今回まとめた尿沈渣成分をきっちり覚えれば、きっと国家試験で役に立つはずです。
もちろん、プラスαで予備知識も対策できるようにしっかりまとめましたので、ご覧ください。
尿沈渣の国家試験出題数と傾向
臨床検査技師国家試験では毎年必ず画像問題が出題されています。
過去問題から尿沈渣の画像だけを抽出し、出題傾向など分析してみました。
※出典:厚労省ホームページより画像、問題を掲載しています。
今回集めたのは厚労省でダウンロードできる17年間の国家試験問題(第52回~68回)で出題されていた計19枚です。
年あたり1.1題出されているので、ほぼ必出の問題であるといえます。対策さえしていれば必答レベルの内容なので、しっかり分析・対応しましょう。
なお、出題傾向は下グラフの通り。
過去問を見てみると決まった成分が出題されている
円柱、結晶、赤血球形態、その他といった感じで出題される成分はある程度絞ることができそう。
形態のみを聞いてきているのはサービス問題です。過去問に出た既出沈渣成分は必ず答えられるようにしましょう。
また、鑑別の難しい上皮細胞を聞いてくる問題は過去18年間は無いようです。
結晶の鑑別方法も重要
過去問では、シュウ酸カルシウム結晶の鑑別方法がでていました。
加温、酸、塩基など各結晶はどう鑑別するかの知識も必要です。しかしながら、過去18年間特殊な結晶の鑑別は選択肢にはあるものの、答えさせてはいないようです。(チロシン、コレステロール、DHAなど)
尿沈渣成分と病態も知っておく必要がある
国家試験では、尿沈渣成分がわかってからさらにもう一押しの問題があります。
「問題の尿沈渣成分はどのような病態で出現するか」
これも近年では問われているようです。沈渣の形態だけではなく、病態もセットで覚えておきましょう。後で補足しますが、「ネフローゼ、慢性糸球体腎炎、尿管結石」などのメジャーな病態が多く出題されているようです。
国家試験に出題された尿沈渣画像問題と解答
第52回 午前 35問(ろう様円柱)
問題:強拡大の尿沈渣標本を示す。矢印の示す構造物で正しいのはどれか。
- シュウ酸カルシウム結晶である
- 顆粒円柱である
- 高度の腎障害で認められる
- 激しい運動後に認められる
- 尿細管腔で形成される
答え3と5
第53回 午前 46問(ヘモジデリン顆粒)
問題:尿沈渣標本(強拡大・ベルリン青染色)を示す。考えられるのはどれか。2つ選べ。
- 異型輸血
- 糖尿病性腎症
- 膣トリコモナス症
- ネフローゼ症候群
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症
答え1と5
第54回 午前 7問(赤血球円柱)
問題:五歳の男児。浮腫を主訴に来院した。二週間前に感冒様の症状があった。高血圧が認められる。尿沈渣(S染色・強拡大)を別に示す。この患者の検査所見で上昇するのはどれか。
- ASO価
- HbA1c値
- 血清IgA値
- 抗DNA抗体価
- 血清コレステロール値
答え1
第54回 午後 6問(シュウ酸カルシウム結晶)
問題:尿沈渣の無染色、強拡大標本を示す。この結晶について正しいのはどれか。
- 加温すると溶解する
- 10%塩酸で透明となる
- 3%酢酸で気泡を発生する
- 10%水酸化カリウムで膠状となる
- アルコール・エーテル混合液で溶解する
答え2
第55回 午後 6.7問(リン酸アンモニウムマグネシウム結晶)
問題6:みられる結晶はどれか
- 尿酸
- シスチン
- ビリルビン
- シュウ酸カルシウム
- リン酸アンモニウマグネシウム
問題7:この混濁尿が透明となるのはどれか
- 加温する
- 濾過する
- 3%酢酸を加える
- 10%水酸化カリウムを加える
- アルコール・エーテル混合液を加える
問題6:答え5
問題7:答え3
第56回 午後 6.7問(卵円形脂肪体)
問題6:矢印で示すのはどれか
- 移行上皮
- 変形赤血球
- 卵円形脂肪体
- ビリルビン結晶
- シュウ酸カルシウム結晶
問題7:この患者で見られる検査所見はどれか。二つ選べ。
- 抹消血白血球数 18000/μL
- 血清アルブミン 2.1g/dL
- 血清総ビリルビン 3.5mg/dL
- 血清総コレステロール 285mg/dL
- 血清CRP 9.8mg/dL
問題6:答え3
問題7:答え2と4
第57回 午後 4問(脂肪円柱)
問題:尿沈渣のsudanⅢ染色標本を示す。考えられる疾患はどれか。
- 腎細胞がん
- 腎盂腎炎
- 尿管結石
- 急性糸球体腎炎
- ネフローゼ症候群
答え5
第58回 午前 6問(赤血球円柱)
問題:尿沈渣のSternheimer染色標本を示す。認められるのはどれか。
- 顆粒円柱
- 脂肪円柱
- 上皮円柱
- 赤血球円柱
- 白血球円柱
答え4
第58回 午後 6問(非糸球体性赤血球)
問題:尿沈渣の無染色標本を示す。考えられる疾患はどれか。二つ選べ。
- 腎がん
- 尿管結石
- 糖尿病性腎症
- 慢性糸球体性腎炎
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
答え1と2
第59回 午前 7問(シュウ酸カルシウム結晶)
問題:尿沈渣の無染色、強拡大標本を示す。この結晶を溶解するのはどれか。
- 希塩酸
- アセトン
- アンモニア
- クロロホルム
- アルコール・エーテル混合液
答え1
第59回 午後 7問(糸球体性赤血球)
問題:尿沈渣の無染色標本を示す。考えられる疾患はどれか。二つ選べ。
- 膀胱がん
- 尿管結石
- 血管炎症候群
- 横紋筋融解症
- 慢性糸球体腎炎
答え3と5
第61回 午前 5問(赤血球円柱)
問題:尿沈渣の無染色標本を示す。認められるのはどれか。
- 顆粒円柱
- 脂肪円柱
- 上皮円柱
- 赤血球円柱
- 白血球円柱
答え4
第62回 午後 3問(ガラス円柱)
問題:尿沈渣のSternheimer染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。
- 硝子円柱
- 脂肪円柱
- 上皮円柱
- 赤血球円柱
- 白血球円柱
答え1
第63回 午前 4問(ビリルビン結晶)
問題:尿沈渣に見られた結晶を示す。考えられるのはどれか。
- 高尿酸血症
- 閉塞性黄疸
- ネフローゼ症候群
- 先天性シスチン尿症
- 先天性アデニンホスホリボシルトトランスフェラーゼ欠損症
答え2
第64回 午前 5問(リン酸アンモニウムマグネシウム結晶)
問題:尿沈渣の無染色、強拡大標本を別に示す。この構造物が生成される疾患はどれか。
- 痛風
- 慢性尿路感染症
- 腫瘍崩壊症候群
- 副甲状腺機能亢進症
- 溶血性尿毒症症候群
答え2
第66回 午前 3問(シスチン結晶)
問題:尿沈渣の無染色標本を示す。認められる結晶はどれか。
- 尿酸結晶
- シスチン結晶
- ビリルビン結晶
- リン酸カルシウム結晶
- シュウ酸カルシウム結晶
答え2
第66回 午後 9問(ビリルビン結晶)
問題:尿沈渣の無染色標本を示す。この構造物が生成されるのはどれか。
- 痛風
- 胆管がん
- シスチン尿症
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症
- アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症
答え2
第68回 午前 4問(シュウ酸カルシウム結晶)
問題:尿沈査の無染色標本を別に示す。この構造物の成分はどれか。
- 尿酸
- シスチン
- ビリルビン
- リン酸カルシウム
- シュウ酸カルシウム
答え5
第68回 午後 3問(顆粒円柱)
問題:尿沈渣の無染色標本(1A)及びSternheimer染色標本(1B)を別に示す。矢印が示す構造物はどれか。
- 顆粒円柱
- 脂肪円柱
- 硝子円柱
- 上皮円柱
- 赤血球円柱
答え1
第69回 午後 1問(シスチン結晶)
尿沈渣の無染色標本(別冊 No.1)を別に示す。矢印が示す構造物はどれか。
- 尿 酸
- シスチン
- ビリルビン
- リン酸カルシウム
- シュウ酸カルシウム
答え2
各沈渣成分の詳細と覚えるべきポイント
円柱
国家試験では、円柱でも「ガラス円柱、脂肪円柱、ろう様円柱、赤血球円柱」しか出ていません。
円柱はイメージとして、腎臓に障害があると硝子円柱が始めに出現し、そこに尿細管上皮が封入されて上皮円柱、さらに増悪すると尿細管上皮由来の顆粒円柱が出現。最後がろう様円柱です。
また、ろう様円柱が出現するほど腎に障害があると、卵円形脂肪体や脂肪円柱なども出現します。
結晶
ルーチンで最も出現するシュウ酸カルシウム結晶やリン酸アンモニウムマグネシウム結晶がよく出題されています。
ビリルビン結晶も独特のウニ様の写真で2題出ていますね。そして、閉塞性の黄疸が出るというような病態も聞いてきています。
さらに、結晶の鑑別も多く出題されています。以下に結晶鑑別を載せておきますので参考にしてください。
- 【既出】シュウ酸カルシウム:塩酸に溶解(酢酸には溶けません)
- 【既出】リン酸アンモニウムマグネシウム結晶:塩酸、酢酸に溶解
- 尿酸結晶:60度加温、水酸化カリウム、アンモニア水で溶解
- リン酸カルシウム結晶:塩酸、酢酸で溶解
- 尿酸アンモニウム結晶:塩酸、酢酸、KOHで溶解
- 炭酸カルシウム結晶:酢酸で気泡(+)で溶解
- ビリルビン結晶:アセトン、クロロホルムで溶解
- シスチン結晶:1角が120度
- コレステロール結晶:1角が90度
- 2.8-ジヒドロキシアデニン結晶(DHA):加温、酢酸塩酸、KOHで溶解
赤血球
糸球体(変形赤血球)と非糸球体赤血球の鑑別と、どういった病態で各々出現するかが問われています。
糸球体赤血球は血管炎症候群や慢性糸球体腎炎などで出現するので覚えておきましょう。
- 写真を見て、均一な赤血球であれば非糸球体型の赤血球。形は色々ありますが、とにかく見た目がキレイ。コブ状のものが糸球体型と間違えそうですが、コブを除いてみてみると均一なのがポイントです。(尿路感染系や悪性腫瘍系が多い)
- 不均一、大小不同、コブ状、標的なのどの多形態の赤血球が観察されるとそれは糸球体型の赤血球の可能性が高いです。赤血球円柱も同時によく見られます。糸球体性腎炎、ネフローゼ症候群、IgA腎症などで出現します。
その他
ヘモジデリン顆粒が1題出ています。近年では問われていないようですが、異型輸血、発作性夜間ヘモグロビン尿症で出現します。(溶血性の疾患)
また、ベルリン青染色が特徴的ですね。
最後に
臨床検査技師国家試験には尿沈渣の問題はほぼ毎年でています。(年あたり1.1題)
さらに出題傾向もある程度は決まっているので、ポイントを押さえて勉強すれば確実に点を取れる美味しい問題になると思います。
- 各種円柱を一目でわかるようにする(ガラス、ろう様を中心に)
- 赤血球形態を把握(糸球体と非糸球体)
- 結晶の形態を覚える
- 結晶の溶解を覚える
- 尿沈渣成分と病態をセットで覚える(ネフローゼ、重度の腎障害など)
過去問を見る限りではこの程度の把握でも充分かと思われます。
仕事のルーチンで尿沈渣を見ていると、即答レベルの問題ばかりです。難易度的にはそこまで難しくはないと思います。形態が苦手な人も、最低限この過去問集は押さえておきましょう。
下記リンクから無料で見れるJ-STAGEの尿沈査アトラスもありますので参考にしてみてください。