過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
国家試験の過去問解説のまとめページです
第70回臨床検査総論AM問1~10
1 Over the counter〈OTC〉検査で実施されるのはどれか。2つ選べ。
- 血 糖
- 尿蛋白
- 中性脂肪
- HIV抗体
- 尿中hCG
解説:OTC検査(Over The Counter)とは何なのか、解説していきます。
★OTC検査とは
体外診断用医薬品のうち、一般用医薬品として取り扱うことが認められているもの。 一般の人が日常において自らの体調をチェックすることを目的とするもの
現在5種が承認されています。
- 尿糖
- 尿蛋白
- 妊娠検査薬(hcG)
- 排卵日予測検査薬(LH)
- 新型コロナ抗原検査(令和4年ごろから厚労省承認)
上記の通り、家庭でも検査できるものがOTC検査です。ドラッグストアで検査薬が購入可能です。
答え:2と5
2 検査項目と採血管の添加物の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- PT EDTA-2Na
- ALP EDTA-2K
- 血 糖 フッ化ナトリウム
- 赤 沈 クエン酸溶液
- 血小板数 ヘパリンリチウム
解説:適切な採血管(添加物)を選ぶ問題です。検体検査をメインにしている僕としては基本的な問題に感じますが、学生の頃は苦手意識がありました。設問にある添加剤は全て有名なものなので、しっかり把握しておきましょう。
★採血管(添加物)と検査項目
- 凝固系検査(PT、APTT、Dダイマー、AT-Ⅲ、フィブリノーゲンなど
⇒3.2%クエン酸ナトリウム - 生化学検査(AST、ALT、ALP)など
⇒分離剤、凝固促進剤入り採血管 - 血糖
⇒フッ化ナトリウム - 赤血球沈降速度(ESR)
⇒3.8%クエン酸ナトリウム - 血液一般(CBC)
⇒EDTA-2K - 血ガス
⇒ヘパリンリチウム
上記はほんの一部に過ぎません。しかしメジャーな検査項目は比較的網羅しているため、今後多少項目を変えられても対応は可能だと思います。(項目と採血管の組み合わせがありすぎるため全て載せるのは不可能です)
答え:3と4
3 精度管理法で正しいのはどれか。
- 精密さは真の値からの偏りの程度をいう。
- マルチルール管理図法は患者検体を用いる。
- 2シグマ法での管理では統計学的に10回に1回は外れ値が出現する。
- 管理試料の測定値が3点連続して上昇傾向を示した場合をシフト現象という。
- X(bar)-R管理図法のRは日内の管理試料の測定値の最大値と最小値の差である。
解説:精度管理です。重要ですが苦手な方が多い箇所ですね。長くなりますがまとめを載せておきます。
★誤差(正確度と精密度)の用語説明
- 正確度
⇒測定値と真値の差 - 精密度
⇒複数回の測定等の値の間での互のばらつきの度合いの尺度(再現性) - 系統誤差
⇒一定の傾向を持った誤差
(要因:分析装置の変更、試薬の劣化、試薬LOTの変更、標準液の調整ミスなど) - 偶発誤差
⇒偶発的に生じる誤差
(要因:ピペット操作ミス、器具の汚染、比色時の気泡混入など) - 過失誤差
⇒測定者の経験不足や誤操作による誤差
★精度管理で管理血清を用いるもの
【精密さ】
-
- Xbar-R管理図
- Xbar-Rs-R管理図法
- マルチルール管理図
- 累積和法
- 双値法(ツインプロット)
【正確さ】
- 添加回収試験
回収率=(添加測定値-無添加測定値 / 添加量)×100 - 干渉試験(共存物質の影響の測定)
- 標準液による検定
- 標準法との比較
- 精度管理調査(サーベイ)への参加
★精度管理で患者血清を用いるもの
【精密さ】
- 正常者平均法
- ナンバープラス法
- 反復測定法
【患者検体(個別)管理】
- デルタチェック法(前回値差、比)
- 項目間チェック法
★Xbar-R管理図の意義
- 1種類の管理血清2本(基本的には低濃度、高濃度)を検査の過程で測定する方法
- 技師の技術、試薬の劣化、標準液の劣化、器具洗浄の不良など様々な要因をチェックできる(最もメジャーだと思います)
- 20日間にわたり測定した平均濃度(Xbar)とその測定日の最大値と最小値の差(R)の平均値と標準偏差を求めて管理限界を定め、その管理限界の±2SDを2シグマ法、±3SDを3シグマ法と呼ぶ
- ±2SD内には95%のデータが入る
- ±3SD内には99%のデータが入る
- 中心線の上方または下方に突然逸脱し、継続的に5~6回持続することをシフト現象とよぶ
- Xbarの値が徐々に上方または下方に移行する現象をトレンド現象とよぶ
設問を見てみましょう。
精密さは真の値からの偏りの程度をいう。⇒正確さのことです
マルチルール管理図法は患者検体を用いる。⇒管理血清を用います
2シグマ法での管理では統計学的に10回に1回は外れ値が出現する。⇒95%の確率で範囲内に入るので、20回に1回が期待値です
管理試料の測定値が3点連続して上昇傾向を示した場合をシフト現象という。⇒5~6回上昇した場合をトレンド現象とよぶ
X(bar)-R管理図法のRは日内の管理試料の測定値の最大値と最小値の差である。⇒正しい
答え:5
4 免疫学的便潜血検査で正しいのはどれか。
- 検体採取前は食事制限をする。
- 採取後の検体は室温で保存する。
- 化学的測定法より検出感度が低い。
- 胃がんのスクリーニング検査である。
- 便のこすり方は検出率に影響を与える。
解説:便潜血検査は頻出問題です。
★便潜血検査(免疫法)の特徴
- ヒトヘモグロビンを検出する
- 検体保存は冷蔵が基本だが、やむを得ない場合は日の当たらない場所で保存(25℃以下)
- 食事制限は不要(ヒトヘモグロビン検出のため)
- 化学法よりも感度が高い(ヒトヘモグロビン検出のため)
- 便の表面をこすりとるように採取する
⇒こすり方で検出率に影響が出る - 上部よりも下部の消化管出血の検査に適している
⇒(胃液などの消化液でヘモグロビンが変性してしまうため)
答え:5
5 精液検査で正しいのはどれか。
- 2日間連続して採取する。
- 検体採取後は冷蔵で保存する。
- 精子濃度測定は採取後10分以内に行う。
- 運動率の測定は採取後1時間以内に行う。
- 精子濃度の基準範囲は150万/mL以上である。
解説:精液検査まで出るとは、さすがは国家試験ですね。検査手順と注意点などまとめました。
★精液検査手順
- 精液を十分に混和し、パスツールピペットで5~10μLをスライドに載せる
- 引きガラスを45度に置き、精液の半分に接するまで動かし引いていく
- 精液をスライドに載せてから2秒以内に引き終わる
- パパニコロウ染色、ギムザ染色、Diff-Quik染色、Eosin染色などで染色をする
★注意点
- 2~5日程度の禁欲期間後に採取する
- 室温で1時間が保存限界
- 採取後1時間以内に検査を行う
検査項目:精液量、色合い、液状化時間、PH、精子濃度、総精子数、運動率、直進運動率、正常形態率など
★基準値
- 精子濃度:1600万/mL以上
- 精液量:1.4mL以上
- 精子運動率:42%以上
- 正常精子形態率:4%以上
上記より、④が正しいことがわかる
答え:4
6 回虫卵(受精卵)より大きい虫卵はどれか。
- 肝蛭卵
- 鞭虫卵
- 肝吸虫卵
- 無鉤条虫卵
- 横川吸虫卵
解説:肝蛭卵が寄生虫虫卵で、最大のものであることを知っていれば即答できます。
★虫卵大きさ
- 吸虫卵
横川吸虫=肝吸虫(27~35μm)<日本住血吸虫<ウェステルマン肺吸虫(80~90μm)<マンソン住血吸虫(140μm)≦ビルハルツ住血吸虫(140μm)≦<肝蛭(145μm) - 条虫卵
有鉤条虫・無鉤条虫(30~40μm)<小形条虫(44~52μm)<マンソン条虫(55~65μm)<縮小条虫(60~75μm)≦日本海裂頭条虫(65~75μm) - 線虫卵
鞭虫(50μm)=蟯虫(60μm)≦鉤虫(60μm)≦回虫(受精卵60~70μm)<回虫(不受精卵90μm)
答え:1
7 寄生虫と中間宿主の組合せで正しいのはどれか。
- 肝吸虫 イカ
- 単包条虫 イヌ
- 宮崎肺吸虫 サワガニ
- 日本住血吸虫 サケ
- 日本海裂頭条虫 ブタ
解説:設問の中間宿主をまとめました
★寄生虫と中間宿主まとめ
- 肝吸虫
第一中間宿主はマメタニシ
第二中間宿主はコイ、フナ、 ゼニタナゴ等の淡水魚 - 単包条虫 野ネズミ
- 宮崎肺吸虫
第1中間宿主はホラアナミジン、ニナやミジンツボ
第2中間宿主はサワガニ - 日本住血吸虫 ミヤイリガイ
- 日本海裂頭条虫 ケンミジンコとサケ、マス類
中間宿主を覚えるだけでも大変なのに、最終宿主もあるので寄生虫は難しいです。
(寄生虫が好きな人以外は覚えるのが苦痛でしょう)
答え:3
8 正確度の確認方法はどれか。2つ選べ。
- 機種間差の確認
- 室内精度の確認
- 標準物質の測定
- 標準法との比較
- 併行精度の確認
解説:正確度の確認法ですが、過去からの既出問題でもあるのでキッチリ覚えておきましょう。AM問題3にもありますが、ここでも使えます。
【正確さ】
- 添加回収試験
- 回収率=(添加測定値-無添加測定値 / 添加量)×100
- 干渉試験(共存物質の影響の測定)
- 標準液による検定
- 標準法との比較
- 精度管理調査(サーベイ)への参加
答え:3と4
9 糞便の性状と疾患の組合せで正しいのはどれか。
- 緑色便 総胆管結石
- 灰白色便 MRSA腸炎
- タール便 コレラ
- 米の研ぎ汁様便 カンピロバクター腸炎
- いちごゼリー状便 アメーバ赤痢
解説:便の性状と疾患をまとめてみました。
- 緑色便
ビリルビン増加、サルモネラ感染など - 灰白色便
胆道閉塞症、胆管拡張症、胆管がん、総胆管結石症、膵がん、ロタウイルスやコレラによる胃腸炎、バリウム後など - タール便
消化管の潰瘍など - 米のとぎ汁様便
ロタ、ノロ、コレラによる腸炎など - いちごのゼリー状便
赤痢、クローン病、潰瘍性大腸炎など
一般検査をしていると、便の性状は割と重要であるので覚えておきましょう。
答え:5
参考までに便の色が変わってしまう薬剤一覧を載せておきます。入院患者などで、便の色が変わったものが多いのは薬剤の影響を受けている場合もあります。
- 黄色 大黄末、センナ、サントニン
- 黒色 鉄剤、プロトポルフィリン二ナトリウム、アスピリン、ヘパリン
- 緑色 インドメタシン、銅クロロフィリンナトリウム配合剤
- 赤色 セフジニル、テトラサイクリン、フェノールフタレイン系緩下剤
- 橙赤色 リファンピシン
- 灰白色 硫酸バリウム
10 尿沈渣の無染色標本(別冊No. 1A)とSternheimer染色標本(別冊No. 1B)を別に示す。この構造物はどれか。
- 硝子円柱
- 顆粒円柱
- 上皮円柱
- 赤血球円柱
- 白血球円柱
解説:4
答え:円柱の内部には赤血球が1/3以上充填さています。典型的な赤血球円柱です。設問の中では顆粒円柱が鑑別には上がりますが、円柱の内部構造をしっかり見れば即答できる問題ですね。
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