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臨床検査技師として検査センターで働くコツを紹介します

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SAI
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臨床検査技師として新卒で検査センターに入社し、約10年程勤めてきました。

現在は民間病院に勤めていますが、検査センターで培った、検査センターならではの働き方のコツを紹介していこうと思います。

同じ検査業界でも、検査センターと病院では、本当に別業界のように仕事が違いますので、「検査センターでの就職・転職を考えている、もしくは決まったけども業務内容をこなせるか心配」という人がいれば、この記事を読むことで解決できるかもしれません。

なお、検査センターでは様々な部署がありますが、今回は血液を扱う検査室をベースにお話していこうと思います。

臨床検査技師として検査センターで働くコツ

  • 精度管理を第一に考える
  • ルール(手順)厳守
  • 取り決め厳守
  • わからない事はすぐに聞く(報連相)
  • 検体は何よりも大事
  • 焦らず、正確に
  • 機械のスペックを知る
  • 試薬コストを意識する

検査センターで働くにあたって、上記の内容をしっかり実践することができれば一つの部署であれば1年~2年でほぼ完成します。

逆に上記の内容が一つでも欠けている人は、ある程度の水準で成長は止まります。

それでは、上記内容について深堀りしていきましょう。

精度管理を第一に考える

検査センターの仕事は、細菌や病理、鏡検を除きほとんどの分野で精度管理が重要になってきます。

病院と異なり、扱う検体数が非常に多いため、一件一件データを吟味することは時間的に不可能です。

検査センターでは一括承認が基本であり、一度に数千件のデータを確定する事が普通です。

その際に何を根拠にデータの確定を行うか?

それが「精度管理」です。

精度管理をキッチリしておけば、その間に測定されたデータは信頼性のあるモノとして確定することができます。

逆に精度管理に問題がある状態で測定を行うと、検査データの誤報告や信頼性の無いデータであり、最悪の場合ユーザーから検査結果について指摘(クレーム)が入る事もあります。

誤報告に至る前に気が付いても後の祭りであり、数千件の検査を全再検になり、報告の遅延、膨大な残業時間、試薬コストの大幅な上昇に繋がります。

ずばり、検査センターで仕事のできる人の条件は「精度管理を確実に行える人」です。

新卒で入って一番に教わるのは精度管理のはず。

しっかり教わってください。

慎重すぎるくらいが丁度いいでしょう。

ルール(手順)厳守

検査センターに限らずどこの企業にも手順は必ずありますが、特に厳守するようにしましょう。

  • 検査→ミス→是正→手順追加

基本的にはこの流れで手順はどんどん追加されていき、その度にミスが起こりにくいように是正されていきます。

中にはとてつもなく面倒くさい手順も存在しますが、それらをキッチリこなせばよほどのイレギュラーが無い限りミスは起きないようにできています。

検査センターにおける基本的な手順を紹介します。(もっと細かい手順はあります。これはほんの一例です)

  • 試薬を換えたら精度管理確認
  • 校正(キャリブレーション)を行ったら検量線、精度管理確認
  • データ確定前に精度管理確認
  • 精度管理で管理限界を超えたらすぐに検査停止、調査、是正(報連相)
  • データ確認前にユーザー間取り決め確認
  • 区切りの時間(午前・午後)で検体の未到着、未検査を確認
  • 1日の最後に未到着、未検査、未承認を確認
  • 検体ラベルを貼りなおす時はダブルチェック実施
  • FAX送信はダブルチェック実施

僕は中規模と大規模の検査センターでの経験しかありませんが、上記内容はどこでも必ず行っていました。

検査センターではこういった手順を守る事で、ミスを減らし優秀な人材に成長することができます。

逆に手順無視をすると、不思議と高確率でミスに繋がるので、定められた手順は厳守するようにしてください。

取り決め厳守

検査センターでは、「検査結果+α」が商品になります。

検査結果だけでも良いのですが、やはりお得意様というのはどこのセンターでもあるはず。

特に地域密着型の検査センターであれば、お得意様には検査結果に+して報告の形式を変えたりもします。

例を挙げるとこんな感じです。

  • お得意様Aの場合:AM11:00に到着する検体は何の指示もなくとも全部緊急検査扱い+報告はDr.にTEL報告を行う
  • お得意様Bの場合:ASTは通常500以上で異常値報告を行うが、Bの場合は100以上で行う

こういったルールは恐らくどこの検査センターでも必ずあります。

これはユーザーと営業間で取り決められたルールであり、これを無視するとユーザーからの信頼は一気に無くなってしまいます。

一度信頼を失うと、それを回復するためには年単位で時間がかかると言われており、検査センターではユーザー間の取り決めを破ることはタブーとされています。

謝るのはほとんどが営業の人です。検査は営業と関わる機会が少ないので罪悪感を感じにくいのですが、会社だけでなく同じ会社の営業マンの誰かに必ず迷惑をかけてしまう事を知っておきましょう。

わからない事はすぐに聞く(報連相)

  • 何かいつもと違う
  • 久しぶり過ぎて検査の仕方忘れた
  • 他部署がらみの事はよくわからない
  • 取り決めの内容がイマイチわからない

こういった迷いが生じたらすぐに先輩、上司に相談しましょう。

これも手順の話に準ずるところがあるのですが、100%の自信を持てない作業はやめましょう。

何か少しでも不安に感じる事があれば、可能であればその場で先輩、上司に相談してください。

僕が経験してきた10年間、この手の迷いで何度ミスに繋げてしまった事か・・・。

検査センターは業務量が半端じゃないので、新人のうちは先輩に聞きづらいと思うタイミングもあると思います。

しかし、それはユーザーからすれば自己都合に過ぎません。当然会社から見てもです。

何かミスをすると、会社からもユーザーからも信頼を失います。

ちょっとした気の迷いで自身の株を下げる必要はありません。

相手の時間を奪っているという自覚を持ち「お忙しい所すみません」と前置きを入れて聞けばほとんどの人は快く話を聞いてくれます。

それに先輩はあなたよりも遥かに多くの検体を捌いているベテランです。多少の時間ロスは解決できる策も経験も持ち合わせています。

僕も辞める直前は、新人の面倒を3~4時間ほど見てから自分の仕事に入るという謎なルーチンが出来上がっていましたから(笑)

検体は何よりも大事

検査センターでは患者さんはいません。あるのはサンプリングされた検体のみです。

センターで長く働いていると検体がただの物質に感じてくるようになります。

新人の頃はどんなサンプリングでもマイクロピペットを使おうとしてコストがかかるからスポイドにしろと怒られた経験があるにも関わらず。

そしてとにかく早く、多くの検体を捌こうとするようになっていきます。

ピペットからスポイドになり、そしてデカントへとどんどん扱いは雑になっていきます。

多くのユーザーは1本の検体しか送ってきません。

そんな状況下で適当にサンプリングを行うとどうなるか。

  • 適正量を超えたサンプリングを行い、追加検査が不能になる
  • デカントにより、誤ってこぼしてしまう
  • 気泡やマイクロフィブリンが子検体に混入し、誤報告の原因になる

検体の背景には必ず患者がいます。

患者さんの目の前で、デカントによる危なっかしいサンプリングができますか?

検査不能になった場合、「再採血すれば済む」という考えは間違っているので絶対にしないようにしてください。

臨床では「採血してオーダーを出したその瞬間の検体」だからこそ検査の意味があるということを知って下さい。

検体の扱いを丁寧にする方法です。

「検体を自分の親や知り合いのものだと思う」

そう考えて検査をすれば、雑な扱いはできなくなるはずです。

焦らず、正確に

「焦った結果、何かしらのミスを犯し、再検査になる」

これはいけません。

検査センターの業務はとにかく作業量が桁外れに多いです。

病院の中でも基幹病院のような大病院をも凌ぐ検体量を扱っている所が多いです。

僕が行った検査センターで一番多い所で1日4~5万件(業界トップの会社)、少ないところで1日1万件(地方の中核ラボ)の検体を取り扱っていました。

その中の全てに生化学があるわけではありませんが、大体40%程度は生化学の検査があったと記憶しています。

例えば、夜間に何らかのトラブルがあり、まともに精度管理の検証をせずに焦って再稼働したとします。

もし、最後の最後で「やはりトラブル復旧ができていなかった」事が発覚した場合、当然全再検になり、報告遅延にも繋がり信用を失う結果に結びつきます。

トラブルの程度にもよりますが、焦って確認を疎かにするくらいなら、多少遅れてもキッチリトラブル復旧してから検査に臨むのが正しいです。

会社は無茶苦茶を言います。

「トラブルが起きてもすみやかに対処し、報告は間に合わせろ」

トラブルが起きて速やかに対処できる人はそういません。

だから会社の言う事も聞こうとして、確認を疎かにしてしまいがちなのです。

トラブルが起きた時はまず、落ち着きましょう。

周りの社員や上司に報連相し、力を合わせて解決させるのがベストです。

機械の不調であればバックアップ機を作動させるなど、新人が思いつかない方法もさらっとやってくれたりします。

機械のスペックを知る

検体検査をひたすら行っているが、実はその機会のスペックを知らないという人は多いです。

  • 血液の検査であればCBCは約1分で結果が出ます。
  • 生化学の汎用機であれば約10分で結果が出ます。
  • 免疫の汎用機であれば約20分で結果が出ます。
  • アレルギーの検査であれば約90分で結果が出ます。

これらの事はその検査室にいる人なら大体は知っています。

ここでのスペックは、そういうポイントではありません。

  • 1時間当たりに何件処理できるか?
  • 同時測定項目数は何件か?

これが検査センターでは重要な考え方になってきます。

  • 機械の不調
  • 限られた時間内での検査
  • 透析日の一時的な件数激増時

こういった時に機械のスペックを知る事によって、無駄なく検査を回す事ができます。

ただ単に機械にかければいいわけではありません。

生化学など、血清はカップに分注されているケースがほとんどですが、ここで問題になるのが「濃縮」です。

電解質のNaなどはすぐに濃縮の影響を受けてしまうため、がむしゃらに検体を機械にかけると分析装置内で大渋滞を起こし、結果、濃縮に繋がります。

したがって、機械を扱う人間がそのスペックを頭に入れつつ検査を行う事で、どんなに検体が多くとも正しいデータを返し続ける事ができるようになるのです。

あと、上記で書いた通り、アレルギー検査(S社)の機械ではアッセイタイムが約90分です。朝の8時までに検査を終えないといけないのであれば、遅くとも6時半前にはかけないといけませんね。

こういった逆算がしっかりできると、仕事が効率的に行えるようになります。

試薬コストを意識する

検査センターは使用する試薬の量が多いです。

試薬、コントロール、キャリブレーター、どれを取っても病院の小さなラボと5~10倍くらい使用頻度が違うかもしれません。

病院は検査件数が少なくなりがちなので、試薬は使い切ってボトル交換が基本になると思います。

検査センターではそうはいきません。

項目によって差はあるものの、市販されている容器では当然足りないので専用のボトルに継ぎ足しをしたりします。

LOT変更がある場合、試薬が残っていても捨てる事もしばしばあります。

こういった所は非常に難しい所で、どこの検査センターでも苦労しているはずです。

とはいえ、試薬類は運用でコストを抑える事が可能です。

検体検査自体が厳しくなっているこのご時世です。

節約できる所は節約していきましょう。

一応僕が検査センターで働いていた時にコスト削減としての案を紹介しておきます。(実行はできませんでしたが(笑))

  • コントロール、キャリブレーターは使用量を計算して、カップに分注し凍結保存する(分注とLOT、期限管理が非常に手間なのが問題点)
  • 試薬は納品時にLOTを調整する(扱い種類が多いため、試薬を専属で確認する担当者が必要になるのが問題点)

問題だらけですが、こういった内容を検査室内のミーティングで議題にすると良いかもしれませんよ。

夜勤や休日当番は割り切って考える事が必要です

検査センターのメインは夜勤です。

日中に検査を集めて回って、県外からも検体が送られてきてそれらを処理するのは当然夜間です。

従って、検査センターで検査部に所属された以上は夜勤を覚悟する必要があります。

  • 夜勤が主体
  • 企業にもよるが、夜勤専属の人が多い
  • 休日当番もあるし、日曜が通常営業のセンターもある
  • 医療は365日止まらない事を自覚する

入社前の面接等で業務内容の説明があると思いますが、その説明は結構嘘が多いです。

僕の場合「夜勤と日勤はローテーションを組んで、夜勤は多くて月2週間程度」と言われていましたが、実際は「全夜勤」でした。

研修の時は確かに日勤夜勤が半々くらいでしたが、独り立ちしてからはひたすら夜勤でした。

「すべて夜勤は無理」

と思う人もうるかもしれませんが、変に日勤と夜勤を繰り返すよりかは、ずっと夜勤の方がリズムを作れるため肉体的には楽だったりもします。

おそらくこういった理由で専属夜勤者が生まれていくのだと思います。

夜勤手当はめちゃくちゃ美味しいですからね(笑)

また、365日医療は止まらないので、当然休日当番もあります。

しかし、これは医療業界全てに言えますが、基本的に一般企業のような盆正月休みは取れないと思っておいた方がいいです。

2~3連休は取れるでしょうが、10連休とかまず無理です。

検査センターもとい医療業界で働くという事は、その辺はある程度は諦めるしかありません。

話をまとめると、検査センターでは「夜勤と休日当番」は必ず付いて回る事なので割り切って考えましょうという事です。

臨床に関する勉強は独学で行う

SAI
SAI
検査センターは臨床と直結していないため、病態の把握などに極めて弱いです。僕が行った事のある高橋開智塾という勉強会の場があるのですが、検査センターの人間がそこに行くと臨床の知識が欠落していることに気づかされます。

当時入社5年目くらいで、検査センター内ではもうすっかり中堅どころで、仕事にも自信を持って取り組んでいました。

しかし、その勉強会のて検査データから病態を推測する内容があったのですが、本当に断片的にしか考えられないんです(笑)

やった事のある検査データを必死に眺めても、思いつくのはせいぜい「肝臓、腎臓系の疾患」程度です。

患者の性別や年齢、主訴などを見ても何もピンとこず、病院出身の検査技師の方はまず患者背景から入り推測をしていました。

その塾で得られた事は「とにかく検査センターは臨床を理解できていない」という事。

なので、それからは検査データを総合的に判断するように、性別や年齢を視野に入れて業務にあたるように心がけていました。

カルテがないから正解はわからないのでそれが限界ですが、異常値を報告するする際に付加価値を付けて報告できるようになるかもしれないと思って勉強をしたのを覚えています。

検査センターで営業として働く検査技師がいてもいいかもしれない

今は病院で働いているので、検査センターの営業マンと関わる事が多いです。

そこで思うのがやはり「医療知識の乏しさ」です。

SAI
SAI
専門の教育を受けてないから、知識がなくて当然なんだけどね

会社は「新規項目をユーザーに採用してもらえ」「売り上げをあげろ」

当然ですがそういった目標に向かって実績を求めてきます。

この際に重要なのが臨床に直結した知識を持つ営業マンの存在です。

営業マンはDr.相手にプレゼンをするわけですが、不意に医学的な質問をしてきたりします。

病態を略語で言ったり、別の検査を難しい表現で言ったりと、様々でしょう。

そういった時に、決まった最低限の教育しか受けていない営業マンよりも、検査技師の方が活躍できるのでは?と考えています。

ですので、検査センターで就職を考えている技師の人に、営業という形もある事を伝えたいです。

営業部は夜勤はありませんし、検査ほど不規則な生活になることは無いはずです。

興味のある方は是非、面接時に「営業に興味があります」と言ってみてください。