過去問は厚労省ホームページより引用しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_150873_139_140.html
第67回AM
AM問題29:血糖コントロールの指標について正しいのはどれか。
- HbA1c は溶血性疾患で低値になる。
- HbA1c は過去約2週間の平均血糖値を反映する。
- グリコアルブミンは過去約2か月の平均血糖値を反映する。
- 1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)は腎性糖尿で高値になる。
- 1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)は過去約3か月の平均血糖値を反映する。
答えと解説
答え1
- HbA1C(HPLC法)は溶血性貧血やヘモグロビン異常症で偽低値を示す
- HbA1Cは過去1~2か月の平均血糖値を反映する(基準値NGSP:4.7~6.2%)
- グリコアルブミン(GA)は過去1~2週間の平均血糖を反映する
- 1,5-AGは腎尿細管における再吸収でグルコースと競合するため、糖尿病(高血糖状態)で低値化する。
- 1,5-AGは過去数日の血糖値を反映する。
AM問題30:乳酸について誤っているのはどれか。
- 肝硬変で減少する。
- 筋肉で産生される。
- 低酸素血症で増加する。
- 血中では陰イオンとして存在する。
- 乳酸アシドーシスではアニオンギャップが増加する。
答えと解説
答え1
- 乳酸はそのほとんどが肝臓で代謝される物質なので、肝硬変で肝機能が失われると、代謝されずに乳酸濃度は増加する
- 乳酸は筋肉で生成される。しかし、筋肉にはグルコース-6-ホスファターゼがないため、肝臓に輸送される。
- 低酸素血症(嫌気的条件下)では乳酸は増加する。
- 血中では陰イオンとして存在する
- 乳酸アシドーシスでは、アニオンギャップが増加する
アニオンギャップ(AG)は血ガス分析の陽イオン-陰イオン{(Na+-(Cl–+HCO3–)}が12±mEq/L以上で増加となる。乳酸は陰イオンとして存在するため、(Cl–+HCO3–)に+αされると考えれば、AGは増加することがわかる。(乳酸アシドーシスの場合、乳酸値は基準値の4~14mg/dLを大きく超える) - AG増加の要因(乳酸アシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシス、慢性腎不全など)
AM問題31:ケトン体はどれか。2つ選べ。
- 胆汁酸
- アセトン
- ピルビン酸
- アラキドン酸
- 3-ヒドロキシ酪酸
答えと解説
答え2と5
ケトン体分画という検査項目を知っていると即答できます。ケトン体は3つの分画に分けることができる。
- アセトン
- アセト酢酸
- 3-ヒドロキシ酪酸
なお、アセトンは血中にほぼ存在しない。
AM問題32:ビタミン欠乏症と疾患の組合せで誤っているのはどれか。
- ビタミン A 夜盲症
- ビタミン B1 Wernicke 脳症
- ビタミン C 壊血病
- ビタミン D くる病
- ビタミン K 脚 気
答えと解説
答え5
問題のビタミン欠乏と疾患の組み合わせです。
- ビタミンA:夜盲症
- ビタミンB1:脚気、多発性神経炎
- ビタミンC:壊血病
- ビタミンD:くる病、骨軟化症
- ビタミンK:血液凝固障害、新生児メレナ
AM問題33:ヘキソキナーゼが作用する糖はどれか。2つ選べ。
- リボース
- リブロース
- ガラクトース
- キシルロース
- フルクトース
答えと解説
答え3と5
ヘキソキナーゼは(ヘキソはヘキサゴン(6角形)から連想できる)六炭糖に作用します。問題文の中で六炭糖はどれかを選ぶと、答えが導けます。
- リボース:5炭糖
- リブロース:5炭糖
- ガラクトース:6炭糖
- キシルトース:5炭糖
- フルクトース:6炭糖
AM問題34:糖代謝について正しいのはどれか。2つ選べ。
- ソマトスタチンはインスリン分泌を促進する。
- インスリン抵抗性はインスリン分泌が低下した状態である。
- C-ペプチドとインスリンは1:2の分子数比で放出される。
- 糖新生系はピルビン酸からグルコースを新生する代謝系である。
- ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)はインクレチンを分解する。
答えと解説
答え4と5
- ソマトスタチンは、インスリン分泌を抑制する
- インスリン抵抗性はインスリンの感受性が低下したことを指し、分泌は関係ない
- C-ペプチドとインスリンは1:1で放出される
- 糖新生はピルビン酸からGluを生成する代謝系のこと
- インクレチンはインスリン分泌を促進するホルモンであり、この抑制酵素がDPP-4です。インクレチンを分解するので抑制となります。
AM問題35:無機質と結合蛋白質の組合せで正しいのはどれか。
- 鉄 トランスサイレチン
- 銅 α2 -マクログロブリン
- 亜鉛 セルロプラスミン
- カルシウム フェリチン
- マグネシウム アルブミン
答えと解説
答え5
無機質と結合蛋白質の組み合わせをまとめてみました
- 鉄 トランスフェリン
- 銅 セルロプラスミン
- 亜鉛 アルブミン(70%)やα2マクログロブリン(2~30%)
- Ca アルブミン
- Mg アルブミン
※Caについて:血液検査でアルブミンが4.0mg/dL未満の時、Caが偽低値となるため、補正Caとして報告する。Caはアルブミンと多くが結合しているため影響を受ける。
補正Ca=実測Ca+(4-Alb)
AM問題36:生体内で炎症時に減少する蛋白質成分はどれか。
- α1 -アンチトリプシン
- α1 -酸性糖蛋白
- ハプトグロビン
- トランスフェリン
- フィブリノゲン
答えと解説
答え4
炎症時に増加する蛋白質と低下する蛋白質を覚えておきましょう。
- トランスフェリン
- アルブミン
- トランスサイレチン
- CRP(最も臨床で使われる)
- フィブリノゲン
- ハプトグロビン
- α1-アンチトリプシン
- α1-酸性糖蛋白質
※CRPは血中半減期が短いため、炎症が起こると素早く増加し、炎症が収まると素早く低下するため、炎症マーカーとして最もよく使われる。
AM問題37:ビリルビンの極大吸収波長(nm)はどれか。
- 260
- 340
- 450
- 540
- 570
答えと解説
答え3
ビリルビン検査法の一つ、酵素法におけるビリルビンの極大吸収は450nm。
ビリルビンは下記のようにビリルビンオキシダーゼによって酸化されビリベルジンとなりますが、450nmの測光で吸光度の減少を測定する。
- 総BIL+1/2O2 → ビリベルジン+H2O(ビリルビンオキシダーゼ、pH7.2~8.5)
- 直接BIL+1/2O2 → ビリベルジン+H2O(ビリルビンオキシダーゼ、pH3.1~3.7)
※マロイ・エベリン法(ジアゾ試薬)では赤紫色のアゾビリルビン色素を540nmで測光する。
AM問題38:細胞内液に含まれるイオン[mEq/L]で最も多いのはどれか。
- Cl–
- HCO3–
- HPO42–
- Mg2+
- Na+
答えと解説
答え3
細胞内液と細胞外液に含まれるイオンの問題です。
- K+
- HPO42-
- Mg2+
※K+とHPO42-でほとんどを占めています。次いでMg2+が多いです。
- Na+
- Cl–
- HCO3-
Na+、Cl–が多いです。次いでHCO3-が多いです。
- Na+-K+ポンプにより、細胞外にNaは運ばれ、細胞内にKは取り込まれる。
AM問題39:リポ蛋白の表面部に存在しているのはどれか。2つ選べ。
- レシチン
- 遊離脂肪酸
- トリグリセライド
- 遊離型コレステロール
- エステル型コレステロール
答えと解説
答え1と4
リポ蛋白は、中性脂肪、エステル型コレステロール、遊離コレステロール、リン脂質、アポ蛋白からなる蛋白質です。
リポ蛋白はよく球体に例えられます。構造を知っていれば解くことができます。
- 内部には中性脂肪、エステル型コレステロール
- 表面には、アポ蛋白、遊離コレステロール、リン脂質(レシチン:ホスファチジルコリン)
AM問題40:中間比重リポ蛋白(IDL)の比重について正しいのはどれか。
- HDL3 と HDL2 の中間
- HDL2 と LDL の中間
- LDL と VLDL の中間
- VLDL と CM の中間
- CM と CM レムナントの中間
答えと解説
答え3
リポ蛋白の比重の問題ですね。まず、リポ蛋白の種類を挙げてみましょう。
- カイロミクロン
- VLDL(超低比重)
- IDL(中間比重)
- LDL(低比重)
- HDL(高比重)
そして、それらの比重や大きさなどを一覧にします。
IDLは中間比重リポ蛋白なので、LDL(低比重)より比重が大きそうですが実はそんなことはありません。ルーチン検査でLDL、HDLはよく測られます。それらは高比重と覚えて、それ以外三つは別に覚えるといいかもしれません。(僕はそうしました)
AM問題41:核酸を含まない細胞内小器官はどれか。
- 核小体
- 粗面小胞体
- リボソーム
- ミトコンドリア
- ゴルジ(Golgi)装置
答えと解説
答え5
核酸には、細胞をつくり出す情報をもつDNAと、情報をもとに細胞の材料となるたんぱく質を合成するRNAがある
- 核小体:遺伝物質の保管や、複製(DNA)、伝達(RNA)の機能を持つ
- 粗面小胞体:リボソームが結合した小胞体のことで、DNA情報に基づき、タンパク質合成が行われる
- リボソーム:粗面小胞体参照
- ミトコンドリア:独自のミトコンドリアDNA(mDNA)を持つ
- ゴルジ装置:粗面小胞体で生合成された蛋白質に糖鎖などの修飾を行う場所で、DNAやRNAはない。
AM問題42:逸脱酵素でないのはどれか。
- CK
- LD
- ALT
- AST
- ChE
答えと解説
答え5
逸脱酵素とは、酵素をもつ臓器の細胞がなんらかの障害を受けたときに、組織が壊れて血液中に逸脱する酵素のことをいう。血液検査のスクリーニングとしてよく用いられる。
逸脱酵素の一覧です
- AST
- ALT
- LDH
- ALP
- γ-GTP
- CK
- アミラーゼ
- リパーゼなど
ChEは、肝細胞で合成、分泌をされている酵素なので逸脱酵素ではない。加水分解酵素。
AM問題43:ビタミン D の 25 位を水酸化する臓器はどれか。
- 肺
- 肝 臓
- 胸 腺
- 腎 臓
- 副甲状腺
答えと解説
答え2
25-OHVD(25-ヒドロキシビタミンD)の問題です。この検査項目は骨粗鬆症の診断目的で使われます。マニアックな問題だと思います。
- ビタミンDは体内に入ると、肝臓で代謝されて25-OHビタミンDとなる。
問題文はこの代謝の事を聞いていますので、答えは肝臓になります。
AM問題44:カルシウムイオン 50 mg/dL は何 mEq/L か。ただし、カルシウム原子量は 40 とする。
- 0.25
- 1.25
- 2.50
- 12.5
- 25.0
答えと解説
答え5
mEq/Lに直す計算問題です。
mEq/L=mol/L×価数
この式を使って解きます。
Ca原子量=40なので、50/40=1.25
つまり1.25mol/dL
dLをLに直すので、10倍し12.5(dは10-1)
12.5mol/L
CaはCa2+ですね。つまり価数は2です。
すなわち、12.5×2=25.0
25.0mEq/Lが答えとなります。
dLの計算を忘れがちなので注意しましょう。