【国試対策】便検査はこれで完璧!
過去問から学ぶ便潜血(免疫法)と便の色の意味
今回は、一般検査の中から「便検査」をピックアップして解説します。
📝 引用元について
この記事で解説している国家試験の問題文は、厚生労働省のウェブサイトで公開されているものを、学習目的で引用しています。(医療トピックス一覧に国家試験過去問のリンクがあります)
便の色一つで出血の場所を推測したり、目に見えない血液(潜血)から大腸がんのサインを見つけ出したり。臨床では、入院している貧血の患者さんに対して頻繁に行う検査でもあります。
便の性状から疾患を読み解く
まずは、便の色や形といった「見た目」から、どんな病気が隠れているのかを推理する問題です。特に、特徴的な便の性状と疾患の組み合わせは国試の定番です。
【第67回 午前 問4 / 第70回 午前 問9】便の色と形で分かること
糞便の特徴と疾患の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。(第67回)
- 1.黒色便 – 下部消化管出血
- 2.灰白色便 – 閉塞性黄疸
- 3.白色下痢便 – アメーバ赤痢
- 4.米のとぎ汁様便 – コレラ
- 5.イチゴゼリー状粘血便 – 細菌性赤痢
糞便の性状と疾患の組合せで正しいのはどれか。(第70回)
- 1.緑色便 – 総胆管結石
- 2.灰白色便 – MRSA腸炎
- 3.タール便 – コレラ
- 4.米の研ぎ汁様便 – カンピロバクター腸炎
- 5.いちごゼリー状便 – アメーバ赤痢
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【上問】正解:2, 4
【下問】正解:5
一つひとつの便が「なぜその色・形になるのか?」というメカニズムを理解することが、丸暗記を防ぐ最大のコツです。下の表で整理してみましょう!
【疾患別】特徴的な便の性状 早見表
便の性状 | 関連疾患 | メカニズム (なぜそうなる?) |
---|---|---|
黒色便 (タール便) | 上部消化管出血 (胃・十二指腸潰瘍など) | 血液(Hb)が胃酸で酸化され、黒いヘマチンになるため。 |
新鮮血便 | 下部消化管出血 (大腸がん、痔など) | 血液が胃酸に触れず、そのまま排出されるため。 |
灰白色便 (脂肪便) | 閉塞性黄疸 (胆道閉鎖など) | 胆汁が腸に流れず、便の色の元(ステルコビリン)が作られないため。 |
米のとぎ汁様便 | コレラ | コレラ毒素により、腸から大量の水分が分泌されるため。 |
イチゴゼリー状粘血便 | アメーバ赤痢 | アメーバが腸粘膜を深く破壊し、壊死組織・粘液・血液が混じるため。 |
この表を見れば、各選択肢の正誤が一目瞭然ですね。
例えば、「黒色便 – 下部消化管出血」は出血部位が違うので×、「米のとぎ汁様便 – コレラ」や「イチゴゼリー状便 – アメーバ赤痢」は鉄板の組み合わせなので○、と判断できます。
便潜血検査の原理と注意点
目に見えない微量の消化管出血(潜血)を検出する検査です。特に、大腸がんのスクリーニングとして広く行われている免疫学的潜血検査は、国試の超頻出テーマです。
【第67回~第70回の過去問より厳選】免疫学的便潜血検査
イムノクロマト法による便潜血検査について正しいのはどれか。(第67回)
- 1.検体は冷凍で輸送する。
- 2.食事制限が必要である。
- 3.IgG感作赤血球を用いる。
- 4.プロゾーン現象がみられる。
- 5.上部消化管出血と下部消化管出血の検出感度は同等である。
便潜血の免疫学的検査法で正しいのはどれか。2つ選べ。(第68回)
- 1.便中の鉄を検出する。
- 2.食事制限が必要である。
- 3.化学的検査法より検出感度は低い。
- 4.便の表面をこするように採取する。
- 5.上部より下部の消化管出血の検査に適している。
免疫学的便潜血検査で正しいのはどれか。(第70回)
- 1.検体採取前は食事制限をする。
- 2.採取後の検体は室温で保存する。
- 3.化学的測定法より検出感度が低い。
- 4.胃がんのスクリーニング検査である。
- 5.便のこすり方は検出率に影響を与える。
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正解:【67回】4, 【68回】4, 5, 【70回】5
つまり、免疫学的便潜血検査の「原理」と「長所・短所」をしっかり理解しておけば、すべて解けるということです!
旧来の「化学法」と比較すると、その特徴がより明確になります。楽勝です👍
便潜血検査【免疫法 vs 化学法】徹底比較表
免疫法 (現在主流) | 化学法 (旧法) | |
---|---|---|
検出対象 | ヒトヘモグロビン(Hb) | ヘムのペルオキシダーゼ活性 |
食事制限 | 不要 | 必要 (肉・魚・一部野菜) |
得意な出血部位 | 下部消化管 (大腸など) | 上部・下部 両方 |
感度 | 高い | 低い |
主な用途 | 大腸がんスクリーニング | 上部消化管出血の検索など |
比較表から導かれるポイント(各選択肢の深掘り)
原理:なぜ食事制限が不要?
免疫法は「ヒトのヘモグロビン」にだけ反応する特異的な抗体を使います。そのため、肉や魚の血液には反応せず、化学法で必要だった食事制限が不要になりました。
得意/不得意:なぜ大腸がん検診に?
胃酸で変性したHbには反応しにくいため、上部消化管出血は苦手(偽陰性の可能性)。一方、Hbが変性しにくい下部消化管(大腸など)の出血検出に非常に優れています。これが大腸がんスクリーニングに使われる理由です。
採便方法:なぜ表面をこする?
大腸がんやポリープからの出血は、便の表面に付着していることが多いためです。便の表面をまんべんなく広くこすることで、出血を見逃す確率を下げることができます。「便のこすり方」は検出率に大きく影響します。
注意点①:プロゾーン現象
抗原(Hb)が極端に多すぎると、逆に反応が弱まる(偽陰性になる)現象です。肉眼で分かるほどの大出血の場合、かえって潜血検査が陰性になることがあると覚えておきましょう。
注意点②:検体保存
採取後の検体は、冷暗所(冷蔵庫)で保存するのが原則です。室温で放置すると、便中の細菌などによってHbが分解され、偽陰性の原因となります。
まとめ【結論】便検査をマスターする4つの鉄則
地味に見える便検査ですが、その中には消化管からの重要なメッセージが詰まっています。
プロの探偵として、メッセージを読み解くための4つの鉄則をマスターしましょう。
鉄則1:色で出血部位を推理せよ!
黒なら上部、赤なら下部、白なら胆道
便の色は、出血部位や胆汁排泄の異常を知るための最大のヒントです。「なぜその色になるのか?」というメカニズム(胃酸の影響、胆汁の有無)とセットで覚えましょう。
「米のとぎ汁=コレラ」「イチゴゼリー=アメーバ赤痢」
特定の感染症では、非常に特徴的な便が排泄されます。これらのキーワードは、国試でそのまま出題される鉄板知識です。必ず暗記しておきましょう。
原理が分かれば「食事制限不要」「下部消化管に強い」は導ける
便潜血(免疫法)が「ヒトのヘモグロビンにだけ反応する」という一点を理解すれば、その長所(食事制限不要)と短所(上部消化管出血に弱い)が自然と頭に入ってきます。
検査の精度は「便表面のまんべんない採取」から
検査の品質は、分析前の検体採取段階で半分以上決まります。患者さんへの正しい採便指導も、僕たち臨床検査技師の重要な役割の一つです。
僕たち臨床検査技師は、患者さんから預かった大切な「メッセージ」を扱っています。便検査もその一つ。そのメッセージを正しく読み解き、臨床に貢献する。そんなプロフェッショナルを目指して、これからも一緒に頑張っていきましょう!