こんにちは、臨床検査技師のさいです。
第71回臨床検査技師国家試験「公衆衛生学 午前午後(問90〜94)」を1問ずつ詳しく解説まとめしています。
公衆衛生学や関係法規の分野は、日本国憲法、環境基準、食中毒、公的医療保険、生活保護など、私たちの生活に密接に関わるルールや制度が問われます。一見すると法律や歴史の丸暗記のように思えますが、「なぜその法律ができたのか」「その制度の対象者は誰なのか」といった社会の仕組みと結びつけて理解すると、一気に得点源になる科目です。
この記事では、ただ正解を覚えるだけでなく、他の選択肢がなぜ違うのか、似た制度とどう区別するのかをなるべく分かりやすく整理しています。国家試験対策はもちろん、医療従事者として知っておくべき社会のルールの確認にも活用していただければ幸いです。
※本記事の問題文および選択肢は、厚生労働省が公開している「第71回臨床検査技師国家試験問題および正答」をもとに掲載しています。
問90:日本国憲法第25条(生存権)
【問題】
以下は日本国憲法第25条の条文である。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び ( )の向上及び増進に努めなければならない。」
( )に入るのはどれか。
- 1.健康力
- 2.公衆衛生
- 3.国民衛生
- 4.公共の福祉
- 5.社会経済状況
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正答:2
【問題の考え方】
憲法第25条は、生存権を保障するとともに、国が社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上に努めることを定めた条文です。国家試験では条文の穴埋めが繰り返し出題されています。
【各選択肢の解説】
- 1.誤り(健康力)
憲法条文の表現ではありません。 - 2.正しい(公衆衛生)
日本国憲法第25条第2項に「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と明記されています。 - 3.誤り(国民衛生)
憲法条文の表現ではありません。公衆衛生と混同しないようにしましょう。 - 4.誤り(公共の福祉)
公共の福祉とは、すべての人が基本的人権を調和して行使できるようにするための原理(憲法第12条や第22条など)です。重要な概念ですが、第25条の空欄には入りません。 - 5.誤り(社会経済状況)
憲法条文の表現ではありません。
【重要】日本国憲法第25条の構成まとめ
国家試験では条文の穴埋め問題として出題されるため、主要な語句は押さえておきましょう。
| 項 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 第1項 | 生存権 | 健康で文化的な最低限度の生活 |
| 第2項 | 国の責務 | 社会福祉・社会保障・公衆衛生 |
間違えやすいところ
「公衆衛生」と「公共の福祉」は言葉の響きが似ていますが、憲法上の意味合いは全く異なります。
- 公衆衛生(第25条):行政や社会全体で国民の健康を守り、向上させる取り組み。
- 公共の福祉(第12条など):人権同士がぶつかり合うのを調整するためのルール。
さいの補足:生存権を支える3本柱
憲法第25条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するためには、個人の努力だけでなく、国によるサポートが不可欠です。
そのためには、以下の3本柱がセットになっていることを理解しておきましょう。
- 社会福祉(生活保護などの福祉サービス)
- 社会保障(医療保険や年金など)
- 公衆衛生(感染症対策や環境衛生など)
問91:環境基本法と環境基準
【問題】
環境基本法に基づいて環境基準が設定されているのはどれか。
- 1.悪 臭
- 2.振 動
- 3.酸性雨
- 4.地盤沈下
- 5.水質汚濁
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正答:5
【問題の考え方】
環境基本法では公害対策として「典型7公害」を定義していますが、そのすべてに「環境基準」が設定されているわけではありません。環境基準が設定されている公害と、法律による規制基準で管理される公害を区別できるかがポイントです。
【各選択肢の解説】
- 1.誤り(悪臭)
典型7公害の一つですが、環境基準は設定されていません。悪臭防止法に基づき、規制地域ごとに規制基準が定められています。 - 2.誤り(振動)
典型7公害の一つですが、環境基準は設定されていません。振動規制法によって規制されます。 - 3.誤り(酸性雨)
酸性雨そのものに環境基準はありません。ただし、原因物質である二酸化硫黄や二酸化窒素には、大気汚染に関する環境基準が設定されています。 - 4.誤り(地盤沈下)
典型7公害の一つですが、環境基準は設定されていません。 - 5.正しい(水質汚濁)
環境基本法第16条に基づき、人の健康の保護および生活環境の保全に関する環境基準が設定されています。
【重要】環境基準と典型7公害の整理
「公害の種類」と「環境基準の有無」を明確に分けて整理しておきましょう。環境基準があるのは「大・水・土・騒」の4つです。
| 区分 | 項目 | ポイント |
|---|---|---|
| 典型7公害 | 大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭 | 環境基本法で定められた代表的な公害 |
| 環境基準あり | 大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音 | 行政上維持されることが望ましい基準(行政目標) |
| 環境基準なし | 振動、地盤沈下、悪臭 | 地域ごとの事情を考慮して個別に規制 |
間違えやすいところ
国家試験では、水質汚濁の環境基準を「健康項目」と「生活環境項目」に分けて問われることがあります。
- 健康項目:人の健康を保護するための基準(カドミウム、鉛、ヒ素、総水銀など)
- 生活環境項目:生活環境を保全するための基準(BOD、COD、浮遊物質、大腸菌群数など)
さいの補足:なぜ「振動・地盤沈下・悪臭」には環境基準がないの?
振動・地盤沈下・悪臭は、地域の地形や土地利用、発生源の状況によって影響が大きく異なります。そのため全国共通の環境基準(行政目標)は設けられておらず、地域の実情に応じて各種法律や条例による規制が行われています。
問92:食中毒予防と加熱条件
【問題】
食中毒予防の原則である「中心温度75℃以上1分以上の加熱」が有効なのはどれか。
- 1.フグ毒
- 2.ボツリヌス菌
- 3.黄色ブドウ球菌
- 4.サルモネラ属菌
- 5.ツキヨタケ(毒キノコ)
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正答:4
【問題の考え方】
「中心温度75℃以上1分以上」という一般的な加熱条件は、多くの感染型食中毒菌には有効ですが、すべての食中毒を防げるわけではありません。「75℃・1分」が有効なものと、無効なものを区別できるかがポイントです。
【各選択肢の解説】
- 1.誤り(フグ毒)
フグの持つ自然毒(テトロドトキシン)は熱に非常に強く、通常の加熱調理では分解されません。 - 2.誤り(ボツリヌス菌)
ボツリヌス菌は耐熱性の芽胞を形成するため、75℃・1分では芽胞は死滅しません。また、毒素は加熱で失活しますが、通常の調理加熱では十分でない場合があります。 - 3.誤り(黄色ブドウ球菌)
菌自体は加熱で死滅しますが、食中毒の原因となる毒素(エンテロトキシン)は耐熱性が高く、一度作られると通常の加熱では分解されません。 - 4.正しい(サルモネラ属菌)
サルモネラ属菌をはじめとする多くの一般的な食中毒菌は熱に弱く、中心温度75℃以上で1分以上加熱することで死滅するとされています。 - 5.誤り(ツキヨタケ)
毒キノコに含まれる自然毒は熱に安定なものが多く、加熱調理をしても毒性は消えません。
【重要】通常の加熱が無効な食中毒の分類
「なぜ加熱してもダメなのか」を3つのパターンに分けて理解しておきましょう。
| 分類 | 代表例 | 加熱でダメな理由 |
|---|---|---|
| 耐熱性の毒素 | 黄色ブドウ球菌 | 菌は死滅しても、すでに作られた「毒素が残る」ため。 |
| 耐熱性の芽胞 | ボツリヌス菌、ウェルシュ菌 | 通常の加熱では死滅しない「芽胞が残る」ため。 |
| 自然毒 | フグ毒、キノコ毒、貝毒 | 「毒そのものが残る」(分解されない)ため。 |
間違えやすいところ
黄色ブドウ球菌については「菌は死ぬが毒素は残る」という点がよく問われます。また、ボツリヌス菌は「菌(芽胞)」と「毒素」で耐熱性が異なる点にも注意しましょう。
加熱すれば安全というわけではないため、調理前に手指の傷からの汚染を防ぐ(菌をつけない・増やさない)ことが大前提となります。
さいの補足:食中毒予防の三原則
食中毒予防には、以下の3つの原則があります。
- つけない(清潔・洗浄)
- 増やさない(迅速・冷却)
- やっつける(加熱・殺菌)
食品衛生では、この3原則を組み合わせて食中毒を予防します。
※加熱だけでは防げない食中毒もあるため、「つけない」「増やさない」も同じくらい重要です。
問93:国際的な宣言・憲章と理念
【問題】
プライマリヘルスケアの理念が採択されたのはどれか。
- 1.オタワ憲章
- 2.バンコク憲章
- 3.リスボン宣言
- 4.ヘルシンキ宣言
- 5.アルマ・アタ宣言
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正答:5
【問題の考え方】
国際的な宣言や憲章は、公衆衛生分野でよく出題されます。「どの宣言・憲章で、何が提唱されたか」を対応させて覚えているかがポイントです。
【各選択肢の解説】
- 1.誤り(オタワ憲章)
健康づくりを医療だけでなく、社会全体で支える「ヘルスプロモーション」の考え方を提唱しました。 - 2.誤り(バンコク憲章)
2005年に採択されました。オタワ憲章の発展形であり、グローバル化が進む世界におけるヘルスプロモーションの新たな課題と枠組みを示しています。 - 3.誤り(リスボン宣言)
1981年に世界医師会(WMA)が採択したもので、「患者の権利」に関する国際的な原則を定めています。 - 4.誤り(ヘルシンキ宣言)
1964年に世界医師会(WMA)が採択したもので、人間を対象とする「医学研究の倫理的原則」を定めています。 - 5.正しい(アルマ・アタ宣言)
1978年に「2000年までにすべての人に健康を」を目標に掲げ、「プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)」の理念を提唱しました。
【整理】代表的な宣言・憲章とキーワード
都市名とキーワードを1対1で結びつけておくのが確実です。
| 宣言・憲章名 | キーワード(中心テーマ) |
|---|---|
| アルマ・アタ宣言 | プライマリ・ヘルス・ケア |
| オタワ憲章 | ヘルスプロモーション |
| バンコク憲章 | グローバル化時代のヘルスプロモーション |
| リスボン宣言 | 患者の権利 |
| ヘルシンキ宣言 | 医学研究倫理 |
間違えやすいところ
「アルマ・アタ宣言(PHC)」と「オタワ憲章(ヘルスプロモーション)」は非常によく似た文脈で語られるため、国家試験でもひっかけとして混同させようとする問題が出ます。
アルマ・アタ宣言(1978年)でPHCが提唱され、その後、オタワ憲章(1986年)でヘルスプロモーションへと発展しました。このように歴史の流れで捉えると、逆に覚えてしまうミスを防げます。
さいの補足:プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)とは?
アルマ・アタ宣言で提唱されたPHCは、「誰もが、自分たちの地域で、負担できる費用で、必要な健康ケアを受けられるようにする」という考え方です。
高度で高価な医療技術に偏るのではなく、地域で利用しやすい保健医療サービスを充実させ、住民参加や多職種の協力によって健康づくりを進めることを目指しています。
PHCのキーワードは「住民参加」「適正技術」「他部門との協力」です。国家試験でも頻出なので押さえておきましょう。
問94:世界保健機関(WHO)と国際・関連機関
【問題】
世界保健機関〈WHO〉の活動はどれか。
- 1.二国間協力を行う。
- 2.識字率を向上させる。
- 3.難民の帰還支援を行う。
- 4.国際疾病分類〈ICD〉を作成する。
- 5.労働者の健康保護について勧告する。
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正答:4
【問題の考え方】
WHOをはじめとする国際機関・関連機関の役割を正しく対応づけられるかを問う問題です。略称(WHO、ILO、UNESCOなど)と代表的な活動をセットで整理しておきましょう。
【各選択肢の解説】
- 1.誤り(二国間協力)
日本と開発途上国などが1対1で行う二国間協力は、主に日本の独立行政法人である国際協力機構(JICA)が実施しています。 - 2.誤り(識字率を向上させる)
教育や文化、科学の発展を通じて世界の平和に貢献するのは、国連教育科学文化機関(UNESCO)の役割です。 - 3.誤り(難民の帰還支援)
難民の保護や帰還支援、生活支援を行うのは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの役割です。 - 4.正しい(国際疾病分類〈ICD〉を作成する)
WHOは国際疾病分類(ICD)を作成・改訂しています。 - 5.誤り(労働者の健康保護)
労働条件の改善や労働者の権利保護などを目的とするのは、国際労働機関(ILO)の役割です。
【整理】代表的な機関の役割まとめ
国家試験では略称から問われることが多いため、略称をベースに結びつけておきましょう。
| 略称 | 機関名 | 代表的な役割 |
|---|---|---|
| WHO | 世界保健機関 | ICDの作成、感染症対策など |
| ILO | 国際労働機関 | 労働者の健康保護 |
| UNESCO | 国連教育科学文化機関 | 教育・文化・識字率の向上 |
| UNHCR | 国連難民高等弁務官事務所 | 難民支援 |
| JICA | 国際協力機構 | 二国間協力(※日本の機関) |
間違えやすいところ
WHO(世界保健機関)と ILO(国際労働機関)は、どちらも「健康」に関わるため混同しやすいです。
- WHO:保健・医療全般を扱う
- ILO:労働者の健康保護を扱う
WHOは保健・医療全般を扱いますが、労働者の健康保護はILOの役割であることをしっかりと区別しておきましょう。
さいの補足:国際疾病分類(ICD)とは?
ICD(International Classification of Diseases)は、病気や死因を世界共通の分類方法でコード化した国際的な分類です。
ICDは疾病だけでなく死因統計にも用いられており、世界各国の健康統計を比較するための共通基準となっています。
問90:年齢階級別死因順位
【問題】
令和4(2022)年度における死亡数の年齢階級別死因順位をまとめた表(別冊No. 17)を別に示す。( ア )に該当するのはどれか。
- 1.自 殺
- 2.肺 炎
- 3.肝疾患
- 4.腎不全
- 5.インフルエンザ
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正答:1
【問題の考え方】
日本の公衆衛生において非常に重要な「年齢階級別の死因」を問う問題です。10代〜30代の若年・青年層において第1位を占める特徴的な死因は何かを判断します。
【各選択肢の解説】
- 1.正しい(自殺)
日本では10歳代から30歳代という広い若年・青年層において、自殺が死因の第1位を占めています。これは日本の社会・公衆衛生における重大な課題です。40〜44歳以降は悪性新生物などが上位になるため順位が下がっていきます。 - 2.誤り(肺炎)
肺炎は日本の死因全体の上位(主に5位前後)ですが、死亡者のほとんどは高齢者であり、若年層の死因の上位にはなりません。 - 3.誤り(肝疾患)
生活習慣やウイルス感染などと関連して中高年以降に死亡率が上昇します。 - 4.誤り(腎不全)
こちらも糖尿病などの生活習慣病と関連して高齢になるほど増加する傾向にあり、若年層の第1位とはなりません。 - 5.誤り(インフルエンザ)
流行の規模によりますが、死亡者の多くは乳幼児や高齢者、基礎疾患のある人です。
【整理】年齢別「死因第1位」の推移
国家試験では「どの年代で何が1位になるか」が頻繁に問われます。年代ごとの第1位の移り変わりを整理しておきましょう。
| 年齢層 | 死因第1位 | 特徴 |
|---|---|---|
| 10代〜30代 | 自 殺 | 若年層の死因トップ |
| 40代〜80代 | 悪性新生物(腫瘍) | 中年期から高齢期にかけて不動のトップ |
| 90歳以上 | 老 衰 | 超高齢者で急増しトップになる |
間違えやすいところ
「全年齢での死因順位」と「年代別の死因順位」を混同しないように注意しましょう。
- 全年齢の第1位:悪性新生物(日本人の死因トップ)
- 10〜30代の第1位:自殺
さいの補足:なぜ若年層の死因1位が自殺になるのか?
若年層で自殺が1位になる背景には、「若い人は病気で亡くなることが非常に少ない」という相対的な理由があります。病死が少ないため、結果的に事故や自殺が上位に上がってくるのです。
自殺予防は我が国の重要な公衆衛生課題の一つとなっています。
問91:症例対照研究の特徴
【問題】
症例対照研究で正しいのはどれか。
- 1.罹患率を推計できる。
- 2.介入研究に分類される。
- 3.相対危険度を直接計算できる。
- 4.まれな疾患の検討に適している。
- 5.コホート研究よりも研究期間が長くなる。
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正答:4
【問題の考え方】
疫学研究のデザインに関する問題です。特に「症例対照研究」と「コホート研究」は国家試験で頻繁に比較されるため、時間の向き・出発点・計算できる指標・適した疾患・研究期間や費用などを比較して理解することが重要です。
【各選択肢の解説】
- 1.誤り(罹患率を推計できる)
症例対照研究では患者数と対照数を研究者が設定するため、母集団における罹患率は求められません。罹患率を算出できるのはコホート研究です。 - 2.誤り(介入研究に分類される)
症例対照研究は、研究者が薬の投与などの介入を行わず、ありのままの事実を調べる「観察研究」に分類されます。 - 3.誤り(相対危険度を直接計算できる)
相対危険度(RR)は、暴露群・非暴露群の罹患率を比較して求めます。症例対照研究では罹患率を求められないため、RRは直接算出できず、オッズ比(OR)を用います。 - 4.正しい(まれな疾患の検討に適している)
すでに疾患にかかっている人(症例)を集めてから過去を調べるため、10万人に1人といったまれな疾患の原因を探るのに非常に効率的です。 - 5.誤り(コホート研究よりも研究期間が長くなる)
過去の記録や記憶を遡って調査するため、比較的短期間・低コストで実施できます。病気になるまで数十年追跡することもあるコホート研究よりも期間は短くなります。
【整理】症例対照研究とコホート研究の比較
どちらがどのような特徴を持っているか、表でスッキリ整理しておきましょう。
| 比較項目 | 症例対照研究 | コホート研究 |
|---|---|---|
| 時間の流れ | 後ろ向き(過去を調査) | 前向き(未来を追跡) |
| 出発点 | 結果(疾患あり) | 原因(暴露あり) |
| 適する疾患・要因 | まれな疾患 | まれな暴露 |
| 計算できる指標 | オッズ比 | 罹患率、相対危険度など |
| 期間と費用 | 短い・安い | 長い・高い |
間違えやすいところ
「計算できる指標」は頻出のひっかけポイントです。
- 症例対照研究:オッズ比(OR)
- コホート研究:罹患率、相対危険度(RR)、寄与危険度
症例対照研究では罹患率が出せないため、相対危険度も出せない(代わりにオッズ比を使う)と理由をつなげておくと忘れません。
※ただし、疾患がまれな場合は「オッズ比は相対危険度(RR)に近似できる」という点も国家試験で問われることがあるので覚えておきましょう。
さいの補足:前向きと後ろ向きのイメージ
疫学研究における「前向き」「後ろ向き」という言葉は、時間の流れを表しています。
- コホート研究(前向き):原因から未来を見る
- 症例対照研究(後ろ向き):結果から過去を振り返る
このようにスタート地点をイメージすると、その他の特徴(かかる時間や適した疾患など)も自然と導き出せます。
問92:公害病と原因物質
【問題】
メチル水銀〈有機水銀〉が原因となったのはどれか。
- 1.水俣病
- 2.カネミ油症
- 3.アザラシ肢症
- 4.イタイイタイ病
- 5.四日市ぜんそく
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正答:1
【問題の考え方】
日本の公衆衛生上、歴史的に重要な健康被害(公害病・食品公害・薬害)とその原因物質を結びつける問題です。特に「四大公害病」の原因物質は国家試験で頻出のため、確実に押さえておく必要があります。
【各選択肢の解説】
- 1.正しい(水俣病)
化学工場の排水に含まれたメチル水銀が、水域の魚介類に蓄積(生物濃縮)し、それを日常的に食べた住民に発生した中毒性の神経疾患です。 - 2.誤り(カネミ油症)
製造過程でPCB(およびPCDFなどが混入)を含む食用油を摂取したことによる食品公害(食中毒事件)です。皮膚症状などを引き起こしました。 - 3.誤り(アザラシ肢症)
睡眠薬として販売されたサリドマイドを妊娠初期の女性が服用したことで、新生児に四肢の奇形が多発した薬害事件です。公害病ではありません。 - 4.誤り(イタイイタイ病)
鉱山から排出されたカドミウムが河川や農地を汚染し、その土壌で育った米などを食べた住民に発生した慢性中毒です。骨軟化症を引き起こします。 - 5.誤り(四日市ぜんそく)
石油化学コンビナートから排出された二酸化硫黄(SO₂)を主体とする大気汚染物質が原因で、地域住民に気管支ぜんそくなどが多発しました。
【整理】主な公害病・薬害と原因物質
疾患名と原因物質をセットで整理しておきましょう。「四大公害病」は特に重要です。
| 疾患・事件名 | 原因物質 | 特徴・分類 |
|---|---|---|
| 水俣病 | メチル水銀 | 四大公害病(神経障害) |
| 新潟水俣病 | メチル水銀 | 四大公害病(神経障害) |
| イタイイタイ病 | カドミウム | 四大公害病(骨軟化症) |
| 四日市ぜんそく | SO₂など | 四大公害病(大気汚染) |
| カネミ油症 | PCB(PCDFなど混入) | 食品公害 |
| アザラシ肢症 | サリドマイド | 薬害(公害ではない) |
【暗記】覚えておきたいフレーズ
水銀で水俣、カドミでイタイ、SO₂で四日市、PCBでカネミ、サリドでアザラシ
間違えやすいところ
公害病と原因物質の組み合わせは非常によく狙われます。
- 水俣病:メチル水銀
- イタイイタイ病:カドミウム
特にこの2つの重金属中毒は混同しやすいので、「イタイイタイ=カドミウム」と確実に結びつけておきましょう。
さいの補足:生物濃縮の恐ろしさ
水俣病の原因となったメチル水銀は、工場排水に含まれていた時点では比較的低濃度でした。
しかし、プランクトンがそれを取り込み、小魚がプランクトンを食べ、さらに大きな魚が小魚を食べるという食物連鎖を繰り返すうちに、高次捕食者になるほど体内の水銀濃度が高くなっていきました(生物濃縮)。人間がその濃縮された魚介類を日常的に摂取したことで、甚大な健康被害が発生してしまったのです。
問93:公的医療保険制度
【問題】
被用者保険に含まれないのはどれか。
- 1.共済組合
- 2.船員保険
- 3.国民健康保険
- 4.組合管掌健康保険
- 5.全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)
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正答:3
【問題の考え方】
日本の公的医療保険制度は、「会社などに勤務する人が加入する被用者保険」と、「それ以外の人が加入する国民健康保険」に大きく分けられます。この分類を理解しているかを問う問題です。
【各選択肢の解説】
- 1.誤り(共済組合)
国家公務員、地方公務員、私立学校の教職員などが加入します。勤務先を通じて加入する医療保険であるため、被用者保険に分類されます。 - 2.誤り(船員保険)
船員を対象とした職域保険であり、被用者保険の一つです。 - 3.正しい(国民健康保険)
主に自営業者、農林漁業者、退職者など、会社に雇用されていない人が加入する「地域保険」です。したがって被用者保険には含まれません。 - 4.誤り(組合管掌健康保険)
主に大企業の従業員とその家族が加入する、健康保険組合が運営する被用者保険です。 - 5.誤り(全国健康保険協会管掌健康保険)
通称「協会けんぽ」と呼ばれ、主に健康保険組合を設けていない中小企業などの従業員が加入します。
【整理】公的医療保険制度の分類
「被用者(雇われている人)」か「それ以外」かで区別すると把握しやすくなります。
| 加入者(対象者) | 保険の種類 | 大きく分けると |
|---|---|---|
| 中小企業の従業員 | 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ) | 被用者保険 (職域保険) |
| 大企業の従業員 | 組合管掌健康保険(組合健保) | |
| 公務員・私学教職員 | 共済組合 | |
| 船員 | 船員保険 | |
| 自営業者、退職者、無職など | 市町村国保、国民健康保険組合など | 国民健康保険 (地域保険) |
【重要】覚えておきたいポイント
- 会社員 → 被用者保険
- 自営業 → 国民健康保険
- 75歳以上 → 後期高齢者医療制度
間違えやすいところ
「国民健康保険」と「国民皆保険」は意味が異なります。
- 国民健康保険:会社員(被用者)ではない人が加入する保険の名前。
- 国民皆保険:国民全員が何らかの公的医療保険に加入するという「制度」のこと。
※また、75歳以上(一定の障害がある場合は65歳以上)になると、国民健康保険などから抜けて「後期高齢者医療制度」に加入することも国家試験でよく問われます。
さいの補足:国民皆保険制度とは?
日本は1961年に国民皆保険を達成し、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入する体制が整いました。
この制度により、必要な医療を比較的少ない自己負担で受けられることが、日本の医療制度の大きな特徴です。
問94:生活保護の扶助
【問題】
生活保護で原則として現物給付されるのはどれか。
- 1.医療扶助
- 2.教育扶助
- 3.住宅扶助
- 4.出産扶助
- 5.葬祭扶助
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正答:1
【問題の考え方】
生活保護制度における8種類の扶助と、その給付方法(現金でもらうか、サービスそのものを受けるか)を整理できているかがポイントです。生活保護には8種類の扶助があり、多くは金銭給付ですが、医療扶助と介護扶助は原則として現物給付で行われます。
【各選択肢の解説】
- 1.正しい(医療扶助)
診察、治療、薬剤などは、お金ではなく「医療サービスそのもの」が提供されるため、現物給付となります。 - 2.誤り(教育扶助)
義務教育に必要な費用(学用品代や給食費など)は、現金で支給される「金銭給付」です。 - 3.誤り(住宅扶助)
家賃や地代などの費用は、現金で支給される「金銭給付」です。 - 4.誤り(出産扶助)
分娩や入院などに必要な費用は、現金で支給される「金銭給付」です。 - 5.誤り(葬祭扶助)
火葬や埋葬にかかる費用は、現金で支給される「金銭給付」です。
【整理】生活保護の8種類の扶助
「現物給付」となる2つをしっかり区別しておきましょう。
| 給付方法 | 扶助の種類 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 現物給付 | 医療扶助 | 指定医療機関で診療や治療を受ける |
| 介護扶助 | 指定介護機関でサービスを受ける | |
| 金銭給付 | 生活扶助 | 衣食など日常生活の費用 |
| 教育扶助 | 義務教育に伴う必要な費用 | |
| 住宅扶助 | 家賃、地代など | |
| 出産扶助 | 分娩や入院などに必要な費用 | |
| 生業扶助 | 就労に必要な技能の修得費など | |
| 葬祭扶助 | 死体の運搬、火葬費用など |
【暗記】8扶助の一覧
国家試験では8種類すべてを問われることもあります。セットで覚えておきましょう。
- 生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭
間違えやすいところ
教育扶助の対象は小中学校などの義務教育までです。
高等学校等への就学費用は、生業扶助から支給されます。細かな点ですが、国家試験でひっかけとして出題されることがあるため注意しましょう。
さいの補足:なぜ医療と介護は現物給付なのか?
医療扶助や介護扶助が現物給付なのは、必要な医療・介護サービスを確実に受けられるようにするためです。
また、指定医療機関・指定介護機関を利用することで、適切なサービスの提供や費用の管理が行われています。
公衆衛生学 午前午後(問90〜94)の解説は以上です
お疲れ様でした。
今回の公衆衛生学では、憲法25条、環境基準、疫学研究、公害病、公的医療保険、生活保護など、幅広いテーマが出てきました。
このあたりは似たような言葉が多く、最初はかなり混乱しやすい分野です。
ただ、すべてを丸暗記する必要はありません。
例えば、
「被用者保険と国民健康保険」
「前向き研究と後ろ向き研究」
「環境基準と排出基準」
のように、それぞれの違いを決める「軸」を押さえておけば、知らない選択肢が出てきても判断しやすくなります。
公衆衛生学は、法律や制度の名前を覚えるだけだと忘れやすいので、**「これは誰を対象にした制度なのか」「何を目的にしたものなのか」**までセットで覚えておくのがおすすめです。
今回間違えた問題は、答えだけを覚え直すのではなく、なぜ他の選択肢が違うのかまで確認しておきましょう。
公衆衛生学は一度整理すると、似た問題が出たときにかなり解きやすくなります。お疲れ様でした。
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