過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
国家試験の過去問解説のまとめページです
第70回臨床微生物学PM68~78
68 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌〈MRSA〉で誤っているのはどれか。
- mecA遺伝子を保有する。
- 院内感染型と市中感染型がある。
- 治療にはバンコマイシンが用いられる。
- 判定にはセフォキシチンが用いられる。
- 基質拡張型β-ラクタマーゼ〈ESBL〉を産生する。
解説:MRSAについて深ぼっていきましょう。
- mecA遺伝子を保有する。
⇒メックA遺伝子を持っているため、ペニシリン結合蛋白のPBP2’を産生するのでβ-ラクタム剤を無効化する - 院内感染型と市中感染型がある。
⇒院内感染型の方が多剤耐性になることが多い、市中感染型の方が、薬剤にやや感受性があることがある。 - 治療にはバンコマイシンが用いられる。
⇒バンコマイシンが第一選択に使われる。次いでテイコプラニンやリネゾリドなどを用いる。 - 判定にはセフォキシチンが用いられる。
⇒ディスク拡散法、微量液体希釈法でセフォキシチンとオキサシリンを用いる。
他にも、PBP2’検出(ラテックス凝集法)や、mecA検出(PCR)もある。 - 基質拡張型β-ラクタマーゼ〈ESBL〉を産生する。
⇒E. coliやK.pneumoniaeなどの腸内細菌目細菌(グラム陰性桿菌)で見られる。
答え:5
69 皮膚病変部より分離した真菌のスライド培養のラクトフェノールコットンブルー染色標本(別冊No. 15)を別に示す。考えられるのはどれか。
- Aspergillus属
- Exophiala属
- Microsporum属
- Mucor属
- Trichophyton属
解説:
写真を見ると先端は紡錘形の大分生子が豊富に観察できる。菌糸の側壁で単純性に形成されていることからMicrosporum属菌が鑑別となる。
※紡錘:糸をつむぎ巻き取る
- Aspergillus属菌、Exophiala属菌、Mucor属菌は大分生子を形成しないので写真とは異なる。
- Trichophyton属菌は腸詰め様(T. rubrum)あるいは棍棒状(T. tonsurans)の大分生子が観察できるので写真とは異なる。
答え:3
70 Acinetobacter属で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 運動性を有する。
- ブドウ糖を発酵する。
- 偏性好気性菌である。
- グラム陽性桿菌である。
- チトクロムオキシダーゼテスト陰性を示す。
解説:アシネトバクター属について選択肢を含めてまとめます。
★アシネトバクター属
- グラム陰性球桿菌(短桿菌)
- 偏性好気性(発育に酸素が必要)
- 鞭毛をもたない=運動性(-)
- ブドウ糖非発酵
- チトクロームオキシダーゼテスト陰性
- カタラーゼテスト陽性
- 硝酸塩還元テスト陰性
- (補足)カルバペネム系抗菌薬、アミカシン、ジプロフロキサシンの3薬剤に体制を獲得した「薬剤耐性アシネトバクター感染症」は5類感染症に指定されている
運動性が(-)なものは「アシネトバクター、赤痢菌、肺炎桿菌」などは頻出であるのでしっかり覚えておきましょう。
答え:3と5
71 単毛菌はどれか。2つ選べ。
- Burkholderia cepacia
- Campylobacter jejuni
- Klebsiella pneumoniae
- Pseudomonas aeruginosa
- Vibrio cholerae
解説:鞭毛の問題です。運動性にも関与してきますし、細菌によって特徴でもあるのでこちらも把握しておく必要があります。
まずは選択肢を見ていきます。
- Burkholderia cepacia(バークホルデリア・セパシア)
⇒叢毛(極多毛) - Campylobacter jejuni(キャンピロバクター・ジェジュニ)
⇒両極毛 - Klebsiella pneumoniae(クレブシエラ・ニューモニエ)
⇒(鞭毛は無い) - Pseudomonas aeruginosa(シュードモナス・エルギノーザ)
⇒(短毛) - Vibrio cholerae(ビブリオ・コレラ)
⇒(短毛)
★鞭毛の種類(よく出る細菌)
- 単毛性(極毛性)⇒ P.aeruginosa、V. choleraeなど
- 極多毛菌(叢毛菌)⇒ B. cepaciaやS.maltophilia
- 両毛菌または極毛菌 ⇒ C. jejuni
- 周毛菌 ⇒ Proteus属菌、多くの腸内細菌目細菌やBacillus cereusなど
- 無鞭毛 ⇒ K. pneumoniae、Acinetobacter属、Shigella属菌
答え:4と5
72 病原菌と選択分離培地の組合せで正しいのはどれか。
- Mycoplasma pneumoniae PPLO寒天培地
- Neisseria gonorrhoeae SS寒天培地
- Pseudmonas aeruginosa WYOα寒天培地
- Shigella sonnei NAC寒天培地
- Vibrio parahaemolyticus CIN寒天培地
解説:選択肢の選択分離培地と目的菌を正しく分けます。
- PPLO寒天培地
⇒Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ) - SS寒天培地
⇒Salmonella(サルモネラ)やShigella(赤痢菌) - NAC寒天培地
⇒Pseudmonas aeruginosa(緑膿菌) - WYOα寒天培地
⇒Legionella属(レジオネラ) - CIN寒天培地
⇒Yersinia属(エルシニア) - Thayer-Martin寒天培地(サイアーマーチン)
⇒Neisseria gonorrhoeae(ナイセリア・ゴノレエ:淋菌) - TCBS寒天培地⇒
Vibrio parahaemolyticus(ビブリオ・パラへモリティカス:腸炎ビブリオ)
この問題だけでこれだけの分離培地と目的菌がわかります。
答え:1
73 毒素型食中毒の病原体で正しいのはどれか。
- Campylobacter jejuni
- Listeria monocytogenes
- Shigella dysenteriae
- Staphylococcus aureus
- Vibrio parahaemolyticus
解説:細菌性食中毒は毒素型と感染型に分けることができます。
★毒素型食中毒
⇒食物中で増殖した細菌が産生した毒素を摂取し、短時間で発症する。
- Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
- Clostridium botulinum(ボツリヌス菌)
- Bacillus cereus(セレウス菌)
などが原因菌で、毒素を出して引き起こされる。
★感染型食中毒
⇒細菌が混入した食物を摂取後、腸管内で細菌が増殖して発症するため、12~24時間と時間がかかる。
- Campylobacter jejuni(カンピロバクター・ジェジュニ)
- Listeria monocytogenes(リステリア・モノサイトゲネス)
- Shigella dysenteriae(赤痢菌)
- Vibrio parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)
- Salmonella属(サルモネラ属)
- Yersinia属(エルシニア属)
代表的な菌をまとめていますので、参考にしてください。
答え:4
74 Serratia marcescensが陰性を示すのはどれか。
- VP反応
- IPA反応
- DNase試験
- 運動性テスト
- リジン脱炭酸試験
解説:セラチア・マルセッセンスの生化学性状についてまとめます。
★Serratia marcescens(セラチア・マルセッセンス)の生化学性状
- VP反応(+)
- IPA反応(-)
- DNase試験(+)
- 運動性テスト(+)
- リジン脱炭酸試験(+)
- シモンズクエン酸培地に発育(+)
※S. marcescensは日和見感染症の原因菌で、尿路感染症、呼吸器感染症、血管カテーテル感染症などを引き起こす。
答え:2
75 DNAウイルスはどれか。2つ選べ。
- B型肝炎ウイルス
- ムンプスウイルス
- サイトメガロウイルス
- ヒト免疫不全ウイルス
- インフルエンザウイルス
解説:ウイルスの分類(DNAとRNA)についての問題。DNAもしくはRNAのどちらか一方の核酸をもっています。
典型的なウイルスを分類した表を下に示します。
★DNAウイルス
⇒二本鎖DNAを有し、カプシドで覆っている
- 単純ヘルペスウイルス
- 水痘・帯状疱疹ウイルス
- パルボウイルスB19
- アデノウイルス
- EBウイルス
- 天然痘ウイルス
- B型肝炎ウイルス
- ヒトパピローマウイルス
★RNAウイルス
一本鎖のRNAゲノムを有し、エンベローブで覆っている
- ムンプスウイルス
- ヒト免疫不全ウイルス
- インフルエンザウイルス
- コロナウイルス
- ロタウイルス
- ノロウイルス
- RSウイルス
- C型肝炎ウイルス
答え:1と3
76 カタラーゼテストで使用するのはどれか。
- 過酸化水素水
- 水酸化カリウム
- α-ナフトール・アルコール
- p-ジメチルアミノベンツアルデヒド
- テトラメチルパラフェニレンジアミン塩酸塩
解説:カタラーゼテストの説明と、選択肢にある物質の用途を調べてみました。
★カタラーゼテストとは
カタラーゼ試験は基質として過酸化水素を用いる。カタラーゼが作用して発生する酸素ガスを肉眼的に観察する。
(手順)
①寒天平板に発育した新鮮なコロニーを用いる
②独立コロニーの中央部を釣菌してスライドグラスに塗りつける
③3%過酸化水素水1滴を塗抹部分に滴下して直ちに発泡を確認する
その他選択肢の用途は以下の通り。
- 水酸化カリウム
⇒KOH法(皮膚糸状菌の鏡検) - α-ナフトール・アルコール
⇒VP半流動培地の反応試薬 - p-ジメチルアミノベンツアルデヒド
⇒SIM培地、LIM培地のインドールテスト試薬 - テトラメチルパラフェニレンジアミン塩酸塩
⇒オキシダーゼテスト
答え:1
77 培養に用いる検体で適切なのはどれか。
- 室温保存された髄液
- 唾液成分のみの喀痰
- 尿バックから採取された尿
- ホルマリン処理された組織
- 冷蔵保存された血液培養ボトル
解説:培養検体の「適切な」取扱いについての出題ですが、保存や、検体の質などを聞いています。「培養する意味」を考えながら見ていくと、消去法でも解けそうです。
保存については基本的には「冷蔵」が良いとされています。
しかし、選択肢には「室温保存」のものも含まれています。
★室温保存
- 髄液(髄膜炎の起炎菌のひとつ、Neisseria meningitidisは低温に弱い)
- 血液(血液培養の容器にはあらかじめ液体培地が容れてあるので、細菌が増殖できる環境にしてあげるため)
★冷蔵保存
- 尿
- 喀痰
- 膿など
★喀痰の性状
その他選択肢を見ていきましょう。
- 唾液成分のみの喀痰
⇒肉眼的初見のMiller&Jones分類で唾液成分が少ない検体を用意できるようにする。顕微鏡を用いたGeckler分類もある。 - 尿バックから採取された尿
⇒時間経過により増殖した菌や、最近のコンタミリスクもあるため、培養には適さない。 - ホルマリン処理された組織
⇒病理組織の保存に使用するもので、微生物は死滅してしまうため適さない。
答え:1
78 高水準消毒薬はどれか。2つ選べ。
- 過酢酸
- ポビドンヨード
- クロルヘキシジン
- グルタルアルデヒド
- 次亜塩素酸ナトリウム
解説:消毒薬の分類を以下に示します。
★消毒薬の分類
- 高水準(ヒトへの毒性あり)
⇒過酢酸、グルタルアルデヒド、オルトフタルアルデヒド - 中水準
⇒ポビドンヨード、次亜塩素酸ナトリウム、エタノール - 低水準
⇒クロルヘキシジングルコン酸塩、塩化ベンザルコニウム
知識がないと次亜塩あたりを選びそうなので要注意です。(僕は選びました笑)
答え:1と4
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