こんにちは、臨床検査技師のさいです。
今回は第71回臨床検査技師国家試験の午後問題より「臨床化学(問29〜44)」を全問解説まとめをしていきます。
臨床化学は暗記科目と思われがちですが、酵素反応やビリルビン代謝、ホルモン、ビタミン、脂質、腎機能など、それぞれの仕組みを理解すると問題がぐっと解きやすくなります。丸暗記では対応しづらい選択肢も、「なぜそうなるのか」が分かれば迷わず正解を選べるようになります。
この記事では、国家試験で頻出となる原理や病態をできるだけイメージしやすい言葉で整理しました。現場で検査をしていると、「この検査値が上がる理由」「なぜこの測定法を使うのか」が自然とつながる場面がたくさんあります。そうした臨床とのつながりも意識しながら解説しています。
一つひとつ理解しながら読み進めれば、過去問だけでなく応用問題にも対応できる力が身につくはずです。
※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第71回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。
問29:重炭酸イオンの動態と役割
【問題】
重炭酸イオンで正しいのはどれか。
- 1.腎尿細管で再吸収されない。
- 2.アニオンギャップの計算式に含まれない。
- 3.細胞外液中の陰イオンで最も濃度が高い。
- 4.代謝性アルカローシスで血漿濃度が上昇する。
- 5.動脈血中濃度50mmol/Lは基準範囲内である。
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正答:4
【問題の考え方】
重炭酸イオン(HCO₃⁻)は、血液を中性に保つための最も重要な「アルカリ性の緩衝物質」です。「どこで再吸収されるか」「どんな病態で増減するか」を整理しておきましょう。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(腎臓での再吸収)
糸球体で濾過された重炭酸イオンの大部分(80%以上)は、近位尿細管で活発に再吸収されます。血液のpHを保つために、腎臓は貴重なアルカリ成分であるHCO₃⁻を体内に引き留めています。 - 2.誤り(アニオンギャップの計算式)
アニオンギャップ(AG)の計算式は「AG = Na⁺ − (Cl⁻ + HCO₃⁻)」です。主要な陰イオンとして計算にバッチリ含まれています。 - 3.誤り(細胞外液での濃度)
細胞外液(血液)の中で最も多い陰イオンはクロールイオン(Cl⁻)であり、約100 mmol/Lを占めます。重炭酸イオンは約24 mmol/Lで、クロールに次いで「第2位」の多さです。 - 4.正しい(代謝性アルカローシスでの変動)
嘔吐などで胃酸(H⁺)を大量に失ったり、重炭酸イオンが過剰になったりすると、代謝性アルカローシスとなり血漿中のHCO₃⁻濃度は上昇します。 - 5.誤り(基準範囲)
動脈血の重炭酸イオンの基準範囲は「22〜26 mmol/L」です。50 mmol/Lは、重度の代謝性アルカローシスや、慢性呼吸性アシドーシスに対する腎臓の代償が極まった時などに見られる明らかな異常値です。
【関連知識】細胞外液の主要な電解質まとめ
アニオンギャップの計算に必要な「細胞外液のメジャーなイオン」の基準値を押さえておきましょう。
| イオン名 | 細胞外液での順位 | 基準範囲の目安 |
|---|---|---|
| ナトリウム(Na⁺) | 陽イオンの第1位 | 135 〜 145 mmol/L |
| クロール(Cl⁻) | 陰イオンの第1位 | 98 〜 108 mmol/L |
| 重炭酸(HCO₃⁻) | 陰イオンの第2位 | 22 〜 26 mmol/L |
国試で間違えやすいポイント
陰イオンのNo.1とNo.2をすり替える引っかけが定番です。
- 細胞外液で最も多い陰イオンは重炭酸イオンである → 誤り(最も多いのは「クロールイオン」です)
- 重炭酸イオンは尿細管で分泌される → 誤り(体にとって大事なアルカリなので「再吸収」されます)
- 代謝性アシドーシスで重炭酸イオンは上昇する → 誤り(アシドーシスは酸が増える病態なので、アルカリである重炭酸イオンは中和のために消費されて「低下」します)
覚え方のコツ
アニオンギャップの式は、「プラスの代表(Na)から、マイナスのトップ2(ClとHCO3)を引いた残り」とイメージすると丸暗記しなくても式を組み立てられます。
さいの補足:アニオンギャップ(AG)の現場での使い方
選択肢2に出てきたアニオンギャップ(AG)は、単なる計算式ではなく、代謝性アシドーシスの原因を突き止めるための重要な項目です。
血液が酸性に傾いている(代謝性アシドーシス)とき、AGを計算して「正常なまま」なら、下痢などでアルカリ(重炭酸)が体の外に漏れ出たことが原因だと分かります。
逆にAGが「増えている」なら、糖尿病性ケトアシドーシスや乳酸アシドーシスのように、体の中に本来ないはずの「異常な酸(ケトン体や乳酸など=測定されない陰イオン)」が大量に発生していることが原因だと推理できます。
「AGが高い=測定されない陰イオンが増えている」と考えると、国試で応用問題が出たとしても対応しやすくなります。
問30:酵素反応の測定原理(共役酵素法)
【問題】
日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法において2つ以上の酵素反応を利用しているのはどれか。2つ選べ。
- 1.ALP
- 2.AST
- 3.CK
- 4.γ-GT
- 5.LD
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正答:2、3
【問題の考え方】
ASTやCKの測定原理は「どの物質の変化を測定しているか」が分かれば整理できます。
ポイントは、反応そのものを直接測れない酵素では、別の酵素(共役酵素)を利用してNADHやNADPHの変化に置き換えて測定することです。これが「2つ以上の酵素反応を利用する」という意味です。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(ALP:アルカリホスファターゼ)
ALPは、基質を分解して黄色に発色するp-ニトロフェノールを作ります。この黄色の濃さを405nmの波長で直接測れるため、共役酵素は不要です(1ステップ)。 - 2.正しい(AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
ASTの反応で作られるオキサロ酢酸はそのままでは測りにくいため、共役酵素としてリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)を利用します。ASTだけでは吸光度変化を測れないため、MDHを介してNADHの減少量に置き換えて測定します(2ステップ)。 - 3.正しい(CK:クレアチンキナーゼ)
CKの反応で作られるATPも直接測れません。そこで、ヘキソキナーゼ(HK)とグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)を介した連続反応を利用します。最終的にG6PDHがNADPHを作り出すので、その増加量を340nmで測ります(3ステップ)。 - 4.誤り(γ-GT:γ-グルタミルトランスフェラーゼ)
γ-GTもALPと似ており、反応によって黄色に発色する「p-ニトロアニリン」ができるため、共役酵素なしで直接測れます(1ステップ)。 - 5.誤り(LD:乳酸脱水素酵素)
LD反応では補酵素としてNAD⁺(またはNADH)が直接反応に関与するため、共役酵素を追加する必要がありません。NADHの増加量(または減少量)を340nmで直接測れます(1ステップ)。
【ここも合わせて整理】JSCC勧告法の測定原理
「共役酵素は誰か」「何を測っているか(測定波長)」をセットで押さえておきましょう。
| 酵素 | ステップ数 | 共役酵素 | 測定物質と波長 |
|---|---|---|---|
| AST | 2(共役法) | MDH(リンゴ酸デヒドロゲナーゼ) | NADH減少(340 nm) |
| CK | 3(共役法) | HK(ヘキソキナーゼ) G6PDH |
NADPH増加(340 nm) |
| ALT | 2(共役法) | LD(乳酸脱水素酵素) | NADH減少(340 nm) |
| LD | 1(直接法) | なし | NADH増加(340 nm) |
| ALP | 1(直接法) | なし | p-ニトロフェノール(405 nm) |
| γ-GT | 1(直接法) | なし | p-ニトロアニリン(410 nm付近) |
よく混同されるポイント
「どの酵素が共役酵素か」をすり替える問題がよく出題されます。
- ASTはMDHを使います。ALTはLDです。この組み合わせだけは混同しないようにしましょう。
- また、ALPは黄色の可視光なので405nmを使います。340nm(NADHなどの紫外線領域)ではありません。
一言で覚えるなら(色が出るものは1ステップ)
「名前に『p-ニトロ〜』がつく基質を使っている酵素(ALP、γ-GT)は、色がつくので直接測れる=1ステップ」と除外していくと、選択肢を簡単に絞り込めます。
測定原理の豆知識:「内因性ピルビン酸の消去」
ASTの反応を測定する共役酵素はMDHです。一方、試薬中にはLDも含まれていますが、こちらは共役酵素ではありません。血清中にもともと存在するピルビン酸をあらかじめ除去し、測定開始前の吸光度変化を防ぐ目的で添加されています。
ASTの試薬(第一試薬)には、共役酵素のMDHだけでなく「LD」も添加されています。患者さんの血清中に含まれるピルビン酸が試薬中のNADHと勝手に反応して吸光度を下げてしまうと、ASTの本当の活性値が分からなくなってしまいます。そこで、ASTの反応をスタートさせる(第二試薬を入れる)前に、LDの力で血清中のピルビン酸をあらかじめ消費させて無害化しています。この前処理を行うことで、測定開始後の吸光度変化はAST活性だけを反映するようになります。
問31:α-アミラーゼの性質とアイソザイム
【問題】
α-アミラーゼで正しいのはどれか。
- 1.エキソ型酵素である。
- 2.主に肝臓で代謝される。
- 3.活性中心にZn²⁺を有する。
- 4.α-1,6-グリコシド結合に作用する。
- 5.唾液腺型は膵型より分子量が大きい。
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正答:5
【デンプンを分解する酵素の「性質」と「由来」】
この問題では、α-アミラーゼの基本的な性質が問われています。
作用する結合、作用様式(エンド型かエキソ型か)、体内での排泄経路、さらに唾液腺型(S型)と膵型(P型)の違いは、国家試験でも繰り返し出題されるポイントです。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(作用様式)
α-アミラーゼは、デンプンの分子鎖の内部からランダムに切断していく「エンド型」の酵素です。端から順番に切っていく「エキソ型(β-アミラーゼなど)」とは作用の仕方が異なります。 - 2.誤り(代謝経路)
アミラーゼは分子量が比較的小さいため、腎臓の糸球体で濾過されて尿中へ排泄されます。したがって、腎機能が低下すると血中から排泄されにくくなるため、膵炎がなくても血清アミラーゼが高値になることがあります。 - 3.誤り(活性化イオン)
α-アミラーゼはCa²⁺によって構造が安定化され、Cl⁻によって活性化されます。亜鉛(Zn²⁺)は関与しません。 - 4.誤り(作用する結合)
切断できるのは、グルコースが直鎖状に連なる「α-1,4-グリコシド結合」のみです。枝分かれ部分である「α-1,6-グリコシド結合」は切断できず、限界デキストリンとして残るのが特徴です。 - 5.正しい(アイソザイムの分子量)
唾液腺型(S型)と膵型(P型)の一次構造はほぼ同じですが、S型は作られた後に「糖鎖」がくっつく修飾を受けるため、P型よりも分子量が大きくなります。
【α-アミラーゼの特徴まとめ】
性質とアイソザイムの全体像を押さえておきましょう。
| 項目 | 特徴・性質 |
|---|---|
| 作用様式 | エンド型(内部から分解) |
| 作用部位 | α-1,4-グリコシド結合のみ |
| 必須イオン | Ca²⁺、Cl⁻ |
| 代謝経路 | 腎臓(尿中排泄) |
| S型(唾液腺型) | 糖鎖あり = 分子量が大きい |
| P型(膵型) | 糖鎖なし = 分子量が小さい |
よく混同されるポイント
他の酵素の性質とすり替えた選択肢がよく出題されます。
- アミラーゼは肝臓で代謝される → 誤り(腎臓から尿へ排泄されます。そのため尿アミラーゼも診断に利用されます。)
- S型よりP型の方が分子量が高い → 誤り(糖鎖という「おまけ」がついているS型の方が大きくなります。)
- 枝分かれ(α-1,6結合)も切断する → 誤り(枝分かれ部分は切れずに残る点に注意しましょう。)
イメージで覚える:エンド型とエキソ型
デンプンを「長い鎖」だと想像してください。
- ・エンド型(α-アミラーゼ):鎖の「真ん中(内部)」からハサミをいれてザクザクとランダムに短くしていくタイプ。
- ・エキソ型(β-アミラーゼ):鎖の「端っこ(末端)」から順番にチョキチョキと切っていくタイプ。
※エンド(endo)は「内側」、エキソ(exo)は「外側」という意味を持ちます。
現場の豆知識:S型とP型の鑑別
血液中のアミラーゼが高かった場合、それが膵臓(P型)から漏れ出たのか、唾液腺(S型)から漏れ出たのかを区別します。臨床現場では、電気泳動によるアイソザイム分画のほか、S型アミラーゼ阻害法が用いられることがあります。S型アミラーゼ阻害法では、S型だけを選択的に阻害し、残ったP型活性を測定することで両者を区別できます。
問32:サルコイドーシスの活動性マーカー
【問題】
サルコイドーシスの活動性マーカーはどれか。
- 1.プロカルシトニン
- 2.心臓型脂肪酸結合蛋白
- 3.デオキシピリジノリン
- 4.アンギオテンシン変換酵素
- 5.N-アセチルグルコサミニダーゼ
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正答:4
【問題の考え方】
この問題は、「この検査は何の病気で使うのか」を整理できているかがポイントです。ACEはサルコイドーシス、PCTは細菌感染、H-FABPは心筋障害というように、検査マーカーと代表的な疾患をセットで覚えておくと迷いません。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(プロカルシトニン:PCT)
主に細菌感染症(とくに敗血症)の重症度を評価するためのマーカーです。ウイルス感染や、サルコイドーシスのような非感染性の炎症疾患では通常上昇しません。 - 2.誤り(心臓型脂肪酸結合蛋白:H-FABP)
心筋細胞の中に豊富に存在するタンパク質です。心筋がダメージを受けて細胞膜が破綻すると血液中に漏れ出してくるため、急性心筋梗塞の早期診断マーカーとして用いられます。 - 3.誤り(デオキシピリジノリン:DPD)
骨基質のコラーゲンを繋いでいる架橋物質です。骨が壊される(骨吸収)際に尿中へ排泄されるため、骨粗鬆症の診断や治療効果の判定に利用される骨吸収マーカーです。 - 4.正しい(アンギオテンシン変換酵素:ACE)
ACEは本来、レニン・アンジオテンシン系で血圧の調節に関わる酵素です。サルコイドーシスにおいて全身に形成される「類上皮細胞肉芽腫」の細胞からも過剰に産生されます。そのため、ACEはサルコイドーシスの活動性をみる検査として利用されています。 - 5.誤り(N-アセチルグルコサミニダーゼ:NAG)
腎臓の近位尿細管の細胞内に存在する酵素です。尿細管がダメージを受けると尿中に漏れ出てくるため、腎機能(とくに尿細管障害)の指標として測定されます。
【代表的なマーカーと覚え方】
それぞれのマーカーが「何を見つけるための検査か」をセットで記憶しておきましょう。
| 検査マーカー | 主な対象疾患・病態 |
|---|---|
| アンギオテンシン変換酵素 (ACE) | サルコイドーシス(活動性) |
| プロカルシトニン (PCT) | 細菌性敗血症(重症度) |
| 心臓型脂肪酸結合蛋白 (H-FABP) | 急性心筋梗塞(早期診断) |
| デオキシピリジノリン (DPD) | 骨粗鬆症(骨吸収亢進) |
| N-アセチルグルコサミニダーゼ (NAG) | 腎機能(尿細管障害) |
よく混同されるポイント
- プロカルシトニンはウイルス感染症で上昇する → 誤り(ウイルスではなく細菌感染で上昇する点に注意しましょう。)
- デオキシピリジノリンは骨形成マーカーである → 誤り(骨が作られる形成ではなく、壊される「骨吸収」のマーカーです。)
- NAGは糸球体障害の指標である → 誤り(糸球体ではなく「尿細管」の障害を反映します。)
イメージで覚える:サルコイドーシスとACE
肉芽腫そのものがACEを作る「工場」になっているイメージです。病気が活発になるほど肉芽腫が増えるため、ACEも高くなります。
現場の豆知識:その他の活動性マーカー
サルコイドーシスの診断・活動性評価には、ACEのほかに「リゾチーム」や「可溶性IL-2受容体(sIL-2R)」も測定されます。リゾチームはACEと同様に肉芽腫から産生され、sIL-2Rは活性化したTリンパ球から放出されるため、どちらも病勢を強く反映します。最近はACEだけではなく、sIL-2Rも一緒に測定されることが増えています。ACEが正常でもsIL-2Rだけ高値になる症例もあるため、複数のマーカーを組み合わせて活動性を評価するのが一般的です。
問33:酵素の国際分類と反応の種類
【問題】
酵素とその分類の組合せで正しいのはどれか。
- 1.キナーゼ ―― 異性化酵素
- 2.アルドラーゼ ―― 転移酵素
- 3.エステラーゼ ―― 脱離酵素
- 4.デヒドロゲナーゼ ―― 酸化還元酵素
- 5.トランスフェラーゼ ―― 加水分解酵素
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正答:4
【酵素分類の考え方】
この問題は、酵素名を見て「どんな反応をしている酵素なのか」が分かるかを確認する問題です。酵素は触媒する反応によって6つに分類されており、名称と反応の種類が結び付けば迷わず解けます。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(キナーゼ)
キナーゼはATPからリン酸基を他の分子へ転移させる酵素です。そのため転移酵素に分類されます。クレアチンキナーゼ(CK)やヘキソキナーゼなどが代表例です。 - 2.誤り(アルドラーゼ)
アルドラーゼは、水を使わずに結合を切断したり、逆に結合を作ったりする脱離酵素(リアーゼ)の一種です。解糖系ではフルクトース1,6-ビスリン酸を2つの三炭糖へ分解する反応を触媒しています。 - 3.誤り(エステラーゼ)
名前の通りエステル結合を分解する酵素ですが、その際に「水(H₂O)」を加えて結合を切断します。そのため加水分解酵素(ヒドロラーゼ)に該当します。 - 4.正しい(デヒドロゲナーゼ)
デヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)は、物質から水素(H)を奪う反応を触媒します。水素の受け渡しは酸化還元反応なので、酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)に分類されます。乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)が有名です。 - 5.誤り(トランスフェラーゼ)
トランス(移動)という名前の通り、ある分子から別の分子へ官能基を移す転移酵素の総称です。加水分解は行いません。
【酵素の6分類】
分類名と代表的な酵素の組み合わせを押さえておきましょう。
| 分類(EC番号順) | 触媒する反応 | 代表的な酵素(例) |
|---|---|---|
| 酸化還元酵素 | 酸化・還元(水素や電子の移動) | デヒドロゲナーゼ(LDなど) |
| 転移酵素 | 官能基(アミノ基、リン酸基など)の移動 | トランスフェラーゼ(ASTなど)、キナーゼ |
| 加水分解酵素 | 水を使って結合を切る | エステラーゼ、アミラーゼ、リパーゼ |
| 脱離酵素(リアーゼ) | 水を使わずに結合を切る・二重結合を作る | アルドラーゼ |
| 異性化酵素 | 分子内の原子の並び替え(異性体を作る) | イソメラーゼ、ムターゼ |
| 合成酵素(リガーゼ) | ATPのエネルギーを使って2つの分子を繋ぐ | シンテターゼ、DNAリガーゼ |
よく混同されるポイント
- キナーゼは加水分解酵素である → 誤り(リン酸基を移す「転移酵素」です。ATPを使うからといって合成酵素や分解酵素と勘違いしないようにしましょう。)
- アミラーゼは転移酵素である → 誤り(水を使ってデンプンを分解するため加水分解酵素です。)
- デヒドロゲナーゼは脱離酵素である → 誤り(水素を脱離させますが、反応としては酸化還元なので「酸化還元酵素」になります。)
キーワードで結ぶ
英語の意味が分かると、酵素名から反応のイメージがしやすくなります。
- ・デヒドロ(De-hydro) = 水素(hydro)を奪う(De) = 酸化還元
- ・トランス(Trans) = 移動する・横切る = 転移
さいの補足:EC番号って何?
酵素には世界共通の「EC番号(Enzyme Commission番号)」が付けられています。4つの数字で構成されていて、一番最初の数字が酵素の分類を表しています。
例えばASTはEC 2.6.1.1です。
最初の「2」は転移酵素という意味なので、「ASTはトランスフェラーゼだから転移酵素なんだな」と確認できます。
国家試験ではEC番号そのものを覚える必要はありませんが、「最初の数字が酵素分類を表す」という考え方は知っておくと役立ちます。
問34:アミノ酸の分類(分岐鎖アミノ酸)
【問題】
分岐鎖アミノ酸はどれか。2つ選べ。
- 1.バリン
- 2.グリシン
- 3.システイン
- 4.イソロイシン
- 5.トリプトファン
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正答:1、4
【問題の考え方】
この問題は、BCAA(分岐鎖アミノ酸)の3種類を知っているかを確認する問題です。BCAAとAAA(芳香族アミノ酸)は肝疾患とも関わるため、一緒に整理しておくと理解しやすくなります。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.正しい(バリン)
側鎖が枝分かれした構造を持つ、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の代表格です。体内で合成できない必須アミノ酸でもあります。 - 2.誤り(グリシン)
側鎖が水素(H)ひとつだけの、最も構造がシンプルなアミノ酸です。コラーゲンの主要な構成成分として知られています。 - 3.誤り(システイン)
メチオニンと同じく、側鎖に硫黄(S)を含む含硫アミノ酸に分類されます。タンパク質の立体構造を安定させるジスルフィド結合(S-S結合)を作るのに重要です。 - 4.正しい(イソロイシン)
バリンやロイシンとともに分岐鎖アミノ酸(BCAA)の仲間です。これも必須アミノ酸に該当します。 - 5.誤り(トリプトファン)
側鎖にインドール環を持つ芳香族アミノ酸(AAA)の一つです。フェニルアラニン、チロシンとともにAAAに分類されます。
【代表的なアミノ酸の分類】
国家試験でよく問われる特徴的なグループを整理しました。
| 分類名 | 特徴 | 代表的なアミノ酸 |
|---|---|---|
| 分岐鎖アミノ酸(BCAA) | 側鎖が枝分かれしている。 すべて必須アミノ酸。 |
バリン、ロイシン、イソロイシン |
| 芳香族アミノ酸(AAA) | 側鎖にベンゼン環などの環状構造を持つ。 | フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン |
| 含硫アミノ酸 | 側鎖に硫黄(S)を含む。 | メチオニン、システイン |
| 酸性アミノ酸 | 側鎖にカルボキシ基(-COOH)を持つ。 | アスパラギン酸、グルタミン酸 |
| 塩基性アミノ酸 | 側鎖にアミノ基(-NH2)などを持つ。 | リジン、アルギニン、ヒスチジン |
| イミノ酸 | アミノ基ではなくイミノ基(-NH-)を持つ。 | プロリン |
よく混同されるポイント
- BCAAは体内で合成できる → 誤り(バリン、ロイシン、イソロイシンはすべて「必須アミノ酸」なので食事から摂る必要があります。)
- チロシンは分岐鎖アミノ酸である → 誤り(チロシンは環状構造を持つ「芳香族アミノ酸」です。)
- メチオニンは塩基性アミノ酸である → 誤り(硫黄を含む「含硫アミノ酸」の代表です。)
一言で覚えるなら
「バ・ロ・イは筋肉好き」と覚えましょう。
- ・BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン):筋肉で利用されるアミノ酸
- ・AAA(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン):肝臓で代謝されるアミノ酸
※AAAは「フェ・チ・ト」と頭文字で区別しましょう。
この2つのグループさえ区別できれば、この手の問題はほぼ対応できます。
さいの補足:フィッシャー比と肝機能
臨床現場では、BCAA(分岐鎖アミノ酸)とAAA(芳香族アミノ酸)の血中濃度の比率がとても重要になります。健康な人では「BCAA ÷ AAA」の比率(フィッシャー比)は3〜4くらいに保たれています。
しかし、肝硬変や重度の肝障害になると、肝臓でのAAAの処理能力が落ちて血中にAAAが溢れます。さらに、エネルギー不足を補うために筋肉でBCAAが消費されて減ってしまいます。AAAは増え、BCAAは減るため、肝硬変ではフィッシャー比が著しく低下します。
これが進行すると、脳にAAAが過剰に入り込んでしまい「肝性脳症」を引き起こす原因となります。AAAから作られる偽神経伝達物質が増えることも、肝性脳症の発症に関与すると考えられています。「筋肉のBCAA、肝臓のAAA」というイメージを持っておくと、暗記ではなく病態として理解できるようになります。
問35:ビリルビンの性質と代謝
【問題】
ビリルビンで正しいのはどれか。
- 1.極大吸収波長は520nmである。
- 2.2つのピロール環で構成される。
- 3.酸化されるとビリベルジンになる。
- 4.間接ビリルビンは尿中に排泄される。
- 5.直接ビリルビンはHPLC法でα分画に検出される。
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正答:3
【問題の考え方】
この問題は、ビリルビンがどのように作られ、どのように排泄されるかを理解しているかを確認する問題です。「間接ビリルビン」と「直接ビリルビン」の違いが分かっていれば、多くの選択肢は整理できます。他の選択肢も、なぜ違うのか理解しておくと忘れにくくなります。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(極大吸収波長)
ビリルビン溶液は黄色をしており、光の波長でいうと青色付近の光をよく吸収します。極大吸収波長は約450nm付近です。520nm付近ではありません。 - 2.誤り(化学構造)
ビリルビンは、ヘモグロビンの「ヘム(ポルフィリン環)」が直線状に開いてできた物質です。もともと4つのピロール環からできていたため、開いた後も「4つのピロール環(テトラピロール)」で構成されています。 - 3.正しい(酸化・還元反応)
ヘムが分解されると、まず緑色の「ビリベルジン」ができます。これが還元されて黄色の「ビリルビン」になります。逆に、ビリルビンが酸化されると元のビリベルジン(緑色)に戻ります。この酸化反応は、ビリルビン測定法の原理にも利用されています。 - 4.誤り(尿中排泄)
間接ビリルビンは脂溶性で水に溶けないため、血液中ではアルブミンと結合して運ばれます。アルブミンは糸球体を通過できないため、間接ビリルビンも尿中には排泄されません。尿に出るのは、肝臓で水溶性に加工された「直接ビリルビン」だけです。 - 5.誤り(HPLC分画)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC法)でビリルビンを分画すると、α(アルファ)分画には間接ビリルビンが検出されます。直接ビリルビンが検出されるのはβ(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)分画です。
【間接と直接の違いまとめ】
性質が正反対の2つのビリルビンを対比して整理しておきましょう。
| 項目 | 間接ビリルビン (非抱合型) |
直接ビリルビン (抱合型) |
|---|---|---|
| 作られる場所 | 脾臓(赤血球の破壊による) | 肝臓(グルクロン酸と抱合) |
| 性質 | 脂溶性(水に溶けない) | 水溶性(水に溶ける) |
| 血中の移動手段 | アルブミンと結合して移動 | そのまま血液に溶けて移動 |
| 尿中への排泄 | 出ない(アルブミンごと引っかかる) | 出る(水溶性なのでろ過される) |
| HPLC分画 | α分画 | β、γ、δ分画 |
よく混同されるポイント
- 尿中に出るのは間接ビリルビン → 誤り(水に溶けないため尿には出ません。)
- ビリルビンは2つのピロール環からできている → 誤り(正しくは4つのピロール環〈テトラピロール〉です。)
- 直接ビリルビンはアルブミンと結合して運ばれる → 誤り(アルブミンと結合するのは間接ビリルビンです。)
色の変化で覚える
ヘムの分解過程は色の変化をイメージすると覚えやすいです。
- ・ヘム(赤) → ビリベルジン(緑) → ビリルビン(黄)
打撲したあとに皮膚の色が赤紫→緑→黄色へ変わっていくのは、この色素の変化によるものです。
さいの補足:δ(デルタ)ビリルビンって何?
選択肢5に出てきたHPLC法による分画は、ビリルビンをさらに細かく分ける検査です。
α分画は間接ビリルビン、β・γ分画はそれぞれグルクロン酸が1つ・2つくっついた直接ビリルビンです。
δ(デルタ)ビリルビンは、直接ビリルビンがアルブミンと共有結合したものです。胆汁うっ滞が長く続くと増加し、アルブミンと同じ約20日の半減期を持つため、胆道閉塞が改善したあともしばらく血中に残ります。黄疸が改善しているのにビリルビン値だけがなかなか下がらない場合は、このδビリルビンが影響していることがあります。
問36:ビタミンの機能と補酵素としての役割
【問題】
ビタミンで正しいのはどれか。
- 1.ビタミンAは骨形成を促進する。
- 2.ビタミンB6はレチノールと結合する。
- 3.ビタミンCはコラーゲンの生成に関与する。
- 4.ビタミンDは血液凝固因子の生成に必要である。
- 5.ビタミンKはアミノトランスフェラーゼのホロ化に関与する。
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正答:3
【問題の考え方】
ビタミンの働きをそのまま問う基本問題です。それぞれのビタミンが「何を担当しているか」を整理できていれば難しくありません。機能を丸暗記するより、「なぜそのビタミンが必要なのか」まで理解しておくと他の問題にも対応できます。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(ビタミンA)
ビタミンA(レチノール)は、視覚や上皮細胞の維持に欠かせない脂溶性ビタミンです。不足すると夜盲症や皮膚・粘膜の異常を起こします。一方、カルシウム吸収を促進して骨形成に関わるのはビタミンDです。 - 2.誤り(ビタミンB6)
レチノールはビタミンAのことです。血液中ではレチノール結合蛋白(RBP)と結合して運ばれます。ビタミンB6はピリドキサールリン酸(PLP)として働き、アミノ酸代謝やAST・ALTなどの補酵素になります。 - 3.正しい(ビタミンC)
ビタミンC(アスコルビン酸)は、コラーゲンを作る過程で補酵素として働きます。不足すると血管や皮膚がもろくなり、歯ぐきから出血する壊血病を起こします。 - 4.誤り(ビタミンD)
肝臓で血液凝固因子を活性化するために必要なのはビタミンKです。ビタミンDは、腸管からのカルシウムやリンの吸収を促進して骨を作る働きを担っています。 - 5.誤り(ビタミンK)
アミノトランスフェラーゼ(ASTやALTなど)を活性化(ホロ化)するための補酵素として働くのはビタミンB6です。ビタミンKは血液凝固因子のγ-カルボキシ化に必要なビタミンです。
【各ビタミンの機能と別名まとめ】
選択肢に登場したビタミンについて、機能と別名を対比して整理しておきましょう。
| ビタミン | 覚えるキーワード | 別名・関連物質 | 主な機能・役割 |
|---|---|---|---|
| A(脂溶性) | 目 | レチノール | 視覚、上皮組織の維持 |
| B6(水溶性) | AST・ALT | ピリドキサールリン酸(PLP) | アミノ酸代謝の補酵素(ホロ化) |
| C(水溶性) | コラーゲン | アスコルビン酸 | コラーゲン生成、抗酸化作用 |
| D(脂溶性) | 骨 | カルシフェロール | カルシウム吸収促進、骨形成 |
| K(脂溶性) | 凝固 | フィロキノン | 血液凝固因子の活性化 |
引っかけポイント
- レチノール = ビタミンA
- AST・ALTの補酵素 = ビタミンB6
- 骨 = ビタミンD
- 血液凝固 = ビタミンK
- コラーゲン = ビタミンC
一言で覚えるなら
- ・A = 目
- ・B6 = AST・ALT
- ・C = コラーゲン
- ・D = 骨
- ・K = 凝固
さいの補足:臨床化学とビタミンB6(ホロ化とは?)
ホロ化とは、アポ酵素に補酵素が結合して、働ける状態(ホロ酵素)になることです。
ビタミンB6が不足すると、ASTやALTはアポ酵素のまま残り、本来より活性が低く測定されることがあります。そのためJSCC勧告法では試薬中にPLPを添加し、測定前にすべてホロ酵素へ変換してから測定しています。
ビタミンは「何を助けているか」で覚えると忘れにくくなります。Cはコラーゲン、Dは骨、Kは凝固、B6はアミノ酸代謝。この4つは国家試験でも現場でもよく出てきます。
問37:クロマトグラフィーの分離原理
【問題】
分子量で分離するのはどれか。
- 1.逆相クロマトグラフィ
- 2.吸着クロマトグラフィ
- 3.分配クロマトグラフィ
- 4.ゲルろ過クロマトグラフィ
- 5.アフィニティクロマトグラフィ
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正答:4
【問題の考え方】
クロマトグラフィーは「何の違いで物質を分けているか」がポイントです。名前は似ていますが、分子量・疎水性・吸着力・親和性など、それぞれ利用している性質はまったく異なります。そこが整理できていれば迷わず解けるはずです。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(逆相クロマトグラフィ)
物質の疎水性(極性の低さ)の違いで分離します。固定相に疎水性の高い物質、移動相に極性の高い液体を使います。水と油のように、疎水性が高い物質ほど固定相にベッタリと張り付くため、出てくるのが遅くなります。 - 2.誤り(吸着クロマトグラフィ)
固定相への吸着力の差を利用して分離します。極性の高い物質ほど固定相(シリカゲルなど)に強くくっつくため、溶出が遅くなります。 - 3.誤り(分配クロマトグラフィ)
水と油のように混じり合わない2つの液体への溶けやすさ(分配係数)の違いを利用します。どちらの液体に溶けやすいかで移動するスピードが変わるからです。 - 4.正しい(ゲルろ過クロマトグラフィ)
分子の大きさ(分子量)に基づいて分離します。固定相に小さな穴(細孔)が無数に開いたゲルを使います。大きな分子は穴に入れないためゲルの外を素通りして「速く」出てきますが、小さな分子は穴の奥深くまで入り込んで寄り道するため「遅く」出てきます。 - 5.誤り(アフィニティクロマトグラフィ)
抗原と抗体、酵素と基質のような生化学的な特異的親和性を利用します。特定の物質だけを鍵と鍵穴のようにキャッチして分離するため、非常に精度が高い方法です。
【各クロマトグラフィーの原理まとめ】
「何で分けているか」をセットで覚えておくと、他の問題でも応用できます。
| クロマトグラフィーの種類 | 分離の原理 |
|---|---|
| ゲルろ過クロマトグラフィ | 分子の大きさ(分子量) |
| 逆相クロマトグラフィ | 疎水性(極性) |
| 吸着クロマトグラフィ | 吸着力 |
| 分配クロマトグラフィ | 溶解度(分配) |
| アフィニティクロマトグラフィ | 特異的親和性 |
間違えやすいところ
ゲルろ過は、小さい分子から出てくると思い込んでしまう人が多いですが、実際は逆です。
- 小さい分子ほどゲルの穴の中へ入り込むため遠回りになり、大きい分子ほど真っすぐ流れて先に出てきます。
- 逆相クロマトグラフィは分子量で分離する → 誤り(疎水性の違いを利用しています。)
- アフィニティクロマトグラフィは吸着力で分離する → 誤り(鍵と鍵穴のような特異的な親和性です。)
迷ったらこれだけ
- ・ゲルろ過 = 大きさ
- ・逆相 = 疎水性
- ・分配 = 溶けやすさ
- ・吸着 = くっつきやすさ
- ・アフィニティ = 鍵と鍵穴
さいの補足:ゲルろ過の「穴」のイメージ
ゲルろ過は、初めて勉強するとほとんどの人が順番を逆に覚えます。
固定相のゲルには小さな穴がたくさん開いています。小さな分子はその穴の奥深くまで入り込んでしまうため、出口にたどり着くまでに時間がかかります。一方、大きな分子は穴に入れないため、ゲルの隙間をストレートに滑り落ちてきます。
「大きいものほど先に出る」
これがめちゃ重要です。
問38:必須脂肪酸の分類と種類
【問題】
必須脂肪酸はどれか。
- 1.オレイン酸
- 2.リノール酸
- 3.ステアリン酸
- 4.パルミチン酸
- 5.ドコサヘキサエン酸
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正答:2
【問題の考え方】
この問題は、必須脂肪酸を知っているかどうかでほぼ決まります。
国試で覚えておきたいのは「リノール酸」と「α-リノレン酸」の2つです。他の選択肢も、なぜ違うのか理解しておくと忘れにくくなります。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(オレイン酸)
オレイン酸はω9(オメガ9)系の一価不飽和脂肪酸です。オリーブオイルなどに多く含まれますが、体内でステアリン酸(飽和脂肪酸)から合成できるため、必須脂肪酸ではありません。 - 2.正しい(リノール酸)
リノール酸はω6系の多価不飽和脂肪酸です。ヒトはω6系の二重結合を作る酵素を持たないため、体内で合成できません。食事から必ず摂取しなければならない必須脂肪酸の代表です。 - 3.誤り(ステアリン酸)
ステアリン酸は炭素数18の飽和脂肪酸です。体内で糖質などから合成できるため、必須脂肪酸ではありません。 - 4.誤り(パルミチン酸)
パルミチン酸は炭素数16の飽和脂肪酸です。これも体内で合成可能です。 - 5.誤り(ドコサヘキサエン酸:DHA)
DHAはω3系の多価不飽和脂肪酸です。脳や網膜に多く含まれる成分ですが、必須脂肪酸である「α-リノレン酸」を材料にして体内で合成することが可能です。そのため、国試では必須脂肪酸には分類されません。
【主な脂肪酸の分類と必須性】
脂肪酸は「ω○系」と「必須かどうか」を一緒に見ると整理しやすくなります。
| 脂肪酸名 | 分類(系列) | 必須性 | 備考 |
|---|---|---|---|
| リノール酸 | ω6系(多価) | 必須 | アラキドン酸の親 |
| α-リノレン酸 | ω3系(多価) | 必須 | EPA、DHAの親 |
| アラキドン酸 | ω6系(多価) | 非必須 | リノール酸から合成可能 |
| DHA / EPA | ω3系(多価) | 非必須 | α-リノレン酸から合成可能 |
| オレイン酸 | ω9系(一価) | 非必須 | 体内で合成可能 |
| ステアリン酸 / パルミチン酸 | 飽和脂肪酸 | 非必須 | 体内で合成可能 |
間違えやすいところ
名前が似ているので混乱しやすいですが、とくに「アラキドン酸」と「オレイン酸」の扱いで迷う人が多いです。
- アラキドン酸は必須脂肪酸である → 誤り(リノール酸から作れるため、必須ではありません。)
- オレイン酸は必須脂肪酸である → 誤り(オリーブオイルに多く含まれる良い油ですが、体内でも作れるため必須ではありません。)
- ステアリン酸は多価不飽和脂肪酸である → 誤り(二重結合を持たない「飽和」脂肪酸です。)
一言で覚えるなら
試験ではこの2つだけ思い出せれば十分です。
- ・リノール酸(ω6系)
- ・α-リノレン酸(ω3系)
必須脂肪酸は「リノ」で始まる2つだけ。リノール酸(ω6)とα-リノレン酸(ω3)を押さえておけば十分です。DHAやアラキドン酸は重要な脂肪酸ですが、体内で合成できるため国試では必須脂肪酸には含めません。「必須は親玉だけ、子どもは体で作れる」と考えると覚えやすいです。
さいの補足:アラキドン酸カスケードの重要性
必須脂肪酸であるリノール酸は、体内で「アラキドン酸」に変換されます。このアラキドン酸は細胞膜のリン脂質に組み込まれており、炎症や刺激が起きると切り離されます。
ここからプロスタグランジン(痛みや発熱を起こす)やトロンボキサン(血小板を凝集させる)など、さまざまな生理活性物質が作られます。これを「アラキドン酸カスケード」と呼びます。
ロキソニンなどのNSAIDsは、このアラキドン酸カスケードの途中にあるCOX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害して、痛みや炎症を抑えています。生化学・薬理学・生理学がつながるところなので、一緒に理解しておくと覚えやすいです。
問39:尿酸の代謝と臨床判断値
【問題】
尿酸で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.腫瘍崩壊症候群で低下する。
- 2.蛋白結合型として存在する。
- 3.ウリカーゼを用いた酵素法で測定する。
- 4.高尿酸血症の臨床判断値に性差はない。
- 5.ピリミジン塩基の最終代謝産物である。
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正答:3、4
【問題の考え方】
尿酸は「どこから来て、どう測り、どう判定するか」の3つがよく問われます。特に、健康な人の平均である「基準値(正常値)」と、病気と診断される「臨床判断値」の違いが分かっていれば迷わず解けます。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(腫瘍崩壊症候群)
腫瘍崩壊症候群は、化学療法などでがん細胞が大量に壊れる病態です。細胞内の核酸が血液中にあふれ出すため、その分解産物である尿酸は著しく上昇します。 - 2.誤り(血中での存在形態)
血液中の尿酸は、そのほとんど(95%以上)がタンパク質と結合しない「遊離型(イオン型の尿酸ナトリウム)」として存在しています。そのため、腎臓の糸球体で自由にろ過されます。 - 3.正しい(測定法)
臨床検査での尿酸の測定には、尿酸を特異的に分解する「ウリカーゼ」を用いた酵素法が最も広く使われています。 - 4.正しい(臨床判断値)
尿酸の「基準範囲(正常値)」は男性の方が高く、性差があります。しかし、痛風などのリスクが高まる「高尿酸血症の臨床判断値」は男女ともに7.0 mg/dLに統一されています。基準となる値そのものに性別による違いはないため、この選択肢は正しい記述になります。 - 5.誤り(代謝元の物質)
尿酸はアデニンやグアニンといった「プリン塩基」の最終代謝産物です。ピリミジン塩基ではありません。
【主な代謝産物と測定酵素】
「何のなれの果てか」「どうやって測るか」を一緒に見ると整理しやすくなります。
| 物質名 | 由来(何の最終産物か) | 測定に用いる主な酵素 |
|---|---|---|
| 尿酸(UA) | プリン体(プリン塩基) | ウリカーゼ |
| 尿素窒素(BUN) | アンモニア(アミノ酸代謝) | ウレアーゼ |
| クレアチニン(Cr) | クレアチン(筋肉の代謝) | クレアチニナーゼなど |
間違えやすいところ
基準値と臨床判断値の言葉のすり替えで迷う人が多いです。
- 尿酸の基準値には性差がない → 誤り(健康な人のデータである基準値は男性の方が高くなります。)
- ピリミジン塩基の最終産物である → 誤り(プリン塩基です。ビールのCMなどで聞く「プリン体」を思い出してください。)
- 腫瘍崩壊症候群で低下する → 誤り(細胞が壊れて中身が出るため、著しく上昇します。)
ここだけ覚えておけば大丈夫
尿酸は「プリン体のゴール」です。
ビールのCMなどで「プリン体」という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、そのプリン体が体内で分解されて最後にできるのが尿酸です。尿酸でよく問われるのは、この3つです。
- ・プリン体の最終代謝産物
- ・ウリカーゼで測定する
- ・高尿酸血症の判断値は男女とも7.0 mg/dL
この「プリン体・ウリカーゼ・7.0」の3点セットで覚えておくと、関連問題も解きやすくなります。少し語呂を入れるなら、
「プリンは7個食べるとウリ(売り)切れ」
- ・プリン → プリン体
- ・7 → 高尿酸血症の判断値(7.0 mg/dL)
- ・ウリ → ウリカーゼ
これらが1本につながるので意外と忘れにくいです。
さいの補足:腫瘍崩壊症候群(TLS)のメカニズム
白血病や悪性リンパ腫などの治療で抗がん剤を使うと、がん細胞が一気に破壊されることがあります。これを腫瘍崩壊症候群(TLS)と呼びます。
細胞が壊れると、中にあったカリウム、リン、そして核酸(DNAやRNA)が血液中に大量に放出されます。この核酸が分解される過程で大量の尿酸が作られるため、高尿酸血症を引き起こします。
溢れた尿酸やリン酸カルシウムが腎臓に詰まると急性腎不全になるため、現場では治療開始前に尿酸生成阻害薬(アロプリノールなど)や尿酸分解酵素薬(ラスブリカーゼ)を予防的に投与することがあります。
問40:水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの分類
【問題】
水溶性ビタミンはどれか。2つ選べ。
- 1.葉 酸
- 2.レチノール
- 3.ピリドキシン
- 4.トコフェロール
- 5.カルシフェロール
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正答:1、3
【問題の考え方】
この問題は、ビタミンの別名を知っているかどうかがポイントです。「ビタミンA」ではなく「レチノール」、「ビタミンE」ではなく「トコフェロール」のように、別名で出題されることがよくあります。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.正しい(葉酸)
葉酸はビタミンB群の仲間であり、水溶性ビタミンです。細胞の増殖やDNAの合成に関わり、不足すると巨赤芽球性貧血を起こします。 - 2.誤り(レチノール)
レチノールはビタミンAのことです。水に溶けない脂溶性ビタミンです。 - 3.正しい(ピリドキシン)
ピリドキシンはビタミンB6のことです。アミノ酸代謝(ASTやALTなど)の補酵素として働く水溶性ビタミンです。 - 4.誤り(トコフェロール)
トコフェロールはビタミンEのことです。細胞膜を守る抗酸化作用を持つ脂溶性ビタミンです。 - 5.誤り(カルシフェロール)
カルシフェロールはビタミンDのことです。カルシウムの吸収を助けて骨を作る脂溶性ビタミンです。
【主なビタミンの別名まとめ】
国試では別名で出題されることがあるので、ここはセットで覚えておくと安心です。
| アルファベット | 別名(カタカナ) | 分類 |
|---|---|---|
| ビタミンA | レチノール | 脂溶性 |
| ビタミンD | カルシフェロール | 脂溶性 |
| ビタミンE | トコフェロール | 脂溶性 |
| ビタミンK | フィロキノンなど | 脂溶性 |
| ビタミンB1 | チアミン | 水溶性 |
| ビタミンB6 | ピリドキシン | 水溶性 |
| ビタミンB12 | シアノコバラミン | 水溶性 |
| ビタミンC | アスコルビン酸 | 水溶性 |
※葉酸やナイアシン、パントテン酸なども水溶性のビタミンB群の仲間です。
ここだけ覚えておけば大丈夫
脂溶性ビタミンは4つしかありません。「DAKE(ダケ)」を覚えてしまえば、それ以外は基本的に水溶性です。
- ・ビタミンD(カルシフェロール)
- ・ビタミンA(レチノール)
- ・ビタミンK(フィロキノンなど)
- ・ビタミンE(トコフェロール)
ちなみに「脂溶性=DAKE(水だけでは流れない)」と覚えている人もいます。
さいの補足:なぜ水と脂で分けるのか?
なぜわざわざ水溶性と脂溶性で分けるのかというと、体の中での「残りやすさ」が全く違うからです。
水溶性ビタミンは水に溶けるため、たくさん摂ってもおしっこと一緒に(尿中へ)排泄され、体の中に溜まりません。そのため過剰症の心配は少ないですが、毎日摂らないとすぐに「欠乏症」になってしまいます。
一方、脂溶性ビタミンは油に溶けるため、尿からは出ずに肝臓や脂肪組織にどんどん蓄積されていきます。だから脂溶性ビタミンは、サプリメントの飲み過ぎにも注意が必要です。
問41:eGFRの計算に必要な項目
【問題】
eGFRの計算に使用するのはどれか。2つ選べ。
- 1.身 長
- 2.性 別
- 3.体 重
- 4.年 齢
- 5.尿中クレアチニン濃度
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正答:2、4
【問題の考え方】
この問題は、eGFR(推算糸球体濾過量)の計算に何が必要かを選ぶ問題です。eGFRは、採血で得られた血清クレアチニン値だけでは分かりにくい腎機能を、年齢や性別を加味して推定する指標です。どんな要素で補正をかけているかを知っていれば迷わず解けます。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(身長)
eGFRの計算に身長は使いません。eGFRの数値は「標準的な日本人の体表面積(1.73m²)あたり」という前提ですでに補正されているため、個人の身長データを入力する必要がないからです。 - 2.正しい(性別)
クレアチニンは筋肉で作られます。一般的に女性は男性よりも筋肉量が少ないため、同じ血清クレアチニン値でも女性の方が腎機能は低く見積もられます。そのため、計算式では女性の場合に「× 0.739」を掛けて補正します。 - 3.誤り(体重)
身長と同じ理由で、すでに標準体表面積で補正されているため体重は使いません。(※Cockcroft-Gault式という別の古い計算式では体重を使いますが、現在の日本の臨床で広く使われているeGFRの式では不要です。) - 4.正しい(年齢)
年齢を重ねると筋肉量が減っていくため、同じ血清クレアチニン値であっても高齢者の方が実際の腎機能は低下しています。この年齢による筋肉量の減少を補正するために必要です。 - 5.誤り(尿中クレアチニン濃度)
eGFRの最大のメリットは「採血データだけで計算できること」です。24時間尿を貯める必要がないため、尿中のデータは一切使いません。
【比較】eGFRとCcrの違い
腎機能を評価する2つの検査の違いを整理しておくと応用が利きます。
| 項目 | eGFR(推算糸球体濾過量) | Ccr(クレアチニンクリアランス) |
|---|---|---|
| 必要な検体 | 血液のみ(血清クレアチニン) | 血液 + 24時間蓄尿 |
| 計算に必要な情報 | 年齢、性別 | 尿量、体表面積(身長・体重) |
| 患者の負担 | 非常に少ない(採血だけ) | 大きい(1日中尿を貯める必要がある) |
| 用途 | 日常的な腎機能チェック、CKDの重症度分類 | 実測値に近い腎機能評価、薬の投与量決定など |
間違えやすいところ
Ccr(クレアチニンクリアランス)の計算とごちゃ混ぜにする人が多いです。
- eGFRには身長や体重が必要である → 誤り(標準体型に補正済みなので使いません。)
- eGFRには尿中クレアチニン濃度が必要である → 誤り(尿を使わずに採血だけで済むのがeGFRの長所です。)
ここだけ覚えておけば大丈夫
国試では「年齢・性別を使う」という点が狙われやすいです。eGFRは以下の3つで計算します。
- ・血清クレアチニン
- ・年齢
- ・性別
さいの補足:eGFR(Cre)とeGFR(Cys)の使い分け
ここまで説明してきたeGFRは、クレアチニンをベースにした「eGFR(Cre)」です。しかしクレアチニンは筋肉量の影響を受けます。寝たきりの高齢者や筋肉量が極端に少ない人では、腎機能が低下していてもクレアチニンがあまり上昇しません。そのため、eGFR(Cre)では腎機能を実際より良く見積もってしまうことがあります。
そんな時に現場で登場するのが「シスタチンC」です。シスタチンCは全身のすべての細胞から一定のペースで作られるため、筋肉量の影響を全く受けません。このシスタチンCを使って計算した「eGFR(Cys)」を見れば、筋肉がない人でも本当の腎機能を正確に評価できます。どちらのマーカーにも長所と短所があるので、患者さんの体型に合わせて使い分けることが臨床現場ではとても大切です。
※eGFRは18歳以上を対象とした計算式です。小児では別の計算式(小児eGFR)が使われます。また、標準体表面積(1.73m²)で補正された値なので、極端に体格が大きい人・小さい人では実際のGFRと差が出ることがあります。
問42:疾患とホルモン異常の組合せ
【問題】
疾患とホルモン異常の組合せで誤っているのはどれか。
- 1.尿崩症 ―― オキシトシン
- 2.橋本病 ―― サイロキシン
- 3.褐色細胞腫 ―― ノルアドレナリン
- 4.慢性腎不全 ―― PTH
- 5.腎血管性高血圧症 ―― レニン
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正答:1
【問題の考え方】
どの病気で、どのホルモンが増えるのか・減るのかを整理しておく問題です。病態の流れまで理解できていると、引っかけにも対応できます。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(尿崩症)
尿崩症は、おしっこの量を減らす(水を取り戻す)「抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)」が足りなくなったり、腎臓で効かなくなったりして、大量の薄い尿が出続ける病気です。
オキシトシンもADHと同じ下垂体後葉から出ますが、分娩時の子宮収縮や母乳を出すためのホルモンなので関係ありません。 - 2.正しい(橋本病)
橋本病(慢性甲状腺炎)は、自己免疫によって甲状腺が破壊される病気です。甲状腺の細胞が減ってしまうため、そこから作られる甲状腺ホルモン(サイロキシン:T4)が低下します。甲状腺機能低下症の一番の原因です。 - 3.正しい(褐色細胞腫)
副腎髄質などにできる腫瘍で、カテコールアミン(ノルアドレナリンやアドレナリン)を過剰に作り出します。これらは交感神経を刺激するホルモンなので、血圧が上がったり、動悸や頭痛が起きたりします。 - 4.正しい(慢性腎不全)
腎臓が働かなくなると、活性型ビタミンDを作れなくなりカルシウムが吸収できなくなります(低カルシウム血症)。血中カルシウム濃度が低下するため、それを補おうとしてPTH分泌が亢進します。これを二次性副甲状腺機能亢進症と呼びます。 - 5.正しい(腎血管性高血圧症)
腎臓へ向かう血管(腎動脈)が狭くなる病気です。腎臓を流れる血液が減るため、腎臓は「全身の血圧が下がっている」と勘違いし、血圧を上げるために「レニン」をたくさん分泌します。その結果、レニン-アンジオテンシン系が活性化し、高血圧になります。
【主な疾患と関連ホルモンまとめ】
疾患と異常になるホルモンをセットで整理しておきましょう。
| 疾患名 | 関連ホルモン | 病態・異常 |
|---|---|---|
| 尿崩症 | 抗利尿ホルモン(ADH) | 分泌低下 または 作用低下 |
| 橋本病 | サイロキシン(T4) | 産生低下(甲状腺が壊れるため) |
| 褐色細胞腫 | ノルアドレナリン など | 分泌過剰(腫瘍が勝手に作るため) |
| 慢性腎不全 | PTH(パラソルモン) | 分泌過剰(Ca不足を補うため) |
| 腎血管性高血圧症 | レニン | 分泌過剰(血流低下を補うため) |
間違えやすいところ
- 尿崩症はオキシトシンの異常である → 誤り(正しくはバソプレシンです。どちらも同じ下垂体後葉から出るため、引っかけによく使われます。)
- 慢性腎不全でPTHが低下する → 誤り(Ca不足を補うために、副甲状腺が頑張ってPTHを「たくさん」出すようになります。)
覚えるポイント
ホルモンを覚えるより、「どの臓器が悪いか」を考えると整理しやすくなります。
- ・橋本病 → 甲状腺が壊れる → T4低下
- ・褐色細胞腫 → 副腎髄質が暴走 → ノルアドレナリン上昇
- ・慢性腎不全 → Ca低下 → PTH上昇
- ・腎血管性高血圧 → 腎血流低下 → レニン上昇
さいの補足:一次性と二次性の違い
内分泌は「どの臓器が悪いのか」を考えると整理しやすくなります。
ホルモンを出している臓器そのものが原因なら一次性、別の臓器の異常が原因でホルモンが変化しているなら二次性。
問43:LDアイソザイムの特徴と臨床的意義
【問題】
LDアイソザイムで正しいのはどれか。
- 1.2量体である。
- 2.LD4は冷蔵で安定である。
- 3.LD5は肝疾患で上昇する。
- 4.LD1の半減期は約8時間である。
- 5.5種類のサブユニットからなる。
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正答:3
【問題の考え方】
LDアイソザイムは「どの臓器に多いか」と「構造(HとM)」が最重要です。さらに、保存方法や半減期も頻出なので一緒に整理しておきましょう。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(構造)
LDは、H(Heart)型とM(Muscle)型の2種類のパーツ(サブユニット)が4つ合体してできた「4量体」です。2量体ではありません。 - 2.誤り(保存方法)
LD4やLD5のようにM型のパーツを多く含むものは寒さに弱く、冷蔵庫に入れると壊れてしまいます(寒冷不安定性)。そのため、LDアイソザイムを測定する検体は室温保存が原則です。 - 3.正しい(臓器特異性)
LD5は肝臓や骨格筋に多く存在します。そのため、急性肝炎や筋疾患、激しい筋障害などで上昇します。 - 4.誤り(半減期)
LD1の半減期は約110〜120時間(4〜5日)と最も長く、血中に長く留まります。逆に、半減期が最も短い(約8〜10時間)のはLD5です。 - 5.誤り(サブユニットの種類)
パーツ(サブユニット)の種類はH型とM型の「2種類」だけです。これが4つ組み合わさることで、5種類のアイソザイム(LD1〜LD5)が生まれます。
【主なLDアイソザイムの特徴まとめ】
臓器分布や半減期はよく出題されるので、対比して整理します。
| アイソザイム | サブユニット構成 | 多く含まれる臓器 | 半減期 | 保存 |
|---|---|---|---|---|
| LD1 | H₄ | 心筋・赤血球・腎 | 長い(約110〜120時間) | 比較的安定 |
| LD2 | H₃M₁ | 網赤血球・心筋 | ||
| LD3 | H₂M₂ | 肺・リンパ球・血小板 | ||
| LD4 | H₁M₃ | 腎・胎盤・膵・肝 | 冷蔵で失活 (室温保存) |
|
| LD5 | M₄ | 肝臓・骨格筋 | 短い(約8〜10時間) |
間違えやすいところ
- LD5は心筋梗塞で上昇する → 誤り(心筋で優位なのはLD1です。)
- LDの検体は冷蔵保存する → 誤り(LD4とLD5が失活するため室温保存です。)
- サブユニットは5種類ある → 誤り(HとMの2種類です。これらが組み合わさって5種類のアイソザイムになります。)
- LD1の半減期は短い → 誤り(LD1が一番長く、LD5が一番短いです。)
覚え方のコツ(HとMの意味)
LDは覚え方が一つあるとかなり定着します。
- ・H = Heart(心臓)
- ・M = Muscle(筋肉)
Hが多いLD1は心臓、Mが多いLD5は筋肉・肝臓。
あとは「1と5だけ覚える」と意外と他の問題も解けます。
迷ったらこれだけ
- ・LDはH型とM型からなる4量体
- ・Hが多い(LD1)=心臓・赤血球
- ・Mが多い(LD5)=肝臓・骨格筋
- ・LD4・LD5は冷蔵保存NG
さいの補足:逸脱酵素としてのLD
LDは全身の細胞に広く存在しているため、どこかの細胞が壊れるとすぐに血液中に漏れ出してきます(逸脱酵素)。そのため、体のどこかに異常が起きていないかを探るスクリーニング検査として非常に優秀です。
ただし、LDだけでは原因臓器は特定できません。そのため、アイソザイムやAST、ALT、CKなど他の検査結果と合わせて総合的に判断します。LDが上がっているのを見つけたら、次にアイソザイムを調べることで「どの臓器が壊れているのか」を特定していく、という流れで臨床現場では使われています。
問44:飛行時間型質量分析(TOF-MS)法の原理
【問題】
飛行時間型質量分析(TOF-MS)法で誤っているのはどれか。
- 1.イオン化物質は大気圧中を飛行する。
- 2.イオン化物質の電荷は飛行時間に影響する。
- 3.イオン化物質の飛行速度はエネルギー保存の法則から算出される。
- 4.イオン化物質はレーザーの熱エネルギーへの変換により引き出される。
- 5.イオン化にはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法が汎用される。
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正答:1
【問題の考え方】
このMALDI-TOF MSの問題は、
「イオン化する(MALDI)→飛ばす(TOF)→飛行時間から質量電荷比(m/z)を求める」
という流れを理解できているかを問う問題です。各工程で何をしているのかを整理しておきましょう。
【各選択肢の解説(病態・原理)】
- 1.誤り(飛行する空間)
イオンが飛ぶ空間(フライトチューブ)は、高真空に保たれています。大気圧の中では空気中の分子とぶつかって散乱してしまい、まっすぐ飛ぶことができないからです。 - 2.正しい(電荷の影響)
飛行時間は、単なる重さ(質量:m)だけで決まるわけではありません。質量電荷比(m/z)といって、質量(m)と電荷(z)のバランスによって決まります。同じ重さでも、電荷が2倍になればスピードも速くなるため、電荷は飛行時間にしっかり影響します。 - 3.正しい(飛行速度の算出)
機械の中でイオンに与えられた電気の力(位置エネルギー)が、そのまま飛んでいくスピード(運動エネルギー)に変わります。この「エネルギー保存の法則」を利用して、到達時間から逆算して物質の重さを割り出しています。 - 4.正しい(イオンの引き出し方)
検体に混ぜたマトリックスがレーザーエネルギーを吸収し、そのエネルギーによって試料が脱離・イオン化されます。 - 5.正しい(汎用されるイオン化法)
タンパク質や微生物など、壊れやすい大きな分子を分析する際には、この「マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法」が最もよく使われます。
【関連知識】MALDI-TOF MSのプロセスまとめ
検体を入れてから結果が出るまでの流れを整理しておきましょう。
| 工程 | 内容 | キーワード |
|---|---|---|
| ①試料調製 | 検体とマトリックスを混合 | 共結晶 |
| ②MALDI | レーザー照射で脱離・イオン化 | ソフトイオン化 |
| ③TOF | 高電圧で加速し真空中を飛行 | m/z |
| ④検出 | 飛行時間を測定 | 軽いほど速い |
間違えやすいところ
- MALDIはタンパク質を壊して測定する → 誤り(壊れやすい分子でも測定できるソフトイオン化法です。)
- 大気圧中を飛行する → 誤り(空気にぶつからないよう「真空」です。)
- 重い物質ほど早く到着する → 誤り(同じエネルギーで飛ばした場合、軽い物質の方がスピードが出るため早く到着します。重いものは遅いです。)
- 電荷は飛行時間に影響しない → 誤り(質量電荷比「m/z」で見ているため、電荷(z)もモロに影響します。)
ここだけ覚えておけば大丈夫
この4つでほぼ解けます。
- ・MALDI = レーザーで脱離・イオン化
- ・TOF = 飛行時間からm/zを測定
- ・飛ぶ場所 = 高真空
- ・軽いイオンほど早く到着
覚え方のコツ
MALDI-TOFは名前を分けて覚えるのが一番です。
MALDI=イオン化する装置
TOF=飛行時間を測る装置
MALDIで飛ばし、TOFで測る。この2つをセットで覚えておくと、原理問題で混乱しにくくなります。
さいの補足:なぜ「マトリックス」が必要なのか?
MALDI法では、試料だけにレーザーを当てると分子が壊れてしまいます。そこで、レーザーを吸収しやすいマトリックスを混ぜておきます。マトリックスがレーザーエネルギーを受け止めることで、試料は大きく壊れることなく脱離・イオン化されます。このように分子を壊さずにイオン化する方法を「ソフトイオン化」と呼びます。タンパク質や微生物の同定に広く使われる理由もここにあります。
臨床化学(午後)の解説は以上です
第71回の午後問題(問29〜44)、お疲れ様でした。アミノ酸から各種分析原理まで、幅広い知識のつながりが問われる手応えのある問題ばかりでした。
臨床化学は、体内での物質の動きを「工場とトラック」の物流に例えたり、分析装置の中を「障害物競走」に置き換えたりと、身近なイメージを持つことで理解度が飛躍的に上がります。丸暗記の知識を、現場で使える「生きた知識」へとブラッシュアップして復習を進めてみてください。
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