過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
第65回PM臨床化学
PM問題29:血清遊離脂肪酸が低下するのはどれか。
- 夜 間
- 空腹時
- ヘパリン静注
- インスリン投与
- ステロイド療法
答えと解説
答え4
★遊離脂肪酸(FFA)とは、中性脂肪が分解されて生じる脂肪酸。飢餓状態(低血糖状態)で増える。
高値:空腹、糖尿病、急性膵炎、重症肝障害、甲状腺機能亢進症、インスリノーマ、アジソン病
低値:食後
遊離脂肪酸は、おなかが空いている状態で血中のTGが分解され生じてエネルギーに代謝される。つまり、低血糖で増加する。
設問の中にあるインスリンを考えてみる。インスリンは高血糖状態で分泌され、低血糖にしようとする働きを持つ。つまり、低血糖側に動くので遊離脂肪酸は増加する。
PM問題30:グリセロリン脂質でないのはどれか。
- レシチン
- セファリン
- リゾレシチン
- スフィンゴミエリン
- ホスファチジルセリン
答えと解説
答え4
★リン脂質の分類
- グリセロリン脂質:グリセロールに脂肪酸、リン脂質含窒素化合物がエステル結合したもの
- スフィンゴリン脂質:スフィンゴシン、脂肪酸、リン脂質、コリンがエステル結合したもの
リン脂質名 | グリセロール | 脂肪酸 | リン酸 | 含窒素化合物 |
レシチン | 1 | 2 | 1 | コリン1 |
リゾレシチン | 1 | 1 | 1 | コリン1 |
ホスファチジン酸 | 1 | 2 | 1 | なし |
ホスファチジルセリン | 1 | 2 | 1 | セリン1 |
ホスファチジルエタノールアミン | 1 | 2 | 1 | エタノールアミン1 |
カルジオリピン | 3 | 4 | 2 | なし |
スフィンゴミエリン | スフィンゴシン1 | 1 | 1 | コリン1 |
名前にスフィンゴとつくものはスフィンゴリン脂質であり、グリセロリン脂質ではない。表のグリセロールの数を見ても、スフィンゴミエリンにはグリセロールは含まれていない
PM問題31:脂質異常症の WHO 分類とその原因の組合せで正しいのはどれか。
- Ⅰ レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)
- Ⅱ リポ蛋白リパーゼ(LPL)
- Ⅲ アポリポ蛋白 E
- Ⅳ LDL 受容体
- Ⅴ コレステロールエステル転送蛋白(CETP)
答えと解説
答え3
脂質異常症のWHO分類を知っておかないと解けません。というか、さらに一段階、原因の深読みが必要です。
リポ蛋白 | T-CHO | TG | 原因 | 血清外観 | |
正常 | 正常 | 正常 | 正常 | なし | 透明淡黄色 |
Ⅰ | カイロミクロン増加 | 正常~増加 | 激増 | LPL活性の欠損、低下 | 血清上部にクリーム層出現 |
Ⅱa | LDL増加 | 激増 | 正常 | LDLレセプターの異常 | 透明淡黄色 |
Ⅱb | LDLとVLDLの増加 | 激増 | 増加 | 不明 | 白濁 |
Ⅲ | IDLの増加 | 増加 | 増加 | アポ蛋白Eの異常 | やや白濁 |
Ⅳ | VLDLの増加 | 正常~増加 | 増加 | 不明 | やや白濁 |
Ⅴ | カイロミクロンとVLDLの増加 | 増加 | 激増 | LPL欠損ヘテロ | 血清白濁に上層部クリーム層 |
PM問題32:日本臨床化学会(JSCC)勧告法による血清 CK 活性測定において、反応液中のD-グルコースが1分間あたり 0.9 mg 反応した。
この血清の CK 活性[U/L]はどれか。
ただし、D-グルコースの分子量 180、血清量 10 μL、試薬量 290 μL とする。
- 15
- 27
- 150
- 270
- 1,500
答えと解説
答え無し
不適問題ですが、①の式を使って解く問題と思われます。
時間の記載もなく、解きようがありませんが、気を付けるべきポイントは単位合わせです。モル濃度はμmol(1×10-6)表記であることこの問題においては、CK酵素活性ですので、反応にGluが使われる事を知っていなければ解けません。
公式を覚えて、似た問題が出たときに備えましょう。
PM問題33:血清総蛋白 5.0 g/dL、血清アルブミン 2.5 g/dL、尿蛋白 500 mg/dL であった。考えられるのはどれか。
- 肝硬変
- 慢性炎症
- 多発性骨髄腫
- ネフローゼ症候群
- 無 γ-グロブリン血症
答えと解説
答え4
- 血清総蛋白の基準値は6.6~8.1mg/dL(共用基準値)
- ALBはTPの約60%の値と言われている基準値は4.1~5.1mg/dL
- 尿蛋白の基準値は10mg/dL程度
血清蛋白が顕著に減少し、尿中蛋白が激増しています。
国家試験に頻出の疾患「ネフローゼ症候群」の典型ですね。
- 慢性炎症や多発性骨髄腫(MM)では、TPは増加します。(炎症性蛋白や、免疫グロブリン増加のため)
PM問題34:酵素の国際単位の算出に必要ないのはどれか。
- 血清量
- 最終液量
- 測定波長
- モル吸光係数
- 5分間の吸光度変化量
答えと解説
答え3
②の式で考えてみましょう。
- 血清量→VR
- 最終液量→VR+VS
- 測定波長→不要
- モル吸光係数→ε
- 5分間の吸光度変化量→⊿A
測定波長は使いません
PM問題35:分光光度法において共存物質の影響試験の対象となるのはどれか。2つ選べ。
- 過酸化水素
- ヘモグロビン
- アスコルビン酸
- アスパラギン酸
- ペルオキシダーゼ
答えと解説
答え2と3
★共存物質
- ヘモグロビン(溶血)
- 乳び
- ビリルビン
- アスコルビン酸(ビタミンC)
PM問題36:尿酸の酵素法試薬に含まれているのはどれか。2つ選べ。
- ウリカーゼ
- ウレアーゼ
- キサンチン
- アラントイン
- ペルオキシダーゼ
答えと解説
答え1と5
★尿酸の酵素法の反応
ウリカーゼとペルオキシダーゼが使用されており、アラントインは産生物です。
PM問題37:日本臨床化学会(JSCC)勧告法で吸光度の減少から活性値を求めるのはどれか。2つ選べ。
- CK
- LD
- AST
- アミラーゼ
- コリンエステラーゼ
答えと解説
答え3と5
表を覚えるのは大変です。吸光度変化で低下するものを覚えてしまいましょう。
★吸光度変化量が低下する項目
- AST(340nm)
- ALT(340nm)
- ChE(340nm)
- UN(340nm)
- BIL(450nm)
PM問題38:水溶性ビタミンはどれか。
- カルシフェロール
- トコフェロール
- メナキノン
- リボフラビン
- レチノール
答えと解説
答え4
水溶性ビタミンは、ビタミンB群とCです
PM問題39:骨格筋でアンモニアが結合して生成するのはどれか。
- アルギニン
- オルニチン
- グルタミン
- シトルリン
- カルバモイルリン酸
答えと解説
答え3
★骨格筋
アンモニア+グルタミン酸 → グルタミン
肝不全の際に、アンモニアを無毒化する上で重要な反応
PM問題40:骨形成マーカーはどれか。2つ選べ。
- オステオカルシン(OC)
- デオキシピリジノリン(DPD)
- 骨型アルカリホスファターゼ(BAP)
- I 型コラーゲン架橋 N-テロペプチド(NTX)
- 酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性(TRAcP-5b)
答えと解説
答え1と3
PM問題41:バゾプレシンが低下するのはどれか。
- 脱水症
- 肝硬変症
- 腎性尿崩症
- 中枢性尿崩症
- ADH 不適合分泌症候群(SIADH)
答えと解説
答え4
★バソプレッシン(ADH)(抗利尿ホルモン)
- 下垂体後葉から分泌
- 尿量抑制、血圧上昇
- バソプレッシンが増加:脱水(尿量抑制)
- バソプレッシンが減少:尿崩症
バソプレッシンも重要なホルモンです。しっかり覚えておきましょう。
PM問題42:低栄養状態で高値を示すのはどれか。
- レプチン
- アルブミン
- 成長ホルモン
- コリンエステラーゼ
- 遊離トリヨードサイロニン(FT3)
答えと解説
答え3
★考え方
- 低栄養=低血糖
- 血糖を上昇させるホルモンは?
- グルカゴン、GH(成長ホルモン)
答えを見ると納得できますが、一から考え出すのはまぁ大変です。本当にこの考えで合ってるのか?と疑心暗鬼にもなりそうです。アルブミンは栄養状態を見れるので、低くなるのはわかりますが、他はイマイチですね。
PM問題43:糖タンパク質ホルモンはどれか。2つ選べ。
- サイロキシン
- 成長ホルモン
- プロラクチン
- 黄体形成ホルモン
- 甲状腺刺激ホルモン
答えと解説
答え4と5
★糖蛋白ホルモン
- TSH(甲状腺刺激ホルモン)
- LH(黄体形成ホルモン)
- FSH(卵胞刺激ホルモン)
PM問題44:血漿レニン活性が低値を示すのはどれか。
- 脱 水
- Addison 病
- 利尿薬服用
- 腎血管性高血圧症
- 原発性アルドステロン症
答えと解説
答え5
★レニンについて
- 腎の傍糸球体細胞から産生
- アンギオテンシンをアンギオテンシンⅠに変換する(血圧上昇)
- 増加:アジソン病、利尿薬投与、脱水
- 低下:原発性アルドステロン症
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を理解していれば、比較的簡単に解くことができる問題です。
- 脱水状態では循環血液量が低下する
→循環血液量を増加させようと、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を活性化する
→レニン分泌量が増える - アジソン病はACTH分泌が低下するするため、コルチゾールも低下する
→コルチゾールはアルドステロン様作用(Na再吸収)をするので、低下すると循環血液量が低下する
→循環血液量を増加させようと、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を活性化する
→レニン分泌量が増える - 利尿薬服用では、体内の水分量が低下し、循環血液量も低下する
→循環血液量を増加させようと、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を活性化する
→レニン分泌量が増える - 腎血管性高血圧症は腎血流の低下から、低血圧と誤認してしまい、腎の傍糸球体細胞からレニンが分泌されてしまう
→レニン分泌量が増える - 原発性アルドステロン症はアルドステロンが増加するため循環血液量が増加する
→ネガティブフィードバックにより、レニン分泌量が低下する