国家試験でも大きな得点源になる臨床化学ですが、暗記事項も多く苦手な人も多いでしょう。
僕は大学の頃は生化学研究室にいましたし、就職してからは生化学検査室に配属されていました。
国家試験で出そうなポイントや、実際に検査技師として働く際に知っておくべきポイントなどを説明していきたいと思います。
この記事では主に「糖質」について説明していきます。
糖質とは
- アルデヒド基またはケトン基を持つ
- 二つ以上の水酸基を持つ
まずは定義を覚えましょう!官能基であるアルデヒド基(-COH)とケトン基(=CO)を持つ。
五炭糖
- リボース
- キシロース
- デオキシリボース
- アラビノース
- 語呂合わせ:リスが五キロでアラびっくり
六単糖
- フルクトース(果糖)
- グルコース(ブドウ糖)
- ガラクトース
- マンノース
語呂合わせ:フグガマン
二糖類
先ほど紹介した六単糖をくっつけると「二単糖」が出来上がるよ!
- マルトース(麦芽糖)⇒(Glu+Glu)
- ラクトース(乳糖)⇒(Glu+Gal)
- スクロース(ショ糖)⇒(Glu+Flu)
多糖類
- ホモ多糖類(グルコースからできる糖類)
- ヘテロ多糖類(結合組織の主要な細胞外成分アミノ糖とウロン酸(ガラクトース)が交互に結合している
- アミロース
- アミロペクチン
- グリコーゲン
- セルロース
- ヒアルロン酸(グルクロン酸+グルコサミン)
- コンドロイチン(グルクロン酸+ガラクトサミン)
- コンドロイチン硫酸(グルクロン酸+ガラクトサミン+硫酸)
- ヘパリン=ヒアルロン酸+硫酸
グルコース(Glu)とは
化学
- 六単糖
- 分子量180(C6H12O6)
- 分子内にアルデヒド基を有する(アルドース)
- α型とβ型の2つの光学異性体を持つ(α:β=36%:64%)
- α⇒βはムタローゼによって変化する
- D-グルコースはアルデヒド基により還元作用を示す
代謝
肝臓はグルコースが供給される間は、グリコーゲンを合成することにより、その貯蔵をはかる。
供給されなくなったり、他臓器や細胞がグルコースを必要とする時には、グリコーゲンの分解、次いで糖新生系でグルコースを産生し、血中へ放出する。
⇒肝臓は血糖値調節において中心的な役割を果たしている。
- インスリン分泌(膵臓ラ氏島のβ細胞)
- グルカゴン分泌(膵臓ラ氏島のα細胞)
- エピネフリン(アドレナリン、副腎皮質ホルモン)
- グルココルチコイド(副腎皮質ホルモン)
- 成長ホルモン、ACTH(下垂体前葉ホルモン)
- サイロキシン(甲状腺ホルモン)
グルコースは腎糸球体によってろ過され、尿細管でほとんどが再吸収される。
血中濃度が腎臓の排泄閾値(180mg/dL 10.0mmol/L)を超えると尿中にグルコースが出現しだす。
分析法
- グルコースオキシダーゼ法(GOD法)
- ヘキソキナーゼ・グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ法(HK・G-6-PD法)
- ハーゲドロン・ヤンセン法(フェリシアン法)
- ソモギー・ネルソン法(Cu2+還元法)
o-トルイジン法
酵素法が主流です。過去働いてきた職場で酵素法以外の方法を見たことが無いレベルです。
GOD法と、HK・G-6-PD法について深堀りしていきます。
グルコースオキシダーゼ法(GOD法)
グルコースオキシターゼ・ペルオキシダーゼ共役系により血中グルコース濃度を測定する。
グルコースはGODの触媒作用によりグルコン酸とH2O2(過酸化水素)に変化する。
H2O2はPODの存在下、4-アミノアンチピリン(4-AA)とフェノールを酸化的に縮合させ、赤色キノン色素を生じる。
この赤色キノンを比色定量(505nm)することによってグルコース濃度を求める。
- D-グルコース + O2 +H2O → Dグルコン酸 + H2O2
(GOD) - 2H2O2 + 4-AA + フェノール → 赤色キノン色素 + 4H2O
(POD)
ヘキソキナーゼ・グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ法(HK・G-6-PD法)
グルコースをヘキソキナーゼ(HK)・グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ共役系によって変換し、補酵素NADPHの吸光度の増加を340nmで比色定量する。
- Glu+ATP → グルコース6-リン酸(G6-P)+ADP
- G6-P + NADP+ → 6-ホスホグルコン酸+NADPH + H+
変動因子
全血で室温放置すると赤血球の解糖作用によって血糖値は低下する。
採血管(フッ化Na)を用いる事で、エノラーゼを阻害し、血糖値の低下を防ぐ事ができる。
毛細血管血漿値>静脈血漿値
ペルオキシダーゼ共役法を検出に用いる場合には、還元物質の影響に注意する(ビタミンC:アスコルビン酸で偽低値)
基準値
- 73~109mg/dL
パニック値
- 50mg/dL以下
- 500mg/dL以上
ふらつきなどの高度の障害が出る可能性があるため、速やかに医師へ報告が必要。
臨床的意義
- 糖尿病
- 胃切除後
- 副腎皮質ホルモン使用時
- インスリノーマ
- インスリン拮抗ホルモン欠乏症
生理的変動要因
- 加齢で増加
- 性差は中年までは男>女、加齢で女>男
- 食後、飲酒後で上昇
- ストレスで上昇
グリコヘモグロビン
- 過去1~2か月の平均血糖値を表す
- 4.9~6.0%が基準値(共用基準値)
- 糖尿病で高値
- 溶血性貧血で低値(HbA1Cという名前からわかる通り、溶血でHbが低くなる)
- HPLC(主流です)
- 酵素法(検査センターなどの大量検査向き)
- 免疫法
フルクトサミン
- 血漿タンパクのケトアミン型糖化たんぱくの総称
- 過去1~2週間の平均血糖値を表す
1,5アンヒドログリシトール
- 過去2~3週間、または1週間以内の血糖コントロールの指標
- 低値で糖尿病、腎不全、妊娠後期など
まとめ
糖質はDM(糖尿病)関連の大切な指標になります。
GLUだけでなく、HbA1cやGA、1,5AGの組み合わせでキッチリ理解しておくことをオススメします。
GLUとHbA1cは有名で、検診でもよく測定される項目ですが、糖尿病外来などの検査オーダーではGAや1,5AGも頻繁に出てきます。
臨床検査技師は、ただ測定するだけでなく、Dr.から「1,5AGの基準値と臨床的意義を教えてくれ」と質問されても即答できるくらいの知識が要求されます。(実際には調べて折り返します~ってなりますが)
国家試験が終わっても、検査技師として社会に出るのであれば永久に切れない関係ですので、しっかり覚えておきましょう!