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【国試対策】脳脊髄液検査が苦手な人へ。現役技師が教える頻出ポイント完全攻略

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【一般検査】脳脊髄液検査の全て|性状・化学・細胞数から疾患を読み解く

さい
さい
こんにちは。「さい」です。臨床検査技師の国家試験、そして臨床現場でも避けては通れない「脳脊髄液(髄液)検査」。項目が多く、疾患との関連も複雑で、苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか。(僕も持っています笑)

けど、大丈夫です!この記事を読み終える頃には、髄液検査の全体像がスッキリと整理され、一つひとつの検査項目の意味をしっかりと理解できるようになっているはずです!

まずは基本となる「髄液の採取と性状」から、その「なぜ?」を一緒に深掘りしていきましょう。

1. 脳脊髄液(髄液)の基本と性状 〜 見た目から探る異常のサイン 〜

【基本】脳脊髄液(髄液)は、脳室の脈絡叢で血液から作られる、無色透明な液体です。
脳や脊髄を衝撃から守るクッションの役割を果たしています。
健康な成人の総量は約100〜150mLで、弱アルカリ性(pH 7.31〜7.34)を示します。

1-1. 髄液圧

腰椎穿刺の際に測定される髄液圧は、頭蓋内の圧力を反映します。健常成人の基準値は70〜180mmH₂O(側臥位)です。

  • 髄液圧の上昇:髄膜炎、脳腫瘍、くも膜下出血などで見られます。特にクリプトコッカス性髄膜炎では著しく上昇することがあります。

1-2. 色調と混濁

髄液の色と透明度は、病態を推測する上で非常に重要な視覚情報です。

外観 原因 考えられる疾患・状態
無色透明 正常
白色混濁 白血球や細菌の増加 化膿性髄膜炎
血性(赤色) 赤血球の混入 くも膜下出血、事故穿刺
黄色調(キサントクロミー) 間接ビリルビン 陳旧性の出血(くも膜下出血後など)
【国試ポイント】事故穿刺とくも膜下出血の鑑別

腰椎穿刺時に血管を傷つけてしまう「事故穿刺」と、病的な「くも膜下出血」を鑑別することは極めて重要です。

  • 試験管3本採取法:事故穿刺の場合、『採取が進むにつれて血液の混入が薄くなります』が、くも膜下出血では3本とも同じ濃さの血性です。
  • 遠心後の上清:事故穿刺では上清が透明ですが、くも膜下出血では発症から数時間後には赤血球が溶血し、上清が黄色(キサントクロミー)になります。

2. 髄液の化学検査 〜 成分が語る病態 〜

次に、髄液に含まれる化学成分を分析し、病気の原因をさらに詳しく探っていきます。

2-1. 蛋白

【基本】血液脳関門(BBB)により、髄液中の蛋白はごく微量に抑えられています。基準値は15〜45mg/dLです。

炎症によりBBBが破壊されると、血液から蛋白が漏れ出し、髄液中の蛋白濃度が上昇します。各種髄膜炎や脳腫瘍などで高値となります。

悩める学生
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ノンネ・アペルト反応やパンディー反応って何ですか…?
さい
さい
これらは髄液中のグロブリンという蛋白が増加しているかを調べる、古典的な定性試験です。グロブリンが増加していると試薬との反応で白く濁ります。現在は精密な定量検査が主流ですが、国試では原理が問われることがあるので覚えておくと良いと思います!

2-2. グルコース(糖)

【基本】髄液中のグルコースは、血液から供給されるため、血糖値と常に比較する必要があります。基準値は50〜70mg/dLで、これは抹消採血における血糖値の約2/3に相当します。

【なぜ?】細菌性髄膜炎でグルコースが減少する理由

これは、髄液中に侵入した細菌が、増殖するための栄養源としてグルコースを消費してしまうためです。
一方、ウイルスは自身で増殖できないためグルコースを消費しません。このため、ウイルス性髄膜炎ではグルコースは減少しないことが多く、両者の鑑別に非常に重要な所見となります。

2-3. クロール(Cl)

【基本】髄液中のクロールは血中よりもやや高く、基準値は120〜128mEq/Lです。

特に結核性髄膜炎で著しく減少することが知られています。

【なぜ?】結核性髄膜炎で髄液クロールが著減する理由

結核性髄膜炎で髄液クロール値が著しく減少する点について、「なぜだろう?」と疑問に思った方もいるかもしれません。この現象は、単一の明確な理由で説明することは難しく、複数の要因が複雑に関わっていると考えられています。

その中でも、現在最も有力とされているのが「全身の血中クロール濃度の低下が、髄液に反映される」という考え方です。

少し詳しく見てみましょう。

結核性髄膜炎は脳だけの病気ではなく、全身に影響を及ぼす消耗性の疾患です。そのため、以下のような要因で、まず血液中のクロール濃度が低下(低クロール血症)することがあります。

  • 嘔吐や食欲不振:結核の全身症状として、嘔吐や著しい食欲不振が続くことがあります。これにより、体外へクロールが失われたり、食事からの摂取が不足したりします。
  • 抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH):結核が原因で、体内の水分バランスを調節するホルモンに異常が生じることがあります。これにより体内に水分が過剰に溜まり、相対的に血液中の電解質(クロールやナトリウム)が薄まってしまうことがあります。

このようにして生じた全身の低クロール血症が、髄液中のクロール濃度に直接反映されること、これが髄液クロール値が低下する最も大きな理由と考えられています。

さい
さい
分かりやすく言うと、「病気による全身の消耗で、体全体の塩分(クロール)が不足している状態が、髄液という”体の一部”にも正直に現れている」とイメージすると良いかもしれません。かつては結核性髄膜炎に特異的な所見とされていましたが、現在では全身状態の変化の結果と理解されています。

3. 髄液の細胞学的検査 〜 細胞が示す直接的なメッセージ 〜

最後に、髄液を顕微鏡で観察し、どんな細胞がどれくらいいるのかを直接調べます。これは病気の原因を特定するための決定的な情報となります。

3-1. 細胞数

【基本】専用の計算盤(フックス・ローゼンタール計算盤)を用いて算定します。健常な髄液中の細胞は極めて少なく、基準値は5個/μL以下で、ほとんどがリンパ球です。

細胞数が明らかに増加している場合、髄膜炎などの炎症性疾患が強く疑われます。

さい
さい
研修時代、夜中に初めて髄液の緊急検査を担当した時のことは今でも忘れられません。顕微鏡を覗きながら、自分の報告が患者さんの診断に直結するというプレッシャーで手が震えました。正確な細胞算定は、まさに臨床検査技師の腕の見せ所です。

3-2. 細胞分画(どんな種類の細胞がいるか?)

細胞が増加している場合、その種類を特定することが原因究明の最大の鍵となります。

好中球の増加

細菌性(化膿性)髄膜炎を強く示唆します。好中球は細菌と戦う専門の免疫細胞だからです。

リンパ球の増加

ウイルス性、結核性、真菌性髄膜炎などを示唆します。リンパ球はウイルス感染や慢性炎症で中心的な役割を果たします。

3-3. 特殊な病原体の検出

真菌の一種であるクリプトコッカスが疑われる場合、墨汁(ぼくじゅう)法による染色が行われます。クリプトコッカスは厚い莢膜(きょうまく)というバリアを持っており、墨汁の黒い粒子がこの莢膜を通過できないため、黒い背景の中に菌体が白くくっきりと浮かび上がって見えます。

【総まとめ】髄膜炎における髄液所見の比較

最後に、これまで学んだ知識を統合し、髄膜炎の鑑別に重要なポイントを表にまとめました。この表の項目を、理由とともに説明できれば、完璧です!

細菌性(化膿性) ウイルス性 結核性 真菌性(クリプトコッカス)
外観 白色混濁 透明〜軽度混濁 軽度混濁、フィブリン網 軽度混濁
著増 正常〜増加 増加 著増
蛋白 著増 正常〜増加 増加 増加
減少 正常 減少 減少
Cl 減少 正常 著減 減少
細胞数 著増 増加 増加 増加
主要細胞 好中球 リンパ球 リンパ球 リンパ球
さい
さい
お疲れ様でした。髄液検査は、一つひとつの検査項目の意味を理解し、それらをパズルのように組み合わせることで、初めて正確な臨床的価値が生まれます。この記事が、あなたの学習の助けとなれば幸いです。