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【心電図・完全版】国試7年分の過去問23問を分析!波形が読めない人のための最強攻略ガイド
心電図って…
正直、何から見ればいいか分からない!
- ✔P波、QRS波、T波…それぞれの意味が曖昧…。
- ✔不整脈の波形が、全部同じに見えてパニックになる!
- ✔STが上がってる?下がってる?どこを見ればいいの…?
しかし、ご安心ください。過去7年分の国家試験を徹底分析した結果、心電図問題には明確な「出題パターン」と「見るべきポイント」が存在することがわかりました。
この記事は、単なる暗記リストではありません。複雑な心電図を「物語」として読み解くための思考法をゼロから解説し、あなたがどんな波形を見ても動じない、本物の読影力を身につけるための究極のガイドブックです。
【データ分析】国試における心電図の重要性
過去7年間(第65回〜第71回)の国家試験で、純粋な「心電図」に関連する問題は、合計23問出題されています。これは、毎年平均して3問が心電図から出題される計算です。合否を分けるこの数点を、確実に得点源にしましょう。
▼ クリックして出題ソース(全23問)を見る
第71回: AM-16, AM-17, PM-18
第70回: AM-17, AM-18, PM-16,PM-17
第69回: AM-17, PM-17
第68回: AM-16, PM-17,PM-18
第67回: AM-16, AM-17, AM-18, PM-16
第66回: AM-19,PM-17
第65回: AM-17,AM-18,PM-16,PM-17,PM-18
Part 1:【超・基礎】心電図を読み解くための3つの神器
難しい波形を見る前に、まずは基本となる3つの知識(神器)を完璧にしましょう。
神器①:P-QRS-T波の意味と正常値
心電図は、心臓の電気的な興奮の物語です。
- P波:心房の興奮(脱分極)。(正常:高さ<0.25mV, 幅<0.11秒)
- QRS波:心室の興奮(脱分極)。(正常:幅<0.10秒)
- T波:心室の興奮からの回復(再分極)。
- PQ時間(PR時間):心房→心室の伝導時間。(正常:0.12〜0.20秒)
神器②:12誘導の役割(心臓の壁を見る)
壁の場所 | 対応する誘導 |
---|---|
前壁・中隔 | V1, V2, V3, V4 |
側壁 | Ⅰ, aVL, V5, V6 |
下壁 | Ⅱ, Ⅲ, aVF |
神器③:電極の正しい位置
胸部誘導の電極位置は、働き出してからも絶対に知っておかなければならない必須知識です。(名前を覚える必要があるかは疑問ですが笑)
- V1:第4肋間胸骨右縁
- V2:第4肋間胸骨左縁
- V4:第5肋間と左鎖骨中線の交点
- V3:V2とV4の中間
- V5:V4と同じ高さで、左前腋窩線上
- V6:V4と同じ高さで、左中腋窩線上
Part 2:【さい流・読影術】どんな波形も5ステップで必ず読める!
国試の画像問題が出たら、焦らずこの5ステップで波形を見ていきましょう。
- Step1:リズムは整か?(R-R間隔)
→R波の間隔が一定なら「整」、バラバラなら「不整」。R-R間隔の不整は、心房細動を強く疑うきっかけになります。 - Step2:P波はあるか?QRS波と連動しているか?
→P波が見当たらなかったり、P波とQRS波がバラバラに動いていたりしたら、房室ブロックを疑います。PQ時間の延長もここでチェック! - Step3:QRS波の幅は広いか?狭いか?
→QRS幅が3マス(0.12秒)以上なら「幅が広い(wide QRS)」。これは、興奮が心室内の特殊心筋(刺激伝導系)を正常に通っていないサインであり、脚ブロックや心室性不整脈を考える重要な所見です。 - Step4:STは上がってる?下がってる?
→基線(PQ部分)からST部分が上がっていれば「ST上昇」、下がっていれば「ST低下」。これは心筋の虚血(酸欠状態)を示唆し、心筋梗塞や狭心症を鑑別する上で最も重要な所見の一つです。 - Step5:神器②の出番!どの誘導で変化が起きているか?
→ST変化や異常Q波が起きている誘導から、心臓のどの壁に異常があるのか(前壁?下壁?)を特定します。
Part 3:【過去問演習】7年分の全16問を徹底解説!
ここからは、実際に過去問を解きながら、知識を定着させていきましょう。
【第71回 午前 問16】
問題:標準 12 誘導心電図で V4 誘導の電極位置はどれか。
- 第 4 肋間胸骨右縁
- 第 4 肋間胸骨左縁
- 第 5 肋間と左鎖骨中線の交点
- 第 5 肋間と左前腋窩線の交点
- 第 5 肋間と左中腋窩線の交点
【解答】3
【さい流・ポイント解説】
これは絶対に落とせない超・頻出の知識問題です。「神器③」で解説した通り、V4の電極位置は「第5肋間と左鎖骨中線の交点」です。他の選択肢がどの電極位置を指すかもしっかり復習しておきましょう!
文字で書くと難しいですね。「第5肋間と左鎖骨中線の交差点」が答えとなります。
【第71回 午前 問17】
問題:標準 12 誘導心電図を別に示す。所見はどれか。
- 心房細動
- 心房粗動
- 上室頻拍
- 心室細動
- 心室頻拍

心電図を見てみると、「p波がわからない」ことがわかると思います。ここでp波がわからない=心房細動!と答えたくなるところですが、よく似た不整脈には「心房粗動」があります。まずは、そこをまとめていきましょう。
【国試頻出】心房粗動 vs 心房細動 鑑別対決!
心房粗動 (AFL)
心房が高速で規則正しく空回り!
- 基線:のこぎり歯状のF波(粗動波)。規則的なギザギザ。
- RR間隔:規則的(2:1や4:1伝導のため)。
心房細動 (Af)
心房が無秩序に痙攣!
- 基線:不規則に揺れるf波(細動波)。細かい震え。
- RR間隔:完全に不規則(絶対性不整)。
【ポイント】
波形を見たら、まずRR間隔をチェック!
「RR間隔が整なら粗動」「RR間隔が不整なら細動」と判断するのが、最も早く確実な見分け方です。
鋸歯状のF波が見られているので4:1の心房粗動だということがわかります。伝導までは聞かれていませんが、答えは「心房粗動」になります。
【第71回 午後 問18】
問題:肢誘導心電図を別に示す。所見はどれか。
- 洞房ブロック
- Ⅰ度房室ブロック
- Wenckebach 型Ⅱ度房室ブロック
- MobitzⅡ型Ⅱ度房室ブロック
- Ⅲ度房室ブロック

房室ブロック(AVブロック)の要点まとめ
【房室ブロックとは?】
✅ Ⅰ度房室ブロック
【所見】PQ時間(PR時間)が、基準値(0.20秒)を超えて延長しているだけ。QRS波が抜けることはありません。
大きい1マスが目安になります(0.20秒)
【危険度】低い(健康な人にも見られる)
✅ Ⅱ度房室ブロック (ウェンケバッハ型 / MobitzⅠ型)
【所見】PQ時間が、だんだん長くなっていき、ついにP波の後のQRS波が1回、ポンと抜けます(脱落)。
そして、また短いPQ時間から繰り返します。
【危険度】低い
🚨 Ⅱ度房室ブロック (モビッツⅡ型 / MobitzⅡ型)
【所見】PQ時間は一定で正常範囲内なのに、突然、前触れなくQRS波が抜けます。
【危険度】高い(突然死のリスクあり)
🚨 高度房室ブロック
【所見】P波の後のQRS波が、2回に1回、あるいは3回に1回など、規則的に抜け続ける状態。(2:1、3:1ブロックなど)
【危険度】高い
🚨 Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)
【所見】心房と心室の電気的な連絡が完全に途絶。P波とQRS波が、お互いを無視して、全く無関係にバラバラのリズムで出現します。(P-P間隔は一定、QRS-QRS間隔も一定だが、両者に全く関連がない)
【危険度】非常に高い
【参考】房室ブロック分類まとめ表
分類 | PQ時間 | QRS波の脱落 | 危険度 |
---|---|---|---|
Ⅰ度 | 延長 (0.21秒以上) | なし | 低い |
Ⅱ度 (ウェンケバッハ) | 徐々に延長 | 延長後に1回脱落 | 低い |
Ⅱ度 (モビッツⅡ) | 一定 | 突然脱落 | 高い |
高度 | 一定 | 2:1, 3:1などで規則的に脱落 | 高い |
Ⅲ度 (完全) | PとQRSが無関係 | P波と無関係に出現 | 高い |
この心電図はp波とQRS波の間隔が大きい1マス以上空いており、QRS波の脱落を確認できないため「1度房室ブロック」が答えとなります。
【第70回 午前 問17】
問題:標準 12 誘導心電図を別に示す。所見はどれか。
- 右脚ブロック
- 左脚ブロック
- Ⅲ度房室ブロック
- MobitzⅡ型房室ブロック
- Wenckebach 型房室ブロック

房室ブロックについての問題です。
先ほどの解説を参考に考えてみましょう。
▼▼わからない人のために▼▼
もう少し掘り下げていかにまとめました。参考にしてください。
【国試で差がつく】ウェンケバッハ型と完全房室ブロックの見分け方
この2つには、決定的な違いがあります。
Ⅱ度 ウェンケバッハ型
P波とQRS波は
「腐れ縁」の関係!
- PQ時間がだんだん延びていく。
- ついにQRSが1回脱落する(見捨てられる)。
- でも、また次のP波からはQRSがついてくる(関係修復)。
Ⅲ度 完全房室ブロック
P波とQRS波は
「完全に他人」!
- P波はP波で、一定のリズムを刻む。
- QRS波はQRS波で、P波とは無関係に、一定の補充収縮リズムを刻む。
- お互いを完全に無視している。
- 結果として、高度な徐脈になる。
ポイントは、「QRSが抜ける前に、PQ時間が延長していく過程があるか?」です!
今回は徐々に延びていき、QRS波が脱落しているので、Wenckebach 型房室ブロックが答えとなります。
【第70回 午前 問18】
問題:ホルター心電図の誘導部位を別に示す。NASA 誘導の陽極はどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤

【ホルター心電図】NASA誘導とCM5誘導の使い分け
🚀 NASA誘導
P波が大きく見える!
=不整脈の解析に強い
- P波が明瞭に記録できる。
- 上室性期外収縮や房室ブロックなど、P波の判読が重要な不整脈の診断に非常に有利。
❤️ CM5誘導
V5誘導に類似!
=虚血性心疾患に強い
- 波形が標準12誘導のV5誘導に近い。
- ST-T変化の確認がしやすく、狭心症などの虚血性心疾患の検出に非常に有利。
今回は、電極の取り付け位置だけですので、④が答えとなります。
【第70回 午後 問16】
問題:標準 12 誘導心電図を別に示す。考えられるのはどれか。
- 高 K 血症
- 高 Ca 血症
- 高 Na 血症
- 低 K 血症
- 低 Ca 血症

【国試頻出】電解質異常による心電図変化
① 高カリウム血症 (K↑)
【最重要所見】
テント状T波が出現します!
- T波が尖る (テント状T波): 最も早期に出現する特徴的な変化。基部が狭く、左右対称に尖ります。
- 進行すると…: P波の消失、QRS幅の増大(サインカーブ状)、そして最終的には心室細動や心停止に至る、非常に危険な状態です。
② 低カリウム血症 (K↓)
【最重要所見】
巨大なU波が出現します!
- U波の増高: 平たくなったT波の後に、目立つU波が出現するのが最大の特徴です。
- ST低下、T波の平低化: T波が平たくなり、ST部分が低下します。
- QT(QU)間隔の延長: T波とU波が融合して、QT時間が延長しているように見えます。
③ 高カルシウム血症 (Ca↑)
【最重要所見】
QT間隔が短縮します!
- QT間隔の短縮: ST部分が短縮〜消失し、QRS波の直後にT波が続くように見えます。
④ 低カルシウム血症 (Ca↓)
【最重要所見】
QT間隔が延長します!
- QT間隔の延長: 高カルシウム血症とは逆に、ST部分が延長することでQT間隔が長くなります。(T波自体の幅は変わりません)
【さい流・暗記法】
「カリウム(K)はT波、カルシウム(Ca)はQT」と覚えよう!
心電図を見ると、T波の後に続く巨大なU波がみられます。
すなわち、「低カリウム血症」が答えになります。
【第70回 午後 問17】
問題:トレッドミル負荷試験で正しいのはどれか。
- 未治療の不安定狭心症は検査の適応である。
- 目標心拍数を性別、身長と体重から求める。
- 電極は安静 12 誘導心電図と同じ部位に付ける。
- 患者が下肢の疲労で運動の中止を希望したら中止する。
- 運動中止時、心電図記録を終了する。
各選択肢のポイント解説
- ❌ 1. 未治療の不安定狭心症は検査の適応である。
→ これは絶対禁忌です! 不安定狭心症は、いつ心筋梗塞を起こしてもおかしくない非常に危険な状態です。そんな患者さんに運動負荷をかけるのは、火に油を注ぐようなものです。 - ❌ 2. 目標心拍数を性別、身長と体重から求める。
→ 目標心拍数は、主に年齢から計算します。
一般的な計算式は「(220 – 年齢)× 0.85」です。身長や体重は関係ありません。 - ❌ 3. 電極は安静 12 誘導心電図と同じ部位に付ける。
→ 惜しいですが、違います。四肢電極は、運動による筋電図の混入を避けるため、手首や足首ではなく、体幹(鎖骨下や下腹部など)に装着します(Mason-Likar法)。胸部電極の位置は基本的に同じです。 - ✅ 4. 患者が下肢の疲労で運動の中止を希望したら中止する。
→ これが正解です。胸痛や著しい心電図変化だけでなく、患者さんが「もう限界です」と訴えた場合も、安全を最優先し、検査を中止する重要な基準の一つです。 - ❌ 5. 運動中止時、心電図記録を終了する。
→ むしろ逆です。運動を中止した直後(回復期)に、虚血性のST変化が最も顕著に現れることが多いため、運動終了後も数分間は心電図と血圧の監視を続ける必要があります。
【第69回 午前 問17】
問題:心電図波形を別に示す。試みるべき対処法として正しいのはどれか。
- アースの接続を確認する。
- 患者に力を抜いてもらう。
- 電動ベッドの電源を抜く。
- 電極と誘導コードの接続を確認する。
- 記録の間、患者に呼吸を止めてもらう。

【国試頻出】不随意運動によるアーチファクト(筋電図の混入)
主な原因は「寒さ」と「緊張」
患者さんの体が、無意識に震えてしまうことが主な原因です。
- 寒冷による震え: 検査室の室温が低すぎると、患者さんは寒さを感じ、体を温めようとして筋肉が細かく震えます。
- 緊張や不安による力み: 患者さんが緊張して体に力が入っていると、その筋活動がノイズとして記録されてしまいます。
対策と推奨される検査室環境
原因が分かれば、対策はシンプルです。「患者さんにリラックスしてもらえる快適な環境」を作ることが最も重要になります。
【推奨される検査室環境】
- 室温:17〜28℃の範囲に保つ。
(特に冬期は20〜22℃が望ましい) - 湿度:40〜70%の範囲に保つ。
- その他:
- 空調の風が患者さんに直接当たらないように配慮する。
- 患者さんに優しく声をかけ、リラックスを促す。
- 必要であれば、毛布などで保温する。
【国試ポイント】
不随意運動によるアーチファクトは、患者さん側の要因で発生します。基線がギザギザしていたら、まずは「室温は適切か?」「患者さんはリラックスできているか?」を考えるようにしましょう。
【第69回 午後 問17】
問題:心電図を別に示す。正しいのはどれか。
- 右脚ブロック
- 左脚ブロック
- 前壁中隔梗塞
- 房室ブロック
- 心室性期外収縮

脚ブロックの鑑別問題です。
【国試頻出】脚ブロック(RBBB / LBBB)の鑑別
【共通所見】
まず、どちらの脚ブロックにも共通する所見はこれです。
QRS幅の延長(≧ 0.12秒 / 3マス以上)
高速道路が使えず、一般道(心室筋)を電気がゆっくり伝わるため、興奮に時間がかかりQRSの幅が広くなります。
右脚ブロック (RBBB)
V1誘導で
「M字型 (rsR’パターン)」
- V1誘導:ウサギの耳のような特徴的なM字型(rsR’)波形。
- Ⅰ, V5, V6誘導:幅の広いS波。
- 臨床的意義:比較的、問題ないことが多い。
左脚ブロック (LBBB)
Ⅰ, V6誘導で
「幅広い notched R」
- Ⅰ, aVL, V5, V6誘導:Q波がなく、幅広く切れ込み(notch)のあるR波。
- V1誘導:幅広く深いS波(QSまたはrSパターン)。
- 臨床的意義:重篤な心疾患を背景に持つことが多く、予後不良の場合がある。
【国試ポイント】
「V1でM字型なら右脚ブロック」と、まずは特徴的な波形を覚えましょう!
そして、左脚ブロックの方が、臨床的に危険度が高いということも重要です。
形で覚えてしまうのが一番楽です。「左脚ブロック」が答えとなります。
【第68回 午前 問16】
問題:心電図(別冊No. 3)を別に示す。正しいのはどれか。
- 下壁梗塞
- 側壁梗塞
- 前壁中隔梗塞
- Brugada 症候群
- 四肢電極の付け間違い

【国試頻出】虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)の心電図
狭心症と心筋梗塞の「決定的な違い」
どちらも冠動脈の血流障害が原因ですが、心筋の状態が全く異なります。
狭心症
心筋は「一時的に酸欠」なだけ
血流が回復すれば、心筋は元に戻る(可逆的)。
心筋梗塞
心筋が「壊死」してしまった状態
壊死した心筋は元に戻らない(不可逆的)。
心電図所見の違い【ST変化がカギ!】
この「可逆的か、不可逆的か」の違いが、心電図所見に現れます。
- 狭心症(労作性):運動時など、心臓が頑張る時にだけ一時的な虚血が起こる。
→ ST低下が基本。発作が治まれば正常に戻る。 - 心筋梗塞(ST上昇型):冠動脈が完全に閉塞し、心筋が全層性に壊死する。
→ ST上昇と異常Q波が出現。 - 異型狭心症:冠動脈の痙攣(攣縮)で一時的に完全閉塞する。
→ 発作時にST上昇が見られるが、心筋梗塞と違い、発作が治まれば元に戻り、異常Q波は残らないのが原則。
【国試ポイント】心筋梗塞の部位診断
どの誘導でST上昇や異常Q波が見られるかで、どの冠動脈が詰まり、心臓のどの壁が壊死したかを推定できます。
梗塞部位 | ST上昇が見られる誘導 | 責任冠動脈(主なもの) |
---|---|---|
前壁中隔 | V1, V2, V3, V4 | 左前下行枝 |
側壁 | Ⅰ, aVL, V5, V6 | 左回旋枝 |
下壁 | Ⅱ, Ⅲ, aVF | 右冠動脈 |
心電図では、Ⅱ, Ⅲ, aVFにてST上昇が見られるため、「下壁梗塞」が答えとなります。
【第68回 午後 問17】
問題:四肢誘導心電図(別冊No. 3)を別に示す。正しいのはどれか。
- 右脚ブロック
- 房室ブロック
- WPW 症候群
- ペーシングリズム
- 不随意運動によるアーチファクト

【国試頻出】ペースメーカー心電図の基本モード
ペースメーカーには様々なモードがありますが、国試レベルでは、まず基本となる3つのモードの「何をしているか」を理解するのが最も効率的です。
① VVI モード
心室を見張り、サボったら叩く!
- 心室(V)の動きを監視(センス)しています。
- 自己の心拍が設定された時間内に出なければ、心室(V)を電気刺激(ペーシング)します。
- 自己の心拍が出れば、ペーシングを抑制(I)します。
- 【波形の特徴】
スパイク波の後に、幅の広いQRS波が続きます。P波とは無関係に動きます。
② VDD モード
心房の動きに合わせて、心室を叩く!
- 心房(A)の動き(P波)を監視しています。
- P波が出た後、適切なタイミング(AVディレイ)で心室(V)をペーシングします。
- 心房と心室の生理的な連動を保ちます。
- 【波形の特徴】
自己のP波の後に、一定の間隔をあけてスパイク+幅広QRS波が出現します。
③ DDD モード
心房も心室も見張り、両方叩ける万能型!
- VDDモードの機能に加え、心房(A)もペーシングできます。
- 洞不全などで自己のP波が出ない時でも、心房を刺激して心臓全体のリズムを作れます。
- 【波形の特徴】
・P波の前に心房スパイク
・QRS波の前に心室スパイク
の両方が見られることがあります。
国家試験でDDDやらVDDなどを見極める問題は今のところ見たことはないのですが、もしかしたら今後出てくるかもしれないので一応触りの部分を書いておきました。(ペースメーカーは難しすぎて正直僕はかなり苦手です)
心電図を見ると、p波の前にスパイク波が見られるので、DDDモードでペーシングされていることがわかります。「ペーシングリズム」が答えになります。
【第68回 午後 問18】
問題:ホルター心電図検査で正しいのはどれか。二つ選べ。
- 胸骨上への電極装着は避ける。
- 単極誘導が用いられる。
- NASA 誘導では CM5 誘導より P 波がみやすい。
- 記録中の ST は体位により変化しない。
- 狭心症の診断に有用である。
- 1. 胸骨上への電極装着は避ける。 → ❌
誤りです。ホルター心電図では、体動による筋電図の混入を避け、安定した波形を記録するため、むしろ筋肉の少ない胸骨上に電極を装着することが推奨されています。 - 2. 単極誘導が用いられる。 → ❌
誤りです。ホルター心電図で一般的に用いられるのは、2つの電極間の電位差を記録する双極誘導です(例:CM5誘導、NASA誘導)。 - 3. NASA 誘導では CM5 誘導より P 波がみやすい。 → ⭕️
正解です。NASA誘導はP波を明瞭に記録できるように工夫されており、不整脈の解析に優れています。 - 4. 記録中の ST は体位により変化しない。 → ❌
誤りです。ST部分は、体位の変化によっても変動します(体位性ST変化)。そのため、解析時には行動記録と照らし合わせ、体位による変化なのか、真の虚血性変化なのかを鑑別する必要があります。 - 5. 狭心症の診断に有用である。 → ⭕️
正解です。特に、夜間や早朝に冠動脈が痙攣して起こる「異型狭心症」など、病院での短い検査では捉えにくい発作時のST変化を記録できるため、非常に有用です。
【頻出の比較知識】
NASA誘導はP波(不整脈)に、CM5誘導はST変化(虚血)の検出に優れています。この目的の違いは絶対に覚えましょう!
したがって、「NASA 誘導では CM5 誘導よりP波がみやすい」と「狭心症の診断に有用である」が答えです。
【第67回 午前 問16】
問題:成人の心電図で異常値はどれか。
- P 波幅 0.10 秒
- PR 時間 0.18 秒
- QRS 幅 0.20 秒
- QTc 0.40 秒
- 電気軸 60 度
【保存版】心電図のキホン!正常値まるわかり一覧表
項目 | 正常(基準)範囲 | ポイント |
---|---|---|
P波(心房の興奮) | 高さ: <0.25mV 幅: <0.11秒 |
高すぎると右房負荷、幅が広いと左房負荷を疑う。 |
PQ(PR)時間 | 0.12~0.20秒 | 0.21秒以上でⅠ度房室ブロック。0.12秒未満でWPW症候群などを疑う。 |
QRS幅 | <0.10秒 | 0.12秒以上で脚ブロックや心室性不整脈を疑う。 |
QTc時間 | 0.36~0.44秒 | 心拍数で補正した値。延長すると致死性不整脈のリスク。 |
T波(心室の回復) | 陽性 (通常) | 高い/尖鋭化(高K血症)、平低/陰性(虚血, 低K血症)などを疑う。 |
電気軸 | -30°~ +90° | Ⅰ誘導とaVF誘導のQRSの向きで簡易的に判断できる。 |
【この問題の解説】
選択肢を見ると、「3. QRS 幅 0.20 秒」が正常範囲(0.10秒未満)を大きく逸脱しています。これは明らかな異常値であり、脚ブロックなどの重篤な伝導障害を示唆します。したがって、これが正解となります。
【第67回 午前 問17】
問題:心電図(別冊No. 2)を別に示す。正しいのはどれか。
- 右胸心
- 右軸偏位
- 側壁梗塞
- 胸部電極の付け間違い
- 四肢電極の付け間違い

さて、心電図を見ると、これといって特に以上はなさそうです。しかしよく見ると、通常陽性に波形が出ないといけない箇所が陰性化しており、逆に陰性化しなければいけない箇所が陽性化しています。
【国試の罠】四肢誘導(左右)の付け間違いを見抜く!
右手(赤)と左手(黄)を間違えた時の「4つの鉄則」
この4つが見られたら、まず付け間違いを疑え!
- Ⅰ誘導のP波が陰性化する
→ これが最も重要な所見です。Ⅰ誘導は心臓を左側から見ているため、正常ならP波は必ず陽性になります。ここが陰性なら、まず異常を疑います。 - 右軸偏位になる
→ Ⅰ誘導が陰性、aVF誘導が陽性となり、電気軸が右側に傾きます。 - aVR誘導が陽性化する
→ 通常、電気信号はaVR電極から遠ざかるため陰性になりますが、付け間違いにより陽性になります。 - 胸部誘導(V1〜V6)は変化しない
→ 付け間違いは四肢電極だけなので、胸部誘導は正常な波形を示します。
【国試で差がつく鑑別診断】
「Ⅰ誘導の陰性P波」は滅多に起こりませんが、付け間違い以外では、以下の2つの稀な病態が鑑別に挙がります。
- 右胸心: 心臓が右側にある状態。この場合、胸部誘導のR波がV1からV6にかけて徐々に低くなるという特徴があります。
- 左房調律: 洞結節ではなく、左心房から興奮が始まっている状態。
答えは、p波が陰性、aVRが陽性なので、「四肢電極のつけ間違い」になります。
【第67回 午前 問18】
問題:トレッドミル負荷試験について正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- 不安定狭心症は禁忌である。
- 目標心拍数は体重で決める。
- 誘導方法は CM5 誘導を用いる。
- 運動誘発性不整脈の診断に用いられる。
- Bruce 法では 3 分ごとに負荷量を増大させる。
負荷心電図の「禁忌」「負荷量」「測定項目」「中止基準」という、国試で問われる4大テーマがすべて詰まった良問です。
- 1. 不安定狭心症は禁忌である。 → ⭕️
正解です。いつ心筋梗塞を起こすか分からない状態の患者に運動をさせるのは非常に危険であり、絶対的な禁忌事項です。 - 2. 目標心拍数は体重で決める。 → ❌
誤りです。目標心拍数は、主に年齢から算出します(例:220 − 年齢 × 0.85)。 - 3. 誘導方法は CM5 誘導を用いる。 → ❌
誤りです。CM5誘導が使われることもありますが、一般的には標準12誘導を記録します。 - 4. 運動誘発性不整脈の診断に用いられる。 → ⭕️
正解です。虚血性変化(ST低下)だけでなく、運動時にのみ出現する不整脈を捉えるのも、この検査の重要な目的の一つです。 - 5. Bruce 法では 1 分ごとに負荷量を増大させる。 → ❌
誤りです。最も有名なプロトコルであるBruce法では、3分ごとに速度と傾斜を上げて負荷を増大させます。
したがって「不安定狭心症は禁忌である」と「運動誘発性不整脈の診断に用いられる」が答えとなります。
【第67回 午後 問16】
問題:心電図(別冊No. 2)を別に示す。正しいのはどれか。
- 右脚ブロック
- 左脚ブロック
- 急性前壁中隔梗塞
- A 型 WPW 症候群
- B 型 WPW 症候群

【国試頻出】WPW症候群
【病態】なぜ特徴的な波形になるのか?
WPW症候群の本質は、心房と心室の間に「副伝導路(ケント束)」という、正規ルートとは別の“裏道(バイパス)”が存在することです。
- 正規ルート(房室結節)は、興奮をわざとゆっくり伝えます。
- 裏道(ケント束)は、興奮を素通りさせてしまいます。
このため、心房の興奮の一部が裏道を通って、正規ルートよりもフライングして心室に到達。これが、特徴的な心電図変化を生み出します。
【心電図】覚えるべき3つの所見
- PQ時間の短縮(<0.12秒)
→ 裏道(ケント束)を通った興奮が、正規ルートより早く心室に到着するため。 - デルタ(Δ)波の出現
→ フライングした興奮が、高速道路(刺激伝導系)ではなく一般道(心室筋)をゆっくりと伝わり始めるため、QRS波の立ち上がりがなだらかになります。このなだらかな部分がデルタ波です。 - QRS幅の増大(≧0.12秒)
→ デルタ波の分だけ、QRS波の開始が早まるため、結果的に幅が広くなります。
【国試で差がつく知識】A型とB型の分類
裏道(ケント束)が心臓の左右どちらにあるかで、A型とB型に分類されます。
- A型:裏道が左心室側にある。V1誘導で、デルタ波もQRS波も上向き(陽性)。
- B型:裏道が右心室側にある。V1誘導で、デルタ波は陰性で、QRS波がrS型になる。
心電図を見て、Δ波がある!WPW症候群だ!とわかっても、そこからA型とB型の鑑別を要求する難問だと思います。上にあるようにQRS波で鑑別は可能なので、しっかり覚えてきましょう。
答えは「A型 WPW症候群」になります。
【第66回 午前 問19】
問題:心電図を別に示す。正しいのはどれか。
- 右室梗塞
- 下壁梗塞
- 後壁梗塞
- 高位側壁梗塞
- 広範前壁梗塞
心筋梗塞の部位診断は、「どの誘導で異常Q波やST-T変化が起きているか」を見つけるのが鉄則です。5ステップ読影術で見ていきましょう!
- Step1 & 2 (リズムとP波): リズムは整で、P波も正常に連動しています。
- Step3 (QRS幅): QRS幅は広くなく、脚ブロックはなさそうです。
- Step4 (ST-T変化): 明らかなST上昇はありませんが、Ⅰ, aVL, V1〜V6で異常Q波と深い陰性T波(冠性T波)が認められます。
- Step5 (部位診断): 神器②の表と照らし合わせると…
- V1〜V4の変化は「前壁中隔」
- Ⅰ, aVL, V5, V6の変化は「側壁」
を示唆します。
これらの所見から、この心電図は「前壁中隔」と「側壁」の両方にまたがる、広範囲な梗塞であることがわかります。
正解は「広範前壁梗塞」です。
【国試で差がつく知識】梗塞部位と誘導の対応表
心筋梗塞の所見は頻出です。下表は確実に覚えましょう!
梗塞部位 | ST上昇・異常Q波の見られる誘導 |
---|---|
前壁中隔 | V1~V4 |
側壁 | Ⅰ・aVL・V5・V6 |
広範囲前壁 | 前壁中隔+側壁 |
下壁 | Ⅱ・Ⅲ・aVF |
後壁 | V1・V2でR波増高 |
【第66回 午後 問17】
問題:胸部誘導心電図を別に示す。所見として正しいのはどれか。
- 洞房ブロック
- 1度房室ブロック
- ウェンケバッッハ型房室ブロック
- モビッツⅡ型房室ブロック
- Ⅲ度房室ブロック
この波形を読み解く鍵は、「P波とQRS波の関係性」に注目することです。5ステップ読影術の「Step2」をじっくり見ていきましょう。
- P波を探す:QRS波とは無関係に、一定のリズム(P-P間隔が等しい)でP波が出現しているのが分かります。T波に隠れているP波も見逃さないようにしましょう。
- QRS波を見る:QRS波も、P波とは全く別の、一定のリズム(R-R間隔が等しい)で出現しています。これは、心房からの刺激が全く伝わらないため、心室が自力で興奮している状態(補充収縮)を示します。
- 両者の関係性:P波とQRS波が、お互いを完全に無視して、それぞれが独立したリズムを刻んでいます。PQ時間はバラバラで、P波の後にQRSが続かない部分も多数あります。
以上の所見から、これは心房と心室の電気的な連絡が完全に途絶した「Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)」と判断するのが最も適切です。
(Wenckebach型やMobitzⅡ型であれば、QRS波が抜ける前に必ず先行するP波が存在し、ある程度の関連性が見られます)
【第65回 午前 問17】
問題:心電図(別冊No. 2)を別に示す。正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- 洞停止
- 心室頻拍
- 心房細動
- 洞不整脈
- 完全右脚ブロック

ここまでの解説を読んでいたら、理解できる問題かと思います。
- p波はありますか?
- QRS波の幅は?
- QRS波の形は?
【国試頻出パターン】心房細動 + 完全右脚ブロック
この心電図は、国試で頻出の2つの病態が合併しています。それぞれの特徴を分けて見ていきましょう。
① 心房細動 (Af) の所見
リズムがバラバラ!
- P波の消失:正常な心房の興奮がありません。
- R-R間隔の不整:心室への興奮伝達が不規則になります。
- 基線の揺れ (f波):心房の細かい震えが記録されます。
② 完全右脚ブロック (cRBBB) の所見
QRS波の形がおかしい!
- QRS幅の延長 (≧0.12秒):右脚を通れず、電気が遠回りするため。
- V1, V2誘導のrsR’パターン:特徴的な「ウサギの耳」のようなM字型波形。
- Ⅰ, V5, V6誘導の幅広いS波:最後に興奮する右心室からの電気が、これらの誘導から遠ざかるため。
【国試ポイント】
この2つが合併すると、心電図は「リズムはバラバラで、かつQRSの形がおかしい(幅が広いM字型)」という特徴的な波形になります。5ステップ読影術の「Step1: リズム」と「Step3: QRS幅」で、両方の異常に気づくことが重要です。
2つの所見がある心電図ですが、それぞれ典型的な波形が見られるので、さほど難しくはないと思います。
答えは、「心房細動」と「完全右脚ブロック」です。
【第65回 午前 問18】
問題:運動負荷試験で正しいのはどれか。二つ選べ。
- 重症大動脈弁狭窄症は禁忌である。
- マスターの2段階試験では年齢、性別および身長である。
- トレッドミル負荷試験は心電図と経皮的酸素飽-和度を記録する。
- 最大予測心拍は300から年齢を引いた数である。
- 運動負荷の中止徴候として持続する10mmHg以上の血圧低下がある。
運動負荷試験の「禁忌」「負荷量」「測定項目」「中止基準」に関する、幅広い知識を問う良問です。
- 1. 重症大動脈弁狭窄症は禁忌である。 → ⭕️
正解です。重症ASの患者に運動負荷をかけると、失神や突然死のリスクが非常に高いため、絶対禁忌とされています。不安定狭心症や急性心筋梗塞も同様です。 - 2. マスターの2段階試験では年齢、性別および身長である。 → ❌
誤りです。Master試験の負荷量は、年齢、性別、体重で決まります。「身長」は、呼吸機能検査の予測肺活量の計算で使うひっかけ選択肢として頻出です。 - 3. トレッドミル負荷試験は心電図と経皮的酸素飽和度を記録する。 → ❌
誤りです。主に記録するのは心電図と血圧です。SpO2を同時にモニタリングすることもありますが、必須項目ではありません。 - 4. 最大予測心拍は300から年齢を引いた数である。 → ❌
誤りです。最大予測心拍数の簡易計算式は「220 − 年齢」です。 - 5. 運動負荷の中止徴候として持続する10mmHg以上の血圧低下がある。 → ⭕️
正解です。運動中に血圧が上がらず、むしろ低下するのは、心臓が負荷に耐えられていない危険なサインであり、絶対的な中止基準となります。
したがって「重症大動脈弁狭窄症は禁忌である」と「運動負荷の中止徴候として持続する10mmHg以上の血圧低下がある」が正しいです。
【第65回 午後 問16】
問題:心電図の波形とその成り立ちの組合せで正しいのはどれか。
- P 波 心房の再分極
- QRS 波 心房の脱分極
- T 波 心室の再分極
- PR 時間 洞房伝導時間
- QT 時間 電気的拡張時間
心電図の波形が、心臓のどの電気的イベントを反映しているかを問う、基本中の基本にして最重要の問題です。ここでつまずくと、この先の読影はできません。
- 1. P 波 → ❌ 心房の脱分極(興奮)
心房の「再分極」は、その直後のQRS波という巨大な波に隠れてしまい、体表面の心電図では通常観察できません。 - 2. QRS 波 → ❌ 心室の脱分極(興奮)
心臓の電気活動で最もパワフルなイベントです。「心房の脱分極」はP波です。 - 3. T 波 → ⭕️ 心室の再分極(興奮からの回復)
これが正解です。心室が次の興奮に備えて、電気的にクールダウンしている状態を反映します。 - 4. PR 時間 → ❌ 房室伝導時間
「洞房伝導」は洞結節から心房への伝導で、P波の中に含まれます。PR時間は、心房の興奮が始まってから、心室の興奮が始まるまでの時間、つまり房室結節を電気が通過する時間です。 - 5. QT 時間 → ❌ 心室の電気的収縮時間
心室の興奮開始(脱分極)から興奮終了(再分極)までの時間を反映します。これは心室筋の活動電位持続時間とほぼ等しいとされています。
したがって正解は「T 波 ー 心室の再分極」となります。
【第65回 午後 問17】
問題:心電図を別に示す。梗塞部位はどれか。
- 前 壁
- 前壁中隔
- 側 壁
- 下 壁
- 後 壁

心筋梗塞の部位診断、これは国試で最も問われる心電図読影スキルの一つです!5ステップ読影術の「Step4」と「Step5」が試されます。
今回の心電図では、Ⅰ誘導とaVL誘導で明らかなST上昇が認められます。この2つの誘導は、心臓の「側壁」を見ています。
【暗記必須】ST上昇と梗塞部位の対応表
梗塞部位 | ST上昇が見られる主な誘導 |
---|---|
前壁中隔 | V1, V2, V3, V4 |
側壁 | Ⅰ, aVL, V5, V6 |
下壁 | Ⅱ, Ⅲ, aVF |
後壁 | V1, V2のST低下 (鏡面像) |
この表に当てはめると、Ⅰ誘導・aVL誘導でのST上昇は「側壁梗塞」を示唆します。したがって、正解は3となります。
【第65回 午後 問18】
問題:ホルター心電図検査で正しいのはどれか。二つ選べ。
- 胸骨上への電極装着は避ける。
- 単極誘導が用いられる。
- NASA 誘導では CM5 誘導より P 波がみやすい。
- 記録中の ST は体位により変化しない。
- 狭心症の診断に有用である。
24時間心電図であるホルター心電図の「目的」と「特徴」について、幅広い知識が問われる良問です。
- 1. 胸骨上への電極装着は避ける。 → ❌
誤りです。ホルター心電図でよく用いられるNASA誘導やCM5誘導では、安定した波形を得るために、むしろ胸骨上に電極を装着します。 - 2. 単極誘導が用いられる。 → ❌
誤りです。ホルター心電図で用いられるのは、2つの電極間の電位差を記録する双極誘導です。 - 3. NASA 誘導では CM5 誘導より P 波がみやすい。 → ⭕️
正解です。P波を明瞭に記録できるNASA誘導は不整脈の解析に、V5に類似しST変化を捉えやすいCM5誘導は虚血の評価に優れています。この目的の違いは超頻出です! - 4. 記録中の ST は体位により変化しない。 → ❌
誤りです。ST部分は、体位の変化によっても変動します。そのため、解析時には行動記録と照らし合わせ、体位による変化なのか、真の虚血性変化なのかを鑑別する必要があります。 - 5. 狭心症の診断に有用である。 → ⭕️
正解です。特に、夜間や早朝に冠動脈が痙攣して起こる「異型狭心症」など、病院での短い検査では捉えにくい狭心症発作時のST変化を記録できるため、非常に有用です。
したがって答えは、 「NASA 誘導では CM5 誘導より P 波がみやすい」と「狭心症の診断に有用である」です。
まとめ:心電図は「ルール」で解くパズルだ!
心電図は、一見すると複雑な暗号のようです。しかし、この記事で解説した「ルール」さえ身につければ、それは必ず解ける論理的なパズルに変わります。
- 3つの神器(PQRST, 12誘導, 電極位置)を完璧にする。
- どんな問題も、焦らず「さい流・5ステップ読影術」で体系的に解く。
- 過去問演習を繰り返し、実践的な読影力を身につける。
この3つを実践すれば、心電図はあなたの「最強の得点源」になります。自信を持って、国試に臨んでください!
🧭勉強の「羅針盤」は持っていますか?
このテーマの学習も重要ですが、国試合格への最短ルートは「出るところから順番に」勉強することです。
まずは、過去7年分・1400問の全データを分析して導き出した「出る順ランキングTOP30」で、あなたの学習計画の軸を固めましょう!