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臨床検査技師 国家試験 第71回解説(PM1〜100)

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問題集を解いて答え合わせしている時に以下のような思いをしたことはありませんか?

  • 解説しょぼすぎて訳わからん!
  • 教科書要点まとまってなさすぎ!
  • 調べるのだるい

この解説記事は、こういった悩みを少しでも解消できたらと思い作成しています。

問題は厚労省ホームページより引用しております。https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp250428-07.html

なるべく間違いのないように何度も見直しをしていますが、もし間違いがあった場合は連絡フォームより教えていただくか、X のDMにて教えていただけますと幸いです。

今回は単元ごとに分けずにまとめて作成してみました。70回までの単元ごとの方が良かった場合はそちらも教えていただけると今後の参考になります。

Table of Contents

第71回(PM)臨床検査総論(1〜10)

1 尿沈渣無染色標本(別冊No. 1A)とSternheimer染色標本(別冊No. 1B)を別に示す。この構造物はどれか。

  1. 硝子円柱
  2. 脂肪円柱
  3. 赤血球円柱
  4. ろう様円柱
  5. フィブリン円柱

この問題は、尿沈渣中に見られる円柱の種類を、無染色標本とSternheimer染色標本の両方の画像から正しく同定する能力を問う問題です。

2つの画像を見ていきましょう。

  • 形状: 円筒状で、長辺がほぼ平行、両端は丸みを帯びています。これは尿沈渣成分の「円柱」に共通する基本的な形態です。

  • 基質の性状:

    • 無染色標本(A): 基質は無色透明で、光沢は弱く、内部構造はほとんど見えません。輪郭はやや不明瞭です。

    • Sternheimer染色標本(B): 基質は淡い青紫色に染まっています。

  • 封入物: 無染色、染色標本のいずれにおいても、基質内に赤血球、白血球、脂肪滴、顆粒などの明らかな有形成分は封入されていません

これらの所見、すなわち「透明な基質のみからなり、内部に細胞成分などを含まない」という特徴は、硝子円柱の典型的な定義と完全に一致します。

硝子円柱は、Tamm-Horsfallムコタンパクという基質のみで構成されており、健常人でも運動後や脱水時などに一過性に見られることがあります。

各選択肢を見ていきます。

  • 脂肪円柱: ガラス円柱の内部に脂肪顆粒が1/3以上、もしくは卵円形脂肪体1個以上が封入されている。(卵円形脂肪体は脂肪顆粒が3個以上入っているため)
    ネフローゼ症候群などで見られる。偏光顕微鏡でマルタ十字が見られることもある。

  • 赤血球円柱: ガラス円柱の内部に3個以上の赤血球を含み、糸球体腎炎(特にIgA腎症)などで見られる。糸球体からの出血を示唆します。

  • ろう様円柱: 均質で蝋(ろう)のような鈍い光沢を持ち、輪郭が明瞭で、しばしば切れ込みやひび割れが見られます。ネフローゼ症候群や慢性腎不全など、重篤な腎疾患で見られます。

  • フィブリン円柱: 内部に三分の一以上のフィブリンを含み、やや不均一に見えます。糖尿病性腎症などで見られます。

主な尿円柱の種類とその特徴を以下にまとめます。

★主な尿円柱の特徴

円柱の種類 主な特徴 臨床的意義
硝子円柱 無色透明、内部に封入物なし 健常人でも出現、腎疾患でも増加
赤血球円柱 内部に3個以上の赤血球を封入 糸球体腎炎など
白血球円柱 内部に3個以上の白血球を封入 腎盂腎炎、間質性腎炎など
脂肪円柱 内部に脂肪顆粒が3個以上、もしくは卵円形脂肪体1個以上を封入(マルタ十字 ネフローゼ症候群
ろう様円柱 蝋様の光沢、明瞭な輪郭、切れ込み 慢性腎不全など重篤な腎疾患

答え:1

2 滲出液と比較して漏出液で高値を示すのはどれか。

  1. LD
  2. 蛋 白
  3. 比 重
  4. 細胞数
  5. グルコース

この問題は、胸水や腹水などの体腔液の性状を鑑別する上で基本となる「漏出液」「滲出液」の違いを正しく理解しているかを問う問題です。

それぞれの液が生成されるメカニズムの違いを把握し、それがタンパク質濃度、細胞数、比重、LD、グルコースといった検査項目にどのように反映されるかを判断することです。

★漏出液と滲出液の定義とメカニズム

  • 漏出液 (Transudate):
    心不全や肝硬変、ネフローゼ症候群といった全身性の非炎症性疾患が原因です。血管内の圧力(静水圧)が上昇したり、血漿の膠質浸透圧が低下したりすることで、血管から水分が漏れ出て溜まった液体です。血管の壁の透過性は正常なため、タンパク質や細胞などの大きな成分はほとんど含まれません。

  • 滲出液 (Exudate):
    肺炎、がん、結核といった局所的な炎症性疾患が原因です。炎症によって血管の壁の透過性が亢進し、血液中のタンパク質や白血球などの成分が血管外に染み出して溜まった液体です。

選択肢を見ていきます。

  • LD (乳酸脱水素酵素):
    炎症や細胞破壊があると細胞内から放出されるため、滲出液で高値を示します。

  • 蛋白:
    血管透過性の亢進により、血漿中のアルブミンなどのタンパク質が血管外に漏出するため、滲出液で高値を示します。これは鑑別の最も基本的な指標です。

  • 比重:
    液体に含まれる成分(タンパク質、細胞など)が多いほど比重は高くなります。したがって、滲出液で高値を示します。

  • 細胞数:
    炎症により白血球が集まったり、がん細胞が存在したりするため、滲出液で高値を示します。

  • グルコース:
    これが正解です。
    漏出液のグルコース濃度は、血液中の濃度とほぼ同じです。
    滲出液では、炎症細胞(白血球)、細菌、がん細胞などがエネルギー源としてグルコースを消費するため、その濃度は低下することがあります。
    したがって、滲出液と比較した場合、相対的に漏出液の方が高値を示すことになります。

漏出液と滲出液の主な検査所見の違いを以下にまとめます。

★漏出液と滲出液の鑑別

検査項目 漏出液 滲出液
グルコース 血漿値に近い(相対的に高値 低下することがある
蛋白 低い 高い
LD 低い 高い
比重 低い (≦ 1.015) 高い (≧ 1.018)
細胞数 少ない 多い

【参考】胸水の鑑別におけるLightの基準

以下の3項目のうち、1つでも満たせば「滲出液」と判断されます。1つも満たさなければ「漏出液」です。

項目 滲出液と判断する基準
① 胸水/血清 蛋白比 > 0.5
② 胸水/血清 LD比 > 0.6
③ 胸水LD値 血清LD正常値上限の 2/3 を超える
さい
さい
漏出液はサラサラなイメージ、滲出液はドロドロのイメージです。

答え:5

3 X連鎖潜性(劣性)遺伝形式をとる疾患はどれか。

  1. 血友病A
  2. 糖原病Ⅰ型
  3. Marfan症候群
  4. 遺伝性球状赤血球症
  5. フェニルケトン尿症

この問題は、遺伝性疾患における主要な遺伝形式を正しく理解しているかを問う問題です。

常染色体顕性(優性)常染色体潜性(劣性)、そしてX連鎖潜性(劣性)という3つの基本的な遺伝形式の違いを把握し、各選択肢の疾患がどれに分類されるかを正確に特定することです。特に、X連鎖潜性遺伝の特徴である主に男性に発症する」という点を覚えておくことが重要です。

★X連鎖潜性(劣性)遺伝とは

X連鎖潜性遺伝は、原因となる遺伝子が性染色体であるX染色体上にあり、その形質が潜性(劣性)として遺伝する形式です。

  • 男性 (XY): X染色体を1本しか持たないため、そのX染色体上の遺伝子に変異があると必ず発症します。

  • 女性 (XX): X染色体を2本持つため、片方のX染色体に変異があっても、もう片方の正常な遺伝子が機能を補うため、通常は発症せず保因者となります。

このため、X連鎖潜性遺伝疾患は、母から息子へと遺伝し、主に男性に発症するという特徴があります。

選択肢における各疾患の遺伝形式を見ていきます。

  • 血友病A:
    これは正解です。血友病Aは、血液凝固第VIII因子の遺伝子異常によって引き起こされます。この遺伝子はX染色体上にあるため、X連鎖潜性(劣性)遺伝の代表的な疾患です。

  • 糖原病Ⅰ型:
    グルコース-6-ホスファターゼの欠損による疾患で、常染色体潜性(劣性)遺伝形式をとります。

  • Marfan症候群:
    結合組織の異常をきたす疾患で、常染色体顕性(優性)遺伝形式をとります。

  • 遺伝性球状赤血球症:
    赤血球膜の異常による溶血性貧血で、多くは常染色体顕性(優性)遺伝形式をとります。(一部、潜性遺伝の家系もあります)

  • フェニルケトン尿症:
    アミノ酸代謝異常症の一つで、常染色体潜性(劣性)遺伝形式をとります。

主な遺伝形式と、それぞれの代表的な疾患を以下にまとめます。

★主な遺伝形式と代表疾患

遺伝形式 主な代表疾患
X連鎖潜性(劣性)遺伝 血友病A・B、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、G6PD欠損症
常染色体顕性(優性)遺伝 Marfan症候群、遺伝性球状赤血球症、ハンチントン病
常染色体潜性(劣性)遺伝 糖原病Ⅰ型、フェニルケトン尿症、Wilson病

したがって、X連鎖潜性(劣性)遺伝形式をとる疾患は、血友病A です。

答え:1

4 血尿をきたすのはどれか。

  1. 広東住血線虫
  2. 東洋毛様線虫
  3. 日本住血吸虫
  4. Manson(マンソン)住血吸虫
  5. Bilharz(ビルハルツ)住血吸虫

この問題は、主要な寄生虫疾患とその特徴的な臨床症状を正しく結びつけられるかを問う問題です。

各種の住血吸虫が、種によってヒトの体内の好んで寄生する血管の場所(最終寄生部位)が異なり、それによって虫卵が排出される経路と引き起こす症状が異なるという点を理解しておきましょう。

★住血吸虫症の病態

住血吸虫は、皮膚から体内に侵入し、血流に乗って特定の静脈に寄生する吸虫です。問題となるのは、成虫が産んだ虫卵が組織内に沈着し、炎症や肉芽腫形成を引き起こすことです。

各選択肢の寄生虫と主症状を見ていきます。

  • 広東住血線虫:
    カタツムリなどを介して経口感染する線虫です。ヒトの体内では中枢神経系に迷入し、好酸球性髄膜炎を引き起こします。激しい頭痛が主症状であり、血尿はきたしません。

  • 東洋毛様線虫:
    主に小腸に寄生する線虫で、下痢や腹痛などの消化器症状が中心です。

  • 日本住血吸虫 (Schistosoma japonicum):
    成虫は門脈系、特に上腸間膜静脈(小腸の静脈)に寄生します。虫卵が肝臓や腸壁に運ばれて塞栓を起こすため、血便、肝脾腫、腹水などが主症状となります。血尿はきたしません。

  • Manson(マンソン)住血吸虫 (Schistosoma mansoni):
    日本住血吸虫と同様に門脈系、特に下腸間膜静脈(大腸の静脈)に寄生します。そのため、症状も類似しており、血便や肝脾腫が主となります。血尿はきたしません。

  • Bilharz(ビルハルツ)住血吸虫 (Schistosoma haematobium):
    これが正解です。他の住血吸虫と異なり、成虫はヒトの膀胱周囲の静脈叢に好んで寄生します。そこで産卵された虫卵が膀胱の組織壁を通過して尿中に排出される際、粘膜を傷つけるため、血尿(特に排尿終末時血尿)が極めて特徴的な症状となります。慢性化すると膀胱癌のリスクを高めます。

主要な3種の住血吸虫の特徴を比較し、以下にまとめます。

★住血吸虫3種の比較

項目 Bilharz(ビルハルツ)住血吸虫 日本住血吸虫 Manson(マンソン)住血吸虫
主な寄生部位 膀胱静脈叢 門脈(主に上腸間膜静脈) 門脈(主に下腸間膜静脈)
特徴的な症状 血尿 血便、肝脾腫、腹水 血便、肝脾腫
虫卵の形態 頂棘(卵の先端にトゲ) 側方の微棘 側棘(側面に大きいトゲ)

答え:5

5 衛生動物と疾患の組合せで誤っているのはどれか。

  1. ノ ミ   ペスト
  2. ブ ユ   疥 癬
  3. キチマダニ   野兎病
  4. コロモジラミ   回帰熱
  5. コナヒョウダニ   アトピー性皮膚炎

この問題は、医学的に重要な衛生動物(昆虫やダニなど)が、どのような疾患を媒介(ベクター)するのか、あるいは原因(アレルゲンなど)となるのかについて、その組み合わせの正誤を問う問題です。

選択肢の衛生動物と疾患の組み合わせを見ていきます。

  • ノミ ― ペスト:
    これは正しい組合せです。ペスト菌を持つネズミなどのげっ歯類から吸血したケオプスネズミノミが、次にヒトを吸血することでペストを媒介します。これは歴史的にも有名な感染経路です。

  • ブユ ― 疥癬:
    これは誤っています。
    ・ブユ(ブヨ)は、吸血性の昆虫で、刺されると強い痛み、腫れ、痒みなどの皮膚炎を引き起こしますが、特定の感染症を媒介することは稀です(日本ではオンコセルカ症の媒介は知られていません)。
    ・一方、疥癬(かいせん)は、ヒゼンダニという微小なダニが、ヒトの皮膚の角質層にトンネルを掘って寄生することによって引き起こされる皮膚感染症です。激しい痒みが特徴です。

  • キチマダニ ― 野兎病:
    これは正しい組合せです。野兎病(やとびょう)は、野ウサギなどの野生動物を保菌動物とする細菌感染症です。保菌動物から吸血したマダニ類に咬まれることでヒトに感染します。

  • コロモジラミ ― 回帰熱:
    これは正しい組合せです。シラミが媒介する回帰熱(流行性回帰熱)は、ボレリア属のスピロヘータによる感染症です。コロモジラミを潰した際に、その体液が皮膚の傷口などから入ることで感染します。

  • コナヒョウダニ ― アトピー性皮膚炎:
    これは正しい組合せです。コナヒョウダニヤケヒョウヒダニといったチリダニ類の死骸やフンは、強力なアレルゲン(アレルギーの原因物質)となります。これらを吸入したり、皮膚に接触したりすることが、気管支喘息やアレルギー性鼻炎、そしてアトピー性皮膚炎の増悪因子となることが知られています。

衛生動物と疾患の組み合わせも頻出です。下にまとめましたので、参考にしてください。

★主な衛生動物と関連疾患

衛生動物 関連する主な疾患 役割
ノミ(ケオプスネズミノミ) ペスト 媒介
マダニ類 野兎病、日本紅斑熱、SFTS 媒介
コロモジラミ 回帰熱、発しんチフス 媒介
ヒョウヒダニ類 アトピー性皮膚炎、気管支喘息 アレルゲン
ヒゼンダニ 疥癬 病原体そのもの

したがって、ブユー疥癬が誤っているので、回答となります。

答え:2

6 Kinyoun(キニヨン)抗酸染色が用いられるのはどれか。

  1. マラリア
  2. トリパノソーマ
  3. リーシュマニア
  4. ミクロフィラリア
  5. クリプトスポリジウム

この問題は、各種の寄生虫に適した染色法についての知識を問う問題です。

チール・ネールゼン法の変法であるKinyoun(キニヨン)染色が、抗酸性という特殊な性質を持つ特定の微生物、特に原虫のオーシストの検出に用いられることを理解しているかが重要です。

血液・組織寄生虫の標準的な染色法であるギムザ染色との違いを明確に区別することが重要です。

★Kinyoun(キニヨン)抗酸染色とは

Kinyoun染色は、抗酸菌(結核菌など)の染色に用いられるチール・ネールゼン染色法の変法で、加熱操作を必要としない冷染色法です。細胞壁などが酸アルコールによる脱色に抵抗性を示す「抗酸性」を持つ微生物を、赤く染め出します。

各選択肢の寄生虫と染色法を見ていきます。

  • マラリア / トリパノソーマ / リーシュマニア / ミクロフィラリア:
    これらはすべて、血液塗抹標本や組織標本を用いて診断される血液・組織寄生虫です。これらの原虫や虫体の形態を詳細に観察するためには、ギムザ染色が標準的な方法として用いられます。これらの寄生虫は抗酸性を持たないため、Kinyoun染色の対象とはなりません。

  • クリプトスポリジウム:
    これが正解です。クリプトスポリジウムは、主に糞便中に排出されるオーシスト(接合子嚢)の形で感染環を形成します。このオーシストの壁は、抗酸性を示すという重要な特徴を持っています。そのため、糞便塗抹標本をKinyoun染色すると、背景が青~緑色に染まる中、オーシストが鮮やかな赤色に染め出され、容易に検出することができます。

主な寄生虫とその代表的な染色法を以下にまとめます。

★主な寄生虫と代表的な染色法

微生物(寄生虫) 主な検査材料 代表的な染色法
クリプトスポリジウム 糞便 Kinyoun染色(抗酸染色)
マラリア原虫 血液 ギムザ染色
トリパノソーマ 血液、髄液 ギムザ染色
リーシュマニア 組織、骨髄 ギムザ染色
ミクロフィラリア 血液 ギムザ染色

以上のことから、Kinyoun抗酸染色はクリプトスポリジウムのオーシストの同定に用いられます。

答え:5

7 臨床検査の一次分類とそれに含まれる二次分類の組合せで正しいのはどれか。

  1. 生化学的検査   細胞性免疫検査
  2. 尿・糞便等一般検査   寄生虫検査
  3. 微生物学的検査   病原体核酸検査
  4. 病理学的検査   体細胞遺伝子検査
  5. 免疫学的検査   免疫組織化学検査

この問題は、日本の臨床検査における公式な一次分類(大分類)と、それに含まれる二次分類(小分類)の正しい組み合わせを理解しているかを問う問題です。

免疫化学検査や免疫組織化学検査など、名称が似ていて紛らわしい項目を正しく区別することが重要になります。

各選択肢の正誤を見ていきましょう。

  • 生化学的検査 ― 細胞性免疫検査:
    これは誤りです。「細胞性免疫検査」は、「免疫学的検査」の二次分類に含まれます。「生化学的検査」の二次分類には、生化学検査、免疫化学検査、血中薬物濃度検査などがあります。

  • 尿・糞便等一般検査 ― 寄生虫検査:
    これは正しい組合せです。「寄生虫検査」は、「尿・糞便等一般検査」の二次分類に正しく含まれています。

  • 微生物学的検査 ― 病原体核酸検査:
    これは誤りです。「病原体核酸検査」は、「遺伝子関連・染色体検査」の二次分類に含まれます。「微生物学的検査」の二次分類には、細菌培養同定検査や薬剤感受性検査などがあります。

  • 病理学的検査 ― 体細胞遺伝子検査:
    これは誤りです。「体細胞遺伝子検査」は、「遺伝子関連・染色体検査」の二次分類に含まれます。「病理学的検査」の二次分類には、病理組織検査や細胞検査などがあります。

  • 免疫学的検査 ― 免疫組織化学検査:
    これは誤りです。「免疫組織化学検査」は、「病理学的検査」の二次分類に含まれます。「免疫学的検査」の二次分類には、免疫血液学検査や免疫血清学検査などがあります

検体検査の公式な分類を以下にまとめます。

★検体検査の分類

一次分類 二次分類
尿・糞便等一般検査 尿・糞便等検査、寄生虫検査
血液学的検査 血球算定・血液細胞形態検査、血栓・止血関連検査
生化学的検査 生化学検査、免疫化学検査、血中薬物濃度検査
免疫学的検査 免疫血液学検査、免疫血清学検査、細胞性免疫検査
微生物学的検査 細菌培養同定検査、薬剤感受性検査
病理学的検査 病理組織検査、免疫組織化学検査、細胞検査
遺伝子関連・染色体検査 病原体核酸検査体細胞遺伝子検査、染色体検査

答え:2

8 疾患と予防策の組合せで適切なのはどれか。

  1. 疥 癬  患者の陰圧個室隔離
  2. 水 痘  医療従事者のN95マスク着用
  3. 梅 毒  医療従事者のフェイスシールド着用
  4. 肺結核  患者のカーテン隔離
  5. マイコプラズマ肺炎  医療従事者のワクチン接種

この問題は、各疾患の主要な感染経路を正しく理解し、それに応じた適切な感染経路別予防策(接触、飛沫、空気)を選択できるかを問う問題です。

ポイント空気感染する代表的な疾患を特定し、それに対して医療従事者が自身を守るために必要となる特殊な装備(N95マスク)を正しくつけることです。

★感染経路別予防策の基本

感染症の伝播を防ぐため、標準予防策(スタンダードプリコーション)に加えて、感染経路に応じて以下の予防策が追加されます。

  • 接触予防策: MRSA疥癬など、直接・間接的な接触で感染する場合に適用。手袋やガウンの着用が基本。

  • 飛沫予防策: インフルエンザなど、咳やくしゃみによる飛沫(5μmより大きい粒子)で感染する場合に適用。サージカルマスクの着用が基本。

  • 空気予防策: 結核水痘麻疹など、空気中を長時間浮遊する飛沫核(5μm以下の粒子)で感染する場合に適用。患者の陰圧個室隔離と、医療従事者のN95マスク着用が必須。

各選択肢を見ていきます。

  • 疥癬 ― 患者の陰圧個室隔離:
    疥癬はヒゼンダニによる接触感染です。予防には接触予防策(手袋、ガウンの着用)が基本となります。空気感染はしないため、陰圧個室は不要です。したがって、この組合せは不適切です。

  • 水痘 ― 医療従事者のN95マスク着用:
    これは正しい組合せです。水痘(みずぼうそう)は空気感染する代表的な疾患です。感染性を持つ微粒子(飛沫核)を吸い込まないようにするため、医療従事者は「N95マスク」を着用する必要があります。

  • 梅毒 ― 医療従事者のフェイスシールド着用:
    梅毒は主に性行為や血液・体液を介した接触感染です。フェイスシールドは、血液・体液の飛散が予想される処置で標準予防策の一環として着用しますが、梅毒患者の診療で常に必須となる特定の予防策ではありません。したがって、この組合せは不適切です。

  • 肺結核 ― 患者のカーテン隔離:
    活動性の肺結核は空気感染の代表的な疾患です。水痘と同様に空気予防策が必要であり、患者は陰圧個室に隔離しなければなりません。カーテンによる隔離は飛沫感染対策であり、空気感染には全く効果がありません。したがって、この組合せは不適切です。

  • マイコプラズマ肺炎 ― 医療従事者のワクチン接種:
    マイコプラズマ肺炎は飛沫感染が主たる感染経路であり、予防には飛沫予防策(サージカルマスクの着用など)が適用されます。現在、マイコプラズマ肺炎に対する実用的なワクチンはないため、この予防策は適切ではありません。

主な感染経路とその代表的な疾患、必要な予防策を以下にまとめます。

★感染経路別予防策の基本

感染経路 代表的な疾患 必要な予防策(主なもの)
空気感染 水痘、肺結核、麻疹 陰圧個室、医療従事者のN95マスク着用
飛沫感染 インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、風疹 個室またはベッド間隔確保、サージカルマスク
接触感染 疥癬、MRSA、VRE 個室またはコホーティング、手袋、ガウン

答え:2

9 染色法と濃染する部位の組合せで正しいのはどれか。

  1. C分染法  - ユークロマチン
  2. G分染法  - GC塩基
  3. NOR分染法  - テロメア
  4. Q分染法  - AT塩基
  5. 姉妹染色体分染法 -  ヘテロクロマチン

この問題は、染色体検査で用いられる各種の分染法について、それぞれの方法で濃く染色される(あるいは強い蛍光を発する)染色体領域の特性を正しく理解しているかを問う問題です。

各分染法(G, Q, R, C, NOR)が、染色体のどのような化学的性質(AT/GC塩基対の豊富さ)や特定の構造(ヘテロクロマチン、仁形成域)をターゲットにしているかを正確に覚えているかが重要です。

★染色体分染法とは

染色体を均一に染めるだけでなく、染色体長軸に沿って濃淡のバンド(縞模様)を染め分ける技術です。これにより、各染色体の同定や、微細な構造異常の検出が可能になります。

各選択肢の組合せの検討をしていきます。

  • C分染法 ― ユークロマチン:
    これは誤りです。C分染法は、動原体(セントロメア)領域などに存在する構成的ヘテロクロマチンを特異的に濃染する方法です。遺伝子が多く転写が活発なユークロマチンは淡く染まります。

  • G分染法 ― GC塩基:
    これは誤りです。G分染法は、臨床で最も一般的に用いられる方法で、トリプシン処理後にギムザ染色を行うと、AT塩基対に富む領域が濃染帯(Gバンド)として現れます。GC塩基対に富む領域は淡染帯となります。

  • NOR分染法 ― テロメア:
    これは誤りです。NOR分染法は、硝酸銀を用いて仁形成域(NOR)を特異的に黒く染め出す方法です。NORは13, 14, 15, 21, 22番染色体の短腕末端に存在します。テロメアは染色体全体の末端構造を指し、NORとは異なります。

  • Q分染法 ― AT塩基:
    これは正しい組合せです。Q分染法は、蛍光色素であるキナクリンマスタードを用います。AT塩基対に富む領域はキナクリンと強く結合し、紫外線下で強い蛍光を発します。この強い蛍光バンド(Qバンド)は、G分染法の濃染帯(Gバンド)とほぼ一致します。

  • 姉妹染色体分染法 ― ヘテロクロマチン:
    これは誤りです。姉妹染色体分染法(SCE)は、DNA複製の際に起こる姉妹染色分体間の乗り換えを検出する方法であり、特定のクロマチン構造を濃染する目的の染色法ではありません。

※主要な染色体分染法と、その染色特性を以下にまとめます。

GとQはATリッチ」「RはGCリッチ」「Cはセントロメアのヘテロクロマチン」「NORは仁形成域というキーワードで覚えるのが効果的です。

★主要な染色体分染法の特徴

染色法 濃染・強蛍光部位の特性 主な目的
Q分染法 AT塩基対リッチ領域 G分染法の補助、Y染色体の同定
G分染法 AT塩基対リッチ領域 染色体の同定、構造異常の検出
R分染法 GC塩基対リッチ領域(Gバンドの逆) 末端部の異常検出
C分染法 構成的ヘテロクロマチン(セントロメア 異数性や構造異常の補助診断
NOR分染法 仁形成域(NOR) マーカー染色体の同定など

答え:4

第71回(PM)臨床検査医学総論(10〜15)

10 標準予防策で感染性を考慮しないのはどれか。

  1. 尿
  2. 髄 液
  3. 精 液
  4. 唾 液

この問題は、医療現場における感染対策の基本である標準予防策(スタンダードプリコーション)の対象となる体液・排泄物を正しく理解しているかを問う問題です。

ポイントは、標準予防策が汗を除く、すべての血液、体液、分泌物、排泄物は感染性のあるものとして扱う」という大原則に基づいていることを知っているかどうかです。

標準予防策の原則に基づき、各選択肢が感染性を考慮する対象であるかを確認します。

  • :
    これが正解です。標準予防策の定義において、汗は唯一の例外として「感染性を考慮しない」とされています(ただし、血液などで汚染されている場合は除く)。これは、汗が血液由来の病原体を伝播させる媒体とはならないと考えられているためです。

  • 尿:
    「排泄物」に分類され、感染性があるものとして扱います。

  • 髄液:
    「体液」に分類され、感染性があるものとして扱います。

  • 精液:
    「分泌物」に分類され、感染性があるものとして扱います。

  • 唾液:
    「分泌物」に分類され、感染性があるものとして扱います。

標準予防策(スタンダードプリコーション)の対象を以下にまとめます。

★標準予防策の対象

対象となるもの(感染性を考慮する) 対象とならないもの(感染性を考慮しない)
・血液
・すべての体液(髄液、胸水、腹水など)
・分泌物(唾液、喀痰、精液など)
・排泄物(尿、便)
・損傷のある皮膚
・粘膜

答え:1

11 ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌判定に用いられるのはどれか。

  1. 血液培養検査
  2. 消化管造影
  3. 尿素呼気試験
  4. 尿培養検査
  5. 便培養検査

この問題は、ヘリコバクター・ピロリの検査法の中でも、特に「除菌判定という目的に適したものを選択できるかを問う問題です。

ポイントは、除菌判定のためには現在、生きた菌が存在し、活動しているか」を調べる必要があるということです。

★へリコバクター・ピロリの除菌判定

除菌治療が成功したかどうかを判定するためには、治療後に胃の中に活動しているピロリ菌が残っていないことを確認する必要があります。したがって、検査法は「現在、生きた菌が存在するか」を高い精度で判定できるものでなければなりません。

各選択肢を見ていきます。

  • 血液培養検査:
    血液中の細菌を検出する検査です。ヘリコバクター・ピロリは胃の粘膜に局在して感染するため、血流中に現れることはなく、この検査の対象にはなりません。

  • 消化管造影:
    バリウムなどを用いて胃や十二指腸の形態(潰瘍や癌など)を調べるX線検査です。ピロリ菌感染によって引き起こされた病変を見ることはできますが、菌そのものの存在を直接確認することはできません。

  • 尿素呼気試験 (Urea Breath Test: UBT):
    これが正解です。この検査は、ピロリ菌が持つ強力なウレアーゼという酵素の活性を利用します。

    1. ¹³Cで標識した尿素の薬剤を服用します。

    2. 胃内にピロリ菌がいれば、ウレアーゼによって尿素がアンモニアと二酸化炭素(¹³CO₂)に分解されます。

    3. この標識された¹³CO₂が吸収され、呼気として排出される量を測定します。
      この検査は、現在活動している生きた菌の存在を非常に高い精度で反映するため、非侵襲的で、除菌判定の第一選択として広く用いられています。

  • 尿培養検査:
    尿路感染症の原因菌を調べる検査であり、胃に感染するピロリ菌とは無関係です。

  • 便培養検査:
    ピロリ菌の培養は特殊な微好気環境が必要なため、糞便からの培養は一般的ではありません。「便中H.ピロリ抗原検査」は、便中のピロリ菌由来の抗原を検出する方法で、除菌判定に用いられますが、これは細菌を育てる「培養」とは異なります。

ヘリコバクター・ピロリの主な検査法と、除菌判定への適否を以下にまとめます。

★ヘリコ-バクター・ピロリの主な検査法と除菌判定への適否

検査法 検査対象 除菌判定への適否
尿素呼気試験 ウレアーゼ活性(現存菌) 適(第一選択)
便中抗原検査 菌体抗原(現存菌)
鏡検法・培養法 菌体そのもの(現存菌) 適(侵襲的)
血清・尿中抗体検査 抗ピロリ菌抗体 不適(感染歴を反映)

答え:3

12 睡眠時無呼吸症候群で誤っているのはどれか。

  1. 肥満に合併することが多い。
  2. 高血圧を合併することが多い。
  3. 無呼吸は仰臥位で起こりやすい。
  4. 終夜睡眠ポリグラフィはスクリーニングに有用である。
  5. 睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸指数〈AHI〉が5未満を示す。

この問題は、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)の病態、合併症、検査、および診断基準に関する総合的な理解を問う問題です。

★睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

睡眠中に上気道(空気の通り道)が繰り返し閉塞することで、無呼吸(10秒以上呼吸が止まる)や低呼吸(呼吸が浅くなる)が起こる疾患です。これにより、体内の酸素不足や睡眠の分断が引き起こされ、日中の強い眠気や様々な合併症の原因となります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)の病態、合併症、検査、診断基準について理解しましょう。

★睡眠時無呼吸症候群の重症度分類(AHI )

重症度 無呼吸・低呼吸指数〈AHI〉(回/時間)
正常 5未満
軽症 5 以上 15 未満
中等症 15 以上 30 未満
重症 30 以上

それぞれ選択肢を見ていきます。

  • 肥満に合併することが多い。:
    これは正しいです。特に首周りの脂肪(内臓脂肪)が多いと、上気道が狭くなり、睡眠中の筋弛緩時に閉塞しやすくなります。肥満はSASの最も重要な危険因子の一つです。

  • 高血圧を合併することが多い。:
    これも正しいです。無呼吸による低酸素状態は、交感神経を興奮させ、血圧を上昇させます。この夜間の血圧上昇が繰り返されることで、持続的な高血圧症を発症・増悪させることが知られています。

  • 無呼吸は仰臥位で起こりやすい。:
    これも正しいです。仰向け(仰臥位)で寝ると、重力によって舌の付け根(舌根)や軟口蓋が喉の奥に落ち込みやすくなり、気道を塞ぎやすくなります。そのため、横向き(側臥位)で寝ることで症状が軽減する患者もいます。

  • 終夜睡眠ポリグラフィはスクリーニングに有用である。:
    これは正解でもあり誤りでもあります。終夜睡眠ポリグラフィ(Polysomnography; PSG)は、睡眠中の脳波、呼吸、心電図、血中酸素飽和度などを同時に記録する検査です。
    「簡易的な装置はスクリーニング」に、「精密な入院検査は確定診断に用いられ」、SASの診断における
    ゴールドスタンダードです。

  • 睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸指数〈AHI〉が5未満を示す:
    これは誤っています。AHI(Apnea-Hypopnea Index)は、睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数を示す指標です。SASの診断基準では、AHIが5以上の場合にSASと診断されます。AHIが5未満は正常範囲とされています。したがって、この記述はSASの定義と矛盾します。

したがって、AHIが5未満であるというのは、睡眠時無呼吸症候群の診断基準と矛盾するため、この選択肢が誤りになります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の主な特徴

項目 SASにおける特徴 正誤
危険因子 肥満が最も多い。 正しい
合併症 高血圧、心血管疾患、糖尿病などを合併しやすい。 正しい
体位との関連 仰臥位(仰向け)で悪化しやすい。 正しい
検査 簡易終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)が診断の標準検査。 簡易なら正しい
fullPSGなら誤り
診断基準 AHI(無呼吸・低呼吸指数)が5以上。 (選択肢の「5未満」は誤り)

答え:5(場合によっては4も)

13 肝硬変において血中で増加するのはどれか。

  1. 血小板数
  2. アルブミン
  3. γ-グロブリン
  4. 総コレステロール
  5. コリンエステラーゼ

この問題は、肝硬変の進行に伴って生じる血液検査データの変動について、その病態生理に基づいた理解を問う問題です。

肝硬変における①肝臓の合成能低下、②門脈圧亢進、③異物処理能低下という3つの主要な病態が、血液中の各成分にどのような影響(増加または減少)を及ぼすかを正確に把握する必要があります。

★肝硬変の病態生理

肝硬変は、慢性的な肝障害の結果、肝臓が線維化して硬くなり、正常な機能が失われた状態です。これにより、以下のような変化が起こります。

  • 合成能の低下: アルブミン凝固因子コリンエステラーゼなどのタンパク質を十分に作れなくなります。

  • 門脈圧亢進: 肝臓が硬くなることで、腸管からの血液が肝臓を通りにくくなり、門脈の圧力が上昇します。その結果、脾臓が腫大し(脾機能亢進)、血球(特に血小板)が破壊されやすくなります。

各選択肢を見ていきます。

  • 血小板数:
    門脈圧亢進による脾機能亢進のため、脾臓での血小板の破壊が促進され、血中では低下します。

  • アルブミン:
    肝臓で合成される主要なタンパク質です。肝硬変では合成能が低下するため、血中濃度は低下します。

  • γ-グロブリン:
    これが正解です。γ-グロブリンは、Bリンパ球が産生する抗体(免疫グロブリン)の総称です。肝硬変では、肝臓のクッパー細胞による腸管由来の抗原の処理能力が低下するため、これらの抗原が全身を循環し、免疫系を慢性的に刺激します。その結果、抗体産生が亢進し、血中のγ-グロブリンは増加高ガンマグロブリン血症)します。

  • 総コレステロール:
    主に肝臓で合成・代謝されるため、肝硬変では合成能が低下し、血中濃度は低下します。

  • コリンエステラーゼ (ChE):
    肝臓のタンパク質合成能を鋭敏に反映する酵素です。肝硬変では合成能が低下し、血中濃度は低下します。

肝硬変における主要な血液検査項目の変動とその理由を以下にまとめます。

★肝硬変における血中物質の変動

変動 検査項目 主な理由
増加 (↑) γ-グロブリン、ビリルビン、アンモニア 免疫系の活性化、代謝・排泄能の低下
低下 (↓) アルブミン、コリンエステラーゼ、総コレステロール、血小板数 合成能の低下、脾機能亢進

答え:3

14 子宮筋腫で正しいのはどれか。

  1. 悪性腫瘍である。
  2. 月経過多をきたす。
  3. 子宮内膜が増殖する。
  4. 擦過細胞診で診断する。
  5. エストロゲンにより縮小する。

この問題は、女性に最も頻度の高い良性腫瘍である子宮筋腫について、その基本的な病態、症状、診断法、そしてホルモンとの関連を正しく理解しているかを問う問題です。

ポイントは、「良性」「エストロゲンで増大」「月経過多が主症状」「診断は画像検査」といった、子宮筋腫の重要なキーワードを把握していることです。

★子宮筋腫とは

子宮筋腫は、子宮の壁を構成する平滑筋から発生する良性腫瘍です。発生する部位によって粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫に分類され、症状の出方が異なります。

選択肢を見ていきます。

  • 悪性腫瘍である。:
    これは誤りです。子宮筋腫は、定義上良性腫瘍です。悪性化したものは子宮肉腫(平滑筋肉腫)と呼ばれますが、その頻度は非常に稀であり、別の疾患として扱われます。

  • 月経過多をきたす。:
    これが正しいです。子宮筋腫による最も代表的な症状は月経過多過長月経です。筋腫が子宮内腔を変形させて内膜の面積を増大させたり、子宮の正常な収縮を妨げて止血を困難にしたりすることで、月経血の量が増加します。

  • 子宮内膜が増殖する。:
    これは誤りです。子宮筋腫は、子宮の筋層(平滑筋)が増殖する疾患です。子宮内膜が異常に増殖する疾患は「子宮内膜増殖症」であり、別の病態です。

  • 擦過細胞診で診断する。:
    これは誤りです。擦過細胞診(子宮頸がん検診など)は、子宮頸部や内膜の表面から剥がれ落ちた細胞を調べる検査です。子宮の壁の中にできる塊(腫瘤)である子宮筋腫は、この検査では診断できません。子宮筋腫の診断は、主に超音波(エコー)検査やMRIなどの画像診断によって行われます。

  • エストロゲンにより縮小する。:
    これは誤りです。子宮筋腫は、女性ホルモンであるエストロゲンによって増殖・増大する、エストロゲン依存性の腫瘍です。そのため、エストロゲン分泌が盛んな性成熟期に大きくなり、閉経後はエストロゲンの分泌が低下するため、自然に縮小する傾向があります。記述は逆です。

子宮筋腫の主な特徴を以下にまとめます。

★子宮筋腫の主な特徴

項目 子宮筋腫における特徴
主症状 月経過多、過長月経
腫瘍の性質 良性腫瘍
発生部位 子宮の筋層(平滑筋)
診断法 超音波検査などの画像診断
ホルモン依存性 エストロゲンにより増大する

答え:2

15 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の原因遺伝子はどれか。

  1. APC
  2. BRCA1
  3. MEN1
  4. MLH1
  5. VHL

この問題は、代表的な遺伝性腫瘍とその原因遺伝子の組み合わせについての知識を問う問題です。

ポイントは、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer; HBOC)という疾患名から、その原因として最も有名な遺伝子であるBRCA1/2を正確に結びつけることです。

★遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)とは

HBOCは、特定の遺伝子の生まれつきの変異(生殖細胞系列変異)により、乳癌や卵巣癌をはじめとする様々ながんに、若年で、あるいは複数回罹患するリスクが著しく高くなる遺伝性のがん症候群です。

各選択肢の遺伝子と関連疾患を見ていきます。

  • APC:
    家族性大腸腺腫症(FAP)の原因遺伝子です。大腸に数百~数千個のポリープが発生し、放置するとほぼ100%大腸癌を発症します。

  • BRCA1:
    これが正解です。BRCA1およびBRCA2は、DNAの損傷を修復する重要な役割を持つ遺伝子です。これらの遺伝子に変異があるとDNA修復機能が低下し、細胞ががん化しやすくなります。遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の主要な原因遺伝子です。

  • MEN1:
    多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)の原因遺伝子です。主に下垂体、副甲rowse腺、膵臓といった内分泌器官に腫瘍が発生します。

  • MLH1:
    リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)の主要な原因遺伝子の一つです。DNAのミスマッチ修復遺伝子であり、この遺伝子の変異は大腸癌や子宮体癌、卵巣癌などのリスクを高めます。

  • VHL:
    von Hippel-Lindau(フォン・ヒッペル・リンドウ)病の原因遺伝子です。腎細胞癌、褐色細胞腫、中枢神経系の血管芽腫などの多彩な腫瘍のリスクが高まります。

主な遺伝性腫瘍とその原因遺伝子の組み合わせを以下にまとめます。

★主な遺伝性腫瘍と原因遺伝子の組合せ

疾患名(症候群名) 主な原因遺伝子 主な関連腫瘍
遺伝性乳癌卵巣癌症候群 (HBOC) BRCA1, BRCA2 乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌
家族性大腸腺腫症 (FAP) APC 大腸癌、十二指腸癌
リンチ症候群 (HNPCC) MLH1, MSH2など 大腸癌、子宮体癌、卵巣癌
多発性内分泌腫瘍症1型 (MEN1) MEN1 副甲状腺・膵臓・下垂体の腫瘍
von Hippel-Lindau (VHL) 病 VHL 腎細胞癌、褐色細胞腫、血管芽腫

答え:2

第71回(PM)臨床生理学(16〜28)

16 臨床検査技師が行うことができないのはどれか。

  1. 磁気共鳴画像検査
  2. 経胸壁心臓超音波検査
  3. 運動誘発電位検査の針電極装着
  4. 前庭性眼振検査のための冷水注入
  5. 直腸肛門機能検査のバルーンへの空気注入

AMにも同様の問題が出題されています。今後も出る可能性があるので、AM問題とともに整理しておきましょう。

この問題は、「臨床検査技師等に関する法律」および関連法規に基づき、臨床検査技師の業務範囲を正しく理解しているかを問う問題です。

ポイントとしては、臨床検査技師が行える生理学的検査と、医師法に抵触する可能性がある、あるいは法律で明確に禁止されている特定の医行為を区別することです。特に、近年の法改正によって業務範囲が拡大された項目と、依然として認められていない項目を正確に把握しているかが重要になります。

★臨床検査技師の業務範囲

臨床検査技師は、医師または歯科医師の指示の下に、微生物学的検査、血清学的検査、血液学的検査、病理学的検査、寄生虫学検査、生化学的検査といった検体検査と、心電図、脳波、超音波検査などの生理学的検査を行います。
近年、タスクシフト/シェアの観点から、法改正により特定の条件下で実施可能な業務が拡大されています。

各選択肢をみていきます。

  • 磁気共鳴画像検査 (MRI):
    MRIの操作は、主に「診療放射線技師法」に基づき診療放射線技師の業務とされていますが、臨床検査技師が医師の指示の下で行うことも法的に禁止されているわけではなく、施設によっては実施されています。

  • 経胸壁心臓超音波検査:
    心臓超音波検査(心エコー)は、超音波検査の一種であり、法律で定められた生理学的検査に含まれます。これは臨床検査技師の主要な業務の一つです。

  • 運動誘発電位検査の針電極装着:
    これは、2015年の法改正により臨床検査技師の業務範囲に追加された項目です。医師の具体的な指示の下であれば、筋電図検査や誘発電位検査における針電極の装着(穿刺を伴う)を行うことができます。

  • 前庭性眼振検査のための冷水注入:
    これが正解です。カロリックテストと呼ばれるこの検査では、外耳道に冷水や温水を注入して温度刺激を与え、前庭機能(平衡感覚)を評価します。外耳道への注水は、鼓膜穿孔の有無などを医師が確認した上で実施する必要があり、人体に苦痛や障害を与える可能性がある医行為と解釈されています。そのため、臨床検査技師が行うことはできません

  • 直腸肛門機能検査のバルーンへの空気注入:
    これも、2021年の法改正により業務範囲に追加された項目です。直腸内圧検査などにおいて、医師の具体的な指示の下で、カテーテルに接続されたバルーンに空気を注入・脱気する操作を行うことができます。

臨床検査技師の業務範囲について、特に近年変化があった項目や判断に迷う項目を以下にまとめます。

★臨床検査技師の業務範囲に関する主な項目

検査・行為 実施の可否 備考
前庭性眼振検査の冷水注入 不可 医行為とみなされるため。
経胸壁心臓超音波検査 法定の生理学的検査。
針電極の装着 医師の具体的指示の下。(2015年法改正
直腸肛門機能検査のバルーン操作 医師の具体的指示の下。(2021年法改正
採血(静脈) 静脈採血は一般的。
さい
さい
選択肢の内容は①②は簡単に分かりますが、③〜⑤は悩むところです。

答え:4

17 心周期現象の圧曲線模式図(別冊No. 2)を別に示す。肺動脈圧曲線はどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

心周期現象の圧曲線模式図の①〜⑤が何を指しているのかを下に示します。

★心周期現象の圧曲線模式図

  1. 大動脈圧曲線
  2. 左室内圧曲線
  3. 右室内圧曲線
  4. 肺動脈圧曲線
  5. 左房内圧曲線

答え:4

18 肢誘導心電図(別冊No. 3)を別に示す。所見はどれか。

  1. 洞房ブロック
  2. Ⅰ度房室ブロック
  3. Wenckebach型Ⅱ度房室ブロック
  4. MobitzⅡ型Ⅱ度房室ブロック
  5. Ⅲ度房室ブロック

p波とQRS波までのPQ時間が1マス以上(0.38〜0.40秒)空いているのが分かります。
この時点で房室ブロックが鑑別に上がりますが、さらに詳しく見ると、『QRSの脱落もなく、p波とQRS派が繋がっている』ことがわかるので『1度房室ブロック』が正解となります。

選択肢の所見をまとめます。

★心電図房室ブロック(伝導障害)の所見まとめ

ブロックの種類 心電図所見のポイント
洞房ブロック(危険) P波を含めた心拍(P-QRS-T)が丸ごと脱落する。
脱落部のRR間隔は先行RRのほぼ整数倍になる。
Ⅰ度房室ブロック PQ時間(PR時間)が常に一定して延長している(0.20秒以上)。心拍の脱落はない。
Wenckebach型 Ⅱ度房室ブロック PQ時間が徐々に延長していき、QRS波が1拍脱落する。これを繰り返す。
MobitzⅡ型 Ⅱ度房室ブロック(危険) PQ時間は一定のまま前触れなく突然QRS波が1拍脱落する。
Ⅲ度房室ブロック
(完全房室ブロック:危険)
P波とQRS波が全く無関係に出現する(PとQRSの解離)。著しい徐脈を呈することが多い。

答え:2

19 吸気および呼気ともに最大努力で得られたフローボリューム曲線(別冊No. 4)を別に示す。V・25〈FEF25〉はどれか。

問題文が間違っており、『V75(FEF25) or V25(FEF75)』
複数の選択肢が正答となる。

  1. 最大呼気量
  2. V75(FEF25)
  3. V50(FEF50)
  4. V25(FEF75
  5. 吸気側V50(FIF50

※FEF:努力呼気流量、FIF:努力吸気流量

  • グラフの上半分(+側): 息を吐き出すとき(呼気)の流量

  • グラフの下半分(-側): 息を吸い込むとき(吸気)の流量

上記より、二つが回答となる。

答え:2と4(厚労省)

20 測定に100%酸素を使用するのはどれか。2つ選べ。

  1. 最大酸素摂取量測定
  2. 呼気一酸化窒素濃度測定
  3. 1回呼吸法による肺拡散能測定
  4. 開放回路法による機能的残気量測定
  5. 1回呼吸法によるクロージングボリューム測定

この問題は、各種の呼吸機能検査測定原理を正確に理解しているか、特にどのような特殊なガスを使用して測定を行うかを問う問題です。

ポイントは、100%純酸素をマーカーガスとして利用し、肺内の既存のガス(主に窒素)との濃度差や置換を利用して特定の肺気量を測定する検査法を特定することです。

★呼吸機能検査と使用ガス

多くの呼吸機能検査は通常の室内気(酸素濃度 約21%)で行われますが、特定の生理学的指標を測定するために、特殊な組成のガスを吸入・呼出する検査があります。

各選択肢の検査法と使用ガスを見ていきます。

  • 最大酸素摂取量測定:
    運動負荷中の身体能力を評価する検査で、通常は室内気を吸入して行います。100%酸素は使用しません。

  • 呼気一酸化窒素濃度測定 (FeNO):
    気道の好酸球性炎症を評価する検査です。吸気中のNO(一酸化窒素)の影響を除くため、NOフリー空気を吸入します。100%酸素は使用しません。

  • 1回呼吸法による肺拡散能測定 (DLCO):
    肺胞から血液へのガスの拡散能力を測定します。微量の一酸化炭素(CO)とヘリウム(He)などを含む混合ガス(空気ベースで酸素濃度は約21%)を吸入して測定します。100%酸素は使用しません。

  • 開放回路法による機能的残気量測定:
    これが正解の一つです。これは窒素洗い出し法(N₂ washout法)と呼ばれる測定法です。この検査では、被験者は安静呼吸の状態から、弁を切り替えて100%純酸素の吸入を開始します。100%酸素を吸い続けることで、もともと肺の中にあった窒素(空気の約80%)が呼気と共に徐々に体外へ「洗い出」されます。この洗い出された窒素の総量を測定することで、機能的残気量(FRC)を算出します。

  • 1回呼吸法によるクロージングボリューム測定:
    これも正解の一つです。この検査は、末梢気道の早期閉塞を検出するために行われます。被験者は、息を完全に吐ききった状態から、100%純酸素を肺活量いっぱいまで吸い込みます。その後、ゆっくりと息を吐き出し、その際の呼気中の窒素濃度を連続的に測定します。最初に吸入した100%酸素がマーカーガスの役割を果たし、呼出時の窒素濃度の変化パターンからクロージングボリュームを測定します。

主な呼吸機能検査と、その測定に用いられるガスの組み合わせを以下にまとめます。

★呼吸機能検査と使用するガスの組合せ

検査名 目的 主に使用するガス
開放回路法によるFRC測定(窒素洗い出し法) 機能的残気量の測定 100%酸素
1回呼吸法によるCV測定(クロージングボリューム) 末梢気道の早期閉塞の検出 100%酸素
1回呼吸法による肺拡散能(DLCO) ガス拡散能の評価 微量COを含む混合ガス
最大酸素摂取量(VO₂max) 有酸素運動能力の評価 室内気
呼気一酸化窒素濃度(FeNO) 気道の好酸球性炎症の評価 NOフリー空気

答え:4と5

21 神経筋接合部の伝達物質はどれか。

  1. アセチルコリン
  2. アドレナリン
  3. グルタミン酸
  4. セロトニン
  5. ドパミン

この問題は、神経から筋肉へ運動の指令が伝わる際の化学的なメッセンジャー、すなわち神経伝達物質は何かを問う、生理学の基本的な知識問題です。
運動神経の末端骨格筋が接する「神経筋接合部」という特定の場所で機能する伝達物質を、知っておく必要があります。

★神経筋接合部とは

神経筋接合部とは、脳からの運動指令を伝える運動神経の末端(軸索終末)と、指令を受け取る骨格筋の細胞膜(筋線維膜)が接しているシナプス(接合部)のことです。ここでは、神経を伝わってきた電気信号が、一度化学信号に変換されて筋肉に伝えられます。

★神経筋接合部における情報伝達のプロセス

  1. 運動神経を電気信号(活動電位)が伝わってくると、神経の末端から神経伝達物質がシナプス間隙に放出されます。

  2. 放出された神経伝達物質は、筋肉側の受容体に結合します。

  3. 受容体に結合すると、筋肉の細胞膜でイオンの透過性が変化し、脱分極が起こり、筋収縮が引き起こされます。

このプロセスで、神経から筋肉へと指令を伝える化学的メッセンジャーの役割を果たすのがアセチルコリンです。

もう答えが出てしまっていますが、選択肢を見てみましょう。

  • アセチルコリン:
    運動神経の末端から放出され、骨格筋のニコチン性アセチルコリン受容体に作用して筋収縮を引き起こす、神経筋接合部の主要な伝達物質です。正しいです。

  • アドレナリン:
    副腎髄質から分泌されるホルモンであり、また交感神経系の伝達物質としても働きます。心拍数の増加や血圧上昇などに関与しますが、神経筋接合部での伝達には直接関与しません。

  • グルタミン酸:
    中枢神経系(脳や脊髄)における主要な興奮性神経伝達物質です。学習や記憶に重要な役割を果たしますが、末梢の神経筋接合部では働きません。

  • セロトニン:
    中枢神経系において、気分、睡眠、食欲などの調節に関わる神経伝達物質です。

  • ドパミン:
    中枢神経系において、運動調節、意欲、快楽などに関わる神経伝達物質です。パーキンソン病はドパミン神経の変性が原因です。

以上のことから、神経筋接合部の伝達物質はアセチルコリンです。

選択肢の物質が何に作用するかを、まとめました。

★主な神経伝達物質とその作用部位

神経伝達物質 主な作用部位 神経筋接合部での役割
アセチルコリン 神経筋接合部、自律神経節、中枢神経系 あり(筋収縮の誘発)
アドレナリン 交感神経系、各種臓器 なし
グルタミン酸 中枢神経系 なし
セロトニン 中枢神経系、消化管 なし
ドパミン 中枢神経系 なし

答え:1

22 正中神経における運動神経伝導検査の記録波形(別冊No. 5)を別に示す。
最も考えられるのはどれか。

  1. 重症筋無力症
  2. 手根管症候群
  3. 筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉
  4. 糖尿病性多発ニューロパチー
  5. 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎

この問題は、運動神経伝導検査の波形を正しく解釈し、その特徴的な所見から病態を推定する能力を問う問題です。波形の潜時(刺激から反応までの時間)、振幅(反応の大きさ)、持続時間、そして2点刺激での波形変化を正常波形と比較し、それが神経障害のどのタイプ(脱髄性軸索性か、局所性多発性か)に合致するかを判断することがポイントです。

★神経伝導検査の波形読解

まず、提示された波形(実線:患者、破線:正常)を分析します。

  • 刺激部位: 上段が「手関節」刺激、下段が「肘窩」刺激時の波形です。

  • 潜時(Latency):

    • 手関節刺激(遠位潜時): 患者波形の立ち上がりは、正常波形よりも明らかに右にずれており、潜時が延長しています。

  • 振幅(Amplitude):

    • 手関節刺激: 患者波形の高さ(振幅)は、正常波形と比べてやや低下しています。

    • 肘窩刺激: 患者波形の高さは、手関節刺激時と比べて著しく低下しています。正常では肘刺激でも振幅はほとんど低下しません。

  • 持続時間と波形分散:

    • 手関節刺激: 患者波形は正常に比べて横に広がっており、持続時間が延長しています。これは時間的分散と呼ばれます。

    • 肘窩刺激: 時間的分散がさらに著明になり、波形が多相性になっています。

【所見のまとめ】

  • 運動神経伝導速度の著しい低下: 肘窩刺激時の潜時の延長と、手関節刺激時からの潜時の差が大きいため、伝導速度の低下が示唆されます。

  • 異常な時間的分散: 波形が著しく広がり、バラけています。

  • 伝導ブロック: 手関節刺激から肘窩刺激にかけて、振幅が著しく低下しています。これは、途中の神経線維で伝導がブロックされていることを示します。

これらの所見(伝導速度低下、時間的分散、伝導ブロック)は、神経線維を覆う髄鞘(ミエリン)が障害される「脱髄性ニューロパチーに極めて特徴的です。また、手関節と肘窩の両区間で異常が見られることから、障害が広範囲に及ぶ多発性」の病態が考えられます。

選択肢を見ていきましょう。

  • 重症筋無力症: 神経筋接合部の疾患です。通常の神経伝導検査は正常ですが、反復刺激検査で振幅の漸減現象が見られます。

  • 手根管症候群: 手根管という手首のトンネル内で正中神経が圧迫される局所性の絞扼性ニューロパチーです。手関節刺激での遠位潜時延長は見られますが、肘-手首間の伝導速度は正常で、肘刺激で伝導ブロックが起こることはありません。

  • 筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉: 運動ニューロンが変性する疾患で、軸索障害が主体です。振幅の低下が見られますが、伝導速度の著しい低下や伝導ブロックは通常見られません。

  • 糖尿病性多発ニューロパチー: 最も頻度の高いニューロパチーですが、多くは遠位部から始まる軸索障害が主体です。軽度の伝導速度低下は見られますが、伝導ブロックのような顕著な脱髄所見は典型的ではありません。

  • 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎 (CIDP): 免疫異常により末梢神経の髄鞘が広範囲に障害される、代表的な後天性脱髄性ニューロパチーです。伝導速度の低下、時間的分散、伝導ブロックといった、今回の検査結果と完全に一致する所見を呈します。

以上のことから、最も考えられる疾患は慢性炎症性脱髄性多発根神経炎 (CIDP)です。

主な末梢神経・筋疾患と神経伝導検査所見

疾患名 主な病態 典型的な神経伝導検査所見
CIDP 多発性・脱髄性 伝導速度低下、時間的分散、伝導ブロック
重症筋無力症 神経筋接合部 正常(反復刺激で漸減現象
手根管症候群 局所性・絞扼性 遠位潜時延長
ALS 軸索性(運動神経) 振幅低下
糖尿病性ニューロパチー 軸索性 振幅低下、軽度伝導速度低下

答え:5

23 脳波(別冊No. 6)を別に示す。所見はどれか。

  1. 三相波
  2. 徐派群発
  3. 棘徐波複合
  4. ヒプスアリスミア
  5. トラセアルテルナン

この問題は、提示された脳波波形の特徴を正確に読み取り、それがどの特定の異常脳波パターンに該当するかを判断する能力を問う問題です。

波形の周波数(速いか遅いか)、振幅(大きいか小さいか)、律動性(規則正しいか)、そして棘波(スパイク)の有無などの要素を総合的に評価し、各選択肢の異常パターン定義と照合することです。特に、無秩序で混沌とした高振幅の異常波という視点が重要になります。

脳波波形の読解

まず、提示された脳波波形(No. 6)を詳細に観察します。

  • 背景活動: 全体として、正常なα波やβ波のような律動的な背景活動は認められません。

  • 周波数: 波の周期は非常に不規則で、ほとんどがδ波やθ波といった徐波(遅い波)で構成されています。

  • 振幅: 振幅は非常に高く、多くのチャネルで100μVを優に超えています(高振幅)。

  • 棘波(スパイク): 波形全体に、鋭く尖った棘波(スパイク)鋭波(シャープウェーブ)が、多焦点性かつ非同期性に、様々な部位から出現しています。

  • 律動性: 全く規則性がなく、極めて無秩序(chaotic)で、持続的に出現しています。

この脳波は「持続性で、高振幅、無秩序な徐波を背景に、多焦点性の棘波や鋭波が混在する」という特徴を持っています。これは、ヒプスアリスミア(hypsarrhythmia)の典型的な定義と完全に一致します。

ヒプスアリスミアは、点頭てんかん(ウエスト症候群)という乳児期の重篤なてんかん性脳症に特徴的な脳波所見です。

答えが出てしまいましたが、選択肢も見ていきます。

  • 三相波:
    肝性脳症などで見られる特徴的な波形で、陽性-陰性-陽性といった三つの相を持つ、比較的律動的な鋭い徐波です。図の無秩序な波形とは異なります。

  • 徐波群発:
    徐波が群発(バースト状)に出現するパターンですが、ヒプスアリスミアのような持続的で無秩序な棘波の混在はありません。

  • 棘徐波複合:
    棘波(スパイク)の直後に徐波(スローウェーブ)が続く複合波形です。欠神てんかんで見られる3Hzの律動的な棘徐波複合が有名ですが、図のような混沌とした波形とは異なります。

  • ヒプスアリスミア:
    前述の通り、高振幅で無秩序な徐波と多焦点性の棘波の混合パターンであり、本症例の脳波所見と完全に一致します。

  • トラセアルテルナン (Tracé alternant):
    交代制脳波とも呼ばれ、新生児の静睡眠期に見られる正常なパターンです。高振幅の徐波群と、低振幅で比較的平坦な脳波が交互に出現します。図のような持続的な高振幅異常波とは異なります。

★主な異常脳波パターンとその特徴

脳波パターン 主な特徴 関連する主な疾患・状態
ヒプスアリスミア 高振幅、無秩序な徐波+多焦点性棘波 点頭てんかん(ウエスト症候群)
三相波 律動的な鋭い三相性の徐波 肝性脳症など代謝性脳症
棘徐波複合 棘波と徐波がセットで出現(例: 3Hz) 欠神てんかんなど
徐波群発 徐波がバースト状に出現 種々の脳症
トラセアルテルナン 高振幅徐波群と低振幅脳波の交代 新生児期の静睡眠(正常

カオスな脳波=ヒプスアリスミア=ウエスト症候群みたいな覚え方でもいいと思います。

答え:4


24 折り返し現象がみられたパルスドプラ波形の調整法で正しいのはどれか。

  1. ゼロシフトを行う。
  2. ドプラゲインを上げる。
  3. パワードプラ法を使用する。
  4. パルス繰り返し周波数を下げる。
  5. サンプルボリュームを大きくする。

この問題は、超音波検査のパルスドプラ法における「折り返し現象(エイリアシング)の発生原理と、その調整(補正)方法について正しく理解しているかを問う問題です。

★折り返し現象(エイリアシング)とは

パルスドプラ法では、パルス繰り返し周波数(PRF)というサンプリング周波数を用いて血流速度を測定します。しかし、測定できる速度には上限があり、これをナイキスト周波数(PRF/2)と呼びます。血流速度が速すぎて、そのドプラシフト周波数がナイキスト周波数を超えてしまうと、波形のピーク部分が切り取られ、ベースラインの反対側に回り込んで表示されます。これが折り返し現象です。

簡単に言えば、「速すぎて正しく測れない」状態です。

では、選択肢を見ていきましょう。

  • ゼロシフトを行う。:
    ゼロシフト(ベースラインシフト)とは、波形の基線(ゼロライン)を上下に移動させる操作です。例えば、ベースラインを一番下に下げることで、上方向(探触子に近づく血流)の表示範囲を広げることができます。これにより、表示範囲内に波形のピークが収まり、折り返しを解消できる場合があります。これは、折り返し現象に対する最も基本的な調整法の一つです。したがって、この記述は正しいです。

  • ドプラゲインを上げる。:
    ドプラゲインは、ドプラ信号の増幅度を調整するものです。ゲインを上げると波形は明るく(濃く)なりますが、速度の測定範囲には影響しません。折り返し現象は解消されません。

  • パワードプラ法を使用する。:
    パワードプラ法は、血流の速度や方向ではなく、血流の存在(赤血球の量)を色の濃淡で表示するモードです。速度情報を表示しないため、原理的に折り返し現象は起こりませんが、これはパルスドプラ波形を「調整」する方法ではなく、「別のモードに切り替える」ことです。

  • パルス繰り返し周波数(PRF)を下げる。:
    これは逆の操作です。PRFを下げると、測定上限であるナイキスト周波数も下がってしまい、折り返し現象はさらに悪化します。折り返しを解消するには、PRFを上げる必要があります。

  • サンプルボリュームを大きくする。:
    サンプルボリュームは、血流速度を測定する範囲(サンプリングポイントの大きさ)です。これを大きくすると、より広い範囲の血流速度情報が混ざり、波形のすそ野が広がる(スペクトル幅増大)ことがありますが、折り返しの直接的な解消法ではありません。

以上のことから、折り返し現象の調整法として正しいのは「ゼロシフトを行う」ことです。

折り返し現象(エイリアシング)の調整法

調整法 折り返し現象への影響 理由
ゼロシフト(ベースライン移動) 解消できる 表示範囲(速度スケール)をずらして波形を収める。
PRFを上げる 解消できる 測定上限(ナイキスト周波数)自体を引き上げる。
ドプラゲイン調整 変化なし 波形の明るさを変えるだけで、速度測定範囲は変わらない。
PRFを下げる 悪化する 測定上限が下がり、さらに折り返しやすくなる。
CWドプラ法への変更 解消できる CWドプラ法は原理的に折り返しが起こらない。

答え:1

25 疾患と超音波所見の組合せで正しいのはどれか。

  1. 肝血管腫 コメット様エコー
  2. 肝硬変 肝深部エコーの減衰
  3. 肝細胞癌 モザイクパターン
  4. 脂肪肝 肝静脈の拡張
  5. 転移性肝癌 カメレオンサイン

この問題は、肝臓の主要な疾患と、それらに特徴的な腹部超音波検査(エコー)所見の組み合わせを正しく理解しているかを問う問題です。各疾患が超音波画像上でどのように見えるか(エコーレベル、内部エコー、辺縁、後方エコーの変化など)という、典型的なパターンを正確に把握していることです。

★超音波所見の基本用語

  • エコーレベル: 高エコー(白く見える)、低エコー(黒く見える)、無エコー(真っ黒)、等エコー(周囲と同じ明るさ)など。

  • 内部エコー: 腫瘤や臓器の内部が均一か不均一か

  • 後方エコー: 腫瘤の背後に見られるエコーの変化(増強、減衰など)。

では、選択肢のエコーサインを見ていきましょう。

  • 肝血管腫 ― コメット様エコー:
    肝血管腫は最も頻度の高い肝良性腫瘍で、典型的には高エコーな腫瘤として描出されます。また、探触子による圧迫で形状が変化するなどの特徴があります。一方、コメット様エコーは、胆嚢壁内のコレステロール結晶などに起因するアーチファクトで、主に胆嚢腺筋腫症で見られる所見です。したがって、この組合せは誤りです。

  • 肝硬変 ― 肝深部エコーの減衰:
    肝硬変では、肝表面の凹凸肝実質の粗大化辺縁の鈍化などが特徴的な所見です。したがって、この組合せは誤りです。

  • 肝細胞癌 ― モザイクパターン:
    肝細胞癌は、腫瘍内部に出血、壊死、脂肪化、線維化などが混在し、異なるエコーレベルの部分が入り混じった不均一な像を呈することが多く、これをモザイクパターンと呼びます。辺縁低エコー帯(ハロー)を伴うことも特徴です。したがって、この組合せは正しいです。

  • 脂肪肝 ― 肝静脈の拡張:
    脂肪肝では、肝細胞内に脂肪が蓄積するため、肝実質全体のエコーレベルが上昇(ブライトリバー)し、肝深部エコーの減衰や、肝内脈管(肝静脈など)の壁エコーが不明瞭になる所見が見られます。肝静脈の拡張は、心不全などによるうっ血肝で見られる所見であり、脂肪肝の典型的な所見ではありません。したがって、この組合せは誤りです。

  • 転移性肝癌 ― カメレオンサイン:
    転移性肝癌は、原発巣によって多彩なエコー像を呈し、中心部が低エコーで辺縁が高エコーなブルズアイサイン(牛の目状)やターゲットサインが特徴的なものの一つです。一方、カメレオンサインは、肝血管腫において、内部の血流の変化などにより探触子の圧迫や体位変換でエコーパターンが変化して見える現象を指します。したがって、この組合せは誤りです。

★主な肝疾患と超音波所見

疾患名 典型的な超音波所見
肝硬変 肝辺縁の鈍化、実質の粗大化
肝細胞癌 モザイクパターン、ハロー(低エコー帯)、後方エコー増強
肝血管腫 高エコー腫瘤、カメレオンサイン
脂肪肝 肝実質の輝度上昇(肝腎コントラスト+)、肝深部エコーの減衰、脈管の不明瞭化
転移性肝癌 ブルズアイサイン、ターゲットサインなど多彩な像

答え:3

26 心エコーの傍胸骨長軸像(別冊No. 7)を別に示す。矢印で示すのはどれか。

  1. 右 室
  2. 右 房
  3. 左 室
  4. 左 房
  5. 肺動脈

この問題は、心エコー検査における最も基本的な断面の一つである「傍胸骨長軸像」の解剖学的構造を正しく理解しているかを問う問題です。

傍胸骨長軸像の読解

  • 画面の最も上(体表に近い側): 超音波プローブが当たる胸壁の直下には、心臓の最も前方に位置する部屋が描出されます。これが右室(Right Ventricle; RV)です。

  • その下: 右室と左室を隔てる壁である心室中隔(Interventricular Septum; IVS)があります。

  • 中央から下: 心臓の主ポンプである、厚い心筋を持つ左室(Left Ventricle; LV)が大きく描出されます。

  • 左室の後方: 左室と左房を隔てる僧帽弁(Mitral Valve; MV)と、大動脈の出口である大動脈弁(Aortic Valve; AV)が見られます。

  • 最も奥(背中側): 左室の後方に左房(Left Atrium; LA)が位置します。

選択肢を見てもわかりづらいので、画像に書き込みをします。

上記より、矢印が指すのは右室となります。

答え:1

27 頸動脈超音波検査で正しいのはどれか。

  1. 狭窄部の血流速度は低下する。
  2. 腕頭動脈から左総頸動脈が分岐する。
  3. 総頸動脈の内側に内頸静脈が走行する。
  4. 低輝度プラークは脳血管の塞栓源になりやすい。
  5. 内中膜複合体厚は2.0mm以上から肥厚とする。

この問題は、動脈硬化の評価に重要な頸動脈超音波検査に関する、解剖学、血行動態、プラークの性状評価、および評価基準についての総合的な知識を問う問題です。

頸動脈エコーは、頸部の動脈(総頸動脈、内頸動脈、外頸動脈)の壁の厚さやプラーク(粥腫)の有無、血流の状態を評価し、脳梗塞のリスクを予測する非侵襲的な検査です。

各選択肢を見ていきましょう。

  • 狭窄部の血流速度は低下する。:
    これは誤りです。流体力学の「連続の式」により、血管が狭くなると(断面積が小さくなると)、同じ流量を保つためにその部分の血流速度は上昇(加速)します。この血流速度の上昇度合いを測定することが、狭窄率を評価する上で非常に重要です。

  • 腕頭動脈から左総頸動脈が分岐する。:
    これは誤りです。大動脈弓からの主要な分岐は、右側から順に腕頭動脈左総頸動脈左鎖骨下動脈です。腕頭動脈はさらに右総頸動脈と右鎖骨下動脈に分かれます。左総頸動脈は、腕頭動脈からではなく、大動脈弓から直接分岐します。

  • 総頸動脈の内側に内頸静脈が走行する。:
    これは誤りです。頸部では、総頸動脈と内頸静脈は並走していますが、位置関係は、総頸動脈の外側(やや前方)に内頸静脈が走行するのが通常です。エコーで断面像を描出する際は、この位置関係が重要な目印となります。

  • 低輝度プラークは脳血管の塞栓源になりやすい。:
    これは正しいです。プラークの輝度(エコーレベル)は、その内部の組織構造を反映します。
    低輝度(ソフト)プラーク: 脂質成分に富み、不安定で崩れやすい
    高輝度(ハード)プラーク: 線維化や石灰化が進み、比較的安定している。
    低輝度のソフトプラークは破綻しやすく、その内容物が血流に乗って脳の血管に飛んでいき、塞栓(脳梗塞)を引き起こすリスクが高い不安定プラーク(ハイリスクプラーク)とされています。

  • 内中膜複合体厚は2.0mm以上から肥厚とする。:
    これは誤りです。内中膜複合体厚(IMT: Intima-Media Thickness)は、動脈硬化の初期病変の指標です。日本超音波医学会のガイドラインでは、総頸動脈のIMTが1.1mm以上の場合を「肥厚」と定義しています。2.0mmは著しい肥厚です。

★頸動脈超音波検査の要点

項目 正しい内容
プラークのリスク評価 低輝度(ソフト)プラークは塞栓源になりやすい不安定プラークである。
血流速度と狭窄 血管が狭窄すると、その部分の血流速度は上昇する。
血管の解剖 左総頸動脈は大動脈弓から直接分岐する。
動静脈の位置関係 総頸動脈の外側に内頸静脈が走行する。
IMTの基準値 総頸動脈IMTは1.1mm以上で肥厚と判定する。

答え:4

28 人体の磁気共鳴画像を得るために対象としている核種はどれか。

  1. 硫 黄
  2. 酸 素
  3. 水 素
  4. 炭 素
  5. 窒 素

この問題は、MRI(磁気共鳴画像法)が、どの原子核をターゲットにして体内の情報を画像化しているかという、原理に関する基本的な知識を問う問題です。

MRIは、強力な磁石と電波を使って、体内の原子核から発生する信号を捉えて画像化する検査法です。このとき、全ての原子核が信号を出すわけではなく、「核スピン」という磁気的な性質を持つ原子核だけが対象となります。
信号の強さは、以下の2つの要因に大きく依存します。

  • 体内にその原子核がどれだけ多く存在するか(存在量

  • その原子核がどれだけ強い信号を出すか(磁気的な性質

選択肢を整理しつつ、見ていきましょう。

  • 硫黄 (S) / 窒素 (N):
    タンパク質などの構成成分として体内に存在しますが、水素や酸素、炭素に比べると量は少ないです。また、MRI信号を得る上での物理的特性も水素に比べて劣ります。

  • 酸素 (O) / 炭素 (C):
    体内に非常に多く存在しますが、最も一般的な同位体である酸素16(¹⁶O)と炭素12(¹²C)は「核スピン」を持たないため、MRIの信号を発生しません。核スピンを持つ同位体(¹⁷Oや¹³C)も存在しますが、天然に存在する割合が極めて低いため、通常の臨床MRIで画像化することは困難です。

  • 水素 (H):
    水素原子の原子核(¹H、陽子)は、強い「核スピン」を持ち、磁気に対して非常に感度良く反応します。そして何より、人体を構成する原子の中で最も数が多く(人体の約60%を占めるの構成要素)、脂肪組織にも豊富に含まれています。この圧倒的な存在量優れた磁気的性質により、非常に強い信号を得ることができるため、臨床で用いられるMRIは、ほぼ全てこの水素原子核を対象としています。

以上のことから、MRIの撮像対象となっている核種は水素です。

★主な核種とMRIでの利用

核種 体内での存在量 MRIでの利用
水素 (H) 極めて多い (水、脂肪) 臨床MRIの主な撮像対象
炭素 (C) 多い ¹³Cが研究で利用されるが、一般的ではない
酸素 (O) 多い ¹⁷Oが研究で利用されるが、一般的ではない
窒素 (N) 比較的多い 信号が弱く、一般的ではない
硫黄 (S) 少ない 一般的ではない

答え:3

第71回(PM)臨床化学(29〜44)

29 重炭酸イオンで正しいのはどれか。

  1. 腎尿細管で再吸収されない。
  2. アニオンギャップの計算式に含まれない。
  3. 細胞外液中の陰イオンで最も濃度が高い。
  4. 代謝性アルカローシスで血漿濃度が上昇する。
  5. 動脈血中濃度50mmol/Lは基準範囲内である。

この問題は、臨床化学における重炭酸イオン(HCO₃⁻)の生理学的な役割と臨床的意義について、総合的な知識を問う問題です。

重炭酸イオンが

  • ①腎臓での再吸収
  • ②電解質バランス(アニオンギャップ
  • 酸塩基平衡の調節

において、どのように機能するかを正確に理解しているかです。

重炭酸イオンは、血液のpHを一定に保つための最も重要な緩衝物質であり、肺と腎臓によってその濃度が厳密に調節されています。

各選択肢から重炭酸イオンについてみていきましょう。

  • 腎尿細管で再吸収されない。:
    これは誤りです。糸球体で濾過された重炭酸イオンの大部分(約99%以上)は、主に近位尿細管で再吸収されます。ただし、直接イオンとして吸収されるのではなく、一度CO₂とH₂Oに分解されて細胞内に入り、再び重炭酸イオンに再合成されて血中に戻るという間接的なメカニズムをとります。この再吸収は、体内の酸塩基バランスを維持するために不可欠です。

  • アニオンギャップの計算式に含まれない。:
    これは誤りです。アニオンギャップ(AG)は、測定されない陰イオンを評価するための指標で、その計算式は AG = Na⁺ – (Cl⁻ + HCO₃⁻) です。式から明らかなように、重炭酸イオンは主要な陰イオンとして計算に必須の項目です。

  • 細胞外液中の陰イオンで最も濃度が高い。:
    これは誤りです。細胞外液(血漿)中の主要な陰イオンは**クロールイオン(Cl⁻)**であり、その濃度は約103 mEq/Lです。重炭酸イオンの濃度は約24 mEq/Lであり、クロールイオンに次いで2番目に多い陰イオンです。

  • 代謝性アルカローシスで血漿濃度が上昇する。:
    これは正しいです。酸塩基平衡異常において、代謝性アルカローシスは、一次的な重炭酸イオン(HCO₃⁻)の増加によって定義される病態です(あるいはH⁺の喪失)。HCO₃⁻が増加することで血液のpHがアルカリ性に傾きます。

  • 動脈血中濃度50mmol/Lは基準範囲内である。:
    これは誤りです。動脈血中の重炭酸イオンの基準範囲は、一般的に22~26 mmol/Lです。50 mmol/Lという値は、重度の代謝性アルカローシスや、慢性的な呼吸性アシドーシスに対する代償反応など、明らかな異常状態を示します。

★重炭酸イオン(HCO₃⁻)の主な特徴

項目 正しい内容
酸塩基平衡 代謝性アルカローシスで血漿濃度は上昇する。
腎臓での動態 尿細管で活発に再吸収される。
アニオンギャップ 計算式 `Na⁺ – (Cl⁻ + HCO₃⁻)` に含まれる。
血中濃度 細胞外液で最も多い陰イオンはCl⁻である。
基準範囲 約22~26 mmol/Lである。

答え:4

30 日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法において2つ以上の酵素反応を利用しているのはどれか。2つ選べ。

  1. ALP
  2. AST
  3. CK
  4. γ-GT
  5. LD

この問題は、臨床検査で測定される主要な酵素の活性測定法、特に日本臨床化学会(JSCC)が推奨する方法の反応原理を理解しているかを問う問題です。

ポイントとしては、各酵素の測定法が、その酵素自身の反応1ステップだけで完結するのか、あるいはその生成物を使ってさらに第2、第3の酵素反応共役反応)を連続させて、最終的に測定しやすい物質(NADHなど)の変化を捉えるのかを区別することです。

★酵素活性測定法の原理

酵素活性は、その酵素が触媒する化学反応の速度を測定することで求められます。

  • 直接法: 酵素反応によって生じる生成物や消費される基質が、直接的に吸光度の変化などで測定できる場合。これは1つの酵素反応で完結します。

  • 共役酵素法(Coupled Enzyme Assay): 目的の酵素反応の生成物が直接測定しにくい場合に、その生成物を基質とする別の酵素(共役酵素)を試薬に加えて反応させます。この共役反応によって、最終的にNADHNADPHなど、340nmの吸光度で容易に測定できる物質の変化を捉えます。この方法は2つ以上の酵素反応を利用します。

上記を踏まえながら、選択肢の酵素を確認していきます。

  • ALP (アルカリホスファターゼ):
    基質であるp-ニトロフェニルリン酸を、ALPが加水分解してp-ニトロフェノールを生成します。このp-ニトロフェノールは黄色を呈し、405nmの吸光度で直接測定できます。これは1ステップの反応です。

  • AST (アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ):
    これは共役酵素法を用います。

    1. AST反応: L-アスパラギン酸 + α-ケトグルタル酸 → オキサロ酢酸 + L-グルタミン酸

    2. 共役反応: オキサロ酢酸 + NADH → L-リンゴ酸 + NAD⁺ (試薬中のリンゴ酸脱水素酵素(MDH)が触媒)
      NADHの減少速度を340nmで測定します。ASTとMDHの2つの酵素反応
      を利用しています。

  • CK (クレアチンキナーゼ):
    これも共役酵素法を用い、さらに複雑です。

    1. CK反応: クレアチンリン酸 + ADP → クレアチン + ATP

    2. 共役反応1: ATP + グルコース → ADP + G-6-P (試薬中のヘキソキナーゼ(HK)が触媒)

    3. 共役反応2: G-6-P + NADP⁺ → 6-ホスホグルコン酸 + NADPH (試薬中のグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)が触媒)
      NADPHの増加速度を340nmで測定します。CK、HK、G6PDHの3つの酵素反応
      を利用しています。

  • γ-GT (γ-グルタミルトランスフェラーゼ):
    基質であるγ-グルタミル-p-ニトロアニリドを、γ-GTが分解してp-ニトロアニリンを生成します。このp-ニトロアニリンは有色物質であり、その増加速度を直接測定できます。これは1ステップの反応です。

  • LD (乳酸脱水素酵素):
    基質であるL-乳酸を、LDが酸化してピルビン酸を生成する際に、補酵素であるNAD⁺がNADHに還元されます。このNADHの増加速度を340nmで直接測定します。これはLD自身の1-ステップの反応です。

以上のことから、2つ以上の酵素反応を利用しているのはASTとCKです。

主な酵素のJSCC勧告法における反応ステップ数

酵素 反応ステップ数 測定原理の概要
AST 2ステップ 共役酵素法(共役酵素:MDH)
CK 3ステップ 共役酵素法(共役酵素:HK, G6PDH)
ALP 1ステップ 直接法(有色生成物を測定)
γ-GT 1ステップ 直接法(有色生成物を測定)
LD 1ステップ 直接法(補酵素の変化を測定)

答え:2と3

31 α-アミラーゼで正しいのはどれか。

  1. エキソ型酵素である。
  2. 主に肝臓で代謝される。
  3. 活性中心にZn2+を有する。
  4. α-1,6-グリコシド結合に作用する。
  5. 唾液腺型は膵型より分子量が大きい。

この問題は、消化酵素であるα-アミラーゼの生化学的な性質、アイソザイム、そして臨床的意義に関する総合的な知識を問う問題です。

α-アミラーゼがデンプンを分解する際の作用様式、生体内での動態(代謝経路)、活性に必要な金属イオン、そして主要なアイソザイムである唾液腺型(S型)と膵型(P型)の違いを正確に理解する必要があります。

★α-アミラーゼとは

α-アミラーゼは、デンプン(アミロース、アミロペクチン)やグリコーゲンなどの多糖類を分解する消化酵素です。主に唾液腺膵臓で産生され、血中に逸脱したものが臨床検査で測定されます。

選択肢を見ていきましょう。

  • エキソ型酵素である。:
    これは誤りです。α-アミラーゼは、デンプンの分子鎖の内部にあるα-1,4-グリコシド結合をランダムに切断します。このように、高分子の内部から分解する酵素をエンド型酵素と呼びます。末端から順に分解していくエキソ型酵素(β-アミラーゼなど)とは作用様式が異なります。

  • 主に肝臓で代謝される。:
    これは誤りです。α-アミラーゼは分子量が比較的小さいため(約55,000)、腎臓の糸球体で濾過され、その後、近位尿細管で再吸収されて分解されます。そのため、腎機能が低下すると、アミラーゼの血中からのクリアランス(除去)が遅れ、高アミラーゼ血症をきたすことがあります。肝臓は主要な代謝経路ではありません。

  • 活性中心にZn²⁺を有する。:
    これは誤りです。α-アミラーゼがその酵素活性を発揮するためには、補因子として**カルシウムイオン(Ca²⁺)クロールイオン(Cl⁻)**が必要です。亜鉛(Zn²⁺)は活性に必須ではありません。

  • α-1,6-グリコシド結合に作用する。:
    これは誤りです。α-アミラーゼが切断するのは、グルコースが直鎖状に連なるα-1,4-グリコシド結合です。アミロペクチンなどの枝分かれ構造を形成するα-1,6-グリコシド結合には作用しません。

  • 唾液腺型は膵型より分子量が大きい。:
    これは正しいです。唾液腺型(S型)アミラーゼと膵型(P型)アミラーゼは、タンパク質としての一次構造は非常に似ています。しかし、S型アミラーゼは産生された後に糖鎖修飾を受けるため、P型アミラーゼよりも分子量が大きくなります。この分子量の違いを利用して、電気泳動法などで両アイソザイムを分離・測定することが可能です。

以上よりは、『唾液腺型は膵型より分子量が大きい。』になります。

★α-アミラーゼの主な性質

項目 正しい内容
アイソザイム 唾液腺型 (S型) は糖鎖修飾により、膵型 (P型) より分子量が大きい。
作用様式 エンド型酵素(内部から分解)である。
代謝経路 主に腎臓で代謝・排泄される。
活性に必要なイオン Ca²⁺ と Cl⁻ が必要である。
作用する化学結合 α-1,4-グリコシド結合を切断する。

答え:5

32 サルコイドーシスの活動性マーカーはどれか。

  1. プロカルシトニン
  2. 心臓型脂肪酸結合蛋白
  3. デオキシピリジノリン
  4. アンギオテンシン変換酵素
  5. N-アセチルグルコサミニダーゼ

この問題は、全身性の肉芽腫性疾患であるサルコイドーシスの病勢(活動性)を評価するために用いられる、特異的な血液検査マーカーはどれかを問う問題です。

★サルコイドーシスとは

サルコイドーシスは、原因不明の全身性疾患で、体の様々な臓器(特に肺、眼、皮膚、リンパ節など)に、マクロファージなどが集まってできた類上皮細胞肉芽腫という結節が形成されます。この肉芽腫の量や活動性が、疾患の重症度や活動性と関連します。

各選択肢のマーカーの臨床的意義を確認していきます。

  • プロカルシトニン:
    主に細菌感染症、特に敗血症の重症度を評価するためのマーカーです。サルコイドーシスのような非感染性の炎症疾患では通常、上昇しません。

  • 心臓型脂肪酸結合蛋白 (H-FABP):
    心筋細胞が虚血や壊死に陥った際に血中に逸脱するタンパク質で、急性心筋梗塞の早期診断マーカーとして用いられます。

  • デオキシピリジノリン:
    骨基質のコラーゲンが分解される際に尿中に排泄される物質で、骨吸収マーカーとして骨粗鬆症の診断や治療効果判定に用いられます。

  • アンギオテンシン変換酵素 (ACE):
    ACEは、血圧調節に関わるレニン-アンジオテンシン系の酵素です。サルコイドーシスの特徴である類上皮細胞肉芽腫を構成する細胞が、このACEを産生します。そのため、肉芽腫が活発に形成されている活動期のサルコイドーシスでは、血中のACE濃度が病勢を反映して上昇します。このことから、ACEはサルコイドーシスの診断補助および活動性マーカーとして広く用いられています。

  • N-アセチルグルコサミニダーゼ (NAG):
    腎臓の近位尿細管に存在する酵素で、尿細管が障害されると尿中に漏れ出てきます。腎尿細管障害のマーカーとして用いられます。

以上のことから、サルコイドーシスの活動性マーカーはアンギオテンシン変換酵素です。
(※補足:ACEの他に、活性化Tリンパ球から放出される可溶性IL-2受容体(sIL-2R)も、リンパ球の活動性を反映する優れた活動性マーカーとして用いられます。)

主な臨床検査マーカーとその対象となる疾患を以下にまとめます。

★主な臨床検査マーカーと対象疾患

検査マーカー 主な対象疾患・病態
アンギオテンシン変換酵素 (ACE) サルコイドーシス(活動性)
プロカルシトニン 細菌感染症、敗血症
心臓型脂肪酸結合蛋白 (H-FABP) 急性心筋梗塞
デオキシピリジノリン 骨吸収亢進状態(骨粗鬆症など)
N-アセチルグルコサミニダーゼ (NAG) 腎尿細管障害

答え:4

33 酵素とその分類の組合せで正しいのはどれか。

  1. キナーゼ    異性化酵素
  2. アルドラーゼ    転移酵素
  3. エステラーゼ    脱離酵素
  4. デヒドロゲナーゼ    酸化還元酵素
  5. トランスフェラーゼ    加水分解酵素

この問題は、国際生化学分子生物学連合(IUBMB)が定める酵素の国際分類(EC番号)に基づき、酵素の一般名とその酵素が触媒する反応の種類を正しく結びつけられるかを問う問題です。

★酵素の国際分類

酵素は、触媒する化学反応の種類によって、以下の6つに分類されます。

  • 酸化還元酵素 (Oxidoreductases): 酸化還元反応を触媒する。(例: デヒドロゲナーゼ

  • 転移酵素 (Transferases): ある官能基を分子から別の分子へ転移させる。(例: キナーゼ、トランスフェラーゼ

  • 加水分解酵素 (Hydrolases): 水を加えて化学結合を切断(加水分解)する。(例: エステラーゼ、リパーゼ)

  • 脱離酵素 (Lyases): 加水分解以外の方法で化学結合を切断し、二重結合などを形成する。(例: アルドラーゼ

  • 異性化酵素 (Isomerases): 分子内で原子の配置を変化させ、異性体を作る。

  • 合成酵素 (Ligases): ATPなどのエネルギーを使って2つの分子を結合させる。

各選択肢の組合せを見ていきましょう。

  • キナーゼ ― 異性化酵素:
    これは誤りです。キナーゼは、ATPなどからリン酸基を別の分子に転移させる酵素です。リン酸基という「基を転移」させるため、転移酵素(EC 2)に分類されます。(例: クレアチンキナーゼ、ヘキソキナーゼ)

  • アルドラーゼ ― 転移酵素:
    これは誤りです。アルドラーゼは、フルクトース-1,6-ビスリン酸をグリセルアルデヒド-3-リン酸とジヒドロキシアセトンリン酸に切断するなど、C-C結合を切断する反応を触媒します。これは脱離酵素(リアーゼ、EC 4)に分類されます。

  • エステラーゼ ― 脱離酵素:
    これは誤りです。エステラーゼは、エステル結合を水を用いて加水分解する酵素です。水を加えて結合を切断するため、加水分解酵素(ヒドロラーゼ、EC 3)に分類されます。

  • デヒドロゲナーゼ ― 酸化還元酵素:
    これは正しいです。デヒドロゲナーゼは「脱水素酵素」とも呼ばれ、基質から水素原子(プロトンと電子)を取り除く反応(酸化反応)を触媒します。これは酸化還元反応そのものであり、酸化還元酵素(EC 1)に分類されます。(例: 乳酸デヒドロゲナーゼ)

  • トランスフェラーゼ ― 加水分解酵素:
    これは誤りです。トランスフェラーゼは「転移酵素」の総称です。ある分子から官能基を別の分子に移す反応を触媒するため、転移酵素(EC 2)に分類されます。(例: AST、ALTなどのアミノトランスフェラーゼ)

主な酵素の一般名とその国際分類を以下にまとめます。

★主な酵素の分類

酵素の一般名 酵素の分類 EC番号
デヒドロゲナーゼ 酸化還元酵素 1
キナーゼ 転移酵素 2
トランスフェラーゼ 転移酵素 2
エステラーゼ 加水分解酵素 3
アルドラーゼ 脱離酵素(リアーゼ) 4

上記より酵素とその分類の組み合わせで正しいのは、「デヒドロゲナーゼ – 酸化還元酵素」 です。
答え:4

34 分岐鎖アミノ酸はどれか。2つ選べ。

  1. バリン
  2. グリシン
  3. システイン
  4. イソロイシン
  5. トリプトファン
分岐鎖アミノ酸(Branched-Chain Amino Acid: BCAA)とは、その名の通り、アミノ酸の側鎖の炭素骨格が枝分かれした構造を持つアミノ酸の総称です。
具体的にはバリン、ロイシン、イソロイシンの3種類がこれに分類されます。これらはすべて、体内で合成することができない必須アミノ酸です。

続いて選択肢を含めて、それぞれのアミノ酸を簡単に見ていきましょう。

★アミノ酸の分類まとめ表

アミノ酸 分類 特徴
バリン 分岐鎖アミノ酸 (BCAA) 側鎖が枝分かれした構造を持つ。必須アミノ酸
グリシン 脂肪族アミノ酸 側鎖が最も単純な構造で分岐していない。非必須アミノ酸。
システイン 含硫アミノ酸 側鎖に硫黄を含むが分岐していない。非必須アミノ酸。
イソロイシン 分岐鎖アミノ酸 (BCAA) 側鎖が枝分かれした構造を持つ。必須アミノ酸
トリプトファン 芳香族アミノ酸 側鎖にインドール環を持つ。必須アミノ酸

 

答え:1と4

35 ビリルビンで正しいのはどれか。

  1. 極大吸収波長は520nmである。
  2. 2つのピロール環で構成される。
  3. 酸化されるとビリベルジンになる。
  4. 間接ビリルビンは尿中に排泄される。
  5. 直接ビリルビンはHPLC法でα分画に検出される。

ビリルビンは、主に古くなった赤血球中のヘモグロビンが分解されて生じる、黄色の胆汁色素です。黄疸の原因物質であり、その代謝経路と性質を理解することは臨床検査において非常に重要です。

  • 生成と輸送: 脾臓や肝臓などで、ヘムがヘムオキシゲナーゼによって分解され、まず緑色のビリベルジンが生成されます。次に、ビリベルジンはビリベルジンレダクターゼによって還元されて、黄色の「間接ビリルビン(非抱合型ビリルビン)」になります。間接ビリルビンは脂溶性で水に溶けにくいため、血中ではアルブミンと結合して肝臓へ運ばれます。

  • 肝臓での抱合: 肝臓に取り込まれた間接ビリルビンは、「UGT(UDP-グルクロン酸転移酵素)の働きでグルクロン酸と結合(抱合)され、水溶性直接ビリルビン(抱合型ビリルビン)」に変換されます。

  • 排泄: 直接ビリルビンは胆汁の主成分として十二指腸に排泄され、腸内細菌によってウロビリノーゲンとなり、その大部分は便中にステルコビリンとして排泄されます。一部は腸管から再吸収され、尿中にウロビリンとして排泄されます。

選択肢を下記にまとめました。

項目 内容 正誤と解説
吸収波長 極大吸収波長は520nmである × 誤り
アルブミン結合ビリルビンの極大吸収波長は約460nm
構造 2つのピロール環で構成される × 誤り
4つのピロール環が直鎖状に結合したテトラピロール化合物
酸化還元 酸化されるとビリベルジンになる ○ 正しい
ビリルビン(黄)は酸化されてビリベルジン(緑)になる
排泄 間接ビリルビンは尿中に排泄される × 誤り
尿中に排泄されるのは水溶性直接ビリルビン。間接ビリルビンはアルブミンと結合しているため尿中に出ない。
HPLC分画 直接ビリルビンはα分画に検出される × 誤り
α分画間接ビリルビン直接ビリルビンβ分画、γ分画に検出される。

答え:3

36 ビタミンで正しいのはどれか。

  1. ビタミンAは骨形成を促進する。
  2. ビタミンB6はレチノールと結合する。
  3. ビタミンCはコラーゲンの生成に関与する。
  4. ビタミンDは血液凝固因子の生成に必要である。
  5. ビタミンKはアミノトランスフェラーゼのホロ化に関与する。

ビタミンの問題は頻出です。選択肢のビタミンの内容の把握はもちろん、水溶性脂溶性ビタミンの種類と特徴も覚えておくべきでしょう。

選択肢のビタミン まとめ

ビタミン 選択肢の内容 正誤と正しい機能
ビタミンA 骨形成を促進する × 誤り
骨代謝の調節に関わる。過剰摂取は骨に有害。
ビタミンB₆ レチノールと結合する × 誤り
アミノ酸代謝の補酵素アミノトランスフェラーゼのホロ化に関与。
ビタミンC コラーゲンの生成に関与する ○ 正しい
コラーゲン合成における水酸化反応の補酵素として必須。
ビタミンD 血液凝固因子の生成に必要である × 誤り
カルシウムとリンの代謝を調節し、骨の健康を維持する。
ビタミンK アミノトランスフェラーゼのホロ化に関与する × 誤り
血液凝固因子の生成(γ-カルボキシル化)に必須。

 

ビタミン一覧をまとめた記事もあります。参考にしてください。

以上より、ビタミンについて正しいのは、③の「ビタミンCはコラーゲンの生成に関与する。 」です。
答え:3

37 分子量で分離するのはどれか。

  1. 逆相クロマトグラフィ
  2. 吸着クロマトグラフィ
  3. 分配クロマトグラフィ
  4. ゲルろ過クロマトグラフィ
  5. アフィニティクロマトグラフィ

この問題は、様々なクロマトグラフィー分離原理を正しく理解しているかを問う問題です。

★クロマトグラフィーの基本原理

クロマトグラフィーは、物質を固定相(カラムなどに充填された動かない部分)と移動相(サンプルを運ぶ液体や気体)に分配させ、その相互作用の強さの違いを利用して混合物を分離する技術の総称です。

各選択肢のクロマトグラフィーを確認していきます。

  • 逆相クロマトグラフィ:
    疎水性(極性の低さ)に基づいて分離します。固定相に疎水性の高い物質(オクタデシルシリル化シリカゲルなど)、移動相に極性の高い液体(水/メタノールなど)を用います。疎水性の高い物質ほど固定相に強く保持され、溶出が遅くなります。分子量で分離するわけではありません。

  • 吸着クロマトグラフィ:
    固定相表面への吸着力の差を利用して分離します。通常、固定相にシリカゲルなどの極性の高い吸着剤を用い、極性の高い物質ほど強く吸着され、溶出が遅くなります。

  • 分配クロマトグラフィ:
    固定相と移動相という混じり合わない二つの液体相への溶解度(分配係数)の差を利用して分離します。より溶解しやすい相と共に移動するため、物質によって移動速度に差が出ます。

  • ゲルろ過クロマトグラフィ (サイズ排除クロマトグラフィ):
    これは分子の大きさ(分子量)に基づいて分離する方法です。多孔質のゲル粒子(担体)を固定相として用います。
    分子量が大きい物質: ゲルの細孔に入れないため、ゲルの外側を素通りして速く溶出します。
    分子量が小さい物質: ゲルの細孔の奥深くまで入り込むため、移動経路が長くなり、ゆっくりと溶出します。
    このように、分子ふるい(モレキュラーシーブ)の原理で、大きいものから順に溶出されます。

  • アフィニティクロマトグラフィ:
    生化学的な特異的親和性(アフィニティー)を利用する、非常に特異性の高い分離法です。例えば、固定相に抗体を結合させておき、混合物の中からその抗体に特異的に結合する抗原だけを捕捉・分離します。

以上のことから、分子量で分離するのはゲルろ過クロマトグラフィーです。

主なクロマトグラフィーの分離原理を以下にまとめます。

★主なクロマトグラフィーの分離原理

クロマトグラフィーの種類 分離の原理
ゲルろ過クロマトグラフィ 分子の大きさ(分子量)
逆相クロマトグラフィ 疎水性(極性)
吸着クロマトグラフィ 吸着力
分配クロマトグラフィ 溶解度(分配)
アフィニティクロマトグラフィ 特異的親和性

答え:4

38 必須脂肪酸はどれか。

  1. オレイン酸
  2. リノール酸
  3. ステアリン酸
  4. パルミチン酸
  5. ドコサヘキサエン酸

この問題は、「必須脂肪酸」の定義を正しく理解しているかを問う問題です。

★必須脂肪酸とは

必須脂肪酸とは、ヒトの体内で生命活動を維持するために不可欠でありながら、体内で合成することができない、あるいは必要量を満たす量を合成できないため、食事から摂取する必要がある多価不飽和脂肪酸のことです。

ヒトでは、炭素鎖のω(オメガ)末端から6番目に最初の二重結合を持つω6系脂肪酸と、3番目に持つω3系脂肪酸を合成できないため、これらの系統の親となる脂肪酸が必須となります。


具体的には、リノール酸(ω6系)α-リノレン酸(ω3系)がこれにあたります。

上記で答えが出てしまっていますが、選択肢を確認していきます。

  • オレイン酸:
    ω9系の一価不飽和脂肪酸です。体内で飽和脂肪酸から合成することができるため、必須脂肪酸ではありません

  • リノール酸:
    ω6系の多価不飽和脂肪酸です。体内で合成することができず、食事からの摂取が必須です。細胞膜の構成成分や、プロスタグランジンなどの生理活性物質の前駆体として重要な役割を果たします。したがって、これは必須脂肪酸です。

  • ステアリン酸 / d. パルミチン酸:
    これらは飽和脂肪酸です。体内で糖質や他の脂肪酸から合成することができるため、必須脂肪酸ではありません

  • ドコサヘキサエン酸 (DHA):
    ω3系の多価不飽和脂肪酸です。DHAは脳や網膜の機能維持に非常に重要ですが、厳密には必須脂肪酸であるα-リノレン酸から体内で合成することが可能です。しかし、その変換効率は非常に低いため、食事から直接摂取することが強く推奨されており、「条件付き必須脂肪酸」と呼ばれることもあります。ただし、親となるリノール酸やα-リノレン酸とは異なり、絶対的な必須脂肪酸の定義からは外れる場合があります。設問の選択肢の中では、リノール酸が最も明確な必須脂肪酸です。

主な脂肪酸とその必須性を以下にまとめます。

★主な脂肪酸の分類と必須性

脂肪酸名 分類 必須性
リノール酸 ω6系多価不飽和脂肪酸 必須
α-リノレン酸 ω3系多価不飽和脂肪酸 必須
オレイン酸 ω9系一価不飽和脂肪酸 非必須
ステアリン酸 飽和脂肪酸 非必須
パルミチン酸 飽和脂肪酸 非必須
ドコサヘキサエン酸 (DHA) ω3系多価不飽和脂肪酸 条件付き必須

※DHAはα-リノレン酸から合成可能

答え:2

39 尿酸で正しいのはどれか。

  1. 腫瘍崩壊症候群で低下する。
  2. 蛋白結合型として存在する。
  3. ウリカーゼを用いた酵素法で測定する。
  4. 高尿酸血症の臨床判断値に性差はない。
  5. ピリミジン塩基の最終代謝産物である。

この問題は、核酸代謝産物である尿酸の生成、血中での存在様式、測定法、および病態との関連についての総合的な知識を問う問題です。

尿酸は、細胞の核酸(DNA, RNA)やエネルギー通貨であるATPに含まれるプリン塩基アデニン、グアニン)が体内で分解されて生じる最終代謝産物です。

各選択肢を見ていきましょう。

  • 腫瘍崩壊症候群で低下する。:
    これは誤りです。腫瘍崩壊症候群は、化学療法などによって大量のがん細胞が急速に破壊される病態です。がん細胞が破壊されると、その核酸が大量に血中に放出され、プリン代謝が亢進するため、尿酸は著しく上昇(高値)します。

  • 蛋白結合型として存在する。:
    これは誤りです。血中の尿酸は、そのほとんど(95%以上)がタンパク質と結合していない遊離型として存在します。そのため、糸球体で自由に濾過されます。

  • ウリカーゼを用いた酵素法で測定する。:
    これは正しいです。臨床検査で最も広く用いられている尿酸の測定法は、ウリカーゼ(尿酸オキシダーゼ)を用いる酵素法です。この方法では、ウリカーゼが尿酸をアラントインと過酸化水素(H₂O₂)に分解する反応を利用します。生成した過酸化水素を、ペルオキシダーゼを介した色素反応で定量することで、尿酸濃度を測定します。

  • 高尿酸血症の臨床判断値に性差はない。:
    これは誤りです。尿酸値には性差があり、一般に男性の方が女性より高い値を示します。これは女性ホルモン(エストロゲン)に尿酸の尿中排泄を促進する作用があるためです。高尿酸血症の診断基準値(臨床判断値)は7.0 mg/dLを超える場合とされていますが、これは性別に関わらず共通です。しかし、基準範囲(正常値)は男女で異なり、通常、男性の方が高い値に設定されています。したがって、「臨床判断値に性差はない」は正しいですが、「高尿酸血症の」という文脈全体で、尿酸値そのものに性差があるという事実を無視しているため、この選択肢は不適切と言えます。(※注:もし「基準範囲に性差はない」という問いであれば明確に誤りです。「臨床判断値」そのもの(7.0mg/dLというカットオフ値)には性差がありませんが、背景となる生理的な値には性差がある点を理解することが重要です。)

  • ピリミジン塩基の最終代謝産物である。:
    これは誤りです。前述の通り、尿酸はプリン塩基(アデニン、グアニン)の最終代謝産物です。ピリミジン塩基(シトシン、チミン、ウラシル)は、β-アラニンなどのアミノ酸にまで分解されます。

尿酸に関する重要なポイントを以下にまとめます。

★尿酸の主な特徴

項目 正しい内容
測定法 ウリカーゼを用いた酵素法が一般的である。
由来 プリン塩基の最終代謝産物である。
病態との関連 腫瘍崩壊症候群で著しく上昇する。
血中での存在様式 ほとんどが遊離型として存在する。
基準値・臨床判断値 生理的な血中濃度には性差がある(男性>女性)。

答え:4

40 水溶性ビタミンはどれか。2つ選べ。

  1. 葉 酸
  2. レチノール
  3. ピリドキシン
  4. トコフェロール
  5. カルシフェロール
この問題は、ビタミンの最も基本的な分類である「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」を正しく区別できるかを聞いています。
それぞれのビタミンの化学名(カタカナ名)と、どのビタミンに該当するかを正確に覚えているかが鍵となります。問題36でも解説に載せているリンクを参考にしてください。【国試対策】これで完璧!臨床検査で重要なビタミン一覧を徹底解説

  • 水溶性ビタミン: 水に溶けやすい性質を持ち、過剰に摂取しても尿として排出されやすいため、体内に蓄積しにくい。ビタミンB群ビタミンCがこれにあたります。

  • 脂溶性ビタミン: 油(脂質)に溶けやすい性質を持ち、過剰に摂取すると体内の脂肪組織などに蓄積されやすい。ビタミンA、D、E、Kがこれにあたります。「D・A・K・E(だけ)」と覚えるといいと思います。

さい
さい
いちいち難しいカタカナ表記を聞いてくるのが国試らしいですね(嫌味)

答え:1と3

41 eGFRの計算に使用するのはどれか。2つ選べ。

  1. 身 長
  2. 性 別
  3. 体 重
  4. 年 齢
  5. 尿中クレアチニン濃度
この問題は、腎機能の重要な指標であるeGFR(推算糸球体濾過量)が、どの情報を使って計算されるかを聞いています。eGFRは、採血で得られる血清クレアチニン値だけでは評価しきれない腎機能を、年齢や性別といった個人差を考慮して、より正確に「推算」するための指標です。
計算式にどの補正項目が使われるかを理解しているかがポイントとなります。

  • eGFR (mL/min/1.73m²) = 194 × 血清クレアチニン⁻¹⁰⁹⁴ × 年齢⁻⁰²⁸⁷ × (女性の場合は × 0.739)

この式からわかるように、eGFRを計算するためには血清クレアチニン値」「年齢」「性別の3つの情報が必要です。

特に解説する必要もありませんが、上記より、eGFR (推算糸球体濾過量) の計算に使用されるのは「性別と年齢」です。
答え:2と4

42 疾患とホルモン異常の組合せで誤っているのはどれか。

  1. 尿崩症   オキシトシン
  2. 橋本病   サイロキシン
  3. 褐色細胞腫   ノルアドレナリン
  4. 慢性腎不全   PTH
  5. 腎血管性高血圧症   レニン
  • この問題は、特定の疾患とその原因となる、あるいは関連して異常値を示すホルモンの組み合わせについての知識を聞いています。
  • 各疾患の病態を理解し、どの内分泌器官から分泌される何のホルモンが
    増加」するのか「減少」するのかを正確に結びつけられるかが重要です。

各選択肢を見ていきましょう。

  • 尿崩症 ― オキシトシン:
    これは誤っています。尿崩症は、腎臓での水分再吸収が障害され、多尿とそれに伴う口渇・多飲をきたす疾患です。この水分再吸収を指令するホルモンは、下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)です。尿崩症は、このADHの分泌不全(中枢性)または腎臓のADHに対する反応性低下(腎性)によって起こります。
    一方、オキシトシンも同じく下垂体後葉から分泌されますが、その主な作用は分娩時の子宮収縮や射乳です。尿崩症とは直接関係ありません。

  • 橋本病 ― サイロキシン:
    これは正しい組合せです。橋本病(慢性甲状腺炎)は、自己免疫によって甲状腺組織が破壊される疾患で、甲状腺機能低下症の最も多い原因です。甲状腺機能が低下すると、甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)やトリヨードサイロニン(T3)の産生が減少し、血中濃度が低下します。

  • 褐色細胞腫 ― ノルアドレナリン:
    これは正しい組合せです。褐色細胞腫は、副腎髄質または傍神経節に発生する腫瘍で、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン)を過剰に産生・分泌します。これにより、高血圧、動悸、頭痛などの症状を引き起こします。

  • 慢性腎不全 ― PTH:
    これは正しい組合せです。慢性腎不全では、リンの排泄障害(高リン血症)と活性型ビタミンDの産生低下(低カルシウム血症)が起こります。この低カルシウム血症と高リン血症が副甲状腺を刺激し、パラソルモン(PTH)の分泌が過剰になります。これを二次性副甲状腺機能亢進症と呼びます。

  • 腎血管性高血圧症 ― レニン:
    これは正しい組合せです。腎血管性高血圧症は、腎動脈の狭窄によって腎血流が低下することが原因です。腎臓はこれを全身の血圧低下と誤認し、血圧を上昇させるホルモン系であるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を活性化させます。その最初のステップとして、腎臓からレニンの分泌が亢進します。

主な疾患とそれに関連するホルモン異常を以下にまとめます。

★主な疾患と関連ホルモン

疾患名 関連する主なホルモン 病態(異常)
尿崩症 抗利尿ホルモン (ADH) 分泌低下 or 作用不全
橋本病 サイロキシン (T4) 分泌低下
褐色細胞腫 ノルアドレナリン 分泌過剰
慢性腎不全 PTH 分泌過剰(二次性)
腎血管性高血圧症 レニン 分泌過剰

 

答え:1

43 LDアイソザイムで正しいのはどれか。

  1. 2量体である。
  2. LD4は冷蔵で安定である。
  3. LD5は肝疾患で上昇する。
  4. LD1の半減期は約8時間である。
  5. 5種類のサブユニットからなる。

この問題は、臨床的に重要な酵素である乳酸脱水素酵素(LD)のアイソザイムについて、その構造安定性臓器特異性血中半減期といった基本的な性質を正しく理解しているかを問う問題です。各アイソザイム(LD1~LD5)の特徴を正確に把握しているかが重要になります。

★LDアイソザイムの基本

LDは、H(Heart)型M(Muscle)型という2種類のサブユニット(ポリペプチド鎖)が4つ組み合わさってできた四量体(4量体)の酵素です。
このHとMの組み合わせの違いによって、電気泳動での移動度が異なる5種類のアイソザイム(LD1~LD5)が存在します。

  • LD1: HHHH (H₄)

  • LD2: HHHM (H₃M₁)

  • LD3: HHMM (H₂M₂)

  • LD4: HMMM (HM₃)

  • LD5: MMMM (M₄)

選択肢を含め、内容を整理していきます。

  • 2量体である。:
    これは誤りです。上記のとおり、LDは4つのサブユニットから構成される四量体(4量体)です。2量体ではありません。

  • LD4は冷蔵で安定である。:
    これは誤りです。LDアイソザイムの中で、LD4と特にLD5はMサブユニットを多く含み、これらは低温(冷蔵)で不安定であり、活性が失われやすい性質があります(寒冷不安定性)。そのため、LDアイソザイム分析用の検体は、冷蔵ではなく室温で保存するのが原則です。

  • LD5は肝疾患で上昇する。:
    これは正しいです。各アイソザイムは臓器によって分布が異なります。
    ・LD1, LD2: 心筋、赤血球に多い
    ・LD3: 肺、脾臓、血小板などに多い
    ・LD4, LD5: 肝臓骨格筋に多い
    したがって、急性肝炎などの肝細胞障害や、筋ジストロフィーなどの骨格筋疾患では、MサブユニットからなるLD5が著しく上昇します。

  • LD1の半減期は約8時間である。:
    これは誤りです。LDアイソザイムは、Hサブユニットを多く含むほど血中での安定性が高く、半減期が長くなる傾向があります。LD1 (H₄) の半減期は最も長く約110~120時間(4~5日)です。逆に、LD5 (M₄) の半減期は最も短く、約8~10時間です。

  • 5種類のサブユニットからなる。:
    これは誤りです。LDアイソザイムのサブユニットは、H型M型2種類です。この2種類のサブユニットが4つ組み合わさることで、5種類のアイソザイムが形成されます。

LDアイソザイムの主な特徴を以下にまとめます。

★LDアイソザイムの主な特徴

項目 正しい内容
臓器分布 LD5は肝臓、骨格筋に多く分布する。
構造 四量体(4量体)である。
サブユニット H型M型2種類からなる。
安定性 LD4, LD5低温で不安定室温保存)。
血中半減期 LD1が最も長くLD5が最も短い

答え:3

44 飛行時間型質量分析(TOF-MS)法で誤っているのはどれか。

  1. イオン化物質は大気圧中を飛行する。
  2. イオン化物質の電荷は飛行時間に影響する。
  3. イオン化物質の飛行速度はエネルギー保存の法則から算出される。
  4. イオン化物質はレーザーの熱エネルギーへの変換により引き出される。
  5. イオン化にはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法が汎用される。

この問題は、微生物の同定などに広く用いられるMALDI-TOF MS(飛行時間型質量分析法)の測定原理を正しく理解しているかを問う問題です。正解の鍵は、「質量分析」という言葉の通り、イオン化された物質が真空飛行空間を飛び、その質量電荷比(m/z)によって飛行時間が異なることを利用して質量を測定するという、一連のプロセスを正確に把握しているかです。

MALDI-TOF MSの原理

  1. 試料調製: 微生物などの試料を、マトリックスと呼ばれる低分子有機物と一緒にターゲットプレート上で結晶化させます。

  2. イオン化(MALDI): 試料にレーザーを照射します。マトリックスがレーザーのエネルギーを吸収して熱せられ、試料分子(タンパク質など)を損傷なく気化させ(ソフトな脱離)、同時にイオン化します。これがマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法です。

  3. 加速: イオン源で生成したイオンを、一定の加速電圧で加速させ、運動エネルギーを与えます。

  4. 飛行: イオンは高真空に保たれた飛行空間(フライトチューブ)を飛行します。このとき、イオンの飛行速度は質量電荷比(m/z)に依存します。

    • 軽いイオン(m/zが小さい): 同じエネルギーを与えられると、速く飛ぶ。

    • 重いイオン(m/zが大きい): 遅く飛ぶ。

  5. 検出: 検出器に到達するまでの飛行時間を測定します。この飛行時間から、各イオンの質量電荷比(m/z)を正確に計算し、マススペクトルを作成します。

では、選択肢を見ていきましょう。

  • イオン化物質は大気圧中を飛行する。:
    これは誤っています。イオンが飛行する空間は、他の気体分子と衝突して飛行が妨げられないように、高真空に保たれています。大気圧中ではイオンはまっすぐ飛ぶことができません。

  • イオン化物質の電荷は飛行時間に影響する。:
    これは正しいです。飛行時間は質量電荷比(m/z)によって決まるため、質量(m)だけでなく電荷(z)も飛行時間に影響します。MALDI法では主に+1価のイオンが生成しますが、+2価などの多価イオンが生成することもあり、その場合は同じ質量の+1価イオンよりも速く飛びます。

  • イオン化物質の飛行速度はエネルギー保存の法則から算出される。:
    これは正しいです。イオン源で与えられた電気的な位置エネルギー(E = zV、Vは加速電圧)が、運動エネルギー(E = 1/2 mv²)に変換されます。このエネルギー保存の法則に基づいて、イオンの速度(v)が質量電荷比(m/z)に依存することが導かれます。

  • イオン化物質はレーザーの熱エネルギーへの変換により引き出される。:
    これは正しいです。マトリックスがレーザー光のエネルギーを効率よく吸収し、熱エネルギーに変換することで、周囲の試料分子を穏やかに気化・イオン化させます。

  • イオン化にはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法が汎用される。:
    これは正しいです。TOF-MSは様々なイオン化法と組み合わせることができますが、特にタンパク質や微生物などの高分子を生化学分野で分析する場合、MALDI法が最も一般的に用いられます。

MALDI-TOF MSの原理に関する要点を以下にまとめます。

★MALDI-TOF MSの原理

項目 正しい内容
飛行空間 高真空に保たれている。(大気圧中ではない)
イオン化法 MALDI法が汎用される。マトリックスがレーザーエネルギーを吸収する。
分離原理 飛行時間を測定し、質量電荷比(m/z)を算出する。
飛行時間 質量が小さく、電荷が大きいほど短くなる。
速度算出 エネルギー保存の法則に基づく。

上記より、イオンは高真空に保たれた飛行空間(フライトチューブ)を飛行します。
答え:1

第71回(PM)病理組織細胞学(45〜58)

45 薄切で切片に傷ができる場合の対処法はどれか。

  1. 逃げ角を変える。
  2. 刃を取り替える。
  3. 薄切する厚さの設定を変える。
  4. パラフィンブロックを冷却する。
  5. ミクロトーム刀の滑走速度を速くする。

この問題は、病理組織標本作製の重要な工程である薄切において、代表的なアーチファクト(作製上の不具合)の一つである「切片の傷(ナイフマーク、スコア)」が発生した場合の、最も適切で直接的な対処法を問う問題です。

★切片に傷ができる原因

薄切中に切片に縦方向の線状の傷(スコア)や裂け目ができる最も一般的な原因は、ミクロトームの刃(ナイフ)の切れ味に問題があることです。具体的には、

  • 刃の切れ刃に、目に見えないほどの微細な欠け(ニック)がある。

  • パラフィンくずや、組織内の硬い異物(カルシウム沈着など)が刃先に付着している。

  • 刃の一部が摩耗して鈍くなっている。

これらの欠陥部分がブロックを通過する際に、パラフィンと組織を引きずるように削ってしまうため、線状の傷となって現れます。

上記を参考にしつつ選択肢を見ていきます。

  • 逃げ角を変える。:
    逃げ角(クリアランスアングル)は、刃の傾きの設定です。この角度が不適切だと、切片が厚くなったり薄くなったりする(チャタリング)や、切片が圧縮される原因にはなりますが、線状の傷を直接引き起こす原因ではなく、その修正法にもなりません。

  • 刃を取り替える。:
    これは最も直接的で正しい対処法です。刃先に欠けや汚れがある場合、それを修正する最も確実な方法は、新しい刃に交換するか、刃の別の未使用の部分にブロックを移動させることです。これにより、傷の原因が物理的に取り除かれ、きれいな切片を得ることができます。

  • 薄切する厚さの設定を変える。:
    切片の厚さを変えることは、圧縮が強い場合や、薄すぎてうまく切れない場合などの対処法です。刃の欠陥が原因である傷を解消することはできません。

  • パラフィンブロックを冷却する。:
    ブロックの冷却は、パラフィンと組織の硬さを均一にし、薄切を容易にするための重要な前処理です。冷却が不十分だと切片が圧縮され、過冷却だと脆くなって砕ける原因になりますが、線状の傷の直接的な原因でも対処法でもありません。

  • 刀の滑走速度を速くする。:
    薄切は、速すぎず遅すぎず、一定のリズムで滑らかに行うことが重要です。速度を変えることで圧縮の度合いなどが変わることはありますが、刃の欠陥による傷をなくすことはできません。

薄切時に起こる主な不具合と、その対処法を以下にまとめます。

★薄切における主な不具合と対処法

不具合(アーチファクト) 主な原因 適切な対処法
切片の傷(スコア) 刃の欠け、汚れ 刃を取り替える、刃の位置をずらす
切片の圧縮 ブロックの冷却不足、刃が鈍い、逃げ角が小さい ブロックを再冷却する、刃を取り替える、逃げ角を調整する
チャタリング(厚薄) 逃げ角が不適切、各部の緩み 逃げ角を調整する、各部を締め直す
切片が砕ける ブロックの過冷却 ブロックを少し温める

薄切で切片に傷ができる場合の対処法で最も適切なのは、②「刃を取り替える」 です。
答え:2

46 膵臓の特殊染色(別冊No. 8)を別に示す。染色法はどれか。

  1. PAM染色
  2. Bodian染色
  3. Grimelius染色
  4. Warthin-Starry染色
  5. Masson-Fontana染色

この問題は、組織標本画像から、①組織・細胞の同定、②染色されている物質の推定、③適切な特殊染色法の選択、という3つのステップを正しく行えるかが問われる問題です。

提示された画像が膵臓のランゲルハンス島であり、その内部の特定の細胞が持つ神経内分泌顆粒が染色されていることを見抜き、その染色目的に合致する染色法、特に各種の銀染色(鍍銀法)の違いを理解しておかねばなりません。

★組織像の同定と所見の分析

まず、提示された画像を観察します。

  • 背景組織: 周囲に見られる濃いピンク色(好酸性)の細胞質を持つ細胞群は、消化酵素を産生する膵臓の外分泌腺房です。

  • 中心の構造: その中に、境界が比較的明瞭で、細胞が索状に配列し、淡いピンク色に見える島状の細胞集団があります。これが内分泌機能を担うランゲルハンス島です。

  • 染色された物質: ランゲルハンス島を構成する細胞の一部に、細胞質内が黒褐色の顆粒で満たされているものが多数観察されます。これは、特定の細胞が持つ分泌顆粒が特異的に染色されたことを示唆しています。

ランゲルハンス島にはグルカゴンを産生するA細胞(α細胞)、インスリンを産生するB細胞(β細胞)などが存在し、これらは神経内分泌細胞に分類されます。したがって、この染色は神経内分泌顆粒を検出するためのものと推測できます。

以上の所見を踏まえ、各選択肢の染色法が適切かどうかを見ていきます。

  • PAM染色 (Periodic acid-methenamine silver):
    過ヨウ素酸メセナミン銀染色は、糖タンパク質を豊富に含む基底膜(腎糸球体など)を黒く染め出す染色法です。神経内分泌顆粒を染める目的では使用しません。

  • Bodian染色:
    神経組織における神経線維(軸索)を黒褐色に染め出すための代表的な銀染色です。

  • Grimelius染色:
    これは正しい選択肢です。グリメリウス染色は、好銀性(Argyrophil)の性質を利用した銀染色法です。好銀性とは、組織自体に銀を還元する能力はないが、外部から還元剤を加えることで銀を沈着させることができる性質を指します。ランゲルハンス島のA細胞(α細胞)が産生するグルカゴン顆粒や、カルチノイドなどの神経内分泌腫瘍の顆粒がこの性質を持つため、本染色で特異的に黒褐色に染め出されます。画像の所見と完全に一致します。

  • Warthin-Starry染色:
    これも銀染色の一種ですが、主にスピロヘータ(梅毒トレポネーマなど)やヘリコバクター・ピロリといった、特殊な細菌を検出するために用いられます。

  • Masson-Fontana染色:
    銀親和性(Argentaffin)の性質を利用した銀染色法です。銀親和性とは、組織自体が銀イオンを還元して金属銀を沈着させる能力を持つ性質を指します。皮膚のメラニン色素や、消化管のEC細胞が持つセロトニン顆粒などがこの性質を示し、黒く染まります。ランゲルハンス島の一部の細胞も染まることがありますが、A細胞の染色にはGrimelius染色がより代表的です。

主な銀染色(鍍銀法)とその染色対象を以下にまとめます。

主な銀染色(鍍銀法)とその対象

染色法 主な染色対象 原理
Grimelius染色 ランゲルハンス島A細胞(グルカゴン顆粒)、神経内分泌腫瘍 好銀性 (Argyrophil)
Masson-Fontana染色 メラニン色素、EC細胞(セロトニン顆粒) 銀親和性 (Argentaffin)
PAM染色 基底膜(糖タンパク質) (酸化反応を利用)
Bodian染色 神経線維(軸索) (タンパク質への親和性)
Warthin-Starry染色 スピロヘータ、ピロリ菌など (菌体への吸着)

答え:3

47 子宮頸部細胞診のPapanicolaou染色標本(別冊No. 9)を別に示す。考えられる感染はどれか。

  1. カンジダ
  2. クラミジア
  3. トリコモナス
  4. ヘルペスウイルス
  5. ヒトパピローマウイルス

この問題は、子宮頸部細胞診のPapanicolaou(パパニコロウ)染色標本において、感染症によって引き起こされる特徴的な細胞変化を正しく読み取り、原因となる病原体を同定できるかを問う問題です。

画像にみられる「多核巨細胞」と、その核の内部構造の変化(すりガラス状核核縁濃縮が、どの病原体感染に特異的な所見であるかを知っておきましょう。

★画像の所見分析

提示された画像にみられる細胞の異常所見を詳細に分析します。

  • 多核巨細胞の出現: 複数の核が、一つの大きく豊富な細胞質内に集まって存在しています。

  • 核の圧排(Molding): 複数の核が互いに押し合うように密集し、接触面が平坦になっています。

  • すりガラス状の核: 核内のクロマチンパターンが消失し、均一で曇りガラスのように見えます。

  • 核縁の濃縮: クロマチンが核膜の直下に集まることで、核の縁が太く、濃く染まって見えます。

これらの所見(多核化、核の圧排、すりガラス状核、核縁濃縮)は、ウイルス感染、特に単純ヘルペスウイルス感染によって引き起こされる、極めて特徴的な細胞変化です。

上記を参考に選択肢も見ていきましょう。

  • カンジダ (Candida):
    真菌感染です。細胞診では、菌糸や胞子が赤紫色に染まって観察されますが、画像のような細胞変化は引き起こしません。

  • クラミジア (Chlamydia):
    細菌感染です。頸管腺細胞などの細胞質内に、微細な顆粒状の封入体を形成することが特徴ですが、核に著変は見られません。

  • トリコモナス (Trichomonas):
    原虫感染です。青緑色に染まる洋梨型の虫体が観察され、しばしば背景に多数の好中球が見られます。画像のような多核巨細胞は形成しません。

  • ヘルペスウイルス (Herpesvirus):
    これが正解です。上記「画像の所見分析」で挙げた4つの特徴(多核化、核の圧排、すりガラス状核、核縁濃縮)は、いずれもヘルペスウイルス感染細胞の典型像です。

  • ヒトパピローマウイルス (HPV):
    HPV感染を反映する特徴的な細胞としてコイロサイトが知られています。コイロサイトは、核の腫大と濃染、そして核の周囲の細胞質が明るく抜けて見える「核周囲空胞」が特徴であり、画像に見られる多核巨細胞とは形態が全く異なります。

子宮頸部細胞診でみられる主な感染症とその特徴的な細胞所見を以下にまとめます。

★子宮頸部細胞診における主な感染症の所見

病原体 主な細胞所見
ヘルペスウイルス 多核巨細胞、核の圧排、すりガラス状核、核縁濃縮
ヒトパピローマウイルス (HPV) コイロサイト(核周囲空胞)
カンジダ 菌糸、胞子
トリコモナス 洋梨状の虫体、多数の好中球
クラミジア 細胞質内封入体

答え:4

48 細胞内小器官で正しいのはどれか。

  1. 核は蛋白合成の場である。
  2. 細胞膜は脂質単層の構造を持つ。
  3. リボソームは蛋白分解の場である。
  4. ゴルジ装置には電子伝達系が存在する。
  5. ミトコンドリアは独自の遺伝情報を有する。

この問題は、真核細胞を構成する主要な細胞内小器官構造と機能に関する基本的な知識を問う問題です。核、細胞膜、リボソーム、ゴルジ装置、ミトコンドリアといった各器官が、細胞内でどのような役割分担をしているかを知っておきましょう。

★主な細胞内小器官の機能

細胞内小器官 主な構造・機能
ミトコンドリア ATP産生(好気呼吸)独自のDNAを持つ
遺伝情報(DNA)の保持、転写
リボソーム タンパク質合成翻訳
ゴルジ装置 タンパク質の修飾・選別・輸送
細胞膜 脂質二重層構造、細胞内外の物質輸送の制御

答え:5

49 上腹部の単純CT画像(第12胸椎の高さの横断面)とその模式図(別冊No. 10)を別に示す。矢印で示す臓器はどれか。

  1. 肝 臓
  2. 心 臓
  3. 脾 臓
  4. 大動脈

この問題は、人体の断面解剖、特に上腹部のCT画像における主要な臓器の位置関係を正しく理解しているかを問う問題です。正解の鍵は、CT画像の左右の向きを把握し、脊椎などのランドマークを基準として、腹腔内の右上方に位置する最大の臓器を特定する、基本的な画像読影能力です。

★CT画像の読影の基本

まず、提示されたCT画像(No. 10)の基本的な見方を理解します。

  • 断面: 第12胸椎の高さの横断面(水平断)です。

  • 向き: CT画像は、患者の足側から体を見上げた図として表示されるのがルールです。したがって、画像の左側が患者の体の右側画像の右側が患者の体の左側に対応します。

★画像の所見と解剖学的構造の同定

次に、画像内の具体的な構造を確認します。

  • ランドマーク: 画像の中央下部には、特徴的な形をした胸椎(骨)が白く描出されています。これが位置関係を把握する上での中心的な目印となります。

  • 矢印が指す臓器: 矢印は、画像の左側(=患者の右側)に広がる、非常に大きな実質臓器を指しています。この臓器は上腹部の大部分を占めています。

  • 周囲の臓器:

    • 胸椎のすぐ前には、円形の断面を持つ大動脈が見えます。

    • 画像の右側(=患者の左側)には、脾臓や、空気を含んで黒く見えるの一部が描出されています。

以上の解剖学的配置を踏まえ、各選択肢を見ていきます。

  • :
    胃は、体の左側に位置する臓器です。画像右側に見えていますが、矢印が指す場所とは異なります。

  • 肝臓:
    これが正解です。肝臓は腹腔内で最大の臓器であり、主に体の右上方に位置します。CT画像における位置、大きさ、形状のすべてが、矢印が指す臓-器の特徴と完全に一致します。

  • 心臓:
    心臓は、この断面レベルよりも頭側、横隔膜の上の胸腔内に位置します。このCT画像には描出されていません。

  • 脾臓:
    脾臓は、体の左後方に位置します。画像右側に見えていますが、矢印が指す場所とは反対側です。

  • 大動脈:
    大動脈は、脊椎の前面を走行する太い血管です。画像中央に見える円い構造物がそれにあたりますが、矢印が指す大きな臓器とは異なります。

★上腹部CTにおける主要臓器の配置

位置 主な臓器・構造物
右前方 肝臓(右葉)
中央前方 肝臓(左葉)、胃
左前方・側方 胃、脾臓
中央後方 脊椎、大動脈、下大静脈

この解剖学的な位置関係から、矢印が指している腹腔内で最も大きな臓器は肝臓であると判断できます。
答え:2

50 創傷治癒で正しいのはどれか。

  1. ケロイドは柔らかい組織である。
  2. 肉芽組織には毛細血管が乏しい。
  3. 創傷面が小さいほど瘢痕が形成されやすい。
  4. 二次的治癒では肉芽組織に依存して創傷が修復される。
  5. 一次的治癒は異物や細菌で汚染された創傷の治癒である。

この問題は、皮膚などが損傷した後の創傷治癒のプロセスについて、その基本的なメカニズム、治癒の様式(一次治癒二次治癒)、そして異常な治癒の結果生じる病態を正しく理解しているかを問う問題です。

★創傷治癒の2つの様式

創傷治癒のプロセスは、創の状態によって大きく2つのタイプに分けられます。

  • 一次治癒(一次癒合): 手術創のように、創縁が密着し、組織の欠損がほとんどない清潔な創に見られる治癒形式です。炎症反応は軽微で、線維芽細胞が産生するコラーゲンによって創が速やかに接着し、瘢痕もほとんど残りません。

  • 二次治癒(二次癒合): 組織の欠損が大きい創、あるいは感染や異物で汚染された創に見られる治癒形式です。まず、欠損部を埋めるために肉芽組織が形成され、その後、肉芽組織が瘢痕組織に置き換わり、創の上皮化が進むことで治癒します。治癒に時間がかかり、大きな瘢痕を残します。

選択肢の内容を確認していきましょう。

  • ケロイドは柔らかい組織である。:
    これは誤りです。ケロイドは、創傷治癒の過程でコラーゲンが過剰に産生され続けた結果生じる、硬く盛り上がった赤みを帯びた瘢痕です。正常な瘢痕を超えて周囲の皮膚に拡大していく特徴があります。

  • 肉芽組織には毛細血管が乏しい。:
    これは誤りです。肉芽組織は、創傷の欠損部を埋めるために増殖する新生組織であり、多数の新生毛細血管と、コラーゲンを産生する線維芽細胞、そして炎症細胞から構成されています。毛細血管が非常に豊富なため、鮮やかな赤色を呈し、出血しやすいのが特徴です。

  • 創傷面が小さいほど瘢痕が形成されやすい。:
    これは誤りです。瘢痕は、欠損した組織を修復するために作られるコラーゲン線維の集合体です。創傷面が小さい清潔な創は、主に一次治癒で治るため、瘢痕はほとんど形成されません。逆に、創傷面が大きいほど、修復に必要な肉芽組織やコラーゲンが多くなり、瘢痕も大きく形成されやすくなります。

  • 二次的治癒では肉芽組織に依存して創傷が修復される。:
    これは正しいです。上記「創傷治癒の2つの様式」で述べた通り、二次治癒は、組織の欠損部を埋める肉芽組織の増殖を足場として、創の収縮や上皮化が進むことで達成されます。肉芽組織の形成は、二次治癒の必須のプロセスです。

  • 一次的治癒は異物や細菌で汚染された創傷の治癒である。:
    これは誤りです。一次治癒は、手術創のような清潔で組織欠損の少ない創に見られる理想的な治癒形式です。異物や細菌で汚染された創は、炎症が強く遷延するため、二次治癒のプロセスをとります。

創傷治癒の様式と関連する組織の特徴を以下にまとめます。

★創傷治癒の様式と特徴

項目 一次治癒 二次治癒
対象となる創 清潔、組織欠損が少ない 汚染、組織欠損が大きい
肉芽組織の役割 軽微 必須(創を埋める足場となる)
治癒期間 短い 長い
瘢痕形成 軽微 大きい

上記より、創傷治癒について、正しい記述は「二次的治癒では肉芽組織に依存して創傷が修復される」です。

答え:4

51 病理解剖で誤っているのはどれか。

  1. 遺体に畏敬の念を持つ。
  2. 臨床経過の把握は不要である。
  3. 感染の危険性があることを認識する。
  4. 準備が整うまで遺体は冷蔵庫に保存する。
  5. 死後変化を少なくするため速やかに実施する。

病理解剖を実施するにあたっての基本的な心構え、手順、および注意点について、その理解度を問う問題です。

病理解剖が単なる死後の身体の検索ではなく、故人の生前の病態を究明し、今後の医療に貢献するための医学的行為であり、かつ故人と遺族に対する深い配慮を必要とすることを理解しましょう。

★ 病理解剖とは

病理解剖は、病気で亡くなられた患者さんのご遺体を解剖させていただき、生前の診断の妥当性、病気の進行度、治療の効果、そして直接の死因などを病理学的に詳しく調べることです。目的は、医学の発展と、将来の患者さんの治療に貢献することにあります。実施には、ご遺族からの承諾(インフォームド・コンセント)が必須です。

選択肢を確認していきます。

  • 遺体に畏敬の念を持つ。:
    これは正しいです。病理解剖は、尊いご献体があって初めて成り立つ医学行為です。故人への敬意と感謝の念(畏敬の念)を忘れないことは、医療従事者としての最も基本的な倫理観です。

  • 臨床経過の把握は不要である。:
    これは誤っています。病理解剖の最も重要な目的の一つは、生前の臨床診断と、死後の病理診断を対比検討(臨床病理カンファレンス; CPC)することです。そのためには、患者さんがどのような症状を呈し、どのような検査結果で、どのような治療を受けてこられたかという臨床経過を詳細に把握しておくことが不可欠です。臨床経過を知らずに解剖を行うことは、単なる臓器の観察に過ぎず、医学的な意義が大きく損なわれます。

  • 感染の危険性があることを認識する。:
    これは正しいです。ご遺体は、結核菌、肝炎ウイルス、HIV、プリオンなど、様々な病原体を保有している可能性があります。解剖執刀者および介助者は、これらの病原体による感染を防ぐため、標準予防策(スタンダードプリコーション)を徹底し、適切な個人防護具(手袋、マスク、ガウンなど)を着用する必要があります。

  • 準備が整うまで遺体は冷蔵庫に保存する。:
    これは正しいです。死後の自己融解や腐敗といった変化を遅らせ、組織をできるだけ生前に近い状態で観察するため、解剖の準備が整うまでは、ご遺体を低温(通常4℃)の冷蔵庫に安置します。

  • 死後変化を少なくするため速やかに実施する。:
    これは正しいです。死後、時間が経過するほど自己融解や腐敗が進み、正確な病理診断が困難になります。そのため、ご遺族の承諾が得られ次第、できる限り速やかに解剖を実施することが望ましいです。

病理解剖を実施する上での基本原則を以下にまとめます。

★病理解剖の基本原則

項目 内容
臨床情報 生前の臨床経過を十分に把握することが必須である。
倫理観 故人への畏敬の念を持ち、丁重に扱う。遺族への説明と同意が前提。
安全性 感染防御策を徹底する。
遺体の保存 死後変化を防ぐため、冷蔵保存し、速やかに実施する。

答え:2

52 術中迅速組織標本作製で最初に行うのはどれか。

  1. 固 定
  2. 脱 灰
  3. 脱 脂
  4. 脱 水
  5. 切り出し

この問題は、手術中に行われる「術中迅速組織標本作製の作製フローを正確に理解しているかを問う問題です。正解の鍵は、術中迅速診断の最大の目的がスピード」であり、通常の病理標本作製(パラフィン包埋)とは工程が大きく異なることを把握しているかです。手術室から提出された新鮮な検体に対して、まず何から手をつけるべきかを判断する必要があります。

★術中迅速組織標本作製とは

手術中に摘出された組織の一部を使い、10~20分程度の極めて短時間で病理組織標本を作製し、病理医が診断を下す検査です。切除した部分にがん細胞が残っていないか(断端陰性)、リンパ節への転移はないかなどを確認し、その後の手術方針を決定するために行われます。

★術中迅速標本の作製フロー

この検査はスピードが命であるため、通常の標本作製で行われる固定、脱水、パラフィン包埋といった時間のかかる工程をすべて省略し、凍結という技術を用います。

  1. 切り出し: 手術室から新鮮な(未固定の)組織検体が提出されたら、まず病理医または検査技師が肉眼で検体を観察し、診断に最も重要な部分を判断してメスで小さく切り出します。

  2. 【凍結】: 切り出した組織片を、OCTコンパウンドという包埋剤と共に急速凍結させ、硬いブロックを作ります。

  3. 【薄切】: クリオスタットという冷凍庫付きのミクロトーム内で、凍結したブロックを薄く切ります。

  4. 【染色】: ガラススライドに貼り付けた後、ごく短時間アルコールなどで固定し、迅速H&E染色などを行います。

  5. 【鏡検】: 病理医が顕微鏡で観察し、診断を手術室に報告します。

上記の内容を踏まえ、選択肢を見ていきます。

  • 固定:
    通常の標本では最初の工程ですが、術中迅速ではスライドガラスに貼り付けた後のごく短時間の工程であり、最初ではありません。

  • 脱灰:
    骨組織などからカルシウムを除く処理です。非常に時間がかかるため、術中迅速では行いません。

  • 脱脂:
    脂肪組織を扱う際に行うことがありますが、これも時間がかかるため、術中迅速の標準的な最初の工程ではありません。

  • 脱水:
    パラフィンを浸透させるために組織の水分を除く工程です。パラフィンを使わない術中迅速では行いません。

  • 切り出し:
    これが正解です。手術室から届いた新鮮な検体に対して、まず最初に行うべきことは、どこを標本にするかを病理学的に判断し、その部分をメスで切り出す作業です。この「切り出し」が、術中迅速標本作製の最初のステップとなります。

術中迅速標本作製と、通常のパラフィン標本作製の工程の主な違いを以下にまとめます。

★術中迅速標本と通常パラフィン標本の工程比較

工程 術中迅速標本 通常パラフィン標本
最初の操作 切り出し 固定
組織の硬化法 凍結 固定・脱水・パラフィン包埋
所要時間 約10~20分 通常1~2日

答え:5

53 免疫組織化学染色の検査対象となるのはどれか。

  1. DNA
  2. RNA
  3. 重金属
  4. 蛋白質
  5. 酵素活性

この問題は、病理診断に不可欠な「免疫組織化学染色(Immunohistochemistry, IHC)」の基本原理を正しく理解しているかを問う問題です。免疫組織化学染色が抗原抗体反応という特異的な結合を利用した技術であり、その検査対象となる「抗原」が、生体内で主にどのような物質であるかを把握していること重要です。

★免疫組織化学染色(IHC)の原理

免疫組織化学染色は、「抗原抗体反応」という免疫反応を組織標本に応用した染色法です。そのプロセスは以下の通りです。

  1. 組織切片の中にある、検出したい標的物質(=抗原)を特定します。

  2. その抗原に特異的に結合する一次抗体を反応させます。

  3. 一次抗体を可視化するために、標識(酵素や蛍光物質)が付いた二次抗体を反応させ、酵素反応による発色や蛍光を顕微鏡で観察します。

この原理から明らかなように、IHCは「抗原」となり得る物質を検出するための技術です。

選択肢をまとめつつ「抗原」として抗体と特異的に反応するのはどれかを考えます。

  • DNA / RNA:
    これらは核酸です。特定の遺伝子配列を組織標本上で検出する場合には、相補的な核酸プローブを用いるin situ ハイブリダイゼーション(ISH)法が使われます。IHCの直接の対象ではありません。

  • 重金属:
    銅や鉄などの重金属は元素であり、抗原抗体反応の対象にはなりません。これらを検出するには、ロダニン染色(銅)やベルリン青染色(鉄)といった、化学反応を利用した特殊な組織化学染色が用いられます。

  • 蛋白質:
    これが正解です。サイトケラチン、ホルモン受容体、増殖マーカー(Ki-67)、各種酵素など、細胞を構成したり機能したりする蛋白質(タンパク質)は、免疫系において抗原として認識される代表的な高分子です。したがって、IHCの最も主要な検査対象は蛋白質であり、がんの確定診断や分類、治療方針の決定に不可欠な技術となっています。

  • 酵素活性:
    IHCは、酵素という「蛋白質」の存在を証明することはできますが、その酵素が機能しているかどうか、つまり「活性を直接見ることはできません。酵素活性を組織上で検出するには、その酵素の基質を組織に与えて反応産物の有無を見る酵素組織化学(Enzyme histochemistry)という別の手法を用います。

組織標本における主な生体物質とその検出法を以下にまとめます。

★主な生体物質とその組織化学的検出法

検査対象 主な検出法
蛋白質 免疫組織化学染色 (IHC)
DNA / RNA in situ ハイブリダイゼーション (ISH)
重金属(鉄、銅など) 特殊染色(ベルリン青染色、ロダニン染色など)
酵素活性 酵素組織化学
多糖類(グリコーゲンなど) PAS染色

答え:4

54 細胞学的検査法の特徴で誤っているのはどれか。

  1. 患者への侵襲が少ない。
  2. 検体採取が容易である。
  3. 液状検体の検査ができる。
  4. 腫瘍の病期を確定できる。
  5. 腫瘍の組織型を類推できる。

この問題は、細胞学的検査法(細胞診)が持つ特徴について、その利点と限界を正しく理解しているかを問う問題です。

細胞診が「個々の細胞や細胞集団の形態を観察する」検査であるという本質を捉え、それに対して病理組織学的検査(組織診)「組織の構造(構築)を観察する」検査であるという違いを明確に区別することです。

★細胞診と組織診の違い

  • 細胞診: 「木を見て(個々の細胞を観察して)森を類推する」検査。剥離した細胞や吸引した細胞を対象とする。

  • 組織診: 「森そのもの(組織構造)を観察する」検査。組織片を対象とする。

この違いが、それぞれの検査法の特徴(長所・短所)を決定します。

選択肢を見ていきましょう。

  • 患者への侵襲が少ない。:
    これは正しいです。細胞診は、子宮頸部をこする、尿や喀痰を採取する、あるいは細い針で吸引するといった方法で検体を得ます。メスで組織を切り取る組織診(生検)に比べて、患者の身体的負担(侵襲)が格段に少ないのが大きな利点です。

  • 検体採取が容易である。:
    これは正しいです。侵襲が少ないことと関連して、検体採取は比較的簡単で、外来などで短時間に行える場合が多いです。特別な設備や麻酔を必要としない手技も多くあります。

  • 液状検体の検査ができる。:
    これは正しいです。尿、胸水、腹水、脳脊髄液といった液状の検体には、剥がれ落ちた細胞が浮遊しています。これらの細胞を遠心分離などで集めて標本を作製し、検査するのは細胞診の得意分野です。

  • 腫瘍の病期を確定できる。:
    これは誤りです。腫瘍の病期(ステージ)は、①腫瘍の大きさ(T)、②リンパ節への転移の有無(N)、③遠隔臓器への転移の有無(M)によって総合的に決定されます。これらを判断するには、腫瘍が周囲の組織にどれだけ浸潤しているか、血管やリンパ管に入り込んでいるかといった組織構築の情報が不可欠です。個々の細胞を観察する細胞診では、このような組織レベルの広がりを評価することはできず、病期を確定することはできません。病期の確定には、組織診やCTなどの画像診断が必要です。

  • 腫瘍の組織型を類推できる。:
    これは正しいです。細胞の形態(核の大小不同、クロマチンの状態、細胞質の性状など)を詳しく観察することで、その細胞がどのような組織に由来するのか(例:腺細胞、扁平上皮細胞)、またどのような種類の腫瘍なのか(例:腺癌、扁平上皮癌)を類推(推定)することが可能です。確定診断は組織診で行いますが、細胞診は治療方針の決定に繋がる重要な情報を提供します。

細胞診と組織診の主な特徴を比較し、以下にまとめます。

★細胞診と組織診の比較

特徴 細胞診 組織診
侵襲性・簡便性 少ない・容易 大きい・比較的煩雑
観察対象 個々の細胞、細胞集団 組織の構造(構築)
病期(ステージ)診断 不可能 可能
組織型診断 類推(推定) 確定
適した検体 擦過材料、液状検体、穿刺吸引材料 生検組織、手術摘出組織

答え:4

55 H-E染色標本(別冊No. 11)を別に示す。この臓器はどれか。

  1. 気 管
  2. 食 道
  3. 大 腸
  4. 皮 膚
  5. 膀 胱

このH-E染色組織標本の臓器同定問題では、判断の鍵となるのは、①表面を覆う上皮の種類、そして②組織内に見られる付属器(腺や毛など)の有無と種類です。

★画像の所見分析

提示されたH-E染色標本の組織学的特徴を詳細に観察します。

  • 最表層の上皮:
    標本の最も上層は、細胞が何層にも重なった重層扁平上皮で覆われています。さらにその表面には、核のないピンク色の層、すなわち角化層(角層)が明瞭に認められます。この「角化重層扁平上皮」は、体の表面を覆う組織の大きな特徴です。

  • 上皮下の結合組織:
    重層扁平上皮の下には、ピンク色に染まる膠原線維を主体とする広範な結合組織層(真皮)が存在します。

  • 付属器の存在:
    真皮内には、この臓器に特徴的な付属構造が多数見られます。

    • 画像中央には、表皮から真皮深部へと陥入する毛包(毛根)がはっきりと見えます。

    • 毛包に付属して、明るく泡状の細胞質を持つ腺房(皮脂腺)が確認できます。

    • 真皮の深部には、管状の腺(汗腺)の断面も見られます。

これらの所見、すなわち「角化重層扁平上皮と、その付属器である毛包」「皮脂腺」「汗腺の3つが揃っていることから、この臓器は皮膚であると断定できます。

では、選択肢を見ていきましょう。

  • 気管:
    気管は多列線毛円柱上皮(呼吸上皮)で覆われており、上皮の種類が全く異なります。

  • 食道:
    食道も皮膚と同じ重層扁平上皮ですが、表面に角化層がない「非角化」である点が大きな違いです。また、毛包や皮脂腺も存在しません。

  • 大腸:
    大腸は杯細胞を多数含む単層円柱上皮で、多数の腺窩(陰窩)を形成します。上皮の種類が全く異なります。

  • 皮膚:
    これが正解です。上記の「画像の所見分析」で述べたすべての特徴(角化重層扁平上皮、毛包、皮脂腺、汗腺)と一致します。

  • 膀胱:
    膀胱は、表層に被蓋細胞(傘細胞)を持つ特殊な尿路上皮(移行上皮)で覆われており、上皮の種類が異なります。

主な管腔臓器の粘膜上皮と、皮膚の構造を比較し、以下にまとめます。

★主な臓器の上皮と付属器

臓器 上皮の種類 主な付属器
皮膚 角化重層扁平上皮 毛包、皮脂腺、汗腺
食道 非角化重層扁平上皮 食道腺
気管 多列線毛円柱上皮 気管腺
大腸 単層円柱上皮(杯細胞多い) なし(陰窩あり)
膀胱 尿路上皮(移行上皮) なし

答え:4

56 アスベストばく露と関連する腫瘍はどれか。

  1. 胃 癌
  2. 肝 癌
  3. 乳 癌
  4. 悪性黒色腫
  5. 悪性中皮腫
  • 特定の職業や環境における化学物質や粉じんの曝露(ばくろ)と、それによって引き起こされる特定の疾患(特に悪性腫瘍)との関連性についての問題です。
  • 特にアスベスト(石綿)は、その発がん性が社会的に広く知られており、関連する代表的な腫瘍を正確に覚えているかが重要です。

★アスベストとは?
アスベスト(石綿)は、かつて建材や断熱材として広く使用されていた天然の鉱物線維です。非常に細かく、飛散しやすいため、吸い込むことで健康被害を引き起こします。体内に吸い込まれたアスベスト線維は、分解されずに長期間(数十年)体内に留まり、主に胸膜(肺を覆う膜)、腹膜(腹腔内を覆う膜)に慢性的な炎症と細胞傷害を引き起こすことが知られています。

アスベスト曝露によって引き起こされる代表的な疾患には、悪性中皮腫の他に以下のものがあります。

  • 肺癌: アスベストは肺癌のリスクも著しく高めます。特に喫煙者がアスベストに曝露すると、リスクが相乗的に増大することが知られています。

  • 石綿肺(アスベスト肺): 肺が線維化するじん肺の一種です。

  • 良性石綿胸水: 胸水が貯留します。

  • びまん性胸膜肥厚: 胸膜が広範囲に厚くなります。

選択肢を見ていきます。

  1. 胃癌

    • アスベスト曝露との関連性が一部指摘されていますが、因果関係は悪性中皮腫や肺癌ほど明確ではありません。主要なリスク因子はヘリコバクター・ピロリ菌感染や食生活などです。

  2. 肝癌

    • アスベストとの直接的な関連は知られていません。主な原因はB型・C型肝炎ウイルスの持続感染やアルコール性肝障害です。

  3. 乳癌

    • アスベストとの関連は知られていません。女性ホルモン、遺伝的要因、生活習慣などが主なリスク因子です。

  4. 悪性黒色腫

    • 皮膚がんの一種であり、アスベストとの関連はありません。主な原因は紫外線への過剰な曝露です。

  5. 悪性中皮腫

    • これが正解です。 悪性中皮腫は、胸膜、腹膜、心膜などの体腔を覆う「中皮細胞」から発生する非常に稀で悪性度の高い腫瘍です。アスベスト曝露との因果関係が極めて強く、悪性中皮腫と診断された患者の多くにアスベスト曝露歴が認められます。アスベスト関連疾患の代表格と言える腫瘍です。

以上より、アスベストばく露と関連する腫瘍は、⑤「悪性中皮腫 」です。
答え:5

57 アミロイドβ蛋白の沈着を特徴とする疾患はどれか。

  1. Alzheimer病
  2. Creutzfeldt-Jakob病
  3. Guillain-Barré症候群
  4. 進行性多巣性白質脳症
  5. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
主要な神経疾患について、その原因となる特徴的な異常タンパク質の蓄積や病理学的変化についての問題です。
それぞれの疾患名と、その病態の根幹をなす物質(アミロイドβ、プリオン、TDP-43など)を正確に結びつけられるかが重要です。

選択肢の疾患と原因物質をまとめました。

★主要神経疾患の病理学的特徴 まとめ

疾患名 主な病理学的特徴・原因物質
Alzheimer病
(アルツハイマー病)
  • アミロイドβ蛋白の細胞外沈着(老人斑
  • リン酸化タウ蛋白の神経細胞内蓄積(神経原線維変化
Creutzfeldt-Jakob病
(クロイツフェルト・ヤコブ病)
  • 異常プリオン蛋白の蓄積
  • 脳組織の海綿状(スポンジ状)変性
筋萎縮性側索硬化症 (ALS)
  • 上位および下位運動ニューロンの選択的変性・脱落
  • TDP-43、FUSなどのタンパク質の細胞質内異常蓄積
Guillain-Barré症候群
(ギラン・バレー症候群)
  • 自己免疫機序による末梢神経の炎症性脱髄・軸索障害
  • (中枢神経系のタンパク質沈着ではない)
進行性多巣性白質脳症 (PML)
  • JCウイルスの脳内再活性化による感染症
  • 大脳白質の多巣性脱髄

有名な疾患なので、おさらいになりますが、アミロイドβ蛋白の沈着を特徴とする疾患は、①「Alzheimer病」です。
答え:1

58 走査型電子顕微鏡標本の作製工程に含まれないのはどれか。

  1. 超薄切
  2. 金属イオン蒸着
  3. タンニン酸処理
  4. オスミウム酸固定
  5. グルタルアルデヒド固定

電子顕微鏡のうち走査型電子顕微鏡(そうさがたでんしけんびきょう, SEM)の標本作製工程についての問題です。SEMは試料の表面の立体構造を観察するためのものであり、電子線を透過させて内部構造を観察する透過型電子顕微鏡(とうかがたでんしけんびきょう, TEM)とは、その目的と標本作製法が根本的に異なります。

選択肢を含めて以下にまとめてみました。

★走査型電子顕微鏡(SEM)の標本作製工程基本工程フロー

工程 処理名 目的 主な方法・試薬
1 固定 (Fixation) 生命活動を停止させ、生きた状態に近い構造を維持・安定させる。
  • 一次固定: グルタルアルデヒド(タンパク質を架橋)
  • 二次固定: オスミウム酸(四酸化オスミウム)(脂質を固定、導電性を付与)
2 脱水 (Dehydration) 組織内の水分を完全に除去する。
(高真空下での水の沸騰による形態破壊を防ぐため)
  • エタノールやアセトンの上昇系列(50% → 70% → … → 100%)に順次浸す。
3 乾燥 (Drying) 脱水に用いた有機溶媒を、表面張力で組織が変形しないように除去する。
  • 臨界点乾燥法が最も一般的。
  • (その他、凍結乾燥法など)
4 試料台への接着 乾燥した試料ブロックを専用の台に固定する。
  • 導電性の両面テープやカーボンペーストを用いる。
5 導電処理(金属コーティング) 試料表面に導電性を持たせ、電子線照射による帯電(チャージアップ)を防ぐ。
  • イオンスパッタ法が一般的。
  • 金(Au)や白金パラジウム(Pt-Pd)などの金属を表面に薄く蒸着させる。

★【重要】透過型電子顕微鏡(TEM)との比較

項目 走査型電子顕微鏡(SEM) 透過型電子顕微鏡(TEM)
観察対象 試料表面立体的な凹凸構造 試料内部二次元的な微細構造
電子線 表面を走査(スキャン)し、発生する二次電子を検出 試料を透過した電子を検出
標本の形状 塊(ブロック)状 超薄切片(厚さ50〜100nm)
必須の工程 臨界点乾燥、金属コーティング 樹脂包埋、超薄切

 

上記より、走査型電子顕微鏡(SEM)標本の作製工程に含まれないのは、①「超薄切」です。
答え:1

第71回(PM)臨床血液学(59〜67)

59 自動血球計数装置による測定で誤っているのはどれか。

  1. 散乱光法は白血球分画の分類に適する。
  2. 血小板数の測定に破砕赤血球が影響する。
  3. ヘモグロビンの測定では溶血処理をする。
  4. 赤血球数測定において白血球の影響は小さい。
  5. 目視より正確に血球の形態異常を判別できる。

自動血球計数装置の測定原理、利点、そして限界についての問題です。特に、機械が得意とすること(迅速で正確な計数や客観的指標の算出)と、依然として人間の目(鏡検)が必要なことを区別できているかが重要です。

選択肢を表にまとめてみました。

★自動血球計数装置の測定原理と特徴 まとめ

測定項目 主な測定原理 ポイント・注意点
赤血球数 (RBC)
血小板数 (PLT)
電気抵抗法(コールター原理)
血液細胞が細孔を通過する際の電気抵抗の変化をパルスとして検出し、その数と大きさ(パルス高)を測定する。
  • 赤血球数測定: 白血球も同時に測定されるが、赤血球との数の比(約1000:1)から、白血球の影響は臨床的に無視できるほど小さい
  • 血小板数測定: 破砕赤血球巨大血小板、細胞の断片が測定に影響し、偽高値や偽低値の原因となる。
(※一部機種では、光散乱法や蛍光染色法も併用される)
ヘモグロビン濃度 (Hb) SLS-ヘモグロビン法(吸光光度法)
試薬で赤血球を溶血させ、ヘモグロビンを安定した色素(SLS-Hb)に変換後、吸光度を測定する。
  • 溶血処理が必須の工程である。
  • 高脂血症や高ビリルビン血症の検体では、血漿の混濁が測定値に影響することがある。
白血球数 (WBC)
白血球分画
フローサイトメトリー法
細胞にレーザー光を照射し、前方散乱光(大きさ)側方散乱光(内部構造)側方蛍光(核酸量など)を多角的に解析する。
  • 高精度な白血球5分類(好中球, リンパ球, 単球, 好酸球, 好塩基球)が可能。
  • 有核赤血球が存在すると、白血球として誤ってカウントされ、白血球数が偽高値となる(補正が必要)。

★自動血球計数装置の利点と限界

利点(機械が得意なこと) 限界(機械が苦手なこと・目視が必要なこと)
  • 迅速かつ大量の検体処理が可能。
  • 客観的で再現性の高い計数ができる。
  • 赤血球恒数(MCV, MCH, MCHC)赤血球分布幅(RDW)など、多数のパラメーターを算出できる。
  • 異常検体をフラグ(警告)で知らせるスクリーニング能力が高い。
  • 具体的な形態異常の判別はできない。(例:鎌状赤血球、中毒性顆粒など)
  • 異常細胞(芽球など)の最終的な同定は困難。
  • 赤血球凝集や血小板凝集、巨大血小板などの影響を受ける。
  • 最終的な形態学的診断は、臨床検査技師による目視(血液塗抹標本の鏡検)がゴールドスタンダードである。

以上より、自動血球計数装置による測定で誤っているのは、⑤「目視より正確に血球の形態異常を判別できる」です。
答え:5

60 末梢血検査で赤血球数200万/μL、ヘモグロビン濃度7.5g/dL、ヘマトクリット値24.0%を認めた。原因の特定に有用な検査項目はどれか。

  1. 葉 酸
  2. フェリチン
  3. エリスロポエチン
  4. セルロプラスミン
提示された末梢血検査のデータから赤血球恒数(MCV, MCH, MCHC)を計算し、貧血の種類を分類する能力、そしてその分類に基づいて原因を特定するために最も有用な追加検査は何かを選択する臨床的な思考力を問試す、計算と知識の両方が必要となる総合的な問題です。

与えられたデータから貧血の形態学的分類を行います。

★赤血球恒数の計算

  • MCV(平均赤血球容積): 赤血球1個の平均の大きさ

    • 計算式: ヘマトクリット(%) ÷ 赤血球数(百万/μL) × 10

    • 計算: 24.0 ÷ 2.00 × 10 = 120.0 fL

    • 基準値は約80〜100 fLなので、大球性 (macrocytic) と判断できます。

  • MCH(平均赤血球ヘモグロビン量): 赤血球1個に含まれるHbの平均量

    • 計算式: ヘモグロビン濃度(g/dL) ÷ 赤血球数(百万/μL) × 10

    • 計算: 7.5 ÷ 2.00 × 10 = 37.5 pg

    • 基準値は約27〜33 pgなので、基準値より高値です。

  • MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度): 赤血球1個あたりのHb濃度の平均

    • 計算式: ヘモグロビン濃度(g/dL) ÷ ヘマトクリット(%) × 100

    • 計算: 7.5 ÷ 24.0 × 100 = 31.25 g/dL

    • 基準値は約32〜36 g/dLなので、正色素性 (normochromic) の範囲です。

以上の計算結果から、この患者の貧血は「大球性正色素性貧血」に分類されます。

大球性貧血をきたす代表的な原因は、DNA合成障害による巨赤芽球性貧血であり、その主な原因はビタミンB12欠乏または葉酸欠乏です。

すなわち、追加すべき検査項目は②「葉酸」です。
選択肢の項目と貧血の関係を簡潔にまとめたので参考にしてください。

★貧血の形態学的分類と関連検査項目

検査項目 関連する貧血の形態 解説
小球性低色素性 ヘム合成障害を引き起こす。
葉酸 大球性 DNA合成に必須。欠乏により巨赤芽球性貧血となる。
フェリチン 小球性低色素性 体内貯蔵鉄の指標。鉄欠乏性貧血で低下する。
エリスロポエチン 正球性正色素性 腎性貧血再生不良性貧血の鑑別に有用。
セルロプラスミン 多様(小球性~大球性) 銅欠乏による貧血は稀。

 

答え:2

61 APTT延長を認めたため、APTTにてクロスミキシング試験を実施した。結果を表に示す。考えられるのはどれか。

  1. 血友病B
  2. von Willebrand病
  3. ビタミンK欠乏症
  4. 抗リン脂質抗体症候群
  5. 播種性血管内凝固(DIC)
この問題は、APTT延長の原因を鑑別するために行われるクロスミキシング試験の結果を正しく解釈できるかが最大のポイントです。
具体的には、試験結果のパターンから原因が凝固因子の欠乏」なのか、それとも凝固反応を阻害する「インヒビター(阻害物質)の存在なのかを判断する必要があります。

★クロスミキシング試験とは

APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が延長している場合、その原因を調べるために行われる検査です。原因には大きく分けて二つあります。

  • 凝固因子の欠乏・活性低下
    →内因系・共通系の凝固因子(第XII, XI, IX, VIII, X, V, II因子、フィブリノゲンなど)が不足している状態。

  • インヒビターの存在
    →凝固因子の働きを阻害する物質(ループスアンチコアグラント、特定の凝固因子に対するインヒビターなど)が血中に存在する状態。

クロスミキシング試験では、患者の血漿と、正常な血漿を様々な比率で混合し、APTTを測定します。特に1対1(50%)で混合したときの結果が重要です。

★結果の判定パターン

  • 凝固因子欠乏のパターン(補正される
    患者血漿に正常血漿を50%加えると、欠乏していた凝固因子が少なくとも50%は補充されます。凝固因子の活性が50%もあれば、通常APTTは正常範囲近くまで補正(短縮)されます。
    グラフにすると、正常血漿の割合が増えるにつれて急激にAPTTが短縮する、
    下に凸の曲線を描きます。

  • インヒビター存在のパターン(補正されない
    患者血漿中にインヒビターが存在する場合、正常血漿を加えて凝固因子を補充しても、そのインヒビターが補充された因子まで阻害してしまいます。そのため、1対1で混合してもAPTTは十分に補正(短縮)されません。
    グラフにすると、正常血漿を加えてもAPTTの短縮が緩やかで、
    上に凸の曲線を描きます。

では、与えられたデータをみるとどうなるでしょうか。

  • 患者血漿(10対0): 88秒(著しく延長)
  • 正常血漿(0対10): 26秒(正常)
  • 1対1混合(5対5):
    →混和直後: 72秒
    →37℃・2時間後: 74秒

1対1で混合してもAPTTは72秒と、正常値の26秒に近づくことなく、延長したままです。これは補正されていないと判断でき、インヒビターの存在を強く示唆します。
さらに、反応曲線を考えると、正常血漿の割合が増えるにつれてAPTTは(88→84→72→48→26)と緩やかに短縮しており、上に凸のパターンを示しています。

★インヒビターの種類と鑑別

インヒビターには、ループスアンチコアグラント(LA)や第VIII因子インヒビターなどがあります。

  • ループスアンチコアグラント (LA): リン脂質に結合して凝固反応を阻害します。時間や温度による影響を受けにくい即時性のインヒビターです。

  • 第VIII因子インヒビター: 第VIII因子を特異的に阻害します。その阻害作用は時間と温度に依存して強くなる遅延性(時間依存性)の性質があります。

本症例では、混和直後(72秒)と37℃で2時間加温した後(74秒)でAPTTの値に大きな差がありません。
これは時間依存性がないことを示しており、ループスアンチコアグラント(LA)の存在が強く疑われます。

ループスアンチコアグラントは、抗リン脂質抗体症候群の診断基準の一つであり、血栓症の原因となりえます。

したがって、最も鑑別に上がるのは④「抗リン脂質抗体症候群」です。
まとめ表をつけておきますので、参考にしてください。

判定項目 凝固因子欠乏症 インヒビターの存在
原因 凝固因子の量的・質的異常 凝固反応を阻害する物質の存在
1:1混合試験 補正される(APTTが正常化) 補正されない
(APTTが延長したまま)
反応曲線 下に凸 上に凸
代表疾患 血友病、ビタミンK欠乏症、DICなど 抗リン脂質抗体症候群、後天性血友病など

答え:4

62 血清に含まれないのはどれか。

  1. アルブミン
  2. γ-グロブリン
  3. ハプトグロビン
  4. フィブリノゲン
  5. トランスフェリン
この問題の最大のポイントは、血清」と「血漿」の違いを正確に理解しているかどうかです。両者は血液の液体成分ですが、含まれる成分に決定的な違いがあります。その違いとは、血液凝固に関わるタンパク質、特に「フィブリノゲン」の有無です。

血液は、赤血球や白血球などの「血球成分」と、淡黄色の液体である「血漿(けっしょう)成分」から構成されています。

★血漿と血清

  • 血漿(けっしょう)とは
    血液から血球成分(赤血球、白血球、血小板)を取り除いた液体成分のことです。血漿には、アルブミンやグロブリンといったタンパク質のほか、ホルモン、栄養素、老廃物、そして血液凝固因子が含まれています。

  • 血清(けっせい)とは
    採血後、血液をそのまま放置すると、血液凝固因子が働き血液が固まります(凝固)。このときできる血の塊(血餅)を取り除いたあとの上澄み液が血清です。
    血液が凝固する過程で、血漿に含まれていた血液凝固因子の一つであるフィブリノゲンが、フィブリンという線維状の物質に変化し、血球を絡め取って血餅を形成します。
    そのため、凝固後の液体である血清中には、フィブリノゲンはほとんど含まれていません。

各選択肢の解説

  • アルブミン: 血液の浸透圧を維持したり、様々な物質を運搬したりする、血漿タンパク質の中で最も量の多い成分です。血液凝固には直接関与しないため、血清中にも含まれます。

  • γ-グロブリン: 主に免疫グロブリン(抗体)として働き、体を感染から守る役割を担っています。血液凝固には関与しないため、血清中にも含まれます。

  • ハプトグロビン: 赤血球が壊れた際に放出されるヘモグロビンと結合し、鉄の損失を防ぐタンパク質です。血液凝固には関与しないため、血清中にも含まれます。

  • フィブリノゲン: 血液凝固の中心的な役割を果たすタンパク質です。血液が凝固する際に消費されるため、血漿には含まれますが、血清にはほとんど含まれません。したがって、これが正解です。

  • トランスフェリン: 体内で鉄イオンを運搬する役割を持つタンパク質です。血液凝固には関与しないため、血清中にも含まれます。

血清に含まれないのは、④「フィブリノゲン」です。
答え:4

63 骨髄穿刺液のフローサイトメトリ法のCD45ゲーティング(別冊No. 12)を別に示す。黒い円で囲まれている部分の細胞はどれか。

  1. 単 球
  2. 顆粒球
  3. 赤芽球
  4. 骨髄芽球
  5. リンパ球
  • この問題は、フローサイトメトリーのCD45/SSC(側方散乱光)プロットの基本的な見方を理解しているかが問われます。
  • CD45は白血球共通抗原であり、その発現強度は細胞の種類や成熟段階によって異なります。
  • SSCは細胞内部の複雑さ(顆粒の多さなど)を反映します。これらの情報を組み合わせて、各細胞集団がプロット上のどの位置に現れるかを把握することが重要です。

まず、フローサイトメトリーにおける縦軸と横軸が何を示しているかを確認します。

  • 縦軸 (Y軸): CD45
    CD45は白血球に共通して発現するマーカーです。ただし、細胞の種類や成熟度によってその発現強度は異なります。一般的に、成熟したリンパ球で最も強く(Bright)単球も強く顆粒球は中等度、そして未熟な芽球では弱く(Dim)なります。赤血球系の細胞(赤芽球)は白血球ではないため、CD45は陰性です。

  • 横軸 (X軸): 側方散乱光 (Side Scatter, SSC)
    SSCは、レーザー光が細胞内の構造(核の形、顆粒など)に当たって散乱する光の強さを示します。細胞内部が複雑で顆粒が多いほど、SSCは高くなります。したがって、顆粒の少ないリンパ球や芽球はSSCが低く、豊富な顆粒を持つ顆粒球はSSCが高くなります。

プロット上の各細胞の位置

これらの原則を基に、一般的な骨髄液の細胞がプロット上のどこに位置するかを見ていきます。

  • リンパ球: CD45強陽性(Bright)、SSC低。プロットの左上に位置します。

  • 単球: CD45強陽性、SSCはリンパ球より高い中等度。リンパ球の右側に位置します。

  • 顆粒球: CD45中等度陽性、SSC高。右側に大きく広がって位置します。

  • 赤芽球: CD45陰性。プロットの最も下(ベースライン)に位置します。

  • 骨髄芽球: CD45弱陽性(Dim)、SSC低。リンパ球の領域よりCD45の発現が弱く、SSCが低い領域、いわゆる「ブラスト領域(Blast Gate)」に位置します。

問題の図の解析

問題の図で黒い円で囲まれている部分は、SSCが低く、CD45の発現がリンパ球領域(左上の集団)よりも弱い「弱陽性(Dim)」の領域にあります。この特徴は、骨髄芽球の典型的なパターンと一致します。

選択肢を表にまとめてみます。

細胞の種類 CD45発現強度 側方散乱光 (SSC) プロット上の位置
骨髄芽球 弱陽性 (Dim) 左下(ブラスト領域)
リンパ球 強陽性 (Bright) 左上
単球 強陽性 (Bright) 中等度 中央上部
顆粒球 中等度陽性 右側
赤芽球 陰性 最下部

答え:4

64 28歳の男性。血液検査で異常を指摘されたため来院した。血液所見:白血球199,000/μL、赤血球228万/μL、Hb8.2g/dL、血小板25.7万/μL。末梢血のMay-Giemsa染色標本の弱拡大写真(別冊No. 13A)と強拡大写真(別冊No. 13B)を別に示す。染色体検査で予想される所見はどれか。


  1. t(8;21)
  2. t(9;22)
  3. t(12;21)
  4. t(15;17)
  5. inv(16)

この問題は、血液検査データと末梢血塗抹標本の画像所見から、慢性骨髄性白血病(CML)を正しく診断できるかが最大のポイントです。

  • 著しい白血球増加と、末梢血中に骨髄芽球から成熟好中球までのあらゆる分化段階の骨髄系細胞が出現している
  • 好塩基球の増加
  • これらの特徴的な所見からCMLを導き出し、それに特異的な染色体異常である t(9;22) を選択することが求められます。

 ★臨床所見と画像所見の解釈

まず、与えられた臨床情報を見ていきましょう。

  • 白血球 199,000/μL: 正常値(3,300~8,600/μL程度)をはるかに超える著しい増加です。

  • 赤血球 228万/μL, Hb 8.2g/dL: 貧血を認めます。これは、骨髄で白血病細胞が異常に増殖し、正常な赤血球の産生が抑制されているためと考えられます。

  • 血小板 25.7万/μL: 正常範囲内です。CMLの慢性期では、血小板数は正常または増加することが多いです。

次に、末梢血の染色標本を見ていきます。

  • 弱拡大像(A): 画面全体が多数の有核細胞(白血球)で埋め尽くされており、白血球数が極めて高いことが一目でわかります。

  • 強拡大像(B): 様々な成熟段階の顆粒球(好中球)が混在しています。大型で核小体が明瞭な骨髄芽球から、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、桿状核球、分葉核球(成熟好中球)まで、あたかも骨髄を直接見ているかのような多彩な細胞が末梢血中に出現しています。 さらに、細胞質が濃い紫色の粗大な顆粒で満たされた好塩基球の増加も顕著です。

これらの所見、すなわち「著しい白血球増加」「あらゆる分化段階の顆粒球の出現」「好塩基球の増加」は、慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期に極めて特徴的なものです。

★CMLと染色体異常

慢性骨髄性白血病(CML)は、その95%以上の症例でフィラデルフィア(Ph)染色体と呼ばれる特徴的な染色体異常が原因であることがわかっています。 このPh染色体は、9番染色体と22番染色体の一部が切断され、お互いに入れ替わる相互転座 t(9;22) によって形成されます。

この転座により、9番染色体上のABL1遺伝子と22番染色体上のBCR遺伝子が融合し、BCR-ABL1融合遺伝子という異常な遺伝子が作られます。 この遺伝子から産生される異常なたんぱく質(BCR-ABL1チロシンキナーゼ)が、細胞に対して「増殖し続けろ」という異常な命令を出し続けるため、骨髄系の細胞が無秩序に増殖し、CMLを発症します。

他の選択肢と疾患もまとめましたので参考にしてください。

判定項目 染色体異常 関連する主な血液疾患
本症例 t(9;22) 慢性骨髄性白血病(CML)、一部の急性リンパ性白血病(ALL)
選択肢1 t(8;21) 急性骨髄性白血病(AML-M2)
選択肢3 t(12;21) 小児B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)
選択肢4 t(15;17) 急性前骨髄球性白血病(APL, AML-M3)
選択肢5 inv(16) 好酸球増加を伴う急性骨髄単球性白血病(AMML, AML-M4Eo)

65 血清鉄と鉄結合能の関係(別冊No. 14)を別に示す。
この患者で考えられるのはどれか。

  1. 感染症
  2. 尿毒症
  3. 溶血性貧血
  4. 鉄欠乏性貧血
  5. 再生不良性貧血
この問題は、提示されたグラフから血清鉄(Fe)総鉄結合能(TIBC)の値を読み取り、そのパターンから病態を鑑別できるかが最大のポイントです。
特に、
血清鉄が低く、総鉄結合能が高いという組み合わせが、どの疾患に特徴的な所見であるかを理解していることが重要です。

★グラフの読解

まず、グラフが何を示しているかを理解します。

  • 凡例の確認:

    • 灰色の部分血清鉄 (Fe) を示します。これは血液中に存在する鉄の量です。

    • 白色の部分不飽和鉄結合能 (UIBC) を示します。これは血中のトランスフェリン(鉄を運搬するタンパク質)の、まだ鉄と結合していない「空席」の多さを示します。

    • グラフ全体の高さ (灰色 + 白色)総鉄結合能 (TIBC) を示します。これはトランスフェリンが結合できる鉄の総量、つまり「全座席数」を意味します。TIBC = Fe + UIBC の関係が成り立ちます。

  • 健常人と患者の比較:

    • 血清鉄 (Fe): 患者の灰色の部分は健常人に比べて著しく低くなっています (約30μg/mL vs 約120μg/mL)。

    • 総鉄結合能 (TIBC): 患者のグラフ全体の高さは健常人より明らかに高くなっています (約490μg/mL vs 約330μg/mL)。

    • 不飽和鉄結合能 (UIBC): 結果として、患者の白色の部分(空席)は非常に大きくなっています。

つまり、この患者の血液データは低・血清鉄かつ高・総鉄結合能という特徴を示しています。

★病態の考察

この「低Fe、高TIBC」というパターンは、体が鉄不足に陥っている状態、すなわち鉄欠乏性貧血で典型的に見られます。

なぜこのパターンになるのかを理解しましょう。

  • 体内の鉄が枯渇する(鉄欠乏)と、血液中の鉄の量も当然減少します(低・血清鉄)。

  • 体は「鉄が足りない!」と危機感を覚え、肝臓でのトランスフェリンの産生を増やします。これは、食事などから少しでも多くの鉄を効率よく捕まえて全身に運びたいという代償的な反応です。

  • トランスフェリン(鉄の運び屋)が増えるため、鉄と結合できる座席の総数である総鉄結合能(TIBC)は高くなります。

このロジックから、提示されたデータは鉄欠乏性貧血の病態と完全に一致します。

★ 他の選択肢の鑑別

  • 感染症(慢性疾患に伴う貧血): 炎症によって鉄の利用が障害される病態です。体は鉄を細菌などに利用させないよう貯蔵庫(マクロファージ)に隠すため、血清鉄は低下します。しかし、同時にトランスフェリンの産生も抑制されるため、TIBCも低下します(低Fe、低TIBC)。

  • 溶血性貧血: 赤血球が破壊されるため、逆に鉄が過剰になり、血清鉄は上昇することがあります。TIBCは通常、正常です。

  • 再生不良性貧血: 骨髄で赤血球が作られないため、鉄が利用されずに余ってしまいます。そのため血清鉄は上昇し、TIBCは低下または正常となります。

  • 尿毒症: 慢性腎臓病に伴う貧血は、エリスロポエチンの産生低下が主因ですが、慢性炎症の状態を伴うため、鉄動態は感染症と同様に「低Fe、低TIBC」のパターンを示すことが多いです。

したがって、消去法でも鉄欠乏性貧血が最も考えられます。

他の選択肢の貧血も含めてまとめてみました。

★主な貧血における鉄関連検査所見

病態 血清鉄 (Fe) 総鉄結合能 (TIBC) 血清フェリチン (貯蔵鉄)
鉄欠乏性貧血 低下 (↓) 上昇 (↑) 低下 (↓)
慢性疾患に伴う貧血 低下 (↓) 低下 (↓) または 正常 (→) 正常 (→) または 上昇 (↑)
溶血性貧血 上昇 (↑) または 正常 (→) 正常 (→) 上昇 (↑)
再生不良性貧血 上昇 (↑) 低下 (↓) または 正常 (→) 上昇 (↑)

答え:4

66 真性赤血球増加症における検査項目とその結果の組合せで正しいのはどれか。

  1. 血清LD 低 値
  2. 赤血球数 低 値
  3. NAPスコア 高 値
  4. 血清ビタミンB12 低 値
  5. 血清エリスロポエチン 高 値

この問題は、真性赤血球増加症(Polycythemia Vera; PV)という骨髄増殖性腫瘍に特徴的な検査所見を正しく理解しているかが問われる問題です。PVは赤血球が自律的に(エリスロポエチン非依存性に)増加する疾患ですが、それに伴い白血球や血小板も増加することが多く、様々な検査項目に特徴的な変動が現れます。各選択肢の検査項目がPVにおいてどのような値を示すかを正確に把握することが重要です。

★真性赤血球増加症(PV)の病態

PVは、骨髄にある造血幹細胞の遺伝子(多くはJAK2遺伝子)に変異が生じることで、赤血球産生を促すホルモンであるエリスロポエチン(EPO)からの指令がなくても、赤血球系細胞が無秩序に増殖してしまう病気です。
赤血球の著増が中心ですが、多くの場合、白血球や血小板の産生も亢進します。

各選択肢を見ていきます。

  • 血清LD(乳酸脱水素酵素):
    PVでは、赤血球、白血球、血小板といった全ての血球系統の産生が亢進し、細胞のターンオーバー(産生と破壊)が活発になります。LDは細胞内に多く含まれる酵素であるため、細胞の破壊が亢進すると血中に放出され、高値を示します。したがって、「低値」は誤りです。

  • 赤血球数:
    病態の根幹が赤血球の自律的な増加であるため、赤血球数は著しく高値となります。これが診断の出発点となる所見です。したがって、「低値」は誤りです。

  • NAPスコア(好中球アルカリホスファターゼスコア):
    NAPスコアは、成熟好中球が持つアルカリホスファターゼという酵素の活性を点数化したものです。PVを含む多くの骨髄増殖性腫瘍では、この活性が亢進し、高値を示します。
    逆に、慢性骨髄性白血病(CML)では著しい低値を示すため、両者の鑑別に非常に有用な検査です。したがって、「高値」は正しい組み合わせです。

  • 血清ビタミンB12:
    ビタミンB12は、血液中ではトランスコバラミンという輸送タンパク質と結合しています。PVでは、白血球(特に好中球)の産生亢進に伴い、この輸送タンパク質も過剰に産生されるため、血清ビタミンB12およびその結合能は高値となります。 したがって、「低値」は誤りです。

  • 血清エリスロポエチン(EPO):
    PVでは、骨髄がEPOの指令とは無関係に赤血球を過剰産生します。その結果、増えすぎた赤血球が体内の酸素運搬を十分に行うため、腎臓は「これ以上赤血球は必要ない」と判断し、EPOの産生を抑制します。これをネガティブフィードバック機構と呼びます。そのため、血清EPO値は低値となるのが特徴です。 これは、EPO産生腫瘍などによる二次性の赤血球増加症(EPOは高値)との鑑別に極めて重要です。したがって、「高値」は誤りです。

以上のことから、正しい組み合わせは「NAPスコア ― 高値」となります。

真性赤血球増加症(PV)と、鑑別が重要となる二次性赤血球増加症や慢性骨髄性白血病(CML)との検査所見の違いを以下にまとめます。

主な血球増加性疾患における検査所見の比較

検査項目 真性赤血球増加症 (PV) 二次性赤血球増加症 慢性骨髄性白血病 (CML)
赤血球数 著増 (↑↑) 増加 (↑) 正常 (→) または 軽度低下 (↓)
白血球・血小板数 増加 (↑) 正常 (→) 著増 (↑↑)
NAPスコア 高値 (↑) 正常 (→) または 高値 (↑) 著減 (↓↓)
血清エリスロポエチン (EPO) 低値 (↓) 高値 (↑) 正常 (→) または 高値 (↑)
血清ビタミンB12 高値 (↑) 正常 (→) 著増 (↑↑)
血清LD 高値 (↑) 正常 (→) 高値 (↑)

答え:3

67 線溶亢進による出血傾向を認める先天性疾患はどれか。

  1. PAI-1欠損症
  2. プロテインS欠損症
  3. 高ホモシステイン血症
  4. プラスミノゲン欠損症
  5. アンチトロンビン欠損症

この問題は、血液の凝固(血を固める)と線溶(固まった血を溶かす)のバランスを理解しているかが問われる問題です。出血傾向が「線溶亢進(血を溶かす働きが強すぎること)」によって引き起こされる疾患を選択する必要があります。各選択肢の因子が凝固・線溶系のどの部分で働くのか、そしてその欠損がどのような結果(出血傾向血栓傾向か)をもたらすかを正確に把握することが重要です。

★凝固・線溶系の基本

血液は、出血した際には凝固系が働いてフィブリンという糊で血栓(血の塊)を作り、止血します。一方で、役目を終えた血栓や不要な血栓を溶かして血流を再開させるために線溶系が働きます。

  • 凝固系: 血を固める働き(過剰だと血栓症

  • 線溶系: 血栓を溶かす働き(過剰だと出血傾向

線溶系の中心的な働きは、プラスミノゲンが活性化されてプラスミンとなり、このプラスミンがフィブリンを分解することです。

各選択肢の役割と欠損症は以下のとおりです。

  • PAI-1(プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1)欠損症:
    PAI-1は、プラスミノゲンを活性化する酵素(t-PAなど)を阻害する物質です。つまり、線溶系にブレーキをかける役割を担っています。
    したがって、PAI-1が先天的に欠損すると、このブレーキが効かなくなり、線溶系が過剰に働き続けます(線溶亢進)。せっかく作られた血栓がすぐに溶かされてしまうため、再出血を繰り返し、出血傾向をきたします。

  • プロテインS欠損症:
    プロテインSは、プロテインCと共に凝固因子(第Va因子、第VIIIa因子)を不活化する、凝固系にブレーキをかける抗凝固)因子です。
    これが欠損すると、凝固系のブレーキが効かなくなり、血が固まりやすくなるため血栓傾向(深部静脈血栓症など)となります。

  • 高ホモシステイン血症:
    ホモシステインはアミノ酸の一種で、これが血中で高値になると血管内皮を障害し、凝固系を活性化させることで血栓傾向のリスク因子となります。

  • プラスミノゲン欠損症:
    プラスミノゲンは、血栓を溶かす主役であるプラスミンの前駆体です。
    これが欠損すると、プラスミンを十分に作れず、血栓を適切に溶かすことができなくなります。その結果、血栓傾向(木様結膜炎など)を示します。

  • アンチトロンビン欠損症:
    アンチトロンビンは、トロンビンをはじめとする多くの凝固因子を阻害する、最も強力な抗凝固因子の一つです。
    これが欠損すると、凝固系の抑制が効かなくなり、重篤な血栓傾向を示します。

線溶亢進による出血傾向を認める先天性疾患は、①「PAI-1欠損症」です。
凝固・線溶系の異常と、それがもたらす臨床症状(出血傾向か血栓傾向か)を以下にまとめます。

★主な凝固・線溶異常症と臨床症状

疾患/状態 欠損/異常となる因子 因子の主な役割 臨床症状
PAI-1欠損症 PAI-1 線溶系の抑制(ブレーキ) 出血傾向(線溶亢進)
プロテインS欠損症 プロテインS 凝固系の抑制(抗凝固) 血栓傾向
高ホモシステイン血症 (ホモシステインが過剰) (血管内皮障害・凝固促進) 血栓傾向
プラスミノゲン欠損症 プラスミノゲン 線溶系の主役(の前駆体) 血栓傾向
アンチトロンビン欠損症 アンチトロンビン 凝固系の抑制(抗凝固) 血栓傾向

答え:1

第71回(PM)臨床微生物学(68〜78)

68 消毒薬と消毒レベルの組合せで正しいのはどれか。

  1. フタラール 中水準
  2. ポビドンヨード 低水準
  3. クロルヘキシジン 高水準
  4. 消毒用エタノール 中水準
  5. 次亜塩素酸ナトリウム 低水準

この問題は、医療現場で用いられる主要な消毒薬と、それらがどの程度の殺菌スペクトルを持つかを示す消毒レベル高水準、中水準、低水準)の分類を正しく理解しているかを問う問題です。消毒レベルの定義、特に結核菌芽胞に対する効果の有無が分類の重要な基準となることを把握しているかが重要です。

★消毒レベルの定義

まず、消毒レベルの分類を理解することが重要です。これは米国のCDC(疾病予防管理センター)が提唱したSpauldingの分類に基づいています。

  • 高水準消毒: ほとんどの微生物を死滅させることができるレベル。細菌の芽胞を大量に殺滅することはできないが、他の全ての細菌、結核菌、真菌、ウイルスを殺滅する。内視鏡など、粘膜や損傷皮膚に接触する器具(セミクリティカル器具)の消毒に用いられる。

  • 中水準消毒結核菌、栄養型細菌、ほとんどのウイルスや真菌を殺滅できるレベル。しかし、芽胞には効果がない。聴診器やベッドサイドテーブルなど、健常な皮膚に接触する器具(ノンクリティカル器具)や環境表面の消毒に用いられる。

  • 低水準消毒: ほとんどの栄養型細菌、一部のウイルスや真菌を殺滅できるレベル。結核菌芽胞には効果がない。血圧計のマンシェットなど、ノンクリティカル器具や環境表面の消毒に用いられる。

上記を参考に選択肢を見ていきます。

  • フタラール (OPA):
    グルタラールと同様に、主に内視鏡などの消毒に用いられます。短時間で広い殺菌スペクトルを持ち、結核菌にも有効です。高水準消毒薬に分類されます。したがって、「中水準」は誤りです。

  • ポビドンヨード:
    ヨウ素を有効成分とする消毒薬で、手術部位の皮膚消毒などによく使われます。細菌、真菌、ウイルスに有効で、結核菌も殺滅できるため、中水準消毒薬に分類されます。したがって、「低水準」は誤りです。

  • クロルヘキシジン:
    手指消毒や皮膚・粘膜の消毒に広く用いられます。多くの細菌に有効ですが、結核菌、ウイルス、芽胞には効果がありません。低水準消毒薬に分類されます。したがって、「高水準」は誤りです。

  • 消毒用エタノール:
    76.9〜81.4vol%のエタノール水溶液です。多くの細菌、真菌、ウイルスに有効で、結核菌も殺滅できますが、芽胞には無効です。このため、中水準消毒薬に分類されます。したがって、「中水準」は正しい組み合わせです。

  • 次亜塩素酸ナトリウム:
    いわゆる塩素系漂白剤で、環境消毒(床、トイレ、血液汚染など)に広く使われます。結核菌やノロウイルスなど抵抗性の強い微生物にも有効なため、中水準消毒薬に分類されます。(高濃度では高水準に分類されることもあります)。したがって、「低水準」は誤りです。

以上のことから、正しい組み合わせは「消毒用エタノール ― 中水準」となります。

参考までに、医療で用いられる主な消毒薬とその消毒レベルを以下にまとめます。

★主な消毒薬とその消毒レベル

消毒レベル 消毒薬の例 特徴 (殺滅できる主な微生物)
高水準 フタラール、グルタラール、過酢酸 全ての細菌 (結核菌含む)、ウイルス、真菌 (芽胞は多数存在すると殺滅不可)
中水準 消毒用エタノール、ポビドンヨード、次亜塩素酸ナトリウム 結核菌、栄養型細菌、ほとんどのウイルス・真菌 (芽胞は無効)
低水準 クロルヘキシジン、両性界面活性剤、第4級アンモニウム塩 ほとんどの栄養型細菌、一部のウイルス・真菌 (結核菌、芽胞は無効)

答え:4

69 市中肺炎が疑われた患者の喀痰のGram染色標本(別冊No. 15)を別に示す。分離菌はヒツジ血液寒天培地に発育しなかった。考えられるのはどれか。

  1. Acinetobacter baumannii
  2. Haemophilus influenzae
  3. Klebsiella pneumoniae
  4. Moraxella catarrhalis
  5. Pseudomonas aeruginosa
この問題を解く上で最大のポイントは、喀痰のGram染色標本の所見と、「ヒツジ血液寒天培地に発育しなかった」という培養の情報を結びつけて起炎菌を推定することです。

★Gram染色標本の読解

まず、提示された画像(No. 15)を詳しく見ていきます。

  • 背景: 多数の細胞成分が見られます。赤紫色に濃く染まる分葉核を持つ細胞は好中球であり、炎症反応が起きていることを示唆します。薄く広がる大きな細胞は扁平上皮細胞で、喀痰検体に唾液が混入している可能性を示します。

  • 細菌の形態: 好中球の周囲や視野全体に、赤色に染まる短い桿菌が多数観察されます。赤色に染まっていることからグラム陰性菌であり、形態は短い桿菌、あるいは球菌に近い桿菌であるためグラム陰性短桿菌またはグラム陰性球桿菌と判断できます。

この時点で、グラム陰性の短桿菌または球桿菌が市中肺炎の原因となっている可能性が高いと推測できます。

★培養所見の解釈

次に、問題文にある「分離菌はヒツジ血液寒天培地に発育しなかった」という情報が極めて重要です。これは、この細菌が通常の培地では発育できない、栄養要求性が厳しい(発育に特殊な因子を必要とする)ことを意味します。

以上の所見を踏まえて、選択肢の菌を一つずつ検討します。

  • Acinetobacter baumannii: グラム陰性球桿菌です。形態は似ていますが、ヒツジ血液寒天培地によく発育します。また、市中肺炎よりは院内肺炎の起炎菌として重要です。

  • Haemophilus influenzae: グラム陰性球桿菌で、染色像の形態は画像とよく一致します。そして、この菌の最も重要な特徴は、発育にX因子(ヘミン)V因子(NAD)の両方を必要とすることです。ヒツジ血液寒天培地にはX因子は含まれますがV因子が不足しているため、この培地単独では発育できません。(V因子を放出させるために加熱処理したチョコレート寒天培地で発育します)。市中肺炎の主要な原因菌の一つです。

  • Klebsiella pneumoniae: グラム陰性桿菌ですが、通常はもう少し大きな桿菌として観察されます。ヒツジ血液寒天培地によく発育し、しばしば粘液状の大きなコロニーを形成します。

  • Moraxella catarrhalis: グラム陰性球菌(双球菌)であり、桿菌である画像所見とは異なります。ヒツジ血液寒天培地にも発育します。

  • Pseudomonas aeruginosa: グラム陰性桿菌です。ヒツジ血液寒天培地によく発育します。

したがって、グラム陰性球桿菌であり、かつヒツジ血液寒天培地に発育しないという特徴を持つのは Haemophilus influenzae のみです。

★市中肺炎の主な原因菌とその特徴

細菌名 グラム染色所見 ヒツジ血液寒天培地での発育 備考
Haemophilus influenzae 陰性、球桿菌 発育しない (-) 発育にX・V因子が必要 (チョコレート寒天培地で発育)
Streptococcus pneumoniae 陽性、双球菌・連鎖状 発育する (+) α溶血(緑色)を示す
Klebsiella pneumoniae 陰性、桿菌 発育する (+) しばしば莢膜を持ち、ムコイドなコロニーを形成
Moraxella catarrhalis 陰性、双球菌 発育する (+)
Pseudomonas aeruginosa 陰性、桿菌 発育する (+) 緑膿を産生することがある

答え:2

70 蛋白合成阻害作用を有する抗菌薬はどれか。

  1. キノロン系
  2. サルファ剤
  3. カルバペネム系
  4. ホスホマイシン系
  5. テトラサイクリン系

この問題は、抗菌薬(抗生物質)が細菌に対してどのように作用するか、その作用機序を正しく分類できるかが問われる問題です。抗菌薬の主な作用点には、「細胞壁合成阻害」「蛋白合成阻害」「核酸合成阻害」「葉酸合成阻害」などがあります。

★抗菌薬の主な作用機序

細菌を殺したり増殖を抑えたりするために、抗菌薬はヒトの細胞にはなく細菌に特有の構造や機能を標的とします。

  • 細胞壁合成阻害: 細菌を覆う硬い壁(ペプチドグリカン層)の合成を妨害し、細菌を破壊します。

  • 蛋白合成阻害: 細菌の生存や増殖に必要なタンパク質を作る工場であるリボソームの働きを阻害します。

  • 核酸合成阻害: 細菌の遺伝情報を持つDNAやRNAの複製や合成を妨害します。

  • 葉酸合成阻害: 細菌がDNAなどを合成するために必要なビタミンの一種である葉酸の合成を阻害します。

上記を踏まえて選択肢を見ていきます。

  • キノロン系:
    細菌のDNA複製に必須の酵素であるDNAジャイレースなどを阻害します。これによりDNAの複製ができなくなるため、核酸合成阻害に分類されます。

  • サルファ剤:
    細菌が葉酸を合成する過程で必要な酵素を阻害します。これにより、細菌は生存に必要な核酸などを作れなくなります。これは葉酸合成阻害に分類されます。

  • カルバペネム系:
    β-ラクタム系抗菌薬の一種で、細菌の細胞壁の合成を強力に阻害します。細胞壁合成阻害に分類されます。

  • ホスホマイシン系:
    細胞壁の原料が作られる非常に初期の段階を阻害することで、細胞壁の合成を妨げます。細胞壁合成阻害に分類されます。

  • テトラサイクリン系:
    細菌のリボソーム(30Sサブユニット)に結合し、タンパク質が合成される過程を妨害します。これにより、細菌は生命活動に必要なタンパク質を作れなくなります。これはまさしく蛋白合成阻害作用です。

★抗菌薬の作用機序による分類

作用機序 抗菌薬の系統(代表例)
蛋白合成阻害 テトラサイクリン系、マクロライド系、アミノグリコシド系、リンコマイシン系
細胞壁合成阻害 ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系ホスホマイシン系、グリコペプチド系
核酸合成阻害 キノロン系、リファマイシン系
葉酸合成阻害 サルファ剤、トリメトプリム

以上のことから、蛋白合成阻害作用を持つのはテトラサイクリン系抗菌薬です。
答え:5

71 DNAウイルスはどれか。

  1. インフルエンザウイルス
  2. サイトメガロウイルス
  3. デングウイルス
  4. ヒトRSウイルス
  5. ムンプスウイルス

この問題は、ウイルスの最も基本的な分類である核酸の種類(DNARNAか)についての知識を問う問題です。主要な感染症を引き起こすウイルスが、どちらのグループに属するかを正確に記憶する必要があります。参考までに、ヘルペスウイルス科に属するウイルスはすべてDNAウイルスであることを知っておきましょう。(サイトメガロウィルスなど)

各選択肢のウイルスの分類

  • インフルエンザウイルス:
    オルソミクソウイルス科に属し、季節性インフルエンザの原因となります。遺伝物質としてRNAを持つ代表的なRNAウイルスです。

  • サイトメガロウイルス (Cytomegalovirus; CMV):
    ヘルペスウイルス科に属するウイルスです。単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスなど、ヘルペスウイルス科のウイルスはすべて遺伝物質としてDNAを持っています。したがって、サイトメガロウイルスはDNAウイルスです。健常人では不顕性感染が多いですが、胎児への先天感染や、免疫不全者での日和見感染が問題となります。

  • デングウイルス:
    フラビウイルス科に属し、蚊によって媒介されてデング熱を引き起こします。遺伝物質としてRNAを持つRNAウイルスです。

  • ヒトRSウイルス (Respiratory Syncytial Virus):
    パラミクソウイルス科に属し、特に乳幼児において重篤な呼吸器感染症(細気管支炎など)の原因となります。遺伝物質としてRNAを持つRNAウイルスです。

  • ムンプスウイルス:
    パラミクソウイルス科に属し、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因となります。これも遺伝物質としてRNAを持つRNAウイルスです。

以上のことから、選択肢の中で唯一のDNAウイルスはサイトメガロウイルスです。

★主なウイルスの核酸による分類

核酸の種類 ウイルスの例
DNAウイルス サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、B型肝炎ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスB19
RNAウイルス インフルエンザウイルスデングウイルスヒトRSウイルスムンプスウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、A型/C型肝炎ウイルス、ノロウイルス、コロナウイルス

答え:2

72 細菌と毒素の組合せで誤っているのはどれか。

  1. Clostridioides difficile   トキシンB
  2. Clostridium botulinum   神経毒素
  3. Enterohemorrhagic   Escherichia coli ベロ毒素
  4. Staphylococcus aureus   表皮剝脱毒素
  5. Streptococcus pyogenes   toxic shock syndrometoxin-1(TSST-1)

この問題は、主要な病原細菌とその細菌が産生する特徴的な毒素(外毒素)の組み合わせに関する知識を問う問題です。各細菌がどのような毒素を作り、それがどのような疾患を引き起こすかを正確に覚えておきましょう。

★細菌の毒素とは

細菌が産生する毒素は、宿主(ヒト)に様々な有害な作用を及ぼし、感染症の症状を引き起こす原因物質(病原因子)です。特に菌体外に放出される外毒素は、特定の標的細胞に作用し、特徴的な臨床像を示します。

選択肢を見ていきます。

  • Clostridioides difficile (ディフィシル菌) ― トキシンB:
    この菌は抗菌薬投与後の腸内細菌叢の乱れに乗じて増殖し、偽膜性腸炎などの重篤な下痢症を引き起こします。その病原因子として、エンテロトキシンであるトキシンAと、細胞毒素であるトキシンBを産生します。したがって、この組合せは正しいです。

  • Clostridium botulinum (ボツリヌス菌) ― 神経毒素:
    ボツリヌス菌は、食中毒の原因菌として知られ、極めて強力な神経毒素(ボツリヌス毒素)を産生します。この毒素は神経筋接合部でのアセチルコリンの放出を阻害し、弛緩性麻痺を引き起こします。したがって、この組合せは正しいです。

  • Enterohemorrhagic Escherichia coli (腸管出血性大腸菌; EHEC) ― ベロ毒素:
    O157に代表されるEHECは、出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)の原因となります。その主たる病原因子は、志賀毒素(Shiga toxin)と類似した構造を持つベロ毒素(Verotoxin)です。したがって、この組合せは正しいです。

  • Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌) ― 表皮剝脱毒素:
    黄色ブドウ球菌は多彩な毒素を産生します。その一つである表皮剝脱毒素(Exfoliative toxin)は、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)の原因となり、表皮が剥がれ落ちる症状を引き起こします。したがって、この組合せは正しいです。

  • Streptococcus pyogenes (A群溶血性レンサ球菌) ― toxic shock syndrome toxin-1 (TSST-1):
    A群溶連菌は、レンサ球菌性トキシックショック症候群(STSS)という重篤な病態を引き起こします。しかし、その原因となる毒素はレンサ球菌性発熱性外毒素(SPEs)と総称されるスーパー抗原です。
    一方で、TSST-1黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)
     が産生する毒素であり、ブドウ球菌性トキシックショック症候群の原因となります。
    したがって、Streptococcus pyogenes と TSST-1 の組合せは誤っています。

さい
さい
STSSとTSST-1、名前が似ているので要注意です。

主な細菌と産生毒素の組合せ

細菌名 産生する主な毒素 関連疾患
Clostridioides difficile トキシンA、トキシンB 偽膜性腸炎
Clostridium botulinum 神経毒素 (ボツリヌス毒素) ボツリヌス症
腸管出血性大腸菌 (EHEC) ベロ毒素 (志賀毒素様毒素) 腸管出血性大腸菌感染症、HUS
Staphylococcus aureus 表皮剝脱毒素TSST-1、エンテロトキシン SSSS、TSS、食中毒
Streptococcus pyogenes レンサ球菌性発熱性外毒素 (SPEs) レンサ球菌性TSS (STSS)、猩紅熱

答え:5

73 Cryptococcus neoformansCryptococcus gattiiの共通の性状はどれか。

  1. 二形成を示す。
  2. 発芽管を形成する。
  3. 仮性菌糸を形成する。
  4. ウレアーゼを産生する。
  5. 分節型分生子を形成する。

この問題は、病原性真菌である Cryptococcus neoformansCryptococcus gattii の微生物学的な特徴、特に他の主要な真菌との鑑別に用いられる性状を正しく理解しているかを問う問題です。

Cryptococcus neoformans と Cryptococcus gattii は、厚い莢膜を持つ酵母様真菌で、クリプトコッカス症(特に髄膜炎や肺炎)の原因となります。これらは非常に近縁な種であり、多くの微生物学的性状を共有しています。

各選択肢を見ていきましょう。

  • a. 二形成を示す。:
    二形性真菌とは、環境温度(25℃など)では菌糸型、生体内温度(37℃)では酵母型と、環境に応じて形態を変化させる真菌です(例: HistoplasmaBlastomyces)。クリプトコッカスは環境中でも生体内でも一貫して酵母型をとるため、二形性真菌ではありません。したがって、この記述は誤りです。

  • b. 発芽管を形成する。:
    発芽管形成は、Candida albicans の迅速同定に用いられる特徴的な性状です。クリプトコッカスは発芽管を形成せず、出芽によって増殖します。したがって、この記述は誤りです。

  • c. 仮性菌糸を形成する。:
    仮性菌糸は、出芽した酵母細胞が分離せずに鎖状に連なって菌糸のように見える構造で、Candida属でよく見られます。クリプトコッカスは通常、仮性菌糸を形成しません。したがって、この記述は誤りです。

  • d. ウレアーゼを産生する。:
    ウレアーゼは尿素を分解する酵素です。ウレアーゼ産生能(ウレアーゼ陽性)は、Cryptococcus neoformans と Cryptococcus gattii に共通する、極めて重要な生化学的特徴です。この性状は、ウレアーゼ陰性が多い Candida属など他の酵母と鑑別する際に利用されます。したがって、この記述は正しいです。

  • e. 分節型分生子を形成する。:
    分節型分生子(アースロコニディア)は、菌糸が断片化して形成される無性胞子で、Coccidioides属などで見られます。クリプトコッカスは酵母であり、このような分生子の形成様式はとりません。したがって、この記述は誤りです。

以上のことから、両者に共通する性状は「ウレアーゼを産生する」ことです。

以下に酵母様真菌の鑑別点をまとめた表を貼ります。参考にしてみてください。

★主要な酵母様真菌の鑑別性状

性状 Cryptococcus neoformans / gattii Candida albicans 二形性真菌 (例: Histoplasma)
主な形態 酵母 酵母、仮性菌糸、菌糸 温度により酵母と菌糸
ウレアーゼ産生 陽性 (+) 陰性 (-) (菌種による)
発芽管形成 陰性 (-) 陽性 (+) 陰性 (-)
仮性菌糸形成 陰性 (-) 陽性 (+) 陰性 (-)
莢膜 陽性 (+) 陰性 (-) 陰性 (-)

答え:4

74 耐性菌と薬剤耐性の組合せで典型的でないのはどれか。

  1. BLNAR アンピシリン耐性
  2. ESBL産生菌 メロペネム耐性
  3. MDRP アミカシン耐性
  4. MRSA セファゾリン耐性
  5. VRE バンコマイシン耐性

この問題は、臨床的に重要な薬剤耐性菌とその典型的な耐性プロファイルの組み合わせを正しく理解しているかを問う問題です。それぞれの耐性菌が、どの抗菌薬に対して耐性を獲得するメカニズムを持っているか、また逆にどの抗菌薬が治療の選択肢となりうるか(感受性であるか)を把握しておきましょう。

★薬剤耐性菌の定義と特徴

薬剤耐性菌は、特定の抗菌薬が効かなくなった細菌のことです。その耐性メカニズムによって、無効化される抗菌薬の範囲(耐性スペクトラム)が決まります。

各選択肢を見ていきます。

  • BLNAR ― アンピシリン耐性:
    BLNARBeta-Lactamase Negative, Ampicillin-Resistantの略で、β-ラクタマーゼという酵素を産生しないにもかかわらず、ペニシリン結合タンパク質(PBP)の変異によってアンピシリンに耐性を示すインフルエンザ菌 (Haemophilus influenzae) のことです。その名の通り、アンピシリン耐性が定義そのものであるため、この組合せは正しいです。

  • ESBL産生菌 ― メロペネム耐性:
    ESBLExtended-Spectrum Beta-Lactamase(基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)の略です。この酵素を産生する菌(主に大腸菌や肺炎桿菌)は、多くのペニシリン系やセフェム系抗菌薬を分解して無効化します。しかし、カルバペネム系抗菌薬(メロペネム、イミペネムなど)はESBLによって分解されず、安定した効果を示します。そのため、ESBL産生菌による重症感染症の治療にはカルバペネム系が第一選択薬となります。したがって、「メロペネム耐性」を示すことはESBL産生菌の典型的な特徴ではなく、むしろ「メロペネム感受性」が典型的です。この組合せは誤っています。

  • MDRP ― アミカシン耐性:
    MDRPMultidrug-Resistant-Pseudomonas aeruginosa多剤耐性緑膿菌)の略です。緑膿菌治療に用いられる主要な3系統(抗緑膿菌カルバペネム系、抗緑膿菌キノロン系、抗緑膿菌アミノグリコシド系)の薬剤のうち、2系統以上に耐性を示すものを指します。アミカシンはアミノグリコシド系抗菌薬であり、MDRPではアミカシン耐性を示すことは典型的なパターンの一つです。この組合せは正しいです。

  • MRSA ― セファゾリン耐性:
    MRSAMethicillin-Resistant-Staphylococcus aureusメチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の略です。メチシリン耐性は、mecA遺伝子によって特殊なPBP(PBP2′)を産生することによります。このPBP2’は、メチシリンだけでなく、セファゾリンを含むほぼ全てのβ-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系)と結合しにくいため、MRSAはこれらの薬剤に耐性を示します。したがって、セファゾリン耐性はMRSAの典型的な特徴です。この組合せは正しいです。

  • VRE ― バンコマイシン耐性:
    VREVancomycin-Resistant Enterococci(バンコマイシン耐性腸球菌)の略です。その名の通り、グリコペプチド系抗菌薬であるバンコマイシンに耐性を示す腸球菌です。この組合せは定義そのものであり、正しいです。

主な薬剤耐性菌とその典型的な耐性パターンを以下にまとめます。

★主な薬剤耐性菌と薬剤感受性

耐性菌 典型的な耐性薬 典型的な感受性薬(治療選択肢)
BLNAR アンピシリン、多くのセフェム系 レスピラトリーキノロン系など
ESBL産生菌 第3・第4世代セフェム系、ペニシリン系 メロペネム (カルバペネム系)、β-ラクタマーゼ阻害薬配合剤
MDRP カルバペネム系、キノロン系、アミカシンなど複数系統 コリスチンなど(感受性パターンによる)
MRSA セファゾリンを含む全てのβ-ラクタム系 バンコマイシン、リネゾリドなど
VRE バンコマイシン リネゾリド、ダプトマイシンなど

答え:2

75 妊婦が初感染すると胎児奇形のリスクが高いのはどれか。

  1. B型肝炎ウイルス
  2. アデノウイルス
  3. インフルエンザウイルス
  4. 風疹ウイルス
  5. 麻疹ウイルス

この問題は、妊娠中の母親のウイルス感染が胎児にどのような影響を及ぼすか、特に催奇形性(さいきけいせい)、つまり胎児に形態異常(奇形)を引き起こすリスクが高いウイルスはどれかという問題です。

★ 妊娠中のウイルス感染と胎児への影響

妊娠中に母親がウイルスに初感染すると、ウイルスが胎盤を通じて胎児に感染することがあります(垂直感染)。胎児の器官が形成される重要な時期である妊娠初期に感染が起こると、細胞の正常な発育が妨げられ、先天的な異常を引き起こす可能性があります。このような先天異常を引き起こす感染症は、頭文字をとってTORCH症候群としてまとめられることがあり、その中でも特に催奇形性が高いものが知られています。(後で紹介します)

★各選択肢のウイルスの検討

  • B型肝炎ウイルス:
    主に産道感染(分娩時)で母子感染し、新生児がB型肝炎キャリアになるリスクが高いですが、胎児に形態異常を引き起こすリスクは極めて低いとされています。

  • アデノウイルス:
    主に気道や腸管に感染する一般的なウイルスです。胎児への影響との関連が研究されていますが、胎児奇形との明確で強い因果関係は確立されていません。

  • インフルエンザウイルス:
    妊娠中に感染すると、母親が重症化しやすいことが知られています。また、感染に伴う高熱が胎児の神経管閉鎖障害などのリスクをわずかに高める可能性が指摘されていますが、ウイルス自体が直接的に高い頻度で奇形を引き起こすとは考えられていません。

  • 風疹ウイルス:
    このウイルスは、妊娠初期(特に妊娠12週まで)に妊婦が初感染すると、極めて高い確率で胎児に感染し、先天性風疹症候群(CRS)と呼ばれる重篤な先天異常を引き起こします。CRSの三大症状は、心奇形(動脈管開存症など)、白内障難聴であり、これらは典型的な胎児奇形です。したがって、風疹ウイルスは胎児奇形のリスクが非常に高いウイルスです。

  • 麻疹ウイルス:
    妊娠中に感染すると流産や早産のリスクが高まります。しかし、先天性風疹症候群のような特徴的な奇形を高率に引き起こすという証拠は確立されていません。

以上のことから、妊婦が初感染した場合に胎児奇形のリスクが著しく高いのは風疹ウイルスであると言えます。

★主な母子感染症と胎児への影響(TORCH症候群など)

病原体 主な胎児・新生児への影響 奇形リスク
Toxoplasma (トキソプラズマ) 水頭症、脈絡網膜炎、脳内石灰化 高い
Others (その他) 梅毒、水痘、パルボウイルスB19、ジカウイルスなど 原因による
Rubella virus (風疹ウイルス) 先天性風疹症候群(心奇形、白内障、難聴) 極めて高い
Cytomegalovirus (サイトメガロウイルス) 難聴、精神発達遅滞、小頭症、肝脾腫 高い
Herpes simplex virus (単純ヘルペス) 新生児ヘルペス(主に産道感染)、脳炎、皮膚症状 低い

答え:4

76 血液培養で検出された場合、汚染菌である可能性が高いのはどれか。

  1. Bacillus anthracis
  2. Cutibacterium acnes
  3. Enterococcus faecalis
  4. Pseudomonas aeruginosa
  5. Staphylococcus aureus

この問題は、血液培養の結果を解釈する上で非常に重要な「真の菌血症コンタミネーション(汚染)を区別する問題です。

ポイントは、各細菌の本来の生息場所病原性を理解することです。血液培養における汚染は、主に採血時の皮膚消毒が不十分な場合に、皮膚の常在菌が混入することで起こります。したがって、選択肢の中で最も典型的な皮膚常在菌はどれかを見極めることが重要です。

★血液培養におけるコンタミネーション(汚染)とは

血液培養は、血流中に細菌が侵入している状態(菌血症)を診断するための極めて重要な検査です。しかし、採血の際に、患者の皮膚表面に存在する常在菌が針と一緒に穿刺部位から混入し、本来は無菌であるはずの血液培養ボトル内で増殖してしまうことがあります。これをコンタミネーション(汚染)と呼びます。コンタミネーションを真の菌血症と誤ると、不要な抗菌薬投与につながるため、両者の鑑別は非常に重要です。

各選択肢を見ていきます。

  • Bacillus anthracis (炭疽菌):
    炭疽症の原因菌であり、極めて病原性が高い細菌です。人獣共通感染症や生物テロで問題となります。血液培養から検出された場合、それは重篤な炭疽菌敗血症を意味し、汚染である可能性はまずありません。

  • Cutibacterium acnes (アクネ菌):
    旧学名はPropionibacterium acnesです。この菌は、ヒトの皮膚の毛穴の奥深く(皮脂腺)に常在しており、にきびの原因菌として知られています。その生息場所から、採血時に皮膚表面の消毒をしても混入しやすく、血液培養における汚染菌(コンタミネーション)の代表格です。稀に、人工関節感染症や心内膜炎の原因となることもありますが、血液培養で検出された場合は、まず汚染が疑われます。

  • Enterococcus faecalis (腸球菌):
    主に腸管内に常在する細菌です。尿路感染症、腹腔内感染症、感染性心内膜炎などの原因菌として重要です。腸管から血流中に移行して菌血症を起こすため、血液培養で検出された場合は、真の菌血症と判断されます。

  • Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌):
    水回りなど湿潤な環境に広く存在する環境細菌ですが、易感染宿主に対しては日和見感染を起こす重要な病原菌です。院内肺炎や敗血症の原因となり、血液培養で検出された場合は、汚染ではなく重篤な感染症を意味します。

  • Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌):
    鼻腔や皮膚に常在することもありますが、非常に病原性が高く、皮膚軟部組織感染症から菌血症、感染性心内膜炎、敗血症性ショックまで、多岐にわたる重篤な感染症を引き起こします。血液培養で検出された場合、コンタミネーションである可能性は極めて低く、常に真の菌血症として対応すべき菌とされています。

以上のことから、汚染菌である可能性が最も高いのはCutibacterium acnesです。

★主な細菌の血液培養における臨床的意義

細菌名 主な生息場所・特徴 血液培養での解釈
Cutibacterium acnes 皮膚の皮脂腺(常在菌) 汚染(コンタミネーション)の可能性が高い
Staphylococcus aureus 鼻腔、皮膚(病原性が高い 真の菌血症
Enterococcus faecalis 腸管内(常在菌) 真の菌血症
Pseudomonas aeruginosa 環境中(日和見病原菌) 真の菌血症
Bacillus anthracis 土壌(病原性が極めて高い 真の菌血症(炭疽症)

答え:2

77 微生物検査において担当医師への緊急連絡を要する検査結果はどれか。2つ選べ。

  1. 鼻腔からMRSAが検出された。
  2. 糞便から腸管出血性大腸菌が検出された。
  3. 尿からNeisseria gonorrhoeaeが検出された。
  4. 喀痰からMycobacterium aviumが検出された。
  5. 血液からStreptococcus pyogenesが検出された。

この問題は、微生物検査の結果の中から、患者の生命に直結する、あるいは公衆衛生上、即座に対応が必要となる細菌検査版の「クリティカルバリュー(緊急異常値)」問題です。微生物検査室では、検査結果が出た時点ですぐに治療方針の決定や変更、あるいは公衆衛生上の対応が必要となる特定の組み合わせを「クリティカルバリュー」として定めています。これに該当する結果が判明した場合、検査技師は昼夜を問わず、直ちに担当医師に報告する義務があります。

さい
さい
選択肢を見て、どれが重症なのかを見極められればOKと思います。

各選択肢を見ていきます。

  • 鼻腔からMRSAが検出された。:
    MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の鼻腔からの検出は、感染症を発症している状態ではなく、菌が定着している保菌(コロナイゼーション)状態であることがほとんどです。手術前のスクリーニングや院内感染対策上は重要な情報ですが、患者の状態が急変するような緊急事態を示すものではありません。したがって、緊急連絡は不要です。

  • 糞便から腸管出血性大腸菌が検出された。:
    腸管出血性大腸菌(O157など)は、溶血性尿毒症症候群(HUS)という致死的な合併症を引き起こす可能性があります。また、感染症法における3類感染症に指定されており、診断した医師は直ちに保健所への届出が義務付けられています。食中毒などの集団発生につながる可能性もあるため、治療方針の決定と公衆衛生の両面から、極めて緊急性の高い報告です。したがって、緊急連絡を要します

  • 尿からNeisseria gonorrhoeae(淋菌)が検出された。:
    淋菌は性感染症である淋病の原因菌です。治療が必要な疾患ですが、直ちに生命を脅かすものではありません。通常業務の時間内に報告すれば十分であり、夜間などに緊急連絡を行う必要はありません。

  • 喀痰からMycobacterium aviumが検出された。:
    M. avium非結核性抗酸菌(NTM)の一種で、肺MAC症という慢性呼吸器感染症の原因となります。病気の進行は緩やかであり、診断にも複数回の菌検出や画像所見などを要します。緊急の治療介入を必要とするものではないため、緊急連絡は不要です。

  • 血液からStreptococcus pyogenes(A群溶血性レンサ球菌)が検出された。:
    血液は本来、無菌です。そこからStreptococcus pyogenesのような病原性の高い菌が検出されたということは、菌が血流に侵入している敗血症を意味します。特にこの菌は、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(レンサ球菌性トキシックショック症候群; STSS)を引き起こし、急激に多臓器不全に陥り、致死率が非常に高いことで知られています。一刻も早い強力な抗菌薬治療が必要となるため、最も緊急性の高い報告の一つです。したがって、緊急連絡を要します

以上より「糞便から腸管出血性大腸菌が検出された」と 「血液からStreptococcus pyogenesが検出された」が答えとなります。
各検査結果の臨床的意義と緊急連絡の要否を以下にまとめます。

★検査結果の緊急性判断

検査結果 緊急連絡の要否 理由
鼻腔からMRSA 多くは保菌状態であり、緊急性は低い。
糞便から腸管出血性大腸菌 HUS発症のリスク、感染症法での届出義務。
尿から淋菌 性感染症であり、即時の生命の危険はない。
喀痰からM. avium 慢性感染症であり、緊急性は低い。
血液からS. pyogenes 敗血症・STSSを示唆し、致死率が高い。

答え:2と5

78 染色法と対象となる微生物の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 墨汁法   Candida albicans
  2. KOH法   Trichophyton rubrum
  3. Grocott染色   Pneumocystis jirovecii
  4. Giménez染色   Mycoplasma pneumoniae
  5. Ziehl-Neelsen染色   Legionella pneumophila

微生物学における様々な特殊染色法と、その染色法によって特異的に検出・鑑別される微生物の組み合わせについての問題です。

★微生物の染色法について

グラム染色は細菌学の基本ですが、グラム染色では染まりにくい、あるいは特別な構造を可視化するためには、様々な特殊染色法が用いられます。

選択肢の組み合わせを見ていきます。

  • a墨汁法 ―Candida albicans:
    墨汁法は、墨汁の粒子が入れない領域を可視化する陰性染色の一種です。主に、Cryptococcus neoformansなどが持つ厚い莢膜を、黒い背景の中に白く抜けたハローとして観察するために用います。Candida albicansは莢膜を持たないため、この染色の対象とはなりません。したがって、この組合せは誤りです。

  • KOH法 ― Trichophyton rubrum:
    KOH法は厳密には染色法ではなく、直接鏡検法の一種です。水酸化カリウム(KOH)溶液を用いて、皮膚、爪、毛髪などの検体に含まれるヒトの細胞成分(ケラチンなど)を溶解させ、真菌の要素を見やすくします。Trichophyton rubrum白癬菌(皮膚糸状菌)の一種で、皮膚や爪の感染症の原因となります。KOH法は、これらの検体から皮膚糸状菌の菌糸を検出するための標準的な方法です。したがって、この組合せは正しいです。

  • Grocott染色 ― Pneumocystis jirovecii:
    グロコット染色は、真菌の細胞壁に含まれる多糖類を特異的に酸化し、還元された銀によって黒~茶褐色に染色する方法です。Pneumocystis jirovecii(ニューモシスチス・イロベチイ)は、免疫不全患者に重篤な肺炎を引き起こす真菌であり、そのシスト壁がグロコット染色で明瞭に黒く染まるため、本菌の病理組織学的診断におけるゴールドスタンダードとされています。したがって、この組合せは正しいです。

  • Giménez染色 ― Mycoplasma pneumoniae:
    ヒメネス染色は、細胞内に寄生するリケッチアクラミジアなどの細菌を赤く染め出すのに用いられます。Mycoplasma pneumoniae細胞壁を持たない特殊な細菌で、非常に小さく、グラム染色では染まりません。診断には主に遺伝子検査(PCR)や血清学的検査が用いられ、ヒメネス染色の対象ではありません。したがって、この組合せは誤りです。

  • Ziehl-Neelsen染色 ― Legionella pneumophila:
    チール・ネールゼン染色は、抗酸菌Mycobacterium tuberculosisなど)を検出するための染色法です。抗酸菌の細胞壁はミコール酸というロウ様物質に富むため、一度加温して染色すると、酸アルコールによる脱色に抵抗性を示します。Legionella pneumophilaはグラム陰性桿菌であり、抗酸性を持たないため、この染色の対象ではありません。したがって、この組合せは誤りです。

主な特殊染色法とその対象微生物を以下にまとめます。

★主な特殊染色法と対象微生物

染色法 主な対象微生物 目的・特徴
墨汁法 Cryptococcus neoformans 莢膜の確認(陰性染色
KOH法 皮膚糸状菌 (Trichophytonなど) 角質などを溶解し菌要素を観察
Grocott染色 真菌全般、Pneumocystis jirovecii 真菌の細胞壁を黒く染色
Giménez染色 RickettsiaChlamydia 細胞内寄生細菌を赤く染色
Ziehl-Neelsen染色 抗酸菌 (Mycobacterium属) 抗酸性を示す菌を赤く染色

答え:2と3

第71回(PM)臨床免疫学(79〜89)

79 急性期反応性蛋白でないのはどれか。

  1. CRP
  2. ハプトグロビン
  3. セルロプラスミン
  4. トランスサイレチン
  5. α1-アンチトリプシン

この問題は、生体の急性期反応において、血中濃度が変動するタンパク質(急性期反応性蛋白)を正しく理解しているかを問う問題です。

重要なのは、急性期反応性蛋白には炎症によって濃度が増加する「陽性のものと、逆に減少する「陰性」のものがあることを知っているかです。

★急性期反応と急性期反応性蛋白

急性期反応とは、感染症、組織損傷、炎症などによって引き起こされる全身性の生体防御反応です。この反応では、IL-6などの炎症性サイトカインの刺激により、主に肝臓で特定のタンパク質の産生が大きく変動します。これらのタンパク質を急性期反応性蛋白と呼びます。

  • 陽性急性期反応性蛋白: 炎症時に肝臓での産生が促進され、血中濃度が上昇するタンパク質。炎症部位での防御や組織修復に関与します。

  • 陰性急性期反応性蛋白: 炎症時に肝臓での産生が抑制され、血中濃度が低下するタンパク質。体は、陽性蛋白の産生にアミノ酸などの資源を優先的に振り分けるため、これらのタンパク質の合成を後回しにします。

各選択肢を見ていきます。

  • CRP (C反応性蛋白):
    炎症反応の最も代表的なマーカーです。細菌感染などで急激に産生が亢進し、血中濃度が著しく上昇します。典型的な陽性急性期反応性蛋白です。

  • ハプトグロビン:
    血中の遊離ヘモグロビンと結合し、鉄の喪失を防ぐタンパク質です。炎症時に産生が亢進し、血中濃度が上昇します。陽性急性期反応性蛋白です。

  • セルロプラスミン:
    銅を輸送するタンパク質で、抗酸化作用も持ちます。炎症時に産生が亢進し、血中濃度が上昇します。陽性急性期反応性蛋白です。

  • トランスサイレチン (プレアルブミン):
    甲状腺ホルモンやビタミンA(レチノール)を輸送するタンパク質です。半減期が約2日と短いため、栄養状態の指標(ラピッドターンオーバープロテイン)として利用されます。炎症時には肝臓での産生が抑制されるため、血中濃度は低下します。これは、陰性急性期反応性蛋白に分類されます。

  • α1-アンチトリプシン:
    プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)阻害因子で、好中球などから放出されるエラスターゼなどから組織を保護する役割があります。炎症時には組織障害を防ぐために産生が亢進し、血中濃度が上昇します。陽性急性期反応性蛋白です。

選択肢の中で唯一、炎症時に血中濃度が低下する陰性急性期反応性蛋白であるトランスサイレチンが、この問題の答えとなります。

★主な急性期反応性蛋白の分類

分類 蛋白名 炎症時の血中濃度
陽性急性期反応性蛋白 CRP、ハプトグロビン、セルロプラスミン、α1-アンチトリプシン、フィブリノゲン、血清アミロイドA(SAA) 上昇 (↑)
陰性急性期反応性蛋白 トランスサイレチン、アルブミン、トランスフェリン 低下 (↓)

答え:4

80 血清の非働化により失活する補体成分はどれか。

  1. C1
  2. C3
  3. C4
  4. C6
  5. D因子

この問題は、血清学的な検査の前処理として行われる「非働化(ひどうか)」という操作が、補体系のどの成分を失活させることを目的としているかを問う問題です。

★血清の非働化とは

血清の非働化とは、検査の際に補体の活性が干渉するのを防ぐ目的で、血清を56℃で30分間加熱する操作のことです。補体は免疫反応に重要な役割を果たしますが、試験管内では非特異的な反応(溶血や細胞融解など)を引き起こすことがあるため、これを取り除く必要があります。

★補体成分の熱に対する安定性

補体系は多数のタンパク質成分から構成されており、それぞれ熱に対する安定性が異なります。

  • 熱に不安定(易熱性: 古典的経路の初期成分であるC1、C2、C4や、第二経路のB因子は熱に不安定で、56℃・30分の加熱で容易に失活します。

  • 熱に比較的安定: 中心の役割を担うC3や、終末経路を構成するC5~C9は、比較的熱に安定です。

  • 熱に非常に安定: 第二経路のD因子は特に熱に安定であることが知られています。

上記を踏まえて選択肢を見ていきましょう。

  • C1:
    補体活性化の古典的経路における最初の成分です。C1はC1q、C1r、C1sの複合体であり、熱に対して非常に不安定(易熱性)です。したがって、血清の非働化によって失活します。これが本問題の答えの一つです。

  • C3:
    全ての補体活性化経路が合流する中心的な成分です。C1、C2、C4に比べて熱には比較的安定しており、非働化の操作では完全には失活しません。

  • C4:
    古典的経路においてC1の次に活性化される成分です。C1と同様に熱に不安定(易熱性)であり、非働化によって失活します
    (※注:本問は選択肢の中に熱に不安定な成分が複数含まれますが、C1はカスケードの最上流であり、代表的な易熱性成分です。)

  • C6:
    C5bとともに膜侵襲複合体(MAC)の形成を開始する終末経路の成分です。C3以降の成分は比較的熱に安定であり、非働
    化では失活しにくいです。

  • D因子:
    第二経路(副経路)の活性化に関わるセリンプロテアーゼです。補体成分の中で最も熱に安定な成分の一つであり、非働化では全く失活しません。

以上のことから、非働化により失活する成分はC1やC4ですが、最も代表的なものとしてC1が挙げられます。

主な補体成分の熱に対する安定性を以下にまとめます。

主な補体成分の熱安定性

補体成分 熱に対する安定性 非働化(56℃, 30分)の影響
C1 不安定 (易熱性) 失活する(最も代表的)
C4 不安定 (易熱性) 失活する(C1が失活すれば)
C3 比較的安定 影響を受けにくい
C6 安定 影響を受けない
D因子 非常に安定 影響を受けない

答え:1(4も正解にすべきと思います)

81 Ⅲ型アレルギーに分類される疾患はどれか。

  1. 花粉症
  2. 重症筋無力症
  3. サルコイドーシス
  4. 自己免疫性溶血性貧血
  5. 全身性エリテマトーデス

この問題は、アレルギー反応のGell & Coombs分類(Ⅰ型~Ⅳ型)を正しく理解し、各疾患がどの型に分類されるかを判断できるかが問われます。

★アレルギー反応の分類(Gell & Coombs分類)

アレルギー反応は、その発症機序によって主に4つの型に分類されます。

  • Ⅰ型(即時型): IgE抗体が関与。マスト細胞からヒスタミンなどが放出され、即時に症状(蕁麻疹、気管支喘息など)が出現。

  • Ⅱ型(細胞障害型): IgGIgM抗体が自己の細胞表面の抗原に結合し、補体や食細胞を介してその細胞を破壊する。

  • Ⅲ型(免疫複合体型): 抗原と抗体(IgGなど)が結合した免疫複合体が血流に乗り、腎臓、血管、関節などに沈着。そこで補体を活性化し、組織障害を引き起こす。

  • Ⅳ型(遅延型): 抗体は関与せず、感作されたTリンパ球がサイトカインを放出して炎症を起こす。症状発現まで24~48時間かかる。

選択肢の疾患がどの分類に該当するのかを見ていきます。

  • 花粉症:
    スギ花粉などのアレルゲンに対してIgE抗体が産生される、典型的なⅠ型アレルギーです。

  • 重症筋無力症:
    神経筋接合部のアセチルコリン受容体という自己の組織に対する自己抗体(IgG)が産生され、神経伝達を阻害します。細胞そのものを破壊するわけではありませんが、自己抗体が細胞表面の機能分子を障害するタイプであり、広義のⅡ型アレルギーに分類されます。

  • サルコイドーシス:
    原因不明の抗原に対するT細胞の過剰な反応によって、全身に類上皮細胞肉芽腫を形成する疾患です。T細胞が主役であるため、Ⅳ型アレルギーが関与すると考えられています。

  • 自己免疫性溶血性貧血 (AIHA):
    赤血球膜上の自己抗原に対する自己抗体(IgGなど)が結合し、赤血球が破壊(溶血)される疾患です。自己の細胞が抗体を介して破壊される、典型的なⅡ型アレルギーです。

  • 全身性エリテマトーデス (SLE):
    自身の細胞の核成分(DNAなど)に対する自己抗体が産生され、抗原と結合して免疫複合体を形成します。この免疫複合体が腎臓の糸球体や皮膚の血管壁に沈着し、炎症を引き起こしてループス腎炎や皮疹といった多彩な症状を呈します。これはⅢ型アレルギーの典型的な病態です。

以上のことから、Ⅲ型アレルギーに分類される疾患は全身性エリテマトーデスです。

アレルギー反応の分類と、それぞれの代表的な疾患を以下にまとめます。

★アレルギー反応の分類と代表疾患

アレルギーの型 主なメカニズム 代表疾患
Ⅰ型(即時型) IgE、マスト細胞、ヒスタミン 花粉症、気管支喘息、アナフィラキシー
Ⅱ型(細胞障害型) IgG/IgM、補体、自己細胞 自己免疫性溶血性貧血重症筋無力症、橋本病
Ⅲ型(免疫複合体型) 免疫複合体 (抗原+IgG)、補体 全身性エリテマトーデス (SLE)、急性糸球体腎炎
Ⅳ型(遅延型) 感作T細胞、サイトカイン サルコイドーシス、接触性皮膚炎、ツベルクリン反応

答え:5

82 試験管内補体寒冷活性化現象(コールドアクチベーション)でみられる検査結果の組合せで正しいのはどれか。

特殊な検体取り扱い上の現象である「コールドアクチベーション(試験管内補体寒冷活性化現象)」について、そのメカニズムと検査データへの影響を正しく理解しているかを問う問題です。

★コールドアクチベーションとは

コールドアクチベーションは、採血後、血清を分離する過程で検体が低温(室温や冷蔵温度)に曝されることによって、試験管内で補体系が活性化してしまう現象です。
特にC型肝炎患者などでみられる
クリオグロブリン(低温で析出・ゲル化する免疫グロブリン)が存在する場合に起こりやすいとされています。

【メカニズム】

  • 検体が低温に曝されると、血清中のクリオグロブリンなどが凝集物を形成します。

  • この凝集物に補体のC1が結合し、古典経路の活性化が連鎖的に起こります。

  • その結果、試験管内でC4、C2などの補体成分が消費されてしまいます。

★各検査項目への影響

  • 血清補体価 (CH50):
    これは、古典経路から終末経路までの補体の総合的な活性(力価)を測定する検査です。コールドアクチベーションによって古典経路の成分(C4, C2など)が試験管内で消費されてしまうため、測定時には補体の活性が本来の値よりも低値となります。

  • 血漿補体価:
    この現象を回避するためには、採血時にEDTAという抗凝固剤入りの採血管を使用します。EDTAは、古典経路の活性化に必要なカルシウムイオン(Ca²⁺)マグネシウムイオン(Mg²⁺)をキレート(捕捉)します。これにより、試験管内での補体活性化が抑制されるため、血漿で測定した補体価は影響を受けず、生体内での本来の値を反映して基準範囲内となります。

  • C3蛋白量:
    C3は古典経路の下流にある成分です。コールドアクチベーションは試験管内で起こる比較的軽微な反応であり、C3蛋白量が大きく変動するほど消費されることは通常ありません。また、この検査は補体の活性ではなく蛋白の量を直接測定しているため、影響はさらに受けにくいです。したがって、C3蛋白量は基準範囲内となります。(同様にC4蛋白量も基準範囲内です)

以上を踏まえて、選択肢を考えます。

  • 血清補体価低値(試験管内で消費されるため)

  • 血漿補体価基準範囲内(EDTAにより活性化が抑制されるため)

  • C3蛋白量基準範囲内(蛋白量として測定しており、消費の影響が少ないため)

この組み合わせに一致するのは、選択肢です。

コールドアクチベーション現象と、それに関連する検査結果の変動を以下にまとめます。

コールドアクチベーションにおける検査所見

検査項目 測定される検体 結果 理由
血清補体価 (CH50) 血清 低値 試験管内での古典経路活性化により、補体成分が消費されるため。
血漿補体価 EDTA血漿 基準範囲内 EDTAが補体活性化を阻害するため、生体内の状態を反映する。
C3蛋白量 血清 基準範囲内 蛋白量を測定しており、活性低下の影響を受けにくいため。

答え:3

83 中和抗体はどれか。2つ選べ。

  1. HBs抗体
  2. HCV抗体
  3. IgG-HA抗体
  4. HIV-1/2抗体
  5. IgG-HBc抗体

この問題は、ウイルスに対する抗体のうち、ウイルスの感染性を失わせる(中和する)能力を持つ「中和抗体」はどれかを問う問題です。

★中和抗体とは

中和抗体とは、ウイルスや毒素に結合し、その生物学的な活性(特に細胞への感染能力)を中和する(無効化する)抗体のことです。ウイルス感染においては、主にウイルスの表面にあるタンパク質に結合し、ウイルスがヒトの細胞に侵入するのをブロックすることで感染を防ぎます。この抗体の存在は、そのウイルスに対する免疫(抵抗力)があることを意味します。

選択肢の抗体で中和抗体はどれかを見ていきましょう。

  • HBs抗体:
    B型肝炎ウイルスの表面抗原(HBs抗原)に対する抗体です。ウイルスの表面に結合してウイルスの肝細胞への侵入を阻止するため、感染防御に中心的な役割を果たします。B型肝炎ワクチンはこのHBs抗体を産生させることを目的としており、陽性であればB型肝炎に対する免疫があると判断されます。典型的な中和抗体です。

  • HCV抗体:
    C型肝炎ウイルスに対する抗体です。この抗体は、C型肝炎ウイルスに感染したことがあるかどうかのスクリーニング検査(感染マーカー)として測定されますが、感染を防ぐ能力はほとんどありません。HCV抗体が陽性であっても、多くの場合はウイルスが排除されずに慢性肝炎に移行します。したがって、中和抗体ではありません

  • IgG-HA抗体:
    A型肝炎ウイルスに対するIgGクラスの抗体です。A型肝炎は一度感染すると終生免疫が成立しますが、この免疫の主体となるのがIgG-HA抗体です。ウイルスの感染性を中和し、再感染を防ぎます。A型肝炎ワクチン接種後にも産生されます。これも中和抗体です。

  • HIV-1/2抗体:
    ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する抗体です。この抗体はHIV感染の診断(感染マーカー)に用いられますが、ウイルスの増殖を抑えたり、エイズの発症を防いだりする効果はありません。したがって、中和抗体ではありません

  • IgG-HBc抗体:
    B型肝炎ウイルスのコア抗原(HBc抗原)に対するIgGクラスの抗体です。コア抗原はウイルスの内部に存在するため、この抗体はウイルスの表面に結合して感染を防ぐことはできません。HBc抗体は、B型肝炎ウイルスに感染したことがある(既往感染)ことを示すマーカーであり、感染防御能はありません。したがって、中和抗体ではありません

★主なウイルス抗体の種類と役割

抗体名 抗体の種類 臨床的意義
HBs抗体 中和抗体 B型肝炎に対する免疫(ワクチン効果 or 治癒)を示す。
HCV抗体 感染マーカー C型肝炎の感染歴を示すが、免疫は示さない。
IgG-HA抗体 中和抗体 A型肝炎に対する免疫(終生免疫)を示す。
HIV-1/2抗体 感染マーカー HIV感染を示すが、免疫は示さない。
IgG-HBc抗体 感染マーカー B型肝炎の感染歴を示すが、免疫は示さない。

答え:1と3

84 血液型で正しいのはどれか。

  1. Bombay型はH抗原を持つ。
  2. Xg(a+)は女性より男性に多い。
  3. Di(a+)の日本人は約10%である。
  4. weak DはD抗原のエピトープの一部が欠損している。
  5. Fy(a+b+)は三日熱マラリア原虫の感染に抵抗性を示す。

この問題は、ABO式やRh式以外の様々な血液型(不規則血液型)の遺伝的背景、抗原の性質、人種による頻度の違い、そして疾患との関連性など、幅広い知識を問う問題です。

選択肢を一つずつ整理していきます。

  • Bombay型はH抗原を持つ。:
    Bombay型(ボンベイ型、Oh型)は、ABO血液型の前駆物質であるH抗原を合成できない特殊な血液型です。H抗原がないため、A抗原もB抗原も作ることができません。血球の検査ではO型と似た反応を示しますが、血清中には抗A、抗Bに加えて抗H抗体を持つ点がO型と決定的に異なります。したがって、「H抗原を持つ」という記述は誤りです。

  • Xg(a+)は女性より男性に多い。:
    Xg式血液型をコードする遺伝子はX染色体上にあります。Xg(a)抗原が陽性(+)になる遺伝子は優性です。女性はX染色体を2本(XX)、男性は1本(XY)持ちます。そのため、女性はどちらか一方のX染色体にXg(a)遺伝子があれば陽性(+)になりますが、男性は持つ唯一のX染色体にその遺伝子がないと陽性になりません。この結果、Xg(a+)の頻度は女性(約89%)の方が男性(約66%)よりも高くなります。したがって、「男性に多い」という記述は誤りです。

  • Di(a+)の日本人は約10%である。:
    Diego(ディエゴ)式血液型のDi(a)抗原は、モンゴロイド人種に特徴的に見られる赤血球抗原です。白人や黒人ではほとんど見られません。日本人におけるDi(a)抗原の陽性率は約10~12%と報告されています。したがって、「約10%である」という記述は正しいです。

  • weak DはD抗原のエピトープの一部が欠損している。:
    RhD抗原の表現型にはバリエーションがあります。
    weak D: D抗原を構成するエピトープ(抗体が認識する部分)は全て揃っていますが、その発現が健常者より少ないタイプです。
    partial D: D抗原を構成するエピトープの一部が欠損しているタイプです。
    設問の記述はpartial Dの説明であり、weak Dの説明ではありません。したがって、この記述は誤りです。

  • Fy(a+b+)は三日熱マラリア原虫の感染に抵抗性を示す。:
    Duffy(ダフィー)式血液型のFy(a)抗原およびFy(b)抗原は、三日熱マラリア原虫Plasmodium vivax)が赤血球に侵入する際の足場(受容体)として機能します。したがって、これらの抗原を持つFy(a+b+)の人は、三日熱マラリアに感受性(感染しやすい)です。逆に、両方の抗原を持たないFy(a-b-)の人は、マラリア原虫が赤血球に侵入できないため、感染に抵抗性を示します。したがって、この記述は誤りです。

長くなりましたので、下にまとめてみます。

★各種血液型の特徴

血液型 特徴
Bombay (ボンベイ) 型 H抗原を欠損し、血清中に抗H抗体を持つ。
Xg式 遺伝子がX染色体上にあり、Xg(a+)頻度は女性>男性
Diego (ディエゴ) 式 Di(a)抗原はモンゴロイド系人種に特徴的で、日本人の陽性率は約10%。
weak D D抗原のが少ない(質的異常はない)。
Duffy (ダフィー) 式 Fy(a-b-)型が三日熱マラリアに抵抗性を示す。

答え:3

85 試験管法の交差適合試験で使用する試薬はどれか。2つ選べ。

  1. 抗A試薬
  2. 反応増強剤
  3. O型赤血球試薬
  4. 抗ヒトグロブリン試薬
  5. スクリーニング赤血球試薬

この問題は、輸血前の最終的な適合性を確認する交差適合試験(クロスマッチ)、特に試験管法において、どのような試薬が用いられるかを正確に理解しているかを問う問題です。

ポイントは、交差適合試験の主目的が、患者血清中に存在する不規則抗体(特に臨床的に意義のあるIgG抗体が輸血用血液(供血者赤血球)と反応しないかを確認することであり、そのために間接抗グロブリン試験(間接クームス試験)を行うという点です。

★交差適合試験(クロスマッチ)の目的と方法

交差適合試験は、患者(受血者)の血液と供血者の血液を試験管内で反応させ、凝集や溶血が起きないことを確認する検査です。これにより、予期せぬ副作用を防ぎます。
試験管法による主試験(患者血清 vs 供血者赤血球は、主に以下のステップで行われます。

  • 生理食塩液法: 患者血清と供血者赤血球を食塩液中で反応させます。主に室温で反応する完全抗体(IgM)を検出します。

  • LISS加温法など: 次に、不完全抗体(IgG)の反応を促進するために反応増強剤(LISSなど)を加えて37℃で反応させます。これにより、患者血清中のIgG抗体が供血者赤血球に感作(結合)しやすくなります。

  • 間接抗グロブリン試験: 感作した赤血球を洗浄後、抗ヒトグロブリン試薬(クームス血清)を加えます。もしIgG抗体が赤血球に感作していれば、この試薬が抗体同士を橋渡しして凝集を引き起こします。これが陽性なら「不適合」と判定されます。

選択肢を見ていきます。

  • 抗A試薬:
    ABO血液型を調べるオモテ試験に用いる試薬です。交差適合試験では使用しません。

  • 反応増強剤:
    LISS(Low Ionic Strength Solution)やPEG(ポリエチレングリコール)などがあり、赤血球と抗体の反応を促進するために用いられます。上記解説の通り、交差適合試験の感度を高めるために使用されます

  • O型赤血球試薬:
    ABO血液型のウラ試験(被検血清中の抗A、抗B抗体の確認)や、不規則抗体の同定試験に用いられます。交差適合試験では、特定の供血者の赤血球を使用するため、この試薬は使いません。

  • 抗ヒトグロブリン試薬:
    間接抗グロブリン試験のキーとなる試薬です。赤血球に感作したIgG抗体や補体を検出するために必須です。交差適合試験で臨床的に最も重要な不完全抗体を検出するために使用されます

  • スクリーニング赤血球試薬:
    不規則抗体の有無を調べるスクリーニング検査に用いられる、既知の抗原を持つ赤血球試薬です。交差適合試験は、スクリーニングで陽性だった場合などに、実際に輸血する特定の供血者血液を用いて行うため、この試薬は使いません。

以上のことから、交差適合試験で使用される試薬は「反応増強剤」と「抗ヒトグロブリン試薬」です。

★輸血検査における主な試薬の用途

試薬 主な用途 交差適合試験での使用
反応増強剤 抗原抗体反応の促進 あり
抗ヒトグロブリン試薬 不完全抗体(IgG)の検出 あり
抗A試薬 (抗B, 抗Dなど) 血液型判定(オモテ試験) なし
O型赤血球試薬 (A型, B型) 血液型判定(ウラ試験) なし
スクリーニング赤血球試薬 不規則抗体スクリーニング なし

答え:2と4

86 不規則抗体同定検査結果(別冊No. 16A)と使用した試薬の抗原表(別冊No. 16B)を別に示す。可能性の高い不規則抗体はどれか。


  1. 抗D
  2. 抗C
  3. 抗E
  4. 抗c
  5. 抗e

設問の不規則抗体同定検 査における結果は, No.1, No.4 が陽性 (+) と なり, No.2, No.3, No.5 と自己対照は陰性 (-) を示した。 試薬の抗原表で同じ結果を示すのは E であるので、可能性の高い不規則抗体は抗 E とな る。 なお, 陰性結果を示した No.2, No.3, No.5 を消去法で行うと, D は No.2 より消去でき, C (ホモ) は No.2 より, c (ホモ) は No.5 より消去 できる。 e (ホモ)は No.2 と No.5 より消去でき る。

この問題は、不規則抗体同定検査の結果を正しく解釈できるかが問われる問題です。最大のポイントは、陽性反応を示した試験管陰性反応を示した試験管のパターンを、使用した試薬赤血球の抗原パネル表と体系的に照らし合わせ、患者血清中に存在する抗体の特異性を一つに絞り込むことです。陽性反応と陰性反応の両方の情報を使って、消去法で可能性のある抗体を絞り込んでいく必要があります。

★検査結果(画像A)の読解

まず、試験管内の反応を「陽性(+)」か「陰性(-)」かに判断します。

  • 凝集塊が試験管の底にボタン状に固まっている(No.1, No.4) → 陽性 (+)
  • 赤血球が均一に浮遊している(No.2, No.3, No.5, 自己対照) → 陰性 (-)

したがって、この検査の反応パターンは以下のようになります。

  • No.1: +
  • No.2: -
  • No.3: -
  • No.4: +
  • No.5: -

自己対照: - (自己抗体ではないことを示唆します)

反応パターン: (+), (-), (-), (+), (-)

★反応パターンと抗原表(画像B)の照合

次に、この反応パターンと抗原表を比較し、原因となっている抗体を特定します。これには主に2つのアプローチがあります。

アプローチ1:消去法(Rule-out法)
これは最も確実な方法です。患者血清が反応しなかった(陰性だった)試験管の赤血球が持つ抗原に対して、患者は抗体を持っていないと判断し、候補から除外していきます。

  1. No.2試薬(陰性): この赤血球は D, C, e の抗原を持っています。したがって、患者の抗体は抗D、抗C、抗eではないと判断し、これらを候補から消去します。

  2. No.3試薬(陰性): この赤血球は C, c, e の抗原を持っています。抗Cと抗eは既に消去済みです。新たに、抗cではないと判断し、これも候補から消去します。

この時点で、候補として残っているのは抗Eのみです。

アプローチ2:パターンマッチング法
検査結果の反応パターン「(+), (-), (-), (+), (-) 」と、抗原表の各抗原の有無「(+, 0)」のパターンが一致するものを探します。

  • D抗原: (+, +, 0, 0, 0) → 一致しない
  • C抗原: (0, +, +, 0, 0) → 一致しない
  • E抗原(+, 0, 0, +, 0) → 完全に一致する
  • c抗原: (+, 0, +, +, +) → 一致しない
  • e抗原: (0, +, +, 0, +) → 一致しない

両方のアプローチから、反応パターンと完全に一致するのはE抗原のみです。これは、患者血清中の抗E抗体が、E抗原を持つNo.1とNo.4の赤血球にのみ反応したことを意味します。

★不規則抗体同定検査結果と抗原表の対照

試薬 検査結果 D C E c e
No.1 + + 0 + + 0
No.2 + + 0 0 +
No.3 0 + 0 + +
No.4 + 0 0 + + 0
No.5 0 0 0 + +

答え:3

87 我が国で輸血による感染の頻度が最も高いのはどれか。

  1. HBV
  2. HCV
  3. HIV
  4. HTLV-1
  5. SARS-CoV-2

この問題は、現在の日本における輸血医療の安全性、特に献血血液に対するスクリーニング検査体制を理解した上で、それでもなお残る「残存リスクが最も高いウイルスはどれかを問う問題です。日本では極めて高感度な核酸増幅検査(NAT)が導入されていますが、ウイルスの種類による特性や検査の限界から、感染リスクには依然として差が存在します。

★日本の輸血用血液のスクリーニング体制

現在の日本では、全ての献血血液に対して、抗原・抗体検査に加えて、ウイルスの遺伝子を直接検出する非常に高感度な核酸増幅検査(NAT)がHBV、HCV、HIVに対して実施されています。これにより、抗体がまだ作られていない感染初期の「ウインドウピリオド」が大幅に短縮され、輸血による感染リスクは劇的に低下しました。しかし、リスクがゼロになったわけではありません。

  • HBV (B型肝炎ウイルス):
    HBVは、NATに加えてHBs抗原検査、HBc抗体検査なども行われ、世界最高水準のスクリーニング体制が敷かれています。しかし、それでもなお他のウイルスより感染頻度が高いのが現状です。その理由として、①NATでも検出できない極めて微量のウイルス血症(ウインドウピリオド)、②HBs抗原が陰性で低力価のウイルスが間欠的に出現するオカルト肝炎キャリア(OBI)の存在、③日本におけるキャリアの頻度が他のウイルスより高いこと、などが挙げられます。これらの要因により、ごく稀にスクリーニングをすり抜ける事例が存在します。現在の日本のデータでは、HBVが輸血後感染症の原因として最も頻度が高いと報告されています。

  • HCV (C型肝炎ウイルス):
    かつては輸血後肝炎の主要な原因でしたが、NAT導入の効果が最も劇的に現れたウイルスです。現在、NATスクリーニングによる輸血後HCV感染のリスクは数百万件に1件以下と、極めて低く抑えられています。

  • HIV (ヒト免疫不全ウイルス):
    HCVと同様に、NATの導入により感染リスクは著しく低下しました。リスクは数百万件に1件以下と、極めて稀です。

  • HTLV-1 (ヒトT細胞白血病ウイルス1型):
    成人T細胞白血病(ATL)などの原因ウイルスで、九州や沖縄などにキャリアが多いという地域性があります。献血時には抗体検査によるスクリーニングが行われていますが、NATは導入されていません。そのためウインドウピリオド中の献血による感染リスクは残りますが、報告される感染事例の頻度はHBVよりも低いのが現状です。

  • SARS-CoV-2 (新型コロナウイルス):
    呼吸器系のウイルスであり、血中に出現する期間(ウイルス血症)は限定的かつ低レベルであるため、輸血によって感染するリスクは無視できるほど低いと考えられています。そのため、献血時のスクリーニング検査は行われていません。

さい
さい
輸血でコロナに感染したとか、聞いたことないですよね。

★主なウイルスの輸血感染リスク比較(日本)

ウイルス名 主なスクリーニング法 輸血感染のリスク
HBV NAT + 抗原/抗体検査 最も高い
HCV NAT 極めて低い
HIV NAT 極めて低い
HTLV-1 抗体検査 HBVより低い
SARS-CoV-2 実施せず 無視できるほど低い

答え:1

88 造血幹細胞移植ドナーの選択で最も重要なのはどれか。

  1. 性 別
  2. 体 重
  3. 年 齢
  4. HLA型
  5. ABO血液型

この問題は、造血幹細胞移植を成功させるために、ドナー(提供者)を選ぶ際に最も優先される条件は何かを問う問題です。

★造血幹細胞移植における免疫反応

造血幹細胞移植では、ドナー由来の免疫細胞が患者の体内に移植されます。このとき、ドナーと患者の免疫系がお互いを「異物」と認識すると、深刻な拒絶反応が起こります。

  • 拒絶反応(生着不全): 患者の免疫系がドナーの細胞を攻撃し、移植片が生着しない。

  • 移植片対宿主病(Graft-versus-Host Disease; GVHD): ドナー由来のリンパ球が患者の体を「異物」と認識して攻撃する。これは重篤で、時に致死的な合併症です。

これらの免疫反応を防ぐために、ドナーと患者の免疫学的適合性を可能な限り一致させることが、移植の成否を分ける最も重要な要素となります。

それでは選択肢を見ていきましょう。

  • 性別:
    男性患者に対して出産経験のある女性ドナーを避けるなど、GVHDのリスクを低減するために考慮されることはありますが、優先順位は低いです。

  • 体重:
    患者に十分な量の造血幹細胞を移植するために、ドナーと患者の体重差は考慮されます。しかし、これは移植細胞量の問題であり、適合性の問題ではありません。

  • 年齢:
    若いドナーの方が、一般的に良質で多くの幹細胞を提供できるため、予後が良いとされています。そのため、複数の適合ドナー候補がいる場合には、若いドナーが優先されますが、HLA型の一致が最優先です。

  • HLA型 (ヒト白血球抗原):
    HLAは、細胞表面に存在するタンパク質で、免疫系が「自己」か「非自己」かを識別するための「名札のような役割を果たします。ドナーと患者のHLA型が一致していれば、GVHDや拒絶反応のリスクが劇的に低下します。そのため、ドナー選択において最も重要視される項目です。

  • ABO血液型:
    ABO血液型が異なっていても(ABO不適合)、赤血球除去などの前処置を行うことで安全に移植が可能です。HLA型が一致していれば、ABO血液型が不適合でも移植は行われます。したがって、優先順位はHLA型よりもはるかに低いです。

以上のことから、造血幹細胞移植ドナーの選択において最も重要なのはHLA型です。

★選択肢におけるドナー選択条件の優先順位

選択項目 重要度 理由
HLA型 最重要 GVHDや拒絶反応を予防するため、免疫学的適合性が必須。
年齢 二次的 若いドナーの方が一般的に予後が良いとされるため。
ABO血液型 低い 不適合でも移植可能。溶血性副作用の予防策を講じる。
性別 低い GVHDのリスクを考慮することがある。
体重 考慮される 十分な細胞量を確保するために考慮される。

答え:4

89 有効期間が最も短いのはどれか。

  1. 赤血球液
  2. 血小板濃厚液
  3. 新鮮凍結血漿
  4. アルブミン製剤
  5. グロブリン製剤

この問題は、医療現場で用いられる主要な血液製剤および血漿分画製剤の有効期間について、その長短を正しく理解しているかを問う問題です。

★製剤の分類と有効期間

問題の選択肢は、大きく「血液製剤」と「血漿分画製剤」に分けられます。

  • 血液製剤(赤血球液、血小板濃厚液、新鮮凍結血漿): 献血された血液から成分を分離して作られます。細胞や不安定なタンパク質を含むため、有効期間は比較的短いです。

  • 血漿分画製剤(アルブミン製剤、グロブリン製剤): 多数の献血者の血漿を集め、工場で医薬品として精製・製造されます。加熱処理などが施され安定しているため、有効期間は長いです。

選択肢の期限等確認していきます。

  • 赤血球液:
    赤血球の機能を保つため、4℃前後で冷蔵保存されます。代謝活動は抑制されますが、保存中に少しずつ変性するため、有効期間は採血後28日間(MAP加血液の場合)と定められています。

  • 血小板濃厚液:
    血小板は低温で保存すると機能が著しく低下するため、20~24℃の常温で、凝集を防ぐために振盪しながら保存する必要があります。しかし、この温度帯は細菌が増殖しやすいため、敗血症のリスクを避けるために有効期間は採血後4日間と極めて短く設定されています。

  • 新鮮凍結血漿 (FFP):
    不安定な凝固因子を失活させないよう、採血後速やかに-20℃以下で凍結保存されます。凍結により長期間安定して保存でき、有効期間は採血後1年間です。

  • アルブミン製剤:
    血漿分画製剤です。高度に精製され、加熱殺菌処理も行われているため非常に安定しており、室温で保存可能です。有効期間は製品によりますが、製造後2~3年と長期間です。

  • グロブリン製剤 (免疫グロブリン製剤):
    これも血漿分画製剤で、精製・安定化されています。有効期間は製造後2年程度と長期間です。

以上のことから、有効期間が最も短いのは血小板濃厚液です。

★主な血液製剤・血漿分画製剤の有効期間

製剤名 保存温度 有効期間
血小板濃厚液 20~24℃(振盪) 4日間
赤血球液 2~6℃ 28日間
新鮮凍結血漿 -20℃以下 1年間
アルブミン製剤 室温 2~3年間
グロブリン製剤 室温または冷蔵 2年間

答え:2

第71回(PM)公衆衛生学(90〜94)

90 令和4(2022)年度における死亡数の年齢階級別死因順位をまとめた表(別冊No. 17)を別に示す。( ア )に該当するのはどれか。

  1. 自 殺
  2. 肺 炎
  3. 肝疾患
  4. 腎不全
  5. インフルエンザ

日本の年齢階級別の死因順位に関する問題です。

(ア)は10代から30代という非常に広い若年層・青年層において死因の第1位を占める、極めて特徴的な死因であることがわかります。その後、40代以降は悪性新生物(腫瘍)や心疾患の順位が上がり、(ア)の順位は相対的に下がっていきます。

選択肢からこの特徴に合致する死因はどれかを考えます。

  • 自殺:
    日本の社会における深刻な問題として知られていますが、統計上、自殺は若年層の死因の第1位を占めています。学童期から生産年齢人口の中盤まで、他の病気や事故を抑えて最も多い死因となっているこの傾向は、(ア)のパターンと完全に一致します。

  • 肺炎:
    肺炎は、日本の死因全体では上位ですが、その死亡者のほとんどは高齢者です。若年層の死因の上位に来ることはありません。

  • 肝疾患 / d. 腎不全:
    これらの疾患は、生活習慣病などと関連して中高年以降に死亡率が上昇します。若年層の死因第1位とはなりません。

  • インフルエンザ:
    流行の規模によりますが、死亡者の多くは乳幼児や高齢者、基礎疾患のある人です。若年層全体の死因第1位になることはありません。

以上のことから、(ア)に該当するのは自殺です。これは、日本の公衆衛生における重要な課題を示しています。

★主な死因の年齢階級別特徴

死因 死亡率が高くなる主な年齢層 特徴
自殺 若年層・青年層 (10代~30代) この年齢層で死因第1位を占める。
悪性新生物 (腫瘍) 中年層~高齢層 日本の死因第1位40歳頃から順位を上げ、高齢になるまで上位を占める。
心疾患 高齢層 年齢とともに増加し、高齢者では主要な死因となる。
脳血管疾患 高齢層 高齢者の主要な死因の一つ。
肺炎 高齢層 高齢者の主要な死因の一つ。

答え:1

91 症例対照研究で正しいのはどれか。

  1. 罹患率を推計できる。
  2. 介入研究に分類される。
  3. 相対危険度を直接計算できる。
  4. まれな疾患の検討に適している。
  5. コホート研究よりも研究期間が長くなる。

この問題は、臨床研究や疫学研究で用いられる主要な研究デザインの一つである「症例対照研究(case-control study)の基本的な特徴を正しく理解しているかを問う問題です。

★症例対照研究とは

症例対照研究は、観察研究の一種です。まず、研究したい疾患にかかっている人々の集団(症例群)と、その疾患にかかっていない人々の集団(対照群)を設定します。そして、両群の過去を調査し、考えられる原因(危険因子への曝露など)の有無や程度を比較することで、その要因と疾患との関連を評価します。

選択肢を確認していきます。

  • 罹患率を推計できる。:
    罹患率とは、特定の期間内に、ある集団の中でどれだけの人が新たにその疾患を発症したかを示す割合です。これを計算するには、疾患のない集団を未来に向かって追跡調査するコホート研究が必要です。症例対照研究は、研究開始時点ですでに疾患の有無が確定している人々を集めるため、罹患率を推計することはできません。したがって、この記述は誤りです。

  • 介入研究に分類される。:
    介入研究とは、研究者が被験者に対して治療や予防策などの何らかの「介入」を行い、その効果を評価する研究です(例:新薬の治験など)。症例対照研究は、研究者が介入を行うのではなく、過去の事実をありのままに観察・調査する観察研究に分類されます。したがって、この記述は誤りです。

  • 相対危険度を直接計算できる。:
    相対危険度は、曝露群の罹患率が非曝露群の罹患率の何倍であるかを示す指標で、罹患率から計算されます。前述の通り、症例対照研究では罹患率を計算できないため、相対危険度を直接計算することもできません。代わりに、オッズ比を算出して、相対危険度の近似値として用います。したがって、この記述は誤りです。

  • まれな疾患の検討に適している。:
    これは症例対照研究の最大の長所です。例えば、10万人に1人しか発症しないような稀な疾患でも、まずその疾患の患者さん(症例)を数十人集めてくれば研究を開始できます。もしコホート研究でこれを調べようとすると、何百万人もの人々を長期間追跡する必要があり、非現実的です。したがって、まれな疾患の原因を探るのに非常に効率的であり、この記述は正しいです。

  • コホート研究よりも研究期間が長くなる。:
    症例対照研究は、過去の診療録やアンケートなど、すでにある情報を利用して後ろ向きに調査するため、比較的短期間・低コストで実施できます。一方、前向きコホート研究は、要因に曝露してから疾患が発生するまで、時には何十年も追跡する必要があるため、研究期間は長くなります。したがって、この記述は誤りです。

★症例対照研究とコホート研究の比較

特徴 症例対照研究 コホート研究
研究の出発点 結果(疾患の有無) 原因(要因曝露の有無)
時間的関係 後ろ向き(過去を調査) 前向き(未来を追跡)
適した疾患 まれな疾患 頻度の高い疾患
計算可能な主な指標 オッズ比 罹患率、相対危険度
期間・費用 短い・比較的安価 長い・高価

症例対照研究で正しいのは、④「まれな疾患の検討に適している」です。
答え:4

92 メチル水銀〈有機水銀〉が原因となったのはどれか。

  1. 水俣病
  2. カネミ油症
  3. アザラシ肢症
  4. イタイイタイ病
  5. 四日市ぜんそく

この問題は、日本で過去に発生した四大公害病をはじめとする、公衆衛生上、歴史的に重要な健康被害とその原因物質を正しく結びつけられるかを問う問題です。

設問は「メチル水銀(有機水銀)」が原因となった疾患を特定するものです。これは、熊本県の水俣湾周辺や新潟県の阿賀野川流域で発生した、日本の公害病の原点ともいえる水俣病にほかなりません。

選択肢の疾患と原因物質を見ていきます。

  • 水俣病:
    化学工場の排水に含まれたメチル水銀が、水域の魚介類に生物濃縮によって蓄積し、これを日常的に食べた住民に発生した中毒性の神経系疾患です。手足のしびれ、視野狭窄、運動失調などの症状を呈し、胎児性の水俣病も大きな社会問題となりました。

  • カネミ油症:
    製造過程で混入したPCB(ポリ塩化ビフェニル)やダイオキシン類(PCDFなど)を含む食用油を摂取したことによる中毒事件です。皮膚症状(色素沈着、塩素痤瘡)や全身の倦怠感などを引き起こしました。

  • アザラシ肢症:
    これは公害病ではありません。睡眠薬として販売されたサリドマイドを妊娠初期の女性が服用したことにより、新生児に四肢の欠損や短縮などの重篤な奇形(アザラシ肢症)が多発した薬害事件です。

  • イタイイタイ病:
    鉱山から排出されたカドミウムが河川を通じて農地を汚染し、その土壌で育った米などを食べた住民に発生した慢性中毒です。骨がもろくなり、激しい痛みを伴う骨軟化症を引き起こしました。

  • 四日市ぜんそく:
    石油化学コンビナートから排出された亜硫酸ガス(二酸化硫黄)などの大気汚染物質が原因で、地域住民に気管支ぜんそくなどの呼吸器疾患が多発しました。原因はメチル水銀ではありません。

以上のことから、メチル水銀が原因となったのは水俣病です。

★主な公害病・薬害と原因物質

疾患名・事件名 原因物質 汚染媒体
水俣病 メチル水銀化合物 魚介類(水質汚染)
イタイイタイ病 カドミウム 米、水(土壌・水質汚染)
四日市ぜんそく 亜硫酸ガスなど 大気
新潟水俣病 メチル水銀化合物 魚介類(水質汚染)
カネミ油症 PCB、ダイオキシン類 食用油
アザラシ肢症 サリドマイド 医薬品

答え:1

93 被用者保険に含まれないのはどれか。

  1. 共済組合
  2. 船員保険
  3. 国民健康保険
  4. 組合管掌健康保険
  5. 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)

この問題は、日本の公的医療保険制度の基本的な構造を理解しているかを問う問題です。

★日本の公的医療保険制度

日本は国民皆保険制度を採用しており、全ての国民がいずれかの公的医療保険に加入します。この制度は、大きく以下の2つの柱で成り立っています。

  • 被用者保険(職域保険): 企業や官公庁などに雇用されている人(被用者)とその家族が加入する保険です。

  • 国民健康保険(地域保険): 被用者保険に加入していない、自営業者、農林漁業者、無職の人、退職者などが加入する保険です。

さい
さい
僕はこうゆう内容は苦手ですw

選択肢を見ていきましょう。(苦手ですが)

  • 共済組合:
    国家公務員、地方公務員、私立学校の教職員などが加入する保険です。これらはすべて雇用されている人(被用者)であるため、被用者保険に分類されます。

  • 船員保険:
    船員として船舶所有者に雇用されている人が加入する保険です。船員は被用者であるため、被用者保険に分類されます。

  • 国民健康保険:
    前述の通り、主に自営業者や退職者など、被用者保険の対象とならない人が加入する保険です。したがって、これは被用者保険には含まれません

  • 組合管掌健康保険(組合けんぽ):
    主に大企業の従業員とその家族が加入する健康保険組合です。企業の従業員が対象であるため、被用者保険に分類されます。

  • 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ):
    主に中小企業の従業員とその家族が加入する保険です。企業の従業員が対象であるため、被用者保険に分類されます。

被用者保険に含まれないのは、国民健康保険 です。

★公的医療保険制度の分類

保険の区分 主な加入対象者と保険の種類
被用者保険(職域保険) ・中小企業の従業員(協会けんぽ
・大企業の従業員(組合管掌健康保険
・船員(船員保険
・公務員、私学教職員(共済組合
国民健康保険(地域保険) ・自営業者、農林漁業者、退職者、無職の人など

答え:3

94 生活保護で原則として現物給付されるのはどれか。

  1. 医療扶助
  2. 教育扶助
  3. 住宅扶助
  4. 出産扶助
  5. 葬祭扶助

この問題は、日本の社会保障制度の一つである生活保護制度における扶助の種類と、その給付方法について正しく理解しているかを問う問題です。

★生活保護の8つの扶助と給付方法

生活保護制度は、生活に困窮する国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障することを目的としています。保護は、以下の8種類の扶助から構成されています。
扶助の給付方法は、原則として金銭給付(生活費や家賃などを現金で支給)ですが、例外的に現物給付(サービスそのものを提供)が行われるものがあります。

以下に8種類の扶助wおまとめます。

★生活保護の扶助の8種類と給付方法

扶助の種類 原則的な給付方法 内容
医療扶助 現物給付 診察、薬剤、治療材料、手術など
介護扶助 現物給付 介護保険サービスの提供
生活扶助 金銭給付 衣食など日常生活の需要
教育扶助 金銭給付 義務教育に伴う必要な費用
住宅扶助 金銭給付 家賃、地代など
出産扶助 金銭給付 分娩、産後の処置など
生業扶助 金銭給付 就労に必要な技能の修得費など
葬祭扶助 金銭給付 検案、死体の運搬、火葬など

上記より、生活保護で原則として現物給付されるのは、「医療扶助」です。
答え:1

第71回(PM)医用工学概論(95〜100)

95 生体内に照射された超音波の性質で正しいのはどれか。

  1. 周波数が高いほど指向性が高い。
  2. 生体中では横波として伝播する。
  3. 筋は肺より超音波の減衰が大きい。
  4. 反射した超音波は周波数が減少する。
  5. 周波数が低いほど超音波の減衰が大きい。

この問題は、医療で用いられる超音波の基本的な物理的性質について、その理解を問う問題です。

★生体内における超音波の性質

超音波は、ヒトの耳には聞こえない高い周波数(通常2MHz以上)の音波です。生体内では、組織によって伝わる速さや減衰の度合いが異なり、性質の違う組織の境界面で反射する性質を利用して画像化します。

選択肢を確認していきましょう。

  • 周波数が高いほど指向性が高い。:
    指向性とは、超音波ビームが拡散せずにまっすぐ進む性質のことです。周波数が高くなる(波長が短くなる)と、波の回折現象が起こりにくくなり、ビームの直進性が増します。つまり、指向性が高くなります。これにより、シャープなビームで高い分解能の画像が得られます。したがって、この記述は正しいです。

  • 生体中では横波として伝播する。:
    音波は媒質の振動が伝わる波です。生体の大部分は水分で構成されており、液体中を伝わる音波は、波の進行方向と同じ方向に媒質が振動する**縦波(疎密波)**です。横波(進行方向と振動方向が垂直な波)は骨などの固体中をわずかに伝わりますが、生体内の伝播は主に縦波です。したがって、この記述は誤りです。

  • 筋は肺より超音波の減衰が大きい。:
    減衰とは、超音波が媒質中を進むにつれてエネルギーが失われ、弱くなる現象です。は多量の空気を含んでおり、空気と軟部組織では音響インピーダンスの差が極端に大きいため、超音波は肺の表面でほとんど反射されてしまいます。また、内部の散乱も大きく、減衰は生体組織の中で最も大きいです。筋肉は軟部組織であり、肺に比べれば減衰ははるかに小さいです。したがって、この記述は誤りです。

  • 反射した超音波は周波数が減少する。:
    静止している境界面で超音波が反射する場合、その周波数は変化しません。周波数が変化するのは、反射する物体(赤血球など)が動いている場合のドップラー効果によるものです。したがって、常に周波数が減少するわけではなく、この記述は誤りです。

  • 周波数が低いほど超音波の減衰が大きい。:
    超音波の減衰は、周波数にほぼ比例します。つまり、周波数が高いほど減衰は大きくなり、深くまで届きにくくなります。逆に、周波数が低いほど減衰は小さく、より深部まで到達できます(ただし、分解能は低下します)。したがって、この記述は誤りです

★超音波の周波数と各性質の関係

周波数 指向性 減衰 深達度 分解能
高い 高い (良い) 大きい 浅い 高い (良い)
低い 低い (悪い) 小さい 深い 低い (悪い)

答え:1

96 我が国の標準臨床検査コード(臨床検査マスター)はどれか。

  1. HIS
  2. HL7
  3. ICD
  4. JLAC
  5. LIS

この問題は、日本の医療情報システムにおいて、電子カルテや検査システム間で臨床検査の情報を交換する際に用いられる標準的なコード体系はどれか、その名称を問う問題です。

各選択肢の用語を確認していきます。

  • HIS (Hospital Information System):
    病院情報システムのこと。電子カルテ、オーダリングシステム、医事会計システムなど、病院全体の情報を管理するシステムの総称です。検査コードを利用する側ですが、コード体系そのものではありません。

  • HL7 (Health Level Seven):
    異なる医療情報システム間でデータを交換するための、国際的な通信規格(プロトコル)です。システム間の「会話のルール」のようなものであり、検査項目名や結果値をこのルールに従って送受信しますが、検査項目そのものを定義するコードではありません。

  • ICD (International Classification of Diseases):
    疾病及び関連保健問題の国際統計分類のこと。世界保健機関(WHO)が作成する、病名や死因を分類するための疾患コードです。検査ではなく、病名をコード化するものです。

  • JLAC (Japan Laboratory Code):
    日本臨床検査医学会が制定した臨床検査項目分類コードです。これが日本の標準臨床検査コード(臨床検査マスター)の基盤となっています。JLACコードは、検査の対象物、材料、測定法などを細かく規定しており、検査情報を一意に特定することができます。

  • LIS (Laboratory Information System):
    臨床検査情報システムのこと。検体検査部門内の業務(検体受付、分析装置との連携、結果報告など)を管理するシステムです。HISと同様に、コードを利用しますが、コード体系そのものではありません。

我が国の標準臨床検査コード(臨床検査マスター)は、「JLAC」です。
答え:4

97 コンピュータが瞬間的な停電により電源を失った場合、途切れることなく電源を供給する装置はどれか。

  1. CPU
  2. MODEM
  3. RAM
  4. SCSI
  5. UPS

この問題は、コンピュータのハードウェアに関する基本的な知識を問うもので、特に電源トラブルから機器を保護するための装置はどれかを特定する問題です。

★瞬時停電とコンピュータへの影響

コンピュータは精密な電子機器であり、たとえ一瞬でも電源供給が途絶える(瞬時停電、瞬停)と、処理中のデータが失われたり、システムが不安定になったり、場合によってはハードウェアが損傷したりする可能性があります。これを防ぐためには、主電源が失われてもバックアップ電源から途切れることなく電力を供給する装置が必要です。

選択肢を確認していきます。

  • CPU (Central Processing Unit):
    中央処理装置のこと。コンピュータの「頭脳」にあたる部分で、各種の演算や制御を行います。電力を消費する側であり、供給する装置ではありません。

  • MODEM (Modulator-Demodulator):
    モデムは、コンピュータのデジタル信号を電話回線などのアナログ信号に変換(変調)したり、その逆を行ったりして、インターネットなどの通信を可能にする装置です。電源を供給する機能はありません。

  • RAM (Random Access Memory):
    コンピュータが作業中にデータを一時的に記憶しておくためのメモリ(主記憶装置)です。電源が供給されている間だけデータを保持し、電源が切れると内容が消えてしまう揮発性メモリです。電源を供給する装置ではありません。

  • SCSI (Small Computer System Interface):
    スカジーと読みます。コンピュータとハードディスクやスキャナなどの周辺機器を接続するための規格(インターフェース)の一つです。データ転送の「道」の役割であり、電源供給装置ではありません。

  • UPS (Uninterruptible Power Supply):
    無停電電源装置のこと。その名の通り、内部にバッテリーを搭載しており、平常時は主電源(コンセント)からの電力をコンピュータに供給しつつ、バッテリーを充電しています。停電を検知すると、瞬時にバッテリーからの電力供給に切り替わります。これにより、コンピュータは電源を失うことなく稼働を続けることができ、利用者は安全にデータを保存してシャットダウンする時間を確保できます。

以上のことから、瞬間的な停電時に途切れることなく電源を供給する装置はUPSです。

さい
さい
ある程度の規模以上の検査室には大体設置されていると思います。

★主なコンピュータ関連装置・用語の役割

略語 正式名称 役割
UPS Uninterruptible Power Supply 無停電電源装置(停電時にバックアップ電源を供給)
CPU Central Processing Unit 中央処理装置(演算・制御)
MODEM Modulator-Demodulator 通信用変復調装置
RAM Random Access Memory 主記憶装置(作業用メモリ)
SCSI Small Computer System Interface 周辺機器接続インターフェース

答え:5

98 AとBの論理演算を模式化した図を示す。斜線部分を示すのはどれか。

  1. OR
  2. AND
  3. NOR
  4. NOT
  5. NAND

この問題は、ベン図で示された集合の領域が、どの論理演算に相当するかを問う問題です。正解の鍵は、まず図の中で白く塗られていない部分(共通部分が何を表すかを特定し、次に斜線部分がその否定であることを理解することです。基本的な論理演算子(AND, OR, NOT)とその組み合わせを正しく把握しているかが重要になります。

★ベン図の読解

まず、提示された図が何を示しているかを分析します。

  • 2つの集合(円)AとBが存在します。
  • 斜線で示された領域は、「AとBが重なる部分(共通部分)以外すべて」です。

★論理演算との対応

次に、この領域を論理演算で表現します。

  • 共通部分の特定: AとBが重なる部分は、「A かつ B」が真である領域です。これは論理演算のAND(論理積)に相当します。
  • 斜線部分の特定: 斜線部分は、そのAND領域の否定です。つまり、「(A AND B) ではない」という状態を表しています。

選択肢を確認していきます。

  • OR (論理和):
    「A または B」を意味します。ベン図では、AとBの両方の円を合わせた領域全体(和集合)が塗られます。図とは異なります。

  • b. AND (論理積):
    「A かつ B」を意味します。ベン図では、AとBが重なる共通部分(積集合)のみが塗られます。図ではこの部分が白抜きになっているため、逆です。

  • c. NOR (否定論理和):
    「NOT OR」のこと。「A または B」の否定です。ベン図では、AとBの両方の円の外側(AにもBにも属さない領域)が塗られます。図とは異なります。

  • d. NOT (否定):
    単独の集合を否定する演算子です(例: NOT A)。図は2つの集合の関係を示しているため、この選択肢だけでは表現できません。

  • e. NAND (否定論理積):
    NOT AND」のこと。「A かつ B」の否定を意味します。これは、先ほど分析した「共通部分以外すべて」という領域と完全に一致します。

以下に簡潔に纏いめてみました。

★主な論理演算とベン図の対応

論理演算 意味 ベン図上の領域
NAND NOT AND (否定論理積) AとBの共通部分「以外」のすべて
AND A かつ B (論理積) AとBの共通部分
OR A または B (論理和) AとBを合わせた領域全体
NOR NOT OR (否定論理和) AとBの外側の領域
XOR 排他的論理和 AとBの共通部分を除いた領域

答え:5

99 商用交流によるマクロショックで、自分の筋肉を動かして離脱できる限界電流[mA]はどれか。

  1. 0.1
  2. 1
  3. 10
  4. 100
  5. 1,000

この問題は、感電(特にマクロショック)における電流値と、それが人体に及ぼす影響についての基本的な知識を問う問題です。

★マクロショックと電流の影響

マクロショックとは、手足などの皮膚を通して、比較的高電圧の電流が体幹部を流れる感電のことです。商用交流(50/60Hz)が人体を流れるとき、その電流の大きさによって以下のような影響が出ます。

  • 感知電流(約1mA): 電気が流れていることを感知できる最小の電流。ピリピリと感じる程度です。

  • 離脱限界電流(10~20mA): 電流が流れている部分の筋肉がけいれんし始め、強い苦痛を伴います。この範囲が、自分の意志で感電部から離れることができる限界の電流とされています。これを超えると、筋肉の強直性けいれん(テタニー)により、感電部を握ったまま離せなくなります。

  • 心室細動電流(約100mA): 電流が心臓を通過した場合、心臓の正常な拍動が乱れ、不規則に細かく震える致死的な不整脈である「心室細動」を引き起こす可能性が非常に高い電流値です。

選択肢の電流を確認していきましょう。

  • 0.1mA:
    これはマイクロショック(心臓に直接電流が流れる場合)で危険とされるレベルであり、マクロショックでは感知できません。

  • 1mA:
    これは「感知電流」に相当します。感電を認識できますが、危険はなく、容易に離脱できます。

  • 10mA:
    これは「離脱限界電流」の範囲に含まれる代表的な値です。かなりの苦痛を伴い、これ以上になると自力での離脱が困難になります。設問の「離脱できる限界電流」に最も近い値です。

  • 100mA:
    これは「心室細動電流」に相当します。極めて危険で、死に至る可能性が高い電流値です。自力での離脱は不可能です。

  • 1,000mA (1A):
    心停止や重篤な熱傷を引き起こす、非常に大きな電流値です。

商用交流によるマクロショックの電流値と人体への影響を以下にまとめます。

マクロショックにおける電流値と生理作用

電流値 [mA] 作用・呼称 人体への影響
約 1 感知電流 ピリッと感じる程度。
約 10 離脱限界電流 かなりの苦痛。自力で離れられる限界
20~50 離脱不能電流 筋肉の硬直、呼吸困難。
約 100 心室細動電流 数秒で心室細動を起こし、死に至る。

答え:3

100 動画の標準的なファイル拡張子はどれか。2つ選べ。

  1. CSV
  2. FLV
  3. JPEG
  4. MP4
  5. TIFF

この問題は、コンピュータで扱われる様々なファイルの種類を、その拡張子から正しく識別できるかを問う問題です。

★ファイル拡張子とは

ファイル拡張子とは、ファイル名の末尾に付けられる「.(ドット)」以降の数文字のことで、そのファイルがどのような種類のデータであるか(テキスト、画像、動画、実行ファイルなど)を識別するために用いられます。

各選択肢の拡張子の種類をみてみます。

  • CSV (Comma-Separated Values):
    カンマ区切りテキストファイルのこと。データをカンマ「,」で区切って羅列したテキストデータ形式です。主に表計算ソフト(Excelなど)やデータベースソフトでデータを交換するために使われます。動画ファイルではありません。

  • FLV (Flash Video):
    Adobe Flash Playerで再生するために開発された動画ファイル形式です。かつてはYouTubeなどのWebサイトでストリーミング動画を配信するための標準的なフォーマットの一つでした。したがって、これは動画の拡張子です。

  • JPEG (Joint Photographic Experts Group):
    デジタルカメラなどで最も広く利用されている静止画像の圧縮形式です。写真などのフルカラー画像を、人間の目にはほとんど分からないレベルで劣化させつつ、ファイルサイズを小さくすることができます。動画ファイルではありません。

  • MP4 (MPEG-4 Part 14):
    現在、Web、スマートフォン、デジタルビデオカメラなど、あらゆるプラットフォームで最も標準的に利用されている動画ファイル形式です。高い圧縮率と高画質を両立しており、映像と音声を一つのファイルに格納できます。したがって、これも動画の拡張子です。

  • TIFF (Tagged Image File Format):
    主に印刷業界やDTP(デスクトップパブリッシング)で使われる、高品質な非圧縮または可逆圧縮の静止画像ファイル形式です。画質の劣化がないためファイルサイズが大きくなる傾向があります。動画ファイルではありません。

以上のことから、動画の標準的なファイル拡張子はFLVとMP4です。

主なファイル拡張子とそのファイルの種類を以下にまとめます。

主なファイル拡張子とその種類

ファイル拡張子 正式名称/種類 ファイルの種類
FLV Flash Video 動画
MP4 MPEG-4 Part 14 動画
CSV Comma-Separated Values テキストデータ
JPEG Joint Photographic Experts Group 画像
TIFF Tagged Image File Format 画像

答え:2と4