血液疾患(非腫瘍性) PR

【国試対策】医学総論の疾患問題はこれでOK!分野横断の過去問を徹底解説

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さい
さい
こんにちは、SAI-LABOのさいです!
今回は、臨床検査医学総論の範囲から、血液・感染症・免疫疾患に関する過去問をピックアップして解説していきます。
ラボくん
ラボくん
あれ?これらの疾患って、それぞれの専門科目で勉強するんじゃないんですか?なんで「医学総論」で問われるんだろう…?
さい
さい
医学総論で問われるのは、各疾患の深い知識というより、「複数の科目にまたがる横断的な知識」や「臨床検査技師として知っておくべき基本的な病態」なんです。
この記事で、なぜこれらの問題が総論として出題されるのか、その意図を汲み取りながら、効率よく得点に繋げていきましょう!

血液疾患(非腫瘍性)

【第69回 午前 問13】汎血球減少症を呈するのはどれか。2つ選べ。

1.腎性貧血
2.鉄欠乏性貧血
3.巨赤芽球性貧血
4.再生不良性貧血
5.自己免疫性溶血性貧血

 

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正解:3, 4

さい
さい
「汎血球減少症」、言葉は難しそうですが、意味はシンプルです。
これは、血液中の3つの系統の血球(赤血球、白血球、血小板)が、“すべて減少”する状態を指します。
この問題を解くポイントは、「どの貧血が、赤血球だけに影響し、どの貧血が骨髄全体に影響するのか」を区別することです。

汎血球減少症とは?

血液細胞を作り出す大元の工場である骨髄の機能が、全体的に低下することで起こります。その結果、以下の3つが同時に減少します。

  • 赤血球減少(貧血)
  • 白血球減少(易感染性)
  • 血小板減少(出血傾向)

各種貧血と汎血球減少症の関係

国試で問われる各種貧血が、汎血球減少をきたす可能性があるかどうかを表で整理してみましょう。

各種貧血と汎血球減少の有無

疾患名 主な病態 汎血球減少
再生不良性貧血 骨髄の造血幹細胞が枯渇(工場が機能停止) あり
巨赤芽球性貧血 DNA合成障害による無効造血(材料不足で不良品多発) あり
鉄欠乏性貧血 ヘモグロビン合成障害(赤血球の材料不足) なし
腎性貧血 エリスロポエチン産生低下(赤血球の生産命令不足) なし
自己免疫性溶血性貧血 末梢での赤血球破壊亢進(完成品が壊される) なし

各選択肢の解説

以上の知識を元に、選択肢を見ていきましょう。「汎血球減少症を呈するのはどれか」と問われているので、表で「あり」となっているものを探します。

4.再生不良性貧血 → 正しい:骨髄の造血幹細胞そのものが減少・枯渇する疾患であり、全ての血球系統が作れなくなるため、典型的な汎血球減少症を呈します。

3.巨赤芽球性貧血 → 正しい:ビタミンB12や葉酸の欠乏により、DNA合成が障害されます。これは赤血球だけでなく、分裂の盛んな白血球や巨核球の産生にも影響を及ぼすため、汎血球減少をきたします。

1.腎性貧血 → 誤り:腎臓からのエリスロポエチン(赤血球産生促進ホルモン)が低下することが原因です。主に赤血球系統のみが影響を受けるため、汎血球減少は起こしません。

2.鉄欠乏性貧血 → 誤り:ヘモグロビンの材料である鉄が不足することが原因です。主に赤血球系統のみが影響を受けるため、汎血球減少は起こしません。(進行すると血小板はむしろ増加することがあります)

5.自己免疫性溶血性貧血 → 誤り:自己抗体によって末梢の赤血球が破壊されることが原因です。骨髄の造血機能自体は正常(むしろ亢進)であり、主に赤血球系統のみが影響を受けます。

 

【第67回 午後 問15】血清コリンエステラーゼ活性が低下するのはどれか。

1.鉛中毒
2.水銀中毒
3.青酸中毒
4.有機リン中毒
5.一酸化炭素中毒

 

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正解:4

さい
さい
コリンエステラーゼ(ChE)は、臨床化学の酵素の中でも少し特殊な立ち位置にいます。
逸脱酵素のように細胞が壊れて上昇するのではなく、「肝臓のタンパク合成能」や「特定の物質による阻害」を反映して”低下”することが、臨床的に重要です。

コリンエステラーゼ(ChE)とは?

主に肝臓で合成され、血中に放出される酵素です。そのため、肝臓がタンパク質を合成する能力(肝予備能)の指標として用いられます。

血清ChEが低下する2大要因

① 肝臓の工場が機能停止

🏭↘️

肝臓での合成が低下する
劇症肝炎, 肝硬変(末期)

② 酵素の働きが邪魔される

🚫

特定の物質に阻害される
有機リン中毒, 殺虫剤

有機リン中毒とChE

農薬や殺虫剤に含まれる有機リン化合物は、コリンエステラーゼの働きを非可逆的に阻害します。これにより、神経伝達物質であるアセチルコリンが分解されなくなり、過剰に蓄積して様々な中毒症状(縮瞳、発汗、痙攣など)を引き起こします。

このため、有機リン中毒の診断や重症度評価において、血清コリンエステラーゼ活性の測定は極めて重要です。

各選択肢の解説

この問題は「血清コリンエステラーゼ活性が低下するのはどれか」と問うており、ChEを阻害する物質を知っているかがポイントです。

4.有機リン中毒 → 正しい:上記の通り、有機リンはコリンエステラーゼを強力に阻害するため、血清ChE活性は著しく低下します。

1, 2, 3, 5 → 誤り:これらの中毒では、それぞれ別のメカニズムで体に影響を及ぼしますが、コリンエステラーゼ活性の直接的な低下は引き起こしません。

中毒物質 主な作用機序
鉛中毒 ヘム合成系の酵素を阻害
水銀中毒 酵素のSH基と結合し、機能を阻害
青酸中毒 細胞内呼吸(ミトコンドリア)を阻害
一酸化炭素中毒 ヘモグロビンと強く結合し、酸素運搬を阻害

 

感染症と免疫疾患

【第68回 午前 問12】B型急性肝炎における HBs抗原、HBs抗体、HBe抗原、HBe抗体、HBc抗体の推移を別に示す。HBc抗体はどれか。

1.A
2.B
3.C
4.D
5.E

 

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正解:3

さい
さい
B型肝炎のウイルスマーカーの推移、5本の曲線があって、どれがどれだかパニックになりますよね。
でも大丈夫!一つひとつのマーカーが「何を意味しているのか」を理解すれば、このグラフは簡単に読み解けます。ステップ・バイ・ステップで考えていきましょう!

Step 1:「抗原」と「抗体」を見分ける

まず、5本の曲線を、感染の初期に出現する「抗原」グループと、それに続いて出現する「抗体」グループに分けます。

  • 抗原グループ(先にピークが来る):A, B
  • 抗体グループ(後から上昇する):C, D, E

Step 2:「HBe抗原」と「HBe抗体」のペアを見つける

HBe抗原とHBe抗体は、ウイルスの増殖が活発な時期(HBe抗原陽性)から、増殖が落ち着いた時期(HBe抗体陽性)へと移行する様子を示します。この入れ替わりをセロコンバージョンと呼びます。

グラフの中で、ちょうど片方が消えるタイミングでもう片方が現れる、きれいな入れ替わりの関係になっているのは、BとDのペアです。

  • 先にピークが来るBHBe抗原
  • 後から上昇するDHBe抗体

Step 3:残りの3つのマーカーを特定する

残ったのは、A(抗原)、C(抗体)、E(抗体)の3つです。

AはHBs抗原
残った唯一の抗原であるAは、B型肝炎ウイルスに感染していること自体を示すHBs抗原です。発症時に最も早く、最も高いピークを示します。

EはHBs抗体
HBs抗体は、感染が治癒に向かっていることや、ワクチンによって免疫がついたことを示す「中和抗体」です。そのため、5つのマーカーの中で最も遅れて出現します。よって、EがHBs抗体です。

CはHBc抗体
最後に残ったCが、この問題の答えであるHBc抗体です。HBc抗体は、B型肝炎ウイルスに感染すると比較的早期から作られ始め、長期間陽性が続く抗体です。

B型肝炎マーカーまとめ

曲線 マーカー名 主な意味
A HBs抗原 HBV感染の存在
B HBe抗原 ウイルスの増殖性が高い
C HBc抗体 HBV感染の既往(現在または過去)
D HBe抗体 ウイルスの増殖性が低下
E HBs抗体 治癒またはワクチンによる免疫獲得

各選択肢の解説

以上の解析から、各選択肢は以下のようになります。

1.A → 誤り。これはHBs抗原です。

2.B → 誤り。これはHBe抗原です。

3.C → 正しい。これがHBc抗体です。

4.D → 誤り。これはHBe抗体です。

5.E → 誤り。これはHBs抗体です。

【第68回 午前 問14】サルコイドーシスの診断に最も有用なのはどれか。

1.アンギオテンシン変換酵素〈ACE〉
2.CRP
3.IL-6
4.KL-6
5.SP-D

 

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正解:1

さい
さい
サルコイドーシス、名前は聞くけど、どんな病気なのか、どの検査が重要か、意外とピンとこない人も多いかもしれません。
この問題は、疾患と、それに特異的な検査マーカーを結びつける、国試の王道パターンです。ポイントさえ押さえれば、確実に得点できますよ!

サルコイドーシスとは?

原因不明で、全身の様々な臓器に類上皮細胞肉芽腫という炎症性の病変ができる疾患です。特に、肺や眼、皮膚、リンパ節に病変ができやすいことが知られています。

この肉芽腫を構成する類上皮細胞が、ある特定の酵素をたくさん作り出すことが、診断の鍵となります。

サルコイドーシスの病態とマーカー

全身に類上皮細胞肉芽腫ができる

この肉芽腫から、ある酵素が大量に産生される

血中の
アンギオテンシン変換酵素(ACE)
高値になる!

各選択肢の解説

この問題は、サルコイドーシスの診断に最も特異的で有用なマーカーは何か、という知識を問うています。

1.アンギオテンシン変換酵素〈ACE〉 → 正しい:上記の通り、サルコイドーシスの肉芽腫を形成する類上皮細胞がACEを産生するため、血清ACE活性は疾患の活動性の指標として広く用いられており、診断に最も有用です。

2.CRP → 誤り:C反応性蛋白(CRP)は、炎症や組織破壊に応じて肝臓で産生される、代表的な急性相反応物質です。様々な疾患で上昇するため、特異性は低く、「最も有用」とは言えません。

3.IL-6 → 誤り:インターロイキン6(IL-6)は、マクロファージなどから産生される代表的な炎症性サイトカインです。IL-6は、肝臓に作用してCRPなどの急性相反応物質の産生を促す、いわば「司令塔」のような役割を果たします。CRPと同様に、様々な炎症性疾患で上昇するため、サルコイドーシスに特異的ではありません。

4.KL-6 / 5.SP-D → 誤り:これらは、主に間質性肺炎の診断や活動性の指標として用いられる血清マーカーです。サルコイドーシスは肺に病変を作ることが多いですが、これらのマーカーは間質性肺炎全般で上昇するため、サルコイドーシスに特異的ではありません。

+α 知識:他の検査所見

サルコイドーシスでは、ACE以外にも特徴的な検査所見が見られます。これらもセットで覚えておくと、国試対策がより盤石になります。

  • 高カルシウム血症:肉芽腫がビタミンDを活性化させるため。
  • リゾチーム高値:ACEと同様に、肉芽腫から産生されるため。
  • ツベルクリン反応陰性化:細胞性免疫の異常が関与していると考えられています。

 

【第68回 午後 問14】関節リウマチの診断に用いられるのはどれか。

1.抗 CCP 抗体
2.抗 GAD 抗体
3.抗 SS-A 抗体
4.抗サイログロブリン抗体
5.抗アセチルコリン受容体抗体

 

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正解:1

さい
さい
関節リウマチ(RA)も、国試で頻出の自己免疫疾患ですね。
この問題を解くポイントは、数ある自己抗体の中から、関節リウマチに「特異性が高い」抗体を正確に選べるかどうかです。昔から使われている検査と、新しい検査の違いを理解するのが大事!

関節リウマチ(RA)で測定される自己抗体

関節リウマチの診断では、主に2種類の自己抗体が重要視されます。それぞれの特徴を比較して覚えましょう。

RAの2大自己抗体

自己抗体 特徴
リウマトイド因子(RF) 昔から使われている検査。
感度は高いが、他の膠原病や健常者でも陽性になることがあり、特異度は低い
抗CCP抗体 比較的新しい検査。
関節リウマチに対する特異度が非常に高く(約95%)、早期診断にも有用。

現在の診断基準では、感度の高いRFと、特異度の高い抗CCP抗体の両方を測定することが推奨されています。

各選択肢の解説

この問題は、関節リウマチの診断に用いられる自己抗体を問うています。特に、特異度の高いマーカーが正解として選ばれやすい傾向にあります。

1.抗 CCP 抗体 → 正しい:抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)は、関節リウマチに極めて特異性の高い自己抗体であり、診断に非常に有用です。

その他の選択肢 → 誤り:これらは、他の自己免疫疾患の診断に用いられる代表的な自己抗体です。国試では、これらのペアリングも頻出なので、必ずセットで覚えましょう。

自己抗体 関連する主な疾患
2.抗 GAD 抗体 1型糖尿病
3.抗 SS-A 抗体 シェーグレン症候群, 全身性エリテマトーデス(SLE)
4.抗サイログロブリン抗体 橋本病 (慢性甲状腺炎)
5.抗アセチルコリン受容体抗体 重症筋無力症

 

【第69回 午後 問11】ペルオキシダーゼに対する抗好中球細胞質抗体〈MPO-ANCA〉が陽性となるのはどれか。

1.Behçet 病
2.全身性強皮症
3.結節性多発動脈炎
4.顕微鏡的多発血管炎
5.多発性筋炎・皮膚筋炎

 

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正解:4

さい
さい
ANCA(アンカ)!来ましたね、国試の免疫分野で差がつくポイントです。
ANCAには2つの主要なタイプがあって、それぞれがどの疾患と関連するのか、そのペアリングを覚えるのが攻略の鍵です。

ANCAとは?

抗好中球細胞質抗体Anti-Neutrophil Cytoplasmic Antibody)の略で、自分の好中球の細胞質成分に対する自己抗体です。この抗体は、特に小型血管に炎症を起こす「ANCA関連血管炎」という一群の疾患で検出されます。

2種類のANCAと関連疾患

ANCAは、蛍光抗体法での染色パターンによって、主に2つのタイプに分けられます。それぞれの対応抗原と関連疾患の組み合わせは、国試の絶対暗記項目です。

ANCAの2大分類

ANCAのタイプ 対応抗原 関連する主な血管炎
C-ANCA
(細胞質型)
PR3
(プロテイナーゼ3)
多発血管炎性肉芽腫症 (GPA)
P-ANCA
(核周囲型)
MPO
(ミエロペルオキシダーゼ)
顕微鏡的多発血管炎 (MPA)
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA)

各選択肢の解説

この問題は、「MPO-ANCAが陽性となるのはどれか」と問うています。MPOはP-ANCAの対応抗原であり、P-ANCAは主に顕微鏡的多発血管炎(MPA)で見られます。

4.顕微鏡的多発血管炎 → 正しい:MPAは、P-ANCA(MPO-ANCA)が高率に陽性となる代表的なANCA関連血管炎です。

1, 2, 3, 5 → 誤り:これらはANCA関連血管炎以外の自己免疫疾患です。それぞれに特徴的な検査所見がありますが、MPO-ANCAは通常陽性になりません。

+α 知識:ゴロ合わせ

C-ANCAとP-ANCAの組み合わせ、混乱しますよね。僕はこう覚えて乗り切りました!

GPACPR3位」

ゴロ合わせの解説
GPACPR3位」
GPA → Granulomatosis with Polyangiitis (多発血管炎性肉芽腫症)
まず、疾患名であるGPAを覚えます。
のCは → C-ANCA
GPAで見られるのはC-ANCAである、と結びつけます。(GPAのAの後の文字がC、のような覚え方でも良いかもしれません)
PR3位 → PR3 (プロテイナーゼ3)
そして、そのC-ANCAが標的とする抗原がPR3である、と結びつけます。「3位(さんい)」と「PR3」をかけています。

さい
さい
ちょっと無理やり感はありますが(笑)、このワンフレーズを覚えておくだけで、「GPA ⇔ C-ANCA ⇔ PR3」という国試で最も問われる鉄板の組み合わせが、芋づる式に思い出せるようになります。
そして、このペアさえ覚えてしまえば、残った「MPA(顕微鏡的多発血管炎)」や「EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)」が、もう一方の「P-ANCA / MPO」のグループだと消去法で分かる、というわけです。

 

【第69回 午後 問15】自己免疫疾患はどれか。

1.Alzheimer 病
2.重症筋無力症
3.Creutzfeldt-Jakob 病
4.進行性多巣性白質脳症
5.筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉

 

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正解:2

さい
さい
この問題は、様々な神経疾患の中から「自己免疫疾患」に分類されるものを選び出す、知識の正確性が問われる問題です。
それぞれの疾患が「何が原因で起こるのか?」という根本的な分類を理解しているかがポイントになります。

自己免疫疾患とは?

本来は細菌やウイルスなどの外敵を攻撃するはずの免疫システムが、何らかの原因で暴走し、自分自身の正常な細胞や組織を「敵」とみなして攻撃してしまう病気のことです。攻撃の目印となるのが「自己抗体」です。

各疾患の原因による分類

国試で問われる神経疾患は、原因によって大きく分類できます。この問題の選択肢を整理してみましょう。

神経疾患の原因分類

分類 疾患名 主な原因
自己免疫疾患 重症筋無力症 自己抗体(抗アセチルコリン受容体抗体など)
変性疾患 Alzheimer病, ALS 神経細胞の変性・脱落(原因不明な点が多い)
プリオン病 Creutzfeldt-Jakob病 異常プリオン蛋白
ウイルス感染症 進行性多巣性白質脳症 JCウイルス

各選択肢の解説

この問題は「自己免疫疾患はどれか」と問うています。上の表で分類を確認しましょう。

2.重症筋無力症 → 正しい:神経から筋肉へ命令を伝える「神経筋接合部」のアセチルコリン受容体などに対する自己抗体が作られることで、筋肉の力が弱くなる(易疲労性)典型的な自己免疫疾患です。

1.Alzheimer 病 → 誤り:アミロイドβやタウといった異常なタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞が変性・脱落する変性疾患です。

3.Creutzfeldt-Jakob 病 → 誤り:異常なプリオン蛋白が原因で脳組織がスポンジ状になるプリオン病です。

4.進行性多巣性白質脳症 → 誤り:免疫力が低下した際に、JCウイルスが脳内で再活性化することで起こるウイルス感染症です。

5.筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉 → 誤り:運動神経細胞が選択的に変性・脱落していく原因不明の変性疾患です。

 +α 知識:JCウイルスとは?

JCウイルスは、ポリオーマウイルス科に属するウイルスの一種です。

実は、このウイルス自体は決して珍しいものではなく、多くの人が小児期に感染し、自覚症状のないまま腎臓などに潜伏感染しています(健常人の約70%が抗体陽性とも言われています)。

通常は、私たちの免疫システムがウイルスの活動を抑え込んでいるため、一生涯何も問題を起こしません。

しかし、HIV感染症(エイズ)や、白血病、臓器移植後の免疫抑制剤の使用などにより、免疫力が著しく低下すると、潜んでいたJCウイルスが脳内で再活性化し、増殖を始めます。その結果、脳の白質が広範囲に破壊される致死的な疾患、それが進行性多巣性白質脳症(PML)です。

つまり、JCウイルスは典型的な「日和見感染症」の原因ウイルスの一つ、と覚えておくと理解しやすいですよ。

 

【第70回 午前 問13】リンパ腫の原因となるのはどれか。

1.サイトメガロウイルス
2.単純ヘルペスウイルス
3.ヒト T 細胞白血病ウイルス 1 型
4.ヒトパピローマウイルス
5.ヒトパルボウイルス B19

 

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正解:3

さい
さい
ウイルスの中には、ヒトの細胞に感染し、その細胞をがん化させる能力を持つものがいます。これらを「腫瘍ウイルス」と呼びます。
国試では、「どのウイルスが、どのがんの原因となるか」というペアリングが問われます。これも鉄板の暗記項目ですね!

腫瘍ウイルスと関連疾患

国試で問われる主要な腫瘍ウイルスと、それによって引き起こされる代表的な疾患を整理しておきましょう。この表は非常に重要です。

国試頻出!腫瘍ウイルス 早見表

ウイルス名 分類 関連する主な腫瘍・疾患
HTLV-1
(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)
RNA 成人T細胞白血病/リンパ腫 (ATL)
EBウイルス DNA Burkittリンパ腫, 上咽頭癌, 伝染性単核球症
HPV
(ヒトパピローマウイルス)
DNA 子宮頸癌
B型肝炎ウイルス (HBV) DNA 肝細胞癌
C型肝炎ウイルス (HCV) RNA 肝細胞癌

各選択肢の解説

この問題は「リンパ腫の原因となるのはどれか」と問うています。リンパ球系の細胞を腫瘍化させるウイルスを探します。

3.ヒト T 細胞白血病ウイルス 1 型 (HTLV-1) → 正しい:HTLV-1は、その名の通り、CD4陽性のヘルパーT細胞に感染し、数十年という長い潜伏期間を経て、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)という血液のがんを引き起こすことが知られています。

その他の選択肢 → 誤り:これらは、リンパ腫の直接的な原因とはなりません。

  • 1.サイトメガロウイルス (CMV):健常人では問題になりませんが、免疫不全者で間質性肺炎などを引き起こす日和見感染の原因となります。
  • 2.単純ヘルペスウイルス (HSV):口唇ヘルペスや性器ヘルペスの原因となります。
  • 4.ヒトパピローマウイルス (HPV):子宮頸癌の原因となることで非常に重要です。
  • 5.ヒトパルボウイルス B19:伝染性紅斑(リンゴ病)の原因ウイルスです。

【第71回 午後 問11】ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌判定に用いられるのはどれか。

1.血液培養検査
2.消化管造影
3.尿素呼気試験
4.尿培養検査
5.便培養検査

 

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正解:3

さい
さい
ピロリ菌!胃がんのリスク因子として、すっかり有名になりましたね。
国試では、ピロリ菌の検査法について、「感染診断」に使うものと、「除菌判定」に使うものの違いを理解しているかが問われます。

ヘリコバクター・ピロリ菌とは?

胃の粘膜に生息する、らせん状の細菌です。強力なウレアーゼという酵素を産生し、尿素をアンモニアに分解することで、強酸性の胃の中でも生き抜くことができます。慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、そして胃がんの主要な原因となります。

ピロリ菌検査の分類

ピロリ菌の検査は、内視鏡を使うか使わないかで、大きく2つのグループに分けられます。

分類 主な検査法 除菌判定に使えるか?
内視鏡を使う検査 迅速ウレアーゼ試験, 鏡検法, 培養法 使える
(現在の菌の存在を見るため)
内視鏡を使わない検査 尿素呼気試験, 便中抗原測定, 抗体測定 使える
(抗体測定は除菌判定には不向き)
なぜ抗体測定は除菌判定に不向き?

抗体は、一度感染すると、除菌が成功した後もすぐには陰性化せず、長期間(数年)陽性が続くことがあります。そのため、「今、菌がいるかどうか」を判断する除菌判定には向いていません。

尿素呼気試験の原理

この問題の正解である尿素呼気試験は、ピロリ菌が持つウレアーゼ活性を利用した、非常に精度の高い検査です。

尿素呼気試験の流れ

  1. 13Cで目印をつけた尿素の薬を飲む。
  2. もし胃にピロリ菌がいれば、ウレアーゼが尿素を分解し、13CO₂(目印付き二酸化炭素)が発生する。
  3. 13CO₂は血液に吸収され、肺から呼気として排出される。
  4. 薬を飲む前と後の呼気を集めて、13CO₂の量を測定する。

13CO₂が増えていれば、ピロリ菌陽性!

各選択肢の解説

この問題は「除菌判定に用いられるのはどれか」、つまり「現在、ピロリ菌が活動しているかどうか」を調べられる検査法を問うています。

3.尿素呼気試験 → 正しい:上記の通り、ピロリ菌が持つウレアーゼ活性を直接見ているため、「今、菌がいるか」を非常に高い精度で判定できます。患者さんへの負担も少なく、除菌判定の第一選択となる検査です。

1, 4, 5 → 誤り:血液培養、尿培養、便培養は、それぞれの検体中の細菌を調べる検査であり、胃に生息するピロリ菌の検査には用いません。

2.消化管造影 → 誤り:これはバリウムなどを使って消化管の形を見る画像検査であり、ピロリ菌の存在を直接証明するものではありません。

 

まとめ:医学総論は“横断的な視点”で攻略!

お疲れ様でした!今回は、臨床検査医学総論の中から「血液・感染症・免疫疾患」に関する過去問を解説しました。専門科目で学んだ知識が、別の角度から問われていることが分かりますね。

【結論】医学総論で問われる疾患 3つの鉄則

鉄則1:汎血球減少は“骨髄全体”の異常を疑う

再生不良性貧血巨赤芽球性貧血

貧血だけでなく、白血球や血小板も減少する「汎血球減少症」。その原因は、骨髄の造血幹細胞が枯渇する再生不良性貧血や、DNA合成障害が全血球に影響する巨赤芽球性貧血が代表です。赤血球系のみに問題がある他の貧血との違いを明確にしましょう。

鉄則2:自己抗体と疾患の“ペアリング”は完璧に

関節リウマチ=抗CCP抗体血管炎=MPO-ANCA

免疫疾患の問題は、特異的な自己抗体と疾患の正しい組み合わせを覚えているかが勝負です。関節リウマチの診断に特異性が高いのは抗CCP抗体顕微鏡的多発血管炎ではMPO-ANCAが陽性になる、という鉄板の組み合わせは必ず押さえましょう。

鉄則3:「今の感染」を見る検査を理解する

B型肝炎のHBc抗体、ピロリ菌の尿素呼気試験

感染症の検査では、「過去の感染」を示すマーカーと「現在の活動的な感染」を示すマーカーの区別が重要です。B型肝炎のHBc抗体は感染の指標となり、H.ピロリ菌の除菌判定には、現在の菌の活動を反映する尿素呼気試験が用いられます。

さい
さい
いかがでしたか?医学総論の疾患問題は、各専門科目の知識を横断的につなぐ「橋渡し」のような役割をしています。
一つひとつの知識を確実に積み重ねて、どんな角度から問われても答えられる応用力を身につけていきましょう!
総論の問題をたくさん解くと、後から専門科目を解いていて「あ、なんか知ってるわこの問題」となることも多いですよ👍