過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
国家試験の過去問解説のまとめページです
第70回臨床免疫学PM79~89
79 抗炎症性サイトカインはどれか。
- インターロイキン-1(IL-1)
- インターロイキン-6(IL-6)
- インターロイキン-8(IL-8)
- インターロイキン-10(IL-10)
- 腫瘍壊死因子-α(TNF-α)
解説:サイトカイン一覧を参考にしてみてください。
上表は過去問で使ったものですが、今回の問題でも使えるので流用しました。
抗炎症性サイトカインは「IL-10、TGF-β(トランスフォーミング増殖因子ベータ)」が該当します。
答え:4
80 ABO血液型が後天的変化を示す原因はどれか。
- 血友病
- 赤芽球癆
- 鉄欠乏性貧血
- 急性骨髄性白血病
- 自己免疫性溶血性貧血
解説:ABO血液型は、“原則”として変わることはない。
しかし、例外として「後天的変化」を示す状況になることもある。
★ABO血液型が後天的に変化する要因
- 急性骨髄性白血病
- 骨髄異形成症候群
- 後天性獲得性B
⇒直腸、結腸癌患者で細菌感染時のA型患者が後天的にAB型様の反応を示す - 造血幹細胞移植(人工的変化)
選択肢では「急性骨髄性白血病」が後天的なABO血液型変化の要因となります。
答え:4
81 カラム凝集像(別冊No. 16)の結果を別に示す。考えられるのはどれか。2つ選べ。
- 亜 型
- 新生児
- キメラ
- 寒冷凝集素
- 不規則抗体
解説:写真を見ると、オモテ検査は抗Bが(4+)であり、B型。
Rhコントロールは(-)で抗Dが(4+)であり、Rhは(+)。
ウラ検査ではA1血球、B血球ともに(-)でありAB型となる。
オモテ・ウラの不一致となりますが、ここで考えられる要因は
- A抗原量が減弱したAB型の亜型
- 抗A(規則抗体)の産生がほぼないとされるB型新生児
(生後半年頃まで検出されない)
これらが考えられる。
- キメラは1人のヒトが血液型が異なる赤血球をもつので、オモテ検査で部分凝集を示す(mf)
⇒「双生児キメラ」が圧倒的に多いとされる
「モザイク」も部分凝集でmfを示すので、オモテ検査で異常となる。 - 寒冷凝集素や不規則抗体を認める場合はウラ検査が陽性となる「患者血清(抗体)」を用いるため
答え:1と2
82 不規則抗体同定検査で正しいのはどれか。
- 赤血球試薬はAB型赤血球を使用する。
- 生理食塩液法で可能性の高い抗体を推定する。
- 可能性の高い抗体の推定は量的効果を考慮する。
- 否定できない抗体は陽性反応を示した赤血球から推定する。
- 不規則抗体スクリーニングで陽性となった検査方法で実施する。
解説:選択肢を正しく直してまとめます。
- 不規則抗体同定検査に用いる赤血球試薬は「ヒトO型赤血球」を使用する
- 「不規則抗体や交差適合試験」は、「間接抗グロブリン試験」を用いる(間接クームス)
- 可能性の高い抗体の推定は、陽性反応を呈した赤血球が抗原表のいずれかの抗原パターンと一致するので、そこから推定する
- 否定できない抗体は間接抗グロブリン試験で陰性反応を呈した血球抗原において、量的効果を考慮して消去法で否定できない抗体を推定する
- 不規則抗体同定検査では不規則抗体スクリーニングで陽性となった検査法で実施する(正しい)
答え:5
83 日本人の新生児血小板減少症の原因で最も多いものはどれか。
- 抗HPA-1a抗体
- 抗HPA-2b抗体
- 抗HPA-3a抗体
- 抗HPA-4b抗体
- 抗HPA-5b抗体
解説:新生児血小板減少症(NAIT)とは、血小板抗原系(HPA)が大きく関与する。
- HPAは主に血小板に発現する抗原系で、母児間の血小板型不適合で母親が産生した抗血小板抗体が胎児へ移行し、胎児の血小板を破壊する新生児血小板減少症を引き起こす。
- 日本人(アジア)の新生児血小板減少症の原因となる抗体は、「抗HPA-4b抗体」が最も多い。
- 白人種ではHPA-1a抗体の報告が最も多い。
答え:4
84 遅発性溶血性輸血反応の原因となるのはどれか。
- 抗A
- 抗Jka
- 抗Leb
- 抗N
- 抗Xga
解説:以前まとめた輸血副反応の表です。これ+「抗JKaはほとんどがIgG型の免疫抗体であり、遅発性溶血性輸血反応、軽度の胎児・新生児溶血性疾患に関与する」ということを知っておけば大丈夫かと思います。
- 異型輸血の場合の抗A抗体はA抗原と反応して重篤な即時型溶血性輸血反応を起こす
- 抗Lebや、抗Nは室温で反応することが多く副反応は少ない
- 抗Xgaは間接抗グロブリン法で検出されるが、溶血性輸血反応を起こすことがなく臨床的な意義は低い
答え:2
85 ABO血液型で正しいのはどれか。
- 抗原は糖蛋白である。
- Landsteinerの法則に従わない。
- 遺伝子は第9染色体上に存在する。
- 日本人の約20%が抗A陽性である。
- 赤血球1個当たりの抗原量は出生時に最も多い。
解説:ABO血液型の基礎問題です。選択肢を正しく直しまとめます。
- ABO血液型の抗原は「糖鎖抗原」である。
- ABO血液型判定はLandsteinerの法則に従う
⇒赤血球にA抗原がなければ血清中に抗A抗体を持ち、B抗原がなければ抗B抗体を持つというもの - ABO血液型の遺伝子は「第9染色体長椀上」に存在する。
- 日本人における抗A陽性者はO型(約30%)とB型(約20%)の約50%である。
⇒「抗A抗原」は約40%、抗AはO型とB型が持っているのでそれぞれの和となる。 - 赤血球1個当たりのA、B、H抗原量は出生時には少ない(未発達)
答え:3
86 腫瘍マーカーと疾患の組合せで正しいのはどれか。
- AFP 大腸癌
- CA125 乳 癌
- CA15-3 膵 癌
- PIVKA-Ⅱ 卵巣癌
- ProGRP 肺小細胞癌
解説:腫瘍マーカーの組み合わせです。選択肢のものを正しく直してまとめます。
補足で関連マーカーもいくつか載せておきます。
- AFP ⇒ 肝癌
- CA125 ⇒ 卵巣癌・子宮癌
- CA15-3 ⇒ 乳癌
- PIVKA-Ⅱ ⇒ 肝癌
- ProGRP ⇒ 肺小細胞癌
- CEA ⇒ 大腸癌
- CA19-9 ⇒ 膵癌
- SCC ⇒ 扁平上皮癌
答え:5
87 血小板製剤で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 使用前に加温する。
- 放射線を照射する。
- 暗所で静置保存する。
- スワーリングが観察される。
- 有効期間は採血後7日間である。
解説:血小板製剤の取り扱いについてまとめます。
- 室温(20~24℃)で振盪保存が望ましい
- 放射線を照射する(新鮮凍結血漿以外の製剤)
- 明るさは関係ないが、スワーリングは蛍光灯下で行う
- スワーリング(血小板製剤を蛍光灯にかざしてゆっくりと撹拌したときに見られる渦巻き状のパターン)を観察し、観察できない製剤は使用不可とする
- 有効期間は採血後4日である
血小板輸血も赤血球ほどの頻度ではありませんが、よく目にします。振盪機がない検査室では、定期的に製剤を攪拌しないといけないので保存が大変です。
答え:2と4
88 貯血式自己血採血の対象とならないのはどれか。
- 妊娠30週
- 年齢75歳
- 体重40kg
- HBs抗原陽性
- Hb値9.5g/dL
解説:貯血式自己輸血の問題も近年出ています。選択肢をひとつずつ見ていきましょう。
- 妊婦
⇒28週頃、必要があれば鉄剤投与を開始する
出産予定日5週前から同意を得て貯血を開始する - 年齢・体重
⇒制限・取り決めは無い - ウイルス感染者への制限は特にはない(院内の判断はある)
⇒細菌感染者は対象とならない - 採血時のHb
⇒11.0g/dL以上が対象となる
妊娠30週がイマイチ腑に落ちない選択肢ですが、28週の鉄剤投与を対象として考えるのであればこれはセーフとなります。
答え:5
89 イムノクロマト法による抗原検査が行われないのはどれか。
- EBウイルス
- RSウイルス
- ロタウイルス
- インフルエンザウイルス
- 新型コロナウイルス〈SARS-CoV-2〉
解説:ルーチン検査でこれらのイムノクロマト法(POCT検査)を施行していると、当たり前のように解くことができます。
僕の職場のイムノクロマト検査を並べるだけで、こういった問題は解くことができると思うので、まとめていきたいと思います。
イムノクロマト法で行う検査(抗原)
- RSウイルス
- ロタウイルス
- インフルエンザウイルス
- 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)
- ノロウイルス
- アデノウイルス
- ヒトメタニューモウイルス
- CD抗原/トキシン
- 肺炎球菌
- レジオネラ
日頃検査している項目はこんなところでしょうか。かなり量がありますが、検査技師として働くのであれば、必ず扱う検査ですので覚えておきましょう。
EBウイルスは「抗体(IgG)」のイムノクロマト検査キットなら見たことがあります。
抗原との区別なので、ややいじわるな問題ですね。
答え:1
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