過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
第68回臨床免疫学PM79~89
次の文を読み79、80の問いに答えよ。
38 歳の女性。発熱を主訴に来院した。間接蛍光抗体法による抗核抗体検査所見別冊No. 19 を別に示す。
79 この所見の染色パターンはどれか。
- 斑紋型
- 辺縁型
- 核小体型
- 細胞質型
- 散在斑紋型
解説:間接蛍光抗体法による核酸抗体検査の蛍光染色パターンから、核の辺縁が強く染色されています。
このパターンは『辺縁型』です。
答え:2
80 この所見を示す自己抗体はどれか。
- 抗DNA抗体
- 抗核小体抗体
- 抗ヒストン抗体
- 抗ミトコンドリア抗体
- 抗ENA 可溶性核抗原抗体
解説:抗核抗体検査における関連疾患と自己抗体を表にまとめています。
抗核抗体検査で染色パターンが辺縁型を示す自己抗体はDNA抗体
他の設問を見てみます。
- 抗核小体抗体は核小体型
- 抗ヒストン抗体は均質型
- 抗ミトコンドリア抗体は細胞質型
- 抗ENA抗体は斑紋型
答え:1
81 検査まで検体を全血のまま冷蔵保存してもよいのはどれか。
- 抗核抗体
- 寒冷凝集素測定
- クリオグロブリン
- 直接抗グロブリン試験
- Donath-Landsteiner 試験
解説:検体保存による影響です。実際にこういった検体検査をしていると当たり前の事になるのですが、検体を日頃扱わない人は、自信が持てない問題だと思います。
★検体全血冷蔵保存による影響
- 抗核抗体
⇒特になし - 寒冷凝集素測定
⇒寒冷凝集素が自己赤血球に結合する為、寒冷凝集素価が真値より低値を示す
(37℃で保存) - クリオグロブリン
⇒クリオグロブリンが白濁沈殿あるいはゲル化するため、偽陰性を示す
(37℃で保存) - 直接抗グロブリン試験
⇒寒冷凝集素や補体などが自己赤血球に結合することがあり、偽陽性となる - Donath-Landsteiner 試験(D-L)(ドナート ランドシュタイナー)
⇒自己抗体である抗D-L抗体を持つ場合、冷蔵による低温で自己赤血球に抗D-L抗体が結合することで偽陰性となる
答え:1
82 抗原抗体反応に関与しないのはどれか。
- 共有結合
- 水素結合
- 疎水結合
- イオン結合
- ファンデルワールス力
解説:抗原抗体反応は4つの結合が起きています。(基本的に全て高校化学でやっている内容です)
★抗原抗体反応における結合
- イオン結合
⇒正負の電荷を持つイオン間のクーロン力による化学結合 - 水素結合
⇒二つの電気陰性度の強い原子の間に水素原子が入ってできる結合 - ファンデルワールス力(分子間力)
⇒分子間にはたらく弱い引力 - 疎水結合
⇒タンパク質分子中の非極性側鎖が水中において水分子との接触を避けて互いに集合しようとする相互作用のことで、タンパク質の立体構造の形成に最も重要
★抗原抗体反応に影響する因子
- 温度
- 親和性
※共有結合
⇒原子間でお互いに電子を共有する強固な結合のこと。
答え:1
83 乳癌の腫瘍マーカーはどれか。
- CA15-3
- CA19-9
- CYFRA21-1
- NSE
- SCC
解説:腫瘍マーカーも頻出の問題です。ただし、腫瘍マーカーの数は非常に多く、過去問を解いて出題されているマーカーを覚えていくのが最も効率が良いと思います。
★腫瘍マーカー
- CA15-3
⇒糖鎖抗原(コア蛋白抗原)であり、乳がんの腫瘍マーカー - CA19-9
⇒糖鎖抗原(Ⅰ型基幹糖鎖抗原)であり、膵臓、胆嚢癌の腫瘍マーカー - CYFRA21-1
⇒蛋白抗原であり、肺癌(特に扁平上皮癌)のマーカー - NSE
⇒蛋白抗原で、神経芽細胞腫、褐色細胞腫、肺小細胞癌などのマーカー - SCC
⇒蛋白抗原であり、肺扁平上皮癌、食道癌、子宮頸癌などのマーカー
AFP、PSA、CEA、PIVKA-Ⅱなども頻出のマーカーです。(他にもたくさんありますが汗)
答え:1
84 直接抗グロブリン試験について正しいのはどれか。
- 患者の血清を使用する。
- 反応増強剤にPEGが使用される。
- 交差適合試験の主試験に必要である。
- 不規則抗体スクリーニングに必要である。
- 溶血性輸血副反応が生じた際に必要である。
解説:直接クームス試験についての問題ですが、そもそも直接クームスとはなにか。
★直接抗グロブリン試験(直接クームス試験)とは
患者赤血球が生体内において不完全抗体で既に感作されているのか、いないのかを調べる検査のことです
手法としては、抗ヒトグロブリン抗体を含むカラム(ゲル)に患者赤血球浮遊液を入れて遠心し、カラム(ゲル)内で凝集の有無を確認をします
※間接抗グロブリン試験(間接クームス)は、患者血清中に自己でない赤血球に対する抗体の存在を確認する検査です
上記を基本知識として設問を正していきましょう。
- 患者の血清を使用する。
⇒患者赤血球(浮遊液) - 反応増強剤にPEGが使用される。
⇒間接抗グロブリン試験の反応増強に使用する - 交差適合試験の主試験に必要である。
⇒間接抗グロブリン試験に必要 - 不規則抗体スクリーニングに必要である。
⇒間接抗グロブリン試験に必要 - 溶血性輸血副反応が生じた際に必要である。(正しい)
輸血の簡単な検査の流れを理解していると簡単に解けますが、経験がないうちは難しいと思います。
血液型同定⇒不規則性抗体スクリーニング⇒クロスマッチ試験が基本的な流れです。
(ここに直接クームスは入ってこないし、不規則性抗体のスクリーニング検査をするとLISSやPEGを用いることも当たり前のようにわかります)
答え:5
85 血液型検査の結果を以下に示す。血液型を確定するために必要な検査はどれか。
- 吸着解離試験
- 抗体同定試験
- 糖転移酵素測定
- D陰性確認試験
- 直接抗グロブリン試験
解説:血液型の判定です。Rhマイナス(断定はできない)をだしてくる辺りが国家試験のいやらしいところですね。普通によくある血液型を出せよ!と言いたいですね。
(Rhマイナスは1/200の確率で出現すると言われている)
表の抗A、抗Bがオモテ検査、A1赤血球、B赤血球がウラ検査、抗DとRhコントロールがRhD血液型検査です。
それぞれを見てみるとオモテ検査で抗Aおよび抗Bともに非凝集(0)、ウラ検査ではA1赤血球とB赤血球との反応が4+の凝集を認めO型と判定します。
一方、RhD血液型検査では、Rhコントロールと抗D試薬で、ともに非凝集(0)でありRhD陰性が考えられます。
しかし、この場合はすぐにD(-)とせずに、判定保留としたあとD陰性確認試験を行う必要があります。
D陰性確認試験で抗D試薬に反応があればweakD(Du)なければD(-)として結果を出します。
答え:4
86 胎児・新生児溶血性疾患の原因となる不規則抗体はどれか。2つ選べ。
- 抗Bga
- 抗c
- 抗E
- 抗Lea
- 抗N
解説:もはや覚える以外に手が無い系の問題です。実物が見れないものを覚えるほど難しいことはありません。(ここが免疫学や化学が苦手な人が多い理由だと思います。)
- 抗Bga抗体の赤血球抗体としての臨床的意義はほとんどない
- 抗D、抗C、抗c、抗E、抗eのRh系の抗体は、溶血性輸血副反応および新生児溶血性疾患の原因となる(日本人では抗Eが多く、抗Cがやや重症化しやすいとされる)
- 抗Lea抗体では、臍帯赤血球のLewis血液型はLe(a-b-)が多く、Lewis抗原が未発達。
母親が持つLewis抗体はIgM型の自然抗体であり、胎盤通過性がない場合も多いことから新生児溶血性疾患の原因になりにくい
※(臍帯赤血球ではLe(a-b-)⇒生後2~3年の間にLe(a+b-)に変化⇒さらに、Le(a+b+)を経てLe(a-b+)に変化していくこともある) - 抗N抗体は低温で反応するIgM型の自然抗体で、臨床的意義は低い
答え:2と3
87 貯血式自己血輸血について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 手術前日に貯血する。
- 待機手術患者が適応となる。
- 80 歳以上の高齢者は禁忌である。
- 体重50kg未満の患者は禁忌である。
- 肝炎ウイルス感染症のリスクを回避できる。
解説:自己輸血には3つあり、(術直前採血・血液希釈法(希釈法)、出血回収法(回収法)、貯血式自己血輸血(貯血法)のうち、最後の貯血法についての問うています。
- 貯血法は時間的余裕が必要で、緊急時には施行できない
(2週間ほど前から数回に分けて採血し、貯血する) - 予め手術予定の患者にのみ適応される
- 年齢、体重は関係なく施行できる
- 肝炎をはじめとしたウイルス感染症のリスクを回避できる(自己血なので)
ぱっと見で、血液の劣化を考え①を選択しそうですが、違いますのでしっかり把握しておきましょう。(僕のことです)
答え:2と5
88 A型患者の骨髄移植で、ドナー血液型と移植後週間の輸血用血液製剤の血液型との組合せで正しいのはどれか。
- ドナーO型 赤血球輸血はA型
- ドナーO型 血小板輸血はO型
- ドナーB型 新鮮凍結血漿輸血はO型
- ドナーB型 赤血球輸血はAB型
- ドナーB型 新鮮凍結血漿輸血はAB型
解説:骨髄移植についての問題。
「骨髄移植ではHLA型が優先されるため、患者のABO血液型と異なる型のドナーが選択される」ことがある。
この問題はA型患者への骨髄移植時のドナー血液型と移植後の輸血用製剤の血液型との組み合わせについて聞いています。この問題のポイントはおそらく一つ
A型患者へのB型ドナーの骨髄移植後、一定期間「A型とB型の血液型キメラ状態」になる為、新鮮凍結血漿の選択では抗Aと抗Bが存在しないAB型が選択される
このポイントに気付けると解くことができます。
残りの設問ケースも見ていきます。
- ドナーがO型の場合、赤血球輸血はO型、血小板輸血はA型を選択します。
- ドナーがB型の場合、新鮮凍結血漿はAB型を選択、赤血球はO型を選択します
答え:5
89 オモテ検査でB型、ウラ検査でO型と判定された。原因となるのはどれか。2つ選べ。
- 後天性B
- 寒冷凝集素
- 不規則抗体
- 無ガンマグロブリン血症
- 直接抗グロブリン試験陽性
解説:問題を見ると、オモテでBに凝集がありウラでA抗体、B抗体ともに存在するという結果が出ました。考えられるのは何ですか?ということです。
★この問題のポイント
オモテ試験でB(A)型であったが、ウラ試験ではO型の場合
- 寒冷凝集素
- 不規則性抗体
- 高γグロブリン血症
などが原因として考えられる
- 後天性Bは赤血球側の問題で、A型がAB型様に変化する
(通常、モノクローナル抗B試薬とは反応しない) - ウラ検査において寒冷凝集素あるいは不規則抗体によるウラ検査用試薬(B血球)との凝集が考えられる
- 無γグロブリン血症では、正常同種抗体(抗A、抗B)が産生されないため、血漿側の原因が考えられる(ウラ検査でAB型と判定される)
- ⑤直接抗グロブリン試験陽性の場合、患者赤血球に赤血球抗体などが結合していることによる赤血球側の原因が考えらる
オモテ検査用試薬(抗A、抗B)と凝集しやすくなる(非特異的凝集)
答え:2と3