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第71回臨床検査技師国試 午前【臨床微生物学】全選択肢の正誤理由と覚え方まとめ

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こんにちは、臨床検査技師のさいです。

第71回臨床検査技師国家試験 午前「臨床微生物学(問68〜78)」を1問ずつ詳しく解説まとめしています。

臨床微生物学は、細菌や真菌の分類、選択分離培地、同定試験、抗菌薬の作用機序など、覚えることが多い分野です。一見すると暗記ばかりに思えますが、「なぜその培地を使うのか」「なぜその薬が効くのか」という原理を理解すると、一気に点数が伸びる科目でもあります。

本記事では、現場で働く臨床検査技師の視点も交えながら、できるだけイメージしやすい言葉で解説しました。国家試験対策はもちろん、微生物学実習や日々の復習にも活用していただければ幸いです。

※本記事の問題文および選択肢は、厚生労働省が公開している「第71回臨床検査技師国家試験問題および正答」をもとに掲載しています。

問68:原核生物と真核生物の分類

【問題】
原核生物はどれか。

  • 1.Aspergillus fumigatus
  • 2.Cryptococcus neoformans
  • 3.Microsporum canis
  • 4.Mycoplasma pneumoniae
  • 5.Pneumocystis jirovecii
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正答:4

【問題の考え方】

学名(ラテン語・イタリック体)が並んでいて難しく見えますが、実は「どれが細菌で、どれが真菌か?」を聞いているだけのシンプルな問題です。生物は大きく「原核生物」と「真核生物」に分けられます。この大きな枠組みを整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(病原体の分類)】

  • 1.誤り(Aspergillus fumigatus
    アスペルギルス・フミガータスは、環境中に広く存在するカビ(糸状菌)の一種です。カビは真菌であり、真核生物に分類されます。
  • 2.誤り(Cryptococcus neoformans
    クリプトコッカス・ネオフォルマンスは、厚い莢膜(きょうまく)を持つ酵母様真菌です。墨汁染色や莢膜抗原検査が有名です。真菌であるため、真核生物です。
  • 3.誤り(Microsporum canis
    ミクロスポルム・カニス(犬小胞子菌)は、犬や猫から人に感染し、白癬(皮膚糸状菌症)の原因となる菌の一つです。真菌であるため、真核生物です。
  • 4.正しい(Mycoplasma pneumoniae
    マイコプラズマ・ニューモニエは、マイコプラズマ肺炎の原因菌です。細胞壁を持たない細胞内寄生細菌であり、細胞壁を持たないためグラム染色では染色されません。分類上は立派な細菌であり、原核生物に該当します。したがってこれが正解です。
  • 5.誤り(Pneumocystis jirovecii
    ニューモシスチス・イロベチイは、免疫不全患者にニューモシスチス肺炎を引き起こす病原体です。旧名は Pneumocystis carinii(カリニ原虫) であり、以前は原虫扱いされていました。遺伝子解析により現在は真菌と判明していますが、エルゴステロールを欠くなど一般的な真菌とは異なる特徴も持ちます。真菌であるため真核生物です。

【頻出】原核生物と真核生物の違い

「細菌」と「真菌・ヒト」の細胞の作りの違いは国家試験で非常によく出題されます。

項目 原核生物(Prokaryote) 真核生物(Eukaryote)
該当する生物 細菌、マイコプラズマ、
リケッチア、クラミジア
真菌(カビ・酵母)、原虫、
植物、動物(ヒト)
代表例 結核菌、大腸菌、Mycoplasma など AspergillusCandidaCryptococcus
マラリア原虫、赤痢アメーバ など
核膜(核の包み) なし(DNAがむき出し) あり(DNAは核の中)
ミトコンドリア なし あり
リボソームのサイズ 70S(やや小さい) 80S(やや大きい)
細胞壁の主成分 ペプチドグリカンなど
(※マイコプラズマは壁なし)
キチン、グルカンなど
(※動物・ヒトは壁なし)

※ウイルス(インフルエンザ、HBVなど)は細胞の構造を持たないため、どちらにも分類されません。

間違えやすいところ

  • 真菌は植物である → 誤り(真菌は植物ではなく独立した「真菌界」の真核生物です。)
  • マイコプラズマは真核生物である → 誤り(細胞壁を持たないという特徴がありますが、分類上は細菌の仲間なので「原核生物」です。)
  • Pneumocystis jirovecii は原虫である → 誤り(以前はカリニ原虫と呼ばれていましたが、現在は真菌に分類が変更されています。国試でもこの変更を狙った引っかけが頻出します。)

この問題のポイント(合言葉)

学名ばかり並ぶ問題では、このフレーズを思い出してください。

「マイ(My)だけ細菌!」

Mycoplasmaだけが細菌(原核生物)です。これだけで一瞬で解けます。
国家試験でよく出る分類の枠組みもあわせて整理しましょう。

  • 原核生物 = 一般細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア
  • 真核生物 = 真菌、原虫

「カビ・酵母は全部真菌=真核生物」と覚えておくと安心です。

さい
さい
微生物の問題で学名が出てきても焦らないでください。「これはカビだ」「これは細菌だ」と日本語のグループ名に変換できれば、それだけで解ける問題はたくさんあります。

さいの補足:マイコプラズマに「ペニシリン」が効かない理由

ペニシリン系やセフェム系といった抗生物質(β-ラクタム系薬)は、細菌の「細胞壁の合成を邪魔する」ことで菌を退治します。
ヒト(真核生物)の細胞には細胞壁がないため、ヒトの体にはダメージを与えずに細菌だけをやっつけることができる素晴らしい薬です。

しかし、選択肢4のマイコプラズマは、細菌でありながら「細胞壁を最初から持っていない」という特殊な性質があります。そのため、細胞壁を壊すペニシリン系の薬を使っても、マイコプラズマには全く効果がありません。

そのためマイコプラズマ肺炎では、タンパク質の合成を邪魔するマクロライド系(アジスロマイシンなど)が第一選択となります。近年は耐性菌(マクロライド耐性マイコプラズマ)の増加も問題となっており、その場合はテトラサイクリン系やニューキノロン系が使用されます(年齢などを考慮)。
この問題の真髄というか、生物の構造の違いは、そのまま「薬の選び方(治療学)」の理解に直結しています。

問69:オキシダーゼ試験とブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌

【問題】
オキシダーゼ試験陰性を示すのはどれか。2つ選べ。

  • 1.Acinetobacter baumannii
  • 2.Bordetella pertussis
  • 3.Burkholderia cepacia
  • 4.Pseudomonas aeruginosa
  • 5.Stenotrophomonas maltophilia
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正答:1、5

【問題の考え方】

オキシダーゼ試験は、細菌が「シトクロムcオキシダーゼ」という呼吸酵素を持っているかを調べる検査であり、グラム陰性桿菌の鑑別において最初に行う超重要試験です。
この問題の選択肢はすべて大腸菌などの腸内細菌科「以外」の菌です。
ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌(NFB)の多くはオキシダーゼ陽性ですが、Acinetobacter属とStenotrophomonas maltophiliaは代表的な陰性菌です。この「例外」を知っているかが問われています。

【各選択肢の解説(国試キーワード)】

  • 1.正しい(Acinetobacter baumannii
    アシネトバクター・バウマンニは、オキシダーゼ陰性のブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌の代表です。ぽってりとした「球桿菌」の形態をとります。多剤耐性化(MDRA)が院内感染として問題になります。
  • 2.誤り(Bordetella pertussis
    ボルデテラ・パータシスは百日咳の原因菌です。小型のグラム陰性球桿菌で、オキシダーゼ陽性を示します。培養にはボルデ・ジャング培地などの特殊培地を必要とします。
  • 3.誤り(Burkholderia cepacia
    ブルクホルデリア・セパシアはブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌であり、オキシダーゼ陽性(弱陽性や反応が遅いこともある)です。多剤耐性菌として知られ、嚢胞性線維症患者などで問題となります。
  • 4.誤り(Pseudomonas aeruginosa
    シュードモナス・アエルギノーサ(緑膿菌)は、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌の王様であり、オキシダーゼ強陽性、OF試験 O+(酸化的利用)を示します。ピオシアニン(緑色色素)の産生、特異臭、金属光沢コロニーが特徴です。
  • 5.正しい(Stenotrophomonas maltophilia
    ステノトロフォモナス・マルトフィリアは、Acinetobacterと並ぶオキシダーゼ陰性のブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌の代表です。
    L1メタロ-β-ラクタマーゼなどを産生し、カルバペネム系に自然耐性を示すことがよくでます。

【頻出】グラム陰性桿菌の鑑別フロー(OF試験とオキシダーゼ)

グラム陰性桿菌は、まず「OF試験(酸化発酵試験)」と「オキシダーゼ試験」の組み合わせで大きくグループ分けされます。

グループ OF試験 オキシダーゼ 代表的な細菌
腸内細菌科 F(発酵的) 陰性 (-) E. coli(大腸菌)など
ビブリオ科など F(発酵的) 陽性 (+) Vibrio 属 など
非発酵菌(NFB) O(酸化的) 陽性 (+) Pseudomonas 属 など
N または O 陰性 (-) Acinetobacter
S. maltophilia

国家試験ではこれだけ!

試験で問われる代表的な菌はこのように分類して覚えましょう。

【オキシダーゼ陰性】

  • 腸内細菌科(全て!)
  • Acinetobacter
  • Stenotrophomonas

【オキシダーゼ陽性】

  • Pseudomonas
  • Vibrio
  • Campylobacter
  • Neisseria
  • Bordetella

一言で覚えるなら(合言葉)

オキシダーゼ試験の陽性・陰性はこの語呂で完璧です。

① 腸内細菌科は「NO(陰性)」!
腸内細菌科(大腸菌、サルモネラなど)は例外なく陰性です。

② オキシないアシをステる!(非発酵菌の例外)
・オキシない = オキシダーゼ陰性
・アシ = Acinetobacter
・ステ = Stenotrophomonas

③ ピカビナ(オキシダーゼ陽性の代表格)
・ピ = Pseudomonas(緑膿菌など)
・カ = Campylobacter
・ビ = Vibrio
・ナ = Neisseria(淋菌など)

間違えやすいところ

  • オキシダーゼ陰性なら必ずブドウ糖を発酵する(OF=F) → 誤り(今回のアシネトバクターのように、陰性で発酵もしない菌がいます。)
  • Stenotrophomonas maltophilia はカルバペネム系に感性である → 誤り(L1メタロ-β-ラクタマーゼを持っているため、自然耐性です。)
  • Vibrio 属はオキシダーゼ陰性である → 誤り(ビブリオ属は「ピカビナ」の「ビ」なので陽性です。腸内細菌科との区別に使われます。)
さい
さい
グラム陰性桿菌が生えたら、まずはオキシダーゼ試験のろ紙に菌をこすりつけます。「色が変わらないな…大腸菌の仲間(腸内細菌科)か、アシネトバクターかな?」と考えたりします。

さいの補足:オキシダーゼ試験の試薬と偽陽性

オキシダーゼ試験で使われる試薬の名前と、陽性の時の「色」も国家試験で出題されるかも知れません。

  • 試薬名:Kovac(コバック)のオキシダーゼ試薬
    (1% テトラメチル-p-フェニレンジアミン二塩酸塩)
  • 陽性の色:酸化されて数秒以内に「紫黒色(濃青色)」に発色します。

ろ紙に試薬を染み込ませてコロニーをこすりつけるか、コロニーに直接試薬を滴下して色の変化を観察します。この際、金属製(鉄製)のループやニクロム線を使用すると、金属による酸化で「偽陽性」となることがあるため、白金線やプラスチックループ、木製スティックなどを用います。

問70:喀痰の品質評価(Geckler分類)

【問題】
Geckler分類を行う場合の顕微鏡倍率はどれか。

  • 1. 40倍
  • 2.100倍
  • 3.200倍
  • 4.400倍
  • 5.1,000倍
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正答:2

【問題の考え方】

微生物検査において、提出された喀痰(かくたん)が「本当に培養検査を行う価値のある良質な検体か(ただの唾液ではないか)」を判定する品質評価の問題です。培養結果の信頼性を確保するために、口腔内常在菌による汚染の程度を評価する方法です。顕微鏡で評価する「Geckler(ゲックラー)分類」の観察倍率と評価項目を問われています。

【各選択肢の解説(各倍率の使い分け)】

微生物検査における顕微鏡の倍率は、「何を見たいか」によって使い分けられます。

  • 1.誤り(40倍)
    対物4倍×接眼10倍の極めて低い倍率です。スライド全体の観察や対象物の検索に用いられます。Geckler分類の基準ではありません。
  • 2.正しい(100倍:弱拡大、LPF)
    対物10倍×接眼10倍の倍率です。弱拡大(LPF:Low Power Field)とも呼ばれます。Geckler分類は、グラム染色標本を用いて、1視野に「白血球(好中球)」「扁平上皮細胞」がそれぞれ何個あるかをカウントして品質を評価します。広い視野で細胞の数や分布(全体像)を把握する必要があるため、この「100倍」で観察するのがルールです。
  • 3.誤り(200倍)
    対物20倍を用いた200倍観察は一部で使用されますが、Geckler分類では用いません。
  • 4.誤り(400倍:強拡大)
    対物40倍×接眼10倍です。細胞の形態をより詳しく見たり、真菌やトリコモナスなどの大きな微生物を探したりする際に使います。
  • 5.誤り(1,000倍:油浸)
    対物100倍(油浸レンズ)×接眼10倍です。細菌の形態、配列、Gram陽性・陰性の確認を行う倍率です。細胞の数を数えるのには視野が狭すぎて不向きです。

【頻出①】Geckler分類の判定基準

「100倍」の視野で数えた細胞の割合によってグループ分けします。国家試験では数字よりも「多い・少ない」のイメージで十分対応できます。

グループ 白血球
(好中球・感染のサイン)
扁平上皮細胞
(唾液混入のサイン)
評価
4・5 多い 少ない 良質検体
3 中間 中間 境界(ボーダーライン)
1・2 少ない 多い 不良(唾液・再採取)
6 多い 多い 再採取検討(※炎症も唾液汚染も強い)

【頻出②】ミクロ(顕微鏡)とマクロ(肉眼)の評価法

名前のすり替え問題がよく出ます。セットで整理しましょう。

評価法 評価の方法 内容・指標
Geckler分類 顕微鏡的評価(100倍) 白血球と扁平上皮細胞の数
Miller & Jones分類 肉眼的評価(マクロ) M(粘液・唾液)かP(膿)かで5分類

国家試験ポイント:これだけは覚えよう!

喀痰評価について、以下の5点はよく出題される重要事項です。

  • Geckler分類 = 100倍(弱拡大:LPF)
  • 細菌形態・Gram染色の観察 = 1,000倍(油浸)
  • 良質検体 = Group 4・5
  • 扁平上皮細胞↑ = 唾液混入(不適)
  • 白血球(好中球)↑ = 感染巣由来(良質)

間違えやすいところ

  • Geckler分類は肉眼的な品質評価法である → 誤り(顕微鏡的評価法です。肉眼はMiller & Jonesです)
  • 扁平上皮細胞が多いほど良質な検体である → 誤り(扁平上皮細胞は口の中にいる細胞なので、これが多いということは「肺の奥からの痰ではなく、ただの唾液」であることを意味します)
  • グループ6は細胞が少なく評価不能である → 誤り(グループ6は白血球も扁平上皮も「両方とも大量にある」状態です。炎症は強いものの唾液による汚染も著しいため、再採取が検討されます)

暗記方法・覚え方のコツ

Geckler分類は「Good(良い)=Group 4・5」と覚えましょう。

  • 白血球↑(炎症あり・戦う細胞が多い)
  • 扁平上皮↓(唾液が少ない・口の細胞が少ない)

この組み合わせが「Good(良質検体)」です。これだけ覚えておけば国試は突破できます。

さい
さい
扁平上皮細胞は「口腔内(口の中)の細胞」、白血球は「感染と戦っている細胞」です。「口の細胞が少なくて、戦う細胞がたくさんいる」という条件を満たすものが、肺の奥からしっかり出た良質な痰(膿)ということです。

さいの補足:なぜ不良な検体を培養してはいけないのか?

口の中(口腔内や咽頭)には、健康な人でも何百種類もの「常在菌(普段から住み着いている無害な菌)」が大量に存在しています。

もし、唾液がたくさん混じった不良な検体をそのまま培地に塗って培養してしまうと、この「無害な口の常在菌」が培地いっぱいに生えてしまい、本当に肺炎を起こしている「肺の奥の悪い菌(起炎菌)」を見つけ出すことができなくなります。さらに、常在菌を起炎菌と勘違いして誤った抗菌薬を投与してしまう危険性もあります。

だからこそ、グラム染色を用いて「100倍」で品質を評価し、唾液成分が多い場合は病棟に「うがいをしてからもう一度、肺の奥から痰を出してください(再提出)」とお願いすることが重要です。
良質検体であることが確認できれば、その後1,000倍(油浸)で細菌の形態や優勢菌を詳しく観察し、数日後に出てくる培養結果との整合性を評価します。

問71:有芽胞菌の同定と分類

【問題】
有芽胞菌はどれか。

  • 1.Bacillus anthracis
  • 2.Bordetella pertussis
  • 3.Cutibacterium acnes
  • 4.Klebsiella pneumoniae
  • 5.Moraxella catarrhalis
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正答:1

【問題の考え方】

有芽胞菌(過酷な環境に耐える「芽胞」を作る能力を持った細菌)を選ぶ問題です。芽胞を形成する細菌のグループは限られているため、学名の最初の単語(属名)を見るだけで瞬時に解答を導き出せるボーナス問題です。

【各選択肢の解説(国試キーワード)】

  • 1.正しい(Bacillus anthracis:バチルス・アントラシス)
    炭疽(たんそ)菌のことです。Bacillus好気性または通性嫌気性のグラム陽性有芽胞桿菌の代表グループです。炭疽菌のほか、食中毒の原因となるセレウス菌(B. cereus)や枯草菌(B. subtilis)などが含まれます。
  • 2.誤り(Bordetella pertussis:ボルデテラ・パータシス)
    百日咳の原因菌です。小型のグラム陰性球桿菌であり、芽胞は持ちません。培養にはボルデ・ジャング培地などの特殊培地が必要です。
  • 3.誤り(Cutibacterium acnes:クチバクテリウム・アクネス)
    尋常性ざ瘡(ニキビ)の原因菌です(旧名は Propionibacterium acnes)。皮膚の常在菌であり、嫌気性のグラム陽性桿菌ですが、芽胞は形成しません。近年では人工関節やペースメーカーなどのデバイス関連感染症の原因菌としても重要です。
  • 4.誤り(Klebsiella pneumoniae:クレブシエラ・ニューモニエ)
    肺炎桿菌として知られるグラム陰性桿菌(腸内細菌科)です。芽胞は持ちませんが、非常に立派な「莢膜(きょうまく)」を持つのが最大の特徴であり、ムコイド型と呼ばれるネバネバしたコロニーを形成します。
  • 5.誤り(Moraxella catarrhalis:モラクセラ・カタラーリス)
    中耳炎や呼吸器感染症の原因となるグラム陰性球菌です。芽胞は持ちません。β-ラクタマーゼ産生菌が多いことが臨床上重要です。

【頻出】有芽胞菌の代表的なグループまとめ

国家試験で出題される有芽胞菌は、事実上以下の2つの属(グループ)に絞られます。どちらも「グラム陽性桿菌」であることも重要な共通点です。

属名 酸素の好み(超重要) 代表的な細菌
Bacillus
(バチルス)
好気性
(または通性嫌気性)
B. anthracis(炭疽菌)
B. cereus(セレウス菌)
B. subtilis(枯草菌・納豆菌)
Clostridium
(クロストリジウム)
偏性嫌気性
(酸素に弱い)
C. tetani(破傷風菌)
C. botulinum(ボツリヌス菌)
C. perfringens(ウェルシュ菌)
Clostridioides difficile(CD菌 ※旧 Clostridium属)

【重要】「芽胞」と「莢膜」の比較

国家試験では「芽胞」と「莢膜(きょうまく)」を混ぜる問題が非常に多いため、表で整理しておきましょう。

項目 芽胞(Spore) 莢膜(Capsule)
構造の位置 細胞内構造 細胞外構造
病原因子・役割 熱・乾燥・消毒薬に強い(環境耐性) 貪食抵抗性(白血球から逃げる)
代表的な菌 Bacillus属、Clostridium Klebsiella、肺炎球菌 など

間違えやすいところ

「芽胞」と「莢膜」のすり替えや、病原性に関する引っかけとしてよく出題されます。

  • 肺炎桿菌は有芽胞菌である → 誤り(芽胞ではなく「莢膜」を持ちます。)
  • 有芽胞菌はグラム陰性桿菌である → 誤り(有芽胞菌の代表であるBacillus属もClostridium属も「グラム陽性桿菌」です。)
  • 芽胞は細菌が増殖するための構造である → 誤り(芽胞は増殖のためではなく、環境が悪化した際に生き残るための休眠形態です。)
  • 芽胞はアルコール消毒で死滅する → 誤り(芽胞は極めて耐久性が高く、通常のアルコールや煮沸では死滅しません。オートクレーブが必要です。)

ここだけ覚えておけば大丈夫(国家試験ポイント)

  • 芽胞を作るのは BacillusClostridium
  • どちらもグラム陽性桿菌
  • Bacillus = 好気性
  • Clostridium = 偏性嫌気性

一言で覚えるなら(合言葉)

有芽胞菌はこの語呂合わせで一網打尽にできます。

「バチとクロだけ芽胞」

  • バチ = Bacillus(バチルス属)
  • クロ = Clostridium(クロストリジウム属)

学名の最初が「Bacillus」か「Clostridium」で始まっていれば、それは間違いなく有芽胞菌です。さらに、酸素要求性の違いは以下のように覚えましょう。

「バチは空気好き、クロは空気嫌い」

さい
さい
芽胞は、細菌にとっての「冬眠カプセル」のようなものです。栄養がない、熱い、乾燥しているといった過酷な環境になると、自分の中に硬い殻(芽胞)を作って何十年も休眠し、再び環境が良くなると発芽して活動を再開します。

さいの補足:芽胞を滅菌するためには?

芽胞は極めて耐久性が高いため、消毒用エタノールや、100℃での煮沸消毒程度では死滅しません。そのため、医療現場や微生物検査室で確実に芽胞を破壊(滅菌)するためには、「高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)」を用います。

オートクレーブの標準的な条件である「121℃、15〜20分、約2気圧」は、このしぶとい芽胞を確実に死滅させるために設定された温度と時間です。この条件も国家試験でよく出題されます。

問72:細菌と選択分離培地の組合せ

【問題】
細菌と分離培地の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  • 1.Aeromonas hydrophila ―― TCBS寒天培地
  • 2.Bacteroides fragilis ―― BBE寒天培地
  • 3.Campylobacter jejuni ―― NAC寒天培地
  • 4.Clostridioides difficile ―― CCFA培地
  • 5.Neisseria meningitidis ―― PPLO寒天培地
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正答:2、4

【問題の考え方】

細菌を特定の培地で分離・培養することは、微生物検査において最も重要なステップの一つです。雑菌の多い検体(便や喀痰など)から、目的の病原菌だけを発育させるために「選択分離培地」が使われます。国試では「どの菌にどの培地を使うか」がアルファベットの略語で出題されるため、ペアで確実に覚えておきましょう。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(Aeromonas hydrophila:エロモナス・ハイドロフィラ)
    TCBS寒天培地(Thiosulfate-Citrate-Bile Salts-Sucrose Agar)は、腸炎ビブリオなどのVibrio属(ビブリオ属)の選択分離培地であり、Aeromonas属の分離培地としては用いられません。Aeromonas属は、普通寒天培地や腸内細菌科用のDHL寒天培地などによく発育します。
  • 2.正しい(Bacteroides fragilis:バクテロイデス・フラジリス)
    BBE寒天培地(Bacteroides Bile Esculin Agar)は、嫌気性菌であるBacteroides fragilis groupの選択分離培地です。この培地にはエスクリンが含まれており、菌がエスクリンを加水分解して「エスクレチン」を作り、それが培地中の鉄イオン(Fe³⁺)と反応して培地が真っ黒(黒変)になる特徴を利用して菌を見つけ出します。
  • 3.誤り(Campylobacter jejuni:カンピロバクター・ジェジュニ)
    カンピロバクターの選択分離には、スキロー(Skirrow)培地やバツラー(Butzler)培地、CCDA培地などを用い、微好気環境(約5%O₂・10%CO₂)・42℃で培養するのが最大の特徴です。NAC寒天培地は、ナリジクス酸などの抗菌薬を添加した緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の選択分離培地です。
  • 4.正しい(Clostridioides difficile:CD菌)
    CCFA培地(Cycloserine-Cefoxitin-Fructose Agar)は、偽膜性大腸炎の原因となるCD菌(旧 Clostridium difficile)の選択分離培地として広く用いられます。フルクトースを分解し、特徴的な黄色コロニーを形成します。
  • 5.誤り(Neisseria meningitidis:ナイセリア・メニンギティディス)
    髄膜炎菌(Neisseria属)は栄養要求性が厳しいため、チョコレート寒天培地や、雑菌を抑える抗菌薬が入ったサイアー・マーチン(Thayer-Martin)寒天培地で培養されます。PPLO寒天培地は、細胞膜にコレステロールが必要なマイコプラズマ(Mycoplasma属)の分離に用いられる特殊な培地であり、目玉焼き状(Fried-egg)コロニーを作ります。

【頻出】細菌と代表的な選択分離培地まとめ

国家試験では「培地名・目的菌・特徴」がセットで問われます。

培地名 目的菌(ターゲット) 超頻出特徴
TCBS寒天培地 Vibrio属(ビブリオ) ショ糖(スクロース)分解
BBE寒天培地 B. fragilis group エスクリン加水分解による黒変
CCFA培地 Clostridioides difficile 黄色コロニー
Skirrow(スキロー)培地 Campylobacter 42℃・微好気環境
Thayer-Martin培地 Neisseria(淋菌・髄膜炎菌) 抗菌薬入りのチョコレート寒天
PPLO寒天培地 Mycoplasma コレステロール・目玉焼き状コロニー
NAC寒天培地 緑膿菌P. aeruginosa ナリジクス酸などの抗菌薬添加

暗記方法・覚え方のコツ(アルファベットの頭文字)

培地の略語は、ターゲットとなる細菌の頭文字と結びつけると一瞬で覚えられます。

  • TCBS = Vibrio属は腸炎ビブリオなど海の菌)
  • NAC = 緑膿菌(昔からセットで暗記する定番)
  • BBE = Bacteroides(バクテロイデス)
  • CCFA = CD菌(クロストリジウム)
  • PPLO = マイコプラズマ専用

名前の由来を少しだけ知っておくと、記号の丸暗記から脱却できます。

国試で間違えやすいポイント

  • カンピロバクターは37℃で培養する → 誤り(高温を好むため42℃で培養します。この温度条件は超頻出です)
  • TCBS培地はエロモナス属の選択培地である → 誤りVibrio属の培地です。エロモナス属の除外に使われます)
  • PPLO培地は髄膜炎菌の選択培地である → 誤り(PPLO培地はマイコプラズマ用です)
さい
さい
大便の検査(糞便培養)では、大腸菌などの大量の常在菌の中から悪玉菌を見つけ出さなければなりません。そのため、疑われる病原菌に応じてサルモネラ用、ビブリオ用(TCBS)、カンピロバクター用など、複数の選択分離培地を組み合わせて使用します。

問73:抗微生物薬の分類(抗真菌薬など)

【問題】
抗真菌薬はどれか。

  • 1.アシクロビル
  • 2.イソニアジド
  • 3.フルコナゾール
  • 4.ミノサイクリン
  • 5.リファンピシン
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正答:3

【問題の考え方】

カタカナの薬の名前が並んでいますが、「細菌」「真菌(カビ)」「ウイルス」「結核菌」のどれをやっつける薬なのかを整理しておけば確実に解けます。薬の名前の「おしり(接尾辞)」に注目するのが一番の近道です。

【各選択肢の解説(分類とターゲット)】

  • 1.誤り(アシクロビル)
    抗ウイルス薬です。主に単純ヘルペスウイルス(HSV)や水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に用いられます。ウイルス由来のチミジンキナーゼによりリン酸化されて活性化し、ウイルスのDNA合成(DNAポリメラーゼ)を阻害します。
  • 2.誤り(イソニアジド:INH)
    抗結核薬です。結核菌の細胞壁に特有の成分である「ミコール酸」の合成を阻害する、結核治療の第一選択薬(最も重要な薬)の一つです。
  • 3.正しい(フルコナゾール)
    アゾール系の抗真菌薬です。真菌のチトクロームP450(14α-脱メチル化酵素)を阻害し、細胞膜の主成分である「エルゴステロール」の合成を抑制します。カンジダ症やクリプトコッカス症に有効ですが、Aspergillus(アスペルギルス)属には無効であることは国試でよく狙われます。
  • 4.誤り(ミノサイクリン)
    テトラサイクリン系の抗菌薬(抗生物質)です。細菌のタンパク質合成(30Sリボソーム)を阻害します。マイコプラズマやクラミジア、リケッチアなどの細胞内寄生細菌にも有効です。
  • 5.誤り(リファンピシン:RFP)
    抗結核薬です。細菌のRNAポリメラーゼを阻害してRNA合成を止めます。結核菌以外にもブドウ球菌や髄膜炎菌などの一部の細菌に有効ですが、非常に耐性化しやすいため単独使用はほぼ行わず、他の薬剤と併用します。

【関連知識①】代表的な抗真菌薬の3大グループ

抗真菌薬は種類が少ないため、グループ名と代表薬をセットで覚えておきましょう。

グループ名 代表薬 作用機序(ターゲット)
アゾール系 フルコナゾール
イトラコナゾール
細胞膜(エルゴステロール)の合成阻害
※P450(14α-脱メチル化酵素)を阻害
キャンディン系 ミカファンギン 細胞壁(β-D-グルカン)の合成阻害
※ヒトにはβ-D-グルカンが存在しないため選択毒性が高い。
ポリエンマクロライド系 アムホテリシンB 細胞膜(エルゴステロール)に結合
※膜に孔(ポア)を形成し細胞内容物を漏出させる。

【関連知識②】国試で狙われる!抗微生物薬の標的部位まとめ

細菌と真菌の「壁」や「膜」を壊す薬は、薬理学でも頻出の比較ポイントです。

標的となる構造・物質 代表的な薬剤(グループ)
細胞壁(ペプチドグリカン合成阻害) β-ラクタム系(ペニシリンなど)【細菌】
細胞壁(β-D-グルカン合成阻害) キャンディン系(ミカファンギン)【真菌】
細胞膜(エルゴステロール合成阻害) アゾール系(フルコナゾール)【真菌】
細胞膜(エルゴステロールに直接結合) アムホテリシンB【真菌】

暗記方法・覚え方のコツ(薬の名前の法則)

薬の名前の「おしり(接尾辞)」を見ると、どの分類の薬かすぐに判別できます。

語尾(接尾辞) 分類(効く相手) 代表薬
〜ナゾール 抗真菌薬(カビ) フルコナゾール
〜ファンギン 抗真菌薬(カビ) ミカファンギン
〜ビル 抗ウイルス薬(ウイルス) アシクロビル
〜マイシン 抗菌薬(細菌)※例外あり エリスロマイシン
〜サイクリン 抗菌薬(細菌) ミノサイクリン
〜フロキサシン 抗菌薬(ニューキノロン系) レボフロキサシン

ここだけ覚えておけば大丈夫(国家試験頻出!)

この5つは得点源に直結するので、必ず暗記しておきましょう。

  • フルコナゾール = エルゴステロール合成阻害(※アスペルギルスには無効)
  • ミカファンギン = β-D-グルカン合成阻害
  • アムホテリシンB = エルゴステロールに結合(孔をあける)
  • イソニアジド = ミコール酸合成阻害
  • リファンピシン = RNAポリメラーゼ阻害(※尿がオレンジ色になる)
さい
さい
抗結核薬であるリファンピシンは、患者さんが尿や汗がオレンジ色になって驚かないように、事前にしっかり説明する(服薬指導)ことがとても大切です!

さいの補足:選択毒性(なぜヒトには効かないのか?)

微生物をやっつける薬を作る時の最大のテーマは、「ヒトの細胞は傷つけずに、病原体だけを攻撃する(選択毒性)」ことです。

例えば、ヒトの細胞膜は「コレステロール」でできていますが、真菌(カビ)の細胞膜は「エルゴステロール」でできています。この成分の違いを狙い撃ちにすることで、抗真菌薬はヒトへの影響をある程度抑えながら、真菌だけを壊すことができます。

また、ミカファンギンがターゲットとする細胞壁の成分「β-D-グルカン」も、ヒトの細胞には一切存在しません。そのため、非常に高い選択毒性(安全性の高さ)を発揮します。この「選択毒性」は、抗菌薬や抗真菌薬の働きを理解するうえで最も重要な考え方です。

問74:血液培養陽性菌の同定(Listeria monocytogenes

【問題】
血液培養にて検出された菌のGram染色所見(別冊No. 15A)とヒツジ血液寒天培地の集落(別冊No. 15B)を別に示す。本菌はCAMPテストおよび馬尿酸塩加水分解試験が陽性であった。考えられるのはどれか。

  • 1.Bacillus cereus
  • 2.Clostridium perfringens
  • 3.Enterococcus faecalis
  • 4.Listeria monocytogenes
  • 5.Streptococcus agalactiae
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正答:4

【問題の考え方】

グラム染色像、培地上の集落形態、そして生化学的性状の3つのヒントから起炎菌を同定する総合問題です。最後にグラム染色で形を確認して確定させる、細菌検査室のリアルな思考プロセスを体験しましょう。

【所見の読解と鑑別ステップ】

ステップ1:画像所見の確認

  • Gram染色(写真A):紫色に染まった、細長く短い形をしています。これは「グラム陽性桿菌(短桿菌)」です。
  • 培地所見(写真B):ヒツジ血液寒天培地上にスムース状の小さな集落を形成し、その周囲に「狭く弱いβ溶血」を認めています。

ステップ2:生化学的性状の確認
CAMPテスト(+)、馬尿酸塩加水分解試験(+)という強力なヒントがあります。国家試験では、「CAMP陽性・馬尿酸陽性」の組み合わせからまず Listeria monocytogenes(リステリア)Streptococcus agalactiae(B群レンサ球菌:GBS) の2菌種を鑑別させる問題が頻出です。どちらも血液寒天培地で「弱いβ溶血」を示すため、培地の所見だけでは鑑別できません。

ステップ3:最終鑑別
GBSは「球菌」、リステリアは「桿菌」です。写真Aが明らかに桿菌であるため、正解は Listeria monocytogenes と確定できます。

【各選択肢の解説】

  • 1.誤り(Bacillus cereus
    セレウス菌はグラム陽性「大桿菌」であり、写真よりもずっと大きく太い桿菌です。また、血液寒天培地では大きく広がった集落を作り、周囲に「広大で強いβ溶血」を示します。運動性陽性であり、芽胞形成が見られる点もリステリアとの重要な鑑別ポイントになります。
  • 2.誤り(Clostridium perfringens
    ウェルシュ菌は偏性嫌気性菌であるため、通常は嫌気培養を行います。本問のような5%CO₂培養条件では分離対象とは考えにくく、所見と一致しません。
  • 3.誤り(Enterococcus faecalis
    腸球菌はグラム陽性球菌であり、ヒツジ血液寒天培地では通常非溶血(γ溶血)を示します。
  • 4.正しい(Listeria monocytogenes
    リステリア・モノサイトゲネスは、グラム陽性短桿菌、弱いβ溶血、CAMPテスト陽性、馬尿酸加水分解陽性であり、すべての所見と完全に一致します。
  • 5.誤り(Streptococcus agalactiae:GBS)
    B群レンサ球菌は、弱いβ溶血、CAMPテスト陽性、馬尿酸加水分解陽性を示すため生化学的性状はリステリアとそっくりです。しかし、形態がグラム陽性連鎖「球菌」であるため、写真A(桿菌)の所見とは合致しません。

【頻出】リステリア(Listeria monocytogenes)の超重要キーワード

国家試験で必ず問われるリステリアの特徴です。セットで暗記しておきましょう。

項目 特徴・キーワード
基本性状 グラム陽性短桿菌、弱いβ溶血、カタラーゼ(+)
生化学的性状 CAMPテスト(+):黄色ブドウ球菌との矢じり状溶血
馬尿酸加水分解(+)、エスクリン分解(+)
運動性 25℃で運動性陽性(特有の「傘降り状運動」)
37℃では運動性低下。
増殖環境 4℃(冷蔵庫内)でも増殖可能
この性質を利用したCold enrichment(低温増菌)にも用いられる。
主な疾患 新生児や免疫不全者の髄膜炎・敗血症。妊婦の感染による流死産。

【国試ワンポイント】リステリアの6大キーワード

Listeria monocytogenes は以下の6点が頻出セットです。これだけ覚えておけばかなりの問題に対応可能です。

  • グラム陽性短桿菌
  • CAMP陽性(矢じり状溶血)
  • 馬尿酸陽性
  • カタラーゼ陽性
  • 25℃で傘降り運動(37℃で低下)
  • 4℃でも増殖(Cold enrichment)

間違えやすいところ

リステリアとGBS(S. agalactiae)のすり替え問題に注意しましょう。

  • CAMPテスト陽性のグラム陽性球菌はリステリアである → 誤り(リステリアは桿菌です。球菌ならGBSです。)
  • リステリアはカタラーゼ陰性である → 誤り(リステリアはカタラーゼ陽性です。GBSなどのレンサ球菌はカタラーゼ陰性なので、ここも重要な鑑別点になります。)
  • リステリアは37℃で活発に運動する → 誤り(37℃では運動性が低下し、25℃で傘降り状運動を示します。)
さい
さい
CAMPテスト陽性・馬尿酸陽性だけを見ると、ListeriaとGBSのどちらかまでは絞れます。最後は「桿菌か球菌か」をグラム染色で確認できれば正解です!

さいの補足:冷蔵庫で増えるリステリアと食中毒

リステリアの最大の特徴の一つが「4℃の低温(冷蔵庫内)でも増殖できること」です。

リステリアは4℃でも増殖できるため、冷蔵保存していても増殖することがあります。そのため妊婦ではナチュラルチーズや生ハムなどの非加熱食品に注意が必要です。健康な大人なら軽い胃腸炎で済みますが、免疫力が低下している人にとっては致命的になる怖い菌です。食品衛生や公衆衛生の分野でも頻出の知識です。

問75:感染症と原因微生物の組合せ

【問題】
感染症と原因微生物の組合せで正しいのはどれか。

  • 1.類鼻疽 ―― Burkholderia pseudomallei
  • 2.オウム病 ―― Bacillus anthracis
  • 3.放線菌症 ―― Bartonella henselae
  • 4.ライム病 ―― Chlamydia psittaci
  • 5.ネコひっかき病 ―― Rickettsia japonica
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正答:1

【問題の考え方】

感染症名と原因となる病原体(学名)の正しい組み合わせを選ぶ、定番問題ですね。動物由来感染症(ズーノーシス)やダニ媒介性感染症が多く含まれており、国試で非常によく狙われる重要菌種ばかりです。学名と疾患名をセットで整理しておきましょう。

【各選択肢の解説(病態・原因菌)】

  • 1.正しい(類鼻疽)
    類鼻疽(るいびそ:Melioidosis)は、土壌や水中に生息するグラム陰性桿菌(オキシダーゼ陽性)である Burkholderia pseudomallei(ブルクホルデリア・シュードマレイ) によって引き起こされる感染症です。熱帯・亜熱帯地域(特に東南アジアやオーストラリア北部)で多く見られ、重症の肺炎や敗血症を引き起こします。
  • 2.誤り(オウム病)
    オウム病の原因菌は Chlamydia psittaci(クラミジア・シッタシ) です。鳥類の糞便などに含まれる菌を吸い込むことで感染する人獣共通感染症です。Bacillus anthracis(バチルス・アントラシス) は、有芽胞グラム陽性桿菌である炭疽菌(炭疽の原因菌)です。
  • 3.誤り(放線菌症)
    放線菌症は、主に口腔内の常在菌である Actinomyces israelii をはじめとする Actinomyces(アクチノマイセス)属 による慢性化膿性肉芽腫性炎症です。硫黄顆粒(sulfur granule)と呼ばれる菌塊を形成します。Bartonella henselae(バルトネラ・ヘンゼレ) は、ネコひっかき病の原因菌です。
  • 4.誤り(ライム病)
    ライム病は、マダニによって媒介されるスピロヘータである Borrelia burgdorferi(ボレリア・ブルグドルフェリ) によって引き起こされる感染症です。初期には遊走性紅斑が現れ、進行すると顔面神経麻痺、房室ブロック、関節炎などをきたします。選択肢の Chlamydia psittaci は前述の通りオウム病の原因菌です。
  • 5.誤り(ネコひっかき病)
    ネコひっかき病は、ネコに引っかかれたり噛まれたりすること(およびネコノミを介した感染環)で感染する Bartonella henselae(バルトネラ・ヘンゼレ) によって引き起こされます。局所のリンパ節腫脹が特徴です。Rickettsia japonica(リケッチア・ジャポニカ) は、マダニが媒介する日本紅斑熱の原因菌であり、発熱・発疹・刺し口の三主徴が有名です。

【頻出】国試で狙われる感染症と病原体まとめ

学名、疾患名、そして「感染経路(媒介動物)」をセットで覚えましょう。

原因微生物(学名) 疾患名 感染経路・特徴
Burkholderia pseudomallei 類鼻疽 熱帯地域の土壌・水から感染
Chlamydia psittaci オウム病 鳥類(オウム・インコなど)の糞便吸入
Bartonella henselae ネコひっかき病 ネコの引っかき傷、ネコノミ
Borrelia burgdorferi ライム病 マダニ媒介、遊走性紅斑、顔面神経麻痺
Rickettsia japonica 日本紅斑熱 マダニ媒介、発熱・発疹・刺し口
Bacillus anthracis 炭疽 有芽胞菌。ウシやヒツジなどから感染
Actinomyces israelii など 放線菌症 口腔内常在菌、硫黄顆粒

【国試ワンポイント】

以下の6組は国家試験で頻出のペアなので、セットで暗記しておきましょう。かなり得点源になります。

  • 類鼻疽 = Burkholderia pseudomallei
  • オウム病 = Chlamydia psittaci
  • ネコひっかき病 = Bartonella henselae
  • ライム病 = Borrelia burgdorferi
  • 日本紅斑熱 = Rickettsia japonica
  • 放線菌症 = Actinomyces israelii

間違えやすいところ

名前や媒介動物のすり替えに注意しましょう。

  • ライム病はクラミジアが原因である → 誤り(ライム病はスピロヘータの一種である「ボレリア」が原因です。)
  • ツツガムシ病はマダニが媒介する → 誤り(ツツガムシ病はマダニではなく「ツツガムシ(ダニ目ツツガムシ科の幼虫)」が媒介します。マダニが媒介するのは日本紅斑熱やライム病、SFTSなどです。)
  • 炭疽菌はウイルスである → 誤りBacillus 属という、非常に耐久性の高い芽胞を作る立派な細菌です。)

暗記方法・覚え方のコツ(学名のヒント)

学名が覚えにくい時は、名前に隠されたヒントや語呂合わせを利用しましょう。

  • pseudo(シュード) = 「類似の」という意味 = 類鼻疽
  • psittaci(シッタシ) = 英語の parrot(パロット:オウム)と似た響き = オウム病
  • ジャポニカ(japonica = 日本 = 日本紅斑熱
  • ネコに引っかかれて「ばか、へん(Bartonella henselae)」ネコひっかき病
  • ライム絞ってボロボロ(Borreliaライム病
  • アントラクス(anthracis = 英語で炭疽の意味 = 炭疽菌

学名の意味が分かると、アルファベットの羅列がしっかりとした「意味のある名前」に見えてきますよ!

さい
さい
この問題は「感染症名→原因菌」だけでなく、「鳥ならオウム病」「猫ならネコひっかき病」「マダニならライム病・日本紅斑熱」と感染源や媒介動物まで一緒に覚えると忘れにくくなります!

さいの補足:リケッチアとツツガムシ病

ダニ媒介性リケッチア症として比較される代表的な感染症に、選択肢5の日本紅斑熱と並んで「ツツガムシ病」があります。

ツツガムシ病の原因菌は Orientia tsutsugamushi(オリエンティア・ツツガムシ)であり、ツツガムシ(ダニ目ツツガムシ科の幼虫)に刺されることで感染します。患者の刺し口(刺し傷が黒いかさぶたになったもの)を見つけることが診断の重要な手がかりとなります。日本紅斑熱とツツガムシ病は国試でセットで問われることが多いので、一緒に整理しておきましょう。

【補足:類鼻疽と鼻疽の違い】

  • 類鼻疽:Burkholderia pseudomallei(土壌・水などに生息)
  • 鼻疽:Burkholderia mallei(馬などの動物に感染する)

名前が似ていますが原因菌が異なるため注意しましょう。

問76:治療薬物モニタリング(TDM)対象薬

【問題】
治療薬物モニタリング〈TDM〉が必要なのはどれか。

  • 1.アンピシリン
  • 2.エリスロマイシン
  • 3.セファゾリン
  • 4.バンコマイシン
  • 5.メロペネム
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正答:4

【問題の考え方】

治療薬物モニタリング(TDM:Therapeutic Drug Monitoring)とは、患者の血液中の薬物濃度を測定し、一人ひとりに合わせて投与量を最適化する手法です。「有効血中濃度範囲(治療域)が狭い」薬物が対象となります。治療域とは、十分な効果が得られ、副作用も起こりにくい血中濃度の範囲を指します。抗菌薬の中でTDMが必須なグループは限られているため、そこを確実におさえましょう。

【各選択肢の解説(分類とTDMの必要性)】

  • 1.誤り(アンピシリン)
    ペニシリン系(β-ラクタム系)の抗菌薬です。β-ラクタム系の抗菌薬は全体的に安全域が広く、通常はTDMの対象ではありません。
  • 2.誤り(エリスロマイシン)
    マクロライド系の抗菌薬です。これも比較的安全域が広いため、通常はTDMの対象ではありません。
  • 3.誤り(セファゾリン)
    セフェム系(β-ラクタム系)の抗菌薬です。ペニシリン系と同様に安全域が広いため、通常はTDMの対象ではありません。
  • 4.正しい(バンコマイシン)
    MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)治療の切り札となるグリコペプチド系抗菌薬です。腎臓から排泄されるため、腎機能によって血中濃度が大きく変動します。治療域が狭く、高濃度になると腎毒性や聴器毒性(難聴)といった重篤な副作用のリスクが高まるため、TDMによる厳格な血中濃度管理が必須です。
  • 5.誤り(メロペネム)
    カルバペネム系(β-ラクタム系)の抗菌薬です。非常に強力な広域抗菌薬ですが、β-ラクタム系の仲間なので比較的安全域は広く、通常はTDMの対象ではありません。

【頻出】TDM対象薬のまとめ

国家試験でよく出題されるTDM対象薬をジャンル別に整理しておきましょう。

薬効分類 代表的な薬剤 注意すべき主な副作用・特徴など
抗菌薬(グリコペプチド系) バンコマイシン、テイコプラニン 腎機能障害、聴覚障害
抗菌薬(アミノグリコシド系) ゲンタマイシン、アミカシン など 腎機能障害、聴覚障害
抗真菌薬 ボリコナゾール 肝機能障害。CYP2C19遺伝子多型の影響で個人差が非常に大きい
強心薬 ジゴキシン 不整脈、消化器症状
抗不整脈薬 リドカイン 中枢神経症状など
抗てんかん薬 バルプロ酸、フェニトイン、カルバマゼピン 中枢神経症状など
免疫抑制薬 タクロリムス、シクロスポリン 腎障害など
気管支拡張薬 テオフィリン 痙攣、不整脈
気分安定薬(抗躁薬) リチウム リチウム中毒(振戦、意識障害)

【関連知識】国試で頻出!抗菌薬と対象菌のペア

TDM対象となる抗菌薬は、「何の菌を狙い撃ちにするか」が非常によく出題されます。

  • バンコマイシン → MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
  • アミカシン → 緑膿菌
  • ゲンタマイシン → 腸球菌(ペニシリン系抗菌薬との併用で著効)

暗記方法・覚え方のコツ(語呂合わせ)

抗菌薬のTDM対象はこの語呂合わせで一網打尽にできます。

「バン・ゲン・アミは測る」

  • バン = バンコマイシン(グリコペプチド系)
  • ゲン = ゲンタマイシン(アミノグリコシド系)
  • アミ = アミカシン(アミノグリコシド系)

ここだけ覚えておけば大丈夫

  • 治療域(安全な範囲)が狭い薬がTDMの対象
  • MRSA治療薬のバンコマイシンはTDMの代表格
  • アミノグリコシド系(ゲンタマイシンなど)も頻出
  • 現在のバンコマイシンTDMは「AUC評価」が推奨されている(※詳細は補足へ)
さい
さい
検査室では『今日のバンコマイシンのトラフ採血です』という依頼を受けることがよくあります。最近のガイドラインではAUC評価が推奨されていますが、国家試験ではトラフ値を問う問題も多いので両方覚えておきましょう!

さいの補足:採血のタイミングと最新のTDMガイドライン

TDMで血中濃度を測る際、「いつ採血するか」が極めて重要です。

  • ピーク値(最高血中濃度):点滴直後など濃度が一番高くなるタイミング。アミノグリコシド系など「濃度が高いほど菌をよく殺す(濃度依存性)」薬で、十分高い濃度に達しているかを確認するために測ります。
  • トラフ値(最低血中濃度・谷値):次の点滴を行う直前(濃度が一番低いタイミング)。薬が体内に蓄積して副作用の危険がないかを評価します。従来のバンコマイシンTDMで最も重視されていました。

【最新のバンコマイシンTDM(AUC評価)】
長年、バンコマイシンのTDMは「トラフ値」だけを見て投与量を決めていました。しかし最新のガイドラインでは、トラフ値だけでなく「現在はAUC(24時間薬物曝露量)を指標としたTDMが推奨」されています。具体的には「AUC/MIC 400~600」という範囲を目標に投与量を設計します。ただし、国家試験や一部の現場ではトラフ値を指標とした従来法が出題・実施されることもあるため、両方の概念を理解しておくことが重要です。

【レッドマン症候群】
バンコマイシンを急速に点滴すると、ヒスタミンが大量に放出されて首から上が真っ赤になり、血圧が下がる副作用が起こることがあります。これを防ぐため、点滴は1時間以上かけてゆっくり行います。国試では「レッドマン症候群」として有名ですが、現在はVancomycin infusion reaction(VIR)とも呼ばれます。

問77:インターフェロンγ遊離試験(IGRA)と結核診断

【問題】
インターフェロンγ遊離試験〈IGRA〉が診断に有用なのはどれか。

  • 1.結 核
  • 2.B型肝炎
  • 3.ネコひっかき病
  • 4.成人T細胞白血病
  • 5.後天性免疫不全症候群
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正答:1

【問題の考え方】

臨床微生物学・免疫学からの出題です。「IGRA(イグラ)= 結核感染(特に潜在性結核感染症)の診断に用いられる検査」という1対1の結びつきを知っていれば即答できる問題です。ツベルクリン反応に代わる非常に重要な検査として国家試験で頻繁に出題されます。

【各選択肢の解説(病態・検査)】

  • 1.正しい(結核)
    IGRA(Interferon-Gamma Release Assay)は、末梢血を採血し、結核菌特異抗原(ESAT-6、CFP-10など)で刺激した際に、患者のTリンパ球が放出するインターフェロンγ(IFN-γ)の放出量または放出細胞数を測定する検査です。活動性結核の補助診断や、潜在性結核感染症(LTBI)の診断に用いられます。
  • 2.誤り(B型肝炎)
    B型肝炎ウイルス(HBV)による感染症です。診断には血液中のHBs抗原やHBs抗体などの血清学的検査、またはHBV-DNAの測定が行われます。
  • 3.誤り(ネコひっかき病)
    細菌である Bartonella henselae(バルトネラ・ヘンゼレ)によって引き起こされます。診断には血清抗体検査やPCR法などが用いられます。
  • 4.誤り(成人T細胞白血病:ATL)
    ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染によって引き起こされる悪性腫瘍です。HTLV-1抗体検査やウイルスDNAの検出、特異な形態を持つ異常リンパ球(フラワーセル)の確認で診断します。
  • 5.誤り(後天性免疫不全症候群:AIDS)
    ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって引き起こされます。診断にはHIV抗原・抗体検査やHIV-RNAの測定が行われます。

【頻出】IGRAとツベルクリン反応の比較

「なぜツベルクリン反応ではなくIGRAが使われるようになったのか」という違いがよく問われます。ESAT-6とCFP-10はBCG株には存在しない抗原です。そのためBCG接種の影響をほとんど受けません。

項目 IGRA(最新) ツベルクリン反応(従来)
代表的な検査名 クォンティフェロン(QFT)
T-SPOT
ツベルクリン皮内反応(TST)
検査方法 採血(in vitro) 皮内注射(in vivo)
BCG接種の影響 受けない(偽陽性にならない) 受ける(偽陽性になりやすい)
NTM(非結核性抗酸菌)の影響 ほとんど受けない
※一部のNTM(M. kansasiiM. marinumなど)では交差反応を示すことがあります。
受ける(交差反応)
患者の来院回数 1回(採血のみ) 2回(注射日と48時間後の判定日)

国試で間違えやすいポイント(超重要)

IGRAは「感染したことがあるか」を調べる検査であり、「今結核菌がいるか」を調べる検査ではありません。IGRA単独では活動性結核と潜在性結核感染症(LTBI)の区別はできません。

  • IGRA陽性であれば、現在「排菌」していると診断できる → 誤り(IGRAは過去の感染の既往(治癒した後)でも陽性になるため、これだけで現在活動性の結核であるかは分かりません。)
  • IGRAはBCG接種の影響を受ける → 誤り(受けないのが最大の長所です。)
  • IGRAは結核菌のDNAを検出する検査である → 誤り(菌のDNAではなく、結核菌に対する「患者のT細胞の免疫反応」を測定しています。)

ここだけ覚えておけば大丈夫

この3つの言葉を見たら「結核の検査だ!」とすぐに結びつくようにしておきましょう。

  • IGRA(インターフェロンγ遊離試験)
  • クォンティフェロン(QFT)
  • T-SPOT

【活動性評価の重要性】

  • IGRA陽性 ≠ 活動性結核
  • 喀痰塗抹・培養・PCRや画像診断などで活動性を評価する
さい
さい
IGRAで覚えるべきポイントは3つだけです。「BCGの影響を受けない」「潜在性結核感染症の診断に有用」「活動性結核かどうかはIGRAだけでは判断できない」。この3つを押さえれば国家試験は十分対応できます。

さいの補足:QFTとT-SPOTの違い

日本で使われているIGRAには主に2種類があります。国家試験ではどちらも「IGRA」として扱われますが、測定の原理や使用する検体が少し違います。最近の国家試験でも出題されている重要な違いです。

  • クォンティフェロン(QFT):全血を使用します。血液中に放出されたIFN-γの「濃度(量)」をELISA法で測定します。
  • T-SPOT:末梢血単核球(PBMC)を分離して使用します。IFN-γを放出したT細胞の「数(スポット数)」をELISPOT法で数えます。

これらの検査は、活動性結核の補助診断だけでなく、結核患者と接触した医療従事者の健康管理や「接触者健診」などにおける「潜在性結核感染症(LTBI:感染しているが発病していない状態)」の診断に欠かせないツールとして臨床現場で大活躍しています。

問78:微生物の増殖様式と細胞内寄生性

【問題】
偏性細胞内寄生性を有するのはどれか。

  • 1.Bacteroides fragilis
  • 2.Cryptococcus neoformans
  • 3.Mycobacterium tuberculosis
  • 4.Mycoplasma pneumoniae
  • 5.Orientia tsutsugamushi
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正答:5

【問題の考え方】

臨床微生物学における増殖様式の分類問題です。「偏性(へんせい)」とは「絶対に〜しなければならない」という意味です。つまり「生きた細胞の中でないと絶対に増殖できない(寒天培地などの人工培地では発育しない)」微生物を選ぶ問題です。これに対して「通性(つうせい)」は「〜することもできる」という意味で、細胞内でも生きられるが人工培地でも増殖できるものを指します。この対比が分かれば一瞬で解けます。

【各選択肢の解説(病態・原理)】

  • 1.誤り(Bacteroides fragilis
    消化管の常在菌である嫌気性グラム陰性桿菌です。宿主細胞の外(腸管内など)で増殖する非細胞内寄生性の細菌であり、BBE寒天培地などの人工培地で発育します。
  • 2.誤り(Cryptococcus neoformans
    ハトの糞などに含まれる酵母様真菌です。通常は細胞外で増殖し、サブロー寒天培地などの人工培地で発育します(※マクロファージ内で生存する能力も持ちますが、偏性ではありません)。
  • 3.誤り(Mycobacterium tuberculosis
    結核菌です。マクロファージに貪食されてもその中で生き残り増殖することができる代表的な「通性」細胞内寄生性細菌です。小川培地などの人工培地でも発育(培養)できるため、偏性ではありません。
  • 4.誤り(Mycoplasma pneumoniae
    マイコプラズマ肺炎の原因菌です。細胞壁を持たない特殊な細菌で、気道上皮細胞の表面に吸着して増殖しますが、細胞の「中」には入りません。PPLO培地などの人工培地で培養可能です。
  • 5.正しい(Orientia tsutsugamushi
    ツツガムシ病の原因菌で、リケッチアの仲間です。ATPなどのエネルギー源を自分で十分に作れず宿主細胞に依存しているため、人工培地では発育できず、生きた細胞内でしか増殖できない「偏性細胞内寄生性」の細菌です。

【頻出】偏性と通性の細胞内寄生性まとめ

国家試験で問われる細胞内寄生性の代表例を整理しておきましょう。

分類 特徴(培養方法) 主な微生物
偏性
細胞内寄生性
生きた細胞が必要
(人工培地は不可)
すべてのウイルス、
リケッチア、クラミジア
通性
細胞内寄生性
細胞内でも増えるが、
人工培地でも発育可能
結核菌、レジオネラ、サルモネラ、リステリア、ブルセラ

国試で間違えやすいポイント

「偏性」と「通性」のすり替えが定番の引っかけです。

  • 結核菌は偏性細胞内寄生性である → 誤り(小川培地などで人工培養できるので「通性」です)
  • マイコプラズマは細胞内寄生性である → 誤り(細胞の「表面」にくっつきますが中には入りません)
  • クラミジアは人工培地で増殖できる → 誤り(ATPを作れない偏性細胞内寄生性なので、細胞培養が必要です)

一言で覚えるなら(語呂合わせ)

偏性細胞内寄生性は、この3つだけ暗記しておけば無敵です。

「偏屈な ウ・リ・ク は外に出ない」

  • 偏屈 = 偏性
  • = ウイルス全般
  • = リケッチア(RickettsiaOrientia
  • = クラミジア

これ以外の「細胞内寄生性」と書かれているものは、すべて「通性(結核など)」だと判断して構いません。

さい
さい
ウイルスを増やして検査したい時は、寒天培地ではなく「生きた細胞」が入った特殊な培養液(細胞培養)を使います。これも偏性細胞内寄生性だからです。

さいの補足:なぜわざわざ細胞の中に隠れるのか?

結核菌やサルモネラなどの「通性細胞内寄生性菌」は、外でも生きられるのに、あえて白血球(マクロファージ)の中に食べられて、その中で生き延びる道を選んでいます。

理由は主に2つあります。一つは「抗体や補体といった免疫の攻撃から身を隠すため(免疫逃避)」、もう一つは「マクロファージに乗って全身へ移動するため」です。トロイの木馬のように細胞の中に潜り込むため、これらの菌をやっつけるには抗体(液性免疫)ではなく、細胞ごと破壊するキラーT細胞などの「細胞性免疫」が主役となります。

臨床微生物学(午前)の解説は以上です

お疲れ様でした。

今回の午前の臨床微生物学は、原核生物と真核生物の分類、グラム陰性桿菌のオキシダーゼ試験、選択分離培地の目的菌、抗微生物薬の作用機序、IGRAの適応など、国家試験で繰り返し出題される重要テーマが中心でした。暗記だけでは対応しにくい問題もありますが、「この薬は細胞壁を壊すからマイコプラズマには効かない」「この培地はエスクリンを分解するから黒くなる」など、理由を理解しておくと初見の問題でも落ち着いて考えられるようになります。

微生物の名前と特徴の組み合わせは、一つひとつの菌の「決定的な目印」を覚えることが得点への近道です。リステリアならCAMP陽性のグラム陽性短桿菌、有芽胞菌ならBacillusとClostridiumというように、特徴とセットで整理しながら復習してみてください。

臨床微生物学は覚えることが多い分野ですが、一つひとつの知識がつながると大きな得点源になります。ぜひ過去問を繰り返し解きながら、自分の中で「なぜそうなるのか」を説明できるレベルまで理解を深めていきましょう。

さい
さい
お疲れ様でした!カタカナの学名がたくさん出てきて最初は戸惑うかもしれませんが、焦らず「この菌の特徴はこれ!」と自信を持てるレベルまで、この解説で一緒に仕上げていきましょう。

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