過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
第69回病理組織細胞学PM45~58
問題 45 粘膜筋板を有する臓器はどれか
- 唾液腺
- 咽 頭
- 食 道
- 膵 臓
- 胆 囊
解説:粘膜筋板を有する臓器は決まっているため、知っていれば解ける問題です。
消化管の一般構造と機能に関する出題で、内腔側より
「粘膜(粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下組織)、筋層、漿膜」
と配列している
★粘膜筋板を有する臓器(消化管のみ)
- 食道(1層)
- 小腸(2層)
- 大腸(2層)
答え:3
問題 46 Bethesda システムの判定で陰性はどれか
- ASC-US
- HSIL
- LSIL
- NILM
- SCC
解説:べセスタシステムのまとめを貼っておきます。
表上部がわかりにくいかもですが、適正以外は要再検査という意味です。
クラスⅡまでは陰性(NILM)です。
答え:4
問題 47 親水性封入剤を使用する染色法はどれか
- orcein 染色
- PTAH 染色
- Bodian 染色
- oil red O 染色
- Ziehl-Neelsen 染色
解説:親水性封入体を使用する染色とは、言い換えるとアルコールで脱水できない脂肪染色が対象となります。
★脂肪染色
- oil red O染色(中性脂肪:赤色)
- SudanⅢ染色(中性脂肪:橙赤色)
- Sudan black B染色(中性脂肪、リン脂質、脂肪酸:黒色)
- Nile blue 染色(中性脂肪:赤色、リン脂質、脂肪酸:青色)
答え:4
問題 48 透過型電子顕微鏡写真(別冊 No.7)を別に示す
矢印で示す細胞小器官はどれか
- ゴルジ体
- 粗面小胞体
- 滑面小胞体
- リソソーム
- ミトコンドリア
解説:細胞模式図は過去問にて何度か出題されていましたが、電子顕微鏡図のパターンです。
イラストと乖離があるので、写真だと何を聞いているかやや戸惑いましたが、下の図から答えは1つしかないでしょう。
詳しく所見を書くのであれば円柱状の断面が観察され、外膜と内膜の二重膜からなり、内膜は内腔に向かってクリステとして突出していることからミトコンドリアの電子顕微鏡像だと言える。
答え:5
問題 49 門脈圧亢進症で起こりにくいのはどれか
- 脾 腫
- 食道静脈瘤
- 下大静脈のうっ血
- 直腸静脈からの出血
- 腹壁皮下静脈の怒張
解説:病態を知っていないと解けない難しい問題と思います。
★門脈圧亢進症とは
なんらかの原因で門脈の血流が滞り、その血圧が上昇することによって生じるさまざまな症状を示す病態で、肝硬変をはじめ、以下のような様々な疾患で起こりうる。
- 肝硬変
- 脾腫
- 食道静脈瘤
- 直腸静脈からの出血
- 腹壁皮下静脈の怒張
下大静脈のうっ血はうっ血性心不全などが原因となり、十分な量の血液を全身に送れなくなり、呼吸困難や浮腫を生じる。
答え:3
問題 50 ヘモジデリンを染色する方法はどれか
- Kossa 反応
- Nissl 染色
- Grocott 染色
- Grimelius 染色
- Berlin blue 染色
解説:設問の染色対象をまとめました。
- kossa反応:カルシウム
- Nissl染色:神経細胞(ニッスル小体)
- Grocott染色:真菌(放線菌やNocardia属菌、Pneumocystis jiroveciiなどにも有効)
- Grimelius染色:神経内分泌細胞
- Berlin blue染色:ヘモジデリン(Fe3+)
答え:5
問題 51 Papanicolaou 染色と比較した Giemsa 染色の特徴として正しいのはどれか
- 核小体が赤染する
- 細胞が大きく見える
- 細胞が剝がれやすい
- 95%エタノールで固定する
- 角化細胞を染め分けられる
解説:設問とパパニコロウ染色とギムザ染色のどちらに該当するかまとめてみました。
- 核小体が赤染する⇒パパニコロウ染色
- 細胞が大きく見える⇒ギムザ染色
- 細胞が剥がれやすい⇒パパニコロウ染色
- 95%エタノールで固定する⇒パパニコロウ染色
- 角化細胞を染め分けれる⇒パパニコロウ染色
パパニコロウ染色では核小体が赤染し目立ち、角化細胞もその他の細胞と染め分けられるため、検索しやすい。
しかしパパニコロウ染色標本はギムザ染色と異なり、95%エタノールを用いた湿固定法を用いるため固定操作時に細胞が剝がれやすい。それに対し乾燥固定を用いるギムザ染色では細胞が保持され細胞が大きく見えることからクロマチン網や細胞質顆粒の観察に優れているという特徴を持つ。
答え:2
問題 52 パラフィン包埋による標本作製時の工程で切り出しを行うのはいつか
- 固定前
- 固定後
- 脱水後
- 脱脂後
- パラフィン包埋後
解説:
★切り出しとは
病理組織標本作製のために摘出された組織を適切な大きさ、厚さに切り分けること
病理組織診断は肉眼(マクロ)所見と顕微鏡(ミクロ)所見との対比検討によりなされる。そのため固定後組織に対し病変の肉眼観察を行い、適切な部位を過不足なく切り出すことが重要となる。
答え:2
問題 53 特定の遺伝子配列を検出するのはどれか
- FISH 法
- DOPA 反応
- Feulgen 反応
- direct fast scarlet 染色
- methyl green-pyronin 染色
解説:設問を簡単に解説をつけます。
- FISH法:組織切片上に特定遺伝子配列を検出する技術で、RNA または DNA の存在をハイブリダイゼーションにより、形態像のうえで検出する
- DOPA反応:メラノサイトに存在するチロシナーゼ活性の有無を調べる方法で,間接的にメラニン産生能力を確認する
- Feulgen反応:光学顕微鏡下で DNA を観察できるようにする組織化学染色法
- direct fast scarlet 染色:congo red 染色同様にアミロイドを証明する染色法
- methyl green-pyronin 染色:DNA と RNA を染め分ける染色法で形質細胞の同定などに用いられ、多発性骨髄腫などの補助診断に用いられる
答え:1
問題 54 細胞診検査材料で乾燥固定しないのはどれか
- 髄 液
- 腹 水
- 気管支洗浄液
- 子宮頸部擦過検体
- 生検スタンプ検体
解説:
★設問のポイント
- ギムザ染色は乾燥固定で、髄液、腹水、生検スタンプ検体などを染め、気管支洗浄液はニューモシスチス・イロベチイ(ニュームシスチス肺炎:旧カリニ肺炎)の同定で重要となる。
- パパニコロウ染色は子宮頸部擦過検体を用いる
★スタンプ検体(捺印法)の手順
- 組織をピンセットでつまみ、スライドガラスにタッチする
- 軟らかく細胞成分に富む組織 → 軽く捺印する
- 硬く細胞成分の少なそうな組織 → 力を入れてしっかりと捺印する
答え:4
問 題 55 心 臓 の 内 腔 を 展 開 し た 肉 眼 写 真
( 別 冊No.8)を別に示す。枠内の名称はどれか
- 右心房
- 左心房
- 三尖弁
- 大動脈弁
- 肺動脈弁
解説:心臓の解剖を覚えておくと良いと思います。
画像を見ると、心室壁が厚く左心室と考えることができる。
左心室に関与する弁は大動脈弁と僧帽弁だが黄色丸枠内の領域に3枚の半月弁が認められることから大動脈弁と考えられる。僧帽弁は2枚の弁。
答え:4
問題 56 病理解剖において、剖検医の直接指示のもとで行う臨床検査技師の役割として適切でないのはどれか。
- 血液の採取
- 臓器の取り出し
- 開 頭
- 縫 合
- 遺族への説明
解説:知っていれば簡単ですが、知らないとどれもNGに思えそうな問題です。
★臨床検査技師が病理解剖でできること(病理医の介助業務)
- 血液の採取
- 臓器の取り出し
- 開頭
- 縫合
遺族への説明は「病理解剖報告書」を元に医師より行われる。技師はできない。
答え:5
問題 57 銀液を加温しないのはどれか。
- PAM 染色
- Grocott 染色
- 渡辺の鍍銀法
- Grimelius 染色
- Masson-Fontana 染色
解説3
★銀液を加温する染色
- PAM染色:60℃に加温したメセナミン銀を使用
- Grocott染色:60℃に加温したメセナミン銀を使用
- Grimelius染色:37℃の低濃度硝酸銀に浸銀させる
- Masson-Fontana染色:60℃のアンモニア銀で鍍銀させる
答え:3
問題 58 腫瘍と免疫組織化学的マーカーの組合せで正しいのはどれか。
- 肺 癌 エストロゲン受容体〈ER〉
- 乳 癌 CD117(c-kit)
- 消化管間質腫瘍 PSA
- 大腸癌 CEA
- B 細胞リンパ腫 AFP
解説:腫瘍マーカーの問題ですが、設問①と②はかなりマニアックな問題だと思います。
僕が技師として働いてきて様々な医師の検査オーダーを受けてきましたが、一度たりとも見たことがありません。逆に③~⑤は知らないとマズイ腫瘍マーカーです。
★設問の腫瘍マーカーと対象臓器癌
- エストロゲン受容体(ER):乳癌【マニアック】
- CD117(c-kit):消化管間質腫瘍(GIST)【マニアック】
- PSA:前立腺癌
- CEA:腺癌(大腸癌など)
- AFP:肝癌など
答え:4