筋萎縮性側索硬化症 (ALS) TDP-43(大部分)、SOD1など 上位・下位運動ニューロンの脱落
ギラン・バレー症候群 自己抗体(カンピロバクター感染などが契機) 末梢神経の炎症性脱髄

間違えやすいところ

名前をすり替える引っかけが国試の定番です。

  • アルツハイマー病はタウ蛋白だけが原因である → 誤り(アミロイドβによる老人斑と、リン酸化タウ蛋白による神経原線維変化の両方が特徴です。)
  • 進行性多巣性白質脳症はプリオンの蓄積である → 誤り(PMLはJCウイルスの感染症です。プリオンはCJDです。)
  • ギラン・バレー症候群は中枢神経の脱髄疾患である → 誤り(中枢神経ではなく「末梢神経」の脱髄疾患です。中枢神経の代表的な脱髄疾患は多発性硬化症です。)

この問題のポイント

このペアは確実に暗記しておきましょう。

  • アルツハイマー病 = アミロイドβ(老人斑)+ タウ蛋白(神経原線維変化)
  • CJD(ヤコブ病) = 異常プリオン
  • PML = JCウイルス
  • ALS = TDP-43
さい
さい
CJDなどのプリオン病は、通常のホルマリン固定やオートクレーブだけでは十分に感染性を失活できないため、病理検査室ではギ酸処理などの特別な対応が必要になります。

さいの補足:アルツハイマー病の2大病理所見

アルツハイマー病の脳では、大きく2種類のゴミ(異常タンパク質)が溜まります。

  • ①老人斑:神経細胞の「外側」にアミロイドβ蛋白が沈着してシミのようになったもの。
  • ②神経原線維変化:神経細胞の「内側」にリン酸化タウ蛋白が糸くずのように蓄積したもの。

家族性アルツハイマー病では、アミロイド前駆体蛋白(APP)やプレセニリン(PSEN1・PSEN2)の遺伝子変異により、アミロイドβが過剰に産生されることが知られています。

問58:走査型電子顕微鏡(SEM)の標本作製工程

【問題】
走査型電子顕微鏡標本の作製工程に含まれないのはどれか。

  • 1.超薄切
  • 2.金属イオン蒸着
  • 3.タンニン酸処理
  • 4.オスミウム酸固定
  • 5.グルタルアルデヒド固定
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正答:1

【問題の考え方】

電子顕微鏡には、細胞の「中身(断面)」を透かして見る透過型(TEM)と、細胞の「表面のデコボコ」を見る走査型(SEM)があります。SEMは「表面」、TEMは「内部」を観察する装置です。この違いが分かれば、超薄切が不要であることがすぐ判断できます。

【各選択肢の解説(原理)】

  • 1.誤り(含まれない:超薄切)
    超薄切(厚さ50〜100nmという極めて薄いスライスを作ること)は、電子線を「透かして」内部を見る透過型電子顕微鏡(TEM)で必須の工程です。走査型(SEM)は試料表面から放出される二次電子を検出するため、一般的なSEM標本では樹脂包埋や超薄切は行いません。
  • 2.正しい(含まれる:金属イオン蒸着)
    SEMでは、組織の表面に電子線を当てて観察します。そのままでは組織に電気が溜まって見えなくなってしまう(チャージアップ)ため、表面に金(Au)や白金(Pt)などの金属を薄くコーティングして電気を逃がす道を作ります。これが金属イオン蒸着です。
  • 3.正しい(含まれる:タンニン酸処理)
    タンニン酸処理はオスミウムの沈着を促進し、導電性やコントラストを高めるために行われます。これにより、観察中のチャージアップを防ぐ役割があります。
  • 4.正しい(含まれる:オスミウム酸固定)
    電子顕微鏡標本の「後固定(二次固定)」で用いる薬品です。細胞膜などの「脂質」を保存するとともに、重金属であるオスミウムが組織にくっつくことで電子線を跳ね返しやすくする(コントラストをつける)役割もあります。
  • 5.正しい(含まれる:グルタルアルデヒド固定)
    電子顕微鏡標本の「前固定(一次固定)」で用いる薬品です。タンパク質を強力に架橋して、細胞の微細な構造を生きた状態に近いままガッチリと固定します。前固定・後固定(二重固定)はTEMでもSEMでも共通して行われます。

【頻出】SEMとTEMの違い

「何を見るか」によって、必要な工程が全く異なります。

項目 SEM(走査型) TEM(透過型)
観察対象 表面を見る(立体像) 内部を見る(断面像)
超薄切 不要 必須
独自の工程 金属蒸着あり 電子染色あり
検出する電子 二次電子など 透過電子など

間違えやすいところ(SEMとTEMの対比)

SEMとTEMで「違うところ」を狙ったすり替え問題が頻出です。

  • SEMではエポキシ樹脂で包埋する → 誤り(一般的なSEM標本では樹脂包埋や超薄切は行いません)
  • TEMでは臨界点乾燥を行う → 誤り(TEMは樹脂でカチカチに固めるため乾燥工程はありません)
  • 二重固定はTEMでのみ行う → 誤り(グルタルアルデヒドとオスミウム酸による固定は両方で行います)

この問題のポイント

電顕の工程問題は、以下の特徴で区別しましょう。

走査型(SEM)

  • 表面を見る
  • 超薄切しない
  • 金属蒸着

透過型(TEM)

  • 内部を見る
  • 超薄切する
  • 電子染色
さい
さい
金属コーティングが必要な理由(チャージアップ防止)を知っておくと、SEMの工程が論理的に頭に入ります。

さいの補足:なぜ臨界点乾燥が必要なのか?

SEMでは組織の表面構造を観察するため、水分を飛ばして乾燥させる必要があります。しかし、普通に乾燥すると表面張力で微絨毛などが潰れてしまいます。臨界点乾燥は、表面張力を生じさせずに乾燥させることで、本来の立体構造を保ったままSEM観察を可能にする方法です。

病理学(午後)の解説は以上です

第71回国家試験午後「病理組織細胞学(問45〜58)」の解説は以上です。お疲れさまでした。

今回の病理分野は、標本作製の工程や電子顕微鏡、細胞診、免疫組織化学など、病理検査室で扱う内容が幅広く出題されました。単純な暗記だけでは迷う問題もありましたが、それぞれの原理や目的を理解していれば判断しやすい問題が多かった印象です。

病理は、一つひとつの工程に「なぜその処理を行うのか」という理由があります。その理由まで理解しておくと、似た問題や応用問題にも対応しやすくなります。今回間違えた問題は、正解だけでなく「なぜその選択肢が誤りなのか」まで確認しておくと、知識が定着しやすくなります。

さい
さい
最後までお疲れさまでした!病理は覚えることが多い分、原理を理解すると一気に解きやすくなる分野です。ぜひ繰り返し復習して、本番で確実に得点できる力を身につけてください!

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