臨床微生物学 PR

第72回臨床検査技師国試 午前【臨床微生物学】全選択肢の正誤理由と解説まとめ

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こんにちは。臨床検査技師のさいです。

今回は第72回臨床検査技師国家試験の午前問題から、「臨床微生物学」の解説をお届けします。

午前の微生物学分野(問68〜78)では、らせん菌や二形性真菌などの形態分類、グラム染色の術式の違い、消毒薬の適応、そしてESBL産生菌の確認試験など、臨床現場の実務に直結する実践的な問題が出題されています。

単なる知識の暗記にとどまらず、各試験の原理や病原体の特徴を論理的に結びつけて理解することが求められます。

解説内容に疑義がある場合は、各SNSのDMなどでご指摘ください。

僕が受験生の頃に参考書の解説だけではわからなかったことがあり、そういった受験生はたくさんいるのではないかと思い、少しでも助けになればと思い作成しています。皆様の国家試験対策にお役立てください。

※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第72回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。

第72回 臨床検査技師国試 午前【臨床微生物学】
全選択肢の正誤理由と解説まとめ(問68〜78)

問68:Cryptococcus neoformansと特殊染色

【問題】
Cryptococcus neoformansの莢膜の観察に適するのはどれか。

  • 1.墨汁法
  • 2.Hiss法
  • 3.Wirtz法
  • 4.Neisser法
  • 5.Hucker変法
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正答:1

【解説】ネガティブ染色による莢膜の可視化

Cryptococcus neoformans(クリプトコッカス・ネオフォルマンス)は、厚い多糖体の莢膜(カプセル)を持つ酵母様真菌です。墨汁法は、墨汁の粒子が莢膜を通過できない性質を利用したネガティブ染色であり、背景が黒く染まり、菌体周囲の莢膜が透明に白く抜けて観察されるため、本菌の迅速診断に極めて有用です。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.正しい
    墨汁法は、Cryptococcus neoformansの厚い莢膜を観察するための標準的な手法です。
  • 2.誤り
    Hiss(ヒス)法は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)やクレブシエラ属(Klebsiella属)などの「細菌の莢膜」を観察するための染色法です。真菌であるクリプトコッカスには通常用いられません。
  • 3.誤り
    Wirtz(ウィルツ)法は、バチルス属やクロストリジウム属などの細菌が形成する「芽胞」をマラカイトグリーンで緑色に染色する手法です。
  • 4.誤り
    Neisser(ナイセル)法は、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)などが持つ「異染小体(ボルメチン顆粒)」を染色する手法です。
  • 5.誤り
    Hucker(ハッカー)変法は、細菌の細胞壁の構造の違い(ペプチドグリカンの厚さ)を利用して分類する「グラム染色」の代表的な術式の一つです。

学習のポイント

  • 染色対象との紐付け:芽胞=Wirtz法、異染小体=Neisser法、細菌の莢膜=Hiss法など、特殊染色とその標的構造をセットで記憶します。
  • ネガティブ染色の原理:墨汁法は構造物自体を染めるのではなく、周囲を染めて標的を浮き上がらせる手法であることを理解しましょう。
さい
さい
Cryptococcus neoformansはハトの糞などに多く含まれ、免疫不全患者(HIV感染者など)において重篤な髄膜炎を引き起こします。

さいの補足

髄液中のクリプトコッカス抗原を検出するラテックス凝集法などの迅速診断キットも広く普及していますが、墨汁法による鏡検は現在でも基本かつ重要な検査です。また、培地上で本菌を分離する際には、サブロー寒天培地などが用いられます。

問69:グラム染色像による起因菌の推定

【問題】
喀痰のGram染色標本(別冊No. 14)を別に示す。考えられるのはどれか。

  • 1.Bacillus cereus
  • 2.Corynebacterium diphtheriae
  • 3.Staphylococcus aureus
  • 4.Streptococcus pyogenes
  • 5.Streptococcus pneumoniae
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正答:5

【解説】肺炎球菌の典型的な形態所見

問題の画像は喀痰のグラム染色標本です。背景に多数の好中球(多核白血球)が存在することから、化膿性の炎症が起きていることが分かります。その周囲に、青紫色に染まる「グラム陽性球菌」が観察されます。菌の配列に注目すると、2つが対になった「双球菌」であり、それぞれの菌体の外側がやや尖った「ランセット型」を呈しています。これは肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)に特徴的な形態です。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り
    Bacillus cereus(セレウス菌)は、芽胞を形成するグラム陽性の大型桿菌です。球菌ではありません。
  • 2.誤り
    Corynebacterium diphtheriae(ジフテリア菌)は、グラム陽性桿菌です。V字配列や柵状配列を示し、球菌ではありません。
  • 3.誤り
    Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)は、グラム陽性球菌ですが、ブドウの房状に不規則に配列(集簇)するのが特徴です。双球菌ではありません。
  • 4.誤り
    Streptococcus pyogenes(化膿レンサ球菌)は、グラム陽性球菌ですが、数個から多数が鎖状に連なる「連鎖状配列」を示すのが特徴です。
  • 5.正しい
    Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)は、グラム陽性の双球菌であり、ランセット型の形態を示します。市中肺炎の主要な起因菌です。

学習ポイント

  • グラム染色性と形態の紐付け:細菌の同定は「グラム陽性/陰性」「球菌/桿菌」「配列(双・連鎖・ブドウ状など)」の3要素を組み合わせて判断します。
  • 白血球貪食像の意義:好中球に貪食されている菌を見つけることは、その菌が単なる常在菌の混入ではなく、実際の感染の起因菌であることを強く示唆します。(重要)
さい
さい
喀痰塗抹検査で、ゲックラー(Geckler)分類等で良質な喀痰であることを確認したのち、この画像のような貪食像を伴うランセット型双球菌を発見した場合は、肺炎球菌性肺炎と推定することもできます。

さいの補足

肺炎球菌は厚い莢膜を持つため、ヒス(Hiss)法による莢膜染色も同定に有用です。また、培養検査においては血液寒天培地上でα溶血(緑色帯)を示し、オプトヒン感受性試験が陽性(発育阻止円を形成)となることが重要な確定診断の指標となります。
しかし…微生物学は覚えることが多いですね😭

問70:DNAウイルスとRNAウイルスの分類

【問題】
RNAウイルスはどれか。2つ選べ。

  • 1.コロナウイルス
  • 2.B型肝炎ウイルス
  • 3.サイトメガロウイルス
  • 4.インフルエンザウイルス
  • 5.ヒトパピローマウイルス
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正答:1、4

【解説】DNAウイルスを記憶し消去法で導く

ウイルスのゲノム(核酸)がDNAかRNAかを問う問題です。臨床的に問題となるウイルスの多くはRNAウイルスであるため、国家試験対策としては種類の少ない「DNAウイルス」を優先して暗記し、消去法でRNAウイルスを判別するのが効率的です。

【各選択肢のウイルスの分類】

  • 1.RNAウイルス(正しい)
    コロナウイルスは一本鎖RNAウイルスです。
  • 2.DNAウイルス(誤り)
    B型肝炎ウイルス(ヘパドナウイルス科)は不完全二本鎖DNAウイルスです。なお、A・C・E型肝炎ウイルスはRNAウイルスです。
  • 3.DNAウイルス(誤り)
    サイトメガロウイルスはヘルペスウイルス科に属する二本鎖DNAウイルスです。
  • 4.RNAウイルス(正しい)
    インフルエンザウイルス(オルソミクソウイルス科)は分節状の一本鎖RNAウイルスです。
  • 5.DNAウイルス(誤り)
    ヒトパピローマウイルスはパピローマウイルス科に属する二本鎖DNAウイルスです。

学習のポイント:DNAウイルスの暗記法

主要なDNAウイルスを覚えるためのゴロ合わせを紹介します。これらのウイルス以外が出題された場合は、原則としてRNAウイルスと判断します。

  • 「水筒にアサヒビール」
    水筒に(水痘・帯状疱疹ウイルス)、ア(アデノウイルス)、サ(サイトメガロウイルス)、ヒ(ヘルペスウイルス群/ヒトパピローマウイルス)ビール(B型肝炎ウイルス)
  • 「あさひビは」
    あ(アデノウイルス)、さ(サイトメガロウイルス)、ひ(ヘルペスウイルス群/ヒトパピローマウイルス)、ビ(B型肝炎ウイルス)、は(パルボウイルス)
さい
さい
B型肝炎ウイルスはDNAウイルスですが、C型肝炎ウイルスはRNAウイルスです。肝炎ウイルスの中でのゲノムの違いは単独でも出題されやすいため、注意して整理してください。

さいの補足

ヘルペスウイルス科には、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルスなどが含まれ、これらはすべてDNAウイルスです。
分類の階層(科レベルでの共通性)を意識すると、暗記の負担をさらに軽減できます。

問71:抗菌薬の作用機序と系統分類

【問題】
蛋白合成阻害作用を有する抗菌薬はどれか。

  • 1.キノロン系
  • 2.ペニシリン系
  • 3.マクロライド系
  • 4.グリコペプチド系
  • 5.ホスホマイシン系
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正答:3

【解説】細菌のどの部位を標的とするか

抗菌薬は、細菌の増殖に不可欠な構造や代謝経路を特異的に阻害することで効果を発揮します。ヒトの細胞には存在しない構造(細胞壁など)や、ヒトと構造が異なる器官(リボソームなど)を標的とすることで、選択毒性を持たせています。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(核酸合成阻害)
    キノロン系(フルオロキノロン系など)は、細菌のDNA複製に関与する酵素(DNAジャイレースやトポイソメラーゼIV)を阻害します。
  • 2.誤り(細胞壁合成阻害)
    ペニシリン系はβ-ラクタム系抗菌薬の代表であり、細菌の細胞壁(ペプチドグリカン)の架橋形成を担うペニシリン結合蛋白(PBP)と結合して細胞壁の合成を阻害します。
  • 3.正しい(蛋白合成阻害)
    マクロライド系は、細菌のリボソーム(50Sサブユニット)に結合し、タンパク質の合成過程を阻害します。
  • 4.誤り(細胞壁合成阻害)
    グリコペプチド系(バンコマイシンなど)は、ペプチドグリカン前駆体の末端(D-アラニル-D-アラニン)に結合し、細胞壁の合成を阻害します。MRSA感染症などに用いられます。
  • 5.誤り(細胞壁合成阻害)
    ホスホマイシン系は、細胞壁合成の初期段階に働く酵素(MurA)を阻害します。

作用機序による主要な抗菌薬の分類

作用機序 代表的な抗菌薬の系統 特徴・備考
細胞壁合成阻害 ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、グリコペプチド系など ヒトに細胞壁はないため選択毒性が高い。β-ラクタム系が大部分を占める。
蛋白合成阻害 マクロライド系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系 細菌のリボソーム(70S)を標的とする。
核酸合成阻害 キノロン系(DNA合成阻害)、リファンピシン(RNA合成阻害) DNAの複製やRNAの転写を阻害する。
葉酸合成阻害 ST合剤(サルファ剤・トリメトプリム) 細菌独自の葉酸合成経路を阻害する。
細胞膜機能障害 ポリミキシン系、ダプトマイシン 細胞膜の透過性を変化させる。

学習のポイント

  • 分類の整理:まずは「細胞壁」「蛋白」「核酸」の3大標的と、それに属する代表的な系統を一覧表で暗記することが得点への近道です。
  • 例外の把握:バンコマイシン(グリコペプチド系)はβ-ラクタム系ではありませんが、細胞壁合成阻害薬に分類されます。
さい
さい
薬剤耐性菌(AMR)の問題を解く上でも、抗菌薬の作用機序の理解は必須です。例えば、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、ペニシリン結合蛋白(PBP)が変異してβ-ラクタム系薬が結合できなくなった耐性菌です。

さいの補足

蛋白合成阻害薬の中で、マクロライド系はリボソームの50Sサブユニットに結合しますが、アミノグリコシド系やテトラサイクリン系は30Sサブユニットに結合します。このような結合部位の詳細な違いが国家試験で問われることもあります。

問72:らせん菌の同定と細菌の形態分類

【問題】
らせん菌はどれか。

  • 1.Actinomyces israelii
  • 2.Bordetella pertussis
  • 3.Helicobacter pylori
  • 4.Listeria monocytogenes
  • 5.Mycoplasma pneumoniae
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正答:3

【解説】細菌の形態分類と各菌の特徴

細菌はその形態から球菌、桿菌、らせん菌などに大別されます。Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)は、微好気性環境を好むグラム陰性のらせん菌(彎曲桿菌)です。そのらせん状の形態と一端にある複数の鞭毛の運動を利用して、粘稠な胃粘液層を通過し、胃粘膜表面に定着します。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(放線菌)
    Actinomyces israeliiはグラム陽性の桿菌ですが、菌糸のように分岐して発育する特徴的な形態(V字やY字型など)を示すため、放線菌と呼ばれます。
  • 2.誤り(短桿菌)
    Bordetella pertussis(百日咳菌)は、グラム陰性の短桿菌です。
  • 3.正しい(らせん菌)
    Helicobacter pyloriはグラム陰性のらせん菌です。カンピロバクター属(Campylobacter)なども同様に彎曲した桿菌・らせん菌として分類されます。
  • 4.誤り(桿菌)
    Listeria monocytogenes(リステリア菌)は、グラム陽性の小桿菌です。細胞内寄生性を示し、髄膜炎などの原因となります。
  • 5.誤り(多形性)
    Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ)は、細菌に特有の細胞壁を持たないため、特定の形態を維持できず多形性を示します。

学習のポイント

  • らせん菌の代表例:Helicobacter属、Campylobacter属のほか、スピロヘータ目(Treponema、Borrelia、Leptospiraなど)もらせん状の形態を持つ重要な病原体です。
  • マイコプラズマの特殊性:細胞壁を持たないため多形性を示すだけでなく、細胞壁合成阻害薬(ペニシリン系やセフェム系など)が無効であるという治療上の重要な特徴があります。
さい
さい
細菌の基本的な形態分類は、グラム染色性(陽性・陰性)とセットで記憶することが鉄則です。特徴的な形態を持つ菌は国家試験で頻出です。

さいの補足

Helicobacter pyloriは、ウレアーゼという酵素を強力に産生します。胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生成されたアンモニアで局所の胃酸を中和することで、強酸性の胃内環境でも生存できる巧妙なメカニズムを持っています。
この性質は迅速ウレアーゼ試験などの検査原理に応用されています。(尿素呼気試験)

問73:グラム染色(Hucker変法)の手順と試薬

【問題】
Hucker変法に用いるのはどれか。

  • 1.サフラニン
  • 2.メチレン青
  • 3.ビクトリア青
  • 4.石炭酸フクシン
  • 5.アセトン・エタノール
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正答:1

【解説】グラム染色の術式による試薬の違い

細菌の細胞壁の構造の違いを利用して染め分ける「グラム染色」には、いくつかの術式(変法)が存在します。
代表的なHucker(ハッカー)変法の手順は、
「第一染色:クリスタルバイオレット(紫)」→「媒染:ルゴール液」→「脱色:95%エタノール」→「後染色:サフラニン(赤)」です。
各染色法で用いられる試薬の組み合わせを正確に把握しておく必要があります。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.正しい(Hucker変法の後染色)
    サフラニンは、Hucker変法においてグラム陰性菌を赤く染めるための後染色(対比染色)液として用いられます。
  • 2.誤り
    メチレン青は、異染小体を観察するNeisser(ナイセル)染色の一部や、抗酸菌染色の対比染色(背景を青く染める)などに用いられます。
  • 3.誤り
    ビクトリア青は、日本で考案されたグラム染色の術式である「西岡法」の第一染色液として用いられます。
  • 4.誤り
    石炭酸フクシンは、結核菌などの抗酸菌を赤く染めるZiehl-Neelsen(チール・ネルゼン)染色の第一染色液として用いられます。
  • 5.誤り(引っかけ選択肢)
    アセトン・エタノール混液は、グラム染色の「Bartholomew-Mittwer(バルトロメー・ミットワー)法」における脱色剤です。Hucker変法では「95%エタノール」を単独で用いるため、この選択肢は誤りとなります。

学習のポイント

  • Hucker変法:第一染色=クリスタルバイオレット、脱色=エタノール、後染色=サフラニン
  • Bartholomew-Mittwer法:脱色=アセトン・エタノール混液(脱色力が強いのが特徴)
  • 西岡法:第一染色=ビクトリア青、後染色=希釈石炭酸フクシン
さい
さい
グラム染色に関する問題では、「どの染色の」「どの工程の」試薬なのかをクロスさせて引っかけを作るのが定番です。

さいの補足

Bartholomew-Mittwer法のアセトン・エタノール混液は脱色作用が強いため、脱色時間が短く迅速な染色が可能です。

問74:プラスミドと細菌の遺伝子伝達

【問題】
プラスミドで正しいのはどれか。

  • 1.ウイルスが保有する。
  • 2.一本鎖のRNAである。
  • 3.接合によって伝達する。
  • 4.染色体内に含まれる遺伝因子である。
  • 5.ゲノム上を転移できる塩基配列である。
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正答:3

【解説】プラスミドの基本特性

プラスミドは、細菌の染色体(核様体)とは独立して細胞質内に存在し、自律的に複製を行う「染色体外遺伝因子」です。
生命維持に必須ではありませんが、薬剤耐性や毒素産生などの付加的な能力を細菌に与える重要な役割を担っています。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り
    プラスミドは主に細菌や一部の酵母などが保有します。ウイルスが保有する遺伝物質はウイルスゲノム(DNAまたはRNA)です。
  • 2.誤り
    プラスミドの実体は、閉環状の「二本鎖DNA」です。一本鎖RNAではありません。
  • 3.正しい
    プラスミド(特に伝達性プラスミド)は、細菌同士が性線毛を介して結合する「接合」というプロセスによって、他の菌体へと伝達(水平伝播)されます。
  • 4.誤り
    プラスミドは染色体(ゲノム)とは独立して存在するため「染色体外」遺伝因子と呼ばれます。
  • 5.誤り
    ゲノム上の別の位置やプラスミドへ飛び移る(転移する)ことができる塩基配列は「トランスポゾン(動く遺伝子)」と呼ばれます。

ポイント:細菌の遺伝子伝達(水平伝播)

  • 接合:性線毛を介して細胞同士が直接接触し、プラスミドなどを渡す。
  • 形質導入:バクテリオファージ(細菌に感染するウイルス)が遺伝子を運び込む。
  • 形質転換:死滅した細菌などから環境中に放出された裸のDNAを、他の細菌が直接取り込む。
さい
さい
薬剤耐性遺伝子を持った「Rプラスミド」が接合によって他の細菌に伝達されることは、病院内などにおいて多剤耐性菌が急速に広がる原因となっています。

さいの補足

プラスミドは、扱いやすさと自律増殖能から、遺伝子工学における「ベクター(遺伝子の運び屋)」として広く応用されています。
目的の遺伝子をプラスミドに組み込み、大腸菌などに導入することで、インスリンなどの有用なタンパク質を大量に作らせることが可能です。

問75:Streptococcus pyogenesの同定と性状

【問題】
Streptococcus pyogenesで正しいのはどれか。

  • 1.バシトラシン耐性である。
  • 2.カタラーゼ試験陽性である。
  • 3.α 溶血のコロニーを形成する。
  • 4.Lancefield分類A群に属する。
  • 5.pyrrolidonyl arylamidase〈PYR〉試験陰性である。
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正答:4

【解説】A群β溶血性レンサ球菌の特徴

Streptococcus pyogenes(化膿レンサ球菌)は、咽頭炎や伝染性膿痂疹(とびひ)、さらには劇症型溶血性レンサ球菌感染症(人食いバクテリア)の原因となる重要なグラム陽性球菌です。
血液寒天培地上の溶血性、Lancefield(ランスフィールド)分類による抗原性の違い、および各種生化学的試験を組み合わせて同定を行います。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り
    S. pyogenesはバシトラシンに対して「感受性」を示し、発育阻止円を形成します。これは他のβ溶血性レンサ球菌(B群など)とA群を鑑別するための重要な試験です。
  • 2.誤り
    レンサ球菌(Streptococcus属)はすべてカタラーゼ試験「陰性」です。カタラーゼ陽性を示すブドウ球菌(Staphylococcus属)との初期鑑別に用いられます。
  • 3.誤り
    S. pyogenesは血液寒天培地上で、赤血球を完全に破壊しコロニーの周囲が透明になる「β溶血」を示します。α溶血(緑色帯の形成)を示す代表例は肺炎球菌(S. pneumoniae)です。
  • 4.正しい
    S. pyogenesは、細胞壁の多糖体抗原の違いに基づくLancefield分類において「A群」に属します。一般に「A群溶連菌」と呼ばれます。
  • 5.誤り
    S. pyogenesはPYR(ピロリドニルアリールアミダーゼ)試験「陽性」です。PYR試験はA群レンサ球菌と腸球菌(Enterococcus属)で陽性となるため、迅速同定に極めて有用です。

学習のポイント

  • Lancefield分類の代表菌:A群=S. pyogenes(化膿レンサ球菌)、B群=S. agalactiae(B群レンサ球菌/GBS)。この2つは頻出です。
  • PYR試験の標的:PYR陽性といえば「A群レンサ球菌」と「腸球菌」の2つを即座に連想できるようにしておくと良いです。
さい
さい
レンサ球菌の同定は、「カタラーゼ陰性」を確認したのち、「溶血性(α、β、γ)」で大別し、さらに「Lancefield分類」や「バシトラシン/オプトヒン感受性」で絞り込んでいくというフローチャートを頭に描くことが重要です。

さいの補足

S. pyogenesによる感染症のあと、非化膿性合併症として「急性糸球体腎炎」や「リウマチ熱」を引き起こすことがあります。これを診断するために、血中のASO(抗ストレプトリジンO抗体)やASK(抗ストレプトキナーゼ抗体)価の測定が行われます。

問76:消毒薬の適応と分類

【問題】
ヒトの粘膜の消毒に用いるのはどれか。

  • 1.逆性石鹸
  • 2.クレゾール石鹸
  • 3.グルタルアルデヒド
  • 4.消毒用エタノール
  • 5.次亜塩素酸ナトリウム
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正答:1

【解説】粘膜・創傷部位への消毒薬の選択基準

消毒薬は、使用対象が「生体」か「環境・器具」かによって厳密に使い分ける必要があります。さらに生体であっても、「正常な皮膚」と「粘膜や創傷部位」では適用できる消毒薬が異なります。粘膜は皮膚の角質層がないため薬物の吸収率が高く、刺激に対して非常に敏感であるため、低毒性かつ低刺激性の消毒薬を選択しなければなりません。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.正しい
    逆性石鹸(塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムなど)は、陽イオン界面活性剤に分類される低水準消毒薬です。生体に対する毒性や組織刺激性が低いため、適切な濃度に希釈することで、粘膜(結膜、口腔、膣など)や創傷部位の消毒に安全に使用できます。
  • 2.誤り
    クレゾール石鹸液は、過去には手指消毒などにも用いられましたが、特有の強い臭気と、皮膚や粘膜に対する強い刺激性・毒性があるため、現在では主に排泄物(便器など)の消毒に限定されています。
  • 3.誤り
    グルタルアルデヒドは、芽胞を含むすべての微生物を殺滅できる高水準消毒薬(化学的滅菌剤)です。内視鏡などの医療器具の消毒専用であり、人体(皮膚・粘膜)への毒性が極めて高いため、生体への使用は絶対禁忌です。
  • 4.誤り
    消毒用エタノールは、正常な皮膚(手指のアルコール消毒など)には広く用いられますが、粘膜面や損傷した皮膚に使用すると激しい疼痛と強い刺激を伴い、組織のタンパク質を凝固させて治癒を遅らせるため、原則として使用しません。
  • 5.誤り
    次亜塩素酸ナトリウムは、ノロウイルスや血液などの有機物汚染に対して有効な中水準消毒薬です。しかし、金属腐食性が高く、皮膚や粘膜に対する刺激性(組織障害性)が強いため、生体消毒には使用できません。環境や器具の消毒専用です。

学習のポイント:スポルディング(Spaulding)の分類

  • クリティカル(無菌組織・血管に入る器具):滅菌が必要。
  • セミクリティカル(粘膜に接触する器具):高水準消毒(グルタルアルデヒド、過酢酸など)が必要。
  • ノンクリティカル(正常な皮膚に接触する器具・環境):低水準〜中水準消毒(逆性石鹸、次亜塩素酸ナトリウムなど)で十分。
さい
さい
生体に使用できる消毒薬でも、対象となる微生物によって効果が異なります。例えば、逆性石鹸は一般細菌には有効ですが、結核菌や多くのウイルス(エンベロープを持たないノロウイルスなど)、芽胞には無効である点も国家試験で問われます。

さいの補足

粘膜に使用可能なもう一つの重要な消毒薬として「クロルヘキシジングルコン酸塩(ヒビテン)」があります。アルコールアレルギーの患者さんに用います。

問77:二形性真菌と形態分類

【問題】
二形性真菌はどれか。

  • 1.Aspergillus fumigatus
  • 2.Candida albicans
  • 3.Exophiala dermatitidis
  • 4.Microsporum canis
  • 5.Sporothrix schenckii
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正答:5

【解説】温度二形性真菌の概念

真菌は大きく「酵母(単細胞)」と「糸状菌(カビ・多細胞)」に分類されます。しかし、一部の真菌は育成される温度などの環境条件によってこの2つの形態を変化させます。これを「二形性真菌(Dimorphic fungi)」と呼びます。一般的に、自然環境下(室温:25℃前後)では菌糸を伸ばす「糸状菌」として発育し、動物の体内や培養器(体温:37℃)では丸い「酵母」として増殖するのが特徴です。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り(糸状菌)
    Aspergillus fumigatus(アスペルギルス・フミガーツス)は、環境中に広く存在する代表的な糸状菌(カビ)です。二形性は示しません。
  • 2.誤り(酵母様真菌)
    Candida albicans(カンジダ・アルビカンス)は酵母様真菌です。体内などで発芽管を伸ばし「仮性菌糸」を形成するため多形性を示しますが、温度依存的に明確な菌糸形と酵母形を行き来する狭義の「温度二形性真菌」には分類されません。
  • 3.誤り(黒色真菌)
    Exophiala dermatitidis(エクソフィアラ・デルマチチヂス)は、メラニン色素を持つ暗色糸状菌(黒色真菌)の一種です。
  • 4.誤り(皮膚糸状菌)
    Microsporum canis(ミクロスポルム・カニス)は、イヌやネコから感染して白癬(水虫やたむし)を引き起こす皮膚糸状菌です。
  • 5.正しい(二形性真菌)
    Sporothrix schenckii(スポロトリックス・シェンキイ)は、日本国内でも見られる代表的な二形性真菌です。

学習のポイント:その他の二形性真菌

日本では稀ですが、海外渡航歴などが問われる「輸入真菌症」の原因菌の多くが二形性真菌です。以下も併せて記憶しておきましょう。

  • Histoplasma capsulatum(ヒストプラズマ)
  • Coccidioides immitis(コクシジオイデス)
  • Paracoccidioides brasiliensis(パラコクシジオイデス)
さい
さい
S. schenckiiは、土壌や植物に生息するカビ(糸状菌)です。農作業や園芸中にバラのトゲなどで皮膚に傷がつき、そこから体内に侵入すると、体温(37℃)に反応して酵母形に変化し、リンパ管に沿って結節を作る「スポロトリコーシス」を引き起こします。

さいの補足

真菌の培養検査において、S. schenckiiを疑う場合は、形態変化を確認するために25℃前後(室温)と37℃(フラン器)の両方の温度帯で並行して培養を行うことが同定のポイントとなります。

問78:ESBL産生菌の確認試験

【問題】
Escherichia coliを対象に実施した薬剤耐性の確認試験(別冊No. 15)を別に示す。検出目的のβ-ラクタマーゼはどれか。

  • 1.オキサシリナーゼ
  • 2.基質拡張型β-ラクタマーゼ
  • 3.セファロスポリナーゼ
  • 4.ペニシリナーゼ
  • 5.メタロ-β-ラクタマーゼ
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正答:2

【解説】クラブラン酸による阻止円の拡大効果

提示された画像は、CLSI法に基づくESBL(基質拡張型β-ラクタマーゼ)の確認試験です。左側のディスク1(セフタジジム)と3(セフォタキシム)は第三世代セフェム系抗菌薬であり、阻止円が小さく耐性を示しています。一方、右側のディスク2と4には、β-ラクタマーゼ阻害薬である「クラブラン酸」が添加されています。ESBLはクラブラン酸によって酵素活性が阻害されるという特徴があるため、合剤ディスクの周囲では抗菌薬が分解されずに効果を発揮し、阻止円が単剤ディスクと比較して有意に(直径で5mm以上)拡大します。これがESBL産生菌と判定する決定的な所見です。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り
    オキサシリナーゼは、ペニシリナーゼの一種であり、オキサシリンなどを分解しますが、第三世代セフェムへの強い耐性やクラブラン酸による著明な阻害効果というESBL特有のパターンとは異なります。
  • 2.正しい
    基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)の確認試験です。大腸菌(E. coli)や肺炎桿菌(K. pneumoniae)が産生することが多く、臨床上非常に重要な耐性菌です。
  • 3.誤り
    セファロスポリナーゼ(AmpC型β-ラクタマーゼなど)は、セファマイシン系(セフメタゾールなど)も分解し、さらにクラブラン酸によって阻害されにくい(阻止円が拡大しない)という特徴があり、ESBLと鑑別されます。
  • 4.誤り
    ペニシリナーゼは主にペニシリン系を分解する酵素であり、第三世代セフェムを強力に分解するESBLとは分解できる基質(薬の種類)の範囲が異なります。
  • 5.誤り
    メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)はカルバペネム系をも分解する強力な酵素です。クラブラン酸では阻害されず、SMA(メルカプト酢酸ナトリウム)やEDTAなどのキレート剤によって阻害される(阻止円が拡大する)のが特徴です。

学習のポイント:耐性菌と阻害剤の組み合わせ

  • ESBL産生菌:クラブラン酸で阻害される(阻止円拡大)。
  • メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生菌:SMAやEDTAで阻害される(阻止円拡大)。クラブラン酸では無効。
さい
さい
画像ではみられないですが、阻止円が互いに引っ張り合うように「鍵穴状(キーホール)」になっている所見が見られれば、ESBLのダブルディスクシナジーテスト(DDST)陽性を強く疑います。

さいの補足

ESBL産生菌が検出された場合、試験管内(in vitro)でペニシリン系やセフェム系が「感受性(S)」と判定されたとしても、生体内(in vivo)では無効となる可能性が高いため、臨床側へは原則として「カルバペネム系」などの使用を推奨する結果を報告する必要があります。

臨床微生物学(午前)の解説は以上です

第72回の臨床微生物学(午前問題)、お疲れ様でした。細菌や真菌の基本的な形態分類を土台とし、適切な消毒薬の選択や薬剤耐性菌の確認試験など、感染制御や日常検査に直結する応用的な思考力が試される構成となっていました。特にグラム染色の試薬の違いや、生化学的性状を用いた菌種同定のフローは、実際の検査業務においても常に意識する重要なプロセスです。

同定試験や感受性試験の解釈は、一度原理を理解してしまえば確実な得点源となります。結果の丸暗記ではなく、なぜその試薬を使うのか、なぜ阻止円が拡大するのかというメカニズムの理解とともに復習を進めてください。

さい
さい
微生物学は、菌の性質と検査法が密接にリンクしています。個々の内容を点ではなく、線で結びつけて学習を深めましょう。

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