過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
臨床検査技師国家試験の過去問解説のまとめページです
第70回臨床化学PM29~44
29 ビリルビンで正しいのはどれか。
- 尿中には非抱合型が排泄される。
- 抱合型はタウリンと結合している。
- 抱合型は非抱合型より酸化されやすい。
- 非抱合型は抱合型より光に対して不安定である。
- δビリルビンは抱合型にグロブリンが結合している。
解説:ビリルビンの代謝についておさらいです。
- ビリルビンは通常は胆汁中に排泄されるが、ウロビリノゲンは尿中に排泄される
⇒ビリルビンは肝臓でグルクロン酸抱合され抱合型ビリルビンとなる
そして腸内で細菌によって分解されてウロビリノゲンとなる
さらに腸から吸収されて血液中に出現し、腎臓から尿中に排泄される
これが尿中に排泄され「ウロビリノゲン」と呼ばれる - 水溶性の直接ビリルビン(抱合型)も僅かに尿中に排泄される
- 抱合型はグルクロン酸と結合している
- 非抱合型(間接ビリルビン)は特に光に対して不安定であり、酸化されやすい
- δビリルビンは抱合型にアルブミンが共有結合したビリルビンで、肝胆道系疾患で抱合型の排泄が障害された場合に血中に現れる
ビリルビンは代謝も表現も複雑で、理解が難しいです。本問題に限定していえば、さほど聞いている内容は難しくないので、消去法でも解くことはできそうです。
答え:4
30 加水分解酵素はどれか。
- ALP
- AST
- CK
- γ-GT
- LD
解説:酵素の種類には以下のものがある。
- 酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)
- 転移酵素(トランスフェラーゼ)
- 加水分解酵素(ヒドロラーゼ)
- 脱離酵素(リアーゼ)
- 異性化酵素(イソメラーゼ)
- 結合酵素、合成酵素(リガーゼ)
選択肢を見てみると、ALPは有機リン酸モノエステルを加水分解する酵素で、
AST、CK、」γ-GTPは転移酵素、LDは酸化還元酵素になる。
詳細は、教本で確認することをおススメします。
答え:1
31 アルドステロンの作用はどれか。
- 骨形成
- 脂質合成
- Na再吸収
- 血糖値低下
- 心拍数上昇
解説:レニン-アンジオテンシン・アルドステロン系の反応をおさらいします。
アルドステロンは腎臓に作用しNaと水の再吸収を促進することで血漿量を増加させ、血圧上昇をもたらす。
その他の選択肢とホルモンの組合せを正しく直すと以下の通りとなる
- 骨形成はエストロゲン
- 脂質合成や血糖値低下はインスリン
(インスリンは肥満ホルモンとも巷では呼ばれている) - 心拍数上昇はアドレナリンなど
答え:3
32 高エネルギー化合物で最も高いエネルギーをもつのはどれか。
- ATP
- ピロリン酸
- アセチルCoA
- クレアチンリン酸
- ホスホエノールピルビン酸
解説:高エネルギー化合物をエネルギー順で覚えてしまうのがいいでしょう。
★高エネルギー化合物をエネルギー順
- ホスホエノールピルビン酸(-61.9 KJ/mol)
- 1,3-ビスホスホグリセリン酸(-49.4 KJ/mol)
- ATP(-45.6 KJ/mol)
※→AMP+PPi - クレアチンリン酸(-43.1 KJ/mol)
- アセチルCoA(-32 KJ/mol)
- ATP(-30.5 KJ/mol)
※(ADP+Pi)
※高エネルギー化合物とは生体内のリン酸基の加水分解により-25 kJ/mol以上の自由エネルギーを放出するもの
kjまで覚える必要はありませんが、授業などの印象で「ATP=最も高エネルギー化合物」みたいな思い込みがあってはいけないので、ここで復習しておきましょう。
答え:5
33 蛋白質の含有率が最も高いのはどれか。
- HDL
- IDL
- LDL
- VLDL
- カイロミクロン
解説:リポ蛋白質の特徴のうち「蛋白質の含有量」というものがあります。マイナーにも感じますが過去問にも出題されており、対策は可能です。
表より、HDLが最も蛋白質含有量が多いことがわかります。なお上表は過去問より作成しているものなので、これを覚えておけばほとんどの問題に対応可能かと思います。
答え:1
34 必須アミノ酸はどれか。
- アラニン
- グリシン
- チロシン
- プロリン
- ロイシン
解説:必須アミノ酸とはヒトが体内で合成できないもの。
フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、スレニオン(トレオニン)、ヒスチジン、トリプトファン、リジン、メチオニンの9種類がある。
★必須アミノ酸覚え方
- 風呂場椅子一人占め(ふろばいすひとりじめ)
(ふ)フェニルアラニン、(ろ)ロイシン、(ば)バリン、(い)イソロイシン、(す)スレニオン(トレオニン)、(ひ)ヒスチジン、(と)トリプトファン、(りじ)リジン、(め)メチオニン
上表より、選択肢の中ではロイシンだけが必須アミノ酸であることがわかります。他の選択肢は非必須アミノ酸です。
答え:5
35 尿酸で正しいのはどれか。
- 血漿中で酸化作用を持つ。
- 血漿中濃度は朝より夜に高い。
- 酵素法試薬ではウレアーゼが用いられる。
- 核酸のピリミジン塩基の最終代謝産物である。
- 血漿中の尿酸の溶解度は約7.0mg/dLである。
解説:尿酸についての問題もよく見る印象です。尿素と混同させるような問題が多いと思います。
★尿酸について
- 血漿中では抗酸化作用をもつ
- 朝高く、夜低い
- 性差があり、男性>女性
- 尿酸の測定にはウリカーゼが用いられる
⇒ウレアーゼは尿素窒素の測定に用いる(尿素を加水分解する酵素) - 核酸塩基の構成物質であるプリン塩基は尿酸に分解される
⇒ピリミジン塩基はアンモニアと二酸化炭素にそれぞれ分解される - 血漿中の尿酸の溶解度は約7.0mg/dL
⇒これを超えると「結晶化」する可能性があり、痛風の原因となる
僕が国家試験の勉強をしていた十数年前からこのような問題はよく出題されています。
答え:5
36 血中薬物濃度測定で検体に全血を用いるのはどれか。2つ選べ。
- ジゴキシン
- タクロリムス
- シクロスポリン
- メトトレキサート
- フェノバルビタール
解説:免疫抑制薬は血球に入り込む特性がある。
タクロリムス・シクロスポリンはそのため赤血球に多く存在するため、全血検体にて測定を行う。
※この二つくらいしかルーチンで見ませんので、覚えてしまいましょう。
その他選択肢は全て血清、血漿で検査を行う。
答え:2と3
37 過剰症を起こすビタミンはどれか。2つ選べ。
- チアミン
- レチノール
- リボフラビン
- アスコルビン酸
- カルシフェロール
解説:過剰症を起こすのは脂溶性ビタミンの中の(A、D、K)で、理由としては体内に蓄積されやすいためと言われています。
選択肢は実は全てビタミンの別名であるため、それらを知っておく必要があります。
選択肢をそれぞれビタミン名に直します。
- チアミン(ビタミンB1)
- レチノール(ビタミンA)⇒ 頭痛の誘発
- リボフラビン(ビタミンB2)
- アスコルビン酸(ビタミンC)
- カルシフェロール(ビタミンD)⇒ 高カルシウム血症などの過剰症
水溶性はビタミンBとビタミンCなので、それ以外のビタミンAとビタミンDが正解となります。
答え:2と5
38 Child-Pughスコアに使用されるのはどれか。2つ選べ。
- ALT
- γ-GT
- アルブミン
- コリンエステラーゼ
- プロトロンビン時間
解説:Child-Pugh(チャイルド・ピュー) スコアは肝硬変の重症度を表すもので、
以下のようにアルブミン、ビリルビン、PT、肝性脳症、腹水から分類されます。
答え:3と5
39 血中アンモニア濃度で正しいのはどれか。
- 成人では性差がある。
- 溶血検体で低値を示す。
- 消化管出血により上昇する。
- 採血後室温で放置すると低下する。
- 動脈血のアンモニア濃度は静脈血より高い。
解説:アンモニアについて選択肢を正しく直し補足しつつまとめます。
★アンモニアについて
- 血中アンモニア濃度には性差はない
- 赤血球には血漿の約3倍ものアンモニアが含まれているため、溶血で正誤差となる
- 消化管出血時は出血した血液に含まれる蛋白質が腸内で分解されてアンモニアになり、上昇する
(※その後肝臓で尿素に変換されるため、尿素窒素も高値となる) - 採血後に室温放置すると赤血球の代謝(赤血球からのアンモニア遊離や、蛋白・アミノ酸からのアンモニア生成)によりアンモニア濃度が上昇する(採血後は氷冷し、速やかに冷却遠心して測定することが望ましい)
- 動脈血のアンモニア濃度は静脈血の1/3となっている
(アンモニアは毒なので、動脈は低くて当然)
消化管の出血により、たんぱく質の分解でアンモニアが生成されるという事を知っておく必要があります。単に「出血」だけに着目すると、この選択肢は飛ばしてしまいそうなので要注意です。
答え:3
40 LDで正しいのはどれか。
- 2量体である。
- LD5は赤血球に多く含まれる。
- 半減期が最も長いのはLD1である。
- 健常人血清ではLD3の割合が最も高い。
- LD1はM型のサブユニットで構成される。
解説:LDH(乳酸脱水素酵素)アイソザイムについて、過去問解説で用いた図を含めてまとめていきます。
添付した図を見つつ、選択肢をまとめていきます。
- LDは4量体であり、H型とM型のサブユニットの組合せで5種類のアイソザイムが存在する
- LD1、2は赤血球や心筋、LD3は癌細胞、LD4、5は骨格筋や肝臓が起源となる
- 半減期はLD1が最も長く、次いでLD2、LD3、LD4、LD5と順に短くなる
- 健常人血清ではLD2の比率が最も高い
- LD1はH型のサブユニットのみで構成される
答え:3
41 酵素活性測定の酵素と基質の組合せで正しいのはどれか。
- ALP 4-ニトロフェノール
- ALT L-グルタミン
- AST ピリドキサルリン酸
- CK N-アセチルシステイン
- α-アミラーゼ 4,6-エチリデン-4-ニトロフェニル-マルトヘプタシド
解説:選択肢を正しく直します。試薬添付文書を見れば簡単ですが、この反応を覚えておくのは至難の業だと個人的には思います。
- ALPは4-ニトロフェニルリン酸が基質とする
4-ニトロフェノールとリン酸を生成する - ALTはL-アラニン、α- ケトグルタル酸を基質とする
ピルビン酸とL-グルタミン酸を生成する - ASTはL-アスパラギン酸と2-オキソグルタル酸を基質とする
オキサロ酢酸とL-グルタミン酸を生成する - CKはクレアチンリン酸とアデノシン-5′-二リン酸(ADP)を基質とする
クレアチンとアデノシン-5′-三リン酸(ATP)を生成する - α-アミラーゼは4,6-エチリデン-4-ニトロフェニル-マルトヘプタシド(Et-G7-pNP)を基質とする
p-ニトロフェニルマルトシド(G2-pNP)、
p-ニトロフェニルマルトトリオシド(G3-pNP)、
p-ニトロフェニルマルトテトラオシド(G4-pNP)を生成する
臨床化学を苦手とする人が多いのはこういった出題のせいでもあると思います。
みんなが苦手とするならば、幸いにもメジャーな酵素ばかりの選択肢なので、ここで覚えてアドバンテージとしましょう。
答え:5
42 尿細管機能の評価に用いられないのはどれか。
- シスタチンC
- α1-ミクログロブリン
- β2-ミクログロブリン
- 肝臓型脂肪酸結合蛋白〈L-FABP〉
- N-アセチルグルコサミニダーゼ〈NAG〉
解説:選択肢の項目がどういった用途で用いられるかを把握しておく必要があります。
マイナーな検査項目もありますが、答えとなる選択肢は「腎臓内科」などの臨床でもよく目にしますので知っておく必要はあると思います。
- シスタチンCは糸球体機能評価に用いる
- α1-ミクログロブリン、β2-ミクログロブリンは近位尿細管再吸収機能評価に用いる
両者ともに近位尿細管で再吸収される蛋白 - L-FABPは近位尿細管細胞障害で産生される
※H-FABP(心臓由来脂肪酸結合蛋白との混同注意です。こちらは心筋傷害時に速やかに血中に逸脱する蛋白です。) - NAGは尿細管全般障害の指標とされる
答え:1
43 eGFRで正しいのはどれか。
- 採尿が必要である。
- 算出に年齢を用いる。
- 基準範囲に性差がある。
- 尿細管機能を評価する。
- 検査前に絶食が必要である。
解説: eGFRは推算糸球体ろ過量のことで、血清Cre値、年齢、性別から求めることができる。
★e-GFRの推算式
- 男性:eGFR(ml/分/1.73㎡)
=194×Cr(mg/dl)-1.094×年齢-0.287 - 女性:eGFR(ml/分/1.73㎡)
=194×Cr(mg/dl-1.094×年齢-0.287×0.739
選択肢を見てみると
- 採尿は不要
- 算出には年齢を用いる(正)
- 基準範囲には性差はない
- 尿細管機能ではなく、糸球体ろ過量を評価する
- 絶食は不要
答え:2
44 糖尿病精査のため来院した患者の検査結果で糖尿病型を示すのはどれか。2つ選べ。
- HbA1c 7.1%
- 随時血糖値210mg/dL
- グリコアルブミン21.5%
- 75g経口ブドウ糖負荷試験1時間血糖値220mg/dL
- 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間血糖値180mg/dL
解説:糖尿病型の検査基準値です。選択肢は同じような数値や項目がありますので、正確に覚えておく必要があります。
★糖尿病型の検査基準値
- 早朝空腹時血糖値126 mg/dL以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(2時間値)200mg/dL以上
- 随時血糖値200mg/dL以上
- HbA1c6.5%以上
★正常型の検査基準値
- 早朝空腹時血糖値110 mg/dL未満
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(2時間値)140mg/dL未満
★境界型
- 糖尿病型でも正常型でもないもの
- GA(グリコアルブミン)は検査基準には用いられません。透析患者の血糖値把握に用いられます。(透析による、血球寿命の短縮対策)
- OGTT1時間値の血糖値は基準値には決められていません。
答え:1と2
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