こんにちは、SAI-LABOのさいです!
今回は、国試で年々重要度が増している最先端分野、「遺伝子・染色体検査」を過去問をもとに、解説していきます。
📝 引用元について
この記事で解説している国家試験の問題文は、厚生労働省のウェブサイトで公開されているものを、学習目的で引用しています。(医療トピックス一覧に国家試験過去問のリンクがあります)
でも大丈夫です。国試で問われるポイントは、実はある程度決まっています。それは「基礎的な技術(PCR法など)」と「臨床的な応用(がんや遺伝病)」の2本の柱です。
この記事では、その柱を一本ずつ、過去問を解きながらしっかり立てていくから、じっくり読んでみてください。
遺伝子検査の基本技術:PCR法を制する者は遺伝子を制す
遺伝子検査の心臓部とも言えるのが、PCR (Polymerase Chain Reaction) 法です。これは、膨大な遺伝情報の中から、目的の遺伝子(DNA)だけを「コピーして、増やして、見える化する」画期的な技術です。新型コロナウイルスの検査で一躍有名になりました。
国試では、その原理と、反応を成功させるための条件設定について、繰り返し問われます。
【第69回 午後 問3 / 第70回 午後 問8】PCR法の基本原理
PCR法の原理で正しいのはどれか。(第69回)
- 1.熱変性は60℃前後で行う。
- 2.2種類のプライマーを用いる。
- 3.増幅反応は50サイクル前後で行う。
- 4.伸長反応は3’→5’方向に相補鎖を合成する。
- 5.定量PCR法では標的DNA量が多いほどCt値が大きい。
PCR法で正しいのはどれか。(第70回)
- 1.Tm値が低いと特異性が高くなる。
- 2.プライマー濃度は10μM以上にする。
- 3.増幅しにくい場合にはアニーリング温度を上げる。
- 4.プライマーの塩基配列はGC含有量を20%前後にする。
- 5.アニーリング温度はプライマーのTm値以下に設定する。
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【69回】正解:2
【70回】正解:5
① 熱変性
95℃
🧬 → ||
二本鎖DNAを
一本鎖×2に解く
② アニーリング
55-65℃
プライマーが結合
コピーの開始点を決める
③ 伸長反応
72℃
DNAポリメラーゼが合成
新しい鎖を伸ばす
PCR法の基本ルール 早見表
項目 | 正しいルール | 解説 |
---|---|---|
プライマー | 2種類 (フォワード/リバース) | 増幅したい領域の「始まり」と「終わり」を指定するため。 |
サイクル数 | 25~35サイクル | 多すぎると非特異産物が増え、少なすぎると増幅が不十分になる。 |
伸長方向 | 5′ → 3′ 方向 | DNAポリメラーゼの合成方向。分子生物学の大原則! |
定量PCR (Ct値) | 標的DNAが多いほど Ct値は小さい | Ct値 = 基準に達するサイクル数。量が多いほど早く達する。 |
PCRのレシピ(条件設定) 早見表
パラメータ | 正しい設定 | 解説 |
---|---|---|
アニーリング温度 | Tm値より少し低い (Tm -5℃) | 高すぎるとプライマーが結合できず、低すぎると特異性が下がる。 |
Tm値 (融解温度) | 高いほど特異性も高い | プライマーが標的にしっかり結合するために、ある程度の高さが必要。 |
プライマー濃度 | 0.1~1.0 μM | 高すぎるとプライマーダイマーなど非特異反応の原因になる。 |
GC含有量 | 40~60%が理想 | GCペアの結合力はATペアより強い。多すぎても少なすぎてもTm値の調整が困難。 |
上表を参考に選択肢を見ていきましょう。
【69回】各選択肢の解説
- 2.2種類のプライマーを用いる。 → 正しい:増やしたい領域の始まりと終わりを指定するため、フォワードプライマーとリバースプライマーの2種類が必要です。
- 1.熱変性は60℃前後で行う。 → 誤り:図の通り、約95℃の高温が必要です。60℃前後はアニーリングの温度です。
- 3.増幅反応は50サイクル前後で行う。 → 誤り:通常は25~35サイクル程度です。サイクル数が多すぎると、非特異的な産物が増える原因になります。
- 4.伸長反応は3’→5’方向に相補鎖を合成する。 → 誤り:DNAポリメラーゼによる合成反応は、必ず5’→3’方向に進みます。これは分子生物学の大原則です。
- 5.定量PCR法では標的DNA量が多いほどCt値が大きい。 → 誤り:Ct値は「増幅産物が一定量に達するサイクル数」です。元のDNAが多いほど早く基準に達するので、Ct値は小さくなります。
【70回】各選択肢の解説
- 5.アニーリング温度はプライマーのTm値以下に設定する。 → 正しい:Tm値は「プライマーが標的DNAに50%結合する温度」です。アニーリング温度は、このTm値より少し低い温度(Tm値 -5℃程度)に設定するのが基本です。
- 1.Tm値が低いと特異性が高くなる。 → 誤り:Tm値が低すぎると、プライマーが本来の目的以外の場所にもくっつきやすくなり(ミスマッチ)、特異性は低下します。
- 2.プライマー濃度は10μM以上にする。 → 誤り:通常は0.1~1.0μM程度です。濃度が高すぎると、プライマー同士がくっつく(プライマーダイマー)など、非特異反応の原因になります。
- 3.増幅しにくい場合にはアニーリング温度を上げる。 → 誤り:増幅しない原因の一つは、アニーリング温度が高すぎてプライマーが結合できないことです。その場合は逆にアニーリング温度を下げて、結合しやすくします。
- 4.プライマーのGC含有量を20%前後にする。 → 誤り:GCペアはATペアより結合が強いため、多すぎても少なすぎてもTm値のコントロールが難しくなります。理想は40~60%程度とされています。
【第68回 午後 問10】PCRの「特異性」を高めるには?
PCR法において核酸増幅産物の特異性を高める方法として正しいのはどれか。
- 1.サイクル数を増やす。
- 2.プライマー濃度を下げる。
- 3.アニーリング温度を下げる。
- 4.マグネシウム濃度を上げる。
- 5.DNAポリメラーゼ濃度を上げる。
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正解:2
「特異性を高める」とは、簡単に言うと「狙ったDNAだけを、いかに正確に増幅させるか」ということです。プライマーが目的以外の似たような配列にくっついてしまうと、余計なDNA(非特異的産物)まで増えてしまいます。
どうすれば、この「狙い違い」を防げるか一緒に考えていきましょう。
PCRの特異性を左右するパラメータ
パラメータ | 上げるとどうなる? | 下げるとどうなる? |
---|---|---|
アニーリング温度 | 特異性↑, 収量↓ | 特異性↓, 収量↑ |
プライマー濃度 | 非特異反応↑ (特異性↓) | 非特異反応↓ (特異性↑) |
Mg²⁺濃度 | 酵素活性↑, 特異性↓ | 酵素活性↓, 特異性↑ |
上表を参考に見ていきいます。
各選択肢の解説
- 2.プライマー濃度を下げる。 → 正しい:プライマーが多すぎると、本来の目的以外の場所にくっついたり、プライマー同士でくっついたりする「非特異反応」が増えます。濃度を適切な範囲に下げることで、これらの無駄な反応が減り、特異性が向上します。
- 1.サイクル数を増やす。 → 誤り:サイクル数を増やしすぎると、わずかに生じた非特異的産物までが増幅されてしまい、結果的に特異性は低下します。
- 3.アニーリング温度を下げる。 → 誤り:温度を下げすぎると、プライマーが色々な場所に緩く結合できるようになり、特異性は低下します。特異性を上げたい場合は、むしろ温度を上げます(ギリギリまで)。
- 4.マグネシウム(Mg²⁺)濃度を上げる。 → 誤り:Mg²⁺はDNAポリメラーゼの活性に必要な補因子ですが、濃度が高すぎると酵素が活性化しすぎて、少しぐらいのミスマッチでもお構いなしに反応を進めてしまいます。結果として特異性は低下します。
- 5.DNAポリメラーゼ濃度を上げる。 → 誤り:酵素が多すぎても、非特異反応が増える原因になります。
DNA・RNA・遺伝子発現:すべての生命の設計図
PCR法が「技術」だとすれば、このセクションはすべての土台となる「理論」です。
DNAからタンパク質へと情報が流れるセントラルドグマの各ステップと、そこで働く分子たちの役割を正確に理解することが、遺伝子・染色体検査の分野を攻略する鍵となります。
📖 DNA (設計図)
↓ 転写 (設計図をコピー)
📜 mRNA (設計図のコピー)
↓ 翻訳 (コピーを元に組み立て)
🧱 タンパク質 (建物)
国試では、この流れの各ステップで「どんな道具(酵素)が使われるか」「どんなルール(コドン)で翻訳されるか」といった点が問われます。
【第68回 午後 問9 / 第71回 午前 問3】物語の登場人物(分子)たち
【第68回】アミノ酸を結合してリボソームに運搬する働きをするのはどれか。
- 1.mRNA
- 2.rRNA
- 3.tRNA
- 4.hnRNA
- 5.snRNA
【第71回】DNA合成酵素はどれか。
- 1.リガーゼ
- 2.ヘリカーゼ
- 3.イソメラーゼ
- 4.ポリメラーゼ
- 5.エンドヌクレアーゼ
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【68回】正解:3
【71回】正解:4
【68回&71回】セントラルドグマの登場人物
それぞれの役割を表で整理して、しっかり覚えていきましょう!
翻訳の主役たち(RNA)の役割
RNAの種類 | 役割(例えるなら…) | 解説 |
---|---|---|
mRNA (伝令RNA) | 設計図のコピー 📜 | DNAの遺伝情報を核からリボソームへ伝える。 |
tRNA (運搬RNA) | 材料を運ぶトラック 🚚 | mRNAのコドンに対応するアミノ酸を運んでくる。 |
rRNA (リボソームRNA) | 組立工場 🏭 | リボソームを構成し、タンパク質合成の場となる。 |
hnRNA / snRNA | 設計図の編集者 ✂️ | mRNAが完成する前の前駆体(hnRNA)や、スプライシングに関与(snRNA)。 |
遺伝子操作の道具(酵素)たちの役割
酵素の種類 | 役割(例えるなら…) | 解説 |
---|---|---|
ポリメラーゼ | コピー機 📠 | DNAやRNAの鎖を合成(重合)する。PCRの主役。 |
リガーゼ | のり 接着剤 | DNA鎖の切れ目を連結する。 |
ヘリカーゼ | ファスナー開け 🤐 | 二本鎖DNAを一本鎖にほどく。 |
エンドヌクレアーゼ | はさみ ✂️ | DNA鎖の途中を切断する。制限酵素もこの仲間。 |
イソメラーゼ | 構造変換装置 🔄 | 分子の化学構造を変化させる(異性化する)。 |
【68回】翻訳の主役たち
この問題は、翻訳プロセスにおける各RNAの役割を聞いています、上表を参考に見ていきましょう。
- 3.tRNA (運搬RNA) → 正しい:アミノ酸を運ぶ「トラック」の役割。mRNAのコドンに対応するアンチコドンを持ち、指定されたアミノ酸をリボソーム(工場)まで運びます。
- 1.mRNA (伝令RNA) → 誤り:DNAの情報を写し取った「設計図のコピー」です。
- 2.rRNA (リボソームRNA) → 誤り:リボソームを構成する部品であり、タンパク質合成の「工場」そのものです。
- 4, 5 (hnRNA, snRNA) → 誤り:これらは転写されたmRNAが成熟する過程(スプライシングなど)に関わるRNAです。
【71回】遺伝子操作の道具(酵素)たち
- 4.ポリメラーゼ → 正しい:DNAやRNAといった核酸を「合成(重合)」する酵素の総称です。DNAポリメラーゼはDNAを、RNAポリメラーゼはRNAを合成します。PCR法で活躍するのも耐熱性のDNAポリメラーゼです。
- 1.リガーゼ → 誤り:DNA鎖の切れ目を「連結(接着)」する酵素。
- 2.ヘリカーゼ → 誤り:二本鎖DNAを一本鎖に「ほどく」酵素。
- 3.イソメラーゼ → 誤り:分子の構造を変化させる(異性化する)酵素の総称。
- 5.エンドヌクレアーゼ → 誤り:DNA鎖の「途中を切断」する酵素。特定の塩基配列を認識して切断するものは「制限酵素」と呼ばれます。
【第67回 午後 問7 / 第69回 午後 問8】翻訳のルール(コドン)
【第67回】塩基置換により終止コドンが生じる遺伝子変異の種類はどれか。
- 1.サイレント変異
- 2.ナンセンス変異
- 3.ミスセンス変異
- 4.フレームシフト変異
- 5.ミススプライシング変異
【第69回】真核生物におけるmRNAの開始コドンはどれか。
- 1.AUG
- 2.CUG
- 3.GUC
- 4.UAC
- 5.UAG
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【67回】正解:2
【69回】正解:1
「開始」と「終止」の暗号、そして暗号が変化した時に何が起こるか、が国試のポイントです。
国試最重要!コドンの役割 早見表
役割 | コドン (mRNA配列) | アミノ酸 | 覚え方 (ゴロ合わせ) |
---|---|---|---|
▶️ 開始コドン | AUG | メチオニン | 「AUGmentation (拡張/開始)」 |
⏹️ 終止コドン | UAA | なし | 「UAA」「UAG」「UGA」 Uから始まる3兄弟と覚える! |
UAG | |||
UGA |
mRNAのコドンに対して、tRNAは相補的な塩基配列を持つ「アンチコドン」を持っています。
例えば、開始コドンAUGに対応するtRNAのアンチコドンは「UAC」となります(AはUと、GはCとペアになるため)。
問題で「コドン」を問われているのか、「アンチコドン」を問われているのか、しっかり見極めることが重要です。
【69回】翻訳のスタートとゴール
- 開始コドン → AUG (メチオニン):これが「ここから翻訳を始めろ!」というスタートの合図です。
- 終止コドン → UAA, UAG, UGA:これらが「ここで翻訳は終わり!」というゴールの合図です。
したがって、【69回】の正解は「1.AUG」です。
【67回】遺伝子変異の種類
塩基置換による変異の種類
変異の種類 | 何が起こるか? |
---|---|
サイレント変異 | アミノ酸は変化しない |
ミスセンス変異 | 別のアミノ酸に変化する |
ナンセンス変異 | アミノ酸が終止コドンに変化する |
- 2.ナンセンス変異 → 正しい:本来アミノ酸を指定していたコドンが、終止コドンに変化してしまう変異です。タンパク質の合成が途中で打ち切られ、短い、機能しないタンパク質が作られます。
- 4.フレームシフト変異:塩基の挿入や欠失により、コドンの読み枠がズレてしまう変異です。
- 5.ミススプライシング変異:スプライシングの異常により、イントロンが残ったりエクソンが飛んだりする変異です。
【第67回 午後 問8】染色体の末端構造「テロメア」
ヒトのテロメアについて誤っているのはどれか。
- 1.染色体を安定化する。
- 2.染色体両腕の末端領域を指す。
- 3.テロメラーゼにより短縮する。
- 4.体細胞では分裂ごとに短縮する。
- 5.塩基の繰り返しDNA配列からなる。
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正解:3
【テロメアの機能 まとめ表】
その役割と、関連する特別な酵素について、この表でスッキリ整理しましょう!
テロメアの役割
テロメアの役割 早見表
項目 | 解説 |
---|---|
場所 🗺️ | 染色体の両末端に存在する領域。 |
構造 🧱 | 特徴的な塩基配列 (TTAGGG) の繰り返し構造。 |
役割 🛡️ | 染色体を保護するキャップの役割。染色体の分解や融合を防ぎ、安定化させる。 |
体細胞での変化 ⏳ | 細胞分裂のたびに、少しずつ短縮していく。(→ 細胞の老化・寿命に関与) |
関連酵素 「テロメラーゼ」 🧙♂️ |
短くなったテロメアを修復して伸長させる酵素。 (がん細胞や幹細胞で活性が高く、細胞の不死化に関与) |
テロメアは「短縮」する
テロメラーゼは「伸長」させる
この「短縮」と「伸長」の主語を入れ替えた問題がよく出ます。絶対に間違えないようにしましょう!
では、上表を参考に選択肢を見ていきます。
- 1, 2, 5 → 正しい:染色体の両端にあり、特徴的な繰り返し配列(TTAGGG)からなり、染色体の分解や融合を防いで安定化させています。
- 4.体細胞では分裂ごとに短縮する。 → 正しい:体細胞は分裂のたびにテロメアが少しずつ短くなっていきます。これが細胞の老化(寿命)に関わっていると考えられています。
- 3.テロメラーゼにより短縮する。 → 誤り:テロメラーゼは、短くなったテロメアを修復して「伸ばす」特殊な酵素です。がん細胞や幹細胞などで活性が高く、細胞の無限増殖に関わっています。「短縮する」という記述が明確な誤りです。
染色体の構造と検査法:生命の情報を格納する器
DNAは、細胞核内に「染色体」という構造体として格納されています。このセクションでは、染色体の基本的な構造、臨床検査で用いられる解析技術(染色体分染法)、および染色体異常と関連疾患について解説していきます。
【第70回 午後 問9】染色体の基本構造
染色体で正しいのはどれか。
- 1.ヒト体細胞の染色体数は23である。
- 2.染色体の両端部は動原体蛋白に覆われている。
- 3.染色体中心部のくびれたDNA領域をテロメアという。
- 4.ヌクレオソームはDNA鎖とヒストン8量体から成る。
- 5.1本の染色体から複製された染色体を相同染色体と呼ぶ。
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正解:4
言葉だけだとイメージしにくいから、図で整理してみます!

各選択肢の解説
- 4.ヌクレオソームはDNA鎖とヒストン8量体から成る。 → 正しい:DNAは、ヒストンというタンパク質(8個で1セット)に巻きつくことで、コンパクトに折りたたまれます。この「糸巻き」のような基本構造をヌクレオソームと呼びます。
- 1.ヒト体細胞の染色体数は23である。 → 誤り:体細胞の染色体数は46本(23対)です。23本なのは、精子や卵などの生殖細胞です。
- 2.染色体の両端部は動原体蛋白に覆われている。 → 誤り:両端部はテロメアです。動原体はセントロメア領域に形成されます。
- 3.染色体中心部のくびれたDNA領域をテロメアという。 → 誤り:くびれた領域はセントロメアです。テロメアは末端部です。
- 5.1本の染色体から複製された染色体を相同染色体と呼ぶ。 → 誤り:複製されたペアは姉妹染色分体と呼びます。相同染色体とは、父親由来と母親由来の同じ番号の染色体ペア(例:父親由来の1番染色体と母親由来の1番染色体)を指します。
でも、それぞれのパーツが「どんな役割」で「どこにあるのか」を整理すれば、もう迷うことはないですよ。この表で、染色体の全体像をしっかり掴みましょう!
国試最重要!染色体の基本構造と用語 早見表
用語 | 場所 | 構造・役割 | 国試ポイント |
---|---|---|---|
染色体数 (ヒト) | 核内 | 生命の設計図(ゲノム)の入れ物。 | 体細胞:46本 (23対) 生殖細胞:23本 |
ヌクレオソーム | 染色体の基本単位 | DNAがヒストン8量体に巻き付いた「糸巻き」構造。 | 染色体をコンパクトに折りたたむための基本構造。 |
セントロメア | 染色体のくびれ | 第一狭窄部とも呼ばれる、染色体の中央付近のくびれた領域。 | テロメア(末端部)との位置関係を問う問題が頻出。 |
動原体 (キネトコア) | セントロメアの外側 | 細胞分裂時に紡錘糸が結合するタンパク質複合体。 | セントロメア「領域」に形成される「タンパク質」である点を理解する。 |
テロメア | 染色体の両末端 | TTAGGGの繰り返し配列からなるキャップ構造。染色体を保護する。 | 細胞分裂のたびに短縮し、老化に関与。セントロメアとの違いを明確に。 |
姉妹染色分体 | 複製後の染色体 | 1本の染色体が複製してできた、全く同じ遺伝情報を持つペア。 | 相同染色体との違いを問う問題が頻出。 |
相同染色体 | 体細胞の核内 | 父親由来と母親由来の同じ番号の染色体ペア。(例:1番と1番) | 遺伝情報は似ているが同一ではない。姉妹染色分体と混同しないこと。 |
染色体の検査結果は、国際的なルール(ISCN)に基づいて表記されます。基本的な読み方を覚えておきましょう。
46,XY
46 → 染色体の総本数
XY → 性染色体の構成(この場合は男性)
(例:ダウン症候群の男性 → 47,XY,+21)
【第67回 午後 問3 / 第68回 午前 問9】染色体検査のタイミングと構造異常
【第67回】細胞周期の段階のうち、G染色法において染色体を観察するのに適しているのはどれか。
- 1.間期
- 2.前期
- 3.中期
- 4.後期
- 5.終期
【第68回】慢性骨髄性白血病で高頻度にみられる染色体の構造異常はどれか。
- 1.逆位
- 2.欠失
- 3.挿入
- 4.重複
- 5.転座
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【67回】正解:3
【68回】正解:5
【67回】染色体観察のベストタイミング
染色体は、細胞が分裂していない間期には、核の中で糸状に広がっています。細胞分裂が始まると、徐々に凝縮して太く短くなります。
染色体が最も凝縮し、個々の形がはっきりと観察できるのは、分裂期の中期です。染色体検査では、コルヒチンなどの薬剤で細胞分裂を中期で止め、観察用の標本を作成します。
【68回】CMLとフィラデルフィア染色体
慢性骨髄性白血病(CML)では、9番染色体と22番染色体の一部が入れ替わるという特徴的な構造異常が見られます。これを相互転座と呼び、この異常によって短くなった22番染色体を「フィラデルフィア(Ph)染色体」と呼びます。
この転座により、BCR遺伝子とABL1遺伝子が融合した「BCR-ABL1融合遺伝子」が形成され、これががん化の直接的な原因となります。
国試最重要!血液腫瘍の染色体異常と遺伝子 早見表
疾患名 | 染色体異常 (転座) | 形成される融合遺伝子 | ゴロ合わせ・ポイント |
---|---|---|---|
慢性骨髄性白血病 (CML) |
t(9;22)(q34;q11) (フィラデルフィア染色体) |
BCR-ABL1 | 「憎(22)しみをく(9)れ」 |
急性前骨髄球性白血病 (APL / AML-M3) |
t(15;17)(q22;q21) | PML-RARA | 「以後(15)、いいな(17)、APL」 ATRA(ビタミンA)が著効 |
バーキットリンパ腫 | t(8;14)(q24;q32) | MYC-IGH | 「蜂(8)に刺(14)され、まいった(MYC)」 |
濾胞性リンパ腫 | t(14;18)(q32;q21) | IGH-BCL2 | 「石(14)の上にも岩(18)」 アポトーシスを抑制(BCL2) |
マントル細胞リンパ腫 | t(11;14)(q13;q32) | CCND1(サイクリンD1)-IGH | 「いい(11)石(14)のマントル」 |
t(9;22)(q34;q11)
これは、以下のように読み解きます。
- t → 転座 (translocation) を示す。
- (9;22) → 9番染色体と22番染色体の間で転座が起きたことを示す。
- (q34;q11) → より詳細な切断点を示す。
9番染色体の長腕(q)の34バンドと、22番染色体の長腕(q)の11バンドで切れて、入れ替わった、という意味です。
【第68回 午後 問8 / 第71回 午後 問9】染色体分染法の原理
【第68回】染色体分染法でグアニン(G)-シトシン(C)塩基対優位部が濃染するのはどれか。
- 1.Cバンド分染法
- 2.Gバンド分染法
- 3.Qバンド分染法
- 4.Rバンド分染法
- 5.NOR分染法
【第71回】染色法と濃染する部位の組合せで正しいのはどれか。
- 1.C分染法 – ユークロマチン
- 2.G分染法 – GCリッチ領域
- 3.NOR分染法 – テロメア
- 4.Q分染法 – ATリッチ領域
- 5.姉妹染色体分染法 – ヘテロクロマチン
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【68回】正解:4
【71回】正解:4
どのバンドが、どの塩基(AT or GC)と対応しているのかを整理するのが重要です!
主要な染色体分染法 比較表
分染法 | 濃染(明るく光る)部位 | ゴロ合わせ |
---|---|---|
Gバンド / Qバンド | ATリッチ領域 | 「G/Qはアットいう間」 |
Rバンド | GCリッチ領域 (Reverse) | Gバンドのリバース(逆) |
Cバンド | Centromere (セントロメア) 周辺の構成ヘテロクロマチン | CはCentromere |
NOR染色 | 仁(核小体)形成域 (rRNA遺伝子領域) | NORは仁(jin)を染める |
各問題の解説
- 【68回】:GCリッチ領域が濃染するのは、Gバンドの逆(Reverse)パターンである「4.Rバンド分染法」です。
- 【71回】:「4.Q分染法 – ATリッチ領域」が正しい組み合わせです。「G分染法」もATリッチが濃染するので、選択肢2は誤りです。「C分染法」が染めるのは構成ヘテロクロマチン、「NOR分染法」が染めるのは仁形成域なので、それぞれ誤りです。
遺伝性疾患と腫瘍遺伝子:遺伝子情報と病気の関わり
ここでは、これまでに学んだ遺伝子や染色体の知識が、実際の「がん」や「遺伝病」の診断・治療にどう結びつくかを解説します。
がん遺伝子 vs がん抑制遺伝子
「がん遺伝子」はアクセル、「がん抑制遺伝子」はブレーキに例えることができて、
がんになるのは、アクセルが壊れて踏みっぱなしになるか、ブレーキが効かなくなるかのどちらかだということです。
がん遺伝子 (アクセル)
🚗💨
普段は細胞増殖を促進。
変異で機能亢進すると、
アクセル踏みっぱなしで増殖が止まらない!
がん抑制遺伝子 (ブレーキ)
🚫
普段は細胞増殖を抑制。
変異で機能喪失すると、
ブレーキが効かずに増殖が止まらない!
【第69回 午後 問10】発現蛋白の機能亢進により発がん性を発揮するのはどれか。
- 1.APC
- 2.BRCA1
- 3.MYC
- 4.RB1
- 5.TP53
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正解:3.MYC
「機能亢進により発がん」とあるので、これは「がん遺伝子(アクセル)」はどれか?という問題ですね。
- 3.MYC → 正しい:MYCは細胞増殖のアクセル役を担う代表的ながん遺伝子です。
- 1, 2, 4, 5 (APC, BRCA1, RB1, TP53) → 誤り:これらはすべて、細胞増殖にブレーキをかける、超有名ながん抑制遺伝子です。
- APC:大腸がん
- BRCA1/2:遺伝性乳がん卵巣がん症候群
- RB1:網膜芽細胞腫
- TP53 (p53):“ゲノムの守護神”。ほとんどのがんで変異が見られる。
【がん関連遺伝子 まとめ表】
国試で頻出の項目を、この表で一気に覚えてしまいましょう!
国試最重要!がん関連遺伝子 早見表
分類 | 遺伝子名 | 役割・機能 | 関連する主な疾患 |
---|---|---|---|
がん遺伝子 (アクセル) |
MYC | 転写因子 (細胞増殖の司令塔) | バーキットリンパ腫など |
RAS (KRAS, NRAS, HRAS) | シグナル伝達 (増殖シグナルの伝令役) | 肺がん、大腸がん、膵がんなど | |
ABL1 | チロシンキナーゼ (増殖シグナルのスイッチ) | 慢性骨髄性白血病 (CML) (BCR-ABL1として) | |
EGFR | 受容体型チロシンキナーゼ (増殖シグナルのアンテナ) | 肺がん、膠芽腫など | |
BCL2 | アポトーシス抑制 (細胞を死なせない役) | 濾胞性リンパ腫 | |
がん抑制遺伝子 (ブレーキ) |
TP53 (p53) | “ゲノムの守護神” (DNA修復、細胞周期停止、アポトーシス誘導) | ほとんどすべてのがん (Li-Fraumeni症候群) |
RB1 | 細胞周期のチェックポイント (細胞分裂の門番) | 網膜芽細胞腫 | |
APC | Wntシグナル伝達経路の抑制 | 家族性大腸腺腫症 (FAP)、大腸がん | |
BRCA1 / BRCA2 | DNA二本鎖切断の修復 | 遺伝性乳がん卵巣がん症候群 (HBOC) | |
PTEN | PI3K/AKT経路の抑制 (増殖シグナルのブレーキ役) | Cowden症候群、多くのがん |
がん抑制遺伝子(ブレーキ)が完全に機能しなくなるためには、通常、2つのブレーキの両方が壊れる必要があります。
遺伝性のがん(例:遺伝性網膜芽細胞腫)では、生まれた時から片方のブレーキ(遺伝子)が壊れています(1ヒット目)。そのため、もう片方が後天的な変異で壊れる(2ヒット目)だけで、がんを発症しやすくなるのです。
これが、がん抑制遺伝子の変異が遺伝しやすい理由の一つです。
遺伝性疾患と原因遺伝子
【第67回 午後 問2】網膜芽細胞腫の原因遺伝子はどれか。
- 1.ABL1
- 2.BRCA1
- 3.EGFR
- 4.KRAS
- 5.RB1
【第68回 午前 問10】遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因遺伝子はどれか。
- 1.APC
- 2.RB1
- 3.MEN1
- 4.MSH2
- 5.BRCA1/2
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【67回】正解:5
【68回】正解:5
これらは、特定の疾患と原因遺伝子の組み合わせを問う、基本的な知識問題です。先ほどのがん抑制遺伝子の知識がそのまま使えます。プラスαで、さらに知識を深めましょう。
- 網膜芽細胞腫:原因遺伝子はRB1です。がん抑制遺伝子の概念が、この遺伝子の研究から発見されたことでも有名です。
- 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC):原因遺伝子はBRCA1およびBRCA2です。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、この遺伝子変異を持つことから予防的に乳房を切除したことで話題になりましたね。
特に、がん抑制遺伝子が原因となることが多いのが特徴です。
国試最重要!遺伝性腫瘍症候群と原因遺伝子
遺伝性疾患名 | 原因遺伝子 (がん抑制遺伝子) | 関連する主な腫瘍 |
---|---|---|
遺伝性乳がん卵巣がん症候群 (HBOC) | BRCA1, BRCA2 | 乳がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん |
網膜芽細胞腫 (Retinoblastoma) | RB1 | 網膜芽細胞腫、骨肉腫 |
家族性大腸腺腫症 (FAP) | APC | 大腸ポリープ (→大腸がん) |
リンチ症候群 (HNPCC) | MSH2, MLH1, MSH6, PMS2 (ミスマッチ修復遺伝子) | 大腸がん、子宮内膜がん、卵巣がん |
Li-Fraumeni症候群 | TP53 (p53) | 肉腫、乳がん、脳腫瘍、副腎皮質がんなど (多種多様) |
多発性内分泌腫瘍症1型 (MEN1) | MEN1 | 下垂体、副甲状腺、膵臓の腫瘍 |
コンパニオン診断:個別化医療の鍵
【第69回 午前 問7】コンパニオン検査の特徴について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.薬局で個人購入できる。
- 2.疾患の重症度を評価できる。
- 3.分子標的薬の有効性を予測できる。
- 4.ベッドサイドで結果を評価できる。
- 5.医薬品の副作用リスクを評価できる。
【第71回 午前 問1】コンパニオン診断に用いられるのはどれか。
- 1.PSA
- 2.血小板凝集能
- 3.EGFR変異解析
- 4.75g経口グルコース負荷試験
- 5.T細胞サブセット〈CD4/CD8〉
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【69回】正解:3, 5
【71回】正解:3
「鍵と鍵穴」のイメージで理解しよう!
🔑 (分子標的薬)
↓
🔐 (がん細胞の特定の遺伝子変異)
この薬(鍵)が、あなたの癌(鍵穴)に効くかどうか、
事前に調べる検査
コンパニオン診断の特徴
- 3.分子標的薬の有効性を予測できる / 5.副作用リスクを評価できる → 正しい:これがコンパニオン診断の目的そのものです。特定の遺伝子変異を持つ患者さんにだけ劇的に効く薬(分子標的薬)の効果を予測したり、重い副作用が出やすい体質かどうかを事前に調べたりします。
- 1, 2, 4 → 誤り:コンパニオン診断は、専門の検査室で高度な遺伝子解析を行う必要があり、個人購入やベッドサイドでの評価はできません。また、重症度評価が目的ではありません。
具体的なコンパニオン診断の例
3.EGFR変異解析 → 正しい:肺がんの一部では、EGFRという遺伝子に変異が起きています。このタイプの肺がんには、EGFRの働きを特異的にブロックする分子標的薬(ゲフィチニブなど)が劇的に効きます。そのため、治療前にEGFR遺伝子に変異があるかどうかを調べることが必須となっています。これが代表的なコンパニオン診断です。
「この患者さんのがんには、どの抗がん剤(分子標-的薬)が効くのか?」を、遺伝子レベルで調べる検査です。
国試では、特に有名な「がん」「遺伝子」「薬」の組み合わせが問われます。この表で代表的なコンパニオン診断例を覚えてしまいましょう!
国試で問われる!コンパニオン診断の代表例
対象となるがん | 標的遺伝子(検査対象) | 分子標的薬(コンパニオン医薬品)の例 |
---|---|---|
肺がん (非小細胞肺がん) | EGFR遺伝子変異 | ゲフィチニブ、エルロチニブ (EGFR阻害薬) |
肺がん (非小細胞肺がん) | ALK融合遺伝子 | クリゾチニブ、アレクチニブ (ALK阻害薬) |
乳がん, 胃がん | HER2遺伝子増幅 | トラスツズマブ (抗HER2抗体) |
大腸がん | RAS遺伝子変異 (KRAS, NRAS) | セツキシマブ、パニツムマブ (抗EGFR抗体薬) ※RAS変異があると効かない |
悪性黒色腫 (メラノーマ) | BRAF遺伝子変異 (V600E) | ベムラフェニブ (BRAF阻害薬) |
慢性骨髄性白血病 (CML) | BCR-ABL1融合遺伝子 | イマチニブ (チロシンキナーゼ阻害薬) |
上の表で注目してほしいのが、大腸がんのRAS遺伝子変異検査です。
- 多くのコンパニオン診断は、「遺伝子変異があれば、薬が効く」ことを調べるために行います。(例:EGFR変異があればEGFR阻害薬が効く)
- しかし、RAS遺伝子変異検査は、「変異があれば、薬が効かない」ことを調べるために行われます。RASに変異があると、EGFRをブロックしても下流のシグナルが暴走し続けるため、抗EGFR抗体薬の効果が期待できないのです。
このように、コンパニオン診断には2つのパターンがあることも知っておくと、理解が深まります。
遺伝形式と染色体数異常
【第71回 午後 問3】X連鎖潜性〈劣性〉遺伝形式をとる疾患はどれか。
- 1.血友病A
- 2.糖原病Ⅰ型
- 3.Marfan症候群
- 4.遺伝性球状赤血球症
- 5.フェニルケトン尿症
【第69回 午後 問4】出生児における染色体異常のうち最も発生数が多いのはどれか。
- 1.13トリソミー
- 2.18トリソミー
- 3.21トリソミー
- 4.45,X
- 5.47,XXY
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【71回】正解:1
【69回】正解:3
【71回】遺伝形式
X連鎖劣性遺伝は、原因遺伝子がX染色体上にあり、男性に発症しやすい(Y染色体に対立遺伝子がないため)のが特徴です。代表的な疾患として、血友病、赤緑色覚異常、Duchenne型筋ジストロフィーは必ず覚えておきましょう。
【69回】染色体数異常の頻度
出生児に見られる染色体異常の中で、最も頻度が高いのは「3.21トリソミー(ダウン症候群)」です。他のトリソミー(13, 18)は重篤な症状を伴うため、出生に至るケースが比較的少ないです。
その上で、それぞれの代表的な疾患と特徴を、この2つの表で一気に整理してしまいましょう!
国試最重要!単一遺伝子疾患の遺伝形式
遺伝形式 | 特徴 | 代表的な疾患 |
---|---|---|
常染色体優性遺伝 | ・毎世代に発症 ・男女差なし ・垂直伝達 |
家族性大腸腺腫症 (FAP), Marfan症候群, 遺伝性球状赤血球症, ハンチントン病 |
常染色体劣性遺伝 | ・発症は散発的 ・男女差なし ・水平伝達 (同胞に発症) |
フェニルケトン尿症, 糖原病Ⅰ型, Wilson病, 鎌状赤血球症 |
X連鎖劣性遺伝 | ・原則として男性のみ発症 ・女性は保因者となる ・男性→男性の伝達はない |
血友病A/B, Duchenne型筋ジストロフィー, 赤緑色覚異常 |
この表から、【71回】の選択肢を見ると、血友病AがX連鎖劣性遺伝の代表疾患であることが分かりますね。他の選択肢は、糖原病Ⅰ型・フェニルケトン尿症が常染色体劣性、Marfan症候群・遺伝性球状赤血球症が常染色体優性遺伝です。
国試最重要!染色体数異常症
疾患名 | 核型 | 染色体数 | 特徴・頻度 |
---|---|---|---|
ダウン症候群 | 47,XX,+21 or 47,XY,+21 | 47本 | 出生児で最も頻度が高い染色体異常症。特徴的顔貌、知的障害など。 |
エドワーズ症候群 | 47,XX,+18 | 47本 | 重篤な心疾患などを合併し、予後不良。 |
パタウ症候群 | 47,XX,+13 | 47本 | 重篤な中枢神経系・心疾患を合併し、予後不良。 |
ターナー症候群 | 45,X | 45本 | 女性のみ。低身長、性腺機能不全など。 |
クラインフェルター症候群 | 47,XXY | 47本 | 男性のみ。高身長、精巣発育不全、女性化乳房など。 |
この表から、【69回】の問題の答えが「3.21トリソミー(ダウン症候群)」であることが明確に分かりますね。
まとめ
【結論】遺伝子・染色体検査をマスターする4つの鉄則
一見難解に見えるこの分野も、基本原理と臨床応用という2つの柱で整理することで効率的に学習できます。
臨床検査技師として必須の知識となる以下の4つの鉄則を、しっかり押さえておきましょう。
鉄則1:PCRの基本原理と条件を理解する
95℃で変性、55-65℃でアニーリング、72℃で伸長
PCR法の基本3ステップの温度と目的は、最重要の知識です。さらに、「特異性を上げたい場合はアニーリング温度を上げる」「収量を増やしたい場合は下げる」といった、各パラメータの調整方法まで理解しておくことが求められます。
鉄則2:セントラルドグマの主要な分子を覚える
設計図(DNA) → コピー(mRNA) → 運搬(tRNA) → 工場(rRNA)
DNAからタンパク質が作られるまでの情報の流れ(セントラルドグマ)と、そこで機能する分子たちの役割(mRNA, tRNA, rRNAなど)を正しく理解しましょう。開始コドン(AUG)と終止コドン(UAA, UAG, UGA)も必須の知識です。
鉄則3:染色体分染法のバンドパターンを整理する
G/QはATリッチ、RはGCリッチ、Cはセントロメア
染色体分染法は、国試で頻出の暗記項目です。どの分染法が、どの塩基リッチ領域を濃染させるのかを確実に覚えましょう。CMLで有名なフィラデルフィア染色体(9番と22番の相互転座)も重要です。
鉄則4:がん関連遺伝子の2種類を区別する
がん遺伝子の機能亢進 vs がん抑制遺伝子の機能喪失
がん化のメカニズムを「アクセル」と「ブレーキ」のイメージで理解しましょう。MYCやRASがアクセル(がん遺伝子)、RB1やTP53、BRCA1がブレーキ(がん抑制遺伝子)の代表です。この区別が、遺伝子関連のがんの問題を解く鍵となります。
お疲れ様でした!
遺伝子・染色体検査は、これからの臨床検査の中心となる分野です。難しく感じるかもしれませんが、基礎をしっかり固めることで、他の分野の理解も深まります。
この記事が、皆さんの学習の一助となれば幸いです。