過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
臨床化学第64回AM
AM問題29:膜構造でないのはどれか。
- 小胞体
- リボソーム
- エンドソーム
- ミトコンドリア
- ゴルジ(Golgi)装置
答えと解説
答え2
- リボソームはリボソームRNAと蛋白質が結合した粒子(キャビアみたいの)で膜構造はない
AM問題30:電気泳動法を用いる検査と健常成人の血清中に最も多く含まれる分画の組合せで正しいのはどれか。
- 蛋白分画 γ-グロブリン
- リポ蛋白分画 VLDL
- LD アイソザイム LD3
- CK アイソザイム CK-MM
- ALP アイソザイム ALP5
答えと解説
答え4
★設問の各分画で最も多いもの
- 蛋白分画:アルブミン
- リポ蛋白分画:LDL(β分画)
- LDアイソザイム:LD2(心筋、赤血球由来)
- CKアイソザイム:CKMM(骨格筋由来)
- ALPアイソザイム:ALP2(肝、胆道系疾患)
AM問題31:2ポイントエンド法の反応タイムコースを別に示す。患者血清のタイムコースから考えられるのはどれか。ただし、測光ポイントは5分と 10分の2ポイントとする。
- 測定値はマイナス値になる。
- 攪拌機構の不具合が疑われる。
- 光源ランプの劣化が疑われる。
- 第2試薬の分注量が少なかった。
- 第1試薬と内因性物質との反応が生じた。
答えと解説
答え5
★設問のタイムコースで見るべきポイント
- 標準液のタイムコースを基準に考える
- 患者血清のタイムコースのどこがおかしいかみる
- 吸光度変化=(検体+第一試薬)と第二試薬が反応
- 第一試薬+検体では反応しない
タイムコースを見てみると、標準液のタイムコースでは第二試薬を加えた時間(5分)から吸光度が上昇しています。
患者血清を見ると、最初から吸光度の上昇を認めています。つまり、試薬と反応せずに吸光度が変化しているので、攪拌もランプも関係なく、第一試薬と内因性物質が反応していることが考えられます。
AM問題32:血中イオン化カルシウムが低下するのはどれか。
- クレンチング
- 全血室温放置
- 長時間の駆血
- 立位での採血
- ヘパリンの混入
答えと解説
答え2
- 血中イオン化カルシウムは、放置状態の場合炭酸ガス喪失を起こしpHが上昇しデータが低値傾向となる
- 採血には流動パラフィンを用いて、嫌気的にして炭酸ガス喪失を防ぐ
- クレンチングや駆血ではKが上昇する
- ヘパリンの混入ではCaイオンと吸着するため低値となる
- 立位での採血は赤血球や蛋白質、脂質などが1割ほど高くなるといわれている
AM問題33血糖測定用採血管に入っている NaF が阻害する酵素はどれか。
- エノラーゼ
- ヘキソキナーゼ
- ピルビン酸キナーゼ
- 乳酸デヒドロゲナーゼ
- グルコース-6-ホスファターゼ
答えと解説
答え1
- NaFが阻害するのは解糖系のエノラーゼ
- 2-ホスホグリセリン酸 ⇆ ホスホエノールピルビン酸(エノラーゼが触媒)
AM問題34:血糖コントロールの指標で正しいのはどれか。
- HbA1c は貧血の影響を受けない。
- HbA1c は2週間の平均血糖値を反映する。
- グリコアルブミンは肝硬変の影響を受けない。
- アルブミンはヘモグロビンより糖化速度が速い。
- 1, 5-アンヒドログルシトールは高血糖で高値になる。
答えと解説
答え4
- HbA1Cは貧血の影響を受ける
→糖化Hbの割合が増えればA1Cは増加する - HbA1Cは1~2か月の平均血糖を反映する
- GAは肝硬変の影響を受ける
→GA(糖化アルブミン)はALBの産生や分解能が低下するので高値となる - ALBはHbより糖加速度が早い
→通常GAを3で除するとHbA1Cの値になるが、糖加速度の関係で急激な血糖コントロール改善などがあると、その比は小さくなる(肝硬変では大きくなる) - 1,5AGは糖尿病(高血糖)では小さくなる
AM問題35:遊離グリセロール濃度が5mg/dL の血清を試料として、グリセロール非消去法でトリグリセライドを測定したところ 200 mg/dL であった。
この血清をグリセロール消去法で測定した場合のトリグリセライド値(mg/dL)に最も近いのはどれか。
ただし、オレイン酸とグリセロールの分子量をそれぞれ 282、92 とする。
- 149
- 182
- 185
- 195
- 198
答えと解説
答え1
- グリセロール消去法の計算(考え方)
- TG由来のグリセロールと、血中に存在する遊離グリセロールを考える
- TG分子量 → グリセロール+脂肪酸(3分子)
=グリセロール+3オレイン酸
=92+846
=938
TG由来グリセロール=92×(938/92)
=938 - 遊離グリセロールのTG分子量=5×(938/92)
=50.1 - 設問に代入して考える
200(測定値)-50.1(計算した遊離グリセロール)
=149.9
AM問題36:脂質異常症の WHO 分類と増加するリポ蛋白の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- Ⅰ カイロミクロン
- Ⅱa VLDL
- Ⅲ IDL
- Ⅳ LDL
- Ⅴ HDL
答えと解説
答え1と3
リポ蛋白 | T-CHO | TG | 原因 | 血清外観 | |
正常 | 正常 | 正常 | 正常 | なし | 透明淡黄色 |
Ⅰ | カイロミクロン増加 | 正常~増加 | 激増 | LPL活性の欠損、低下 | 血清上部にクリーム層出現 |
Ⅱa | LDL増加 | 激増 | 正常 | LDLレセプターの異常 | 透明淡黄色 |
Ⅱb | LDLとVLDLの増加 | 激増 | 増加 | 不明 | 白濁 |
Ⅲ | IDLの増加 | 増加 | 増加 | アポ蛋白Eの異常 | やや白濁 |
Ⅳ | VLDLの増加 | 正常~増加 | 増加 | 不明 | やや白濁 |
Ⅴ | カイロミクロンとVLDLの増加 | 増加 | 激増 | LPL欠損ヘテロ | 血清白濁に上層部クリーム層 |
AM問題37:A/G 比が増加するのはどれか。
- 肝硬変
- 慢性感染症
- 多発性骨髄腫
- 原発性免疫不全症候群
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
答えと解説
答え4
- A/G比とは、アルブミンとグロブリンの比のこと
- A/G比が大きくなるということは、アルブミンが増加する、もしくはグロブリンが低下するということ
- 蛋白分画を考えるとイメージしやすい
①アルブミンと②③④⑤グロブリンなので、大体アルブミン2:グロブリン1が正常値
免疫不全系はグロブリンが低下するのは、免疫グロブリンが低下することからイメージが付きますね。設問では原発性免疫不全症候群がありますので、これが正答となります。
他の選択肢はA/G比が低くなります。特別に言うのであれば、国家試験に頻出の多発性骨髄腫ではIgG、A、M型のいずれかのM蛋白が産生されるので、A/G比は低下します。ネフローゼ症候群は血清アルブミンが大幅に低下するので、これもまた、A/G比は低下します。
AM問題38:推算糸球体濾過量(eGFR)算出式で用いるのはどれか。2つ選べ。
- BMI
- 尿 量
- 年 齢
- 血中クレアチニン濃度
- 尿中クレアチニン濃度
答えと解説
答え3と4
男性:eGFR(ml/分/1.73㎡)=194×Cr-1.094×年齢-0.287
女性:eGFR(ml/分/1.73㎡)=194×Cr-1.094×年齢-0.287×0.739
AM問題39:LD アイソザイムについて正しいのはどれか。
- 2量体である。
- LD4 は0℃で安定である。
- LD5 は溶血によって上昇する。
- LD1 の半減期は約8時間である。
- 2種類のサブユニットからなる。
答えと解説
答え5
この図を見つつ設問を直してみます。
- 4量体
- LD4は0℃では失活する
- LD1とLD2は溶血で上昇する
- LD1の半減期はおよそ80時間
- H(B)とM(A)の二種類のサブユニットからなる
AM問題40:日本臨床化学会(JSCC)勧告法の試薬中に N-アセチルシステインを含むのはどれか
- CK
- LD
- ALP
- ALT
- アミラーゼ
答えと解説
答え1
- N-アセチルシステインの働きは-SH(チオール基)を持つ酵素の触媒になる
- CKは-SHを持つため、N-アセチルシステインで活性化される
AM問題41:血球への移行率が高い薬物はどれか。
- ジゴキシン
- バルプロ酸
- タクロリムス
- テオフィリン
- バンコマイシン
答えと解説
答え3
一見難しそうですが、じつはこの設問には仲間はずれがあります。それは検査材料です。
- ジゴキシン(血清)
- バルプロ酸(血清)
- タクロリムス(全血)
- テオフィリン(血清)
- バンコマイシン(血清)
実はタクロリムスだけは、血球移行率が高いため、上清ではなく全血で検査を行います。余談ですが、タクロリムスは全血のため測定の再現性が非常に悪いです。
AM問題42:骨形成マーカーはどれか。
- ペントシジン
- デオキシピリジノリン
- プロコラーゲンⅢペプチド
- 骨型アルカリホスファターゼ
- Ⅰ型コラーゲン架橋 C-テロペプチド
答えと解説
答え4
骨形成マーカーは頻出です。この表を覚えておきましょう。
AM問題43:低血糖によって上昇するホルモンはどれか。2つ選べ。
- アドレナリン
- インスリン
- グルカゴン
- テストステロン
- バソプレッシン
答えと解説
答え1と3
★血糖値を上げるホルモン
- グルカゴン
- アドレナリン
- コルチゾール
- 成長ホルモン(GH)
- 甲状腺ホルモン(T3やT4)
★血糖値を下げるホルモン
- インスリン
AM問題44:急性心筋梗塞の診断に有用なマーカーはどれか。2つ選べ。
- アデノシンデアミナーゼ(ADA)
- 心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)
- トロポニン T
- 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
- プロカルシトニン
答えと解説
答え2と3
- 急性心筋梗塞(AMI)の診断に有用なマーカーは、トロポニンT、H-FABPです
ミオグロビン、H-FABP、トロポニンT、CK、AST、LDH(見張っとく気ある?)の語呂で、ミオグロビンからの順に上昇します
- ADA(アデノシンアミナーゼ)は結核性胸膜炎などで上昇する
- BNPは心不全マーカー
- PCTは敗血症マーカー