過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
国家試験の過去問解説のまとめページです
第67回臨床検査総論1~10
1 検査や投薬の種類・量に関わらず、病気の種類と入院日数に応じて医療費が決められる診療報酬計算の方式を指す用語はどれか。
- APACHE(acute physiology and chronic health evaluation)
- DPC(diagnosis procedure combination)
- GCP(good clinical practice)
- SOP(standard operation procedure)
- TQC(total quality control)
解説:それぞれの用語を見てみます。
- APACHE(acute physiology and chronic health evaluation)
⇒集中治療室入室患者(ICU)における病態の重症度を、客観的に評価するために作られた予後予測法 - DPC(diagnosis procedure combination)
⇒診断群分類別包括評価のことで、病名や診療内容に応じて定められた1日当たりの定額の点数で入院診療費を計算する方法 - GCP(good clinical practice)
⇒医薬品の臨床試験実施の際に、企業や医療機関が守るべき基準をまとめた省令 - SOP(standard operation procedure)
⇒標準作業手順書のこと - TQC(total quality control)
⇒質の高い医療を提供すること
答え:2
2 尿試験紙法による検査でビタミンC内服の影響が小さいのはどれか。
- 糖
- 潜 血
- 蛋 白
- 亜硝酸塩
- ビリルビン
解説:尿試験紙検査におけるビタミンCの影響を受けて「偽陰性」となる項目は
「糖、潜血、ビリルビン、亜硝酸塩」です。
ビタミンC内服薬の患者尿には注意する必要があります。臨床所見と合わせて判断が必要。
★尿試験紙法でアスコルビン酸(ビタミンC)が及ぼす影響
- 糖
- 潜血
- ビリルビン
- 亜硝酸塩
においては、酸化還元反応を用いており、強い還元力を持つビタミンC(アスコルビン酸)によって偽陰性を引き起こす可能性がある。
答え:3
3 尿沈渣中の白血球と上皮細胞との鑑別に用いるのはどれか。
- Berlin blue 染色
- Prescott-Brodie 染色
- Samson 染色
- May-Giemsa 染色
- Sudan Ⅲ染色
解説:各種染色法について、何を染めるものなのかをまとめます。
- Berlin blue 染色(ベルリン・ブルー)
⇒ヘモジデリン顆粒の証明に用いられます。 - Prescott-Brodie 染色(プレスコット・ブロディー)
⇒ペルオキシダーゼ反応陽性である白血球が染まるので、上皮細胞との鑑別にも有効とされる。 - Samson 染色(サムソン)
⇒髄液細胞の染色(細胞数算定)に用いられる。核を赤く染め、赤血球は溶血する。 - May-Giemsa 染色(メイ・ギムザ)
⇒血液像に用いられます。核が大きく染まるので、細胞形態の観察に適しています。 - Sudan Ⅲ染色(ズダンⅢ)
⇒脂肪成分の証明に用いられます。
答え:2
4 糞便の特徴と疾患の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- 黒色便 下部消化管出血
- 灰白色便 閉塞性黄疸
- 白色下痢便 アメーバ赤痢
- 米のとぎ汁様便 コレラ
- イチゴゼリー状粘血便 細菌性赤痢
解説:便の特徴と疾患のまとめです。
★便の特徴
- 黒色便 ⇒ 上部消化管出血(胃・十二指腸)、鉄剤投与
- 鮮紅色便 ⇒ 下部消化管出血
- 灰白色便 ⇒ 閉塞性黄疸
⇒通常ウロビリンやステルコビリンにより便は黄褐色を示すが、閉塞によりこれらが排泄されなくなるため、灰白色を呈することがある。 - 白色下痢便 ⇒ ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウムなどの服薬時
- 米のとぎ汁様便 ⇒ ロタウイルス
- イチゴゼリー状粘血便 ⇒ アメーバ性赤痢
- 粘血便 ⇒ 細菌性赤痢
- 脂肪便 ⇒ 膵炎
答え2と4
5 最もサイズが小さいのはどれか。
- 鉤虫卵
- 鞭虫卵
- 横川吸虫卵
- 日本住血吸虫卵
- Westerman 肺吸虫卵
解説:虫卵の大きさの問題です。「最もサイズの大きいもの、最もサイズの小さいもの」をよく聞いてくる傾向があるように思います。
★虫卵大きさ
- 吸虫卵
横川吸虫=肝吸虫(27~35μm)<日本住血吸虫<ウェステルマン肺吸虫(80~90μm)<マンソン住血吸虫(140μm)≦ビルハルツ住血吸虫(140μm)≦<肝蛭(145μm) - 条虫卵
有鉤条虫・無鉤条虫(30~40μm)<小形条虫(44~52μm)<マンソン条虫(55~65μm)<縮小条虫(60~75μm)≦日本海裂頭条虫(65~75μm) - 線虫卵
鞭虫(50μm)=蟯虫(60μm)≦鉤虫(60μm)≦回虫(受精卵60~70μm)<回虫(不受精卵90μm)
最小の虫卵は「肝吸虫、横川吸虫」であり、最大の虫卵は「肝蛭(かんてつ)」なので覚えておきましょう。
答え:3
6 成人男性がアフリカから帰国後に発熱した。末血厚層塗抹のGiemsa染色標本別冊No. 1 を別に示す。この感染症について正しいのはどれか。
- 自然治癒する。
- 治療薬はない。
- ツェツェバエが媒介する。
- 感染初期に肝臓で増殖する。
- 細胞内寄生細菌感染症である。
解説:設問には「アフリカから帰国」とあり、輸入感染系の出題であることが予想できる。
矢印には、赤血球内に輪状態の構造物が観察できるため、「マラリア原虫」感染が鑑別にあがります。
これを前提に、選択肢を見ていきます
- 自然治癒はしません。
- 治療薬は抗マラリア薬があります。
- ハマダラカが媒介する。
⇒ツェツェバエはアフリカ睡眠病「トリパノソーマ」を媒介する。 - 感染したマラリア原虫は、肝細胞内で増殖します。
- 細胞内感染症であるが、細菌ではない。
答え:4
7 採血中に患者の顔面が蒼白になり、気分不快を訴えた。この採血合併症について誤っているのはどれか。
- 徐脈になる。
- 高齢者に多い。
- 血圧が低下する。
- 緊張が誘因となる。
- 直ちに採血を中止する。
解説:設問のように、採血時に気分不快となる場合は「血管迷走神経反射」の疑いを持って、対処する必要があります。
★血管迷走神経反射
- 直ちに採血を中止する(最重要)
- 徐脈
- 若年女性に多い
- 血圧低下
- 痛みや強い緊張が誘因となる
- 顔面蒼白
- 意識消失
高齢者に多いという特徴はありません。
答え:2
8 空気感染予防策を必要とするのはどれか。2つ選べ。
- 結核
- 水痘
- 風疹
- 百日咳
- 流行性耳下腺炎
解説:空気感染と飛沫感染の違いを明確にしましょう。また、空気感染は3種の感染を覚えるのみなので、確実に知っておきましょう。
- 空気感染とは空気中を浮遊している微細な「飛沫核」を吸い込むことで起こる感染
- 感染飛沫感染とは会話、咳、くしゃみなどで放出される、「病原体を含んだ飛沫」を吸い込むことで起こる感染
★空気感染を起こすもの(3種)
- 結核
- 麻疹
- 水痘
風疹、百日咳、流行性耳下腺炎は飛沫感染です。
答え:1と2
9 ピンク色泡沫状で漿液性の喀痰が得られた。考えられる疾患はどれか。
- 肺癌
- 肺梗塞
- 肺水腫
- 気管支炎
- 気管支拡張症
解説:喀痰の性状と疾患についての問題です。選択肢の疾患で特異的に見られる喀痰がありますので、基本的にはそれを押さえておけばOKと思います。
★ピンク色の泡沫状の喀痰が喀出される疾患
肺水腫では、肺毛細血管から「赤血球を含む水分」が血管外に漏出し、異常に貯留している状態となり「ピンク色の泡沫状喀痰」が喀出される。
その他選択肢を見てみると、
- 肺癌、肺梗塞、気管支拡張症では肺や気管支からの出血により血性の喀痰となる。
- 気管支炎や気管支喘息では粘液性の喀痰となる。
上記のようになります。
答え:3
10 黄色のバイオハザードマークが貼付されている容器に廃棄するのはどれか。
- 開封した注射針
- 血液が入った採血管
- 痰が入った採取容器
- 血液が付着したガーゼ
- 採血時に用いた酒精綿
解説:バイオハザードマークには「赤色、オレンジ色、黄色」の3色があります。
それぞれに対応した廃棄物を入れる決まりがあるので、覚えておきましょう。
★バイオハザードマーク
- 赤色
⇒液状、または泥状のもの - オレンジ色
⇒固形状のもの - 黄色
⇒鋭利なもの
上記の分類をもとに、選択肢をみてみます。
- 開封した注射針 ⇒ 黄色
- 血液が入った採血管 ⇒ 赤色
- 痰が入った採取容器 ⇒ 赤色
- 血液が付着したガーゼ ⇒ オレンジ色
- 採血時に用いた酒精綿 ⇒ オレンジ色
答え:1
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