過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
国家試験の過去問解説のまとめページです
第70回臨床生理学AM問16~28
16 僧帽弁が閉じてから大動脈弁が開くまでの心時相はどれか。
- 急速流入期
- 駆出期
- 心房収縮期
- 等容弛緩期
- 等容収縮期
解説:心周期における時相の問題です。教本で心模型を見ながら確認しましょう。
過去問の模型をつけておきますが、見づらいと思います。(すみません)
★心周期とは
心臓が収縮と拡張を周期的に行っていること
★心時相
4つの時相に分けることができる(Ⅰ~Ⅳ)
- 【収縮期】は等容性収縮期(Ⅰ)と駆出期(Ⅱ)
- 【拡張期】は等容性弛緩期(Ⅲ)と充満(流入)期(Ⅳ)
※収縮期:心室が収縮しているとき
※拡張期:心室が弛緩しているとき
★弁の状態(Ⅰ~Ⅳを繰り返す)
- 等容性収縮期(Ⅰ)⇒ 僧帽弁、三尖弁は閉じる
- 駆出期(Ⅱ)⇒ 大動脈弁、肺動脈弁が開く
- 等容性弛緩期(Ⅲ)⇒ 全ての弁は閉じる
- 充満期(Ⅳ)⇒ 僧帽弁、三尖弁が開く
答え:5
17 標準12誘導心電図(別冊No. 2)を別に示す。所見はどれか。
- 右脚ブロック
- 左脚ブロック
- Ⅲ度房室ブロック
- MobitzⅡ型房室ブロック
- Wenckebach型房室ブロック
解説:心電図の波形を見ると、まず「右脚ブロック、左脚ブロック」は1秒で除外できます。(それぞれの特徴的な波形でないし、そもそも幅広QRS波がない)
残るは房室ブロックの鑑別ですが、これも慣れている人ならすぐに分かります。
- Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)は、房室の伝導が完全に断たれるため、補充調律となることが多く、徐脈になる傾向があります。また、PP間、RR間は規則正しいのも特徴的です。p波はあるのに、QRS波がそのあとに見られず、P波、P波、P波、QRS波、P波、P波、P波・・・とP波とQRS波がバラバラに出るのが特徴です。
- MobitzⅡ(モビッツⅡ)型房室ブロックとWenckebach(ウェンケバッハ)型房室ブロックは同じⅡ度房室ブロックであり、一見似ていますが、実は異なる箇所があります。
P波とQRS波の間隔を見てください。 - P波とQRS波の始まりまでの間隔(PQ間隔)が一定で、P波はあるものの、突然QRS波だけ無くなるのがMobitzⅡ(モビッツⅡ)型房室ブロック
- PQ間隔の間隔が徐々に伸びていき、やがてQRS波が無くなるのがWenckebach(ウェンケバッハ)型房室ブロックです
心電図を見ると、PQ間隔が徐々に伸びていき、その後P波だけあるものの、QRS波がなくなっています。すなわち、Wenckebach(ウェンケバッハ)型房室ブロックであることがわかります。
※危険度(突然死リスク)はMobitzⅡ(モビッツⅡ)型房室ブロックの方が高いです。
答え:5
18 ホルター心電図の誘導部位(別冊No. 3)を別に示す。NASA誘導の陽極はどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解説:ホルター心電図の電極についての問題です。
ホルター心電図の電極は主にCM5誘導やNASA誘導がメインに使われます。施設によってCM3なども取り付ける場合もあります。図の①や③の箇所は主にアースとして使用されます。下にホルター電極位置の図を示します。
※①(CC5誘導などのアース位置)③(NASA、CM5誘導のアース位置)
従って、NASA誘導(V1やaVF誘導に近似でp波の観察が良好)の陽極電極の位置は④となる。
CM5誘導はV5誘導に近似し、ST低下などをフォローしやすい誘導となっている。
答え:4
19 残気量を求めるために行う検査はどれか。2つ選べ。
- 肺活量測定
- 最大換気量測定
- 努力肺活量測定
- 機能的残気量測定
- クロージングボリューム測定
解説:肺機能検査は、文字で見ても理解が難しいと思います。まずは図でイメージします。
図を見ても意味不明かもです笑
⑧が残気量で、これを求めるには④の機能的残気量から②の予備呼気量を差し引いてあげると求めることができます。
図のような肺気量分画を算出する必要があるため、努力肺活量やクロージングボリュームの測定では算出できない。
※最大換気量測定は「1分間に肺に出入りするガスの最大量を求める検査」のこと。
答え:1と4
20 呼吸機能検査の結果(別冊No. 4A)とフローボリューム曲線(別冊No. 4B)を別に示す。考えられる状態はどれか。
- 肺切除後
- 気管支喘息
- 間質性肺炎
- 慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉
- 筋萎縮性側索硬化症による呼吸筋障害
解説:表とグラフを見ると%VCが59.5、TLCも58.3%と重度の拘束性換気障害がわかる。また、残気量も61.2%と上昇がく全肺気量の低下、DLco低下も非常に低く拡散能障害を強く疑う事ができる。
気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患は閉塞性換気障害を示し、フローボリューム波形では特徴的な「下に凸」の形をとっておらず、合わない。
肺切除後や筋萎縮性側索硬化症による呼吸筋低下ではVCの低下に伴いDLcoは低下するがDLco/VAは低下しない。(※VA:肺容量)
以上より考えられる疾患は間質性肺炎が最も可能性が高いと言える。
答え:3
21 正常な神経細胞の静止膜電位[mV]はどれか。
- +30
- 0
- -50
- -70
- -100
解説:静止膜電位は覚えておく以外に対応がありません。
★静止膜電位(覚えておきましょう)
- 神経細胞の静止膜電位は-70 mV前後
- 心筋は-90 mV前後
- 骨格筋は80 mV
- 前後平滑筋は-40 mV前後
神経生理ではこれらを覚えておけば問題ないと思います。
難しいようで、知っていれば即答できる問題です。
答え:4
22 手の筋力低下を認める患者における正中神経の運動神経伝導検査の記録(別冊No. 5)を別に示す。誤っているのはどれか。なお、図中の破線は正常波形を示す。
- 遠位潜時延長
- 伝導速度低下
- 伝導ブロック
- 異常な時間的分散
- 複合筋活動電位振幅低下
解説:手関節刺激、肘窩刺激、腋窩刺激の記録をそれぞれ見て判断していく必要があります。正常波形と比較し、手関節刺激では潜時延長がなく遠位潜時延長は認めないのでこれが誤りとなります。
★潜時とは
刺激を与えてか らM波が立ち上がるまでの時間を潜時という
★遠位潜時とは
特に末梢の手関節や足関節部で刺激を与えてからM波が立ち上がるまでの潜時のこと
その他(肘窩、腋窩刺激)所見をみていきましょう。
- 肘窩刺激では複合筋活動電位振幅低下が認めらる
- 腋窩刺激では時間的分散による潜時延長、低振幅化、伝導ブロックが認められ神経伝導速度が低下している
難しいですが、こういった問題から正常、異常波形をイメージしながら覚えていきましょう。文章のみで覚えることはおススメしません。
生理機能はとにかく結果を視覚で判断することが多いです。
答え:1
23 健常成人の脳波でみられるα波で正しいのはどれか。
- 開眼で抑制される。
- 振幅は一定である。
- 前頭部に優位である。
- 精神的負荷で増強する。
- 加齢で周波数が高くなる。
解説:α波について、設問内容でまとめます。
- α波は安静、覚醒、閉眼の条件下で後頭部優位に出現する
- 睡眠、精神的負荷、および開眼では抑制される
- 振幅は一定でなく漸減漸増を有する
- 老年期でα波は8~9 Hzまで周波数が低くなる(成人は8~13Hz)
基本的な内容なので、しっかり覚えておきましょう。
答え:1
24 超音波検査で誤っているのはどれか。
- 周波数1~20MHzの超音波が用いられる。
- 距離分解能は超音波の周波数が高いほどよい。
- 連続波ドプラ法は高速血流の測定に適している。
- 深部の描出は超音波の周波数が高いほど有利になる。
- 方位分解能は電子フォーカスによるビーム集束で向上する。
解説:超音波の基礎分野の問題です。誤っている部分を適切な文に直します。
✖)深部の描出は超音波の周波数が高いほど有利になる。
⇒ 高周波プローブは表面に近い箇所の観察に適している。体表エコーや、肝表面の観察はリニアプローブに換え、観察を行う。
他の設問文は正しいので、覚えておきましょう。
- 超音波は周波数が高いほど距離分解能は向上するが、減衰は大きくなる
答え:4
25 心尖部長軸断面の連続波ドプラ波形(別冊No. 6)を別に示す。狭窄前後の最大圧較差はどれか。
- 16mmHg
- 32mmHg
- 64mmHg
- 80mmHg
- 96mmHg
解説:大動脈弁通過血流速波形図から、簡易ベルヌーイの式を用いて最大圧較差を求める問題です。
★簡易Bernoulli(ベルヌーイ)の式:圧較差ΔP(mmHg)=4×V(m/秒)2
上式に代入していくが、まずは最大流速を知る必要があります。
写真を見ると、大動脈弁通過血流速度は約4 m/秒でなのでこれを式に代入する。
最大圧較差=4×42=64
64mmHgとなる
答え:3
26 心窩部斜走査による上腹部の超音波像(別冊No. 7)を別に示す。矢印で示すのはどれか。
- 肝動脈
- 大動脈
- 下大静脈
- 肝外胆管
- 門脈本幹
解説:腹部エコーにおける右肋骨弓下走査(ボディマークより)の図です。
肝臓、門脈、腹部大動脈、下大静脈が描出されています。
血管の位置は覚えておきましょう。
エコーを実際に当てると、下大静脈から肝静脈へと分岐する箇所も観察できるので、わかりやすいですが、写真のみだと知識がないとわかりませんので、覚えておきましょう。
答え:3
27 下肢静脈超音波検査で大腿静脈に可動性を有する血栓を認めた。対応で正しいのはどれか。
- 面積狭窄率を求める。
- ミルキング法で血流を確認する。
- 総腸骨静脈まで血栓範囲を確認する。
- 圧迫法を強く行いながら血流を確認する。
- パルスドプラ法にて血栓部分の最高流速を測定する。
解説:DVT(深部静脈血栓症)の検査で「大腿静脈に可動性を有する血栓を認めた」とあります。つまり、「肺血栓塞栓症合併などのリスクを考慮した観察が重要」だという事です。
中枢型血栓(腸骨から膝窩領域)でより広範囲の血栓ほど重篤な塞栓症合併の可能性が高く、大腿静脈に血栓を認めた場合はより中枢側の腸骨領域まで観察する必要がある。
この際に、血栓浮遊リスクのある手法は避けるべきで、ミルキング法や圧迫法がこれに該当する。
面積狭窄率とパルスドプラ法はエコーを当てるだけなので、浮遊血栓による塞栓リスクとは直接関係のない評価法です。
全てそれらしい選択肢に見えますが、問題の本質がわかれば、消去法でも解けそうです。
答え:3
28 聴覚伝導路でないのはどれか。
- 蝸牛神経核
- 上オリーブ核
- 外側毛帯
- 下 丘
- 外側膝状体
解説:聴覚伝送路のおさらいです。
★聴覚伝導路とは
蝸牛に到達した音の情報は、蝸牛のコルチ器で電気信号に変換され聴覚伝導路に至る
聴覚伝導路の流れ
蝸牛神経核→上オリーブ核→外側毛帯→下丘→内側膝状体
と伝わり大脳聴覚野に至る
外側膝状体は視覚路の1つです。
視覚路は網膜→視神経→視交叉→視索→外側膝状体で視放線に中継し
後頭葉鳥距溝(ちょうきょこう)に至る。
答え:5