過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
第68回病理組織細胞学PM45~58
45 マイヤーMayerとカラッチCarazziのヘマトキシリン液のどちらにも用いられるのはどれか。
- クエン酸
- 過ヨウ素酸
- グリセリン
- 抱水クロラール
- カリウムミョウバン
解説:ヘマトキシリン染色液の組成をまとめていれば、解くことができます。
染色剤の「何をどの役割で使用するのか」を覚えればいいのですが、臨床検査はとにかく染色の種類が多く、覚えることが大変です。
表を参考に設問を見ましょう。
- クエン酸 ⇒ Mayerの酸性化剤として用いる
- 過ヨウ素酸 ⇒ 使用しない(Pass染色に用いる)
- グリセリン ⇒ Carazziの酸化防止剤として用いる
- 抱水クロラール ⇒ Mayerの防腐剤として用いる
- カリウムミョウバン ⇒ 1媒染剤として用いる
答え:5
46 疾患とその診断に有用な染色法との組合せで誤っているのはどれか。
- 肝硬変渡辺の鍍銀法
- 心筋梗塞azan染色
- ヘモジデローシス toluidine blue染色
- 慢性糸球体腎炎 PAM染色
- B型肝炎 Victoria blue染色
解説:疾患と染色の組み合わせです。組織と染色の組み合わせでもあるので、応用が効くように覚えていきましょう。
- 肝硬変 ⇒ 渡辺の鍍銀法(膠原繊維や細網繊維により作られた偽小葉を染色)
- 心筋梗塞 ⇒ azan染色(陳旧性心筋梗塞の壊死巣を膠原繊維が埋めるので、これをアニリン青で青く染色)
- ヘモジデローシス ⇒ Berlin blue染色(ヘモジデリン(三価鉄)を染色)
※toluidine blue染色は多糖類を染色する - 慢性糸球体腎炎 ⇒ PAM染色(糸球体基底膜やメサンギウム基質の病変を染色)
- B型肝炎 ⇒ Victoria blue染色(HBs抗原や弾性繊維を染色)
答え:3
47 細胞診標本上でみられる小細胞癌の形態学的特徴はどれか。
- 核偏在性
- 真珠形成
- 粘液空胞
- 鋳型状配列
- オタマジャクシ型
解説:設問における細胞診標本上でみられる癌の形態学的特徴を簡単にまとめました。
★癌の形態学的特徴
- 小細胞癌:鋳型状配列、目込み細工様配列
(小型で核縁が薄く、裸核様の状態で出現することが多い) - 腺癌細胞:核偏在性、粘液空砲
- 扁平上皮癌:オタマジャクシ型細胞、真珠形成
癌の標本特徴をまとめておくと、自身をもって答えられます。
答え:4
48 H-E染色標本別冊No. 10 を別に示す。この臓器はどれか。
- 視床下部
- 下垂体
- 副甲状腺
- 膵 臓
- 副 腎
解説:病理専属の方以外は、こういった組織像は、図と臓器で覚えていくのがベストです。
この写真は「副腎」です。覚えておきましょう。
解剖学的に、副腎皮質は表面の方から「球状層、束状層、網状層」に分かれています。
よく見ると3層に分かれており、好酸性にそまった皮質(網状層:アンドロゲンを産生)と、好塩基性にそまった髄質(カテコールアミンを産生)も鑑別点になるのですが、この写真は副腎!と覚えてしまった方が楽かもしれません。
図に線を引いて解説したい所ですが、僕は病理専門でないため確証をもって引くことができません。気になる方は教科書等で確認した方が確実です。
答え:5
49 健常成人で肝臓に接していないのはどれか。
- 横隔膜
- 腎臓
- 胆囊
- 脾 臓
- 副 腎
解説:腹部解剖図の問題です。腹部エコーをする時に必須の内容です。解剖図を見て確認しましょう。
まず、肝臓は横隔膜直下に位置しています。
胆のう、腎臓、副腎(腎臓の上部に位置する)は肝臓に接するように位置しています。
脾臓も上極だけ接しているように感じますが、解剖学的には接していません。
答え:4
50 病理解剖において切開開始前の手順に含まれないのはどれか。
- 身長の計測
- 皮膚の清拭
- 死後硬直の確認
- 臨床経過の確認
- 病理解剖承諾書の確認
解説:病理解剖前の手順を簡単にまとめましたので、参考にしてください。
まず病理解剖承諾書の確認を行う。
その後、身長、体重の計測、死後硬直の確認、臨床経過の確認を全て実施する。
それらが終了して初めて解剖を開始する。
皮膚清拭は、解剖後の縫合時にされる。開始前にも簡単な清拭はすることもあるが、手順ではない。
答え:2
51 癌抑制遺伝子はどれか。
- BRAF
- BRCA1
- ERBB2HER2
- KIT
- KRAS
解説:癌の抑制遺伝子を表にしました。
★癌の抑制遺伝子
- BRCA1、BRCA2
⇒遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC) - NF1、NF2
⇒それぞれ神経線維腫症Ⅰ、Ⅱ
(Ⅰはフォン・レックリングハウセン病も) - p53
⇒リ・フラウメニ症候群 - APC
⇒家族性大腸ポリポーシス - WT1
⇒ウィルムス腫瘍(腎芽腫)(小児で多い) - RB
⇒家族性網膜芽腫
設問を見ると、BRCA1が癌抑制遺伝子ですが、その他も見てみましょう。
その他設問は、癌促進遺伝子です。
- BRAF
⇒皮膚がん(悪性黒色腫)、甲状腺がん、大腸がん、肺がん - ERBB2(HER2)
⇒乳癌 - KIT
⇒消化管間質腫瘍(GIST) - KRAS
⇒大半は膵癌、その他大腸癌、肺癌、多発性骨髄腫、子宮体癌
答え:2
52 乳腺で癌が発生しやすい部位はどれか。
- 内側上部
- 内側下部
- 外側上部
- 外側下部
- 乳頭部
解説:乳癌の発生部位についての問題です。
★乳癌発生部位
- 外側上部(約47.6%)>内側上部(約23.5%)>外側下部(約13%)>内側下部(約6.8%)>乳輪、乳頭部(約6.1%)>その他(約4%)
図のC領域の外側上部が最も発生率が高いとされています。
答え:3
53 電子顕微鏡標本作製時の工程と用いる試薬との組合せで正しいのはどれか。
- 前固定 オスミウム酸液
- 後固定 グルタルアルデヒド液
- 脱 水 エタノール
- 置 換 キシレン
- 包埋 カーボワックス
解説:下の表を覚えておくといいと思います。顕微鏡の問題もそれなりに出題されていると思います。
設問を見ていきます。
- 前固定 オスミウム酸液 ⇒ グルタールアルデヒド
- 後固定 グルタルアルデヒド液 ⇒ オスミウム酸
- 脱 水 エタノール ⇒ 正しい
- 置 換 キシレン ⇒ プロピレンオキシド、酢酸イソアミル
- 包埋 カーボワックス ⇒ エポキシ樹脂
答え:3
54 外胚葉から発生するのはどれか。2つ選べ。
- 気 管
- 結腸
- 脾 臓
- 中枢神経
- 副腎髄質
解説:内胚葉、中胚葉、外胚葉から発生するものをそれぞれまとめました。
★内胚葉
- 食道~大腸など消化器
- 肝臓、すい臓など
- 肺、気管、気管支
- 膀胱、尿路など
- 甲状腺、副甲状腺
★中胚葉
- 心臓
- 脾臓
- 腎臓
- 骨
- 筋肉
- 血管
- 精巣、卵巣など
★外胚葉
- 脳、脊髄など
- 目、耳、鼻、口腔、咽頭、舌、皮膚など
- 唾液腺、乳腺、汗腺など
- 副腎髄質
気 管 ⇒ 内胚葉
結腸 ⇒ 内胚葉
脾 臓 ⇒ 中胚葉
答え:4と5
55 細胞診検体のGiemsa染色で正しいのはどれか。
- 核が異染性を示す。
- 細胞質の角化が明瞭となる。
- 細胞質内顆粒が観察しやすい。
- 乾燥により細胞が小さく見える。
- クロマチン構造が観察しやすい。
解説:細胞診のギムザ染色についての設問ですが、パパニコロウ染色と対になるように出題されているようです。
核が異染性を示す。 ⇒ 基底膜物質、間質性粘液で異染性を示す(桃色~赤紫)
細胞質の角化が明瞭となる。 ⇒ パパニコロウ染色なら明瞭となる
細胞質内顆粒が観察しやすい。 ⇒ ギムザ染色なら観察しやすい(正しい)
乾燥により細胞が小さく見える。 ⇒ パパニコロウは小さく、ギムザは大きく見える
クロマチン構造が観察しやすい。 ⇒ パパニコロウ染色なら観察しやすい
細胞診ではないのですが、メイ・ギムザ染色で抹消血液像を見るわけですが、細胞質の顆粒は良好に染色を示します。
答え:3
56 パラフィン包埋に用いられる硬パラフィンの融点に最も近いのはどれか。
- 38 ℃
- 48 ℃
- 58 ℃
- 68 ℃
- 78 ℃
解説:パラフィンの温度の問題です。軟パラフィンと硬パラフィンの二つを覚えておきましょう。(特に硬パラ:一般的にこちらが使われているため)
★パラフィン温度
- 軟パラフィン:45~52℃
- 硬パラフィン:54~60℃
答え:3
57 病理解剖時に摘出された臓器の肉眼写真別冊No. 11 を別に示す。臓器はどれか。
- 心臓
- 膵 臓
- 肝 臓
- 脾 臓
- 腎臓
解説:写真の臓器を答えましょうという単純な問題。答えを言ってしまうと“脾臓”なのですが、特徴をまとめてみました。
形で悩むとしたら腎臓と脾臓どちらかな?といったところです。
★脾臓解剖学的特徴と役割
- 脾臓の解剖
⇒左上腹部、胃の外側から裏側に位置する。 通常10cm x 6cm x 3cm程の大きさで、重さは120グラム程度
⇒血液を大量に含んでおり、柔らかく暗赤色が特徴 - 脾臓の役割
⇒老化した赤血球を破壊し、除去すること(血球の濾過)
⇒血小板の貯蔵庫
⇒骨髄抑制作用、抗体産生作用、血流調節作用、門脈系循環など
⇒乳幼児期の血球産生
大きさ、暗赤色からして“脾臓”であることがわかります。
特徴も大切ですが、肉眼的に覚えておきましょう。
答え:4
58 ミトコンドリアが存在しないのはどれか。
- 好中球
- 赤血球
- 形質細胞
- リンパ球
- マクロファージ
解説:ミトコンドリアを持たないのは赤血球です。これも覚えてしまう方が楽です。
赤血球の特徴をまとめました。
★赤血球の特徴
- 大きさ6~8μmで中央に凹みあり(セントラルパーラー)
- 寿命120日
- 赤血球の1/3はヘモグロビンで、2/3は水分
- セントラルパーラーのおかげで、表面積が増え、ガス交換率に寄与している
また、変型能も高く、外圧などにも強い
(抹消血液像や、尿沈渣でも思うのですが、赤血球の形態は非常に多種多様) - 赤血球膜は脂質と蛋白質から構成される
- 寿命を迎えた赤血球は脾臓でマクロファージにより破壊され、ヘムとグロビンに分解される
- 成熟赤血球は“核とミトコンドリア”を失っており、酸素依存の好気的代謝ができない
そのため、ATP産生は嫌気的代謝(解糖系)に依存している
答え:2