尿沈渣の検査は『鏡検した細胞が何であるのか』『そのくらい出現しているか』『臨床症状と相関は取れているか』などの複合的な知識とスキルが要求されます。
初心者の頃はとにかく『正しい鑑別』ができる事が最低条件です。
正しい鑑別をするためには以下の要領が必要です。
- 細胞の鑑別知識
- 尿一般との相関関係
- 病態との相関関係
これらを習得するには、尿沈渣成分の写真(アトラス)と、それらを複合的に判断するための知識(教本)が必要です。
尿沈渣をこれから始める人に薦めたい書籍を選びましたので、紹介していきたいと思います。
無料で見れる尿沈渣アトラスはコレ
J-STAGEアトラス
日本臨床衛生検査技師会が公開しているアトラス。
無料で閲覧できるし、PDFでダウンロードもできるので非常にありがたい。
まずはこれをダウンロードし、基礎力をあげよう。
その後、参考書も用意しつつ、ひたすら鏡検を繰り返そう!
【初級者~中級者】尿沈渣のオススメの参考書3選
そこが知りたい尿沈渣
お勧め度
≪本の紹介≫
●本書は尿沈渣成分および尿中剥離細胞の鑑別のさらなる知識の習得と,EBMの確立を目的として,肉眼的臓器,組織,沈渣,電顕,免疫化学染色所見などについての情報を全頁鮮明なカラー写真を収載して提供している.
●染色法は無染色とSternheimer染色法を基本とし,ギムザ染色やパパニロウ染色等も用いながら,腎臓内科,泌尿器科臨床医のコメントを記載.この1冊で各種所見と臨床所見があわせて理解できる.≪目次≫
採尿法
1.自然尿
2.カテーテル尿
3.前立腺マッサージ後尿
4.尿路変更術後尿
5.洗浄液
6.採尿時間による尿の種類
1)早朝尿
2)随時尿3
3)蓄尿
II 尿の性状
1.尿量
1)多尿
2)乏尿
3)無尿
2.尿色調
3.混濁
III 尿沈渣標本の作製
1.標準法
2.簡易法
3.特殊法
IV 尿沈渣成分の固定および保存法
1.方法1(癌研法)
1)成分
2)調製方法
3)使用方法
2.方法2(市販尿細胞保存液・固定液)
3.方法3(電顕用固定液)
1)成分
2)調製方法
3)使用方法
V 尿沈渣成分の染色法
1.免疫組織細胞化学法
1)高感度酵素標識ポリマー法(ENVISION法)
2)蛍光抗体法
3)二重染色法
2.電顕法
1)同一試料による光顕・電顕観察用試料作製法
2)TEM試料作製方法
3)SEM試料作製方法
VI 尿沈渣成分の鏡検法と顕微鏡の取り扱い
1.鏡検法
1)鏡検
2)尿沈渣成績の記載法
2.顕微鏡の使い方
1)明視野観察用顕微鏡
VII デジタルカメラによる撮影方法と画像処理
1.市販コンパクトデジタルカメラを利用した顕微鏡写真の撮影方法
1)デジタルカメラとは
2)撮影に適したデジタルカメラ
3)撮影方法
2.Microsoft Photo Editorを使用した簡単な画像処理
1)明るさ,コントラスト,ガンマ値の変更
2)色調の変更
3)解像度の変更
4)サイズの変更
5)画像のトリミング
VIII 尿沈渣検査の精度管理
1.内部精度管理
2.外部精度管理
IX 腎・尿路系の解剖
1.腎臓
2.泌尿生殖器
X 各種尿沈渣成分の鑑別
血球類
1.赤血球
2.白血球
3.臨床医からの一言
上皮細胞類
1.尿細管上皮細胞
2.移行上皮細胞(尿路上皮細胞)
3.扁平上皮細胞
4.円柱上皮細胞
5.封入体細胞
6.異型細胞
A.異型細胞を検出するための有力所見
B.組織由来別の異型細胞の特徴
1)移行上皮癌細胞(尿路上皮癌細胞)
2)扁平上皮癌細胞
3)腺癌細胞
C.ワンポイントアドバイス
7.その他の細胞
1)ヒトパピローマウイルス感染細胞
2)ヒトポリオーマウイルス感染細胞
8.臨床医からの一言
円柱類
1.起源(由来)
2.機能
3.円柱の判別基準
4.基本円柱
1)硝子円柱
2)上皮円柱
3)顆粒円柱
4)ろう様円柱
5)脂肪円柱
6)赤血球円柱
7)白血球円柱
5.その他の円柱
1)空胞変性円柱
2)ヘモジデリン円柱
3)ミオグロビン円柱
4)Bence Jonesタンパク円柱
5)塩類・結晶円柱
6)無染円柱
6.臨床医からの一言
結晶・塩類
1.起源(由来)
2.通常結晶
1)無晶性塩類(尿酸塩,リン酸塩)
2)シュウ酸カルシウム結晶
3)尿酸結晶
4)リン酸カルシウム結晶
5)リン酸アンモニウムマグネシウム結晶
6)尿酸アンモニウム結晶
7)炭酸カルシウム結晶
3.異常結晶
1)ビリルビン結晶
2)チロシン結晶
3)ロイシン結晶
4)コレステロール結晶
5)シスチン結晶
6)2,8ジヒドロキシアデニン結晶
7)薬剤結晶
4.臨床医からの一言
微生物・寄生虫類
1.細菌
2.真菌
3.原虫(トリコモナス)
4.寄生虫(ビルハルツ住血吸虫)
5.臨床医からの一言
その他
1.ヘモジデリン顆粒
2.mulberry cell,mulberry body
3.精液成分と性腺分泌物
4.糞便,繊維,花粉,ダニ
5.臨床医からの一言医歯薬出版株式会社より引用
実力STEP UP問題形式による尿沈渣の鑑別
お勧め度
≪本の紹介≫
●鮮明なカラー写真を収載してまとめた問題集形式による尿沈渣鑑別の成書.「基礎編」と「問題編」から構成されており,基礎編では各尿中成分(細胞)の鑑別基準とその解説.問題編では正常細胞同士の鑑別,正常細胞と異型細胞の鑑別・異型細胞同士の鑑別などを収載.問題形式にバリエーションをもたせ,ステップを追って鑑別内容のレベルがあがるように編集した.
●「基礎編」―「色調」「染色性」「表面構造」「辺縁構造」など尿沈渣成分の6つの見方に基づいて設定された54の鑑別基準1・2をしっかり身につけよう.
●「問題編」―4つの形式によって作られた約90コの問題に挑戦してみよう.問題を解決しながら繰り返し「基準1・2」を学び、沈渣像を目に焼き付けることによって鑑別能力は確実に向上! 問題ごとにHINT(ヒント)やKEYPOINT(キーポイント)も記載.≪目次≫
序文
本書をじょうずに活用するために
A.基礎編 各種尿沈渣成分の鑑別基準
I.色調の見方
1.灰色調
2.灰白色調
3.黄色調
4.黒褐色調
5.濃黄色調
6.茶褐色調
II.染色性と染色態度の見方
1.染色性良好・赤紫色調
2.染色性良好・青紫色調または濃赤紫色調
3.染色性良好・赤茶色調
4.染色性不良・不染~淡桃色調
III.表面構造の見方
1.均質状
2.漆喰状
3.綿菓子状
4.不規則型顆粒状
5.微細顆粒状
6.顆粒成分不規則分布状
7.円形・類円形型顆粒状
8.レース網目状
9.細胞質が薄くしわ状・ひだ状
10.細胞質が厚くひだ状・くぼみ状
IV.辺縁構造の見方
1.曲線状 (1)明瞭 (2)やや不明瞭~不明瞭
2.角 状 (1)明瞭 (2)不明瞭
3.鋸歯状 (1)明瞭 (2)不明瞭
V.細胞集塊の見方
1.細胞境界 (1)明瞭 (2)不明瞭
2.透明感 (1)弱い~なし (2)強い
3.結合性 (1)あり (2)なし
4.辺縁構造 (1)明瞭 (2)不明瞭
5.細胞配列 (1)多列上皮様配列 (2)渦巻状配列(真珠形成) (3)乳頭状配列 (4)シート状(蜂巣状)配列 (5)シート状(敷石状)配列 (6)柵状配列 (7)花冠(放射)状配列 (8)管腔形成 (9)紡錘状配列 (10)束状配列
VI.特殊な細胞
1.線毛を有する上皮細胞
2.リポフスチン顆粒含有細胞
3.異物含有細胞
4.白血球浸潤細胞
5.結晶・塩類付着細胞
6.細胞質内封入体細胞
7.コイロサイト
8.核内封入体細胞
9.相互封入像
10.層状(輪状)構造
B.問題編 実践! 実力STEP UP
I.基礎力を確かめる 数は何コ?(Q1~Q4) 34~37
II.比較でみる 答えはどっち?
1.無染色(Q1~Q30) 38~67
2.S染色(Q1~Q30) 68~97
III.総合力を試すポイントはどこ?
1.無染色(Q1~Q5) 98~107
2.S染色(Q1~Q5) 108~117
IV.尿沈渣所見から考える 病態は何?(症例1~17) 118~151・尿中色素とは
・生細胞・新鮮細胞・死細胞・崩壊細胞
・ヘモジデリン顆粒と尿細管障害との関連性は?
・大食細胞の上皮様変化って何?
・角化とは
・膨化状って何?
・悪性細胞と正常細胞(または良性細胞)との関連性は?
・尿細管上皮細胞を型別に分ける意義は?医歯薬出版株式会社より引用
ポケットマニュアル尿沈渣
お勧め度
≪目次≫
第1版の序
I ここがポイント尿沈渣
1 尿沈渣をみるにあたって
1 医師が尿沈渣検査を依頼する目的
2 尿沈渣検査に携わる技師の心構え
3 尿沈渣をみるうえで参考となる患者情報
4 尿沈渣検査上達法
5 尿定性検査異常と主な疾患
6 尿検査異常から腎・尿細管疾患診断へのアプローチ
7 尿沈渣異常と生化学・免疫血清検査による診断へのアプローチ
8 顕微鏡の正しいセッティングの修得
(1)コンデンサーの位置
(2)コンデンサーレンズの開口絞りの調整法
(3)フィルターによる色の調整法(色の混合)
2 特殊な採尿法と尿沈渣所見
1 カテーテル(またはステント)留置尿
(1)カテーテル留置尿(バルンカテーテル)
(2)尿管ステント留置尿(ダブルJまたはD-Jカテーテル)
2 尿路変更術後尿
(1)回腸(または結腸)導管術後尿
(2)自己導入型新膀胱形成術後尿
3 尿沈渣標本作製
1 作製条件
2 尿沈渣染色法
(1)S(Sternheimer)染色
(2)ズダン(Sudan)III染色
(3)ベルリン青(Berlin blue)染色
(4)ルゴール(Lugol)染色
(5)P-B(Prescott-Brodie)染色
(6)ハンセル(Hansel)染色
(7)各種脂質の証明法
3 保存方法およびその標本作製法(がん研八木法)
(1)保存液の試薬
(2)保存液の作製法
(3)保存方法
(4)無染色標本作製法
(5)S染色標本の作製法-1
(6)S染色標本の作製法-2
(7)標本作製例
4 各種尿沈渣成分の鑑別
1 赤血球
(1)赤血球の鑑別ポイント
(2)血尿をきたす疾患
(3)赤血球の由来と臨床的意義
(4)非糸球体型赤血球と糸球体型赤血球の分類
(5)糸球体型赤血球の形態と出現機序
(6)ネフロン内における浸透圧変化
2 白血球
3 円柱類
(1)円柱の形成
(2)円柱の形成過程
(3)円柱の種類と臨床的意義
(4)円柱の判別基準
(5)円柱の分類と報告の仕方
4 上皮細胞類
(1)泌尿・生殖器系の解剖と出現細胞
(2)上皮細胞類・悪性細胞類の関連性
(3)上皮細胞類の鑑別ポイント
(4)とくに重要な鑑別ポイント
(5)各種上皮細胞類の形態学的特徴および臨床的背景
5 悪性細胞
(1)悪性細胞の形態学的特徴および出現パターン
(2)尿中悪性細胞の検出ポイント
(3)各種悪性細胞の形態学的特徴および臨床的背景
6 結晶・塩類
(1)結晶・塩類の形態
(2)結晶・塩類の鑑別方法
5 尿沈渣成分の正常とみなす基準
6 報告の仕方およびコメントの記載例
1 赤血球
2 白血球
3 円柱
4 上皮細胞類
(1)大型・多核の尿路上皮細胞
(2)集塊状に出現した尿路上皮細胞
(3)オタマジャクシ状や線維状などの奇妙な形状を示した扁平上皮細胞
(4)線維型やヘビ型などの形状を示した特殊型尿細管上皮細胞が,孤立散在性または結晶・塩類円柱に封入・付着して認められた場合
(5)円形・類円形型やオタマジャクシ型などの特殊型尿細管上皮細胞が孤立散在性または集塊状に出現した場合
(6)崩壊・変性の強い鋸歯型の尿細管上皮細胞が多数出現し,急性尿細管壊死が考えられた場合
(7)HPV感染を疑うコイロサイトが認められた場合
(8)HPoV感染を疑う細胞が認められ,円柱内にも同様の細胞が封入されていた場合
(9)HSV感染を疑う核内封入体細胞が認められ,尿路上皮由来が示唆された場合
5 悪性細胞類
II 各種尿沈渣成分の解説
1 非上皮細胞類
1 血球類
(1)赤血球
(1)非糸球体型赤血球
(2)糸球体型赤血球
(2)白血球
(1)好中球(生細胞)
(1)好中球(死細胞)
(2)好酸球
(3)リンパ球
(4)単球
2 大食細胞(1)
大食細胞(2)
2 上皮細胞類
1 基本的上皮細胞類
(1)尿細管上皮細胞(基本型)
(1)鋸歯型
(2)棘突起・アメーバ偽足型
(3)角柱・角錐台型
(2)尿細管上皮細胞(特殊型)
(1)円形・類円形型
(2)オタマジャクシ・ヘビ型
(3)線維型
(4)洋梨・紡錘型
(5)空胞変性円柱型,顆粒円柱型
(6)脂肪顆粒型
(3)尿路上皮細胞
(1)基本型
(2)大型・多核化,奇妙な形状,核異常,巨大集塊
(4)円柱上皮細胞
(1)前立腺由来
(2)子宮由来
(3)尿道由来
(4)腸上皮由来
(5)扁平上皮細胞
(1)基本型,萎縮像,錯角化
(2)大型・多核化,奇妙な形状,核異常
2 変性細胞類
(1)卵円形脂肪体
(2)細胞質内封入体細胞
(1)尿路上皮由来
(2)各種細胞由来
3 ウイルス感染細胞類
(1)HSV(単純ヘルペスウイルス)感染細胞
(2)CMV(サイトメガロウイルス)感染細胞,他
(3)HPoV(ヒトポリオーマウイルス)感染細胞
(4)HPV(ヒトパピローマウイルス)感染細胞
3 悪性細胞類
1 上皮性悪性細胞類
(1)尿路上皮癌細胞(1)
尿路上皮癌細胞(2)
(2)腺癌細胞(1)
腺癌細胞(2)
(3)扁平上皮癌細胞(1)
扁平上皮癌細胞(2)
(4)小細胞癌細胞
(5)神経芽腫(ニューロブラストーマ)細胞
(6)精上皮腫(セミノーマ)細胞
2 非上皮性悪性細胞類
(1)悪性リンパ腫細胞
(2)白血病細胞
(3)悪性黒色腫(メラノーマ)細胞
4 円柱類
1 硝子円柱
2 上皮円柱
3 顆粒円柱
4 ろう様円柱
5 脂肪円柱
6 赤血球円柱
7 白血球円柱
8 空胞変性円柱
9 塩類・結晶円柱
10 大食細胞円柱
11 BJ(Bence Jones)蛋白円柱
12 フィブリン円柱
5 微生物・寄生虫類
1 微生物類
2 寄生虫類
6 塩類・結晶類
1 通常塩類,薬剤を疑う塩類
2 通常結晶類
3 異常結晶類
7 その他
1 ヘモジデリン顆粒,マルベリー小体
2 扁平上皮の脱核,特殊粘液体
3 でんぷん粒,類でんぷん小体,花粉,糞便
III 実践!比較でみる尿沈渣成分の鑑別法
どちらが糸球体型赤血球?もう一方は?
どちらが上皮円柱?もう一方は?
どちらが円柱?もう一方は?
どちらが尿路上皮細胞?もう一方は?
どちらが尿細管上皮細胞?もう一方は?
どちらが扁平上皮細胞?もう一方は?
どちらが白血球?もう一方は?
どちらが悪性細胞?もう一方は?
どちらが大食細胞?もう一方は?
どちらがウイルス感染細胞?もう一方は?
IV 尿沈渣像から考えられる病態は?医歯薬出版株式会社より引用
まとめ(参考書はコレだけでOK)
紹介した3つの参考書とアトラスを駆使すれば、ルーチンで困る事はほとんどないでしょう。
後はひたすら経験を積んでいくだけです。
形態学はやはり経験と知識でレベルアップできるので、僕もまだまだ未熟者ですが、日々鏡検を繰り返しています。
勉強会も大事で、意外と知らなかったことを発見出来たりもします。
尿沈渣の勉強会は結構レアな気がしますので、見付けたら積極的に参加するようにしましょう!
最後に一番オススメな参考書をズバリいいます!
初心者に一番オススメなものは僕的にはyはりこれですね。
では、良い沈査ライフを!