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第71回臨床検査技師国試 午前【臨床免疫学】全選択肢の正誤理由と覚え方まとめ

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こんにちは、臨床検査技師のさいです。

第71回臨床検査技師国家試験 午後「臨床免疫学」を1問ずつ詳しく解説まとめしています。

午後の臨床免疫学は、抗体の基本構造や各種免疫測定法の原理といった基礎から、異型適合輸血のルール、さらにはタスク・シフトに伴う末梢血幹細胞採取の業務範囲まで、実務に直結する重要な知識が数多く問われました。一見すると複雑な輸血のルールやアルファベットの略語も、「なぜその抗体ができるのか」「なぜその製剤を使うのか」という背景を理解すると、一気に点数が安定する科目です。

本記事では、現場で働く臨床検査技師の視点も交えながら、できるだけイメージしやすい言葉で解説しました。国家試験対策はもちろん、免疫学実習や日々の復習にも活用していただければ幸いです。

※本記事の問題文および選択肢は、厚生労働省が公開している「第71回臨床検査技師国家試験問題および正答」をもとに掲載しています。

問79:抗体の基本構造とクラスの分類

【問題】
抗体で正しいのはどれか。

  • 1.IgAは分子量が最も大きい。
  • 2.IgGには2つのサブクラスがある。
  • 3.補体の結合部位はFab部分にある。
  • 4.H鎖には5種類のアイソタイプがある。
  • 5.2本のH鎖と1本のL鎖で形成される。
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正答:4

【問題の考え方】

抗体(免疫グロブリン:Ig)は、免疫学のすべての土台となる超重要分子です。Y字型の基本構造、腕の部分(Fab)と足の部分(Fc)の役割、そして5種類のクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)の特徴を網羅的に整理しておく必要があります。

【各選択肢の解説(構造と機能)】

  • 1.誤り(分子量)
    抗体の中で分子量が最も大きいのはIgMです。IgMはY字型の基本構造がJ鎖を介して5つ集まったペンタマー(5量体)として存在し、その分子量は約90万にもなります。IgAは血中では単量体、唾液・涙・母乳などの分泌液中では分泌型IgA(2量体)として存在します。
  • 2.誤り(サブクラス)
    IgGには、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4 の「4つ」のサブクラスが存在します。それぞれ血中濃度や補体結合能などに違いがあり、例えばIgG3は補体活性化能が高いという特徴があります。
  • 3.誤り(FabとFcの役割)
    抗体のY字型の「腕」にあたるFab部分は、抗原を特異的に見分けて結合する「抗原結合部位」です。一方、補体(C1q)やマクロファージ、NK細胞の受容体が結合するのは、Y字型の「足」にあたるFc部分です(NK細胞のFc受容体が結合するとADCC:抗体依存性細胞傷害を誘導します)。
  • 4.正しい(H鎖のアイソタイプ)
    H鎖(重鎖)には、γ(ガンマ)、α(アルファ)、μ(ミュー)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)の5種類のアイソタイプがあります。これらがそれぞれIgG、IgA、IgM、IgD、IgEといった異なるクラスの抗体を決定づけています。
  • 5.誤り(基本構造)
    免疫グロブリンの基本的な構造は、「2本のH鎖(重鎖)」と「2本のL鎖(軽鎖)」がジスルフィド結合(S-S結合)でつながったY字型をしています。1本ではありません。

【ポイント①】免疫グロブリンの基本構造

「どこに何がくっつくか」をしっかり区別しましょう。

名称(略語) 部位のイメージ 役割・特徴
Fab部分 Y字の「腕(先端)」 抗原結合部位。多種多様な抗原に対応するため、構造が変化する可変部(V領域)を持つ。
Fc部分 Y字の「足(根元)」 補体結合部位。また、マクロファージやNK細胞のFc受容体と結合して貪食やADCCを促す。

【ポイント②】5つのクラスと特徴まとめ

国家試験で問われるキーワードを整理しました。

クラス H鎖 特徴・国試キーワード
IgG γ 血中濃度が最も高い(約80%)。胎盤を通過する(移行する)唯一の抗体。二次応答で大量に作られる。
IgA α 唾液、涙、腸液、母乳などの分泌液中に多く含まれる。粘膜免疫の主役。血中は単量体、分泌液では2量体(分泌型IgA)
IgM μ 感染の初期(一次応答)に最初に作られる。J鎖を介した5量体で分子量が最大。補体活性化能が最も強い。
IgE ε 肥満細胞(マスト細胞)の表面に結合し、I型アレルギー(即時型アレルギー・アナフィラキシーなど)を引き起こす。寄生虫感染でも増加。
IgD δ 成熟B細胞の表面に受容体として存在する。血中濃度は非常に低い。

間違えやすいところ

  • 補体はFabに結合する → 誤り(補体やマクロファージ、NK細胞がくっつくのは「足」の部分であるFc領域です。)
  • IgAは胎盤を通過する → 誤り(胎盤を通過できるのはIgGだけです。IgAは母乳から赤ちゃんに移行します。)
  • 感染初期に作られるのはIgGである → 誤り(最初に作られるのはIgM、そのあとに大量に作られるのがIgGです。)

ここだけ覚えておけば大丈夫

各クラスの「一番の得意技(ナンバーワン)」を覚えておきましょう。

  • 胎盤通過ナンバーワン = IgG(胎盤を通れる唯一の抗体)
  • 母乳・分泌液ナンバーワン = IgA(粘膜バリアの主役)
  • デカさナンバーワン = IgM(J鎖による5量体、真っ先に駆けつける)
  • アレルギーの原因ナンバーワン = IgE
さい
さい
血液検査で「IgM抗体」が陽性なら「一般的に最近の感染(現在進行形)」を示唆し、「IgG抗体」が陽性なら「過去に感染してすでに免疫を持っている」と判断します。

さいの補足:L鎖(軽鎖)の種類とベンス・ジョーンズ蛋白

H鎖に5つの種類があるように、L鎖(軽鎖)にも「κ(カッパ)鎖」と「λ(ラムダ)鎖」の2種類が存在します。正常な状態では、抗体産生細胞レベルでκ:λの比率は約2:1に保たれています。

しかし、多発性骨髄腫(形質細胞の腫瘍)のように、特定の抗体ばかりが異常に作られる病気になると、血中や尿中の遊離軽鎖(FLC)のκ/λ比が大きく偏ります。さらに、この過剰に産生されたL鎖だけが尿中に大量に漏れ出たものをBence Jones(ベンス・ジョーンズ)蛋白と呼びます。

このベンス・ジョーンズ蛋白は、通常の尿蛋白試験紙(アルブミンに主に反応する試験紙)では陰性や偽陰性になることがあるという非常に重要な特徴があり、国試でも臨床でも大切なポイントです。

問80:免疫比濁法と各測定法の比較

【問題】
免疫比濁法で誤っているのはどれか。

  • 1.透過光の強度を測定する。
  • 2.Lambert-Beerの法則に従う。
  • 3.サイトカインの測定に適している。
  • 4.地帯現象による偽低値が見られる。
  • 5.化学発光分析法より測定感度が低い。
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正答:3

【問題の考え方】

抗原と抗体が結合してできる「濁り」を利用した測定法である「免疫比濁法(TIA)」の原理と限界を問う問題です。「どんな物質を測るのに向いているか」「弱点(地帯現象など)は何か」を他の測定法と比較しながら整理しましょう。

【各選択肢の解説(原理と特徴)】

  • 1.正しい(測定する光の種類)
    免疫比濁法は、液中の抗原と抗体が結合してできた不溶性の免疫複合体(凝集塊)に光を当て、光が遮られて減った分(透過光の減少=濁度)を測定して濃度を求めます。
  • 2.正しい(Lambert-Beerの法則)
    ランベルト・ベール(Lambert-Beer)の法則は、溶液中の物質が光を「吸収」する際の吸光度と濃度の比例関係を示す法則です。免疫比濁法は光の吸収ではなく「散乱」による透過光の減弱を利用していますが、臨床検査の現場ではこの法則を応用して吸光度変化から濃度を算出します。
  • 3.誤り(測定の適応)
    サイトカインなどの体内物質は、非常に微量(ピコグラム/mL 〜 ナノグラム/mLレベル)しか存在しません。免疫比濁法は、CRPや免疫グロブリンなど、比較的量が多い(mg/dLレベルの)物質の測定に向いており、微量な物質を測る感度はありません。サイトカインの測定には、化学発光免疫測定法(CLIA)などの超高感度な標識免疫測定法が必要です。
  • 4.正しい(抗原過剰による地帯現象)
    検体中の抗原が「多すぎる」場合、抗体との割合が崩れてしまい、うまく大きな免疫複合体の網目(凝集塊)を作れなくなります。その結果、実際は抗原が大量にあるのに「濁らない」ため、測定値が低く出てしまう現象です。これを抗原過剰による地帯現象(フック現象)と呼び、偽低値の原因となります。
    ※厳密には、抗体過剰をプロゾーン、抗原過剰をポストゾーンと区別します。
  • 5.正しい(感度の比較)
    免疫比濁法は、単に濁りを測るだけの「非標識免疫測定法」です。酵素や発光物質を使ってシグナルを何万倍にも増幅させる「化学発光分析法」などの標識免疫測定法に比べて、測定感度は著しく劣ります。

免疫測定法の感度と対象物質まとめ

「どのくらい微量なものを測れるか」の順番は重要です。

測定法 測定できるレベル 主な測定対象の例
免疫比濁法(TIA)
免疫比ろう法(NIA)
低感度
μg/mL 〜 mg/dL
CRP、IgG、IgA、IgM
補体(C3、C4)など
酵素免疫測定法(ELISA / EIA) 高感度
ng/mL 〜 pg/mL
ホルモン、腫瘍マーカーなど
化学発光免疫測定法(CLIA)
電気化学発光免疫測定法(ECLIA)
超高感度
pg/mL以下
サイトカイン、ウイルス抗原、
微量ホルモン、腫瘍マーカーなど

【関連知識】比濁法(TIA)と比ろう法(NIA)の違い

どちらも「濁り」を利用しますが、測っている光が異なります。

  • 免疫比濁法(TIA:Turbidimetry):光の通り道に検体を置き、まっすぐ通り抜けてきた光(透過光)の減り具合を測ります。
  • 免疫比ろう法(NIA:Nephelometry):濁りによって横や斜めに散らばった光(散乱光)の強さを測ります。こちらの方が少しだけ感度が高いという特徴があります。

国試で間違えやすいポイント

  • 免疫比濁法は散乱光を測定する → 誤り(比濁法は透過光、比ろう法は散乱光です。名前のすり替えに注意!)
  • 地帯現象で偽高値になる → 誤り(結合できずに濁らなくなるため、機械は「濃度が低い」と判断して「偽低値」になります。)
  • 免疫比濁法はEIA法より高感度である → 誤り(標識を用いない比濁法は最も低感度なグループです。)

この問題のポイント

測定法の感度は、この順番だけ頭に入れておきましょう。

TIA・NIAELISACLIA

また、光の種類の違いは以下のように整理します。

  • TIA(免疫比濁法) = 透過光
  • NIA(免疫比ろう法) = 散乱光
さい
さい
抗原と抗体の割合が「1:1」に近いとき、手をつなぎ合って一番大きな網目(濁り)を作ります。これを至適濃度比と言います。抗原が多すぎると、お互いに手をつなぐ相手がいなくなってしまい、網目ができずに濁らなくなってしまいます。

さいの補足:プロゾーン現象の回避策

検体中の抗原が異常に高濃度で、地帯現象による偽低値が疑われる場合、臨床検査室ではどう対応するのでしょうか?

答えは非常にシンプルで、「検体を生理食塩水などで希釈して再測定する」ことです。検体を薄めることで、過剰だった抗原の数が適正な割合(至適濃度)に近づき、正しく大きな凝集塊(濁り)が作られるようになります。薄めたのに逆に測定値がドカンと跳ね上がった場合、「地帯現象が起きていたんだな」と確認できます。

そして最終的な測定値は、得られた結果に「希釈倍率」を掛けて算出します。(例:10倍希釈で測定値が15なら、15 × 10 = 150 と報告します)。

問81:EBウイルスの特徴と感染症

【問題】
EBウイルスで正しいのはどれか。2つ選べ。

  • 1.ヘルペスウイルス科に属する。
  • 2.ウイルスはB細胞に潜伏する。
  • 3.EBNA抗体は初感染で陽性となる。
  • 4.再活性化により伝染性単核球症を発症する。
  • 5.抗体検査はラテックス凝集反応が用いられる。
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正答:1、2

【問題の考え方】

EBウイルス(Epstein-Barr virus)は、微生物学だけでなく血液学(伝染性単核球症と異型リンパ球)や免疫学(抗体の推移)をまたいで出題される超重要テーマです。「どこに感染するか」「どんな病気を起こすか」「抗体はどう推移するか」の3点を確実に整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.正しい(ウイルスの分類)
    EBウイルスは、DNAウイルスであるヘルペスウイルス科(ガンマヘルペスウイルス亜科)に分類されます。ヒトヘルペスウイルス4型(HHV-4)とも呼ばれます。ヘルペスウイルス科の特徴である「潜伏感染」を起こします。
  • 2.正しい(標的細胞)
    EBウイルスは、主に細胞表面にあるCD21分子(補体受容体CR2)を介してBリンパ球に感染し、その中で生涯にわたって潜伏感染を確立します。この性質が、後にバーキットリンパ腫や上咽頭癌、一部のHodgkinリンパ腫などの原因となることもあります。
  • 3.誤り(抗体の推移)
    EBNA(エブナ:EBウイルス核抗原)抗体は、発症後2〜4カ月頃(回復期〜既往感染期)になってから初めて陽性化し、その後終生持続します。初感染の急性期には陰性であり、急性期にはVCA-IgM抗体やEA抗体が陽性となります。
  • 4.誤り(伝染性単核球症の発症メカニズム)
    伝染性単核球症(IM)は、思春期以降にEBウイルスに「初感染」した際に発症する代表的な急性疾患です(発熱・咽頭炎・リンパ節腫脹)。再活性化で起こるものではありません。再活性化が問題となるのは、免疫不全時のリンパ増殖性疾患などです。
  • 5.誤り(抗体検査法)
    EBウイルスの特異抗体(VCAやEBNA)の測定には、通常ELISA法や蛍光抗体法(FA法)、化学発光免疫測定法(CLIA)などが用いられます。特異抗体の検査にラテックス凝集反応は用いられませんが、伝染性単核球症で出現する非特異的な「異好抗体」の検出(Monospot試験など)にはラテックス凝集法が用いられることがあります。

EBウイルス感染症の抗体価推移まとめ

「VCA-IgM抗体」と「EBNA抗体」の組み合わせで、今どの時期にいるかが判定できます。国家試験で最も狙われるポイントですし、臨床でもよく目にします。

感染の時期 VCA-IgM
(初期のサイン)
VCA-IgG
(急性期から上昇し終生持続)
EBNA抗体
(2〜4カ月後から出現)
状態・判定
未感染 陰性 (-) 陰性 (-) 陰性 (-) まだ感染したことがない
初感染・急性期 陽性 (+) 陽性 (+) 陰性 (-) 現在まさに伝染性単核球症を発症中
既往感染 陰性 (-) 陽性 (+) 陽性 (+) 過去に感染して治った状態(日本人の大半)

間違えやすいところ

「どの細胞に感染するか」のすり替え問題はによく出ます。

  • EBウイルスはT細胞に感染する → 誤り(感染するのはB細胞です。ただし、感染したB細胞をやっつけるために増殖するのはT細胞(異型リンパ球)です。)
  • 伝染性単核球症はウイルスの再活性化で起こる → 誤り(帯状疱疹などのイメージに引っ張られないようにしましょう。IMは初感染で起こります。)
  • 急性期にはEBNA抗体が陽性になる → 誤り(EBNAは数カ月遅れて出てくる「治癒・既往」のサインです。)

この問題のポイント

国試対策として、このキーワードは必ずセットで暗記してください。

  • 伝染性単核球症(=キス病)
  • B細胞(CD21)に感染
  • 異型リンパ球の出現
  • 急性期 = VCA-IgM(+)、EBNA(−)
  • 既往感染 = EBNA(+)
さい
さい
血液検査で「VCA-IgM(+)、EBNA(−)」のデータを見たら、今まさに伝染性単核球症で熱を出している真っ最中だ!と判断できます。臨床検査でよく利用される知識ですよ。

さいの補足:伝染性単核球症と「異型リンパ球」

EBウイルスに初感染して伝染性単核球症(IM)を発症すると、末梢血の塗抹標本に「異型リンパ球(Downey細胞)」が多数(10%以上)出現します。(することが多い)

ここで勘違いしやすいのが「異型リンパ球の正体」です。EBウイルスは「B細胞」に感染しますが、血液中に現れる異型リンパ球の正体は、ウイルスに感染したB細胞をやっつけるために活性化して大きくなった「CD8陽性細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)」であり、Downey(ダウニー)細胞とも呼ばれます。

ウイルスが乗っ取ったのはB細胞ですが、顕微鏡で見えている異型リンパ球は、それを攻撃しに来た「T細胞」なのです。この「感染細胞(B)と異型リンパ球(T)」の違いは、血液学の引っかけポイントなので確実に整理しておきましょう。

問82:免疫電気泳動法と蛋白分画

【問題】
免疫電気泳動法で正しいのはどれか。

  • 1.電気浸透現象の影響を受けない。
  • 2.分子量が大きいほど拡散速度が速い。
  • 3.検査の所要時間はおよそ2時間である。
  • 4.トランスフェリンはβ領域に泳動される。
  • 5.免疫固定法よりM蛋白の検出感度が高い。
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正答:4

【問題の考え方】

免疫電気泳動法(IEP)の原理と、血清蛋白の分画に関する総合的な知識を問う問題です。血清中のタンパク質が電気泳動で「どの位置(分画)に分かれるか」、そして現在の主流である「免疫固定法(IFE)」とどう違うのかを整理しておけば確実に解けます。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(電気浸透現象の影響)
    免疫電気泳動法は、支持体としてアガロースゲルなどを使用するため、電気浸透現象の影響を受けます。これにより、本来陽極(+極)へ向かうはずのγグロブリンが、水の流れに逆らえずに陰極(-極)側へと押し流されて(偏位して)しまいます。
  • 2.誤り(拡散速度と分子量の関係)
    電気泳動を終えた後、ゲルの中で抗原と抗体をじわじわと「拡散」させて沈降線を作ります。ゲルの網目の中を進むため、一般には分子量が小さいほど網目を通り抜けやすく拡散速度は速くなります。分子量が大きいほど拡散は遅くなります。
  • 3.誤り(検査の所要時間)
    電気泳動自体は数十分で終わりますが、その後に溝(トラフ)に抗血清を入れ、ゲルの中で抗原と抗体が拡散して出会い、目に見える「沈降線」を作るまでに一晩(約18〜24時間)かかります。2時間では終わりません。
    (B○Lで見学したことがありますが、1日で終わる仕事ではないので大変そうでした)
  • 4.正しい(トランスフェリンの泳動位置)
    血清を電気泳動すると、陽極(+極)側から順に「アルブミン → α1 → α2 → β → γ」の5つの分画に分かれます。鉄を運ぶタンパク質であるトランスフェリンは「β分画」の代表的なタンパク質です。
  • 5.誤り(免疫固定法との感度比較)
    多発性骨髄腫などで見られる異常なM蛋白の検出感度は、免疫電気泳動法よりも「免疫固定法(IFE)」の方が圧倒的に高いです(IEPは約100mg/dL、IFEは約5mg/dLで検出可能)。微量なM蛋白も見逃さないため、現在の臨床現場では免疫固定法が主流となっています。

血清蛋白分画の代表的タンパク質

「どの分画に何が含まれているか」は重要ポイントです。

分画名
※左ほど陽極(+)へ進む
含まれる代表的なタンパク質 特徴・国試キーワード
アルブミン分画 アルブミン 最も量が多いため、最も高く鋭いピークを作る。
α1(アルファ1)分画 α1-アンチトリプシン、HDLなど 急性期反応蛋白を含む(炎症で上昇)。
α2(アルファ2)分画 ハプトグロビン、α2-マクログロブリン ネフローゼ症候群で著増する。
β(ベータ)分画 トランスフェリン、C3、LDLなど 鉄欠乏性貧血で上昇する(トランスフェリンが増えるため)。
※IgA型のM蛋白はβ分画付近に泳動されることがあります。
γ(ガンマ)分画 免疫グロブリン(IgG、IgA、IgMなど) 多発性骨髄腫で鋭いMピーク(M蛋白)を作る。

間違えやすいところ(旧法と新法の比較)

「免疫電気泳動法」と「免疫固定法」のすり替えに注意しましょう。

  • 免疫電気泳動法は免疫固定法より感度が高い → 誤り(免疫固定法の方が高感度です。)
  • 免疫電気泳動法は数時間で判定できる → 誤り(抗体の拡散に時間がかかるため一晩かかります。免疫固定法は抗体を直接ゲルに塗りつけるため数時間で終わります。)
  • トランスフェリンはα2分画に泳動される → 誤り(トランスフェリンは「β分画」の主役です。)

この問題のポイント

M蛋白の検査方法について、この進化の歴史を押さえておきましょう。

  • 昔の検査:免疫電気泳動法(感度が低い、時間がかかる)
  • 今の検査:免疫固定法(感度が高い、微量なM蛋白も見逃さない)

(昔と今というのは便宜上言っているだけです)

さい
さい
僕が勤めていた検査センターでも、より早く正確にM蛋白を見つけられる免疫固定法(IFE)へシフトしました。現在では多くの施設でIFEが主流となり、古典的なIEPを実施する機会は減っています。

さいの補足:電気浸透現象とは?

電気泳動を行うアガロースゲルには、マイナス(-)の電荷を持った基(硫酸基など)が少し含まれています。ここに電圧をかけると、ゲルの中の「水(水和した陽イオン)」全体がプラス(+)を帯びて、陰極(-極)に向かってズルズルと流れ出します。これを「電気浸透現象」と呼びます。

タンパク質自体はマイナスに帯電しているので陽極(+極)へ向かって泳いでいきたいのですが、γグロブリンのようにマイナスの電荷が弱い(泳ぐ力が弱い)タンパク質は、この水流(電気浸透)に逆らえずに押し流されてしまい、スタート地点よりも陰極(-極)側に移動してしまいます。

問83:HTLV-1感染症の検査アルゴリズム

【問題】
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染症の確認検査はどれか。

  • 1.PA法
  • 2.EIA法
  • 3.HPLC法
  • 4.MAST法
  • 5.LIA(line immunoassay)法
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正答:5

【問題の考え方】

HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)は、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)の原因となるレトロウイルスです。感染診断では、偽陽性を防ぐため、「①スクリーニング検査(一次検査)」で広く拾い上げ、そこで陽性になったものだけを「②確認検査(二次検査)」で厳密に調べるという「2段階の検査(アルゴリズム)」で行われます。それぞれの段階で「どの検査法を使うのか」を分類しておくことがポイントです。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(PA法)
    PA法(粒子凝集法)は、HTLV-1抗体のスクリーニング検査(一次検査)として用いられます。感度は高い(見逃しが少ない)ですが、特異性がやや劣り偽陽性も出やすいため、確認検査には向きません。
  • 2.誤り(EIA法)
    EIA法(酵素免疫測定法)やCLIA法、CLEIA法なども、HTLV-1抗体のスクリーニング検査として広く用いられています。これも確認検査ではありません。
  • 3.誤り(HPLC法)
    HPLC法(高速液体クロマトグラフィー)は、HbA1cの測定やカテコールアミンの分析など、物質の分離・定量に用いられる分析手法です。HTLV-1感染症の診断に直接用いられる検査ではありません。
  • 4.誤り(MAST法)
    MAST法(多項目同時アレルゲン特異的IgE抗体測定法)は、アレルギー検査(採血で一度に複数のアレルギー原因物質を調べる検査)に用いられる方法です。ウイルス検査とは無関係です。
  • 5.正しい(LIA法)
    LIA法(ラインイムノアッセイ法)は、現在の日本でHTLV-1感染症の確認検査(二次検査)として最も広く用いられている方法です。HTLV-1特異抗原に対する抗体を確認する高特異度の検査であり、本当に感染しているのかを確定診断します。

HTLV-1検査の流れ(アルゴリズム)まとめ

「スクリーニング用」と「確認用」の検査名を分けて整理しておきましょう。

段階 主な検査法 目的と特徴
①スクリーニング PA、EIA、CLIA、CLEIA法 疑いのある人を漏らさず拾い上げる
(感度重視)
②確認検査 LIA法 本当に感染しているか白黒をつける
(特異度重視)
③判定保留時 PCR法 感染細胞中のプロウイルスDNAを検出する

間違えやすいところ

「どの段階の検査か」をすり替える引っかけが定番です。

  • PA法は特異度が高く、確認検査に用いられる → 誤り(PA法は感度は高いですが、偽陽性も多いためスクリーニング用です。)
  • HTLV-1の検査はまずPCR法から行う → 誤り(PCR法はコストや手間がかかるため、LIA法でも結果が確定できなかった場合の「最後の切り札」として使われます。)
  • MAST法はHTLV-1の確認検査である → 誤り(MAST法は特異的IgE抗体を調べる「アレルギー検査」です。アルファベットの略語のすり替えに注意しましょう。)

覚えておきたいポイント

HTLV-1の検査は、この順番だけ頭に入れておきましょう。

PA・CLEIAなどで広く拾う(スクリーニング)
↓(陽性なら次へ)
LIA法で白黒つける(確認検査)
↓(それでも判定できなければ次へ)
PCR法で感染細胞中のプロウイルスDNAを検出する
さい
さい
HTLV-1は母乳を通じて赤ちゃんに感染する(母子感染)リスクがあります。そのため、妊婦健診で全員にスクリーニング検査を行い、陽性例ではLIA法などで確認したうえで、母子感染予防のため授乳方法(完全人工栄養や短期母乳栄養など)を検討します。臨床現場でとても重要な検査です。

さいの補足:なぜWB法からLIA法に変わったのか?

少し前まで、HTLV-1やHIVの確認検査といえば「ウエスタンブロット(WB)法」が常識でした。古い参考書にはまだWB法と書かれているものもあります。

しかし、WB法には「陽性とも陰性とも言えない『判定保留(indeterminate)』になってしまうケースが多い」という大きな弱点がありました。判定保留になると、患者さんは不安な気持ちのまま再検査やPCR法の結果を待たなければなりません。

そこで登場したのが、人工的に合成したウイルスの特異的な抗原をシートに塗っておく「LIA法(ラインイムノアッセイ)」です。LIA法はWB法に比べて感度や特異度が高く、「判定保留」になる確率を大幅に減らすことができます。そのため、現在のガイドラインでは確認検査の主役はLIA法へと置き換わっています。
現在の臨床検査や国家試験では、確認検査としてLIA法を答えるのが基本です。

さいの補足:HTLV-1が関連する代表疾患

検査法だけでなく、「何の病気を起こすウイルスか」を結びつけておくと暗記の定着が全く違います。国試で頻出の3大疾患は以下の通りです。

  • 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)
  • HTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)
  • HTLV-1関連ぶどう膜炎(HU)

問84:Lewis血液型とCA19-9の関係

【問題】
Lewis血液型がLe(a-b-)の場合、産生されないのはどれか。

  • 1.AFP
  • 2.CEA
  • 3.PSA
  • 4.CA19-9
  • 5.ProGRP
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正答:4

【問題の考え方】

この問題は、CA19-9とLewis血液型との関係を理解しているかを問う問題です。CA19-9は膵癌の代表的な腫瘍マーカーですが、Lewis血液型によっては遺伝的に産生できない人がいることが重要なポイントです。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(AFP:α-フェトプロテイン)
    肝細胞癌や卵黄嚢腫瘍の腫瘍マーカーです。Lewis血液型とは関係ありません。
  • 2.誤り(CEA:癌胎児性抗原)
    大腸癌をはじめとする消化器系がん全般で広く用いられる腫瘍マーカーです。Lewis血液型とは関係ありません。
  • 3.誤り(PSA:前立腺特異抗原)
    前立腺癌の腫瘍マーカーです。臓器特異性が非常に高いことで有名です。Lewis血液型とは関係ありません。
  • 4.正しい(CA19-9)
    主に膵臓癌や胆管癌の腫瘍マーカーとして広く用いられます。CA19-9の正体は「シアリルルイスa(Leª)抗原」という糖鎖構造です。この構造を作るためには、Lewis抗原を作るフコース転移酵素(FUT3遺伝子)が不可欠です。Le(a-b-)の人はこの酵素を持っていないため、がんになってもCA19-9を産生できません。
  • 5.誤り(ProGRP:ガストリン放出ペプチド前駆体)
    小細胞肺癌に極めて特異性の高い腫瘍マーカーです。Lewis血液型とは関係ありません。

【関連知識】Lewis血液型とCA19-9の生合成メカニズム

なぜ作れない人がいるのか、少しだけ深く掘り下げてみましょう。

Lewis血液型の表現型 CA19-9の産生
Le(a-b-) 産生できない(作れない)
その他(Le(a+b-)、Le(a-b+)など) 産生できる

CA19-9(シアリルルイスa)という部品を作るには、ルイスa(Leª)抗原という「土台」が必要です。Le(a-b-)の人は、この土台を作るためのFUT3遺伝子が先天的に欠損(不活性)しているため、どれだけ膵臓がんが進行してもCA19-9を合成することができません。日本人の約5〜10%がこのLe(a-b-)型だと言われています。

間違えやすいところ

「偽陽性(本当は病気じゃないのに上がる)」と「偽陰性(本当は病気なのに上がらない)」の区別に注意しましょう。

  • Le(a-b-)の患者はCA19-9が偽陽性になる → 誤り(作れないため上がらない「偽陰性(ぎいんせい)」になります。腫瘍が存在していてもCA19-9が上昇しないため、CA19-9だけでは診断できません。
  • CA19-9は膵臓がんだけで上昇する → 誤り(胆管がんや大腸がんなどの悪性腫瘍のほか、胆石症や気管支炎などの良性疾患でも上昇することがあります。)
  • ProGRPは前立腺がんのマーカーである → 誤り(Pから始まるため間違えやすいですが、ProGRPは「小細胞肺癌」、前立腺は「PSA」です。)

覚えておきたいポイント

この問題のテーマは、以下の3点セットに集約されます。

  • Le(a-b-)
  • CA19-9を作れない
  • 膵癌でも上昇しない(偽陰性になる)

だから、膵臓がんになってもCA19-9の数値は上がらないということを覚えておきましょう。

さい
さい
僕は、血液型と腫瘍マーカーなんの関係があるんや!と思った派です。

さいの補足:作れない人のがん検査はどうするの?

日本人の約5〜10%はLe(a-b-)型でCA19-9が上がらないとすると、その人が膵臓がんになった場合、腫瘍マーカーでの発見は諦めるしかないのでしょうか?

実は、Le(a-b-)型ではCA19-9を合成できないため、その前駆糖鎖を認識するDUPAN-2Span-1が代替マーカーとして利用されることがあります。このように、Lewis血液型を考慮して腫瘍マーカーを選択することで、診断精度を高めることができます。

Le(a-b-)型ではCA19-9が偽陰性となるため、膵癌が疑われる場合はDUPAN-2やSpan-1など他の腫瘍マーカーや画像検査を組み合わせて評価します。腫瘍マーカーは単独で診断するものではなく、患者背景を考慮して解釈することが重要です。

問85:血液型検査(ABO・RhD)の判定

【問題】
ABO血液型検査の結果(別冊No. 16)を示す。血液型はどれか。

  • 1.A型RhD陰性
  • 2.A型RhD陽性
  • 3.B型RhD陰性
  • 4.B型RhD陽性
  • 5.ABO・RhD判定保留
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正答:4

【問題の考え方】

ABO血液型は、オモテ検査とウラ検査の結果が一致することを確認して判定します。またRhD判定ではRhコントロールの結果も確認することが重要です。

【画像所見の読解(試験管の凝集像)】

画像(別冊No.16)の試験管の底の様子を観察し、塊になっていれば「凝集あり(陽性:4+)」、均一に濁っていれば「凝集なし(陰性:-)」と判定します。

  • 抗A試薬:凝集なし(-)
  • 抗B試薬:凝集あり(4+)
  • A1赤血球:凝集あり(4+)
  • B赤血球:凝集なし(-)
  • 抗D試薬:凝集あり(4+)
  • Rhコントロール:凝集なし(-)

【各検査の判定プロセス】

  • オモテ検査(赤血球の抗原)
    抗B試薬のみ陽性であることから、赤血球にはB抗原が存在すると判断します。したがってオモテ検査は「B型」です。
  • ウラ検査(血清中の抗体)
    A1赤血球のみ陽性であることから、血清中には抗A抗体が存在すると判断します。したがってウラ検査も「B型」です。
  • ABO血液型の確定
    オモテ・ウラ検査はともにB型を示し、一致しているため「B型」と確定します。
  • RhD検査の判定
    抗D試薬で陽性、かつRhコントロールが陰性(正常)であるため、「RhD陽性」と判定します。

オモテ・ウラ検査はともにB型を示し、RhD検査も陽性であることから「B型RhD陽性」と判定し、選択肢4が正解となります。

ABO血液型のオモテ・ウラ反応パターン

オモテ検査とウラ検査は、自分の抗原に対する抗体は持たないという原則から整理すると覚えやすくなります。

血液型 オモテ検査(赤血球の抗原) ウラ検査(血清中の抗体)
抗A試薬 抗B試薬 A1赤血球 B赤血球
A型
B型
O型
AB型

間違えやすいところ(重要)

「オモテとウラの不一致」や「Rhコントロールの役割」の引っかけに注意です。

  • ウラ検査では血清中の抗原を調べる → 誤り(抗「原」ではなく抗「体」を調べます。オモテとウラで調べる対象が逆になります。)
  • オモテ検査だけで血液型を確定できる → 誤り(オモテとウラが一致して初めて確定します。一致しない場合は「ABO不一致」として精査が必要です。)
  • Rhコントロールが陽性ならRhD陽性である → 誤り(コントロールは「陰性になるべき」試験管です。これが陽性の場合は、自己抗体などによる非特異的な凝集が起きているため「判定保留(エラー)」となります。)

覚えておきたいポイント

以下の原則を頭に入れておきましょう。

  • オモテとウラが一致して初めてABO型を確定する
  • オモテ検査 = 赤血球の抗原を見る(抗A、抗B試薬を使う)
  • ウラ検査 = 血清の抗体を見る(A1、B赤血球を使う)
  • 自分の持っている抗原に対する抗体は持たない(A型なら抗A抗体は持たない)
  • Rhコントロールは必ず「陰性」でなければならない
さい
さい
Rhコントロール陽性例では、そのままRhD陽性と判定できません。自己抗体や非特異的凝集の可能性があるため、追加検査が必要になります。

さいの補足:なぜRhコントロールが必要なのか?

RhDの検査試薬(抗D試薬)には、抗体を安定させるために高濃度のタンパク質(アルブミンなど)が含まれていることがあります。

Rhコントロールが陽性となる原因には、自己抗体による赤血球凝集や高蛋白血症による非特異反応などがあります。これを防ぐため、抗D試薬と同じ組成で抗D抗体を含まないコントロール試薬を患者の赤血球と混ぜます。

Rhコントロールは、抗D試薬による反応が本当に抗D抗体によるものかを確認するための試験です。コントロールが陽性の場合は非特異反応が疑われるため、RhD型は判定保留として追加検査を行います。

問86:異型適合輸血の組み合わせ

【問題】
緊急輸血あるいは患者と同じABO血液型の赤血球液が不足した場合、患者と輸血する赤血球液のABO血液型で輸血可能な組合せはどれか。2つ選べ。

  • 1.A型の患者 ―― B型
  • 2.B型の患者 ―― A型
  • 3.O型の患者 ―― AB型
  • 4.AB型の患者 ―― B型
  • 5.血液型不明の患者 ―― O型
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正答:4、5

【問題の考え方】

輸血検査における「異型適合輸血」の原則を問う問題です。赤血球輸血では、患者血漿中の抗A・抗B抗体が輸血赤血球の抗原と反応しない組み合わせを選びます。これをメジャーミスマッチ(主不適合)の回避といいます。

【各選択肢の解説(抗原抗体反応の有無)】

  • 1.誤り(A型患者にB型を輸血)
    A型の患者は血漿中に「抗B抗体」を持っています。そこにB抗原を持つB型赤血球を入れると、抗B抗体が反応して溶血性副作用を引き起こすため、絶対禁忌です。
  • 2.誤り(B型患者にA型を輸血)
    B型の患者は血漿中に「抗A抗体」を持っています。そこにA抗原を持つA型赤血球を入れると、抗A抗体が反応して溶血を引き起こすため、これも絶対禁忌です。
  • 3.誤り(O型患者にAB型を輸血)
    O型の患者は血漿中に「抗A抗体」と「抗B抗体」の両方を持っています。AB型赤血球を入れると、抗A抗体および抗B抗体と反応し、強い溶血性副作用を起こすため絶対禁忌です。O型の患者にはO型赤血球しか輸血できません。
  • 4.正しい(AB型患者にB型を輸血)
    AB型患者には抗A抗体・抗B抗体が存在しないため、B型赤血球を輸血しても抗原抗体反応は起こりません。したがって、輸血可能です。(※A型やO型の輸血も可能です)
  • 5.正しい(血液型不明患者にO型を輸血)
    O型赤血球はA抗原・B抗原を持たないため、患者の抗A・抗B抗体と反応しません。O型赤血球はABOの観点では「ユニバーサルドナー(万能供血者)」として扱われ、血液型を調べる暇もない超緊急時にはO型赤血球液(O型RCC)が使用されます。

赤血球輸血の「異型適合」組み合わせ表

「患者の型」に対して、「どの型の赤血球なら入れられるか」を整理しましょう。

患者の血液型
(持っている抗体)
第1選択
(同型輸血)
第2選択以降
(異型適合輸血)
O型
(抗A・抗Bあり)
O型 なし
(O型しかもらえない)
A型
(抗Bあり)
A型 O型
B型
(抗Aあり)
B型 O型
AB型
(抗体なし)
AB型 A型 または B型 または O型

【関連知識】メジャーミスマッチとマイナーミスマッチ

  • メジャーミスマッチ(主不適合):患者の抗体が、ドナーの赤血球と反応すること。大量の赤血球が一気に破壊されるため、致死的な溶血性副作用を引き起こします。絶対に避ける必要があります。
  • マイナーミスマッチ(副不適合):ドナーの血液に含まれる少量の抗体が、患者の赤血球と反応すること。現在輸血に使われている「赤血球液(RBC-LR)」は、血漿成分(抗体)がほとんど取り除かれているため、異型適合輸血を行ってもマイナーミスマッチによる溶血は通常は問題になりません。

間違えやすいところ

「赤血球の輸血」と「血漿(新鮮凍結血漿:FFP)の輸血」をごちゃ混ぜにする引っかけが定番です。

  • AB型患者にO型血漿(FFP)を輸血する → 誤り(O型の血漿には抗A・抗B抗体がたっぷり入っているため、AB型患者の赤血球を攻撃してしまいます。血漿輸血ではAB型が最も安全に投与できます。)
  • O型患者にA型の赤血球を輸血する → 誤り(O型患者は抗A抗体を持っているため、A型赤血球を入れると溶血します。)

覚えておきたいポイント

赤血球の異型適合ルールは、以下の観点に集約されます。

  • O型赤血球はABOの観点では他の血液型患者にも使用できる(抗原がないため)
  • AB型患者はABOの観点ではA・B・O型赤血球も輸血可能(抗体がないため)
さい
さい
血液型判定前の超緊急輸血ではO型赤血球液が選択されます。とはいえ、実際に輸血するとなると躊躇してしまいそうです。

さいの補足:血漿の異型適合輸血は「逆」になる

国家試験では「赤血球液」だけでなく、「新鮮凍結血漿(FFP)」の異型適合も問われます。血漿には「抗原」ではなく「抗体」が含まれています。そのため、FFPを輸血する際は「ドナーの血漿に入っている抗体が、患者の赤血球を攻撃しないか」を考えます。

つまり、適合のルールは完全に逆転します。ABOの観点で整理すると以下のようになります。

【赤血球液(RBC)の投与可能先】

  • ・O型 → 全員(A・B・AB・O)
  • ・A型 → A、AB
  • ・B型 → B、AB
  • ・AB型 → ABのみ

【新鮮凍結血漿(FFP)の投与可能先】

  • ・AB型 → 全員(A・B・AB・O)
  • ・A型 → A、O
  • ・B型 → B、O
  • ・O型 → Oのみ

赤血球輸血では「患者の抗体」、FFP輸血では「ドナーの抗体」を基準に考えるため、適合関係はちょうど逆になります。問題文で「赤血球液」か「血漿(FFP)」かを確認することが重要です。

問87:末梢血幹細胞採取と臨床検査技師の業務範囲

【問題】
末梢血幹細胞採取で臨床検査技師が行うことができないのはどれか。

  • 1.静脈路確保
  • 2.成分採血装置の操作
  • 3.採取中の静注薬投与
  • 4.採取後の抜針
  • 5.採取細胞の保存処理
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正答:3

【問題の考え方】

輸血・細胞治療分野における、臨床検査技師の「業務範囲(法規)」を問う問題です。2021年(令和3年)の法改正により、臨床検査技師が実施できる業務が拡大されました。本問では、追加された業務と現在も実施できない医行為を区別できるかがポイントです。

【各選択肢の解説(法規に基づく可否)】

  • 1.誤り(できる:静脈路確保)
    2021年の法改正により、医師の具体的指示の下、末梢静脈路確保が可能となりました。成分採血や造影CT検査時のルート確保などがこれに該当します。
  • 2.誤り(できる:成分採血装置の操作)
    成分採血装置の操作および採血装置への接続・離脱は、医師の具体的指示の下で実施できます。
  • 3.正しい(できない:採取中の静注薬投与)
    採取中に必要となる薬剤の静脈内投与(カルシウム製剤などを含む)は、臨床検査技師の業務には含まれません。これは医師または看護師の業務となります。
  • 4.誤り(できる:採取後の抜針)
    静脈路確保と同様に、2021年の法改正により「採血・成分採血終了後の抜針および止血」も臨床検査技師の業務として実施可能となりました。
  • 5.誤り(できる:採取細胞の保存処理)
    採取した幹細胞のCD34陽性細胞数のカウント(フローサイトメトリーなど)、細胞の濃縮・分離、および液体窒素タンクなどでの凍結保存処理(細胞プロセッシング)は、臨床検査技師が従来から中心となって担っている重要な業務です。

2021年タスク・シフトで追加された主な業務

国家試験で狙われやすい「できるようになったこと」のリストです。

分野 追加された業務(※すべて医師の具体的な指示の下)
採血・輸血関連 静脈路の確保、抜針および止血
成分採血装置の操作(患者への接続を含む)
超音波・画像関連 超音波検査等における静脈路からの造影剤の注入
※動脈への注入や、造影剤以外の薬剤投与は不可。
生理機能検査関連 直腸肛門機能検査におけるバルーンへの空気の注入・脱気
検体採取関連 表皮上の毛細血管からの採血、鼻腔・咽頭拭い液の採取など
※これらは2015年などの法改正ですでに追加されていました。

間違えやすいところ

「できる」と「できない」の絶妙なラインを引っかけにしてきます。

  • 造影剤以外の静注薬(アレルギーの薬など)を投与する → 誤り(静脈路確保や造影剤注入はできても、治療目的の薬剤の投与はできません。)
  • 成分採血装置は医師以外操作できない → 誤り(臨床検査技師や臨床工学技士も操作可能です。)
  • 中心静脈カテーテルを挿入する → 誤り(中心静脈への穿刺・挿入は危険が伴うため、医師の業務です。技師ができるのはあくまで「末梢静脈」の確保です。)
  • 採取した幹細胞を患者に輸注する → 誤り(患者さんの体の中に幹細胞や血液を入れる行為(輸血・輸注)は、医師または看護師の業務です。)

覚えておきたいポイント

末梢静脈路確保や成分採血装置の操作は実施可能ですが、薬剤投与や輸注は業務範囲外です。

  • OK(できる):末梢静脈のルート確保、抜針、成分採血装置の操作
  • NG(できない):薬を入れること、血液を入れること(輸注)、中心静脈への穿刺
さい
さい
2021年の法改正以降、この分野は国家試験でも繰り返し出題されています。業務範囲の変更点は整理しておきましょう。

さいの補足:末梢血幹細胞採取(PBSCH)とは?

白血病などの治療で行われる「造血幹細胞移植」には、大きく分けて「骨髄移植」「臍帯血移植」そしてこの「末梢血幹細胞移植」があります。

通常、造血幹細胞は骨髄の中にしかありませんが、「G-CSF」という白血球を増やす薬を数日間注射すると、骨髄の中から血液中(末梢血)に幹細胞が溢れ出してきます。この血液中に出てきた幹細胞だけを、成分採血装置(アフェレーシス)を使って遠心分離で集めるのが末梢血幹細胞採取です。

骨髄移植のように全身麻酔をかけて骨に太い針を刺す必要がないため、ドナーへの負担が少ないことから広く行われています。採取した細胞のCD34陽性細胞数や生細胞率を評価し、使用する日までマイナス196℃の液体窒素タンクで凍結保存する役割を、臨床検査技師が担っています。

末梢血幹細胞採取では、採取そのものだけでなく、CD34陽性細胞数の測定や細胞処理・凍結保存までが重要な業務です。一方、薬剤投与や細胞の輸注は医師・看護師が担う医行為であり、臨床検査技師は実施できません。

問88:新鮮凍結血漿(FFP)の投与目的と適正使用

【問題】
新鮮凍結血漿投与の目的で正しいのはどれか。

  • 1.貧血の改善
  • 2.血小板の補充
  • 3.凝固因子の補充
  • 4.アルブミンの補充
  • 5.血漿浸透圧の維持
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正答:3

【問題の考え方】

現在の輸血療法は「成分輸血」が基本です。赤血球・血小板・血漿を目的別に使い分けます。この問題では、新鮮凍結血漿(FFP)の役割を理解しているかが問われています。

【各選択肢の解説(血液製剤の役割)】

  • 1.誤り(貧血の改善)
    貧血は酸素を運ぶ「赤血球」の不足によって起こります。新鮮凍結血漿(FFP)には赤血球が含まれていないため、貧血の改善には役に立ちません。貧血の改善には赤血球液(RBC:濃厚赤血球)が用いられます。
  • 2.誤り(血小板の補充)
    FFPを作成する過程(遠心分離)で血小板は除去されているため、FFPに血小板は含まれていません。血小板減少症の患者や、血小板機能異常による出血傾向には、血小板濃厚液(PC)が用いられます。
  • 3.正しい(凝固因子の補充)
    FFPには血液凝固因子が含まれており、複数の凝固因子が不足した状態で補充を目的として使用されます。代表的な適応はDIC、大量輸血、重症肝障害などです。
  • 4.誤り(アルブミンの補充)
    FFPの主成分はアルブミンを含む血漿タンパク質ですが、低アルブミン血症のみを目的としてFFPを投与することは推奨されません。アルブミンの補充にはアルブミン製剤を使用します。
  • 5.誤り(血漿浸透圧の維持)
    血漿膠質浸透圧の維持や循環血液量の補充だけを目的としてFFPを使用することは適切ではありません。このような場合はアルブミン製剤や輸液が選択されます。

主な血液製剤と投与目的まとめ

「何の病態の時に、どの製剤を使うか」をセットで覚えましょう。

血液製剤の種類 主な投与目的 対象となる主な病態・疾患
赤血球液(RBC) 酸素運搬能の回復 貧血、大量出血など
血小板濃厚液(PC) 一次止血機能の回復 血小板減少症、白血病など
新鮮凍結血漿(FFP) 二次止血機能(凝固因子)の回復 DIC、重症肝障害、複数因子の欠乏
アルブミン製剤 血漿膠質浸透圧の維持 重症の低アルブミン血症、ショックなど
免疫グロブリン製剤 免疫機能の補助 無ガンマグロブリン血症、自己免疫疾患

間違えやすいところ

現場でも国試でも、FFPの不適切な使用例がよく出題されます。

  • アルブミン補充目的にFFPを使用する → 誤り
  • 循環血液量の補充目的にFFPを使用する → 誤り
  • 創傷治癒目的にFFPを使用する → 誤り

覚えておきたいポイント

FFPの目的はただ一つです。

「FFPの目的は『凝固因子の補充』です」

さい
さい
FFPは有効な製剤ですが、アレルギー反応やTRALIなど輸血副反応のリスクがあります。そのため、「本当に凝固因子の補充が必要な場面」で使用することが重要です。

さいの補足:なぜ「新鮮」凍結血漿と呼ぶのか?

採血した血液をそのまま冷蔵庫に置いておくと、血液を固める成分(凝固因子)のうち、第Ⅴ(5)因子第Ⅷ(8)因子は保存中に活性が低下しやすい不安定凝固因子です。

これらの凝固因子の活性を保つためには、「採血後速やかに(新鮮なうちに)」マイナス20℃以下で急速凍結させる必要があります。だから「新鮮」という言葉がついているのです。この知識は、凝固検査の検体取り扱いにも通じる非常に重要なポイントです。

問89:能動免疫と受動免疫の違い

【問題】
能動免疫はどれか。2つ選べ。

  • 1.感染による抗体獲得
  • 2.生ワクチン接種による抗体獲得
  • 3.免疫グロブリン製剤による抗体獲得
  • 4.胎盤を介したIgG抗体の胎児への移行
  • 5.母乳に含まれるIgA抗体の児への移行
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正答:1、2

【問題の考え方】

能動免疫と受動免疫は、「抗体を自分で作るか」「すでにできた抗体を受け取るか」の違いです。この基準だけで全ての選択肢を判断できます。

【各選択肢の解説(分類の理由)】

  • 1.正しい(能動免疫:自然感染)
    病原体に感染することで、自身の免疫系が活性化され、自ら抗体を産生します。これは自然に獲得される能動免疫です。
  • 2.正しい(能動免疫:ワクチン)
    生ワクチンに含まれる抗原によって免疫系が刺激され、自分で抗体を作ります。投与方法が注射であっても、抗体を産生するのは自身の体であるため、人工的に獲得した能動免疫となります。
  • 3.誤り(受動免疫:免疫グロブリン製剤)
    あらかじめ作られた抗体(免疫グロブリン)を投与する方法です。自分では抗体を作らないため、人工受動免疫に分類されます。
  • 4.誤り(受動免疫:胎盤からのIgG)
    母体が持つIgG抗体が胎盤を介して胎児へ移行します。母体が作った抗体を受け取るため、自然受動免疫に分類されます。
  • 5.誤り(受動免疫:母乳からのIgA)
    母乳に含まれる分泌型IgAが乳児の消化管に移行し、感染防御に寄与します。これも抗体を受け取る受動免疫です。

能動免疫と受動免疫の比較まとめ

「即効性」や「持続性」の違いは国家試験で重要です。

項目 能動免疫 受動免疫
意味 自分で抗体を作る 抗体を受け取る
自然獲得の例 感染による獲得 胎盤(IgG)、母乳(IgA)
人工獲得の例 ワクチン接種 免疫グロブリン製剤、抗毒素血清
即効性 なし(発現まで時間がかかる) ある
持続性 長期間持続(免疫記憶あり) 一時的(免疫記憶なし)

間違えやすいところ

「注射=受動免疫」という思い込みによる誤認に注意しましょう。

  • ワクチン接種は注射だから受動免疫 → 誤り(注射しているのは抗体ではなく抗原です。)
  • 能動免疫は即効性がある → 誤り(自ら抗体を産生するため時間がかかります。)
  • 受動免疫は免疫記憶が残る → 誤り(投与された抗体は時間の経過とともに代謝され、数ヶ月で消失します。)
さい
さい
新生児は、生後しばらくの間は胎盤を介して母体から受け取ったIgGによって感染防御が保たれています。

さいの補足:人工受動免疫(血清療法)の臨床的意義

破傷風やB型肝炎の母子感染予防などの緊急時には、自ら抗体を作るのを待つ時間の余裕がありません。そのため、破傷風では破傷風免疫グロブリン(TIG)、B型肝炎ではB型肝炎免疫グロブリン(HBIG)のように、あらかじめ作られた抗体を投与して速やかに感染や毒素を中和します。

ワクチンのように抗体が作られるのを待てない場面で用いられるのが人工受動免疫です。この考え方はマムシ抗毒素血清などにも共通します。

臨床免疫学(午後)の解説は以上です

お疲れ様でした。

今回の午後の臨床免疫学は、抗体のクラス分類、EBウイルスやHTLV-1の検査アルゴリズム、ABO血液型の判定、そして輸血検査や関連法規など、国家試験で毎年必ず出題される重要テーマが中心でした。丸暗記だけでは対応しにくい問題もありますが、「オモテとウラで何を調べているのか」「能動免疫と受動免疫の違いは何か」といった根本のルールを理解しておくといいと思います。

特に輸血検査や血液製剤の取り扱いは、実際の臨床現場でも患者さんの命に直結する絶対に間違えられない知識です。表の読み取り方や適合のルールをしっかり整理しながら復習してみてください。

臨床免疫学は覚えることが多い分野ですが、一つひとつの知識がつながると大きな得点源になります。ぜひ過去問を繰り返し解きながら、自分の中で「なぜそうなるのか」を説明できるレベルまで理解を深めていきましょう。

さい
さい
お疲れ様でした!カタカナや略語がたくさん出てきて最初は戸惑うかもしれませんが、焦らず「この検査の目的はこれ!」と自信を持てるレベルまで勉強してみましょう

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