過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
第65回AM臨床化学
AM問題29:飛行時間型質量分析(TOF-MS)法について誤っているのはどれか。
- イオンは超高真空中を飛行する。
- イオンの電荷は飛行時間に影響する。
- イオンはレーザーの衝撃力により引き出される。
- イオンの飛行速度はエネルギー保存の法則から算出される。
- イオン化にはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法が汎用さ
れる。
答えと解説
答え3
質量分析法(TOF-MS)についてです。マイナー過ぎる問題ですがこの設問文は一応覚えておきましょう。
★質量分析法まとめ
- イオンは超高真空中を飛行する
- イオンの電荷は飛行時間に影響する
- イオンはサンプルスライドと接地グラウンドの間にある電位差によって引き出される
- イオンの飛行速度はエネルギー保存の法則から算出される
- イオン化にはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法が汎用される
※イオン化にはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法:紫外レーザー光を吸収し、イオン化率の高い物質を溶媒として、測定対象の試料と混合する。紫外レーザーをこれに照射すると熱エネルギーにより試料が気化し、気体中でプロトン(陽子)授受が行われイオン化される。
AM問題30:ヘキソキナーゼ・グルコース リン酸脱水素酵素法を用いた血清グルコース測定における反応終結時の試薬対照における吸収スペクトルを別に示す。
主波長 340 nm と副波長 400 nm による二波長法で測定した場合、患者血清のグルコース濃度[mg/dL]はどれか。
- 120
- 160
- 200
- 240
- 280
答えと解説
答え2
反応タイムコースから濃度を求める問題です。
図を見ると患者血清とGLU標準液の二つのタイムコースがあります。二波長法を使うメリットは、気泡や光量の変化を補正できるとところです。今回はその計算問題ですね。
まずは基本の考え方です
- 標準液(200mg/dL)は主波長340nmでの吸光度が0.75である
- 未知濃度の主波長の吸光度は?
- 上二つの要点から比率計算で未知濃度を求められる
200:0.75=X:abs
考えてみましょう、まずは悪い例から。
素直に患者血清の0.85absを代入してしまうと、これは間違いとなります。間違った方で計算すると226mg/dLとなります。
200:0.75=X:0.85
0.75X=170
X=227
では、どう考えるかですが「ブランク補正」を使いましょう。
標準液は副波長の400nmの箇所で吸光度が0になっています。一方患者血清は400nmの箇所で0.25absあります。溶血やビリルビン、乳びなどの光量変化をもたらす要素が原因です。これらを取り除いてあげる計算をブランク補正といいます。
難しく聞こえますがやることは簡単です。標準液が0absになった箇所の患者血清のabs(0.25)の差を、測光ポイントで引いてあげるだけです。
患者血清の340nmでブランク補正の0.25を差し引いてあげると0.60absとなります。
ここで比率の計算を解いてあげると濃度が求められます。
200:0.75=X:0.60
0.75X=120
X=160
AM問題31:イオン選択電極法による測定で、血清 Na 140 mmol/L、血清 Cl 125 mmol/L であった。考えられるのはどれか。
- 嘔 吐
- 尿崩症
- 臭素中毒
- Addison 病
- Cushing 症候群
答えと解説
答え3
電解質の基準値をまず覚えましょう。
- K(3.5~5.0 mEq/L)
- Na(137~147mEq/L)
- Cl(98~108 mEq/L)
今回の設問では、Naは正常範囲で、Clが高値となっています。
次にそれぞれの疾患での電解質の推移を見てみます。
- 嘔 吐(体内のHClは排出され、Clは低下する)
- 尿崩症(体内の水分が排泄されるため、濃縮が起こりNaが増加する)
- 臭素中毒(臭素:Brが増加すると、イオン電極法では同じハロゲン元素であるClも高値となることがある)
- Addison 病(コルチゾールが低下するためNaも低下する)
- Cushing 症候群(コルチゾールが増加するため、Naも増加する)
AM問題32:患者血清の LD アイソザイムパターンを別に示す。考えられるのはどれか。2つ選べ。
- 急性肝炎
- 心筋梗塞
- 溶血性貧血
- 横紋筋融解症
- 急性リンパ性白血病
答えと解説
答え2と3
陽極側がLD1になり、陰極がLD5です。LD1~2は心筋や赤血球が起源となるので、答えを出すことができます。
図の通りLDアイソの1と2が心筋、血球で、3ががん細胞、4と5は骨格筋や肝臓と覚えましょう。
AM問題33:吸光度が 0.903 の透過率[%]はどれか。ただし、log2=0.301 とする。
- 10.0
- 12.5
- 20.0
- 25.0
- 50.0
答えと解説
答え2
設問に「吸光度、透過率」とあるので、A=2-logTを使って解いていきます。
0.903 = 2-logT が成り立ちます
Tを求めるために、全ての項をlogに直しましょう
ランベルトベールにおけるlogは自然対数なのでlogの底は10
- log 2=0.301より
0.903 = 3log 2(0.903÷3=0.301)
=log 23 = log8 - 2は log 102 = log100
以上より 0.903 = 2-logTに代入すると
3log 2 = log100-logT
- logT = log100 – log8
logT = log100/8
T =100/8
=12.5%
AM問題34:中性アミノ酸はどれか。
- リジン
- アルギニン
- ヒスチジン
- アスパラギン
- グルタミン酸
答えと解説
答え4
アミノ酸は暗記なところもあるのでパっと見てわかるようにしておきましょう。
- 酸は、名前に酸がある
- 塩基は側鎖にアミン基がついている(リジン、アルギニン、ヒスチジン)
AM問題35:ビウレット法について正しいのはどれか。
- 尿蛋白の測定法である。
- キレート呈色反応である。
- 呈色反応は強酸性下で行う。
- 測定試薬は無色透明である。
- 呈色はグリコシド結合の数に比例する。
答えと解説
答え2
★ビウレット法
蛋白分子の4個のペプチド結合は、アルカリ溶液中で銅 (Cu2+) とキレート結合して紫色に発色します。この発色を比色定量することにより検体中の総蛋白濃度を求める。
- 血清蛋白の測定法
- キレート呈色反応(紫)
- アルカリ性下で呈色反応を行う
- 測定試薬は青色(硫酸銅)
- 呈色はペプチド結合の数に比例する
AM問題36:日本臨床化学会(JSCC)勧告法の試薬中に酵素が含まれるのはどれか。2つ選べ。
- LD
- ALP
- γ-GT
- アミラーゼ
- コリンエステラーゼ
答えと解説
答え4と5
各酵素項目の試薬成分(第一試薬:R1、第二試薬:R2と書きます)
- AST(R1酵素補酵素試液、R2(α-KG液 )
- ALT(R1酵素補酵素試液 、R2(α-KG液 )
- γGTP(R1緩衝液、R2基質液)
- LD(R1基質液、補酵素試液)
- AMY(R1酵素試液α-グルコシダーゼ、R2基質液4,6-エチリデン-p-ニトロフェニル-α-マルトヘプタオシド【略名:Et-pNP-G7】)
- ChE(R1補酵素試液ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸四ナトリウム(還元型)【略名:NADPH・4Na】、R2基質酵素試液p-ヒドロキシベンゾイルコリンヨウ素塩 【略名:p-HBC】p-ヒドロキシ安息香酸水酸化酵素 【略名:p-OHBase】)
赤字が酵素を含みます。参考程度に留めておきましょう。
AM問題37:血清亜鉛が高値を示すのはどれか。
- 褥 瘡
- 妊 娠
- 低栄養
- 味覚障害
- 溶血性貧血
答えと解説
答え5
★血清亜鉛が増減する疾患
増加:甲状腺機能亢進症、Addison病、溶血性貧血、赤血球増多症など
減少:妊娠、肝硬変、低栄養、味覚障害、成長障害など
- 褥瘡は亜鉛は関係なさそうです
- 妊娠は亜鉛を消費するので低下する
- 低栄養も亜鉛不足になるので低下
- 味覚障害は亜鉛不足で起きるので有名です
- 溶血性貧血は謎ですが、上の表を覚えたり、今回の設問なら消去法で導き出せます。
AM問題38:HPLC 法による HbA1c 測定値が低下する要因はどれか。
- 尿毒症
- 乳び血症
- 溶血性貧血
- アスピリンの大量摂取
- アスコルビン酸の大量摂取
答えと解説
答え3
血球が壊されたり、新しく入ったり作られると糖化ヘモグロビンが相対的に少なくなるため、偽低値になる。
AM問題39:血清クレアチニンが上昇するのはどれか。2つ選べ。
- 脱 水
- 妊 娠
- 尿崩症
- うっ血性心不全
- 筋ジストロフィ
答えと解説
答え1と4
- 脱水→濃縮によりCRE増加
- 妊娠→糸球体ろ過量増加により尿中CRE排泄量も増加、血中CREは低下
- 尿崩症→尿中CRE排泄量増加により血中CREは低下
- うっ血性心不全→血流量低下によるクレアチニン排泄量の低下、血中CREは増加
- 筋ジストロフィ→筋量自体が低下するため、血中CREは低下
AM問題40:グルカゴンによって促進するのはどれか。
- 糖新生
- 乳酸産生
- 糖の取り込み
- グリコーゲン合成
- 遊離脂肪酸の取り込み
答えと解説
答え1
★グルカゴンの働き
- 血糖値を上げる
- グリコーゲン分解
- 糖新生
グリコーゲンやインスリンは頻出なのでしっかり覚えておきましょう。
AM問題41:グルコースをグリコーゲンとして蓄える臓器はどれか。2つ選べ。
- 脳
- 肝 臓
- 心 臓
- 腎 臓
- 骨格筋
答えと解説
答え2と5
★グリコーゲンとして蓄えられる場所は、肝臓と骨格筋です
肝臓は栄養を貯めるし、筋トレ有識者なら知っていますが、筋肉もグリコーゲンが豊富になると肥大します。イメージを付けて覚えると忘れません。
AM問題42:アルブミンによって運ばれるのはどれか。
- 脂肪酸
- リン脂質
- グリセロール
- コレステロール
- トリグリセライド
答えと解説
答え1
★アルブミンが運ぶものは3種類
- 脂肪酸
- ビリルビン(間接)
- カルシウム
他の設問はアルブミンではなく、リポ蛋白が輸送します。
AM問題43:血糖コントロール不良の糖尿病で低下する血中成分はどれか。
- 乳 酸
- HbA1c
- グリコアルブミン
- β ヒドロキシ酪酸
- 1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)
答えと解説
答え5
- 乳酸アシドーシス(増加)
- HbA1C(増加)
- GA(増加)
- βヒドロキシ酪酸(ケトン体)は糖の代わりにエネルギーとして産生される(増加)
- 1,5-AG(低下)
AM問題44:血中薬物濃度測定が有用とされる薬物の特徴はどれか。2つ選べ。
- 至適投与量の範囲が広い。
- 薬物アレルギーを起こす。
- 至適投与量の個人差が小さい。
- 薬理作用が血中濃度と相関する。
- 過剰投与が重篤な有害作用を起こす。
答えと解説
答え4と5
★TDMの条件
- 治療域が狭く、中毒域と近接している
- 薬物の体内動態に個人差が大きい
- 血中濃度と薬効および副作用の発現に相関がある
- 血中濃度依存性に生じる副作用が重篤である
- 投与量と血中濃度が比例関係にない
設問の解釈が難しいですが、落ち着いて考えれば解くことができると思います。