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【臨床検査技師国家試験】第70回AM臨床免疫学【解説】

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国家試験臨床免疫学AM問79~89です

過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html

臨床検査技師国家試験の解説まとめです

臨床検査技師国家試験解説集 

第70回臨床免疫学AM79~89

79 B細胞で誤っているのはどれか。

  1. 抗原提示細胞である。
  2. 体液性免疫に関与する。
  3. 抗体産生細胞に分化する。
  4. 血中の分布はT細胞より少ない。
  5. コンカナバリンA〈Con A〉で幼若化が起こる。

解説:選択肢を深堀りしていきます。

  • 抗原提示細胞である。
    抗原提示細胞T細胞を活性化させる細胞で、B細胞の他にも、樹状細胞、マクロファージなどがある。
  • 体液性免疫に関与する。
    体液性免疫はB細胞から形質細胞へと分化して、大量の抗体を産生し、異物を攻撃する
    細胞性免疫はT細胞(CD4ヘルパーT細胞、CD8キラーT細胞)が直接異物を攻撃する
  • 抗体産生細胞に分化する。
    上記にもあるが、B細胞→形質細胞→抗体産生の流れになる
  • 血中の分布はT細胞より少ない。
    リンパ球の約75%がT細胞で、25%がB細胞なのでB細胞は割合的に少ない
  • コンカナバリンA〈Con A〉で幼若化が起こる。
    ConA(concanavalin A)はT細胞を活性化するマイトジェンとして働き、幼若化が起こる

※補足として、LPS(lipopolysaccharide)はB細胞を活性化するマイトジェンで、
PWM(pokeweed mitogen)はT細胞とB細胞の両方を活性化するマイトジェンとされている。
マイトジェン:分裂促進因子

答え:5

80 主要組織適合性遺伝子複合体〈MHC〉でクラスⅡ抗原を発現するのはどれか。

  1. 血小板
  2. 好中球
  3. NK細胞
  4. 神経細胞
  5. マクロファージ

解説:MHC(主要組織適合性遺伝子複合体)についての問題です。

  • MHCクラスⅠ分子は、全ての有核細胞および血小板に発現している。
  • クラスⅡ分子は樹状細胞、マクロファージ、B細胞などの抗原提示細胞に限られる。

さらにまとめたものを下記に示します。

上記まとめは過去問で使ったものですが、もちろん今回の問題にも対応できます。出題される問題もパターンがあり、ある程度過去問をおさらいすることで対応可能となる問題も多いです。
免疫は覚える内容が複雑な気がして大変ですが、暗記の多い分野でもあるので繰り返し解いて覚えていきましょう。

答え:5

81 抗原と抗体の結合で誤っているのはどれか。

  1. 共有結合
  2. 水素結合
  3. 疎水結合
  4. 分子間力
  5. イオン結合

解説:最近では同様の問題が第68回PMでも出題されています。その時の解説を流用しつつ進めていきます。
抗原抗体反応は4つの結合が起きています。

★抗原抗体反応における結合

  • イオン結合
    ⇒正負の電荷を持つイオン間のクーロン力による化学結合
  • 水素結合
    ⇒二つの電気陰性度の強い原子の間に水素原子が入ってできる結合
    水素は+に帯電しているが、-に帯電しているF、O、Nなどと結合する
  • ファンデルワールス力(分子間力)
    ⇒分子間にはたらく弱い引力により、蛋白質の分子の表面同士が密着する
  • 疎水結合
    ⇒タンパク質分子中の非極性側鎖が水中において水分子との接触を避けて互いに集合しようとする相互作用のことで、タンパク質の立体構造の形成に最も重要

★抗原抗体反応に影響する因子

  • 温度
  • 親和性

※共有結合
⇒原子間でお互いに電子を共有する強固な結合のこと。
抗原抗体反応の結合は「イオン、水素、分子、疎水」であることを覚えてしまいましょう。

答え:1

82 温度依存性蛋白はどれか。2つ選べ。

  1. ヘモペキシン
  2. ハプトグロビン
  3. パイログロブリン
  4. Bence Jones蛋白
  5. α1-アンチトリプシン

解説:反応温度により性状が変化する異常蛋白で、主として免疫グロブリンの一種。主に下記三種類が知られている。

  • クリオグロブリン
    ⇒血清の冷蔵保存で白濁やゲル化し、37℃で再溶解する可逆的変化を示す
  • パイログロブリン
    ⇒血清の56℃、30分加温で白濁やゲル化を示し、100℃でも再溶解しない不可逆性蛋白の性質を持つ
  • BJP(Bence Jones protein)
    Bence Jones蛋白は56~60℃で混濁し、100℃付近で再溶解する熱凝固性を示す

その他選択肢を見てみます。

  • ヘモペキシンは、赤血球崩壊によって遊離したヘムを結合輸送する血清蛋白で温度依存性蛋白ではない。
  • ハプトグロビンは、主に肝臓で合成される蛋白で、ヘモグロビンの担体として鉄の喪失を防ぎ、その再利用に重要な役割を持つ。
  • α₁-アンチトリプシン(α₁-AT)はプロテアーゼを阻害する蛋白で、トリプシンの作用を抑制する蛋白であり、温度依存性蛋白ではない。

ルーチンでも検体の取り扱い(保存)が重要な項目なので、しっかり覚えておきましょう。

答え:3と4

83 冷蔵保存した全血検体で検査可能なのはどれか。

  1. 寒冷凝集反応
  2. HBs抗体検査
  3. クリオグロブリン検査
  4. 直接抗グロブリン試験
  5. Donath-Landsteiner反応

解説:こちらは検体の保存(温度)による影響を問う問題です。
選択肢を順にみていきます。

  • 寒冷凝集反応
    ⇒血清分離までは37℃で保存する(最低でも20℃以上)
    20℃以下では寒冷凝集素は自 己の血球と結合し凝集素価が低下する
  • HBs抗体検査
    ⇒全血で冷蔵保存したとしても影響は特になし
  • クリオグロブリン検査
    ⇒血清分離までは37℃で保存する(最低でも20℃以上)
    血液を体温より低い温度に放置すると凝固したりゲル化し、37℃に加温すると再び溶解する蛋白質
  • 直接抗グロブリン試験
    ⇒体内で赤血球にIgG抗体や補体の感作を確認する検査であるので、寒冷凝集素などが採血後に血球に付着しないように37℃での保存が望ましい
  • Donath-Landsteiner反応
    ⇒Donath-Landsteiner 抗体は、低温で血球に結合して温度上昇により補体を活性化して溶血を起こすので採血後37℃で保存が望ましい

免疫系の反応を示すような検査は要注意です。肝炎抗体の検査は、基本的に常識的な範囲であれば、温度が問題となる検査はないと思います。

答え:2

84 免疫グロブリンで正しいのはどれか。

  1. IgAは4つのCHドメインを持つ。
  2. IgDは胎盤通過性を持つ。
  3. IgEは分子量が最も大きい。
  4. IgGには2つのサブクラスが存在する。
  5. IgMは補体の古典経路を活性化する。

解説:免疫グロブリンの構造などを聞いている問題です。こちらもよく見る問題です。
選択肢を正しく直してまとめます。

  • IgG、A、DはCH1~3の3つのCHドメインを持つ。
    IgM、IgEはCH1~CH4の4つのドメインを持つ。
  • IgGは胎盤通過性を持つ。
  • IgMは分子量が最も大きい。
  • IgGには4つのサブクラスが存在する。
    IgA4には2つのサブクラスが存在する。
  • IgMは補体の古典経路を活性化する。

第68回AMの免疫学にも出題されており、その時に使ったのがこちらの表です。

免疫グロブリンまとめ

★IgG

  • 分子量150000
  • 1量体
  • H(Heavy)鎖:γ
  • L(Light)鎖:λ、κ
  • サブクラス:IgG1~4
  • 定常部ドメイン数3
  • 基準値:870~1700 mg/dL
  • 胎盤通過性あり
  • 補体活性化能あり(IgG4のみ無し)
  • オプソニン作用あり
  • 血中半減期が長い
  • 二次免疫応答のメインとなる

★IgA

  • 分子量:1量体は170000、分泌体は320000
  • 1量体、分泌体は2量体
  • 2量体はJ鎖ペプチドをもつ
  • H鎖:α
  • L鎖:λ、κ
  • サブクラスIgA1~2
  • 定常部ドメイン数3
  • 基準値100~400 mg/dL
  • 粘液中に含まれる抗体

★IgM

  • 分子量90000
  • 5量体
  • J鎖ペプチドあり
  • H鎖:μ
  • L鎖:λ、κ
  • サブクラス:無し
  • 定常部ドメイン数:4
  • 基準値:35~250 mg/dL(女性の方が高い)
  • 補体活性化能:最も高い(古典経路を活性化する)
  • 感染後最も早く出現する抗体
  • 一次免疫応答のメインとなる
  • 血中半減期は短い

★IgE

  • 分子量:200000
  • 1量体
  • H鎖:ε
  • L鎖:λ、κ
  • サブクラス:無し
  • 定常部ドメイン数:4
  • Ⅰ型アレルギーに関与

SAI-LABO第68回AM免疫解説より

答え:5

85 補体系の検査結果を以下に示す。考えられるのはどれか。

  1. 関節リウマチ
  2. 膜性増殖性糸球体腎炎
  3. 全身性エリテマトーデス
  4. 溶連菌感染後急性糸球体腎炎
  5. 遺伝性血管性浮腫〈遺伝性血管神経性浮腫〉

解説:補体項目の検査データから疾患を推察する問題で、かなり難しいと思います。選択肢の疾患と補体のデータをまとめてみましたので、覚えていきましょう。
この問題では「C1-インヒビターの低下=遺伝性血管性浮腫」という事さえ知っておけば良いのですが、他の選択肢も見ていく必要はあるので、理解しておきましょう。

  • 補体系は炎症マーカーであり、感染症や炎症性疾患ではCH50が高値となります。
  • CH50が異常低値を示しC3、C4がともに正常であった場合は、採血後の低温における補体の活性化(cold activation)の可能性がある。
  • C1qは補体の古典的経路の最初の成分。
    IgMやIgGの抗原分子のFc部分に補体成分C1qが結合し、C1qはC1rおよびC1sと複合体を作り活性が始まる。
疾患 CH50 C3 C4 C1-INH
関節リウマチ 増加 増加 増加
悪性関節リウマチ 低下 低下 低下
肝硬変 低下 低下 低下
膜性増殖性糸球体腎炎 低下 低下 正常
全身性エリテマトーデス 低下 低下 低下
溶連菌感染後急性糸球体腎炎 低下 低下 低下
遺伝性血管性浮腫 低下 正常 低下 量の低下Ⅰ型
活性の低下Ⅱ型
正常なものⅢ型

遺伝性血管性浮腫はⅠ型~Ⅲ型まであり、C1-インヒビターが低下を示すのはⅠ型もしくはⅡ型とされている。

答え:5

86 ABO亜型で正しいのはどれか。

  1. 後天性の変化である。
  2. ABO抗原が発現していない。
  3. 遺伝子関連検査を必要とする。
  4. 日本人ではBm型が最も多い。
  5. 体液にABO型物質を分泌しない。

解説:まず前提にABO亜型の簡単な概念を説明します。

  • ABO亜型とは、赤血球上の血液型抗原(A、B、H)の量が遺伝的に少なくなることによっていくつかの亜型に分類される。
    ルーチンでABO血液型判定時にmf(部分凝集)が見られたり、オモテ・ウラの不一致が見られることにより発見される。

選択肢を見ていきます。

  • 後天性の変化である。
    ⇒遺伝的に赤血球上の血液型抗原(A、B、H)の量が少なくなっているので先天的な変化によるもの
  • ABO抗原が発現していない。
    ⇒発現していないではなく、少なくなっている
  • 遺伝子関連検査を必要とする。
    ⇒必ずしも必要とはしない。Bm型の確認試験では抗B抗体を一度反応(吸着)させ、
    熱や酸などで再度抗体を外す「モノクローナル抗 B 吸着解離試験」で確認する
  • 日本人ではBm型が最も多い。
    ⇒正しい。亜型の約半数を占めると言われている
  • 体液にABO型物質を分泌しない。
    ⇒ABO型物質は分泌されている

ABO亜型はA、B抗原の発現量が少ない。
日本で最も多いBm:ボンベイ型(B型の亜型)はH抗原を発現していないため、
オモテ試験ではO型と判定されてしまう。

答え:4

87 タイプⅡのクリオグロブリンが高頻度に認められる疾患はどれか。

  1. HIV感染症
  2. HCV感染症
  3. 多発性骨髄腫
  4. 原発性胆汁性胆管炎
  5. 抗リン脂質抗体症候群

解説:クリオグロブリンは3つのタイプに分類できます。
こういった問題は、解いて覚えてしまっておいた方が楽だと思います。

★クリオグロブリンの分類

  • I型:単クローン性免疫グロブリン(10~15%)
    ⇒多発性骨髄腫(MM)、マクログロブリン血症
  • II型:多クローン性IgGと単クローン性IgM(50~60%)
    ⇒大半がC型肝炎(HCV)
  • III型:多クローン性IgGと多クローン性IgM(30~40%)
    ⇒全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの膠原病や、
    悪性リンパ腫など
  • 多発性骨髄腫ではモノクローナルな免疫グロブリンが増殖したM蛋白が認められる
  • 原発性胆汁性胆管炎ではIgM増加、抗ミトコンドリア抗体が陽性となる
  • 抗リン脂質抗体症候群は抗カルジオリピン抗体、抗β2GPI抗体(β2-グリコプロテインI)、ループスアンチコアグラント(自己抗体で、抗リン脂質抗体のひとつ)が陽性となる

答え:2

88 Ⅰ型アレルギーが関与するのはどれか。2つ選べ。

  1. 花粉症
  2. 関節リウマチ
  3. 接触性皮膚炎
  4. アナフィラキシーショック
  5. 特発性血小板減少性紫斑病

解説:アレルギーは下記のようにⅠ~Ⅳ型の4種類に大別されています。

アレルギーはまだ、不明な事も多く原因がわかっているものを選択肢を含めて選別してまとめました。
試験では上記の内容を把握しておけばひとまずは大丈夫なはずです。
Ⅰ型は、花粉症や、アナフィラキシーであり日常的によく耳にするアレルギー疾患です。

答え:1と4

89 Rh血液型で正しいのはどれか。

  1. 検査(試験管法)は37℃で行う。
  2. 日本人におけるRhD陰性頻度は10%である。
  3. RhD陰性の確認は直接抗グロブリン試験で行う。
  4. RhD陰性患者の赤血球輸血にはRhD陽性血を使用する。
  5. 日本人において検出される不規則抗体で最も頻度が高いのは抗Eである。

解説:難しいようで、選択肢をよく見てみるとおかしなことをたくさん書いています笑
選択肢を正しい形に直してまとめます。

  • 検査(試験管法)は室温で行う(20~25℃程度)
    ⇒血液型検査においてはカラム凝集法でも室温で行います。
  • 日本人におけるRhD陰性頻度は0.5%である。
  • RhD陰性の確認は間接抗グロブリン試験で行う。
  • RhD陰性患者の赤血球輸血にはRhD陰性血を使用する。
  • 日本人において検出される不規則抗体で最も頻度が高いのは抗Eである。

血液型などの輸血系問題もほぼ毎年、形式を若干変えて出題されているようにも思えます。
ややこしく、理解が大変な箇所も多くありますが、実際にルーチンで行う時には必ず役に立つ知識になるので、勉強しておきましょう。

知識が曖昧な状態で輸血検査をするのは、怖いし危険です。

答え:5

臨床検査技師国家試験の過去問解説のまとめページです

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