まずは病院と検査センターの仕事の違いを下表に示します。
【検査センターと病院での業務の比較(僕の実体験)】
★検査センター
- 生化学
- 免疫学
- 事務仕事(精度管理含む)
★病院
- 生化学
- 免疫学
- 一般検査
- 血液検査
- 輸血
- 各種生理機能検査(エコー以外)
- エコー(研修中)
- 事務仕事(精度管理含む)
検査センターで働いていると、狭い分野の検体検査を多くこなすため、本来臨床で培われるはずの臨床検査技師としての知識とスキルはほとんど伸びません。
そんな自覚を持ちつつ、病院に転職したいという気持ちがあり葛藤する。
検査センターで働く多くの技師はこの葛藤と戦っている事でしょう。
僕は幸いにも検査センターから病院に転職をすることができたので、そんな葛藤で悩む人の疑問に答えていきたいと思います。
おススメの転職サイトを下に紹介します。
検査センターから病院に転職はできるの?
結論を言うと「転職はできます」
ひとまずはご安心してください。しかしできる事ならば30歳くらいまでには転職することを強くオススメします。
転職はできるのですが、「患者への接し方や生理機能検査などの様々な壁」を乗り越えなければ充実した生活は送れないと思います。
なぜ検査センターから病院は転職し辛いのかを考える
その答えは、検査センターという会社の業務内容にあります。
検査センター出身者が病院に転職してぶつかる問題をまとめてみました。
- 患者さんを相手にしていないので車いすからベッドへの移乗スキルもなければ酸素の扱いすらわからない
- 生理機能検査をしたことがないので、心電図すらまともに取る事ができない
- 狭い専門分野のみやってきたので、臨床で求められる幅広い分野を目の当たりにすると何もできない
- 人間の構造(解剖学)を理解していないのでエコーやCT、MRIの画像を見ても理解できない(国家試験の知識は遠い昔なので忘れた)
- そもそも学術的な自己研鑽を検査センターではさほど必要としていなかった(流れ作業が多いため)
病院は医師を筆頭にコメディカルがいて、患者がいて成り立つ職場です。
つまり、それらのほとんどがいない検査センターでは同じ臨床検査技師でも完全に別世界の話になってしまうのです。
転職先の医師や看護師は、検査センター出身とかそういった事はどうでもいいんです。
とにかく患者さんを助ける事が使命であり、そのサポートをするのが我々臨床検査技師の仕事だからです。
検査センターでいくら頑張っていようが、病院ではほとんどが通用しません。全くの別の仕事だと考えた方が無難です。
そういったこと考え、転職をためらってしまったり、転職してもうまくついていけずに失敗してしまったりする人がいるのです。
検査センター出身は病院に転職しない方がいい?
僕は「転職しても大丈夫」と思います。
ただし2つの条件をクリアしている病院の方が転職後もうまくいくと思います。
その条件は下の2つ。
- 研修制度が充実している
- 給料を考慮してくれる
研修制度は大切
まずは仕事の研修です。
検査センターでは患者がいないのでまず心電図すらとれません。
さらにDrやNsからはECGだのEKGだのエーカーゲーだの略語でオーダーを言ってきます。
大学や専門学校を卒業して長らく検査センターで過ごしていると、最初はこんな病院の常識ですらわからないのです。
もちろん、尿沈査は見れるけど、血液像が見れないとかそういったケースもあるでしょう。
検査センターの狭い知識ではどうあがいても臨床に直結した病院の仕事は無理があります。
従って、しっかりと新人のように指導してもらえる研修制度が整っている所が一番良いでしょう。
30歳までに転職をした方が良い理由も実はここにあって、例えば35歳とか40歳になって20代前半の人に教えてもらうのってどうですか?
仕方がない事にしても、お互いに気まずいには間違いありません。
それは30歳でも同じですが、40歳よりかはマシですよっていうことです。
給料も大切
検査センターの給料に慣れていると、病院の給料の低さに驚きます。(昇給も)
検査センターも夜勤が無いと薄給なのですが、簡単に言えばその水準まで下がりますよっていう事です。
ですので、現在の給料を少しでも考慮してくれるような病院があればそこがベストです。
給料はモチベの一つにもなりますので、あまり下がりすぎる様なら考え直すのが良いと思います。
夜勤をしている検査センターの給料より下がる事はあっても上がる事は99%無いと思うので、そこはあきらめてください。(当直に何度も入れば話は別ですが)
市立の病院などに奇跡的に入る事ができれば、公務員としての給料体系になるので、将来的にはここもクリアできますが、当然狭き門である事はご理解ください。
僕が病院に転職をして困った事
- 規模が小さい病院でもあるのですが暇すぎる事
- 暇さゆえに生理機能の練習ができない事
- 検体検査でも輸血などの知識が無く、夜間休日当番時に突然オーダーされてもどうしたらいいかわからなかった事
- 患者さんの接し方がわからない(車いす移乗や酸素の扱い)
まず病院は、大学病院のような救急救命センターやオペ室が無い限りは基本暇な時間があると思います。
例えば午前外来が終わってから午後外来が始まるまでとか、検査オーダーを出さないDrが集中している外来時などです。
検査センターは常時忙しかったため、こういった暇な時間が当初は耐え難く、辛かったのを記憶しています。
また、患者が絶対的に少ない病院だと、エコーを習得しようにも対象患者がおらずに苦労します。
健康な職員を捕まえて練習しても、結局絶対数が足りずにエキスパートになる事は難しいだろうなと考えてしまいます。
医師は検査技師=誰でもなんでもできるといった感覚でオーダーを出してくるケースもあります。
輸血検査はダブルチェックをしなければいけないとか、そういった取り決めも関係無しに出してきます。
そういった時に、無知な状態でどう対応するかが肝心です。
とにかく上司に即連絡、即対応を行う必要があります(輸血は緊急性が高いため)
夜の3時とかにそんなオーダーを出されても、当直のない民間病院クラスでは対応に困るんですよ本当に・・・(笑)
あと、地味に困るのが患者の車いすからベットへの移乗です。
看護師は転倒リスクなど考えて患者さんの対応にあたっていますが、検査センター出身者はそういった予備知識はほとんどありません。
「あ、このお爺ちゃんフラフラしてるけど大丈夫かな」
こう思いながらもどう手伝えばいいかもわからないので、自分なりに手伝ってみます。
看護師さんの移乗を見様見真似でやったり、検査室の先輩に教えてもらったりと・・・。
転職して数年経った今だから思えることですが、最初はわからなくて当然なので、恥ずかしがらずにドンドン先輩に聞いて下さい。
患者さんを転倒させるのが1番いけない事であることを理解して、自分の恥は二の次以下です。
変ににプライドが邪魔をするかもしれませんが、そのプライドを捨てる事によって比較的早めに病院に慣れる事ができると思います。
検査センター出身で役に立ったこと
「特にありません」
で終わらせたいところですが、あえていうならばコレですね。
- エクセルやワードに詳しい
- 検査システムや電カルのマスタ設定に理解がある
- 試薬のコスト計算ができる
- 検体検査においては比較的知識がある
これも僕が民間病院に入って感じた事なので、若手がバリバリやっているような大学病院などではまた話が違ってくると思います。
平均年齢が高めの小さい検査室では、エクセルやワードを文字を打ち込む、罫線をかける以外の使い方ができる人はほぼいません。
関数を使えるだけで神様扱いされたケースもあります。
検査センターで書類整備に追われた経験がこんなところで活きるとは思いませんでしたが、検査業務ではなく、管理業務であれば多少役に立つというレベルです。
また、コンピュータのマスタ設定など、SEチックな内容でも多少役に立つことができます。検査センターならではの内容ですが、SEがいない規模の病院であれば重宝されるかもしれません。
結局、検査業務で役に立つ事はほとんどありません・・・。
しかし、これが現実なのでしっかりと受け止めて、勉強を繰り返してスキルを磨いていくしか方法はありません!
検査センターから病院に転職して良かったか
これは転職して数年経つ今でもハッキリと断言はできません・・・。
家族や自分の健康を思えば間違いなく「転職して良かった」と言えます。
しかし、仕事に関していえば、自分よりも遥かに年下の子に劣る始末。
今でも無駄なプライドがあるらしく、ここの所に変な葛藤を抱いているのが正直なところです。
病院で働くのであればエコーは必須と言って過言ではないでしょう。
とにかく生理機能をしっかりとこなせるようにならないと、病院での立場の確立は難しいでしょう。
僕自身はハッキリ「良かった」とは言えないですが、家族からは「転職してくれて良かった」と言われています。
中々判断が難しいところですが、一応転職して良かったという事にしておきましょうか(笑)
何度も書きますが、おススメの転職サイトを下に紹介します。