過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
第68回病理組織細胞学AM45~58
45 褐色萎縮で沈着するのはどれか。
- 脂肪
- メラニン
- アミロイド
- グリコーゲン
- リポフスチン
解説:委縮に関する出題です。各種覚えておきましょう。
★委縮には褐色委縮のほかに、生理的萎縮、廃用委縮、圧迫萎縮がある
- 褐色委縮
リポフスチンが沈着する委縮を指す(心臓、脳、肝臓などに沈着する) - 生理的委縮
老化現象などで起こる委縮を指す(胸腺の萎縮など) - 廃用委縮
動かさなくなった筋肉などで起こる委縮を指す(ギプス固定など) - 圧迫委縮
圧迫され続けた臓器で起こる委縮を指す(水頭症や水腎症など)
答え5
46 術中迅速診断における標本作製で使用するのはどれか。
- 固定液
- スクロース
- パラフィン
- 水溶性封入剤
- ユング型ミクロトーム
解説:術中迅速診断における標本作成手順をまとめました。
★術中迅速診断標本作成手順
- 凍結用包埋剤(水溶性)による包埋(OCTコンパウンドなど)
- ドライアイスアセトンなどによる急速凍結
- ミノー型(回転式)ミクロトーム搭載のクルオスタットによる薄切
(庫内温度は-20~-25℃) - 薄切された切片をスライドガラスに張り付ける
- 固定液に浸して固定(アルコール)
- HE染色
※固定前の薄切なので、感染防御を確実にすること
上記まとめを参考に見てみると
- 固定液⇒正しい(アルコールなどを用いて固定)
- スクロース⇒スクロース(ショ糖)は脂肪染色(ホルマリン固定検体から行う場合に用いる)
- パラフィン⇒パラフィンは非水溶性の包埋剤なので使用不可
- 水溶性封入剤⇒脂肪染色では水溶性封入剤を用いるが、ここでは非水溶性を用いる
- ユング型(滑走式)ミクロトーム⇒ミノー式(回転式)を用いる
答え1
47 腎組織の未固定凍結切片を用いた免疫組織化学染色別冊No. 9 を別に示す。この染色法について正しいのはどれか。
- 加熱処理を行う。
- 発色反応操作を行う。
- 偏光顕微鏡で観察する。
- 内因性ペルオキシダーゼをブロックする。
- フルオレセインイソチオシアネートFITC標識抗体を使用する。
解説:写真を見ると「蛍光染色特有の黒背景に蛍光色」であることがわかります。そして、設問をみると、「蛍光抗体法と酵素抗体法」の鑑別を問うてることがわかります。
フルオレセインイソチオシアネートFITC標識抗体(蛍光色素)を使用しているので、⑤が正しい。
答え5
48 電子顕微鏡標本作製で透過型と走査型に共通するのはどれか。
- 二重固定
- 樹脂包埋
- 超薄切
- 酢酸ウラン染色
- 金属イオン蒸着
解説:電子顕微鏡標本作成のTEMとSEMの鑑別です。
TEMとSEMの処理工程で、共通する箇所は「前固定のグルタルアルデヒド、後固定のオスミウム酸の二重固定」です。
答え1
49 後腹膜臓器はどれか。2つ選べ。
- 胃
- 肝臓
- 膵 臓
- 腎臓
- 子宮体部
解説:解剖学の問題です。腹部エコーで観察する際にも必要な知識なので覚えておきましょう。
★後腹膜臓器とは
腹膜腔より後方に位置する後腹膜器官のこと
- 膵臓
- 腎臓
- 副腎
- 腹部大動脈
- 十二指腸
- 直腸
- 上行結腸
- 下行結腸
設問の中の後腹膜臓器は膵臓と腎臓が該当します。
答え:3と4
50 ヒトの生殖細胞の分裂について誤っているのはどれか。(解が二問あり不適問題)
- 精子・卵子を作るために2回の分裂が必要である。
- 第一分裂の開始時にDNAを複製する。
- 第一分裂では染色体の一部に組換えが生じる。
- 1個の卵母細胞から4個の卵子が生じる。
- 生じた精子・卵子は23本の染色体を含む。
解説:設問を正しい形に直したものです。
- 精子・卵子を作るために2回の分裂が必要である
- 第一分裂の開始時にDNAを複製する
⇒精子形成では、精祖細胞からDNAの複製が始まる。 - 第一分裂では染色体の一部に組換えが生じる
- 1個の卵母細胞から1個の卵子が生じる
⇒1個の精祖細胞からは4つの精子が生じる - 生じた精子・卵子は23本の染色体を含む
上記により、2と4が誤っていることがわかります。
答え2と4
51 アポトーシスについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- 細胞膜の破裂を伴う。
- ATPを必要としない。
- クロマチンが濃縮する。
- 高度の炎症を惹起する。
- DNAはヌクレオソーム単位で切断される。
解説:アポトーシスとネクローシスの鑑別問題です。
上表を見ると、アポトーシス(プログラム死)とネクローシス(壊死)の違いがわかります。
細胞膜の破裂を伴う。⇒ネクローシス
ATPを必要としない。⇒ネクローシス
クロマチンが濃縮する。⇒アポトーシス
高度の炎症を惹起する。⇒ネクローシス
DNAはヌクレオソーム単位で切断される。⇒アポトーシス
答え:3と5
52 病理組織学的検査で推奨される固定液はどれか。
- 10%中性ホルマリン液
- 10%等張ホルマリン液
- 10%中性緩衝ホルマリン液
- 2%グルタルアルデヒド液
- 4%パラホルムアルデヒド液
解説:ホルマリンの種類をまとめました。
10%中性緩衝ホルマリンが安定性、保存性において完璧に近い固定液であり、最もルーチンで使用されています。
答え3
53 中皮に覆われている腔はどれか。2つ選べ。
- 関節腔
- 胸 腔
- 心膜腔
- 肺胞腔
- 鼻腔
解説:上皮系の鑑別問題です。まとめを載せましたので参考にしてください。
中皮は上の表から胸腔と心膜腔であるのがわかります。
答え2と3
54 虚血性心疾患はどれか。2つ選べ。
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 心内膜炎
- 肥大型心筋症
- 心室中隔欠損症
解説:虚血=血管の狭窄などにより血流が弱くなる状態のことを知っておけば楽勝です。
★虚血性心疾患
心臓に十分血がいきわたっていない状態を指す
- 心筋梗塞
- 狭心症
心内膜炎は感染症、肥大型心筋症は遺伝子異常(サルコメア蛋白)、心室中隔欠損症は先天性の異常です。
答え1と2
55 T細胞性リンパ腫はどれか。
- 菌状息肉腫
- 濾胞性リンパ腫
- Burkitt リンパ腫
- Hodgkin リンパ腫
- マントル細胞リンパ腫
解説:T細胞性リンパ腫とB細胞性リンパ腫の区別ができたら簡単です。
★T細胞性リンパ腫
- 菌状息肉症 (きんじょうそくにくしょう)
- 末梢性T細胞リンパ腫
- セザリー症候群
- 成人T細胞白血病リンパ腫
- 未分化大細胞型リンパ腫
- 節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型 など
★B細胞性リンパ腫
- 濾胞性リンパ腫
- Burkittリンパ腫
- マントル細胞リンパ腫
- びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
★備考)悪性リンパ腫はホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別され、非ホジキンリンパ腫がT/NK細胞性、B細胞性に分別される
上表より、①の菌状息肉症がT細胞性リンパ腫であることがわかります。
あまり効かない病名なので、どんな病気なのか知っておきましょう。
★菌状息肉症とは
皮膚リンパ腫のなかで、最も頻度が高いT細胞リンパ腫のこと
かゆみを伴う発疹が長く続き、ときには小さく厚みを帯びた部位が生じ、皮膚のかゆみがあるところがやがて小さなこぶとなって徐々に広がっていく
セザリー症候群に進行することもある
答え①
56 膠原線維の染色に用いられる染色法はどれか。2つ選べ。
- PAS反応
- azan染色
- Feulgen 反応
- mucicarmine 染色
- Masson trichrome染色
解説:膠原繊維の染色に用いられる染色法をまとめました。
★膠原繊維(コラーゲン)の染色法
- azan染色(アザン染色)
【染色液】
azocarmin G液
aniline blue・orange G混合液
【染色結果】
膠原線維・糸球体基底膜⇒青色(aniline blue)
筋線維・核⇒赤色(azocarmin G) - Masson trichrome染色(マッソントリクローム染色)
【染色液】
Weigertの鉄hematoxylin液
ポンソー・キシリジン/酸性フクシン/アゾフロキシン混合液
aniline blue液
【染色結果】
膠原線維・糸球体基底膜⇒青色(aniline blue)
筋線維⇒赤色(ポンソー・キシリジン/酸性フクシン/アゾフロキシン)
核⇒黒褐色(Weigertの鉄hematoxylin) - elastica van Gieson染色(エラスチカワンギーーソン染色)
【染色液】
Weigertのレゾルシン・フクシン液
Weigertの鉄hematoxylin液
van Gieson液(ピクリン酸+酸性フクシン)
【染色結果】
弾性線維⇒黒紫色(Weigertのレゾルシン・フクシン)
膠原線維⇒赤色(酸性フクシン)
筋線維⇒黄色(ピクリン酸)
核⇒黒褐色(Weigertの鉄hematoxylin液)
病理染色は名称も覚えにくくて大変ですが、一つ一つ確認していきましょう。
知らないと解きようがありませんが、知っていれば簡単な問題になります。
答え2
57 病理解剖の感染対策で誤っているのはどれか。
- 陽圧式空調
- エプロンの着用
- 使用器具の滅菌
- 入室前の手袋着用
- 感染症の既往の確認
解説:感染対策の基本です。設問を正しく直しまとめます。
★感染対策
- 陰圧式空調(外部から空気が流れるようにする調整)
- エプロンの着用
- 使用器具の滅菌
- 入室前の手袋着用
- 感染症の既往確認
答え1
58 子宮頸部擦過細胞診検査のPapanicolaou染色標本別冊No. 10 を別に示す。この細胞に関連の深い病原体はどれか。
- カンジダ
- ガードネレラ菌
- トリコモナス原虫
- 単純ヘルペスウイルス
- ヒトパピローマウイルス
解説:典型的なコイロサイト像です。
HPV(ヒトパピローマウイルス)感染症で見られる所見です。写真の特徴と合わせて覚えていまいましょう。
★コイロサイトの所見
扁平上皮細胞の核の周囲が大きく抜け、細胞質辺縁が厚く肥厚する
パパニコロウ染色でライトグリーンやオレンジ色に染まる
核は単核および多核で、核の不整が観察される細胞もある
- HPVは子宮頸がんの原因ウイルスとされている
答え5