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第72回臨床検査技師国試 午前【臨床血液学】全選択肢の正誤理由と解説まとめ

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こんにちは。臨床検査技師のさいです。

今回は第72回臨床検査技師国家試験の午前問題から、「臨床血液学」の解説をまとめてみました。

血液学の分野(問59〜67)では、赤血球や白血球の基礎的な形態・機能から、白血病や骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍の病態、さらには止血・凝固線溶系のメカニズムまで、臨床現場のデータ解釈に直結する内容が問われます。

単なる用語の記憶に頼るのではなく、細胞の分化成熟の過程や凝固カスケードの機序など、解剖生理と病態の繋がりを理解することが重要です。

解説内容に疑義がある場合は、各SNSのDMなどでご指摘ください。

僕が受験生の時に、問題集の解説を読んでも「こんな解説じゃ全然わからない」と思い苦労した経験があります。そんな受験生は他にもいるのではと思い、まとめという形で解説を作成しています。
皆様の国家試験対策にお役立てください。

※本記事内の問題文および選択肢は、厚生労働省ホームページにて公開されている「第72回臨床検査技師国家試験問題および解答について」より引用して作成しております。

第72回 臨床検査技師国試 午前【臨床血液学】
全選択肢の正誤理由と解説まとめ(問59〜67)

問59:赤血球とヘモグロビンの基本(血液学)

【問題】
赤血球で正しいのはどれか。

  • 1.ヘムには3価の鉄原子が含まれる。
  • 2.老朽化した赤血球は変形しやすい。
  • 3.網赤血球は成熟赤血球よりも小さい。
  • 4.ヘムは代謝によりピリミジンと鉄に分解される。
  • 5.酸素分圧が低下するとヘモグロビンの酸素飽和度は低下する。
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正答:5

【解説】赤血球の一生と酸素運搬のメカニズム!

赤血球とヘモグロビンに関する基本問題です。「鉄の価数」「細胞のサイズ変化」「酸素解離曲線の仕組み」は、血液学の土台となる知識です。丸暗記ではなく、体の中で赤血球がどのように働いているかをイメージしながら整理しましょう。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り
    酸素と結合できるのは「2価の鉄(Fe2+)」です。3価(Fe3+)に酸化されてしまったものはメトヘモグロビンと呼ばれ、酸素を運ぶことができません。
  • 2.誤り
    老朽化した赤血球は、柔軟性(変形能)が失われて硬くなります。その結果、脾臓の細い網目をくぐり抜けられなくなり、マクロファージに食べられて寿命(約120日)を迎えます。
  • 3.誤り
    網赤血球は、成熟赤血球になる一歩手前の若い細胞であり、成熟赤血球よりもサイズが「大きい」のが特徴です。
  • 4.誤り
    ヘムがマクロファージ内で代謝(分解)されると、ポルフィリン環が開いて「ビリベルジン(のちにビリルビン)」「鉄」「一酸化炭素(CO)」になります。ピリミジン(核酸の塩基)ではありません。
  • 5.正しい
    ヘモグロビンは、酸素が多いところ(肺)では酸素と結合し、酸素が少ないところ(末梢組織)では酸素を離す(酸素飽和度が下がる)という性質を持っています。これが酸素解離曲線の基本です。

暗記方法・覚え方のコツ

  • ヘムの鉄:「兄(2価)ちゃんが酸素を運ぶ!」と暗記しましょう(酸化された3価はダメ)。
  • 赤血球のサイズ:「若い時(網赤血球)は態度がデカい!」とイメージすると覚えやすいです。
さい
さい
「酸素解離曲線」は、二酸化炭素が多くて酸性に傾いている場所(=酸素が欲しい末梢組織)では、ヘモグロビンが酸素を離しやすくなるようにできています。これをボーア効果と呼びます。

さいの補足

「MCV(平均赤血球容積)」の話になりますが、網赤血球が大量に血液中に放出されている状態(溶血性貧血などで骨髄が頑張っている時)だと、大きめの細胞が増えるため、採血データのMCVは高めに出ることがあります。

問60:急性骨髄性白血病と慢性骨髄性白血病の違い

【問題】
急性骨髄性白血病と慢性骨髄性白血病で異なるのはどれか。

  • 1.CD13陽性
  • 2.白血病裂孔
  • 3.骨髄芽球の出現
  • 4.特定遺伝子の転座
  • 5.ペルオキシダーゼ染色陽性
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正答:2

【解説】分化成熟障害による「白血病裂孔」の有無

急性骨髄性白血病(AML)と慢性骨髄性白血病(CML)は、どちらも骨髄系細胞が腫瘍性に増殖する疾患ですが、「分化・成熟能」に大きな違いがあります。AMLは細胞の分化が初期段階(芽球など)で停止して異常増殖するため、主に末梢血において、幼若細胞と成熟細胞の間に存在するはずの中間段階(骨髄球、後骨髄球、桿状核球など)が著しく減少・欠如します。この現象を「白血病裂孔(Leukemic hiatus)」と呼びます。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.共通する(誤り)
    CD13やCD33は骨髄系細胞の表面マーカーです。AMLもCMLも骨髄系の腫瘍であるため、原則としてどちらも陽性となります。
  • 2.異なる(正解)
    白血病裂孔はAMLに特徴的な所見です。一方のCML(慢性期)は分化成熟能が保たれているため、芽球から成熟好中球に至るすべての分化段階の細胞が連続的に出現し、裂孔は生じません。
  • 3.共通する(誤り)
    骨髄芽球はどちらの疾患でも出現します。AMLでは診断基準(赤芽球を除いた骨髄有核細胞(あるいは全有核細胞)中に占める骨髄芽球の割合が20%以上)となるほど増加しますが、CMLにおいても出現し、特に急性転化期には著増します。
  • 4.共通する(誤り)
    AMLにはt(8;21)やt(15;17)など、CMLにはt(9;22)(フィラデルフィア染色体)といった、それぞれの疾患に特異的な染色体転座やキメラ遺伝子が存在します。
  • 5.共通する(誤り)
    ミエロペルオキシダーゼ(MPO)染色は、リンパ系(陰性)と骨髄系(陽性)を鑑別する重要な細胞化学染色です。どちらの疾患の細胞も骨髄系であるため陽性を示します。

暗記方法・覚え方のコツ

  • 白血病裂孔:「急性(AML)は成長が途切れて穴(裂孔)が空く、慢性(CML)は全段階が揃う」と細胞の出現パターンの違いで記憶しましょう。
  • CMLの染色体異常:「CML=t(9;22)フィラデルフィア染色体(BCR-ABL1融合遺伝子)」は必須知識です。
さい
さい
血液像の鏡検時、CMLの標本はあらゆる分化段階の細胞が混在しており非常に多彩な像を呈します。一方のAMLは、細胞質にアウエル小体(Auer body)を有する芽球などの幼若な腫瘍細胞が画面の大半を占める単調な像となることが多く、鏡検時の第一印象が大きく異なります。

さいの補足

選択肢3の骨髄芽球の割合は、WHO分類においてAMLの診断基準(20%以上)として非常に重要です。ただし、t(8;21)、inv(16)、t(15;17)などの特定の遺伝子異常が証明された場合は、芽球が20%未満であってもAMLと診断されます。

問61:血液凝固と線溶因子の分類

【問題】
線溶因子はどれか。

  • 1.FDP
  • 2.フィブリノゲン
  • 3.プラスミノゲン
  • 4.プロトロンビン
  • 5.アンチトロンビン
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正答:3

【解説】血栓を「作る」「止める」「溶かす」の役割分担

血液学の止血分野では、登場するタンパク質が「どの工程を担当しているのか」を分類することが基本となります。血栓を作る「凝固因子」、作りすぎないようにブレーキをかける「凝固阻止因子」、そして不要になった血栓を溶かす「線溶因子」です。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り
    FDP(フィブリン・フィブリノゲン分解産物)は、線溶の結果として生じる「分解産物(ゴミ)」であり、線溶を働きかける「因子(プレイヤー)」ではありません。
  • 2.誤り
    フィブリノゲンは、トロンビンの作用でフィブリン(血栓の網)となる「凝固因子(第I因子)」です。
  • 3.正しい
    プラスミノゲンは、活性化されて「プラスミン」となり、血栓(フィブリン)を溶かす酵素として働く「線溶因子」です。
  • 4.誤り
    プロトロンビンは、活性化されてトロンビンとなる「凝固因子(第II因子)」です。
  • 5.誤り
    アンチトロンビンは、トロンビンなどの凝固因子の働きを阻害し、血栓の形成を抑える「凝固阻止因子(インヒビター)」です。

暗記方法・覚え方のコツ

  • 分類の整理:「フィブリノゲン(第I因子)とプロトロンビン(第II因子)は凝固の主役!」
  • 線溶の主役:「血栓を溶かして綺麗に(プラスに)するからプラスミノゲン!」
さい
さい
FDPを線溶因子と勘違いしないようにしましょう

さいの補足

プラスミノゲンを活性化させてプラスミンにする物質(プラスミノゲンアクチベータ:PA)も線溶因子に含まれます。組織型プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)やウロキナーゼ(u-PA)などが該当し、これらは脳梗塞などの急性期に血栓を溶かす治療薬としても活躍しています。

問62:骨髄塗抹標本・鉄染色像(環状鉄芽球の同定)

【問題】
骨髄塗抹標本の鉄染色像(別冊No. 11)を別に示す。考えられる疾患はどれか。

  • 1.真性多血症
  • 2.悪性リンパ腫
  • 3.多発性骨髄腫
  • 4.巨赤芽球性貧血
  • 5.骨髄異形成症候群
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正答:5

【解説】青い首飾りは「鉄が使えていない」サイン!

矢印で示された赤芽球の核の周りを、青いツブツブ(鉄顆粒)がぐるっと首飾りのように取り囲んでいますね。これは「環状鉄芽球(ring sideroblast)」と呼ばれる所見です。ヘモグロビンを作る過程(ヘム合成)がうまくいかず、材料である「鉄」だけが細胞内のミトコンドリアに異常に溜まってしまった状態を示しています。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り
    真性多血症は、赤血球が異常に作られすぎる病気です。材料である鉄が大量に消費されるため、骨髄の鉄(貯蔵鉄)は「減少〜消失」します。
  • 2.誤り
    悪性リンパ腫はリンパ球のガンであり、赤芽球の鉄代謝異常(環状鉄芽球)を特徴とする疾患ではありません。
  • 3.誤り
    多発性骨髄腫は、抗体を作る「形質細胞」がガン化する病気です。やはり鉄染色像で環状鉄芽球が出ることはありません。
  • 4.誤り
    巨赤芽球性貧血(ビタミンB12や葉酸の欠乏)でも鉄がうまく使えず骨髄に鉄が溜まりますが、このような綺麗な「環状」の鉄芽球が多発するわけではありません。
  • 5.正しい
    骨髄異形成症候群(MDS)は、血液細胞がうまく育たなくなる(無効造血)病気です。MDSの中には、この「環状鉄芽球」が出現することを特徴とする病型(MDS-RSなど)が存在します。

暗記方法・覚え方のコツ

  • 画像所見:「核の周りの青い首飾り=環状鉄芽球!」
  • 疾患との紐付け:「骨髄異形成(形が異常)で、鉄の首飾り(環状鉄芽球)をつけてオシャレするMDS!」とビジュアル的に覚えてしまうのもあり!
さい
さい
鉄染色(ベルリンブルー染色)では、鉄が「青色」に染まります。環状鉄芽球と診断するためには、核の円周の1/3以上を囲むように、5個以上の鉄顆粒が並んでいる必要があります。この画像はまさに教科書通りの美しい環状鉄芽球です!

さいの補足

「鉄芽球性貧血」という病気でも環状鉄芽球が見られます。これは先天的にヘムを作る酵素が欠損しているか、薬物やアルコールの影響(後天性)で起こります。

問63:遠心分離後の血液成分の分離(比重)

【問題】
3.14%クエン酸ナトリウム溶液を用いて抗凝固した血液の遠心分離(1,500G,15分間)後の状態(別冊No. 12)を別に示す。血小板が存在するのは図中矢印のどの位置か。

  • 1.a
  • 2.b
  • 3.c
  • 4.d
  • 5.e
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正答:2

【解説】軽いものは上に、重いものは下に!

血液を遠心分離すると、各成分が持つ「比重(重さ)」の違いによって綺麗な層に分かれます。水と油が分かれるのと同じ原理です。血球成分の中で最も軽いのが「血小板」、次が「白血球」、最も重いのが「赤血球」です。この順番さえ知っていれば、図のどこに何があるか一発で分かります!

【各層(a〜e)の解説】

  • a:血漿(けっしょう)
    血液の液体成分です。比重が最も軽いため、一番上に層を作ります。
  • b:血小板(正解)
    血球の中で最も軽い血小板は、血漿のすぐ下(b層)に集まります。
  • c:白血球
    血小板より少し重い白血球は、血小板の下(c層)に集まります。ちなみに、b層とc層を合わせて「バフィーコート(白血球層)」と呼びます。
  • d:赤血球(上層)
    血球の中で最も重い赤血球は一番下に沈みます。上の方には、赤血球の中でも比較的若くて軽い「網赤血球」が集まります。
  • e:赤血球(下層)
    一番底には、古くて重くなった成熟赤血球が沈殿します。

暗記方法・覚え方のコツ

  • 血球の重さ順:「小(血小板)→白(白血球)→赤(赤血球)」
  • バフィーコート:「小と白の層を合わせてバフィーコート!」
さい
さい
血液センターなどで成分献血をする時も、この比重の違いを利用して「血小板だけ」や「白血球だけ」を取り出しています。

さいの補足

この問題の条件である「1,500Gで15分間」という遠心条件は、実は「乏血小板血漿(PPP:Platelet Poor Plasma)」を作るための強い遠心条件です。この条件で回すと血小板がしっかりと沈み、血漿中(a層)には血小板がほとんど残らなくなります。
凝固検査(PTやAPTTなど)を行う際には、血小板が結果に悪影響を及ぼさないよう、このPPPを使うのが大切です👍

問64:第XIII因子の特徴と働き(血液学)

【問題】
第XIII因子で正しいのはどれか。

  • 1.創傷治癒に関係する。
  • 2.欠損症でAPTTが延長する。
  • 3.蛋白分解酵素の前駆体である。
  • 4.活性化第Ⅹ因子により活性化される。
  • 5.フィブリンβ 鎖間に架橋結合をもたらす。
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正答:1

【解説】血液凝固の最終段階と創傷治癒

第XIII因子(フィブリン安定化因子)は、血液凝固カスケードの最終段階で働く因子です。可溶性フィブリンに共有結合(架橋結合)を形成させて強固な「安定化フィブリン」へと変換し、止血を完了させます。さらに、線維芽細胞の増殖や血管新生を促進し、組織の修復(創傷治癒)にも関与しています。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.正しい
    第XIII因子はフィブリン網の安定化に加えて、線維芽細胞やマクロファージの遊走・増殖に関与するため、創傷治癒に必須の因子です。
  • 2.誤り
    PT(プロトロンビン時間)やAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は「フィブリンが析出するまで」の時間を測定する検査です。第XIII因子はその後の安定化に関与するため、欠損していてもPTおよびAPTTは正常値を示します。
  • 3.誤り
    凝固因子の多くはセリンプロテアーゼ(蛋白分解酵素)の前駆体ですが、第XIII因子は「トランスグルタミナーゼ(架橋酵素)」の前駆体です。
  • 4.誤り
    第XIII因子は、第X因子ではなく「トロンビン」およびカルシウムイオン(Ca2+)の作用によって活性化第XIII因子(XIIIa)となります。
  • 5.誤り
    第XIII因子が架橋結合を形成する部位は、フィブリンの「γ(ガンマ)鎖間」および「α(アルファ)鎖間」です。β(ベータ)鎖は架橋されません。

暗記方法・覚え方のコツ

  • 検査値の特徴:「出血傾向があるにもかかわらずPT・APTTがともに正常である場合、第XIII因子欠乏症を疑う」
  • 架橋される鎖:「架橋結合が形成されるのはα鎖とγ鎖」
さい
さい
現場で「出血傾向があるが一般的な凝固検査(PT, APTT, フィブリノゲン)がすべて正常」という症例に遭遇した場合、第XIII因子欠乏症やvon Willebrand病、血小板機能異常症などを鑑別に挙げる必要があります。

さいの補足

第XIII因子欠乏症のスクリーニング検査として「尿素溶解試験(またはモノクロール酢酸溶解試験)」が用いられます。架橋結合が形成されていない脆弱なフィブリン塊は、5M尿素溶液などの溶媒中で24時間以内に溶解します。

問65:抗血小板薬と抗凝固薬の分類(血液学)

【問題】
APTTが延長しない薬剤はどれか。

  • 1.ヘパリン
  • 2.アスピリン
  • 3.直接抗Ⅹa薬
  • 4.ワルファリン
  • 5.直接抗トロンビン薬
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正答:2

【解説】一次止血と二次止血のどちらを阻害するか

止血機構に関与する薬剤は、血小板の機能を抑える「抗血小板薬」と、凝固因子の働きを抑える「抗凝固薬」に大別されます。APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は二次止血(凝固因子)の機能を評価する検査であるため、一次止血に作用する抗血小板薬の影響は受けません。ここがポイントです。

【各選択肢の薬剤分類と正誤理由】

  • 1.延長する(誤り)
    ヘパリンは「抗凝固薬」です。アンチトロンビンの作用を増強することで、トロンビン(第IIa因子)や第Xa因子などを阻害し、APTTを著明に延長させます。
  • 2.延長しない(正解)
    アスピリンは「抗血小板薬」です。シクロオキシゲナーゼ(COX-1)を阻害し、血小板の凝集を抑制します。一次止血の検査である出血時間(BT)は延長しますが、二次止血の検査であるAPTTやPTは延長しません。
  • 3.延長する(誤り)
    直接抗Xa薬(リバーロキサバンなど)は、経口の「抗凝固薬(DOAC)」です。凝固カスケードの共通系である第Xa因子を直接阻害するため、APTTおよびPTを延長させます。
  • 4.延長する(誤り)
    ワルファリンは「抗凝固薬」です。ビタミンKに拮抗し、第II、VII、IX、X因子の産生を抑制します。主にPTを強く延長させますが、第II、IX、X因子が低下するためAPTTも延長します。
  • 5.延長する(誤り)
    直接抗トロンビン薬(ダビガトランやアルガトロバンなど)は「抗凝固薬」です。トロンビン(第IIa因子)を直接阻害するため、APTTを延長させます。

暗記方法・覚え方のコツ

  • 薬剤の分類:アスピリンは「血小板」に作用し、ヘパリンやワルファリンは「凝固因子」に作用すると区別して覚えましょう。
  • モニタリング指標:ヘパリンの治療効果判定にはAPTTが、ワルファリンの治療効果判定にはPT-INRが用いられます。
さい
さい
患者さんがどのような薬剤を服用しているかを確認することが、凝固検査のデータを解釈する上で不可欠です。採血データを見る際に、投薬とデータの整合性を見ることも大切です

さいの補足

直接抗Xa薬や直接抗トロンビン薬は、総称してDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)と呼ばれます。ワルファリンのように頻回な採血モニタリング(PT-INRの測定)を必要としない利点があり、心房細動などの治療において近年広く使用されています。

問66:血小板凝集能検査と血小板無力症

【問題】
血小板凝集能検査所見(別冊No. 13)を別に示す(図中矢印は各アゴニスト添加を表す)。考えられるのはどれか。

  • 1.血小板無力症
  • 2.抗血小板薬服用
  • 3.Storage pool病
  • 4.von Willebrand病
  • 5.Bernard-Soulier症候群
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正答:1

【解説】凝集パターンの解釈と病態メカニズム

血小板凝集能検査は、特定のアゴニスト(惹起物質)を添加し、血小板塊が形成されることによる血漿の透過度の上昇を記録する検査です。問題のグラフでは、リストセチン添加時のみ透過度が上昇(凝集が正常)し、ADPおよびコラーゲン添加時は透過度が平坦(凝集が欠如)となっています。このパターンは血小板無力症に合致します。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.正しい
    血小板無力症は、血小板膜上のGPIIb/IIIa複合体の異常により、フィブリノゲンを介した凝集が起こらない疾患です。そのためADPやコラーゲンによる凝集は欠如しますが、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)とGPIbを介するリストセチン凝集は正常に保たれます。
  • 2.誤り
    アスピリンなどの抗血小板薬服用時は、コラーゲン凝集の低下やADPの二次凝集欠如が見られますが、ADPの一次凝集は起こるためグラフが完全に平坦になることはありません。
  • 3.誤り
    Storage pool病は、血小板内の濃染顆粒(放出顆粒)の異常疾患です。ADPによる一次凝集は正常ですが、自己の顆粒放出が伴わないため二次凝集が欠如します。
  • 4.誤り
    von Willebrand病は、vWFの量や機能の異常による疾患です。リストセチン凝集が低下または欠如しますが、ADPやコラーゲンによる凝集は正常です。
  • 5.誤り
    Bernard-Soulier症候群は、血小板膜上のGPIb/IX/V複合体の異常です。vWFとの結合ができないためリストセチン凝集が欠如しますが、ADPやコラーゲンによる凝集は正常です。

暗記方法・覚え方のコツ

  • 血小板無力症:リストセチンのみ正常(GPIIb/IIIaの異常)。
  • Bernard-Soulier症候群:リストセチンのみ異常(GPIbの異常)。
  • 相反するパターン
さい
さい
この問題、個人的にはめちゃ難しいです。中規模レベルの病院では全くといっていいほど縁のない内容です。

さいの補足

von Willebrand病とBernard-Soulier症候群は、どちらもリストセチン凝集が欠如します。鑑別法として、正常血漿(vWFを含む)を添加して凝集が回復すればvon Willebrand病、回復しなければ血小板側の異常であるBernard-Soulier症候群と判定します。

問67:染色体異常と融合遺伝子の組合せ

【問題】
染色体異常とそれに伴う融合遺伝子との組合せで正しいのはどれか。

  • 1.t(8;21)(q22;q22) CBFB::MYH11
  • 2.t(9;11)(p21.3;q23.3) BCR::ABL1
  • 3.t(9;22)(q34;q11.2) MLLT3::KMT2A
  • 4.t(15;17)(q22;q12) PML::RARA
  • 5.inv(16)(p13.1;q22) RUNX1::RUNX1T1
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正答:4

【解説】造血器腫瘍の各病型と特異的遺伝子異常

造血器腫瘍の多くは、特定の染色体転座や逆位の結果として生じる融合遺伝子(キメラ遺伝子)によって病態が規定されます。
選択肢4のt(15;17)およびPML::RARAは、急性前骨髄球性白血病(APL)の診断において必須となる所見です。

【各選択肢の解説と正誤理由】

  • 1.誤り
    t(8;21)により生じるのはRUNX1::RUNX1T1(旧名AML1-ETO)です。CBFB::MYH11はinv(16)に関連する異常です。
  • 2.誤り
    t(9;11)により生じるのはMLLT3::KMT2A(旧名MLL-AF9)です。BCR::ABL1はt(9;22)に関連する異常です。
  • 3.誤り
    t(9;22)により生じるのはBCR::ABL1(フィラデルフィア染色体)です。MLLT3::KMT2Aはt(9;11)に関連する異常です。
  • 4.正しい
    t(15;17)により形成されるPML::RARAは、急性前骨髄球性白血病(APL)に特異的な融合遺伝子です。
  • 5.誤り
    inv(16)により形成されるのはCBFB::MYH11です。RUNX1::RUNX1T1はt(8;21)に関連する異常です。

染色体異常と融合遺伝子の対応一覧

染色体異常 融合遺伝子 対象病型
t(8;21) RUNX1::RUNX1T1 急性骨髄性白血病(AML)
t(15;17) PML::RARA 急性前骨髄球性白血病(APL)
inv(16) CBFB::MYH11 急性骨髄単球性白血病(AML-M4Eo)
t(9;22) BCR::ABL1 慢性骨髄性白血病(CML)等
t(9;11) MLLT3::KMT2A 急性単球性白血病等

学習のポイント

  • 染色体番号と遺伝子名:t(15;17)とPML::RARA、t(9;22)とBCR::ABL1など、主要な組合せは正確に一致させて記憶する必要がある。
  • 診断的価値:これらの遺伝子異常が証明されたAMLは、芽球割合が20%未満であってもAMLと診断される点に留意。
さい
さい
FISH法やRT-PCR法を用いてこれらの融合遺伝子を迅速に同定します。特にAPLにおいては、PML::RARAの有無が全トランス型レチノイン酸(ATRA)による治療適応の決定に使われます。

さいの補足

近年のWHO分類の改訂により、遺伝子名の表記が一部変更されています(例:MLL遺伝子→KMT2A)。国家試験においても最新の表記で出題される可能性があるため、旧名と現名の両方を把握しておくことが望ましいです。
今回の選択肢も最新の遺伝子名表記に準拠しています。

臨床血液学(午前)の解説まとめは以上です

第72回の臨床血液学(午前問題)、お疲れ様でした。血球の形態学的な特徴から、造血器腫瘍のWHO分類に基づく診断基準、さらに凝固・線溶因子の機能に至るまで、多岐にわたる専門知識が求められる内容でした。これらの知識は国家試験対策としてだけでなく、臨床現場で血液像を鏡検する際や、凝固検査の異常データを解釈する際に役立つはずです。

一度にすべてを記憶するのではなく、細胞の分化過程や止血機構のカスケードを図解などと照らし合わせながら、論理的に知識を整理していくことをお勧めします!

さい
さい
血液学は検査データの変動と病態が密接に結びついている分野です。各疾患のメカニズムを正確に理解することで、得点源となります。

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