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【臨床検査技師国家試験】第70回PM臨床検査総論【解説】

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国家試験臨床検査総論PM問1~10です。

過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html

臨床検査技師国家試験の過去問解説のまとめページです

臨床検査技師国家試験解説集 

第70回臨床検査総論PM問1~10

1 40歳女性。生しらうおの食歴がある。皮膚病変(別冊No. 1)を別に示す。考えられる寄生虫はどれか。

  1. 鞭 虫
  2. 肝吸虫
  3. 顎口虫
  4. 東洋毛様線虫
  5. 日本海裂頭条虫

解説:写真を見ると、皮膚にみみずばれのような皮膚爬行症(ひふはこうしょう)が認められます。
これは皮膚皮膚幼線虫移行症が疑わしく、選択肢の中からは「顎口虫」が鑑別になります。

★顎口虫(線虫の一種)の中間宿主(幼虫が生育)

ヘビやカエルのほか、ドジョウ、ナマズ、ウグイ、ヤマメなどの淡水魚

★顎口虫の終宿主

イヌ、ネコ、ブタ、イノシシ、イタチなど

なましらうおの食歴からも顎口虫が疑われる。
顎口虫はヒト体内では成虫に発育せずに、幼虫が皮下を移行する。

顎口虫は線虫の一種だが、東洋毛様線虫は小腸の基部などに寄生する。

答え:3

2 病原体と染色法の組合せで正しいのはどれか。

  1. マラリア   Kinyoun抗酸染色
  2. 赤痢アメーバ   Hematoxylin染色
  3. トキソプラズマ   墨汁染色
  4. リーシュマニア   Kohn染色
  5. クリプトスポリジウム   Giemsa染色

解説:各種病原体と、適した染色法の組み合わせをまとめました。

  • マラリア(マラリア原虫)
    ⇒ Giemsa染色
  • 赤痢アメーバ(原生生物)
    ⇒ ハイデンハイン鉄ヘマトキシリン(HIH)染色、ヨード染色、Kohn染色(糞便の塗抹標本)
    栄養型はGiemsa染色でもよく染色されるが、嚢子は染色されにくい
  • トキソプラズマ(トキソプラズマ原虫)
    ⇒ Giemsa染色
  • リーシュマニア(寄生虫)
    ⇒ Giemsa染色
  • クリプトスポリジウム(胞子虫類に属する原虫)
    ⇒ Kinyoun抗酸染色

ギムザ染色は優秀ですが、それでも染めることが難しい病原体を中心に覚えた方がよさそうです。

答え:2

3 囊虫症をきたすのはどれか。

  1. 多包条虫
  2. 単包条虫
  3. 無鉤条虫
  4. 有鉤条虫
  5. 日本海裂頭条虫

解説:嚢虫症についてと、選択肢の寄生虫を見ていきます。

  • 嚢虫症は、条虫卵を摂取した結果、囊虫によって引き起こされる組織の感染症のこと。
  • 無鉤条虫Taenia.saginataではなく、有鉤条虫Taenia soliumの囊虫は人間に感染する。
  • 有鉤条虫はヒトを終宿主として成虫が寄生するが、本来ブタが中間宿主となるところを、虫卵の経口摂取によりヒトも中間宿主となる。この場合が有鉤嚢虫症と呼ばれる。
  • エキノコックス(多包条虫、単包条虫)も中間宿主でヒトに感染するが、これは包虫です。
  • 無鉤条虫、日本海裂頭条虫は成虫のみがヒトに寄生する。

答え:4

4 パニック値で誤っているのはどれか。

  1. 基準は施設ごとに異なる。
  2. 生理機能検査が含まれる。
  3. 対応不可能な値のことである。
  4. 生命に危険がある値のことである。
  5. 報告方法はあらかじめ取り決めをしておく。

解説:パニック値の定義は以下の通りです。

★パニック値の定義

「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値」で、直ちに治療を開始すれば救命しうるが、その把握は臨床的な診察だけでは困難で、検査によってのみ可能

選択肢を見ていきます。

  • 基準は施設ごとに異なる。
    ⇒正しい。大体はどこの施設でも同じであるが、微妙に異なる場合もある。
  • 生理機能検査が含まれる。
    ⇒正しい。例えば心電図で心室頻拍(VT)などがあった場合は直ちに医師に報告する。
  • 対応不可能な値のことである。
    ⇒誤り。直ちに対応する。
  • 生命に危険がある値のことである。
    ⇒正しい。生命に危険があるため、直ちに医師に報告し、治療を開始する。
  • 報告方法はあらかじめ取り決めをしておく。
    ⇒正しい。報告するDr.であったり、電話報告や紙報告など様々だが、予め取り決めをすることでスムーズに報告ができる。

答え:3

5 病院内において不適切な行為はどれか。

  1. 診療放射線技師が腹部超音波検査を行った。
  2. 倫理委員会の承認を受けた研究に残余検体を使用した。
  3. 採血を行った際、患者の氏名に加えて生年月日を尋ねた。
  4. ベッドサイド検査の際、患者確認のために患者情報をプリントアウトして持参した。
  5. 医師の電話指示により、臨床検査技師が医師名で電子カルテを開いて検査オーダーを入力した。

解説:自分のルーチンに置き換えて考えて見ると、不適切なことあるっけ?と不思議に思った問題です。笑
選択肢を順にみていきます。

  • 診療放射線技師が腹部超音波検査を行った。
    ⇒適切。放射線技師は解剖に強く、腹部エコーなどを兼任している施設も多い。
  • 倫理委員会の承認を受けた研究に残余検体を使用した。
    ⇒臨床検査を終了した残余検体は、重要な医学情報源であり、これを適切に利活用して臨床検査医学を推進し、国民の医療福祉・健康社会の向上に尽くすことは、「臨床検査に携わる医療人の重要な務め」とされている。
  • 採血を行った際、患者の氏名に加えて生年月日を尋ねた。
    ⇒患者誤認防止の基本であり、確認は必須。
  • ベッドサイド検査の際、患者確認のために患者情報をプリントアウトして持参した。
    ⇒自身で名乗れない患者さんもいるので、ネームバンドと照らし合わせて確認をするために持参することもある。
  • 医師の電話指示により、臨床検査技師が医師名で電子カルテを開いて検査オーダーを入力した。
    ⇒不適切。医師の電子カルテの代行入力が認められているのは医師事務作業補助者のみ。
    (不正アクセス禁止法)

答え:5

6 尿試験紙による尿蛋白検査で正しいのはどれか。

  1. 感度は50-100mg/dLである。
  2. アスコルビン酸の影響を受ける。
  3. 強アルカリ尿では偽陽性となる。
  4. 蛋白の種類で反応性に差異はない。
  5. 感度はスルホサリチル酸法より高い。

解説:尿試験紙法について、ややこしい内容で選択肢が用意されています。
正しく直してまとめます。

  • 尿試験紙の尿蛋白検査の感度は15~30 mg/dL
    試験紙によって異なるが(1+)は30 mg/dLで検出されるように各社作っている。
  • アスコルビン酸の影響は受けない
  • 強アルカリ尿では偽陽性となる。
    pH指示薬の蛋白誤差を原理としているため、pH8.0以上場合は偽陽性を示す。酢酸を加えてpHを下げた状態で再検査を行う。
  • 反応性はアルブミンと特異的に反応するため、アルブミン以外の蛋白(BJPなど)には低い
  • スルホサリチル酸法の感度は、試験紙法より高く、約5 mg/dL程度から検出可能。
    (コスパを考えると、採用している施設は限られてくるかもしれない)

答え:3

7 結核性髄膜炎でみられる脳脊髄液所見はどれか。

  1. 膿 性
  2. Cl濃度低下
  3. 蛋白細胞解離
  4. 血糖と同程度の糖濃度
  5. 好酸球優位の細胞増多

解説:以前出題された問題で作成したものを添付します。(これだけじゃカバーできていないので、また作り直しますが)

<div><img src="photo.jpg" alt="髄膜炎の所見"></div> <p>細菌性髄膜炎、真菌性髄膜炎、結核性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎、外観、糖、蛋白、圧、細胞数、細胞種類</p>

結核性髄膜炎の髄液所見は

  • 細胞数の中等度増加リンパ球優位
  • 生化学検査では、糖の低下、蛋白の増加、Clの低下

が認められる。

※膿性髄液は細菌性髄膜炎で認められる。

※蛋白細胞解離(蛋白高値、細胞数正常)は、Guillain-Barré(ギランバレー)症候群などの脱髄疾患で認められる

これらのことより、「Clの低下」が答えとなる。

答え:2

8 PCR法で正しいのはどれか。

  1. Tm値が低いと特異性が高くなる。
  2. プライマー濃度は10μM以上にする。
  3. 増幅しにくい場合にはアニーリング温度を上げる。
  4. プライマーの塩基配列はGC含有量を20%前後にする。
  5. アニーリング温度はプライマーのTm値以下に設定する。

解説:PCRの問題もCoV-19の影響か、増加しているように思えます。まずは、PCRの原理を再確認して、選択肢を正しく直し補足してまとめます。

★PCRの原理
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)

PCRにより、DNA1分子から数百万個のコピーを、短時間で増幅することが可能。
増幅は、以下の3つのを繰り返すことで行われる。

  • 変性 ⇒ 2本鎖DNAテンプレートを加熱してDNA鎖を分離させる
  • アニーリング ⇒ プライマーと呼ばれる短いDNA分子を、標的DNAの隣接領域に結合させる
  • 伸長 ⇒ DNAポリメラーゼが、各プライマーを起点に3′末方向にテンプレートの相補鎖を合成する

このサイクルを25~35回繰り返して、標的DNAの正確なコピーを指数関数的に合成する。

★PCR問題でよく見る用語説明

※Tm値:二本鎖DNAの50%が一本鎖DNAに分かれるときの温度
※プライマー:PCRで使用する鋳型DNAに相補的な塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチド (短い一本 鎖 DNA)
※アニーリング:60℃でDNAプライマーが相補的な配列で1本鎖DNAに結合すること

続いて選択肢をみていきましょう。

  • Tm値が低いと特異性は低くなる
    ⇒Tm値とは二本鎖DNAの50%が一本鎖DNAに分かれるときの温度
  • プライマー濃度は0.1~0.6μM程度にする
    ⇒高濃度では非特異的増幅が増える
  • 増幅しにくい場合はアニーリング温度を下げる
    ⇒特異性を高めるにはアニーリング温度を高くし、増幅効率を高めるにはアニーリング温度を下げる
  • プライマーの塩基配列はGC含有量を50%前後とする
    ⇒GC含量が乏しくTm値が低い場合にはアニーリング温度が低くなり増幅しやすくなるが、非特異的増幅は増える
    逆にGC含量が高い場合は、アニーリング温度が高くなるため、特異性は高まるが増幅しづらくなる
  • アニーリング温度はプライマーのTm値以下に設定する
    ⇒プライマーのTm値より1~2℃低い温度に設定する

答え:5

9 染色体で正しいのはどれか。

  1. ヒト体細胞の染色体数は23である。
  2. 染色体の両端部は動原体蛋白に覆われている。
  3. 染色体中心部のくびれたDNA領域をテロメアという。
  4. ヌクレオソームはDNA鎖とヒストン8量体から成る。
  5. 1本の染色体から複製された染色体を相同染色体と呼ぶ。

解説:染色体の特徴です。正しく直していきます。

  • 正常なヒト体細胞には23対の染色体(計46本)がある(22対の常染色体と2本の性染色体の計46本から構成される)
  • 動原体は染色体中央部にあり、複製された染色分体に結合する円盤型の蛋白質構造を持つ。
    染色体の両端部は反復DNA配列からなるテロメア構造を持つ
  • 染色体中心部のくびれたDNA領域は、動原蛋白と結合するDNA配列からなるセントロメア構造を示す
  • ヌクレオソームはDNA鎖とヒストン8量体から成る(正しい)
  • 相同染色体は、父親と母親に由来する1対の同型の染色体。
    ヒトの細胞では、XY性染色体を除く22組の相同染色体が存在する

難しく感じますが、聞いてる内容としては毎回似たような問題が多いです。発展パターンとして、これに疾患を混ぜてくることもありますが、過去問で対応可能と思いますので、十分対策をしておきましょう。

答え:4

10 尿沈渣の無染色標本(別冊No. 2)を別に示す。矢印で示した結晶はどれか。

  1. 尿 酸
  2. シスチン
  3. ビリルビン
  4. コレステロール
  5. リン酸アンモニウムマグネシウム

解説:写真を見ると、背景に細菌を認め、光沢のある西洋棺蓋状(左矢印)、封筒状結晶(右矢印)が観察される。
典型的な「リン酸アンモニウムマグネシウム結晶」です。

その特徴は一般的に結晶の色調は無色から淡黄色調であり棒状封筒状羽状などの形態はさまざまです。

他の選択肢を見ても、どれも特徴的な結晶であり中でも「シスチン結晶、コレステロール結晶、ビリルビン結晶」は「異常結晶」とされ、ルーチンで見ることはほとんどありません。
アトラス等でしっかりと復習しておきましょう。

答え:5

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