こんにちは、臨床検査技師のさいです。
今回は第71回臨床検査技師国家試験の午前問題より「臨床生理学(問16〜28)」の全問解説まとめをお届けします。
午前の分野では、心電図の心房粗動、スパイログラムの計算、動脈血ガス分析の基準値、睡眠脳波のステージ判定、超音波のプローブ選択や肝血管の鑑別など、実際の検査業務の土台となる実践的な問題が多く出題されています。
単なる語句の暗記にとどまらず、波形の意味や検査の原理から患者の病態を論理的に推測する力が求められていると感じました。
解説を読んで分かりにくい点などがございましたら、各SNSのDM等で気軽にお声がけください。
僕自身、学生時代に心電図の波形や脳波の種類の多さに苦労した経験があります。(というか、全くわからなかった)
当時の自分が読みたかったと思えるような、ゴロ合わせや図解イメージを交えた視覚的な解説まとめを心がけました。皆様の国試合格に少しでも貢献できれば嬉しいです。
※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第71回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。
問16:標準12誘導心電図の電極位置
【問題】
標準12誘導心電図でV4誘導の電極位置はどれか。
- 1.第4肋間胸骨右縁
- 2.第4肋間胸骨左縁
- 3.第5肋間と左鎖骨中線の交点
- 4.第5肋間と左前腋窩線の交点
- 5.第5肋間と左中腋窩線の交点
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正答:3
【解説】胸部誘導電極の正確な装着位置
標準12誘導心電図検査において、胸部誘導(V1〜V6)の電極位置を正確に把握することは実務においても国家試験においても極めて重要です。電極の貼付位置がわずかにずれるだけで、得られる波形が変化し、心筋梗塞などの重大な疾患の診断に影響を及ぼす可能性があります。問題となっているV4誘導は「第5肋間と左鎖骨中線の交点」に装着します。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(V1誘導の位置)
第4肋間の胸骨右縁は、V1誘導の電極位置です。電極の色(JIS規格)は赤色です。 - 2.誤り(V2誘導の位置)
第4肋間の胸骨左縁は、V2誘導の電極位置です。電極の色(JIS規格)は黄色です。 - 3.正しい(V4誘導の位置)
第5肋間と左鎖骨中線の交点は、V4誘導の正確な位置です。電極の色(JIS規格)は茶色です。 - 4.誤り(V5誘導の引っかけ)
V5誘導の位置は「V4と同じ高さ(水平面)で、左前腋窩線との交点」です。第5肋間を基準に貼るわけではないため誤りとなります。 - 5.誤り(V6誘導の引っかけ)
V6誘導の位置は「V4と同じ高さで、左中腋窩線との交点」です。こちらも第5肋間を探して貼るわけではありません。
【頻出】標準12誘導心電図の胸部電極位置まとめ
| 誘導 | 解剖学的な装着位置 | 電極の色(JIS規格) |
|---|---|---|
| V1 | 第4肋間の胸骨右縁 | 赤色 |
| V2 | 第4肋間の胸骨左縁 | 黄色 |
| V3 | V2とV4を結んだ線の中間点 | 緑色 |
| V4 | 第5肋間と左鎖骨中線の交点 | 茶色 |
| V5 | V4と同じ高さの水平線上で、左前腋窩線との交点 | 黒色 |
| V6 | V4と同じ高さの水平線上で、左中腋窩線との交点 | 紫色 |
暗記方法・覚え方のコツ(電極の色の順番)
【ゴロ】あきみちゃん、黒紫
【解説】あ(赤:V1)き(黄:V2)み(緑:V3)ちゃん(茶:V4)、黒(V5)紫(V6)という色の並び順は、実技試験や日常業務でも必須の知識です。語呂合わせでスムーズに装着できるようにしておきましょう。
さいの補足(V5・V6の高さに関する定番の引っかけ)
V5・V6は第5肋間を探して貼るのではなく、「V4と同じ高さ」を基準に左前腋窩線(V5)、左中腋窩線(V6)へ貼付します。
実際には患者の体格によって第5肋間付近になることもありますが、装着位置を決める基準は「V4と同じ高さ」です。「V4だけが第5肋間を基準に決める」「V5・V6はV4の高さを基準に決める」という違いを押さえておきましょう。
問17:不整脈の心電図所見(心房粗動)
【問題】
標準12誘導心電図(別冊No. 2)を別に示す。所見はどれか。
- 1.心房細動
- 2.心房粗動
- 3.上室頻拍
- 4.心室細動
- 5.心室頻拍
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正答:2
【解説】ノコギリ歯状の「F波」と規則的な伝導
提示された心電図からは正常なP波と平坦な基線は見られず、II、III、aVF誘導では、F波が約4回に対してQRS波が1回出現しており、4:1房室伝導を示す心房粗動と判断できます。特に下壁誘導において、規則的で大きな振幅を持つ粗動波(F波)が連続して認められるのが特徴です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(心房細動)
P波が消失する点は同じですが、基線が不規則に小さく揺れる細動波(f波)となり、QRS波の間隔(RR間隔)が完全に不規則な絶対的不整脈になるのが特徴です。 - 2.正しい(心房粗動)
上記の通り、鋸歯状のF波と、房室ブロックを伴う規則的なRR間隔(本症例では4:1伝導)が特徴です。 - 3.誤り(上室頻拍)
通常は幅の狭いQRS波による規則正しい頻拍を示し、F波は認めません。 - 4.誤り(心室細動)
心室が痙攣している状態で、QRS波の形が完全に崩れ、大小さまざまな波が不規則に連続する無秩序な波形となります。 - 5.誤り(心室頻拍)
幅広いQRS波(0.12秒以上)が3拍以上連続する頻拍です。
【頻出】心房粗動と心房細動の鑑別まとめ
| 鑑別ポイント | 心房粗動(AFL) | 心房細動(AF) |
|---|---|---|
| 異常波の名称と特徴 | F波(粗動波):規則的なノコギリ歯状 | f波(細動波):不規則で細かな揺れ |
| 心房の興奮回数 | 250〜350回/分(通常約300回/分) | 約400〜600回/分 |
| RR間隔(心室のリズム) | 規則前(2:1や4:1など一定の伝導による) | 絶対的不整脈(irregularly irregular) |
| 最も見やすい誘導 | II、III、aVF(下壁誘導) | V1(右側胸部誘導) |
暗記方法・覚え方のコツ
Flutter(粗動)は「F=Fence(フェンス)」のような規則正しいノコギリ歯、Fibrillation(細動)は「f=fine(細かい)」と覚えると区別しやすくなります。
また、心房粗動は「ノコギリ(鋸歯状波)」というキーワードが出た瞬間に判断しやすいボーナス問題です。
さいの補足(伝導比と心拍数の関係)
心房粗動では心房は通常約300回/分で興奮しています。
しかし房室結節には伝導能力の限界があるため、すべての興奮を心室へ伝えることはできません。その結果、2:1や4:1などの一定の伝導比となります。今回の心電図のように4:1伝導の場合、心拍数は 300 ÷ 4 = 75回/分 となります。また2:1伝導の場合は、心拍数は 300 ÷ 2 = 150回/分 の規則的な頻脈になります。このように、F波の数と伝導比から心拍数(RR間隔)を計算できることも、国家試験で役立つ知識です。心房粗動ではII、III、aVF誘導でF波が最も見つけやすく、V1誘導でも比較的明瞭に観察できます。
問18:スパイログラムの波形読み取り
【問題】
スパイログラム(別冊No. 3)を別に示す。Aが示すのはどれか。
- 1.肺活量
- 2.一回換気量
- 3.最大吸気量
- 4.予備吸気量
- 5.予備呼気量
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正答:3
【解説】波形の「スタート地点」に注目する
スパイログラムの問題を解く際は、矢印がどこからスタートしてどこまで伸びているかを正確に読み取ることがポイントです。
設問の図のAの矢印を見ると、矢印の下端が安静呼気位(通常呼気終末位:普段の呼吸で自然に息を吐き終えた位置)に一致していることが確認できます。そこから最大吸気位(限界まで息を吸い込んだ位置)まで伸びているため、この気量を「最大吸気量(IC)」と呼びます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(肺活量:VC)
最大吸気位から最大呼気位まで努力して出し入れできる空気量のことです。 - 2.誤り(一回換気量:TV)
安静呼気位から安静吸気位までの、普段の安静呼吸をしているときの1回の呼吸量です。 - 3.正しい(最大吸気量:IC)
最大吸気量(IC)は、安静呼気位から最大限吸い込める空気量であり、「一回換気量(TV)+予備吸気量(IRV)」で表されます。図のAの範囲と完全に一致します。 - 4.誤り(予備吸気量:IRV)
安静吸気位から最大吸気位までの気量です。普段息を吸った状態から、さらに追加で吸い込める限界の量を示します。 - 5.誤り(予備呼気量:ERV)
安静呼気位から最大呼気位までの気量です。普段息を吐いた状態から、さらに追加で吐き出せる限界の量を示します。
【頻出】スパイログラムの各名称と足し算の関係まとめ
| 名称(略語) | 波形の範囲(定義)と計算式 |
|---|---|
| 一回換気量(TV) | 安静呼気位 〜 安静吸気位(単一の気量) |
| 予備吸気量(IRV) | 安静吸気位 〜 最大吸気位(単一の気量) |
| 予備呼気量(ERV) | 安静呼気位 〜 最大呼気位(単一の気量) |
| 最大吸気量(IC) | 安静呼気位 〜 最大吸気位【IC = TV + IRV】 |
| 肺活量(VC) | 最大呼気位 〜 最大吸気位【VC = TV + IRV + ERV】(または IC + ERV) |
| 機能的残気量(FRC) | 安静呼気位で肺内に残っている空気量【FRC = ERV + RV】 |
| 全肺気量(TLC) | 最大吸気位で肺内にある全空気量【TLC = VC + RV】 |
暗記方法・覚え方のコツ(4つの基本公式)
国家試験を攻略するためには、スパイログラムを足し算の数式として整理しておくのが最も効果的です。
・IC = TV + IRV
・VC = IC + ERV
・FRC = ERV + RV
・TLC = VC + RV
「予備」は安静呼吸から追加できる量、「容量(Capacity)」は複数の気量を合わせた総量と考えると良いです👍
さいの補足(気量:Volumeと容量:Capacityの違いと測定の限界)
呼吸機能検査の用語には、英語の「Volume」と「Capacity」の2つの概念が存在します。一回換気量(TV)や予備吸気量(IRV)のように、それ以上分割できない単一のブロックをVolume(気量)と呼びます。
一方、最大吸気量(IC)や肺活量(VC)のように、複数のVolumeを足し合わせた値をCapacity(容量)と呼びます。
ここで国家試験対策として非常に重要なポイントがあります。それは、どんなに息を吐き出しても肺内から除去できない残気量(RV)は、スパイロメータでは直接測定することができないという点です。
そのため、数式の中にRVを含んでいる「機能的残気量(FRC)」や「全肺気量(TLC)」、そして「残気量(RV)」そのものも、スパイロメータ単独では測定できません(これらにはガス希釈法や体プレチスモグラフ法が必要です)。「スパイロメータで測れないのはどれか」という問題は国試で非常によく出るため、数式とセットで確実に覚えておきましょう。
問19:肺拡散能(DLco)の低下要因
【問題】
肺拡散能(DLco)が低下しないのはどれか。
- 1.肺気腫
- 2.肺切除後
- 3.間質性肺炎
- 4.気管支喘息
- 5.肺血栓塞栓症
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正答:4
【解説】肺拡散能(DLco)低下の3大原因
肺拡散能(DLco)とは、肺胞から毛細血管の血液中へ一酸化炭素(CO)ガスがどれだけ効率よく移動できるかを評価する検査です。DLcoが低下する原因は「ガス交換面積が減る」「ガスの通り道が厚くなる」「血液が流れない」の3つだけと覚えておきましょう。また、DLcoはガスを受け取るヘモグロビン量にも左右されるため、貧血でも低下し、逆に多血症では高値となります。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(低下する)
肺気腫は、肺胞壁が破壊されて癒合し、ガス交換面積が減る疾患です。そのためDLcoは著しく低下します。 - 2.誤り(低下する)
肺の一部を切除すると、物理的にガス交換面積が減るため、全体のDLcoは低下します。 - 3.誤り(低下する)
間質性肺炎は、肺胞の壁(間質)が線維化して厚くなる病気です。ガスの通り道が厚くなるため拡散効率が落ちてDLcoは低下します。 - 4.正しい(低下しない)
気管支喘息は気道の閉塞が主体であり、肺胞や肺毛細血管の構造は基本的に保たれています。そのためDLcoは正常〜軽度高値を示すことが多く、少なくとも低下はしません。 - 5.誤り(低下する)
肺血栓塞栓症は、肺動脈が詰まる疾患です。肺胞に空気は入ってきても血液が流れないためガス交換ができず、DLcoは低下します。
【頻出】DLcoが低下する3つのメカニズム
| 低下のメカニズム | 代表的な疾患・状態 |
|---|---|
| ガス交換面積が減る | 肺気腫、肺切除など |
| ガスの通り道が厚くなる | 間質性肺炎、肺線維症など |
| 血液が流れない(Hb減少) | 肺血栓塞栓症、貧血など |
暗記方法・覚え方のコツ
DLcoは「面積・壁・血流」で決まります。面積低下(肺気腫)、壁肥厚(間質性肺炎)、血流低下(肺塞栓・貧血)と整理しましょう。気管支喘息を「土管の詰まり」に例えると、空気を運ぶ土管(気管支)が狭いだけで、その先のガス交換工場(肺胞)は無傷です。気道だけの病気である喘息はDLcoが保たれると覚えておけば国試にしっかり対応できます。
さいの補足(閉塞性換気障害の鑑別とDLco/VA)
気管支喘息も肺気腫も1秒率が低下する「閉塞性換気障害」に分類されますが、DLcoの挙動は逆になります。気管支喘息ではDLcoは正常〜高値ですが、肺気腫ではDLcoは低下します。この違いは国家試験の定番です。また、肺切除後では肺全体のDLcoは低下しますが、残った肺胞の働きは保たれているため、肺容量で補正したDLco/VA(Kco)は正常となることがあります。
問題文が「DLco」なのか「DLco/VA」なのかをしっかり確認し、違いを理解しておきましょう。
問20:動脈血ガス分析の基準値
【問題】
室内気吸入時の動脈血ガス分析で基準範囲内にあるのはどれか。
- 1.pH 7.00
- 2.PaO2 70 mmHg
- 3.PaCO2 40 mmHg
- 4.HCO3– 30 mmol/L
- 5.BE +5 mmol/L
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正答:3
【解説】血液ガス分析の基本と評価指標
動脈血ガス分析は、全身の酸塩基平衡や肺のガス交換能を評価する重要な検査です。国家試験や臨床では各指標が何を反映しているかを正確に整理しておく必要があります。
特に、PaCO2は換気を反映し、PaO2は酸素化を反映するという違いは非常に重要です。これらは混同しやすいため確実に区別しましょう。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(pH)
pHの基準範囲は7.35〜7.45です。7.00は基準範囲より低く、重度のアシデミア(血液が酸性に傾いた状態)を示します。 - 2.誤り(PaO2)
動脈血酸素分圧(PaO2)は若年成人では約80〜100 mmHgが基準ですが、加齢とともに生理的に低下します。そのため高齢者では80 mmHg未満でも異常とは限りません。ただし国家試験対策としては80〜100 mmHgで覚えて問題ありません。70 mmHgは低酸素血症の域に該当します。 - 3.正しい(PaCO2)
動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の基準範囲は35〜45 mmHgです。40 mmHgは基準範囲内であり正常です。 - 4.誤り(HCO3–)
重炭酸イオン(HCO3–)の基準範囲は22〜26 mmol/Lです。30 mmol/Lは基準範囲より高く、代謝性アルカローシスなどの存在を示唆します。 - 5.誤り(BE)
塩基過剰(BE:Base Excess)は代謝性の酸塩基異常を示す指標で、基準範囲は0 ± 2 mmol/Lです。BEがプラスであれば塩基が多い(代謝性アルカローシス方向)、マイナスであれば塩基が不足(代謝性アシドーシス方向)を意味します。+5 mmol/Lは基準範囲を超えてプラスに傾いています。
【頻出】血液ガスの主な項目と基準値まとめ
| 項目 | 基準値 | 単位 | 反映する病態・役割 |
|---|---|---|---|
| pH | 7.35 〜 7.45 | – | 血液の酸塩基平衡状態(水素イオン濃度) |
| PaCO2 | 35 〜 45 | mmHg | 動脈血二酸化炭素分圧(肺の換気を反映) |
| HCO3– | 22 〜 26 | mmol/L | 重炭酸イオン(主に腎臓による代謝性調節) |
| BE | 0 ± 2 | mmol/L | Base Excess。代謝性因子を純粋に評価する指標 |
| PaO2 | 80 〜 100 | mmHg | 動脈血酸素分圧(肺の酸素化を反映) |
暗記方法・覚え方のコツ(40・40・24の法則)
血液ガスの中心となる数字は「40・40・24」と並べて覚えると一瞬で記憶に定着します。pHの小数部分は7.40、PaCO2の中心値は40、そしてHCO3–の中心値は24です。この3つの代表値を頭に入れておき、そこからpHは±0.05(7.35〜7.45)、PaCO2は±5(35〜45)、HCO3–は±2(22〜26)という許容幅をセットにすると、試験本番でも迷わずに思い出せます。
さいの補足(実践的な判読順序と代謝指標の違い)
臨床や国試問題では、血液ガスデータを次の順番で確認していくのが鉄則です。
①まずpHを見て酸性かアルカリ性かを判断する。
②次にPaCO2を確認して呼吸性の要因があるかを見る。
③続いてHCO3–やBEをチェックして代謝性の要因を見る。
④最後にPaO2を見て酸素化の状態を確認する。
このステップを踏むことで複雑なデータも正確に読み解けます。なお、受験生が混乱しやすいHCO3–とBEはどちらも代謝性変化を評価する指標ですが、BEは計算上PaCO2の影響を補正しているため、呼吸による変動に惑わされず、代謝異常をより純粋に評価できるという特徴があります。
問21:ニューロンの活動電位とイオン
【問題】
ニューロンの活動電位の始まりを担うイオンはどれか。
- 1.Ca2+
- 2.Cl–
- 3.K+
- 4.Mg2+
- 5.Na+
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正答:5
【解説】脱分極を引き起こすナトリウムイオン
細胞膜には特定の電圧に達すると開く電位依存性イオンチャネルが存在します。ニューロンが閾値(およそ-50〜-55 mV)に達すると、電位依存性Na+チャネルが開き、Na+が細胞外から細胞内へ急速に流入します。これにより脱分極が起こり、活動電位が立ち上がります。続いてK+が細胞外へ流出して再分極が起こります。したがって、活動電位の始まりを担うイオンはNa+です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(Ca2+)
神経終末での神経伝達物質放出の引き金となります。ただし、一般的なニューロンの活動電位の立ち上がりの主役はNa+です。 - 2.誤り(Cl–)
塩化物イオンは、細胞内へ流入することで膜電位をさらにマイナスにし、興奮を抑える抑制性シナプス後電位(IPSP)に関与します。 - 3.誤り(K+)
カリウムイオンは、Na+の流入後、少し遅れて開くK+チャネルから細胞外へ流出します。これにより膜電位が元のマイナス状態に戻る「再分極」を担います。 - 4.誤り(Mg2+)
マグネシウムイオンは神経系のNMDA受容体のブロックなどに働きますが、活動電位の立ち上がりには直接関与しません。 - 5.正しい(Na+)
上記の通り、細胞内への急激な流入によって脱分極を起こし、活動電位の始まりを担います。
30秒で覚える各イオンの役割
| 現象 | 主役となるイオンと動き |
|---|---|
| 上り坂(脱分極) | Na+流入 |
| 下り坂(再分極) | K+流出 |
| 神経伝達物質放出 | Ca2+流入 |
| 抑制(IPSP) | Cl–流入 |
| 濃度勾配の維持・回復 | Na+/K+ポンプ |
暗記方法・覚え方のコツ
上記の4つのイオンの動きと、Na+/K+ポンプの役割をセットで押さえておきましょう。
この表を理解しておけば、活動電位・シナプス伝達・抑制性電位に関する国家試験の関連問題までほぼすべて対応できます。
さいの補足(Na+/K+ポンプの真の役割)
よく陥る間違いとして、「活動電位が終わった後の再分極をNa+/K+ポンプが行っている」という誤解があります。
活動電位直後の再分極そのものは、主にK+チャネルを通じたK+の流出によって起こります。Na+/K+ポンプは、その後の長期的なイオン濃度勾配(細胞内K+高・細胞外Na+高)を維持・回復し、静止膜電位の維持に寄与する役割を担っています。
問22:反復神経刺激検査と神経筋接合部疾患
【問題】
反復神経刺激検査で検出できる機能障害の部位はどれか。
- 1.大脳運動野
- 2.脊 髄
- 3.末梢神経
- 4.神経筋接合部
- 5.骨格筋
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正答:4
【解説】神経筋接合部の伝達機能を評価する
反復神経刺激検査(RNS)は、運動神経に連続して電気刺激を与え、誘発される複合筋活動電位(CMAP)の振幅変化を記録する検査で、Harvey-Masland(ハーヴェイ・マスランド)試験とも呼ばれます。
この検査は、神経末端から筋線維へ信号を伝える神経筋接合部の機能障害を検出するために用いられます。よく混同される針筋電図は、筋線維そのものの電気活動を調べる検査であるのに対し、反復神経刺激検査はつなぎ目である接合部の検査です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(大脳運動野)
大脳皮質の機能障害は、脳波検査(EEG)や経頭蓋磁気刺激(TMS)、MRIなどの画像診断で評価されます。 - 2.誤り(脊髄)
脊髄の機能障害は、体性感覚誘発電位(SEP)や運動誘発電位(MEP)、MRIなどで評価されます。 - 3.誤り(末梢神経)
末梢神経自体の障害(ギラン・バレー症候群など)は、神経伝導検査(NCS)による活動電位の振幅低下や伝導速度の遅延で評価されます。 - 4.正しい(神経筋接合部)
上記の通り、神経筋接合部の機能障害を評価する検査です。重症筋無力症やLambert-Eaton症候群の診断に不可欠です。 - 5.誤り(骨格筋)
骨格筋自体の障害(筋ジストロフィーなど)は、針筋電図検査による筋原性変化(低振幅・短持続時間電位など)で評価されます。
【頻出】神経筋接合部疾患の特徴まとめ
| 疾患 | 障害部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| 重症筋無力症(MG) | シナプス後膜(ACh受容体) | waning(低頻度刺激で漸減) |
| Lambert-Eaton症候群(LEMS) | シナプス前膜(Caチャネル) | waxing(高頻度刺激で漸増) |
暗記方法・覚え方のコツ(アルファベットの頭文字で一発暗記)
・MGの M = Minus(下がる・waning)
・LEMSの L = Lift(上がる・waxing)
この頭文字のイメージを持っておくだけで、低頻度・高頻度の波形変化の引っかけ問題を見分けることができます。
さいの補足(waningとwaxingが起こる病態メカニズム)
重症筋無力症(MG)では、自己抗体により筋終板のアセチルコリン受容体(ACh受容体)が減少しています。そのため神経刺激を繰り返すと、正常では十分だったアセチルコリン量でも安全域が低下しているために筋線維を興奮させられなくなり、CMAP振幅が徐々に低下する現象(waning)がみられます。
一方、Lambert-Eaton症候群(LEMS)では、高頻度刺激により神経終末内にカルシウムイオン(Ca2+)が蓄積し、アセチルコリン放出量が増加するため、CMAP振幅が増加する現象(waxing)が起こります。
問23:睡眠脳波のステージ判定
【問題】
健常成人の脳波(別冊No. 4)を別に示す。睡眠段階はどれか。
- 1.Stage W
- 2.Stage N1
- 3.Stage N2
- 4.Stage N3
- 5.Stage R
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正答:3
【解説】睡眠紡錘波とK複合波によるN2判定
設問の脳波(別冊No.4)を見ると、中心部(C3、C4など)を中心に、14Hz前後の周波数で徐々に振幅が増減する「睡眠紡錘波(spindle)」と、上向きに尖った鋭い波である「頭頂鋭波(V波)」が認められます。
国際的な睡眠判定基準(AASMマニュアル)において、Stage N2は「睡眠紡錘波またはK複合波のいずれかが出現することで判定される」と定義されているため、正解は3となります。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(Stage W:覚醒期)
閉眼時には後頭部優位のα律動(8〜13Hz)がみられ、開眼時や活動時にはβ波が主体となるステージです。 - 2.誤り(Stage N1:入眠期)
α律動が消失し、低振幅混合周波数(主にθ波)が主体となります。頭頂鋭波(V波)がみられることが多いですが、これは補助所見であり、これだけではN2とは判定しません。 - 3.正しい(Stage N2:軽睡眠期)
上記の通り、睡眠紡錘波(12〜14Hz)またはK複合波のいずれかが出現するステージです。 - 4.誤り(Stage N3:深睡眠期)
高振幅δ波(0.5〜2Hz)が30秒エポックの20%以上を占めるようになる深い睡眠のステージです。 - 5.誤り(Stage R:レム睡眠期)
低振幅混合周波数脳波で覚醒脳波に近く、急速眼球運動(REMs)と筋緊張の著明な低下(アトニア)が特徴です。
【頻出】睡眠段階と主役となる所見まとめ
| 睡眠段階 | 脳波・その他の主役となる所見 |
|---|---|
| Stage W(覚醒) | α波 |
| Stage N1(入眠) | θ波(+V波) |
| Stage N2(軽睡眠) | 睡眠紡錘波・K複合波 |
| Stage N3(深睡眠) | δ波(エポックの20%以上) |
| Stage R(レム) | 低振幅混合波・REM・筋緊張消失 |
暗記方法・覚え方のコツ(各ステージの主役)
睡眠脳波は各ステージの「主役」となる波形をシンプルにリンクさせましょう。
Wはα波、N1はθ波、N2は紡錘波とK複合、N3はδ波、RはREMと筋緊張消失です。これだけ整理しておけば、同様の睡眠判定問題の8割は解くことができると思います。
さいの補足(AASM基準に基づく判定ルールの詳細)
よく混同するのが「頭頂鋭波(V波)」と「K複合波」です。
頭頂鋭波はStage N1でみられることが多いですが、これだけではStage N2とは判定しません。AASM基準では、0.5秒以上持続する高振幅の二相性波である「K複合波」または「睡眠紡錘波」のいずれかが、その30秒エポック内に認められればStage N2と判定します。
今回の脳波図には頭頂鋭波も出現していますが、睡眠紡錘波がしっかりと出現しているため、優先順位のルールに則りStage N2と確定できます。
問24:異常脳波と疾患の組み合わせ
【問題】
脳波(別冊No. 5)を別に示す。最も考えられるのはどれか。
- 1.West症候群
- 2.欠神てんかん
- 3.Creutzfeldt-Jakob病
- 4.ミオクロニーてんかん
- 5.Lennox-Gastaut症候群
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正答:3
【解説】約1秒周期の「周期性同期性放電」
設問の脳波(別冊No.5)を見ると、全誘導において鋭波や棘波を伴う高振幅の異常放電が「約1秒に1回」の一定周期で反復して出現しています。右上の「1秒」のスケールバーと照らし合わせるとその周期性がよくわかります。この所見は「周期性同期性放電(PSD:Periodic Synchronous Discharge、Periodic Sharp Wave Complexとも呼ばれる)」であり、Creutzfeldt-Jakob(クロイツフェルト・ヤコブ)病の進行期に高頻度で認められる特徴的な脳波所見です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(West症候群)
乳児期に発症するてんかんで、脳波は「ヒプスアリスミア」と呼ばれる、無秩序で著しく高振幅な徐波と棘波が入り乱れた波形を示します。 - 2.誤り(欠神てんかん)
小児期に好発し、数秒間の意識消失を伴います。脳波は「3Hz棘徐波複合」が全般性に規則正しく出現するのが特徴です。 - 3.正しい(Creutzfeldt-Jakob病)
プリオン病の一種で、急速進行性認知症とミオクロヌスを伴い、進行期に約1秒周期のPSDが出現することが特徴です。 - 4.誤り(ミオクロニーてんかん)
四肢のピクつき(ミオクロヌス)を伴い、脳波では「全般性多棘徐波複合(複数の棘波の後に徐波が続く波形)」が出現します。 - 5.誤り(Lennox-Gastaut症候群)
小児期の難治性てんかんで、脳波は「1.5〜2.5Hz鋭徐波複合(遅棘徐波複合:slow spike-and-waveとも呼ばれる)」が特徴です。
【頻出】異常脳波と代表的疾患まとめ
| 疾患名 | 特徴的な脳波所見 | 国試でのキーワード |
|---|---|---|
| Creutzfeldt-Jakob病 | 周期性同期性放電(PSD) | 約1秒周期、急速進行性認知症、ミオクロヌス |
| Lennox-Gastaut症候群 | 1.5〜2.5Hz鋭徐波複合(遅棘徐波複合) | 難治性、3Hzより遅い |
| 欠神てんかん | 3Hz棘徐波複合 | 小児、数秒の意識消失 |
| West症候群 | ヒプスアリスミア | 乳児、無秩序で高振幅、点頭てんかん |
| 肝性脳症 | 三相波(triphasic wave) | 全般性出現、意識障害、羽ばたき振戦 |
暗記方法・覚え方のコツ(1Hz・2Hz・3Hzの法則)
異常脳波は「1秒間に何回波が来るか」で整理すると一瞬で覚えられます。
1Hz(約1秒に1回)ならCJDのPSD。
約2HzならLGSの遅棘徐波。
きっちり3Hzなら欠神てんかんの棘徐波です。
この3段階の階段を頭に入れておき、右上のスケールバー(1秒)の幅の間にいくつの波が入っているかを数えるだけで、選択肢を大きく絞り込むことができます。(荒技ですけどね。)
さいの補足(周期性を示す他の異常脳波との鑑別)
周期的に異常波が出現する疾患として、CJDのほかに「肝性脳症」や「単純ヘルペス脳炎」もよく狙われます。
肝性脳症では形態が特徴的な「三相波(triphasic wave)」が全般性に出現します。
一方、単純ヘルペス脳炎では「周期性一側性てんかん様放電(PLEDs)」が片側の側頭部に限局して出現します。
CJDのPSDは「全般性」で「約1秒周期」である点が鑑別の決定的なポイントになります。
脳波はむずいです。過去問の脳波をパターン化して覚えるのもいいですよ!
問25:超音波探触子の周波数と用途
【問題】
体表からの超音波検査で使用する探触子の周波数が最も低いのはどれか。
- 1.肝 臓
- 2.心 臓
- 3.膵 臓
- 4.乳 腺
- 5.頸動脈
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正答:2
【解説】周波数と「分解能・深達度」のトレードオフ
超音波は周波数が高いほど分解能は高くなりますが、深部まで届きません。
一方、周波数が低いほど深部まで到達できます。心臓は肋骨の隙間(肋間)から深部を観察する必要があるため、最も低い周波数の探触子を使用します。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(肝臓)
腹部臓器の観察には、3.5〜5MHz程度の低周波を使用します。 - 2.正しい(心臓)
肋間の狭い隙間から深部を観察するため、2〜3.5MHzという全臓器中で最も低い周波数帯を使用します。 - 3.誤り(膵臓)
肝臓と同様の腹部臓器であり、3.5〜5MHz程度の低周波を使用します。 - 4.誤り(乳腺)
体表面の臓器であり深部まで届かせる必要がないため、10〜15MHzなどの高周波を使用します。 - 5.誤り(頸動脈)
乳腺と同様に体表面の血管であるため、7〜12MHzなどの高周波を使用します。
【頻出】各臓器と使用する周波数の比較
| 対象臓器 | 周波数の目安 |
|---|---|
| 乳腺 | 10〜15 MHz |
| 頸動脈 | 7〜12 MHz |
| 肝臓・膵臓(腹部臓器) | 3.5〜5 MHz |
| 心臓 | 2〜3.5 MHz |
暗記方法・覚え方のコツ
「浅い=高周波」「深い=低周波」と覚えましょう。さらに「High(高周波)=High resolution(高分解能)」と英語のニュアンスを紐付けておくと試験本番でも忘れにくくなります。
さいの補足(プローブの形状と用途のリンク)
心臓は肋骨の間という狭い隙間から観察するため、先端が小さく扇状に超音波を広げられるセクタ型プローブを使用します。プローブの形状と用途は以下の表で整理しましょう。
| プローブ形状 | 主な用途・対象臓器 |
|---|---|
| リニア型 | 乳腺・甲状腺・頸動脈 |
| コンベックス型 | 腹部臓器(肝・胆・膵・脾・腎) |
| セクタ型 | 心臓 |
「リニア=浅い」「コンベックス=腹部」「セクタ=心臓」の3つをセットで覚えましょう。
問26:心エコー図検査におけるドプラ法の使い分け
【問題】
心エコーで連続波ドプラ法を使用するのはどれか。
- 1.e′
- 2.E/A
- 3.左室駆出率
- 4.肺体血流比
- 5.右室収縮期圧
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正答:5
【解説】ドプラ法の3つの基本とCWの原理
心エコーのドプラ法には、大きく分けて「パルスドプラ法(PW)」「連続波ドプラ法(CW)」「組織ドプラ法(TDI)」の3種類があり、それぞれ測定対象が異なります。PWは特定の深さの血流を測れますが、高速血流では波形が折り返す(エイリアシング)という弱点があります。一方、CWは超音波の送信と受信を別々の素子で連続して行うため、エイリアシング(折り返し現象)が起こらず、どんなに高速な血流でも正確に測定できるのが最大の特徴です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(e′)
僧帽弁輪拡張早期移動速度(e′)は、左室の拡張能を評価する指標です。心筋の動きのような低速な動きを捉えることに特化した「組織ドプラ法(TDI)」を用いて記録します。 - 2.誤り(E/A)
左室流入血流の早期拡張期波(E波)と心房収縮期波(A波)の比です。僧帽弁口という決まった場所の血流を測るため「パルスドプラ法(PW)」を用います。 - 3.誤り(左室駆出率)
心臓の収縮能を示す左室駆出率(LVEF)は、ドプラ法ではなく「断層法(Bモード)やMモード法」を用いて左室の容積から算出します。 - 4.誤り(肺体血流比)
肺体血流比(Qp/Qs)は、流出路断面積(CSA)を断層法(Bモード)で測定し、血流速度時間積分値(VTI)をパルスドプラ法(PW)で測定して、その積(CSA × VTI)から求めます。 - 5.正しい(右室収縮期圧)
三尖弁逆流(TR)は高速血流であるため「連続波ドプラ法(CW)」で測定します。三尖弁逆流速度(TR velocity)をCWで測定し、簡易ベルヌーイの式から右室-右房圧較差を求め、右房圧を加えて右室収縮期圧(RVSP)を推定します。
【頻出】ドプラ法の使い分けまとめ
| ドプラ法 | 何を見る? | エイリアシング | 代表例 |
|---|---|---|---|
| PW | 決まった場所の血流 | あり | E/A、VTI |
| CW | 高速血流 | なし | TR、MR、AS |
| TDI | 心筋の動き | – | e′ |
暗記方法・覚え方のコツ(逆流と狭窄はCW)
弁が壊れて漏れる「逆流」や、狭いところを無理やり通る「狭窄」の血流は、ホースの口を潰したときのように非常に高速になります。「逆流」と「狭窄」は高速血流になるため、エイリアシングの起きない連続波ドプラ法(CW)を使用します。大動脈弁狭窄(AS)、僧帽弁逆流(MR)、三尖弁逆流(TR)のサインが出たら、迷わずCWを選択しましょう。
さいの補足(簡易ベルヌーイの式とRVSPの推定)
CWで測定した三尖弁逆流の最高血流速度(V)から、右室と右房の圧力差(ΔP)を求めるのが「簡易ベルヌーイの式(ΔP = 4V2)」です。例えばV=3 m/sなら、ΔP = 4 × 32 = 36 mmHgとなります。この圧較差に右房圧を足し合わせたものが右室収縮期圧(RVSP)となります。なお、右房圧は下大静脈(IVC)の径と呼吸性虚脱率から推定します(通常は3〜15mmHgの間で評価されます)。
問27:腹部超音波検査での肝血管の鑑別
【問題】
健常者の右肋間走査の超音波像(別冊No. 6)を別に示す。矢印で示すのはどれか。
- 1.門 脈
- 2.肝動脈
- 3.左肝静脈
- 4.中肝静脈
- 5.右肝静脈
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正答:1
【解説】肝内血管の最重要鑑別ルール
肝内の血管を見分けるときは、まず血管壁が白く見えるかどうかを確認します。白い壁があれば門脈、壁が目立たなければ肝静脈です。設問の右肋間走査の画像(別冊No.6)を見ると、右側にある黒く抜けた胆嚢の左側を走る管状構造物の壁が、周囲の肝実質よりも白くはっきりと縁取られていることが確認できます。したがって、矢印で示されているのは門脈です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.正しい(門脈)
門脈は結合組織が豊富なグリソン鞘に包まれているため、超音波を強く反射して血管壁が白く(高エコーに)はっきりと描出されます。 - 2.誤り(肝動脈)
肝動脈も門脈と同じくグリソン鞘内を走行しますが、門脈より細く、通常のBモード画像では明瞭に描出されることは少ないため、本設問の血管ではありません。 - 3.誤り(左肝静脈)
肝静脈はグリソン鞘を持たず、血管壁が白く目立ちません。また、左肝静脈は通常、心窩部からのアプローチなどで観察されます。 - 4.誤り(中肝静脈)
中肝静脈は右葉と左葉の境界線を走行する血管で、壁エコーは不明瞭です。 - 5.誤り(右肝静脈)
右肋間走査で門脈と交差するように走る血管ですが、血管壁が白く描出されないため除外できます。
【頻出】門脈と肝静脈の決定的な違いまとめ
| 項目 | 門脈 | 肝静脈 |
|---|---|---|
| 血管壁の見た目 | 白い壁(高エコー) | 目立たない |
| 流れる方向 | 肝門部(肝臓の出入り口) → 末梢へ | 末梢 → 下大静脈(IVC)へ |
| 血管の太さ | 末梢ほど細い | IVCに近づくほど太い |
暗記方法・覚え方のコツ(一言で決める)
「白い壁 = 門脈」これだけを頭に叩き込んでおきましょう。肝内で白く縁取られた強いエコーの輪郭を見つけたら、迷わず門脈と判定して問題ありません。
さいの補足(木と川のイメージで走行をマスター)
肝内の血管走行で迷ったときは、門脈は「木」、肝静脈は「川」と考えると覚えやすくなります。門脈は肝門部から木の枝のように末梢に向かって分岐して広がっていきます。一方、肝静脈は細い枝が集まって一本の大きな川となり、下大静脈(IVC)へと流れ込みます。解剖学的なイメージを持っておくことが重要です。
問28:乳腺超音波検査における5層構造の基本
【問題】
乳房の超音波像(別冊No. 7)を別に示す。乳腺実質はどれか。
- 1. ①
- 2. ②
- 3. ③
- 4. ④
- 5. ⑤
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正答:2
【解説】基本となる乳房の5層構造
乳腺超音波では、体表から深部へ向かって並ぶ「5層構造」を理解することが基本です。まず血管や各組織の並びを浅い方から順番に確認すると、乳腺実質を容易に同定できます。なお、皮膚は非常に薄いため、写真では番号が付いていないのではないかと思います。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(① 皮下脂肪織)
皮膚のすぐ下にある層で、エコーレベルは比較的低く(黒っぽく)見えます。 - 2.正しい(② 乳腺実質)
乳腺実質は乳管や線維性結合組織を多く含むため、超音波を強く反射して脂肪より高エコー(白っぽく)描出されます。病変の多くはこの層に発生するため、最も注意深く観察する領域です。 - 3.誤り(③ 乳腺後脂肪織)
乳腺実質のさらに奥にある薄い脂肪の層で、①の皮下脂肪と同様に低エコー(黒っぽく)示します。 - 4.誤り(④ 大胸筋)
大胸筋は低エコーの筋層ですが、内部に筋線維による線状エコー(縞模様)がみられるのが特徴です。 - 5.誤り(⑤ 肋骨)
表面が非常に強い高エコー(真っ白)で描出され、後方に超音波が通らない真っ黒な影「音響陰影(アコースティックシャドー)」を引き連れます。なお、肋骨の間には胸膜が高エコーの線として描出されます。
【頻出】組織名とエコー輝度の組み合わせ
| 組織 | エコー輝度 | 画像での見え方 |
|---|---|---|
| 脂肪(皮下・乳腺後) | 低エコー | 黒っぽい |
| 乳腺 | 高エコー | 白っぽい |
| 筋肉(大胸筋) | 低エコー | 黒っぽい層の中に白い縞模様 |
| 骨(肋骨) | 高エコー + 音響陰影 | 表面が真っ白で、後ろは真っ黒な影 |
暗記方法・覚え方のコツ(コントラストで一発記憶)
乳腺実質は「黒(脂肪)→ 白(乳腺)→ 黒(脂肪)」の真ん中にある、と覚えましょう。黒い脂肪の層に挟まれた、白いサンドイッチの具材を探すイメージを持っておくと、初見の画像問題でも迷うことなく同定できるようになります。
さいの補足(加齢に伴う乳房組織の変化)
乳腺実質は若年期には発達しているため全体が白く高エコーに描出されます。しかし、加齢に伴って乳腺実質が減少して脂肪へと置き換わる「脂肪置換」が進むため、乳房全体としては低エコーの脂肪組織が目立つようになります。単に層の名前を当てさせるだけでなく、こういった年齢によるエコー像の変化の仕組みについても問われることがあるかもしれないため、解剖生理の背景と結びつけて整理しておきましょう。
臨床生理学(午前)の解説は以上です
第71回の午前問題、お疲れ様でした。心電図やエコー、脳波など、図や波形から情報を読み取る実践的な力が試される内容でした。写真多かったですね笑
特に生理機能検査分野は、波形の基準値やアーチファクトの原理など、一度理論とルールを理解してしまえば確実な得点源になります。丸暗記に頼らず、なぜその波形になるのかという背景に目を向けて復習を進めてみてください。
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