過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
第69回臨床生理学AM問16~28
16:シールドルームで行うことが望ましい検査はどれか。
- 聴力検査
- 筋電図検査
- 心音図検査
- 超音波検査
- 熱画像検査
解説:シールドルームとは何かを知りましょう。
シールドルームとは外部からの電波や電磁波の侵入を防ぎ、内部からの電波や電磁波の漏れも防ぐ部屋のことで、医療現場ではMRI、脳波、筋電図検査などで使用される
シールドルームの意味がわかっていれば、消去法でも解くことができます。
聴力や心音図は音なので除外できますし、超音波はどこでも検査できます。熱画像検査はコロナ渦でもよく目にしたであろうサーモグラフィのことで、こちらも場所を選びません。
筋電図はどこでもできるといえばできますが、交流障害などで非常に検査しづらくなります。シールドルームが望ましいでしょう。
答え2
17:心電図波形(別冊No.3)を別に示す。試みるべき対処法として正しいのはどれか。
- アースの接続を確認する。
- 患者に力を抜いてもらう。
- 電動ベッドの電源を抜く。
- 電極と誘導コードの接続を確認する。
- 記録の間、患者に呼吸を止めてもらう。
解説:波形のパターンを覚えるのが一番楽です笑
典型的な筋電図の混入ですが、交流障害の心電図と少しだけ似ているのでハッキリ区別を付けられるようにしましょう。
加えて設問を一つずつ考えてみましょう。
- アースの接続を確認する
→交流障害の原因検索の一つ - 患者に力を抜いてもらう
→筋電図の原因検索と対応 - 電動ベッドの電源を抜く
→交流障害の原因検索の一つ - 電極と誘導コードの接続を確認する
→出るはずの波形が得られない時の対応 - 記録の間、患者に息を止めてもらう
→呼吸による体動で波形が乱れる場合に患者に依頼することもある
答え2
18:動脈管開存症に特徴的な心雑音はどれか。
- 連続性雑音
- 収縮後期雑音
- 全収縮期雑音
- 拡張期逆流性雑音
- 収縮期駆出性雑音
解説:心雑音はややこしく難しいですが、出る病態はある程度決まっています。乱雑ですが下にまとめてみました。
★心雑音まとめ
- 収縮期雑音:Ⅰ音とⅡ音の間に出現する雑音で、僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症、心室中隔欠損症、大動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症、ファロー四徴症などで聴取される。
機能性雑音:心臓に器質的変化のない場合に聴取される収縮期雑音のこと。
全収縮期雑音(収縮期逆流性雑音)は、僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症、心室中隔欠損症で聴取される。
収縮中期雑音(駆出性収縮中期雑音)は大動脈弁狭窄症や肺動脈弁狭窄症で聴取される。 - 拡張期雑音は、Ⅱ音と次のⅠ音の間にある雑音で、僧帽弁狭窄症、三尖弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、肺動脈弁閉鎖不全症などで聴取される。
逆流性拡張期雑音(拡張早期雑音)は大動脈弁閉鎖不全症や肺動脈弁閉鎖不全症で聴取される。
拡張中期雑音(心室充満性拡張期雑音)は、僧帽弁狭窄症や三尖弁狭窄症で聴取される。
僧帽弁狭窄症では、僧帽弁開放音、拡張中期ランブル(拡張中期雑音)、前収縮期雑音が聴取される。 - 連続性雑音(連続性機械様雑音)は、収縮期と拡張期を通して持続する雑音のこと。動脈管開存症やバルサバ洞動脈瘤破裂で聴取される。
答え1
19:フローボリューム曲線(別冊No.4)を別に示す。1秒量は1.08Lであった。1秒率[%]に最も近いのはどれか。
- 30
- 35
- 40
- 45
- 50
解説:1秒率の計算式を覚えましょう。スパイロメトリーの測定で得られる、1秒量と肺活量で計算することができます。
★1秒率(FEV1.0%)=1秒量/肺活量
ゲンスラーの1秒率=1秒量/肺活量(VC)
ティフィノーの1秒率=1秒量/努力肺活量(FVC)
図を見ると努力肺活量(FVC)は約3Lであり、1秒率は1秒量を肺活量で除したものなので、1.08÷3=0.36
率なので%表記にするため0.36×100=36
設問の中で最も近いのは35となる。
答え2
20:体プレチスモグラフによる機能的残気量の測定原理はどれか。
- Boyle-Charlesの法則
- Daltonの法則
- Fickの法則
- Henryの法則
- Labbert-Beerの法則
解説:体プレチスモグラフについて知っておく必要もありますが、それぞれの法則も覚えておきましょう。
★機能的残気量(FRC)の測定
- 体プレチスモグラフ(ボイル・シャルルの法則を原理にしている)
- ガス希釈法(閉鎖回路法、解放回路法)
ガス希釈法はガス分析が必要で、閉鎖回路法では安静時呼吸から機能的残気量とガス分布障害指標であるHe平行時間を求めることもできる。
- ドルトンの法則:理想気体の混合物の圧力が各成分の分圧の和に等しい
- フィックの法則:肺胞壁を通過する気体の拡散量は肺循環血量で定まる。一定時間当たりに肺の毛細血管を通過する血液量は心拍出量に等しいので心拍出量を求めることが可能となる。この求める式をフィック の公式と呼ぶ
- ヘンリーの法則:温度と溶媒の量が一定であるとき溶媒に溶ける気体の物質量は圧力に比例する
- ランベルトベールの法則:試料中を光が伝搬するときの、吸収による光強度の減少量を表す
答え:1
21:呼吸商を求めるのに必要なのはどれか。2つ選べ。
- 呼吸数
- 酸素摂取量
- 肺胞換気量
- 分時換気量
- 二酸化炭素排出量
解説:呼吸商について知っておく必要があります。呼吸ということで酸素と二酸化炭素の話ですが、どういったものなのか知っておきましょう。
★呼吸商とは
生体内において栄養素を燃焼するときに酸素を消費して二酸化炭素を排出するという事象。
呼吸商は酸素消費量に対する二酸化炭素生成量の体積比。
答え2と5
22:運動単位を構成するのはどれか。2つ選べ。
- Ⅰa繊維
- 骨格筋細胞
- γ運動ニューロン
- 下位運動ニューロン
- 上位運動ニューロン
解説
運動単位(筋収縮)はγ-ニューロンを除くα-運動ニューロン(下位)で構成される。
運動単位は1つの脊髄前角細胞とそれによって支配される筋繊維群(抹消運動神経、週末神経枝、運動終板、筋繊維)で構成される。
つまり、上図の脊髄前角細胞~骨格筋細胞が運動単位となり、下位ニューロンと骨格筋細胞が答えとなる。γニューロンは除くところがポイントですね。
Ia繊維も骨格筋細胞の材料ですが、それだけでは筋収縮に至らないので除外と考えました。
答え:2と4
23:脳波の記録法で正しいのはどれか。
- 時定数は0.1秒が標準である。
- T6は右側頭葉の後方に相当する。
- 脳死判定では測定感度は20μV/mmで記録する。
- てんかん発作が起きたときは直ちに記録を中止する。
- サンプリング周波数200Hzで高域は120Hzまで正しく記録できる。
解説
設問の脳波の記録法を正しい形に直しました。
- 時定数は0.3秒が標準である(0.1秒は基線の動揺が激しい時に使用)
- T6は右側頭葉の後方に位置する
- 脳死判定では測定感度50μV/mm以上(標準測定感度は10μV/mmなので5倍以上で測定)
- てんかん発作時は記録を継続する
- サンプリング周波数200Hzで広域は約1/3の周波数まで記録できるため、約60~70Hz程度まで正しく記録できる
答え2
次の文を読み24、25の問いに答えよ。
78歳の男性。心不全患者の左室流入血液連続波形と計測値(別冊No.5)を別に示す。
24:この波形の記録に用いたのどれか。
- 組織ドプラ法
- カラードプラ法
- パルスドプラ法
- パワードプラ法
- 連続波ドプラ法
25:この波形はどれか。
- 正常パターン
- 弛緩障害パターン
- 偽正常化パターン
- 拘束パターン
- 判定不可能
解説:まずはエコー像より波形パターンを見ていきましょう。ドプラ画像のパターンを覚えていくのがいいと思います。
ドプラ画像や各ドプラの説明がある外部サイトです。
パルスドプラのパターンであるとわかったら、次はエコー画像のデータを見ていきましょう。
E波:150、A波:34、DcT128より、上図に当てはめて考えて見ます。
E/Aは4.4で2より大きく、かつDcTは128で150より小さい。
拘束型の左室流入波形のパターンです。
答え問24:3
問25:4
26:頸動脈超音波検査の右総頚動脈長軸像(別冊No.06)を別に示す。内中膜複合体厚(IMT)の計測方法として正しいのはどれか。
①
②
③
④
⑤
解説
IMTの計測をまとめてみました。
上図より、③の計測が正しい。
答え3
27:下腹部正中横走査と右縦走査による女性骨盤腔の超音波像(別冊No.06)を別に示す。矢印で示すのはどれか。
- 膣
- 子宮
- 直腸
- 膀胱
- 卵巣
解説
エコー画像と解剖を知っているとすぐにわかります。
婦人系の臓器のエコーですが、まず膀胱が目に留まります。その下が子宮であり矢印が指すものは卵巣になります。直腸は見えるとすれば下腹部正中横走査の下の方に見えます。大まかな解剖を覚えてしまいましょう。
また、卵巣のエコー所見としてポコポコとのう胞のような像が見えますが、これは卵胞であり、卵巣のエコー像の特徴です。
直腸や膣は画像からはハッキリと指摘することができませんでした。
答え5
28:標準純音聴力検査の骨導聴力検査において音が直接伝わるのはどれか。
- 外耳道
- 鼓膜
- 耳小骨
- 内耳
- 蝸牛神経
解説:
標準純音聴力検査では『気導と骨導を検査する』ところが、ポイントとなります。
気導の検査はヘッドフォンで行い、骨導検査は振動板という物を耳の後ろにある骨の出っ張り(乳突部)に当てて測定します。
気導と骨導とでは音の伝わるルートが異なる
- 気導では耳介から外耳道と音が導かれる
鼓膜を振動させてその振動は3つの耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)を経て蝸牛へ伝わる - 骨導ではいきなり側頭骨から蝸牛へと音の振動が伝わりますので、外耳や中耳の機能は全く関係なく、音が伝わっていく
これらのことから、設問でみると内耳と蝸牛が鑑別にあがります。
内耳とは、三半規管、前庭、蝸牛の総称であり、音が直接伝わるのは蝸牛ではなく内耳ということがわかります。
答え4