こんにちは、臨床検査技師のさいです。
この記事では、第72回臨床検査技師国家試験の午後問題より「臨床微生物学(問68〜78)」を解説まとめをしていきます。
午後の微生物学は、検体採取のベストなタイミングや、培養所見からの起因菌アプローチ、ウイルスマーカーの読み解きといった、現場のリアルな判断が問われる実践的な内容が中心となっています。
ただ丸暗記するのではなく、得られた検査結果からいかにして病態に結びつけるかという臨床的・論理的な思考力が試されます。
もし解説に気になる点がございましたら、SNSのDM等で気軽にお知らせください。
僕自身、受験生時代に既存の参考書を読んで「なぜこうなるのか分からない」とつまずいた経験が多々ありました。当時の自分と同じように悩む方の視点に立ち、少しでも学習のハードルを下げられるような解説を目指しています。
皆様の合格への一助となれば嬉しいです。
※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第72回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。
第72回 臨床検査技師国試 午後【臨床微生物学】
全選択肢の正誤理由と解説まとめ(問68〜78)
問68:消毒薬の分類と有効菌種
【問題】
中水準消毒薬はどれか。2つ選べ。
- 1.塩化ベンザルコニウム
- 2.クロルヘキシジン
- 3.グルタルアルデヒド
- 4.次亜塩素酸ナトリウム
- 5.ポビドンヨード
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正答:4、5
【解説】スポルディングの分類による消毒薬の水準
消毒薬は、殺微生物スペクトル(どの微生物に有効か)によって高水準、中水準、低水準の3つに分類されます。中水準消毒薬は、一般細菌、真菌、結核菌、およびエンベロープを持たないウイルス(ノロウイルスなど)に有効ですが、細菌の「芽胞」を完全に殺滅することはできません。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(低水準消毒薬)
塩化ベンザルコニウム(逆性石鹸)は低水準消毒薬です。一般細菌には有効ですが、結核菌や一部のウイルス、芽胞には無効です。 - 2.誤り(低水準消毒薬)
クロルヘキシジン(ヒビテン)も低水準消毒薬です。結核菌や芽胞には無効です。 - 3.誤り(高水準消毒薬)
グルタルアルデヒドは、芽胞を含むすべての微生物を殺滅できる高水準消毒薬(化学的滅菌剤)です。内視鏡などの器具専用です。 - 4.正しい(中水準消毒薬)
次亜塩素酸ナトリウム(ミルトンやハイターなど)は中水準消毒薬です。ノロウイルスや血液などの有機物汚染に対して強力な効果を発揮します。 - 5.正しい(中水準消毒薬)
ポビドンヨード(イソジンなど)は中水準消毒薬です。生体への毒性が比較的低く、手術部位の皮膚や粘膜の消毒に広く用いられます。
ポイント:微生物の抵抗性と消毒薬
- 抵抗性の強さ:芽胞 > 結核菌 > ノロウイルス(エンベロープなし) > 真菌 > 一般細菌 > インフルエンザウイルス(エンベロープあり)。
- 分類の指標:中水準と低水準を分ける最大の壁は「結核菌」に有効かどうか。
さいの補足
アルコール(消毒用エタノールなど)は結核菌に有効であるため「中水準消毒薬」に分類されます。低水準と勘違いしやすいので注意が必要です。ただし、ノロウイルス等のエンベロープを持たないウイルスには効果がありません。
問69:オキシダーゼ試験と腸内細菌科の例外
【問題】
オキシダーゼ試験陽性を示すのはどれか。
- 1.Citrobacter freundii
- 2.Escherichia coli
- 3.Plesiomonas shigelloides
- 4.Proteus mirabilis
- 5.Serratia marcescens
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正答:3
【解説】腸内細菌科の原則と「唯一の例外」
オキシダーゼ試験は、細菌が電子伝達系においてチトクロームcオキシダーゼという酵素を持っているかどうかを調べる検査です。臨床微生物学において、腸内細菌科に属する細菌は、基本的にオキシダーゼ陰性です。一方、Plesiomonas shigelloidesはオキシダーゼ陽性を示すグラム陰性桿菌で、腸内細菌科とは区別されます。腸内細菌科の菌をオキシダーゼ試験で大きく絞り込む際には、この違いが重要です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(陰性)
Citrobacter freundiiは、腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌であり、原則通りオキシダーゼ陰性です。 - 2.誤り(陰性)
Escherichia coli(大腸菌)は、腸内細菌科の代表菌種であり、オキシダーゼ陰性です。 - 3.正しい(陽性)
Plesiomonas shigelloidesは、腸内細菌科の中で唯一オキシダーゼ陽性を示す例外的な菌種です。淡水や泥に生息し、感染すると水様性下痢を引き起こします。 - 4.誤り(陰性)
Proteus mirabilisは、腸内細菌科に属し、尿路感染症などの原因となるオキシダーゼ陰性の桿菌です。 - 5.誤り(陰性)
Serratia marcescens(セラチア菌)は、腸内細菌科に属し、赤色色素(プロジギオシン)を産生することがあるオキシダーゼ陰性の桿菌です。
ポイント:オキシダーゼ試験陽性の代表菌
腸内細菌科以外で、国家試験によく出るオキシダーゼ陽性菌もセットで覚えておきましょう。
- Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)などのブドウ糖非発酵菌
- Vibrio属(ビブリオ属:コレラ菌や腸炎ビブリオなど)
- Campylobacter属(カンピロバクター属)
- Neisseria属(ナイセリア属:髄膜炎菌や淋菌など)
さいの補足
Plesiomonas shigelloidesは、以前はビブリオ科に分類されていましたが、現在はPlesiomonadaceaeに分類されています。オキシダーゼ陽性を示すため、オキシダーゼ陰性の腸内細菌科と区別する際のポイントになります。
問70:特定細菌の選択分離培地と覚え方
【問題】
Neisseria gonorrhoeaeの選択分離培地はどれか。
- 1.CCFA培地
- 2.DHL寒天培地
- 3.WYOα 寒天培地
- 4.Skirrow寒天培地
- 5.Thayer-Martin培地
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正答:5
【解説】選択分離培地を用いる理由(弱点補強)
Neisseria gonorrhoeae(淋菌)は、チョコレート寒天培地などの栄養豊かな培地で発育しますが、検査材料となる尿道分泌物や子宮頸管粘液、咽頭拭い液などには「常在菌」が大量に存在します。淋菌は発育のために栄養豊富な培地を必要とします。臨床検体には他の細菌も混在するため、淋菌を選択的に分離する目的でThayer-Martin培地などの選択培地が用いられます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
CCFA培地は、偽膜性腸炎の原因となるClostridioides difficile(CD)の選択分離培地です。 - 2.誤り
DHL寒天培地は、サルモネラや赤痢菌など、腸内細菌科細菌の分離に広く用いられる培地です。 - 3.誤り
WYOα寒天培地(またはBCYE-α培地)は、Legionella属菌(レジオネラ)の選択分離培地です。 - 4.誤り
Skirrow(スキロー)寒天培地は、微好気環境で培養するCampylobacter属菌(カンピロバクター)の選択分離培地です。 - 5.正しい
Thayer-Martin培地は、淋菌および髄膜炎菌の選択分離培地です。
暗記方法・覚え方のコツ(培地と菌のペア)
- 淋菌:「淋(淋菌)しい夜(ナイセリア)に、サイ(Thayer)がマーチ(Martin)」。
- カンピロバクター:「キャンプ(カンピロ)でスキ(Skirrow)ルアップ!」
- レジオネラ:「レジオネラは和洋(WYO)折衷(せっちゅう)」。
- C. difficile:「頭文字のCつながりでCCFA培地」。
さいの補足(弱点補強:TM培地の中身)
Thayer-Martin培地に添加されている抗菌薬の頭文字をとって「VCN」と呼びます。V(バンコマイシン)でグラム陽性菌を、C(コリスチン)で淋菌以外のグラム陰性菌を、N(ナイスタチン)で真菌の発育を抑制しています。この阻害のメカニズムも併せて覚えておくとよきです👍
問71:経路別予防策(空気感染・飛沫感染・接触感染)
【問題】
経路別予防策のうち空気感染対策が必要な疾患はどれか。
- 1.水痘
- 2.風疹
- 3.インフルエンザ
- 4.流行性耳下腺炎
- 5.RSウイルス感染症
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正答:1
【解説】空気感染のメカニズムと厳格な対策
院内感染対策の基本である「標準予防策(スタンダードプリコーション)」に追加して実施されるのが「経路別予防策」です。中でも空気感染(飛沫核感染)は、水分が蒸発して軽くなった直径5μm以下の病原体(飛沫核)が空気中を長時間・広範囲に浮遊し、それを吸い込むことで感染します。そのため、医療従事者は微粒子をブロックできるN95マスクを着用し、患者は病室の空気が廊下に漏れない陰圧個室に隔離するという極めて厳格な対策が必要となります。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.正しい(空気感染・接触感染)
水痘(水ぼうそう)は、空気感染を引き起こす代表的な疾患です。さらに水疱の内容物からの接触感染も起こるため、両方の対策が必要です。 - 2.誤り(飛沫感染)
風疹(三日ばしか)は、患者の咳やくしゃみなどの飛沫(5μmより大きい水滴)を浴びることで感染します。通常のサージカルマスクで予防可能な飛沫感染対策の対象です。 - 3.誤り(飛沫感染・接触感染)
インフルエンザは主に飛沫感染ですが、ウイルスが付着した手で鼻や口に触れることによる接触感染も起こります。 - 4.誤り(飛沫感染・接触感染)
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)も、主に飛沫感染および接触感染によって広がります。 - 5.誤り(接触感染・飛沫感染)
RSウイルス感染症は、乳幼児に重症肺炎などを引き起こします。非常に感染力が強く、主に手や物品を介した接触感染と、飛沫感染によって広がります。
暗記方法・覚え方のコツ(空気感染の3大疾患)
国家試験で出題される空気感染はこの「3つ」だけと割り切って暗記するのが最も効率的です。
- 対象疾患:結核、麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)
- ゴロ合わせ:「結核で、ますます(麻疹・水痘)空気感染」
さいの補足(N95マスクのフィッティング)
空気感染対策で用いる「N95マスク」は、0.3μmの微粒子を95%以上捕集できる性能を持っています。しかし、顔とマスクの間に隙間があると意味がありません。
- 装着時に必ず、息を吸ったり吐いたりして隙間がないか確認する「シールチェック(フィットチェック)」を実施することが大切です。
問72:鞭毛の有無と運動性(無鞭毛菌の暗記)
【問題】
鞭毛を有するのはどれか。
- 1.Acinetobacter baumannii
- 2.Bacillus anthracis
- 3.Campylobacter jejuni
- 4.Klebsiella pneumoniae
- 5.Shigella dysenteriae
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正答:3
【解説】無鞭毛菌を暗記して消去法で解く
細菌の運動性(鞭毛の有無)を問う問題は、頻出テーマです。多くの細菌は鞭毛を持ちますが、一部の「動かない菌(無鞭毛菌)」を確実に暗記しておくことで、消去法で瞬時に正解を導き出すことができます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(無鞭毛)
Acinetobacter baumannii(アシネトバクター・バウマニー)は、環境中に広く存在するブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌ですが、鞭毛を持たず運動性はありません。 - 2.誤り(無鞭毛)
Bacillus anthracis(炭疽菌)は、グラム陽性の有芽胞桿菌です。バチルス属(セレウス菌や枯草菌など)の多くは鞭毛を持ち運動性を示しますが、炭疽菌は例外的に無鞭毛であるのが特徴です。 - 3.正しい(有鞭毛)
Campylobacter jejuni(カンピロバクター・ジェジュニ)は、菌体の一端または両端に1本の極鞭毛を持ち、らせん状に回転しながら進む活発な運動性を示します。 - 4.誤り(無鞭毛)
Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)は、腸内細菌科に属しますが、分厚い莢膜(カプセル)に覆われており、鞭毛を持たないため運動性はありません。 - 5.誤り(無鞭毛)
Shigella dysenteriae(赤痢菌)も、腸内細菌科に属しますが例外的に鞭毛を持たず、運動性はありません。
暗記方法・覚え方のコツ(代表的な無鞭毛菌)
- 「動かない赤(赤痢菌)ちゃん、ハイハイ(肺炎桿菌)で、明日(アシネトバクター)も炭(炭疽菌)拾い」
さいの補足
カンピロバクターは、微好気環境(酸素濃度が低い状態)での培養が必要です。グラム染色標本では「カモメの翼(gull-wing)」と表現される特徴的なS字型やらせん状の形態を示すため、画像問題でも出題されたりします。
問73:培地の分類(基礎・鑑別・選択分離培地)
【問題】
選択分離培地はどれか。
- 1.BTB乳糖寒天培地
- 2.マンニット食塩培地
- 3.血液加ブルセラ寒天培地
- 4.トリプチケースソイ寒天培地
- 5.ブレインハートインフュージョン寒天培地
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正答:2
【解説】培地の役割による分類
細菌検査に用いる培地は、その役割から「基礎培地(一般培地)」「鑑別培地」「選択分離培地」などに大別されます。選択分離培地とは、目的とする特定の細菌だけを発育させ、他の不要な常在菌などの発育を抑制する成分(選択剤)を加えた培地のことです。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(鑑別培地)
BTB乳糖寒天培地は、乳糖の分解能によって腸内細菌科細菌などを鑑別する培地です。選択作用は弱いため、主に鑑別培地に分類されます。 - 2.正しい(選択分離培地)
マンニット食塩培地は、7.5%という高濃度の塩化ナトリウム(食塩)を含んでいます。この高い浸透圧により大部分の細菌は発育できませんが、耐塩性を持つStaphylococcus属(ブドウ球菌)のみが選択的に発育します。 - 3.誤り(基礎・強化培地)
血液加ブルセラ寒天培地は、嫌気性菌など発育に栄養を要する細菌を育てるための基礎的な培地(非選択培地)です。 - 4.誤り(基礎培地)
トリプチケースソイ寒天培地(TSA)は、抗菌薬感受性試験のベースなどにも使われる、多種多様な細菌を発育させるための一般的な基礎培地です。 - 5.誤り(基礎・強化培地)
ブレインハートインフュージョン(BHI)寒天培地は、栄養価が非常に高く、レンサ球菌など様々な細菌の発育に用いられる基礎培地です。
ポイント:培地の機能分類
- 選択分離培地:特定の菌だけを生やす(例:SS培地、マンニット食塩培地など)。
- 鑑別培地:生えた菌の性質を色などで見分ける(例:TSI培地など)。
- ※マンニット食塩培地などは、「選択(食塩)」と「鑑別(マンニット分解)」の両方の機能を持っています。
さいの補足
培地問題は「目的菌」と「抑制物質(選択剤)」のセットがよく問われます。マンニット食塩培地の選択剤は「7.5%塩化ナトリウム」です。また、腸管出血性大腸菌O157の選択分離に用いられる「ソルビトールマッコンキー(SMAC)寒天培地」などもよく出ますので併せて整理しておきましょう。
問74:MRSAの判定に用いる薬剤(薬剤耐性菌)
【問題】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌〈MRSA〉の判定に用いられるのはどれか。2つ選べ。
- 1.イミペネム
- 2.アンピシリン
- 3.オキサシリン
- 4.セファゾリン
- 5.セフォキシチン
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正答:3、5
【解説】メチシリンが使われない理由と代替薬
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、mecA遺伝子を獲得し、既存のβ-ラクタム系抗菌薬が結合できない「PBP2a(ペニシリン結合蛋白2a)」を産生するようになった強力な耐性菌です。
名前に「メチシリン」と付きますが、メチシリンは熱や保存に対して不安定であるため、現在の臨床検査(CLSIガイドラインなど)では、より安定で検出感度の高い「オキサシリン」や「セフォキシチン」をサロゲート(代替)薬として判定に用います。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
イミペネムはカルバペネム系抗菌薬です。MRSAはカルバペネム系を含むすべてのβ-ラクタム系抗菌薬に耐性を示しますが、MRSA自体のスクリーニング(判定)薬剤としては使用しません。 - 2.誤り
アンピシリンはペニシリン系抗菌薬です。多くの黄色ブドウ球菌はペニシリナーゼ(酵素)を産生してアンピシリンに耐性を示すため、MRSA特有のPBP2aの検出には不向きです。 - 3.正しい
オキサシリンは、メチシリンの代替としてMIC(最小発育阻止濃度)測定や寒天平板スクリーニング法などでMRSAの判定に広く用いられるペニシリン系抗菌薬です。 - 4.誤り
セファゾリンは第1世代セフェム系抗菌薬です。メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)の治療には第一選択となりますが、MRSAの判定用ディスクとしては用いません。 - 5.正しい
セフォキシチンはセファマイシン系抗菌薬です。mecA遺伝子の発現を強く誘導する性質(PBP2aを作らせる力が強い)があるため、ディスク拡散法においてMRSAを最も鋭敏に検出できる推奨薬剤です。
暗記方法・覚え方のコツ?(MRSAの判定薬剤)
- 「MRSAの判定は、オキ(オキサシリン)セフォ(セフォキシチン)で決まり!」と唱えて覚えましょう笑。
- キーワードの紐付け:MRSA = mecA遺伝子 = PBP2a = オキサシリン・セフォキシチン。
さいの補足(弱点補強:MRSAと判定されたら?)
MRSAと判定された場合、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系など「すべてのβ-ラクタム系抗菌薬」が臨床的に無効(耐性:R)とみなされます。
治療には、作用機序が全く異なる抗MRSA薬(バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、ダプトマイシンなど)が選択されます。
問75:ウイルスの基本構造と構成要素
【問題】
ウイルスの構造で正しいのはどれか。
- 1.細胞壁をもつ。
- 2.リボソームRNAをもつ。
- 3.核酸を包むタンパク質の殻をカプシドという。
- 4.ゲノムとしてDNAとRNAの両方を同時にもつ。
- 5.感染性を有する完全型ウイルス粒子をエンベロープという。
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正答:3
【解説】ウイルスの定義と特有の構造
ウイルスは、細菌や真菌のような「細胞」としての構造を持たない、極めて微小な感染性粒子です。自力で増殖したりエネルギーを作ったりすることができないため、宿主(ヒトなどの細胞)の機構を乗っ取って増殖する「偏性細胞内寄生性」を示します。そのため、細胞壁やリボソームなどの細胞小器官は一切持ち合わせていません。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
ウイルスは非細胞性の構造物であり、細胞壁や細胞膜といった構造を持ちません。(※細胞壁を持つのは細菌や真菌、植物などです。) - 2.誤り
ウイルスは自らタンパク質を合成する能力を持たないため、リボソームやリボソームRNAを有しません。タンパク質の合成は、完全に宿主細胞のリボソームに依存します。 - 3.正しい
ウイルスの遺伝情報である核酸(ゲノム)を保護するように包み込んでいるタンパク質の殻(シェル)のことを「カプシド」と呼びます。 - 4.誤り
ウイルスのゲノムは、DNAかRNAの「どちらか一方のみ」です。両方を同時にもつことは絶対にありません。 - 5.誤り
細胞外に放出された、感染性を有する完全なウイルス粒子のことを「ビリオン」と呼びます。「エンベロープ」は、一部のウイルスが持つ、カプシドのさらに外側を覆う脂質二重層の膜(宿主の細胞膜に由来)のことです。
ポイント:ウイルス学の用語整理
- ヌクレオカプシド:「核酸(ゲノム)」+「カプシド」を合わせた基本構造。
- ビリオン:感染能力を持った完成体のこと。(車で例えるなら、エンジンやタイヤなどがすべて組み上がって機能する状態)
- エンベロープ:ウイルスが細胞から脱出する際に、宿主の細胞膜を「コート」のように被って出てきたもの。
さいの補足(弱点補強:エンベロープと消毒薬)
このウイルスの構造知識は、問68の「消毒薬の選び方」に直結します。エンベロープは脂質の膜なので、アルコール(消毒用エタノールなど)で簡単に溶けてウイルスを破壊できます(例:インフルエンザ、コロナ)。逆に、エンベロープを持たない「むき出し」のウイルス(例:ノロウイルス、アデノウイルス)はアルコールが効きにくく、次亜塩素酸ナトリウムなどの強力な消毒薬が必要になります。
問76:細菌の酸素要求性(好気性菌と嫌気性菌の分類)
【問題】
通性嫌気性菌はどれか。2つ選べ。
- 1.Acinetobacter baumannii
- 2.Escherichia coli
- 3.Fusobacterium nucleatum
- 4.Legionella pneumophila
- 5.Streptococcus agalactiae
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正答:2、5
【解説】細菌の酸素要求性による分類
細菌は、発育に必要な酸素の条件(酸素要求性)によって、「偏性好気性菌」「通性嫌気性菌」「偏性嫌気性菌」「微好気性菌」などに分類されます。通性嫌気性菌とは、酸素があってもなくても発育できる細菌のことであり、日常の検査室で検出されるグラム陰性桿菌(腸内細菌科など)やグラム陽性球菌(ブドウ球菌やレンサ球菌など)の多くがこのグループに属します。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り(偏性好気性菌)
Acinetobacter baumannii(アシネトバクター・バウマニー)は、発育に酸素が絶対に必要な偏性好気性菌です。 - 2.正しい(通性嫌気性菌)
Escherichia coli(大腸菌)は腸内細菌科の代表菌であり、酸素の有無に関わらず発育できる通性嫌気性菌です。 - 3.誤り(偏性嫌気性菌)
Fusobacterium nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム)は、酸素が存在すると死滅または発育できない偏性嫌気性菌です。口腔内常在菌であり、歯周病や膿瘍の原因となります。 - 4.誤り(偏性好気性菌)
Legionella pneumophila(レジオネラ・ニューモフィラ)は、発育に酸素を要求する偏性好気性菌です。 - 5.正しい(通性嫌気性菌)
Streptococcus agalactiae(B群レンサ球菌/GBS)は、レンサ球菌属の他の多くの菌種と同様に、通性嫌気性菌に分類されます。
暗記方法・覚え方のコツ(酸素要求性の例外グループ)
大部分の菌は「通性嫌気性菌」であるため、数が少ない「偏性好気性」と「偏性嫌気性」の代表菌をゴロ合わせで暗記し、消去法を使うのが確実です。(またもや無理矢理なごろですみません)
- 偏性好気性菌:「緑の汗、百回レジで好気に働く」
緑(緑膿菌)の汗(アシネトバクター)、百(百日咳)回(結核菌)レジ(レジオネラ)で好気(偏性好気性) - 偏性嫌気性菌:「嫌な黒いバクが、ふっそり現れる」
嫌な(偏性嫌気性)黒い(クロストリジウム属)バク(バクテロイデス属)が、ふっそり(フソバクテリウム属)
さいの補足(弱点補強:微好気性菌)
もう一つ国試で狙われやすいのが、大気中(約21%)よりも低い酸素濃度(3〜15%)で最もよく発育する「微好気性菌」です。これには、前述の問72で登場したCampylobacter jejuniや、胃粘膜に定着するHelicobacter pyloriが該当します。これらも合わせて整理しておくと良いです。
問77:ウイルスと代表的な疾患の組合せ
【問題】
ウイルスと疾患の組合せで正しいのはどれか。
- 1.ロタウイルス 細気管支炎
- 2.アデノウイルス 手足口病
- 3.ヒトRSウイルス 急性胃腸炎
- 4.ムンプスウイルス 流行性耳下腺炎
- 5.コクサッキーウイルス 重症熱性血小板減少症候群
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正答:4
【解説】ウイルスと代表的な感染症
ウイルスと、それによって引き起こされる代表的な疾患の組み合わせを問う問題です。国試では、「このウイルスといえば何の疾患か」という基本的な組み合わせを整理しておくと、選択肢を判断しやすくなります。
【各選択肢の解説】
- 1.誤り(ロタウイルス → 急性胃腸炎)
ロタウイルスは、特に乳幼児の急性胃腸炎の原因となります。嘔吐や下痢を主症状とし、乳幼児では脱水に注意が必要です。細気管支炎との組み合わせは誤りです。 - 2.誤り(アデノウイルス → 咽頭結膜熱・流行性角結膜炎など)
アデノウイルスは、呼吸器感染症、結膜炎、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎など、さまざまな感染症の原因となります。型によっては胃腸炎を起こすこともあります。一方、手足口病はコクサッキーウイルスA群やエンテロウイルス71などのエンテロウイルスが主な原因です。 - 3.誤り(ヒトRSウイルス → 細気管支炎・肺炎)
RSウイルスは呼吸器感染症を起こし、特に乳幼児では細気管支炎や肺炎などの原因となります。急性胃腸炎との組み合わせは誤りです。 - 4.正しい(ムンプスウイルス → 流行性耳下腺炎)
ムンプスウイルスは、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因ウイルスです。耳下腺の腫脹が代表的な症状で、合併症として無菌性髄膜炎や難聴などがみられることがあります。 - 5.誤り(SFTS → SFTSウイルス)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、SFTSウイルスによる感染症です。主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺されることで感染しますが、感染した動物との接触や、患者の体液を介したヒト-ヒト感染も報告されています。コクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスは手足口病やヘルパンギーナなどの原因となるため、この組み合わせは誤りです。
【整理】ウイルスと代表的な疾患
国試で頻出の組み合わせです。確実に整理しておきましょう。
| ウイルス | 代表的な疾患 |
|---|---|
| ロタウイルス | 急性胃腸炎 |
| アデノウイルス | 咽頭結膜熱、流行性角結膜炎など |
| RSウイルス | 細気管支炎、肺炎 |
| ムンプスウイルス | 流行性耳下腺炎 |
| コクサッキーウイルス | 手足口病、ヘルパンギーナなど |
| SFTSウイルス | 重症熱性血小板減少症候群 |
さいの補足:SFTSについて
SFTSは、SFTSウイルスによるダニ媒介感染症です。主な感染経路は、SFTSウイルスを保有するマダニによる刺咬であり、発熱や消化器症状、血小板減少、白血球減少などがみられます。
また、感染したネコ・イヌとの接触や、患者の血液・体液を介したヒト-ヒト感染も報告されているため、マダニ以外の感染経路にも注意が必要な疾患です。
問78:TDM(治療薬物モニタリング)対象薬剤
【問題】
治療薬物モニタリング〈TDM〉が必要なのはどれか。
- 1.アミカシン
- 2.アンピシリン
- 3.イミペネム
- 4.エリスロマイシン
- 5.セファゾリン
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正答:1
【解説】TDMとは?
TDM(Therapeutic Drug Monitoring:治療薬物モニタリング)は、血中薬物濃度を測定し、その結果をもとに投与量や投与間隔を調整する方法です。
特に、治療効果が得られる血中濃度の範囲が狭い薬剤や、血中濃度と効果・副作用との関係が重要な薬剤で行われます。抗菌薬では、アミノグリコシド系やバンコマイシンなどが代表的なTDM対象薬です。
【各選択肢の解説】
- 1.正しい(アミカシン)
アミカシンはアミノグリコシド系抗菌薬です。腎毒性や耳毒性のリスクがあるため、血中濃度を測定して投与量や投与間隔を調整するTDMの対象となります。 - 2.誤り(アンピシリン)
アンピシリンはペニシリン系抗菌薬です。通常、TDMの対象とはしません。 - 3.誤り(イミペネム)
イミペネムはカルバペネム系抗菌薬です。通常、TDMの対象とはしません。 - 4.誤り(エリスロマイシン)
エリスロマイシンはマクロライド系抗菌薬です。通常、TDMの対象とはしません。 - 5.誤り(セファゾリン)
セファゾリンは第1世代セフェム系抗菌薬です。通常、TDMの対象とはしません。
【頻出】TDMの代表的な対象薬まとめ
国家試験で狙われる代表的なTDM対象薬を系統別に整理しました。
| 薬剤の分類(系統) | 代表的な薬剤名 |
|---|---|
| アミノグリコシド系抗菌薬 | アミカシン、ゲンタマイシン、アルベカシン |
| グリコペプチド系抗菌薬 | バンコマイシン、テイコプラニン |
| 抗てんかん薬 | フェニトイン、バルプロ酸、カルバマゼピン |
| 免疫抑制薬 | タクロリムス、シクロスポリン |
| 強心薬 | ジゴキシン |
| 気管支拡張薬 | テオフィリン |
| 気分安定薬 | リチウム |
さいの補足:トラフとピーク
TDMを実施する際は、薬物濃度を測定するタイミングも重要です。
トラフ値は、次の投与直前など、血中濃度が低くなるタイミングの濃度です。
ピーク値は、投与後に血中濃度が高くなるタイミングの濃度です。
ただし、どのタイミングの濃度を測定するかは、薬剤や投与方法によって異なります。
また、バンコマイシンでは従来、トラフ値を指標とするTDMが広く行われていましたが、現在は重症MRSA感染症に対してAUC/MIC(薬物濃度-時間曲線下面積)に基づくTDMが推奨されるように管理基準がアップデートされています。(※古い参考書の知識に注意しましょう!)
臨床微生物学(午後)の解説は以上です
第72回の臨床微生物学(午後問題)、お疲れ様でした。午前問題で問われた基礎知識を土台とし、検体採取のタイミングや薬剤感受性試験の解釈など、より応用的な思考力が試される構成となっていました。特に、血液培養陽性時のグラム染色からの起因菌推定や、各種ウイルスマーカーを用いた感染時期の特定は、実際のルーチンにおいても日常的に行われる重要なものです。
検査手順や同定フローは、一度理論を理解してしまえば確実な得点源となります。結果の丸暗記ではなく、なぜその培地や試薬を選択するのかという背景知識とともに復習を進めてください。そうすると強固な暗記になると思います。
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