こんにちは。臨床検査技師のさいです。
今回は第72回臨床検査技師国家試験の午後問題から、「臨床血液学」の解説をお届けします。
午後の血液学分野(問59〜67)では、細胞形態の画像問題やクロスミキシング試験のデータ解釈、さらに赤血球恒数や補正白血球数の計算など、臨床現場の実務に直結する実践的な問題が多く出題されています。
単なる知識の暗記にとどまらず、検査データから病態を論理的に推測する能力が求められているように感じました。
解説内容に疑義がある場合は、各SNSのDMなどでご指摘ください。
僕が受験生の頃に参考書の解説だけではわからなかったことがあり、そういった受験生はたくさんいるのではないかと思い、少しでも助けになればと思い作成しています。皆様の国家試験対策にお役立てください。
※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第72回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。
第72回 臨床検査技師国試 午後【臨床血液学】
全選択肢の正誤理由と解説まとめ(問59〜67)
問59:造血器官と血球の分化
【問題】
造血で正しいのはどれか。
- 1.エリスロポエチンは肝臓で産生される。
- 2.胸腺はBリンパ球の分化・成熟を担う。
- 3.髄外造血は健常成人には認められない。
- 4.成人では腸骨の骨髄は黄色髄〈脂肪髄〉である。
- 5.卵黄囊で生成されるヘモグロビンは胎児型Hb(α2γ2)である。
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正答:3
【解説】造血の場と発達段階による変遷
血液細胞がどこで産生され、どこで成熟するのかを聞いている基礎的な問題です。
胎生期から成人になるにつれて、造血の主座は卵黄囊、肝臓・脾臓、そして骨髄へと移行します。また、血球の種類によって分化・成熟する臓器が異なる点も重要です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
エリスロポエチン(EPO)は、主に腎臓の尿細管周囲間質細胞で産生される造血因子です。肝臓での産生は胎生期が中心であり、成人ではごく一部に留まります。 - 2.誤り
胸腺(Thymus)はTリンパ球の分化・成熟器官です。Bリンパ球は骨髄(Bone marrow)で分化・成熟します。 - 3.正しい
健常成人の造血は骨髄のみで行われます。骨髄線維症などで骨髄の造血機能が破綻した場合に、代償的に肝臓や脾臓で造血が行われる病的状態を「髄外造血」と呼びます。 - 4.誤り
成人の腸骨、胸骨、椎骨などの体幹骨は、生涯にわたり活発な造血を行う「赤色髄」です。一方、四肢の長管骨(大腿骨など)は加齢とともに脂肪組織に置き換わり「黄色髄」となります。 - 5.誤り
胎生初期の卵黄囊造血期に産生されるのは胚芽型ヘモグロビン(Gower1など)です。設問の胎児型ヘモグロビン(HbF:α2γ2)は、主に胎生中期の肝脾造血期に産生されます。
学習のポイント
- リンパ球の成熟場所:「T」リンパ球はThymus(胸腺)、「B」リンパ球はBone marrow(骨髄)と、英語の頭文字で一致させて覚えた方がいいです。
- 造血部位の変遷:胎生期からの造血の場は「卵黄囊 → 肝臓・脾臓 → 骨髄」の順に移行します。
さいの補足
出生後、胎児型ヘモグロビン(HbF:α2γ2)から成人型ヘモグロビン(HbA:α2β2)への移行が起こり、生後約6ヶ月で完了します。
問60:止血機構と血栓形成の基本
【問題】
止血機構で正しいのはどれか。
- 1.動脈血栓は主に赤色血栓である。
- 2.セロトニンは血栓形成を促進する。
- 3.エピネフリンは血栓形成を抑制する。
- 4.凝固因子は主に血小板で産生される。
- 5.トロンボキサンA2は血管を弛緩させる。
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正答:2
【解説】一次止血における血小板と血管の相互作用
止血機構は、血管収縮と血小板凝集による「一次止血」と、凝固因子によるフィブリン網形成である「二次止血」に大別されます。
この問題では、一次止血に関与する生理活性物質の作用や、血流の動態が血栓の構成成分に与える影響を聞いています。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
動脈など血流の速い部位では、血小板とフィブリンを主体とする「白色血栓」が形成されます。一方、静脈など血流の遅い部位では、赤血球を多く巻き込んだ「赤色血栓」が形成されます。 - 2.正しい
セロトニンは血小板の濃染顆粒から放出され、血管平滑筋を収縮させるとともに血小板凝集を促進し、一次止血(血栓形成)を促進する働きがあります。 - 3.誤り
エピネフリン(アドレナリン)は交感神経系の賦活化に伴って分泌され、血管を収縮させると同時に血小板の凝集能を亢進させるため、血栓形成を促進します。 - 4.誤り
血液凝固因子の大部分(第I、II、V、VII、IX、X因子など)は肝臓で産生されます。血小板で産生されるものではありません。 - 5.誤り
トロンボキサンA2(TXA2)は血小板内でアラキドン酸から合成され、強力な血管収縮作用および血小板凝集作用を示します。弛緩ではなく収縮させます。
学習のポイント
- 血栓の分類:「動脈血栓=白色血栓(血小板主体)」、「静脈血栓=赤色血栓(赤血球主体)」と対比させて整理します。
- 生理活性物質の作用:セロトニン、トロンボキサンA2、エピネフリンはいずれも一次止血(血管収縮・血小板凝集)を「促進」する物質です。
さいの補足
トロンボキサンA2(TXA2)と相反する作用を持つ物質として、血管内皮細胞から産生されるプロスタサイクリン(PGI2)があります。PGI2は血管拡張と血小板凝集「抑制」に働き、生体内ではこれらが拮抗することで正常な血流と止血のバランスを保っています。
問61:赤血球恒数による貧血の鑑別
【問題】
末梢血検査で赤血球数310万/μL、ヘモグロビン濃度6.2g/dL、ヘマトクリット値21.7%を認めた。原因の特定に有用な検査項目はどれか。
- 1.銅
- 2.フェリチン
- 3.ビタミンB12
- 4.ハプトグロビン
- 5.エリスロポエチン
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正答:2
【解説】赤血球恒数の計算による形態的分類
提示された検査値から、まずはHb6.2g/dLで強い貧血を考えます。そして次に恒数(MCV、MCH、MCHC)を計算し、貧血の形態学的分類を行う必要があります。
・MCV(平均赤血球容積)=(Ht 21.7 ÷ RBC 310)× 1000 = 70.0 fL
・MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)=(Hb 6.2 ÷ Ht 21.7)× 100 = 28.5 %
基準値(MCV 80〜100、MCHC 31〜35)を下回っているため、この患者は「小球性低色素性貧血」であることが分かります。
小球性低色素性貧血の原因として最も頻度が高いのは鉄欠乏性貧血です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
銅欠乏症も小球性貧血を呈することがありますが、頻度として極めて稀です。第一選択の検査項目ではありません。 - 2.正しい
フェリチンは体内の貯蔵鉄を反映するタンパク質です。小球性低色素性貧血を呈する代表的疾患である鉄欠乏性貧血の診断において、フェリチンの著明な低下を確認することが最も有用です。 - 3.誤り
ビタミンB12の欠乏はDNA合成障害を引き起こし、巨赤芽球性貧血(大球性正色素性貧血:MCV 100以上)を呈します。 - 4.誤り
ハプトグロビンは遊離ヘモグロビンと結合するタンパク質であり、血管内溶血が亢進する溶血性貧血(正球性正色素性貧血)の診断に有用な指標です。 - 5.誤り
エリスロポエチンは腎臓で産生される造血因子であり、腎機能低下に伴う腎性貧血(正球性正色素性貧血)の鑑別に有用です。
学習のポイント
- 計算式の記憶:MCV(大きさ)の計算式「(Ht / RBC) × 1000」は国家試験において必須の知識です。
- 鑑別疾患の紐付け:MCV低下=鉄欠乏性貧血(フェリチン測定)、MCV上昇=巨赤芽球性貧血(ビタミンB12・葉酸測定)と対比させて記憶します。
さいの補足
小球性低色素性貧血を呈する疾患には、鉄欠乏性貧血のほかに、鉄芽球性貧血やサラセミア、慢性疾患に伴う貧血(ACD)などがあります。これらの鑑別には、フェリチンだけでなく血清鉄(Fe)や総鉄結合能(TIBC)の総合的な評価が必要となります。
実際に現場でも貧血確認後、鉄やフェリチンが追加オーダーとして出されることがよくあります。
問62:クロスミキシング試験の解釈
【問題】
APTT延長を認めたため、APTTにてクロスミキシング試験を実施した。結果を表に示す。診断に有用なのはどれか。
- 1.PIVKA-II
- 2.アルブミン
- 3.D-ダイマー
- 4.von Willebrand因子
- 5.抗カルジオリピン抗体
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正答:5
【解説】補正されない延長はインヒビターパターン
クロスミキシング試験は、APTT延長の原因が「凝固因子の欠乏」なのか「インヒビター(自己抗体など)の存在」なのかを鑑別する検査です。
提示された表を見ると、患者血漿と正常血漿を5対5で混和した直後のAPTTが79秒であり、正常血漿(25秒)付近まで補正されていません。このように正常血漿を添加しても延長が回復しないパターン(グラフ化すると上に凸の波形)は、インヒビターの存在を示します。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
PIVKA-IIはビタミンK欠乏時に血中に増加する異常プロトロンビンです。ビタミンK欠乏症によるAPTT延長の場合、クロスミキシング試験は「欠乏パターン(正常血漿の添加により直線的に補正される)」を示します。 - 2.誤り
アルブミンは主要な血清タンパク質ですが、APTTの延長や血液凝固異常の直接的な原因・診断指標にはなりません。 - 3.誤り
D-ダイマーは線溶系の活性化(架橋フィブリンの分解)を示すマーカーであり、クロスミキシング試験の解釈とは直接関連しません。 - 4.誤り
von Willebrand因子の低下(von Willebrand病)では、第VIII因子の低下を伴いAPTTが延長することがあります。しかし、凝固因子欠乏であるため、正常血漿の添加によりAPTTは補正されます。 - 5.正しい
抗カルジオリピン抗体は、抗リン脂質抗体症候群(APS)で検出される自己抗体(ループスアンチコアグラントなど)に関連します。これがリン脂質依存性の凝固反応を阻害するインヒビターとして働くため、クロスミキシング試験において補正されないパターンを示します。
学習のポイント
- 欠乏パターン:正常血漿の添加によりAPTTが正常値付近まで短縮(補正)される場合、血友病などの凝固因子欠乏を疑います。
- インヒビターパターン:正常血漿を添加してもAPTTが延長したまま(補正されない)の場合、ループスアンチコアグラントや凝固因子インヒビターなどの自己抗体を疑います。
さいの補足
問題では「混和直後」の時点で既に延長を示しているため、即時型の反応を示すループスアンチコアグラント(LA)が強く疑われます。
一方、後天性血友病Aなどで見られる第VIII因子インヒビターは、時間と温度に依存して反応が進むため、「混和直後は補正されるが、37℃・2時間後には再び延長する(遅延型)」という特徴的なパターンを示します。
問63:赤血球形態と関連疾患の組合せ
【問題】
血球形態と疾患の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.標的赤血球 サラセミア
- 2.有核赤血球 異常ヘモグロビン症
- 3.涙滴赤血球 骨髄線維症
- 4.好塩基性斑点 骨髄癌腫症
- 5.Howell-Jolly小体 May-Hegglin異常
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正答:1、3
【解説】形態異常の発生メカニズムと鑑別
末梢血塗抹標本における赤血球の形態異常や封入体は、造血器腫瘍や貧血などの病態を反映する重要な所見です。それぞれの形態が「なぜ生じるのか」というメカニズム(脾臓の機能低下、骨髄の線維化、ヘモグロビン合成障害など)と関連付けて整理することが重要です。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.正しい
標的赤血球(Target cell)は、赤血球の体積に対する表面積の割合が増加することで生じます。サラセミアなどのヘモグロビン合成障害や、閉塞性黄疸などの肝疾患において特徴的に出現します。 - 2.誤り
有核赤血球は、健常成人の末梢血には出現しません。骨髄線維症や骨髄癌腫症など、骨髄が他の組織に占拠されて髄外造血を伴う病態(白赤芽球症:Leukoerythroblastosis)において末梢血に出現します。 - 3.正しい
涙滴赤血球(Teardrop cell)は、原発性骨髄線維症などの骨髄線維化を伴う疾患において特徴的にみられます。線維化した骨髄や、髄外造血を行っている脾臓の類洞を赤血球が通過する際に変形することで生じると考えられています。 - 4.誤り
好塩基性斑点は、赤血球内に残存したリボソーム(RNA)が凝集したものです。鉛中毒やサラセミアなどでみられます。骨髄癌腫症で特徴的なのは白赤芽球症です。 - 5.誤り
Howell-Jolly小体は、赤血球内に残存した核の破片(DNA)であり、主に脾臓摘出後や機能的無脾症において出現します。May-Hegglin異常は、好中球内のDöhle小体様封入体(RNA)と巨大血小板の出現を特徴とする先天性疾患です。
学習のポイント
- 封入体の本態:Howell-Jolly小体は「DNA」、好塩基性斑点やDöhle小体は「RNA」で構成されている点を区別して記憶します。
- 脾臓との関連:脾臓は異常な赤血球や細胞内封入体を取り除く機能(Pitting機能)を持つため、脾摘後にはHowell-Jolly小体や標的赤血球が増加します。
さいの補足
赤血球封入体を特殊染色で確認する場合、Howell-Jolly小体はFeulgen反応(DNA染色)で陽性となりますが、好塩基性斑点はRNAであるため陰性となります。
また、鉄染色で青染する顆粒(Pappenheimer小体)との鑑別も重要です。
僕の働いている中規模クラスの病院では、特殊染色自体していないですが笑
問64:形質細胞の形態と細胞内小器官
【問題】
骨髄塗抹標本(別冊No. 13)を別に示す。矢印で示すのはどれか。
- 1.小胞体
- 2.ゴルジ装置
- 3.リソソーム
- 4.リボソーム
- 5.ミトコンドリア
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正答:2
【解説】形質細胞における核周明庭の意義
提示された画像は、偏在する核と強い好塩基性(青紫色)を示す細胞質を持つ「形質細胞」です。矢印が示している核に隣接した白く抜けた領域は「核周明庭(perinuclear halo)」と呼ばれます。形質細胞は免疫グロブリン(抗体)を産生・分泌するため、タンパク質の修飾や輸送を担うゴルジ装置が高度に発達しています。ゴルジ装置はメイ・ギムザ染色などで染まらないため、このように光学顕微鏡下では細胞質の明らかな抜け(核周明庭)として観察されます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
小胞体(粗面小胞体)はタンパク質合成の場です。形質細胞では免疫グロブリン産生のために粗面小胞体が細胞質全体に豊富に存在しており、これが細胞質の強い好塩基性(青紫色)の要因となります。 - 2.正しい
ゴルジ装置は核周明庭として観察されます。粗面小胞体で産生されたタンパク質の糖鎖修飾や分泌小胞へのパッケージングを行います。 - 3.誤り
リソソームは細胞内消化を担う小器官であり、好中球や単球のアズール顆粒などに相当します。画像の白く抜けた領域ではありません。 - 4.誤り
リボソームはRNAとタンパク質の複合体であり、細胞質の好塩基性の原因となります(小胞体に付着して粗面小胞体を形成します)。 - 5.誤り
ミトコンドリアはATP産生を担う小器官です。光学顕微鏡レベルの染色標本で、核周明庭のような単一の巨大な抜けとして観察されることはありません。
学習のポイント
- 形質細胞の形態的特徴:①核の偏在、②車軸状核(クロマチン結節)、③細胞質の強い好塩基性、④核周明庭(ゴルジ装置)の4点セット。
- 染色性との関連:好塩基性の細胞質はRNA(リボソーム・粗面小胞体)に由来し、核周明庭は染色液に染まらないゴルジ装置に由来します。
さいの補足
形質細胞が腫瘍性に増殖する代表的な疾患が「多発性骨髄腫(Multiple Myeloma)」です。腫瘍化した骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)では、核周明庭が不明瞭になったり、多核化したりするなどの形態異常(異型性)が観察されることがあります。正常な形質細胞の形態を基準として正確に把握しておくことが、病態把握の第一歩です。
問65:有核赤血球出現時の白血球数補正
【問題】
末梢血普通染色標本(別冊No. 14)を別に示す。白血球100個を分類する間に別図矢印に示す細胞を25個認めた。同血液の自動血球計数装置で得られた白血球数が8,000/μLであった場合、補正白血球数(/μL)で正しいのはどれか。
- 1. 320
- 2. 6,400
- 3.10,000
- 4.10,666
- 5.20,000
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正答:2
【解説】有核赤血球による白血球の偽高値と補正
提示された画像の矢印で示される細胞は、濃染する円形の核と好酸性(または多染性)の細胞質を持つ「有核赤血球(正赤芽球)」です。自動血球計数装置の多くは、溶血剤で赤血球を破壊し、残った核を持つ細胞を白血球として計数します。有核赤血球は核を持つため破壊されず、白血球として誤ってカウントされてしまいます。そのため、目視による血液像分類で有核赤血球の割合を確認し、真の白血球数を算出する補正計算が必要となります。(機械上多くカウントし過ぎてしまう)
【計算プロセスの解説】
白血球100個を分類する間に有核赤血球(NRBC)が25個みられたということは、装置が計数した「見かけの白血球数」の中には、白血球100と有核赤血球25を合わせた「125」の割合で細胞が含まれていることになります。したがって、真の白血球数を求めるには以下の公式を用います。
与えられた数値をこの公式に代入して計算します。
補正白血球数 = 8,000 × [ 100 ÷ (100 + 25) ]
補正白血球数 = 8,000 × (100 ÷ 125) = 6,400
したがって、正しい補正白血球数は「6,400 /μL」となり、選択肢2が正解となります。理屈さえ理解していれば、選択肢3〜5は外れます。1もあり得ない数字で、消去法でもいけますが、計算式は知っておきましょう。
実際に赤芽球が多い標本では補正計算しますので。
学習のポイント
- 有核赤血球の形態:濃染する丸い核と、周囲の成熟赤血球に近い細胞質の色調を特徴とします。画像下の分葉核好中球と大きさを比較して記憶します。
- 補正の適応基準:一般的に、白血球100個に対して有核赤血球が10個以上出現した場合に補正計算を実施します。
さいの補足
近年の高性能な多項目自動血球計数装置では、専用の蛍光染色液やレーザーフローサイトメトリー法を用いることで、有核赤血球と白血球を自動的に判別し、補正済みの白血球数を直接報告する機能が搭載されている機器も多くなっています。
問66:血液細胞の形態検査と細胞化学染色
【問題】
血液細胞の形態検査で正しいのはどれか。
- 1.正常赤芽球はPAS染色陰性である。
- 2.健常成人骨髄像に鉄芽球は認められない。
- 3.健常成人骨髄像ではM-E比は10以上である。
- 4.前骨髄球はペルオキシダーゼ染色陰性である。
- 5.好中球のエステラーゼはフッ化ナトリウムによって阻害される。
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正答:1
【解説】細胞化学染色の特異性と骨髄の正常像
骨髄塗抹標本における細胞化学染色は、白血病などの造血器腫瘍の鑑別診断において極めて重要です。各細胞系列(骨髄球系、単球系、赤芽球系など)が持つ特異的な酵素や物質の有無を検出する原理と、健常成人における骨髄像の基準値を正確に把握しておく必要があります。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.正しい
正常な赤芽球はPAS染色(グリコーゲンなどの多糖類を染色する手法)において陰性を示します。一方、急性赤白血病や骨髄異形成症候群(MDS)などで出現する腫瘍性・異常赤芽球はPAS染色陽性となるため、病態の鑑別に有用です。 - 2.誤り
健常成人の骨髄においても、成熟過程にある有核赤血球の約30〜50%は細胞質内に微細な鉄顆粒(ヘモジデリン)を有する「正常鉄芽球」として観察されます。鉄を全く持たないわけではありません。 - 3.誤り
健常成人におけるM-E比(骨髄系細胞と赤芽球系細胞の比率)はおおむね2〜4(平均約3)です。M-E比が10以上となる場合は、重度の骨髄系過形成(白血病など)または赤芽球系低形成を疑う異常値です。 - 4.誤り
前骨髄球は一次顆粒(アズール顆粒)を豊富に持つため、ペルオキシダーゼ(MPO)染色において強い陽性反応を示します。 - 5.誤り
フッ化ナトリウム(NaF)によって酵素活性が阻害されるのは、単球系細胞が持つ「非特異的エステラーゼ(α-ナフチルブチレートエステラーゼなど)」です。好中球系細胞が持つ「特異的エステラーゼ(ナフトールAS-Dクロロアセテートエステラーゼ)」はNaFによる阻害を受けません。
学習のポイント
- エステラーゼ染色の鑑別:好中球系(特異的エステラーゼ陽性)と単球系(非特異的エステラーゼ陽性・NaF阻害陽性)の違いは、急性骨髄単球性白血病(AML-M4)の診断などで必須となる知識です。
- M-E比の定義:MはMyeloid(顆粒球系)、EはErythroid(赤芽球系)を指します。基準値(2〜4)からの逸脱が何を意味するのかを理解しましょう。
さいの補足
正常赤芽球はPAS染色陰性ですが、ベルリンブルー染色(鉄染色)では前述の通り正常鉄芽球として陽性を示します。
問67:活性化プロテインCが失活させる凝固因子
【問題】
活性化プロテインCが失活させる凝固因子はどれか。2つ選べ。
- 1.第Ⅱ因子
- 2.第Ⅴ因子
- 3.第Ⅶ因子
- 4.第Ⅷ因子
- 5.第Ⅸ因子
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正答:2、4
【解説】凝固制御機構(プロテインC・プロテインS系)
血液凝固カスケードが過剰に進行して血栓が形成されるのを防ぐため、生体内には凝固制御機構が存在します。トロンビン・トロンボモジュリン複合体によって活性化されたプロテインC(APC)は、プロテインSを補酵素として機能し、凝固反応を促進する補酵素(コファクター)である活性化第V因子(Va)および活性化第VIII因子(VIIIa)を特異的に分解・失活させます。
【各選択肢の解説と正誤理由】
- 1.誤り
第II因子(プロトロンビン)は、活性化されてトロンビン(IIa)となります。トロンビンを直接阻害するのはアンチトロンビンです。 - 2.正しい
第V因子は活性化されてプロトロンビナーゼ複合体の補酵素(Va)となりますが、活性化プロテインCによって分解・失活されます。 - 3.誤り
第VII因子は組織因子(TF)と結合して外因系凝固反応を開始します。組織因子経路インヒビター(TFPI)によって阻害されます。 - 4.正しい
第VIII因子は活性化されてテナーゼ複合体の補酵素(VIIIa)となりますが、第V因子と同様に活性化プロテインCによって分解・失活されます。 - 5.誤り
第IX因子は内因系の凝固因子です。活性化プロテインCの標的ではなく、主にアンチトロンビンによって阻害されます。
学習のポイント
- 標的因子の共通点:第V因子と第VIII因子は、いずれも酵素(セリンプロテアーゼ)ではなく、反応を促進する「補酵素(コファクター)」として働く凝固因子です。
- 三位一体の理解:プロテインCは単独では十分な効果を発揮せず、「プロテインS」の補助を受けて作用します。これらが欠乏すると血栓準備状態(血栓性素因)となります。
さいの補足
先天性の血栓性素因として、海外では第V因子の遺伝子変異により活性化プロテインCによって分解されなくなる「第V因子Leiden変異(APCレジスタンス)」が高頻度にみられます。
日本では稀ですが、プロテインCの作用機序を理解する上で重要な臨床知識となります。
臨床血液学(午後)の解説は以上です
第72回の臨床血液学(午後問題)、お疲れ様でした。午前問題で問われた基礎知識を土台とし、計算式の適用や画像所見の解釈など、より応用的な思考力が試される構成となっていました。特に、赤血球恒数を用いた貧血の形態学的分類や、クロスミキシング試験によるインヒビターの鑑別は、実際の検査業務においても日常的に行われる重要な判断プロセスです。
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