国家試験対策 PR

第71回臨床検査技師国試 午後【臨床微生物学】全選択肢の正誤理由と覚え方まとめ

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

こんにちは、臨床検査技師のさいです。

第71回臨床検査技師国家試験 午後「臨床微生物学」を1問ずつ詳しく解説まとめしています。

午後の臨床微生物学は、グラム染色や培地といった細菌検査の基本から、薬剤耐性菌のメカニズム、ウイルス・真菌の特徴、さらに感染症法まで、現場でも求められる実践的な知識が多く問われています。一見すると暗記ばかりに思えますが、「なぜこの菌にはこの培地を使うのか」「なぜこの薬が効かないのか」という理由を理解すると、点数が伸びやすいと思います。(僕は今でも苦手ですが)

この記事では、現場で働く臨床検査技師の視点も交えながら、できるだけイメージしやすい言葉で解説しました。国家試験対策はもちろん、微生物学実習や日々の復習にも活用していただければ幸いです。

※本記事の問題文および選択肢は、厚生労働省が公開している「第71回臨床検査技師国家試験問題および正答」をもとに掲載しています。

問68:消毒薬の分類と消毒レベル

【問題】
消毒薬と消毒レベルの組合せで正しいのはどれか。

  • 1.フタラール ―― 中水準
  • 2.ポビドンヨード ―― 低水準
  • 3.クロルヘキシジン ―― 高水準
  • 4.消毒用エタノール ―― 中水準
  • 5.次亜塩素酸ナトリウム ―― 低水準
タップして正答と解説を見る

正答:4

【問題の考え方】

医療現場で用いられる消毒法のレベル分類(Spaulding分類)を問う問題です。「高水準・中水準・低水準」の違いは、単なる強さではなく、「芽胞(がほう)」や「結核菌」といった抵抗性の強い微生物を殺滅できるかどうかで明確に定義されています。それぞれの消毒薬がどのレベルに該当するかを整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(分類と特徴)】

  • 1.誤り(フタラール)
    グルタラールや過酢酸と並ぶ高水準消毒薬です。十分な接触時間を確保することで芽胞にも作用します。ただし滅菌とは異なり、すべての芽胞を完全に死滅させるわけではありません。主に内視鏡などのセミクリティカル器具の消毒に用いられます。
  • 2.誤り(ポビドンヨード)
    ヨウ素を有効成分とする茶色い消毒薬です(イソジンなど)。細菌、真菌、ウイルスに有効で結核菌も殺滅できるため、中水準消毒薬に分類されます。皮膚や粘膜の消毒に広く用いられます。
  • 3.誤り(クロルヘキシジン)
    手指消毒や皮膚・粘膜の消毒に広く用いられます。多くの細菌に有効ですが、結核菌や芽胞には効果がなく、エンベロープを持たないウイルスには効果が弱いです。そのため低水準消毒薬に分類されます。
  • 4.正しい(消毒用エタノール)
    76.9〜81.4vol%のエタノール水溶液です。多くの細菌、真菌、ウイルスに有効で、結核菌も殺滅できますが、芽胞には無効です。このため、中水準消毒薬に分類されます。手指消毒や医療機器表面の消毒に広く用いられます。
  • 5.誤り(次亜塩素酸ナトリウム)
    いわゆる塩素系漂白剤(ハイターなど)です。次亜塩素酸ナトリウムは結核菌にも有効ですが、芽胞には通常の使用条件では十分な効果がないため、中水準消毒薬に分類されます。環境消毒(床、トイレ、血液汚染など)に広く使われます。

【重要】Spaulding分類(器具)まとめ

「どの器具」に「どのレベルの処理」が必要かの対応は頻出です。

器具の分類 適用される状態 必要な処理レベル 代表的な処理方法・消毒薬
クリティカル 無菌組織・血管に入るもの
(手術器具、注射針など)
滅菌 高圧蒸気滅菌、エチレンオキシドガスなど
セミクリティカル 粘膜や損傷皮膚に触れるもの
内視鏡、気管内チューブなど)
高水準消毒 フタラール、グルタラール、過酢酸
ノンクリティカル 健常な皮膚に触れるもの
(聴診器、血圧計、環境表面など)
低〜中水準消毒 エタノール、次亜塩素酸Na
クロルヘキシジン、逆性石鹸

【関連知識】各レベルと有効な微生物の関係

「芽胞」と「結核菌」がレベルを分ける境界線です。

レベル 芽胞 結核菌 一般細菌・真菌
高水準 (有効)
中水準 ×(無効) (有効)
低水準 × ×(無効)

国試で間違えやすいポイント

  • 消毒用エタノールは最強だから高水準である → 誤り(日常的に多用されますが、最も抵抗性の強い「芽胞」には効かないため、中水準止まりです。)
  • クロルヘキシジンは結核菌に有効である → 誤り(低水準なので、結核菌や芽胞には効きません。)
  • 内視鏡の消毒にはエタノールを用いる → 誤り(粘膜に直接触れるセミクリティカル器具の消毒には、「高水準」であるフタラールやグルタラールなどが必要です。)

暗記方法・覚え方のコツ

グループ分けして覚えるのが一番効率的です。

  • 「ラール」とつくものは高水準(フタラール、グルタラール)
  • アルコール、ヨード、塩素は中水準
  • クロルヘキシジン、逆性石鹸は低水準

また、芽胞まで殺せる=高水準結核菌まで殺せる=中水準一般細菌のみ=低水準という「どこまで倒せるか」の階段をイメージしておくと迷いません。

さい
さい
国家試験において、高水準・中水準・低水準の違いは「芽胞」と「結核菌」に有効かどうかで整理すると理解しやすくなります。

さいの補足:ノロウイルスとアルコールの関係

医療現場や日常生活で非常に重要な知識です。中水準消毒薬である「消毒用エタノール」は、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなど、脂質の膜(エンベロープ)を持つウイルスにはとてもよく効きます。

しかし、ノロウイルスは脂質の膜(エンベロープ)を持たないため、アルコールは十分な効果が期待できないという厄介な特徴があります。そのため、ノロウイルスに汚染された床や吐瀉物などを処理する際は、アルコールではなく、同じ中水準でもより強力な「次亜塩素酸ナトリウム」を使用するのが感染対策の鉄則です。この使い分けも重要です。

問69:喀痰のグラム染色と分離培養(インフルエンザ菌の同定)

【問題】
市中肺炎が疑われた患者の喀痰のGram染色標本(別冊No. 15)を別に示す。分離菌はヒツジ血液寒天培地に発育しなかった。考えられるのはどれか。

  • 1.Acinetobacter baumannii
  • 2.Haemophilus influenzae
  • 3.Klebsiella pneumoniae
  • 4.Moraxella catarrhalis
  • 5.Pseudomonas aeruginosa
タップして正答と解説を見る

正答:2

【問題の考え方】

この問題を解く上で最大のポイントは、喀痰のグラム染色所見と「ヒツジ血液寒天培地に発育しなかった」という培養の情報を結びつけて起炎菌を推理することです。細菌検査室で行われているリアルな同定プロセスを体験しましょう。

【所見の読解と鑑別ステップ】

ステップ1:Gram染色標本の読解
提示された画像(別冊No. 15)を詳しく見ていきます。

  • 背景の細胞:赤紫色に濃く染まる分葉核を持つ細胞は好中球(多形核白血球)であり、強い炎症反応が起きていることを示唆します。薄く広がる大きな細胞は扁平上皮細胞です。
  • 細菌の形態:好中球の周囲や視野全体に、赤色に染まる短い桿菌(あるいは球菌に近い形態)が多数観察されます。赤色であることからグラム陰性であり、大きさや形が不揃いな「多形性のグラム陰性短桿菌・球桿菌」であると判断できます。

ステップ2:培養所見の解釈
問題文にある「ヒツジ血液寒天培地に発育しなかった」という情報が極めて重要です。これは、この細菌が通常の培地では発育できず、発育に特殊な栄養素を要求する菌であることを意味します。

【各選択肢の解説(形態と発育性)】

  • 1.誤り(Acinetobacter baumannii
    グラム陰性の球桿菌であり、染色像の形態は似ています。しかし、ヒツジ血液寒天培地にはよく発育します。また、市中肺炎よりは院内肺炎(日和見感染症)の起炎菌として重要です。
  • 2.正しい(Haemophilus influenzae
    インフルエンザ菌です。グラム陰性多形性小桿菌(球桿菌)であり、染色像の形態は画像と一致します。この菌は発育のためにX因子(ヘミン)V因子(NAD)の両方を必要とします。ヒツジ赤血球にはNADase(V因子破壊酵素)が存在するため、培地中でV因子(NAD)が失活し、通常のヒツジ血液寒天培地では発育しません。これらの所見を総合すると、最も考えられるのは本菌です。
  • 3.誤り(Klebsiella pneumoniae
    肺炎桿菌です。グラム陰性桿菌ですが、画像よりも太くて大きな桿菌として観察されます。厚い莢膜を持つため、ヒツジ血液寒天培地に発育し、粘液状(ムコイド)の大きなコロニーを形成します。
  • 4.誤り(Moraxella catarrhalis
    グラム陰性の双球菌であり、桿菌である画像所見とは異なります。また、ヒツジ血液寒天培地にも発育します
  • 5.誤り(Pseudomonas aeruginosa
    緑膿菌です。グラム陰性のやや細長い桿菌です。ヒツジ血液寒天培地によく発育し、金属光沢や緑色の色素(ピオシアニン)、特異臭を伴うコロニーを形成します。

【頻出】市中肺炎の主な原因菌とその特徴

「グラム染色所見」と「培地での発育」の組み合わせは必ず整理しておきましょう。

細菌名(学名) グラム染色所見 ヒツジ血液培地 備考・キーワード
H. influenzae
(インフルエンザ菌)
陰性、球桿菌 通常発育しない 発育にX・V因子が必要
チョコレート寒天などで発育)
S. pneumoniae
(肺炎球菌)
陽性、双球菌
(ランセット状)
発育する(+) α溶血(緑色)、莢膜あり
K. pneumoniae
(肺炎桿菌)
陰性、桿菌 発育する(+) 厚い莢膜、ムコイドコロニー
M. catarrhalis
(モラクセラ)
陰性、双球菌 発育する(+) DNase陽性、β-ラクタマーゼ

間違えやすいところ

名前のイメージによる勘違いや、因子のすり替えに注意しましょう。

  • インフルエンザ菌はウイルスである → 誤り(名前はインフルエンザですが、立派な「細菌(グラム陰性桿菌)」です。)
  • インフルエンザ菌のX因子はNADである → 誤りX因子=ヘミン、V因子=NADです。この組み合わせは頻出です。)
  • インフルエンザ菌はどの血液寒天培地にも発育しない → 誤り(ウマやウサギの血液寒天培地には微小ながら発育します。ヒツジ血液にだけ「NADase」が含まれているため通常発育できないのです。)

この問題のポイント

インフルエンザ菌(H. influenzae)については、以下の4点セットを確実に暗記しておきましょう。国家試験では、この組み合わせから本菌を選択する問題として頻出です。

  • グラム陰性の小桿菌(多形性あり)
  • 通常のヒツジ血液寒天培地には発育しない(ウマ・ウサギには発育)
  • X因子(ヘミン)とV因子(NAD)の両方を要求する
  • チョコレート寒天培地などの発育に適した培地を用いる
さい
さい
血液を80℃くらいで加熱すると、赤血球が壊れて中からたっぷりのV因子が溶け出し、さらにV因子を壊す「NADase」が熱で失活します。この血液が茶色く変色した培地が「チョコレート寒天培地」です。インフルエンザ菌が発育しやすい環境です。

さいの補足:インフルエンザ菌の「衛星現象」

通常のヒツジ血液寒天培地にはX因子はありますが、V因子が足りないためインフルエンザ菌は発育できません。

しかし、この培地に「黄色ブドウ球菌(S. aureus)」を一緒に塗って培養すると、黄色ブドウ球菌は赤血球を溶血させてV因子を利用可能な状態にし、さらにNADaseの影響を局所的に受けにくくするため、その周囲でインフルエンザ菌が発育します。

この、ブドウ球菌の周りに衛星のように群がって発育する様子を「衛星現象(サテライト現象)」と呼びます。インフルエンザ菌を同定するための非常に有名な特徴です。

問70:抗菌薬の作用機序(蛋白合成阻害薬の識別)

【問題】
蛋白合成阻害作用を有する抗菌薬はどれか。

  • 1.キノロン系
  • 2.サルファ剤
  • 3.カルバペネム系
  • 4.ホスホマイシン系
  • 5.テトラサイクリン系
タップして正答と解説を見る

正答:5

【問題の考え方】

抗菌薬(抗生物質)が細菌に対して「どのように作用してやっつけるか(作用機序)」を正しく分類できるかが問われる問題です。抗菌薬は、ヒトの細胞にはなく細菌に特有の構造や機能を標的とします。各系統が細菌の「どこ」を攻撃しているかを整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(作用機序)】

  • 1.誤り(キノロン系)
    細菌のDNA複製に必須の酵素であるDNAジャイレース(またはトポイソメラーゼⅣ)を阻害します。これによりDNAの複製ができなくなるため、「核酸合成阻害」に分類されます。(例:レボフロキサシンなど)
  • 2.誤り(サルファ剤)
    細菌が葉酸を合成する過程で必要な酵素を阻害します。葉酸が作れないと細菌は増殖できなくなります。これは「葉酸合成阻害(葉酸代謝拮抗)」に分類されます。直接DNAやRNAを狙う「核酸合成阻害薬」とは区別して整理しておきましょう。
  • 3.誤り(カルバペネム系)
    ペニシリン系やセフェム系と同じ「β-ラクタム系抗菌薬」の一種であり、細菌の外壁であるペプチドグリカン層の合成(PBP:ペニシリン結合蛋白)を強力に妨害して細菌を破壊します。「細胞壁合成阻害」に分類されます。(例:メロペネムなど)
  • 4.誤り(ホスホマイシン系)
    細胞壁の原料が作られる非常に初期の段階(UDP-N-アセチルグルコサミンからUDP-N-アセチルムラミン酸への反応:MurA)を阻害することで、細胞壁の合成を妨げます。「細胞壁合成阻害」に分類されます。
  • 5.正しい(テトラサイクリン系)
    細菌のリボソーム(30Sサブユニット)に結合し、アミノアシルtRNAの結合を阻害することで、タンパク質が合成される過程を妨害します。これにより、細菌は生命活動に必要なタンパク質を作れなくなります。これはまさしく「蛋白合成阻害」作用です。(例:ミノサイクリンなど)

【頻出】薬効分類ごとの標的まとめ

国家試験で問われる代表的なグループと「具体的な標的」を一覧にしました。

主な標的(ターゲット) 大分類 抗菌薬の系統(グループ)
細胞壁(PBP) 細胞壁合成阻害 ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系
細胞壁(D-Ala-D-Ala) グリコペプチド系(バンコマイシンなど)
※β-ラクタム系と同じ細胞壁合成阻害薬ですが、作用点は異なります。
細胞壁(MurA) ホスホマイシン
30Sサブユニット 蛋白合成阻害 テトラサイクリン系、アミノグリコシド系
50Sサブユニット マクロライド系、リンコサミド系、クロラムフェニコール
DNA(DNAジャイレース) 核酸合成阻害 キノロン系
RNA(RNAポリメラーゼ) リファンピシン
葉酸 葉酸合成阻害 サルファ剤、トリメトプリム
※ST合剤はこの2つの組み合わせです。

国試で間違えやすいポイント

系統と作用のすり替え問題に注意しましょう。

  • マクロライド系は細胞壁合成阻害である → 誤り(蛋白合成阻害です)
  • キノロン系は蛋白合成阻害である → 誤り(核酸合成阻害です)
  • グリコペプチド系は蛋白合成阻害である → 誤り(バンコマイシンなどのグリコペプチド系は、β-ラクタム系と同じく「細胞壁合成阻害」です)

暗記方法・覚え方のコツ(語呂合わせ)

抗菌薬の2大巨頭である「蛋白合成阻害」と「細胞壁合成阻害」はこの語呂で覚えましょう。

「タンパクを アテマク(当てまくる)」

  • タンパク = 蛋白合成阻害
  • ア = ミノグリコシド系
  • テ = トラサイクリン系
  • マ = クロライド系
  • ク = ロラムフェニコール系(クリンダマイシン)

「壁に ペセカグ」

  • 壁 = 細胞壁合成阻害
  • ペ = ニシリン系
  • セ = フェム系
  • カ = ルバペネム系
  • グ = リコペプチド系
さい
さい
この分類は薬理学や微生物学だけでなく、耐性菌のメカニズムを理解する上でも重要な基礎知識です。まずは「アテマク」「ペセカグ」を整理して覚えておきましょう。

さいの補足:選択毒性(なぜヒトの細胞は無事なのか?)

抗菌薬が「細菌だけを殺して、ヒトの細胞にはダメージを与えない」性質を選択毒性と呼びます。

例えば、ヒトの細胞には「細胞壁」がありません。だから細胞壁合成阻害薬を飲んでも、ヒトの細胞は全く影響を受けません。また、ヒトも細菌もタンパク質を作る「リボソーム」を持っていますが、ヒトのリボソームは「80S」、細菌のリボソームは「70S(30S+50S)」という構造的な違いがあります。蛋白合成阻害薬は、この「細菌特有のリボソーム(30Sや50Sサブユニット)」にだけ結合するように作られているため、ヒトの細胞には影響が出ないのです。

このように、抗菌薬は「ヒトと細菌の構造の違い」を巧みに利用してデザインされています。

問71:DNAウイルスとRNAウイルスの分類

【問題】
DNAウイルスはどれか。

  • 1.インフルエンザウイルス
  • 2.サイトメガロウイルス
  • 3.デングウイルス
  • 4.ヒトRSウイルス
  • 5.ムンプスウイルス
タップして正答と解説を見る

正答:2

【問題の考え方】

ウイルスの基本的な分類である「遺伝物質がDNAかRNAか」を問う問題です。病原性ウイルスの多くはRNAウイルスです。そのため、国家試験でよく出題される主要な病原ウイルスでは、数が少ない「DNAウイルス」のグループから優先して覚える学習法が最も効率的です。

【各選択肢の解説(分類)】

  • 1.誤り(インフルエンザウイルス)
    オルソミクソウイルス科に属し、季節性インフルエンザの原因となります。遺伝物質としてRNAを持つ代表的なRNAウイルスです。
  • 2.正しい(サイトメガロウイルス:CMV)
    ヘルペスウイルス科に属するウイルスです。単純ヘルペスウイルス(HSV)や水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)など、ヘルペスウイルス科のウイルスはすべて遺伝物質としてDNAを持っています。したがって、サイトメガロウイルスはDNAウイルスです。
  • 3.誤り(デングウイルス)
    フラビウイルス科に属し、蚊(ヤブカ)によって媒介されてデング熱を引き起こします。RNAウイルスです。
  • 4.誤り(ヒトRSウイルス)
    ニューモウイルス科(旧パラミクソウイルス科)に属し、特に乳幼児において重篤な呼吸器感染症(細気管支炎など)の原因となります。RNAウイルスです。
  • 5.誤り(ムンプスウイルス)
    パラミクソウイルス科に属し、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因となります。RNAウイルスです。

【頻出】主なウイルスの核酸による分類まとめ

DNAウイルスは数が少ないので、ここにあるものを確実に覚えましょう。

分類 主なウイルス(グループ)
DNAウイルス
(暗記必須)
・アデノウイルス
・パルボウイルス(ヒトパルボウイルスB19など)
・パピローマウイルス(HPVなど)
・B型肝炎ウイルス(HBV)
・ヘルペスウイルス科(HSV、VZV、CMV、EBVなど)
・ポックスウイルス(天然痘、Mpoxなど)
RNAウイルス
(主なもの)
インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、デングウイルス、A型/C型/E型肝炎ウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、コロナウイルス、HIV など多数

暗記方法・覚え方のコツ(語呂合わせ)

数が少ない「DNAウイルス」を、有名な語呂合わせで一網打尽にしてしまいましょう。

「水筒にアサヒビール(DNA)」

  • 水筒(すいとう) = 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)
  • = アデノウイルス
  • = サイトメガロウイルス(CMV)
  • = ヒトパピローマウイルス(HPV)
  • ビール = B型肝炎ウイルス(HBV)

※サイトメガロウイルス(CMV)、EBウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は、いずれもヘルペスウイルス科のDNAウイルスです。

国試で「DNAウイルスはどれか?」と聞かれたら、選択肢の中にこの語呂に含まれるものがないか探すだけで解けます。本問の正解である「サイトメガロウイルス」も、「サ」に入っています!

国試で間違えやすいポイント

「肝炎ウイルス」の引っかけは国試の定番です。

  • C型肝炎ウイルスはDNAウイルスである → 誤り(DNAウイルスなのは「B型肝炎ウイルス(HBV)」だけです。A型・C型・E型などはすべてRNAウイルスです。)
  • EBウイルスはRNAウイルスである → 誤り(EBウイルスはサイトメガロウイルスと同じ「ヘルペスウイルス科」なので、DNAウイルスです。)
  • HIVはDNAウイルスである → 誤り(エイズの原因となるHIVは、逆転写酵素を持つ「レトロウイルス科」のRNAウイルスです。)
さい
さい
サイトメガロウイルス(CMV)やEBウイルス(EBV)は、名前だけ見ると何の仲間か分かりにくいですが、どちらも「ヘルペスウイルス科」です。

さいの補足:ヘルペスウイルスの「潜伏感染」

ヘルペスウイルス科のウイルス(HSV、VZV、CMV、EBVなど)に共通する大きな特徴として、「潜伏感染(せんぷくかんせん)」があります。

一度感染すると、症状が治まってもウイルスは体の中から完全に消え去ることはなく、神経節(単純ヘルペスや水痘など)、Bリンパ球(EBV)、あるいは単球・マクロファージ系細胞(CMV)の中に隠れて一生棲み着きます。そして、加齢や疲労、ステロイド剤の使用などで免疫力が低下したときに、再び暴れ出して症状を引き起こします(再活性化)。

例えば、子どもの頃にかかった「水ぼうそう(水痘)」のウイルス(VZV)が、数十年後に再活性化して「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」を引き起こすのが代表的な例です。ヘルペスウイルス=潜伏感染、という特徴も合わせて覚えておきましょう。

問72:細菌と毒素の組合せ

【問題】
細菌と毒素の組合せで誤っているのはどれか。

  • 1.Clostridioides difficile ―― トキシンB
  • 2.Clostridium botulinum ―― 神経毒素
  • 3.Enterohemorrhagic Escherichia coli ―― ベロ毒素
  • 4.Staphylococcus aureus ―― 表皮剝脱毒素
  • 5.Streptococcus pyogenes ―― toxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)
タップして正答と解説を見る

正答:5

【問題の考え方】

主要な病原細菌が産生する「外毒素」の組み合わせを問う問題です。
国試では「細菌名・毒素名・引き起こされる疾患」の3つがセットで狙われます。特に選択肢5の「TSST-1」と「STSS」の混同を狙った引っかけは非常によく出題されるため、確実に整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(病原因子と疾患)】

  • 1.正しい(Clostridioides difficile
    ディフィシル菌(CD菌)です。抗菌薬の長期投与によって腸内細菌叢が乱れると異常増殖し、偽膜性腸炎を引き起こします。主な病原因子は腸管毒素(Enterotoxin)である「トキシンA」と、細胞毒素(Cytotoxin)である「トキシンB」であり、現在では特にトキシンBが病原性に重要と考えられています。
  • 2.正しい(Clostridium botulinum
    ボツリヌス菌です。食中毒の原因菌であり、極めて強力な神経毒素(ボツリヌス毒素)を産生します。この毒素は神経筋接合部でアセチルコリンの放出を邪魔するため、筋肉がダラリと動かなくなる「弛緩性麻痺」を引き起こします。蜂蜜による乳児ボツリヌス症も有名です。
  • 3.正しい(Enterohemorrhagic Escherichia coli
    腸管出血性大腸菌(EHEC:O157など)です。出血性大腸炎や、重篤な溶血性尿毒症症候群(HUS)の原因となります。この強い病原性の主役が、志賀毒素(赤痢菌の毒素)とそっくりな構造を持つ「ベロ毒素(志賀毒素:Shiga toxin, Stx)」です。
  • 4.正しい(Staphylococcus aureus
    黄色ブドウ球菌は多種類の毒素を産生することが特徴です。表皮剝脱毒素(Exfoliative toxin)は、小児などの全身の皮膚が火傷のようにズルむけになるブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)の原因となります。食中毒の原因となるエンテロトキシンも重要です。
  • 5.誤り(Streptococcus pyogenes
    A群β溶血性レンサ球菌(化膿レンサ球菌)です。TSST-1(Toxic shock syndrome toxin-1)を産生するのは「黄色ブドウ球菌」です。A群レンサ球菌は、発熱性外毒素(SPEs)などを産生し、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(いわゆる人食いバクテリア)である「STSS」を引き起こしますが、TSST-1自体は産生しません。

【頻出】細菌と産生毒素・関連疾患まとめ

「細菌名・毒素・病名」の3つをセットで暗記しておきましょう。

細菌名(学名) 産生する主な毒素 関連する疾患・症状
Clostridioides difficile(CD菌) トキシンA、トキシンB 偽膜性腸炎
Clostridium botulinum(ボツリヌス菌) ボツリヌス毒素(神経毒素) ボツリヌス症(弛緩性麻痺
EHEC(腸管出血性大腸菌) ベロ毒素(志賀毒素:Stx) 出血性大腸炎、HUS
Staphylococcus aureus
(黄色ブドウ球菌)
表皮剝脱毒素 SSSS(熱傷様皮膚症候群)
TSST-1 TSS(トキシックショック症候群)
エンテロトキシン 食中毒(毒素型)
Streptococcus pyogenes
(A群レンサ球菌)
発熱性外毒素(SPEs)など
ストレプトリジンOなども重要
STSS(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)、猩紅熱

【超重要】TSST-1 と STSS の違い

名前がそっくりですが、全くの別物です。国試で最も狙われる引っかけです。

  • TSST-1:黄色ブドウ球菌が産生する「毒素の名前」
  • STSS:A群レンサ球菌の感染によって起こる「病気の名前」

間違えやすいところ

ボツリヌス菌と破傷風菌の「麻痺の違い」も頻出です。

  • ボツリヌス毒素は痙攣(けいれん)を引き起こす → 誤り(筋肉を動かすアセチルコリンをブロックするため、筋肉がダラリとする弛緩性麻痺になります。)
  • 破傷風毒素(テタノスパスミン)は弛緩性麻痺を引き起こす → 誤り(破傷風は筋肉に「ストップ」をかける信号をブロックするため、筋肉がガチガチに硬直する痙性麻痺になります。)
  • エンテロトキシンは加熱すれば無毒化できる → 誤り(黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンは熱に非常に強く、100℃で加熱しても壊れません。そのため、菌が死んでも毒素が残って食中毒を起こします。)
さい
さい
TSST-1とSTSS、アルファベットの並びが似ています。シンプルに「TSST-1は毒素の名前、STSSは病気の名前」と覚えておきましょう!

さいの補足:スーパー抗原とは?

TSST-1やSPEsなどの毒素は「スーパー抗原」と呼ばれます。通常の抗原は、マクロファージなどに食べられて細かく砕かれてから、ごく一部の特異的なT細胞だけに「こんな敵が来たよ」と紹介されて免疫反応を起こします。

しかしスーパー抗原は、正規の手続きを無視して、MHCクラスII分子とT細胞受容体(TCR)を直接架橋し、手当たり次第に大量のT細胞を強制的に活性化させてしまいます。その結果、サイトカイン(免疫の指示物質)が爆発的に放出される「サイトカインストーム」が起こり、黄色ブドウ球菌ではTSS、A群レンサ球菌ではSTSSを引き起こすとされています。

問73:Cryptococcus属の性状と鑑別

【問題】
Cryptococcus neoformansCryptococcus gattii の共通の性状はどれか。

  • 1.二形成を示す。
  • 2.発芽管を形成する。
  • 3.仮性菌糸を形成する。
  • 4.ウレアーゼを産生する。
  • 5.分節型分生子を形成する。
タップして正答と解説を見る

正答:4

【問題の考え方】

病原性真菌である Cryptococcus neoformansCryptococcus gattii の微生物学的な特徴を問う問題です。これらは非常に近縁な種であり、厚い莢膜を持つ酵母様真菌として「クリプトコッカス症(髄膜炎や肺炎など)」を引き起こします。
C. neoformans は免疫不全患者(AIDSなど)に多く、C. gattii は健常者にも感染することが特徴です。
他の主要な真菌(特に Candida 属)との鑑別ポイントを整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(病原真菌の特徴)】

  • 1.誤り(二形成を示す)
    「二形性真菌」とは、環境中の温度(25℃など)では「菌糸型」、生体内温度(37℃)では「酵母型」と形態を変化させる真菌のことです(例:SporothrixHistoplasma など)。クリプトコッカスは組織内・培養とも酵母型で増殖するため、二形性真菌ではありません。
  • 2.誤り(発芽管を形成する)
    発芽管(Germ tube)形成は、Candida albicans の迅速同定に用いられる非常に特徴的な性状です(血清加培地で37℃、2〜3時間培養すると見られます)。クリプトコッカスは発芽管を作らず、出芽によって増殖します。
  • 3.誤り(仮性菌糸を形成する)
    仮性菌糸は、出芽した酵母細胞が分離せずに鎖状に連なって菌糸のように見える構造で、主にCandida albicans などの Candidaに特徴的です。クリプトコッカスは通常、仮性菌糸を形成しません。
  • 4.正しい(ウレアーゼを産生する)
    ウレアーゼは尿素をアンモニアに分解する酵素です。ウレアーゼ産生能(ウレアーゼ陽性)は、両者に共通する極めて重要な生化学的特徴です。ウレアーゼ陰性が多い Candida 属などとの鑑別に利用されます。
    Trichosporon 属もウレアーゼ陽性ですが、クリプトコッカスは厚い莢膜を持つ点で鑑別できます。
  • 5.誤り(分節型分生子を形成する)
    分節型分生子(アースロコニディア)は、菌糸が断片化して形成される無性胞子で、Coccidioides(コクシジオイデス)属Trichosporon 属などで見られます。クリプトコッカスは酵母であり、このような分生子の形成様式はとりません。

【頻出】主要な酵母様真菌の鑑別性状まとめ

「クリプトコッカス」と「カンジダ」の違いです。

性状・キーワード Cryptococcus Candida albicans
主な形態 酵母(出芽) 酵母、仮性菌糸、真性菌糸
ウレアーゼ産生 陽性 (+) 陰性 (-)
発芽管形成 陰性 (-) 陽性 (+)
厚膜胞子形成 陰性 (-) 陽性 (+)
莢膜(カプセル) あり(墨汁染色陽性) なし

間違えやすいところ

それぞれの真菌特有のキーワードをすり替える引っかけに注意しましょう。

  • クリプトコッカスは発芽管を形成する → 誤り(発芽管はカンジダ・アルビカンスのサインです。)
  • クリプトコッカスは二形性真菌である → 誤り(組織内でも培養でも酵母型です。二形性はスポロトリックスなどです。)
  • カンジダはウレアーゼ陽性である → 誤り(カンジダは陰性です。ここが鑑別のキモです。)
  • クリプトコッカスは仮性菌糸を作る → 誤り(仮性菌糸はカンジダ・アルビカンスなどに特徴的です。)

この問題のポイント

Cryptococcus 属については、以下の特徴と疫学を確実に暗記しておきましょう。

  • 厚い莢膜を持つ(墨汁染色で白く抜けて見える)
  • ウレアーゼ陽性
  • C. neoformans = ハトの糞に多く、免疫不全患者に多い
  • C. gattii = ユーカリなどの樹木環境に多く、健常者にも感染する
さい
さい
クリプトコッカスといえば「墨汁染色」と「ウレアーゼ」です!

さいの補足:C. neoformansC. gattii の見分け方

問題文にある2つの菌は、顕微鏡で見た形(形態)や一般的な生化学的性状ではそっくりで区別がつきません。しかし、この2つの菌を鑑別するために開発された特殊な培地があります。それが「CGB培地(L-Canavanine glycine bromothymol blue培地)」です。

  • C. gattiiCGB培地に含まれる成分を利用できるため、培地がアルカリ性に傾き「青色(陽性)」に変わります。
  • C. neoformans成分を利用できず、培地は「黄緑色(陰性)」のままです。

現在では質量分析装置(MALDI-TOF MS)や遺伝子検査で同定されることも多いですが、国家試験ではこの培地の名前が問われることもあるかも知れないため、「CGB培地=クリプトコッカスの仲間割れ」と覚えておきましょう。

問74:薬剤耐性菌と耐性パターンの組合せ

【問題】
耐性菌と薬剤耐性の組合せで典型的でないのはどれか。

  • 1.BLNAR ―― アンピシリン耐性
  • 2.ESBL産生菌 ―― メロペネム耐性
  • 3.MDRP ―― アミカシン耐性
  • 4.MRSA ―― セファゾリン耐性
  • 5.VRE ―― バンコマイシン耐性
タップして正答と解説を見る

正答:2

【問題の考え方】

臨床的に重要な薬剤耐性菌が、それぞれ「どの薬に効かなくなっているのか」を問う問題です。略語の意味を知っていればそのまま解けるものもありますが、特にESBL産生菌の「弱点(治療の第一選択薬)」は国家試験で非常によく狙われます。

【各選択肢の解説(病態・メカニズム)】

  • 1.誤り(典型的である:BLNAR)
    BLNAR(β-Lactamase Negative Ampicillin-Resistant)は、β-ラクタマーゼという「薬を壊す酵素」を作らない(Negative)のに、なぜかアンピシリンに耐性(Resistant)を示すインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のことです。名前そのものがアンピシリン耐性を表しているため正しい組合せです。
  • 2.正しい(典型的でない:ESBL産生菌)
    ESBL(基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)という強力な酵素を産生する菌(主に大腸菌や肺炎桿菌)です。多くのペニシリン系やセフェム系抗菌薬を分解して無効化してしまいますが、ESBLはカルバペネム系(メロペネムやイミペネムなど)をほとんど加水分解できないため、安定した効果を示します。つまり、ESBL産生菌はメロペネムに「感性(効く)」であり、重症例ではカルバペネム系が第一選択となることが多いです。したがって、「メロペネム耐性」は典型的ではなく誤った組合せです。
  • 3.誤り(典型的である:MDRP)
    MDRP(多剤耐性緑膿菌:Multidrug-Resistant Pseudomonas aeruginosa)は、緑膿菌治療に用いられる主要な3系統の抗菌薬(イミペネム、シプロフロキサシン、アミカシン)のすべてに耐性を示す極めて厄介な菌です。アミカシン耐性はMDRPの定義を満たす典型的な特徴です。
  • 4.誤り(典型的である:MRSA)
    MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、mecA遺伝子によって特殊なタンパク質(PBP2’)を作り出します。これにより、メチシリンだけでなく、セファゾリンを含むほとんどすべてのβ-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系)が効かなく(耐性に)なります。したがって正しい組合せです。
  • 5.誤り(典型的である:VRE)
    VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)は、その名の通り、MRSA治療の切り札であるバンコマイシンに耐性を示す腸球菌です。これも名前そのものが特徴を表しています。

【頻出】主な薬剤耐性菌と「効かない薬・効く薬」

「何の薬に耐性か」だけでなく「治療の切り札(感受性)」も国試で狙われます。

耐性菌(略語) 効かない薬(典型的な耐性) 治療の切り札(典型的な感受性)
BLNAR
インフルエンザ菌
アンピシリン、一部のセフェム系 レスピラトリーキノロン系 など
ESBL産生菌
大腸菌、肺炎桿菌など
第1〜第4世代セフェム系
(セファマイシン系を除く)

ペニシリン系
カルバペネム系(重症例)
セフメタゾール など
MDRP
多剤耐性緑膿菌
イミペネム、シプロフロキサシン
アミカシン
コリスチン など
MRSA
黄色ブドウ球菌
ほとんどすべてのβ-ラクタム系
(セファゾリン、メロペネム等)
バンコマイシン
リネゾリド、ダプトマイシン
VRE
腸球菌
バンコマイシン リネゾリド、ダプトマイシン

間違えやすいところ

「耐性」と「感受性」のすり替え問題が定番です。

  • ESBL産生菌はメロペネム耐性である → 誤り(カルバペネム系であるメロペネムは、ESBLではほとんど分解されないため「効く(感受性)」のが特徴です。)
  • MRSAにはカルバペネム系が有効である → 誤り(MRSAは「ほとんどすべての」β-ラクタム系を弾き返すため、強力なカルバペネム系も効きません。)
  • MDRPはバンコマイシン耐性である → 誤り(MDRPの定義はイミペネム・シプロフロキサシン・アミカシンの3剤への耐性です。そもそもバンコマイシンは緑膿菌のようなグラム陰性菌には元々効きません。)

覚えておきたいポイント

国家試験では、以下の2つがよく狙われます。

  • ESBL産生菌 = カルバペネム系(メロペネムなど)が通常有効
  • MRSA = カルバペネム系も含め、ほとんどのβ-ラクタム系が無効
さい
さい
ESBLという酵素は「ハサミ」のようなものです。ペニシリンやセフェムの構造をチョキチョキ切って無効化してしまいますが、カルバペネム系は構造が合わず、このハサミでは切断できない、とイメージすると分かりやすいです。

さいの補足:BLNARとMRSAの共通点(PBPの変異)

細菌が抗菌薬から逃れる(耐性化する)メカニズムには、大きく分けて「①薬を壊す酵素を作る」「②薬の標的(ターゲット)の形を変える」「③薬を細胞の外へ汲み出す」などがあります。

ESBL産生菌は「①薬を壊す酵素(β-ラクタマーゼ)」を作るパターンです。これに対し、BLNARとMRSAは「②薬の標的の形を変える」パターンです。ペニシリンやセフェム系抗菌薬は、細菌の細胞壁を作る酵素である「ペニシリン結合タンパク(PBP)」にくっついて細胞壁を作れなくします。BLNARとMRSAは、このPBPの形を変異(変化)させることで、薬がくっつけないようにしています。

「BLNAR=PBP3の変異」「MRSA=PBP2’の獲得(mecA遺伝子)」というように、酵素(β-ラクタマーゼ)を持っていなくても、ターゲットの形を変えることで耐性化しているというメカニズムの違いも、国試でよく問われます。

※ダプトマイシンに関する注意事項
表に記載した「ダプトマイシン」はMRSAやVREに有効な強力な抗菌薬ですが、肺にあるサーファクタント(表面張力を低下させる物質)によって成分が不活化されてしまうため、肺炎の治療には使えないという非常に有名な特徴があります。

問75:妊婦の感染症と胎児奇形(TORCH症候群)

【問題】
妊婦が初感染すると胎児奇形のリスクが高いのはどれか。

  • 1.B型肝炎ウイルス
  • 2.アデノウイルス
  • 3.インフルエンザウイルス
  • 4.風疹ウイルス
  • 5.麻疹ウイルス
タップして正答と解説を見る

正答:4

【問題の考え方】

この問題は、妊娠中の母親のウイルス感染が胎児に及ぼす影響、特に「催奇形性(胎児に形態異常・奇形を引き起こすリスク)」が高いウイルスはどれかを問う問題です。胎児に重大な影響を及ぼす病原体のグループである「TORCH(トーチ)症候群」の知識があれば確実に解けます。

【各選択肢の解説(病原体と胎児への影響)】

  • 1.誤り(B型肝炎ウイルス)
    母親がB型肝炎キャリア(ウイルス保持者)の場合、主に出産時に産道を通る際に血液を介して赤ちゃんに感染します(経産道感染)。新生児がキャリア化するリスクは高いですが、お腹の中にいる時の「胎児奇形」を引き起こすリスクは極めて低いです。
  • 2.誤り(アデノウイルス)
    主に気道や腸管、眼(流行性角結膜炎など)に感染する一般的なウイルスです。胎児奇形との明確で強い因果関係はありません。
  • 3.誤り(インフルエンザウイルス)
    妊娠中に感染すると母親自身が重症化しやすいリスクはありますが、胎児奇形との関連は明確ではありません。
  • 4.正しい(風疹ウイルス)
    妊娠初期(特に妊娠12週まで)に妊婦が風疹ウイルスに初感染すると、ウイルスが胎盤を通って胎児に感染し(経胎盤感染)、高い確率で先天性風疹症候群(CRS)と呼ばれる重篤な先天異常を引き起こします。CRSの三大症状は「先天性心疾患(心奇形)」「白内障」「難聴」です。したがって、胎児奇形のリスクが非常に高いウイルスです。
  • 5.誤り(麻疹ウイルス)
    はしかのウイルスです。妊娠中に感染すると流産や早産のリスクが高まりますが、風疹のような特徴的な奇形を高率に引き起こすわけではありません。

【頻出】TORCH症候群まとめ

胎児や新生児に重篤な症状を引き起こす代表的な病原体(主に経胎盤感染)の頭文字をとったものです。国試で非常によく出題されます。

頭文字 病原体 主な胎児・新生児への影響
T Toxoplasma
(トキソプラズマ)
水頭症、網脈絡膜炎、脳内石灰化
O Others
(その他:梅毒、パルボウイルスB19、水痘・帯状疱疹ウイルスなど)
先天梅毒、胎児水腫(パルボウイルスB19)など
R Rubella virus
(風疹ウイルス)
先天性風疹症候群(心奇形、白内障、難聴)
C Cytomegalovirus
(サイトメガロウイルス:CMV)
難聴、精神発達遅滞、小頭症、肝脾腫
H Herpes simplex virus
(単純ヘルペスウイルス:HSV)
新生児ヘルペス(※TORCHに含まれるが、新生児感染の多くは経産道感染である)、脳炎

国試で間違えやすいポイント

「感染経路」と「症状」のすり替え問題に注意しましょう。

  • B型肝炎ウイルスは経胎盤感染が主である → 誤り(出産時に血液や分泌物に触れて感染する「経産道感染」が主体です。)
  • 風疹は妊娠後期に感染すると奇形リスクが高い → 誤り(胎児の器官が作られる「妊娠初期(12週未満)」が最も危険です。)
  • 先天性風疹症候群には小頭症が含まれる → 誤り(小頭症を引き起こす代表はサイトメガロウイルス(CMV)やジカウイルスです。風疹は「心奇形・白内障・難聴」です。)

ここだけ覚えておけば大丈夫

先天性風疹症候群(CRS)の三大症状は確実に暗記しておきましょう。

「白・心・難」= 白内障・心奇形・難聴

「目・心臓・耳」の3カ所に大きな障害が出るとイメージしてください。このゴロを使うと記憶に残りやすいです。

さい
さい
風疹の抗体価が低い女性が妊娠を希望する場合、妊娠前にワクチンを接種して抗体を高めておくことが推奨されています。妊娠してからでは生ワクチンである風疹ワクチンは打てないからです。

さいの補足:ジカウイルス感染症と小頭症

近年、国際的に問題となった母子感染症に「ジカウイルス感染症」があります。

ジカウイルスはフラビウイルス科に属し、主にヤブカ(蚊)によって媒介されます。妊婦がジカウイルスに感染すると、ウイルスが胎盤を通じて胎児に感染し、脳の発育が阻害されて「小頭症」を引き起こすことが報告されています。TORCH症候群の「O(Others)」に含まれることがある新しい知識として、国試でも問われる可能性があります。

問76:血液培養における汚染菌(コンタミネーション)

【問題】
血液培養で検出された場合、汚染菌である可能性が高いのはどれか。

  • 1.Bacillus anthracis
  • 2.Cutibacterium acnes
  • 3.Enterococcus faecalis
  • 4.Pseudomonas aeruginosa
  • 5.Staphylococcus aureus
タップして正答と解説を見る

正答:2

【問題の考え方】

血液培養の結果を解釈する上で非常に重要な、「真の菌血症(起炎菌)」「コンタミネーション(汚染菌)」を区別する問題です。血液培養における汚染は、主に採血時の皮膚消毒が不十分な場合に、患者さんの皮膚にいる常在菌が針と一緒に混入することで起こります。つまり、選択肢の中から「典型的な皮膚の常在菌(かつ病原性が低いもの)」を探せば正解できます。

【各選択肢の解説(病態・由来)】

  • 1.誤り(Bacillus anthracis
    バチルス・アントラシスは炭疽症の原因となる炭疽菌です。極めて病原性が高い絶対病原菌であり、血液培養から検出された場合は重篤な炭疽菌敗血症を意味します。汚染菌である可能性はまずありません。
    Bacillus属は多くがコンタミ(環境からの混入)ですが、B. cereus(セレウス菌)では実際の血流・カテーテル感染症の起炎菌となることがあります。
  • 2.正しい(Cutibacterium acnes
    クチバクテリウム・アクネス(旧名:Propionibacterium acnes)は、ヒトの皮膚の毛穴の奥深く(皮脂腺)に常在する嫌気性グラム陽性桿菌であり、ニキビの原因菌として知られています。毛穴の奥にいるため皮膚表面の消毒をしても混入しやすく、血液培養(特に嫌気ボトル)におけるコンタミネーションの代表格です。一般にはコンタミが多いですが、人工関節やシャントなどの人工物(デバイス)感染では重要な起炎菌となります。
  • 3.誤り(Enterococcus faecalis
    エンテロコッカス・フェカリス(腸球菌)は、主に腸管内に常在する細菌です。尿路感染症や感染性心内膜炎の原因菌として重要であり、血液培養で検出された場合は通常、真の菌血症と判断されます。
  • 4.誤り(Pseudomonas aeruginosa
    シュードモナス・アエルギノーサ(緑膿菌)は、湿潤な環境に広く存在する細菌です。院内肺炎や敗血症の原因となり、血液培養で検出された場合は重篤な感染症(真の菌血症)を意味します。
  • 5.誤り(Staphylococcus aureus
    スタフィロコッカス・アウレウス(黄色ブドウ球菌)は、鼻腔や皮膚に常在することもありますが、非常に病原性が高く、重篤な敗血症や感染性心内膜炎を引き起こします。そのため、血液培養で検出された場合、たとえ1セットのみの陽性であっても、まず「真の菌血症」として評価・対応するのが臨床上の大原則です。

【頻出】血液培養におけるコンタミネーション代表菌

国家試験で「汚染菌」として出題されるのは以下の4つのグループです。すべて皮膚の常在菌や環境菌です。

細菌名(グループ) 特徴と代表菌
CNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌) 皮膚常在菌の代表。S. epidermidis(表皮ブドウ球菌)など。
※コンタミ原因の第1位です。
Cutibacterium acnes 皮膚の深部(皮脂腺)に常在。嫌気ボトルで数日遅れて陽性となることが多い。
Corynebacterium 皮膚常在菌のグラム陽性桿菌(コリネバクテリウム)。
Bacillus 属(※炭疽菌を除く) 環境中(空中・ホコリなど)にいる有芽胞菌。炭疽菌だけは例外で絶対病原菌。また、B. cereusは血流・カテーテル感染を起こすことがある。

間違えやすいところ(超重要引っかけ)

「黄色ブドウ球菌の扱い」は国試でも現場でも最重要ポイントです。

  • 黄色ブドウ球菌は皮膚常在菌なので汚染菌になりやすい → 誤り(皮膚にいますが病原性が非常に高いため、コンタミと決めつけてはいけません。見つけたら即座に主治医へ報告し、治療を検討するレベルの真の菌血症です。)
  • バチルス属はすべて汚染菌である → 誤り(大部分は環境からの汚染ですが、炭疽菌(B. anthracis)だけは例外で極めて危険な病原菌です。)
  • 大腸菌は汚染菌になりやすい → 誤り(大腸菌などの腸内細菌科が血液培養から出た場合は、尿路感染や胆管炎などからの血流感染(敗血症)を示す真の菌血症です。)

血液培養のルール

血液培養のルールはこの2つだけです。

  • コンタミになりやすい = CNS、アクネ菌(Cutibacterium〔旧Propionibacteriumacnes)、コリネ、バチルス
  • 絶対にコンタミと決めつけない = 黄色ブドウ球菌(S. aureus

同じブドウ球菌でも、黄色ブドウ球菌とCNS(表皮ブドウ球菌など)で扱いが天と地ほど違うことを理解しておきましょう。

さい
さい
コンタミを「真の菌血症」だと勘違いしてしまうと、患者さんに不要な抗菌薬を長期間投与することになり、耐性菌を生み出す原因になってしまいます。

さいの補足:なぜ血液培養は「2セット」採るのか?

血液培養は必ず「左右の腕など、別の場所から2回(2セット)採血する」のが国際的なルールです。その最大の理由が「コンタミを見破るため」です。

もし本当に血液中に菌が流れている(真の菌血症)なら、右腕から採っても左腕から採っても同じ菌が生えてきます(2セットとも陽性)。

しかし、採血した時にたまたま針に皮膚の菌がくっついた場合(コンタミネーション)は、片方の腕のボトルだけが陽性になり、もう片方のボトルは陰性になります。このように「片方のセットだけ陽性になったらコンタミを疑いますが、生えてきた菌種や陽性になるまでの時間、患者さんの臨床症状もあわせて総合的に判断します」。この判断を可能にするため、必ず2セット採血を行っているのです。

問77:微生物検査におけるパニック値(緊急異常値)

【問題】
微生物検査において担当医師への緊急連絡を要する検査結果はどれか。2つ選べ。

  • 1.鼻腔からMRSAが検出された。
  • 2.糞便から腸管出血性大腸菌が検出された。
  • 3.尿からNeisseria gonorrhoeaeが検出された。
  • 4.喀痰からMycobacterium aviumが検出された。
  • 5.血液からStreptococcus pyogenesが検出された。
タップして正答と解説を見る

正答:2、5

【問題の考え方】

この問題は、微生物検査の結果の中から、患者の生命に直結する、あるいは公衆衛生上、即座に対応が必要となる「クリティカルバリュー(パニック値・緊急異常値)」を見極める問題です。施設ごとに運用基準は異なりますが、本問では直ちに担当医へ報告すべき結果を聞いています。これに該当する結果が判明した場合、臨床検査技師は昼夜を問わず、直ちに担当医師に報告する義務があります。「急いで抗菌薬を入れないと死んでしまう」「急いで隔離しないと他の人にうつる」という基準で判断しましょう。

【各選択肢の解説(病態・緊急性)】

  • 1.誤り(緊急連絡は不要:鼻腔からのMRSA)
    MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の鼻腔からの検出は、悪さをしている感染症ではなく、菌がただ住み着いている保菌(コロナイゼーション)状態であることがほとんどです。手術前のスクリーニングや院内感染対策上は重要な情報ですが、患者の状態がすぐに急変するような事態ではないため、パニック値ではありません。
  • 2.正しい(緊急連絡が必要:糞便からの腸管出血性大腸菌)
    腸管出血性大腸菌(O157など)は、ベロ毒素を産生し、小児や高齢者で溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症といった致死的な合併症を引き起こす危険性があります。さらに、感染症法における「3類感染症」に指定されており、診断した医師は直ちに保健所への届出が義務付けられています。食中毒などの集団発生を防ぐ意味でも極めて緊急性の高い報告です。
  • 3.誤り(緊急連絡は不要:尿からの N. gonorrhoeae
    Neisseria gonorrhoeae(淋菌)は性感染症である淋病の原因菌です。当然治療が必要な疾患ですが、数時間〜1日遅れたからといって直ちに生命を脅かすものではありません。通常業務の時間内に報告すれば十分です。
  • 4.誤り(緊急連絡は不要:喀痰からの M. avium
    Mycobacterium avium(MAC)は非結核性抗酸菌(NTM)の一種で、肺MAC症の原因となります。結核とは異なり、通常は環境中から感染するため人から人へはうつりません。また病気の進行は年単位と非常に緩やかであるため、昼夜を問わず緊急連絡を行う必要はありません。
  • 5.正しい(緊急連絡が必要:血液からの S. pyogenes
    血液は本来「無菌」です。血液培養が陽性になったこと自体が敗血症を意味するクリティカルバリューであり、菌種に関わらず直ちに報告が必要です。その中でも特に Streptococcus pyogenes(A群β溶血性レンサ球菌)は、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS:いわゆる人食いバクテリア)を引き起こし、急速に多臓器不全に陥る危険が高いため、一刻も早い強力な抗菌薬治療が必要となる極めて緊急性の高い結果です。

【頻出】微生物検査室における主なパニック値まとめ

「患者の命が危ない」「周囲に広がる危険がある」ものをピックアップします。

検査結果(検体) 理由・リスク
血液培養の陽性(塗抹所見) 敗血症の証明。ただちに抗菌薬治療が必要。
髄液からの菌検出(塗抹・培養) 細菌性髄膜炎の証明。数時間の遅れが命取りになる。
結核菌(抗酸菌)の塗抹陽性 空気感染による院内アウトブレイクのリスク。即隔離が必要。
腸管出血性大腸菌、赤痢、コレラなど 感染症法上の直ちに届出が必要な疾患。集団食中毒の危険。
高度耐性菌(VRSA、VRE、CRE等) 院内感染対策上、施設基準に従って速やかに報告する。

間違えやすいところ(超重要引っかけ)

「結核」と「非結核性抗酸菌(MACなど)」はパニック値の扱いが天と地ほど違います。

  • 喀痰の抗酸菌塗抹陽性はパニック値である → 正しい(塗抹検査の時点では「結核」か「MAC」か区別できないため、空気感染の危険がある「結核」を疑い、最優先で医師に報告し、患者を陰圧室へ隔離します。)
  • 培養でMAC(M. avium)と確定したので緊急連絡した → 誤り(結核ではなくMACだと確定した場合、人から人へはうつらないため隔離は解除され、緊急連絡も不要になります。)
  • MRSAの検出は常にパニック値である → 誤り(血液から出た場合は敗血症なのでパニック値ですが、鼻腔などの保菌はパニック値ではありません。)

ここだけ覚えておけば大丈夫

微生物検査で電話をかけるべきシチュエーションは以下の3つです。

  • 無菌のはずの場所(血液・髄液)から菌が出た
  • 感染症法上、医師への迅速な報告が必要な病原体(結核、O157、赤痢など)が出た
  • 院内感染対策上、重要な耐性菌が出た(VRE、CREなど。施設マニュアルに従う)
さい
さい
血液培養の分析装置から「陽性シグナル」が出たら、すぐにグラム染色をして、球菌か桿菌かを主治医に電話で伝えるのが、臨床検査技師の大切な役目です!(細菌検査室があれば)

さいの補足:血液培養の「グラム染色所見の報告」の重要性

血液培養が陽性になったとき、菌の種類(名前)が特定できるまでにはさらに1〜2日かかります。しかし、敗血症の患者さんはそんなに待てません。

そこで検査技師は、陽性になったボトルから血液を取り出してすぐに「グラム染色」を行い、「グラム陽性球菌(ブドウ房状)」「グラム陽性球菌(連鎖状)」「グラム陰性桿菌」などの形態情報を先に電話で医師に伝えます。医師はこの「グラム染色の結果」を頼りに、最適な抗菌薬(エンピリックセラピー:初期経験的治療)を選択し投与を開始します。この最初の電話報告が、患者さんの生存率を大きく左右します。

問78:微生物の特殊染色法と対象菌

【問題】
染色法と対象となる微生物の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  • 1.墨汁法 ―― Candida albicans
  • 2.KOH法 ―― Trichophyton rubrum
  • 3.Grocott染色 ―― Pneumocystis jirovecii
  • 4.Giménez染色 ―― Mycoplasma pneumoniae
  • 5.Ziehl-Neelsen染色 ―― Legionella pneumophila
タップして正答と解説を見る

正答:2、3

【問題の考え方】

微生物学における様々な特殊染色法と、その染色法によって特異的に検出される微生物の組み合わせを問う定番問題です。グラム染色では染まりにくい菌や、特別な構造(莢膜など)を観察するための染色法を整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(原理と対象)】

  • 1.誤り(墨汁法)
    墨汁法は、墨の粒子が入れない領域を可視化する「陰性染色」です。主に、Cryptococcus neoformans(クリプトコッカス)などが持つ「厚い莢膜」を、黒い背景の中に白く抜けたハローとして観察するために用います。Candida albicans(カンジダ)は厚い莢膜を持たないため、対象になりません。
  • 2.正しい(KOH法 = KOH直接鏡検法)
    KOH(水酸化カリウム)直接鏡検法は、皮膚、爪、毛髪などの検体に含まれるヒトの細胞成分(ケラチンなど)を溶かして透明にし、真菌の要素を見やすくする検査法です。Trichophyton rubrum(白癬菌)は水虫などの原因となる皮膚糸状菌であり、本法はこれらを検出するための標準的な方法です。
  • 3.正しい(Grocott染色)
    Grocott(グロコット)染色は、真菌の細胞壁に含まれる多糖類を特異的に酸化し、メセナミン銀で還元して「黒色」に染める、真菌の細胞壁を染色する代表的な銀染色です。Pneumocystis jirovecii(ニューモシスチス・イロベチイ)は免疫不全患者に肺炎を起こす病原体で、エルゴステロールを持たないなど特殊な真菌に分類されます。ニューモシスチスはGrocott染色でその嚢子(シスト)壁が黒色に染色されるため、組織診断に必須とされています。
  • 4.誤り(Giménez染色)
    Gimenez(ヒメネス)染色は、Legionella pneumophila(レジオネラ)を赤色に染め出すためによく用いられる染色法です。Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ)は細胞壁を持たない特殊な細菌であり、集落の観察にはDienes(ディーネス)染色などが用いられます。
  • 5.誤り(Ziehl-Neelsen染色)
    Ziehl-Neelsen(チール・ネルゼン)染色は、結核菌・非結核性抗酸菌(NTM)・らい菌といった抗酸菌(Mycobacterium 属)を赤く染める染色法です。抗酸菌の細胞壁はミコール酸というロウ様物質に富むため、酸やアルコールによる脱色に抵抗性(抗酸性)を示します。Legionella pneumophila は抗酸性を持たないため、この染色では染まりません。

【頻出】主な特殊染色法と対象微生物まとめ

国家試験で狙われる「染色法とターゲット」の代表的な組み合わせです。

染色法・検査法 主な対象微生物 目的・特徴など
Ziehl-Neelsen染色 Mycobacterium
(結核菌・NTMなどの抗酸菌)
抗酸性を示す菌を赤色に染色
Gimenez染色 Legionella 属(レジオネラ) 組織内のレジオネラを赤色に染色
Grocott染色 真菌の細胞壁、Pneumocystis 真菌の細胞壁を黒色に染色
墨汁法 Cryptococcus neoformans 厚い莢膜を白く抜いて観察(陰性染色)
KOH直接鏡検法 皮膚糸状菌(白癬菌など) 角質を溶かして菌要素(菌糸)を観察

間違えやすいところ

名前の響きによる勘違いや、標的のすり替えに注意しましょう。

  • レジオネラは抗酸菌染色で染まる → 誤り(レジオネラは抗酸性を持たないので染まりません。ヒメネス染色を使います。)
  • カンジダの確認に墨汁法を用いる → 誤り(カンジダは莢膜を持たないため意味がありません。)
  • マイコプラズマはグラム染色で染まる → 誤り(細胞壁を持たないため、グラム染色では染まりません。)

ここだけ覚えておけば大丈夫

この問題は、以下の「染色」「キーワード」「目的」の組み合わせがわかれば解けます。

染色法・検査法 キーワード(対象) 目的・染まるもの
墨汁法 クリプトコッカス 厚い莢膜を白く抜いて見る
KOH直接鏡検 白癬菌(水虫) 角質を溶かして菌要素を見る
Grocott染色 真菌全般、ニューモシスチス 真菌の細胞壁を黒く染める
Gimenez染色 レジオネラ 組織内のレジオネラを赤く染める
Ziehl-Neelsen染色 抗酸菌(結核菌など) 抗酸菌を赤く染める
さい
さい
ヒメネス染色で「レジオネラ」を赤く染めるのは、病理検査や微生物検査でよく問われる定番の知識です。「レジのヒメ(レジオネラ・ヒメネス)」と覚えておきましょう!

さいの補足:その他の特殊染色(Dienes染色とNeisser染色)

選択肢にはありませんでしたが、以下の2つの染色も国家試験でたまに出題されます。

  • Dienes(ディーネス)染色:マイコプラズマの集落の観察に用いられます。寒天培地に生えた極小の集落を青く染め出し、マイコプラズマに特徴的な「目玉焼き状コロニー」を観察するのに必須の染色法です。
  • Neisser(ナイッセル)染色・Albert(アルバート)染色:ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)が細胞の端に持っている「異染小体(ポリリン酸の塊)」を染め出すための染色法です。

「マイコプラズマ=目玉焼き状=ディーネス」「ジフテリア=異染小体=ナイッセル」というキーワードだけでも頭の片隅に入れておくと安心です。

臨床微生物学(午後)の解説は以上です

お疲れ様でした。

今回の午後の臨床微生物学は、グラム染色画像からの菌種推定、薬剤耐性菌(MRSAやESBLなど)の特徴、ウイルス感染症、各種同定試験など、国家試験で繰り返し出題される重要テーマが中心でした。暗記だけでは対応しにくい問題もありますが、「ブドウ球菌だからカタラーゼ陽性」「このウイルスはRNAだから…」など、分類のルールを理解しておくと落ち着いて考えられるようになります。

微生物の名前と特徴の組み合わせは、一つひとつの菌やウイルスの「決定的な目印」を覚えることが得点への近道です。特徴とセットで整理しながら復習してみてください。

臨床微生物学は覚えることが多い分野ですが、一つひとつの知識がつながると大きな得点源になります。ぜひ過去問を繰り返し解きながら、自分の中で「なぜそうなるのか」を説明できるレベルまで理解を深めていきましょう。

さい
さい
お疲れ様でした!カタカナの学名や略語がたくさん出てきて最初は戸惑うかもしれませんが、焦らず「この菌の特徴はこれ!」と自信を持てるレベルまで、この解説で一緒に仕上げていきましょう。

各種SNSでの情報発信について

ブログの更新情報や、国家試験の学習に役立つ要点整理などを各SNSでも発信しています。日々の学習補助としてぜひご活用ください。

解説に関するご質問やリクエストなどがございましたら、各SNSのコメントやDMにてお気軽にご連絡ください。引き続き、皆様の国家試験対策を応援しております!