過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
国家試験の過去問解説のまとめページです
第70回臨床血液学PM59~67
59 骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本(別冊No. 11)を別に示す。診断に有用な表面抗原はどれか。

- CD4
- CD13
- CD25
- CD34
- CD38
解説:写真の細胞は丸く偏在した核、好塩基性の細胞質に加え、核周明庭であり「形質細胞」が鑑別にあがる。
この問題は、ここまでがスタートラインであり、「形質細胞が出現する病態」「その疾患に特異的なCD抗原は何か」まで把握して初めて正答できる、やや発展的な問題です。
- 形質細胞が抹消血液像にて観察できる病態といえば、「多発性骨髄腫」が有名
- 多発性骨髄腫ではCD38が高発現するので、検査意義はとても高い

上表から、
- CD4はATL
- CD13はAML
- CD25はATL
- CD34は造血幹細胞マーカー
CD抗原に関する問題も頻出なので、復習しておきましょう。
答え:5
60 疾患とその原因の組合せで正しいのはどれか。
- 赤芽球癆 (せきがきゅうろう) ヒトパルボウイルスB19感染
- 再生不良性貧血 エリスロポエチン欠乏
- 遺伝性球状赤血球症 αグロビン遺伝子異常
- 自己免疫性溶血性貧血 補体制御因子欠損
- ビタミンB12欠乏性貧血 直腸切除
解説:選択肢の疾患が何に起因するのかを把握しておく必要があります。
- 赤芽球癆
⇒後天的な要因として「ヒトパルボウイルスB19感染と薬剤」がある - 再生不良性貧血
⇒原因はTリンパ球の異常による、自身の造血幹細胞を攻撃によるもの
エリスロポエチンが著増するが、原因ではない - 遺伝性球状赤血球症
⇒赤血球膜の骨格を成す「スペクトリンの欠損」が原因で、赤血球膜表面積が内容物に対して減少し球状をとり、赤血球脆弱性が増す溶血性疾患 - サラセミア
⇒αグロビン遺伝子異常 - 自己免疫性溶血性貧血
⇒自身の赤血球に対する自己抗体が原因 - 発作性夜間ヘモグロビン尿症
⇒補体制御因子欠損 - ビタミンB12欠乏性貧血
⇒胃切除、回腸切除によるビタミンB12吸収障害が原因
※赤芽球癆は、骨髄中の赤芽球が著減し、正球性正色素性貧血を呈する疾患。
ヒトパルボウイルスB19は赤血球P抗原を受容体とし、赤芽球系前駆細胞を直接障害する。
答え:1
61 ヘモグロビン酸素解離曲線(別冊No. 12)を別に示す。矢印の方向に曲線が移動したとき患者の状態で正しいのはどれか。

- 体温上昇
- 激しい運動
- PaCO2上昇
- 代謝性アシドーシス
- 2,3-ジフォスフォグリセリン酸〈DPG〉濃度低下
解説:ヘモグロビン酸素解離曲線とボア効果についてまとめました。
★ヘモグロビン酸素解離曲線とボア効果
- 「PaCO2上昇、pH低下、体温上昇、激しい運動、2,3-DPG上昇」などによりヘモグロビン酸素解離曲線は右にシフトする。
右方移動すると、同じ酸素分圧でもヘモグロビンの酸素親和性は低下し、末梢組織への酸素供給が容易になる。
これを「ボア(Bohr)効果」と呼ぶ。
問題の図では、ヘモグロビン酸素解離曲線は左方移動している。
選択肢を見てみると「2,3-ジフォスフォグリセリン酸〈DPG〉濃度低下」が左方移動に該当する。
答え:5
62 凝固反応でリン脂質を必要とするのはどれか。2つ選べ。
- 第Ⅹ因子活性化
- 第Ⅺ因子活性化
- フィブリン安定化
- プロトロンビン活性化
- プレカリクレイン活性化
解説:凝固カスケードの復習問題です。

上表を見ると、第Ⅹ因子活性化、プロトロンビン活性化はともにリン脂質上で、第Ⅷ因子、第Ⅴ因子、Caイオンが複合体を形成することで進行している。
- 第Ⅹ因子活性化⇒活性化第Ⅶ因子(Ⅶa)、組織因子、活性化第Ⅸ因子(Ⅸa)、第Ⅷ因子
- プロトロンビン活性化に関与するのは、活性化第Ⅹ因子(Ⅹa)と第Ⅴ因子
凝固カスケードは複雑で、名前も覚えにくいので、問題をこなして要点(問題にされやすい箇所)を覚えるのがよさそうです。
答え:1と4
63 APTTの延長を認めないのはどれか。
- 血友病B
- 血小板無力症
- 第Ⅺ因子欠損症
- ビタミンK欠乏症
- 抗リン脂質抗体症候群
解説:「APTT延長を認めないもの」この問題も頻出な気がします。答えを暗記しておいた方が楽かもしれません。
- 血友病はAPTTのみが延長し、凝固因子の第Ⅷ因子活性が40%未満であれば血友病A、第Ⅸ因子活性が40%未満であれば血友病Bと診断される
- ビタミンKは(Ⅱ、Ⅸ、Ⅶ、Ⅹ:にくなっとう)の凝固因子に関係する(内因系含む)
- 血小板無力症では血小板凝集能低下が見られるが、凝固因子に影響はないとされている。
- 内因系凝固因子(Ⅻ、Ⅺ、Ⅸ)活性がみられる病態、von-Willebrand病ではAPTTが延長する。
- 抗リン脂質抗体症候群(APS)では抗リン脂質抗体(aPL)という自己抗体の存在下では、血漿検体ではしばしばAPTTが延長し、複数の内因系凝固因子活性の低下が見られるが、生体内では凝固活性化が起こり、血栓性素因となる
※抗リン脂質抗体(aPL)は「抗カルジオリピン抗体(aCL)、ループス抗凝固因子(LAC)」など
深堀するとキリがないので、教本で確認したほうが間違いありません。
答え:2
64 緩衝食塩溶液の希釈系列に検体A(ヘパリン血)を滴下後37℃で2時間静置した。その溶血度(%)と食塩濃度(%)の関係(別冊No. 13)を別に示す。考えられるのはどれか。

- 鉄欠乏性貧血
- 巨赤芽球性貧血
- 再生不良性貧血
- 遺伝性球状赤血球症
- 自己免疫性溶血性貧血
解説:まず、何のグラフで曲線は何なのかを知っておかなければいけません。
これは「赤血球浸透圧抵抗試験」のグラフです。
曲線は、低張食塩水に対する浸透圧抵抗をみるもので、健常検体と比べ低張食塩水に対する抵抗が減弱している場合は右側に曲線が推移し、増強している場合は左側に曲線が推移します。
★赤血球浸透圧抵抗試験
一定の条件下で赤血球が壊れて溶血を起こす程度を調べることにより、溶血亢進の有無を調べるための検査のこと。
- 赤血球浸透圧抵抗試験(パルパート法、サンフォード法)は、
「低張食塩水中での溶血の起こりやすさ」を調べる。 - 赤血球の表面積/容積比によって規定される
⇒球状赤血球のように球状のために、比が小さい時は抵抗性が低下する
(曲線は右に移動)
⇒鉄欠乏性貧血のように赤血球が薄い時は抵抗性が増強する
(曲線は左に移動) - (補足)赤血球膜補体感受性試験(シュガーウォーターテスト、ハムテスト、クロスビーテスト)は、
「補体の作用による溶血の起こりやすさ」を調べる。
選択肢をみていきます。
- 浸透圧抵抗の亢進
⇒鉄欠乏性貧血、サラセミア - 浸透圧抵抗が低下
⇒遺伝性球状赤血球症、自己免疫性溶血性貧血
巨赤芽球性貧血や、再生不良性貧血は特に影響はないです。
(表面積/容積比に変化がないため。)
答え:1
65 異常所見と疾患の組合せで正しいのはどれか。
- Auer小体 急性リンパ芽球性白血病
- Döhle小体 伝染性単核球症
- Russell小体 多発性骨髄腫
- 核の過分節 重症感染症
- 偽Pelger核異常 巨赤芽球性貧血
解説:血液像の所見と、観察される疾患の組み合わせです。
選択肢はどれも有名なものばかりだと思います。選択肢のものを簡単にまとめます。
- Auer(アウエル)小体(ファゴット細胞)
⇒急性骨髄性白血病
⇒アウエル小体とは赤紫色の針状または棒状の細胞質封入体で、アズール顆粒に由来する - Döhle(デーレ)小体
⇒重症感染症で認める
⇒成熟した好中球の細胞質に見られる封入体で、好塩基性に染まる不明瞭な斑点 - Russell(ラッセル)小体
⇒多発性骨髄腫、悪性B細胞リンパ腫
⇒形質細胞の粗面小胞体の内部で免疫グロブリンが結晶様となったもの - 核の過分節
⇒巨赤芽球性貧血、遺伝性核過分葉症
⇒5分葉異常 - 偽Pelger核異常(核の低分葉)
⇒骨髄異型性症候群(MDS)、白血病、抗がん剤投与
⇒桿状から2分葉までの好中球で核が円形、ダンベル様、メガネ様
答え:3
66 BCR-ABL1融合遺伝子が検出されるのはどれか。2つ選べ。
- 原発性骨髄線維症
- 真性赤血球増加症
- 本態性血小板血症
- 慢性骨髄性白血病
- 急性リンパ性白血病
解説:頻出問題です。本当に毎年この表を使っている気がします笑
疾患、染色体異常、遺伝子の組み合わせで、問い方は若干変わってきますが、基本的には下表の内容でほぼ網羅できていると思います。今年もこの表で対応可能です。

BCR-ABL1ときたら「フィラデルフィア染色体(9番と22番の染色体が何らかの原因でくっついてしまったもので、CML(90%ほど)、ALL(20%ほど)の原因となる染色体」が見られることを覚えておきましょう。
答え:4と5
67 3種類の濃度のADPを用いた血小板凝集能検査(透過光法)の結果(別冊No. 14)を別に示す。誤っているのはどれか。

- Aでは、血小板凝集の解離が認められる。
- Aでは、プロスタサイクリンが放出されている。
- Bでは、トロンボキサンA2が放出されている。
- Bでは、二次凝集が認められる。
- Cでは、血小板同士がフィブリノゲンを介して凝集している。
解説:血小板凝集能検査とは何かを知っておく必要があります。
★血小板凝集能検査
- 「透過度法」は複数存在する血小板凝集能検査の中で標準法とされている
- 基準値は特になく、高濃度の血小板刺激物質(ADP、コラーゲン、リストセチン)を用いても凝集を認めない場合を異常とする
⇒血小板無力症など
★測定原理
クエン酸ナトリウムで抗凝固した血液から、遠心分離により
多血小板血漿(platelet-rich plasma: PRP)と
乏血小板血漿(platelet-poor plasma: PPP)を作成する.
「PPPを測定した時の光透過率を100%」、
「PRPを測定したときの光透過率を0%」に設定する
37℃で撹拌条件下に血小板活性化物質(ADP、コラーゲン、リストセチン)をPRPに添加すると、血小板同士が凝集塊を形成し、光透過度が亢進する
この変化を経時的に記録することで凝集曲線が得られ、血小板凝集能を評価する
図を見てみると、A~Cの曲線では以下のような現象が起きています。
ADPの濃度が高いほど、強い凝集反応を示しています。
- Aでは一度できた血小板凝集が解離している
(凝集率が少し上がり、その後低下している) - Bでは、変曲点を経て二次凝集が起きている
(一度凝集率が低下したが、増加している) - Cでは強い血小板凝集が惹起され、透過光度も高い
- 血小板活性化と共に産生されるトロンボキサンA2は、その活性化を増幅する
⇒透過率は上昇する - 血管内皮細胞で産生されるプロスタサイクリンは血小板活性化を抑制する
⇒透過率は低下する
答え:2
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