過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
国家試験の過去問解説のまとめページです
第70回臨床生理学PM問16~28
16 標準12誘導心電図(別冊No. 3)を別に示す。考えられるのはどれか。
- 高K血症
- 高Ca血症
- 高Na血症
- 低K血症
- 低Ca血症
解説:心電図における電解質異常の鑑別問題です。問題の心電図では「V1~V4誘導でU波の出現、V5V6ではT波とU波の融合(TU波)も認め、さらにQT間隔の延長もみられる。ST低下のようにも見えるT波の平定化もあり、典型的な低カルシウム血症の心電図パターンです。
以下に代表的な電解質異常の心電図パターンを示しておきます。
★電解質異常の心電図
- 高K血症(血清カリウム>5.5mEq/L)
⇒QT間隔の短縮、T波増高(テント状T波)、伝導障害 - 低K血症(血清カリウム<3.5mEq/L)
⇒QT間隔の延長、T波平坦化・陰性化、ST低下、U波の増高 - 高Ca血症(血清カルシウム>10mg/dL)
⇒QT間隔の短縮、STの短縮 - 低Ca血症(血清カルシウム<8.5mg/dL)
⇒QT間隔の延長、STの延長
高Na血症は特徴的な心電図は特にない。(心電図に影響がでにくい)
答え:4
17 トレッドミル負荷試験で正しいのはどれか。
- 未治療の不安定狭心症は検査の適応である。
- 目標心拍数を性別、身長と体重から求める。
- 電極は安静12誘導心電図と同じ部位に付ける。
- 患者が下肢の疲労で運動の中止を希望したら中止する。
- 運動中止時、心電図記録を終了する。
解説:まず、トレッドミル負荷心電図検査における“禁忌”は絶対に覚えておきましょう。
命に関わることなので、必須な知識です。
★負荷心電図における禁忌事項
- 喘息
- 急性期心筋梗塞
- 不安定狭心症
- 重症大動脈弁狭窄
- 全身性低血圧
選択肢①を否定できたところで、他の選択肢も見ていきます。
- 目標心拍数を性別、身長と体重から求める。
⇒目標心拍数は220-年齢から算出する。 - 電極は安静12誘導心電図と同じ部位に付ける。
⇒ML誘導(四肢誘導を体幹に付ける)を用いる。 - 患者が下肢の疲労で運動の中止を希望したら中止する。
⇒中止基準に該当する(正しい) - 運動中止時、心電図記録を終了する。
⇒運動中止後も心電図と血圧を記録し、経過観察する
★ML誘導
四肢誘導(電極を手首足首ではなく体幹に装着)
- R 右鎖骨上
- L 左鎖骨下
- F 左前腸骨棘、あるいは左肋骨弓の下端部
- RF 右前腸骨棘、あるいは右肋骨弓の下端部
胸部誘導(12誘導と同じ)
- C1 第4肋間胸骨右縁
- C2 第4肋間胸骨左縁
- C3 C2とC4を結ぶ線上の中点
- C4 第5肋間と左鎖骨中央線の交点
- C5 左側前腋窩線上のC4と同じ高さ
- C6 左側中腋窩線上のC4と同じ高さ
★負荷の中止基準
- 中等度以上の胸痛の出現
- 息切れ、下肢疲労など
- 心拍数:年齢別予想最大心拍数の85%以上
- 心電図での虚血性変化
- 重篤な不整脈の出現
- 血圧の過度の上昇
まとめが多いですが、有用な分、危険な検査でもあるので、絶対に覚えておくべき内容です。
答え:4
18 健康成人の大気からミトコンドリアまでの酸素カスケード(別冊No. 4)を別に示す。肺胞気-動脈血酸素分圧較差はどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解説:酸素カスケードは、
大気(160mmHg)から、吸入気(150mmHg)、肺胞気(100mmHg)、
動脈血(95mmHg)、細胞内ミトコンドリア(約1mmHg)
の順に酸素分圧が階段状に低下していくことを表したもの。
一見複雑に見えますが、整理してみると案外わかりやすい問題でした。呼吸機能に関する問題は、マイナーな出題も多いので幅広く対応していきましょう。
答え:2
19 クロージングボリューム〈CV〉測定における単一呼出曲線で正しいのはどれか。
- 第Ⅰ相のN2濃度は約80%である。
- 第Ⅱ相は肺胞のみから呼出されるガスによる。
- 第Ⅲ相で認められる振動は計測用の管の共振によって発生する。
- 第Ⅳ相の傾きは第Ⅲ相の傾きよりも大きい。
- 第Ⅳ相はCV位から安静呼気位までに相当する。
解説:過去問にも出題されており、改変した説明図を用意しました。
★N2単一呼出曲線(換気不均等性)
・最大呼出→100%酸素最大吸気位→残気量位まで呼出
- Ⅰ相:死腔部分の純酸素(N2濃度が0%)
- Ⅱ相:死腔/肺胞気ガスの混合気
- Ⅲ相:肺胞気ガス(振動は心拍によって発生する)※左図を参照
- Ⅳ相:肺底部気道閉塞、傾きが上昇
- Ⅲ〜残気量(RV):CV(クロージングボリューム)
- CV+RV=CC(クロージングキャパシティ)
図が無いと「なんだこれは」となってしまう問題です。
生理機能検査は基本的には「画像やグラフ」がないと判断が難しいので、イメージをしつつ解いていくと楽です。
答え:4
20 二酸化炭素排出量が一定のとき動脈血二酸化炭素分圧と反比例の関係にあるのはどれか。
- 一回換気量
- 最大換気量
- 死腔換気量
- 肺胞換気量
- 分時換気量
解説:二酸化炭素の排泄量が一定量のとき、
「肺胞換気量と動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)」は「肺胞換気式より反比例の関係」
★肺胞換気式
- VA=0.863×VCO2/PaCO2
その他の選択肢を見てみると
- 最大換気量は1分間に行える最大の換気量であり,末梢気道や呼吸筋によって決まる
- 死腔換気量が増えると肺胞換気量の低下を引き起こしPaCO2は上昇する(比例関係)
一回換気量や分時換気量も二酸化炭素排泄量が一定であれば、反比例の関係にありそうであるが、この問題の意図は「肺胞換気式」の知識を問うているものだと考えるので、肺胞換気量が正解と考えます。
答え:4
21 筋萎縮性側索硬化症患者の萎縮が明らかな筋における針筋電図検査で認める所見はどれか。2つ選べ。
- 急速動員
- 陽性鋭波
- 完全干渉波形
- 線維束自発電位
- 短持続低振幅電位
解説:筋萎縮性側索硬化症(ALS)は一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患
★ALSの筋電図初見
- 進行性脱神経所見:線維束自発電位、陽性鋭波、線維自発電位
- 慢性脱神経所見:運動単位電位の減少・動員遅延、高振幅・長持続時間、多相性電位
その他の選択肢を見ると、
- 筋原性疾患では、「急速動員、短持続低振幅電位」が認められる
- 神経原性疾患では「完全干渉波形が得られなくなる」
答え:2と4
22 検査部位の皮膚温度が30℃と低い状態で検査を行う場合、神経伝導検査への影響で正しいのはどれか。
- 刺激閾値が低下
- 伝導速度が低下
- 記録波形が多相化
- 記録波形の振幅が低下
- 記録波形の持続時間が短縮
解説:神経伝導検査と皮膚温度(低値)について、選択肢を含めてまとめます。
★皮膚温度が低い時の神経伝導検査の特徴
- 神経伝導速度は低下する
- 記録波形の振幅は大きくなる
- 記録波形の持続時間が延長する
※検査中の皮膚温は32℃以上に保つようにする
刺激閾値が低下や記録波形が多相化は認められない。
答え:2
23 脳波の記録法で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 電極配置は国際10-20法を基本とする。
- 基準電極導出法は耳朶電極を基準とする。
- 過呼吸賦活は1分間に40~45回で施行する。
- 電極と頭皮との接触抵抗は記録に影響しない。
- 時定数を上げると低周波ノイズが低減される。
解説:脳波の記録法について選択肢を正しく直し、まとめました。
- 電極配置は国際10-20法が用いられる
- 基準電極導出法の基準電極は耳朶が用いられる
- 過呼吸賦活は閉眼状態で、1分間に20~25回で3分以上継続施行する
- 電極と頭皮との接触抵抗は電極間でばらつきがあるとノイズが混入するため、10kΩ以下にする
- 時定数を下げることで低域遮断周波数が上がるため、低周波ノイズが軽減される
※低域遮断周波数=1/(2×π×時定数)
答え:1と2
24 62歳女性。慢性肝疾患のため通院中である。意識障害が出現し記録した脳波(別冊No. 5)を別に示す。所見はどれか。
- 三相波
- 徐波群発
- 棘徐波複合
- 周期性同期性放電
- ヒプスアリスミア
解説:設問にある「慢性肝疾患」「意識障害」というワードから、「肝性脳症」になったのではいかと、まず疑うことができる。
そして、脳波を見てみると「前頭部優位に大きな陽性の波形の前後に小さな陰性波形を認め、肝性昏睡などの意識障害時に現れる三相波を呈している」
※三相波:陰性-陽性-陰性
脳波電極の位置は下図を参考にしてください。
その他の選択肢の脳波所見は以下の通り
- 徐波群発
⇒背景活動と明らかに区別される高振幅の徐波が律動的に出現したもの
周波数により δ(デルタ)-burst、θ(シータ)-burstという - 棘徐波複合
⇒棘波と徐波が結合し連続する - 周期性同期性放電
⇒1Hz前後の周期で、1~3相性の鋭波が全般性に見られる
クロイツフェルト・ヤコブ病で出現しやすい - ヒプスアリスミア
⇒高振幅のδ波やθ波が全般性、持続性に出現する
さらに多焦点性の棘波、鋭波が群発する特異な脳波パターンとなる
点頭てんかん(WEST症候群)の時に出現する
答え:1
25 心尖部長軸像のカラードプラ像(別冊No. 6)を別に示す。最も考えられるのはどれか。
- 僧帽弁狭窄症
- 大動脈弁狭窄症
- 心室中隔欠損症
- 僧帽弁閉鎖不全症
- 大動脈弁閉鎖不全症
解説:心尖部長軸像の心エコー図を見ると、左房から左室に向かう赤い血流シグナルと、大動脈弁から左室に向かう逆流性のモザイク血流シグナルが観察される。
この時点で「大動脈弁閉鎖不全症」が最も疑うことができる。
エコー図から心臓の解剖(心房、心室、弁)とドプラによる逆流が読めれば解くことは容易です。
答え:5
26 右側腹部超音波像(別冊No. 7)を別に示す。最も考えられるのはどれか。
- 水腎症
- 腎結石
- 腎囊胞
- 尿管結石
- 腎細胞癌
解説:エコー写真を見ると、腎臓が描出されています。選択肢は、腎臓にまつわる所見がずらっと並んでいます。
右側腹部縦断走査にて右腎臓(長軸像)を観察したもので、中心部エコー内に音響陰影を伴う高輝度エコーが認められる。これは腎結石に特徴的な所見です。
- 尿管結石があると、尿管や腎盂の拡張を認め、水腎症となることもある。
- 腎囊胞の場合は、内部が無エコー、後方エコーの増強、境界明瞭の所見が観察できる。
- 腎細胞癌の腎内充実性腫瘤像は認めない。
答え:2
27 乳房の超音波像(別冊No. 8)を別に示す。正しいのはどれか。2つ選べ。
- 形状不整
- 境界不明瞭
- 内部無エコー
- 縦横比1.0以上
- 後方エコーの増強
解説:乳腺エコーの写真であるが、選択肢を見ると特に悩むところはなさそう。
- 形状は整
- 境界明瞭
- 内部無エコー
- 後方エコーの増強
- 横径が縦径より大きく縦横比は1.0以下
※縦横比は「腫瘤の低エコー部分の最大縦径÷横径」で、0.7を基準とし悪性で高くなる
答え:3と5
28 MRI検査で誤っているのはどれか。
- T2強調画像では水は高信号に描出される。
- T1強調画像では脂肪は高信号に描出される。
- MRアンジオグラフィ〈MRA〉には造影剤を要する。
- 拡散強調画像では超急性期脳梗塞巣の描出が可能である。
- T2*強調画像はT2強調画像より出血・石灰化の検出に鋭敏である。
解説:MRIの基礎的な問題です。誤っている箇所を正しく直します。
- T1強調画像は水は黒く、脂肪や粘度の高い物質白く高信号を示す
- T2強調画像では水や脂肪は白く高信号を示す
- MRAは非造影の撮像が基本であり、撮像法によっては造影剤を用いる
※MRA(磁気共鳴血管撮影法)
- 拡散強調画像では超急性期脳梗塞や腫瘍で高信号を示す
※前立腺癌で必須の検査 - T2*強調画像はT2強調画像に比べ、出血や石灰化の病変検出に優れる
ヘモジデリンによる磁場の不均一性を描出し、周囲実質よりも低信号になる。
答え:3
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