精度管理と検査の標準化 PR

【国試対策】精度管理を得点源に!X-R管理図の読み方から学ぶ頻出7問の解き方

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さい
さい
こんにちは、SAI-LABOのさいです!
今回は、国試で毎年必ずと言っていいほど出題される超重要分野「精度管理と検査の標準化」を解説していきます。

📝 引用元について
この記事で解説している国家試験の問題文は、厚生労働省のウェブサイトで公開されているものを、学習目的で引用しています。(医療分野トピックス一覧に、過去問はあります)

ラボくん
ラボくん
精度管理って、なんだか数字とグラフばっかりで難しそう…。覚えることも多いし、苦手意識があります。
さい
さい
その気持ち、すごく分かります。僕も学生の時はそうでした。
でも、精度管理は「僕たち臨床検査技師が出すデータの信頼性を保証する最後の砦」なんです。転職活動の面接でも、精度管理の知識は必ずと言っていいほど問われました。
この記事を読めば、ただの暗記じゃなくて「なぜそれが必要なのか」という本質が分かるはず。一緒に得意分野に変えていきましょう!

内部精度管理の基本:2つのアプローチ

内部精度管理とは、自分の検査室の中で「日々の検査がちゃんと安定して行われているか?」をチェックすることです。このチェック方法には、大きく分けて2つのアプローチがあります。国試では、この違いを問う問題が頻出です。

2つのアプローチとは?

管理試料(コントロール)を用いる方法
→ 濃度が分かっている特別なサンプルを測って、測定系(試薬や装置)の安定性をチェックする。

患者データを用いる方法
→ 実際に測定した患者さんのデータを使って、おかしな変動がないかをチェックする。

さい
さい
たくさんの管理手法があって混乱しますよね。
それぞれの管理手法の特徴をまとめた「SAI-LABOオリジナル早見表」を作ってみました。これを眺めながら問題を見ると、知識がスッキリ整理できるはずです👍

【完全版】主な内部精度管理手法 早見表

分類 方法 何がわかる? (管理指標) 得意なこと (有用性) 苦手なこと (限界)
管理試料 Xbar-R管理図法 Xbar: 正確さ(偏り)
R: 精密さ(日内変動)
基本的なシフト・トレンドを検出できる 日差変動が大きいと管理しにくい
Xbar-Rs-R管理図法 Xbar: 正確さ(偏り)
Rs: 精密さ(日差変動)
R: 精密さ(日内変動)
日差変動の大きい検査にも対応可能 分析途中での管理は困難
マルチ・ルール管理法 偶発誤差(1₃s, R₄s)
系統誤差(2₂s, 4₁s, 10ₓ)
誤差検出感度が高く、リアルタイム管理に向く 平均値を含むトレンドは検出しにくい
双値法 (Youden plot) 2濃度の試料プロットによる正確さ・精密さ 誤差要因の解析がリアルタイムに可能 経時的な評価(日々の変化)が困難
累積和法 (Cusum) 平均値からのズレの累積による正確さ(偏り) 測定系のわずかな変化(シフト・ドリフト)の検出に強い 精密さ(バラツキ)の評価は困難
Cm法 不確かさ(Cm) バラツキを含む正確さを検証できる 標準物質がある項目にしか使えない
患者試料 クロスチェック法
(2回測定法など)
日内・日差・機器間の精密さ(バラツキ) 実稼働状態での精密さがわかる コストがかかり、正確さは評価できない
正常者平均法 患者平均値による正確さ(偏り) 長期間のトレンドやシフトの検出 患者構成の変動に影響されやすい
潜在基準値平均法 特定条件の患者平均値による正確さ(偏り) 患者構成の変動を受けにくい 多項目を同時に測定する必要がある

この分類を頭に入れた上で、早速問題を見てみましょう。

【第68回 午後 問1 / 第71回 午前 問10】管理試料 vs 患者データ

内部精度管理法で管理血清を用いるのはどれか。2つ選べ。(第68回)

  • 1.R/X管理法
  • 2.X-R管理図法
  • 3.項目間チェック法
  • 4.デルタチェック法
  • 5.マルチルール管理図法

内部精度管理法で患者データを用いるのはどれか。2つ選べ。(第71回)

  • 1.X-R管理図法
  • 2.累積和管理図法
  • 3.項目間チェック法
  • 4.デルタチェック法
  • 5.マルチルール管理図法
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【上問】正解:2, 5
【下問】正解:3, 4

さい
さい
まさに、さっきの早見表を見れば一目瞭然です!
それぞれの管理法がどちらに分類されるのか、改めて整理しましょう。

管理試料(コントロール)を用いる方法

これらは、測定システムそのもの(試薬、装置、操作)が安定しているかを評価する手法です。

  • X-R管理図法
  • マルチルール管理図法
  • 累積和管理図法(CUSUM法)

患者データを用いる方法

これらは、採血時の取り違えや検体の変化など、個々の患者さんに関するエラーを検出するのに役立ちます。

  • 項目間チェック法(相関チェック):通常、相関があるはずの検査項目(例:総蛋白とアルブミン)の値が、大きくズレていないかを確認します。「TPが7.0なのにALBが5.5はおかしいぞ?」といった具合です。
  • デルタチェック法:同じ患者さんの前回値と今回値を比較し、生理的にあり得ないほどの大きな変動がないかを確認します。「昨日血糖値が100だった人が、今日いきなり500になるのはおかしいぞ?」といった感じです。

【R/X管理法とは?】
これは少しマニアックな手法で、日々の管理試料の測定値(X)を、その日の患者データの平均値(Xbar)で割ってプロットする方法です。患者データと管理試料の両方を使う、少し特殊な方法と覚えておきましょう。

X-R管理図の読み解きと異常の原因推定

内部精度管理の王道、X-R管理図。このグラフが読めることは、技師の必須スキルです。国試では、グラフの異常から「何が起こったのか?」を推測する問題が出題されます。

【第67回 午後 問10 / 第70回 午前 問3】精度管理の用語とX-R管理図の基本

x-R管理図法で管理するのはどれか。2つ選べ。(第67回)

  • 1.施設間差
  • 2.標準液の劣化
  • 3.検体採取の過誤
  • 4.分析機器の異常
  • 5.パニック値の検出

精度管理法で正しいのはどれか。(第70回)

  • 1.精密さは真の値からの偏りの程度をいう。
  • 2.マルチルール管理図法は患者検体を用いる。
  • 3.2シグマ法での管理では統計学的に10回に1回は外れ値が出現する。
  • 4.管理試料の測定値が3点連続して上昇傾向を示した場合をシフト現象という。
  • 5.X-R管理図法のRは日内の管理試料の測定値の最大値と最小値の差である。

 

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【上問】正解:2, 4
【下問】正解:5

X-R管理図は何を監視している?

X-R管理図は、管理試料を用いて測定システム(試薬や装置)の安定性を監視するものです。したがって、【上問】の正解は、測定システムに影響を与える「2.標準液の劣化」や「4.分析機器の異常」となります。

  • 1.施設間差:これは外部精度管理(サーベイ)で評価するものです。
  • 3.検体採取の過誤 / 5.パニック値の検出:これらは患者データを用いるデルタチェックなどで検出します。

精度管理の基本用語

【下問】は、精度管理の基本的な用語の理解を問う問題です。

  • 1.精密さ vs 正確度:「精密さ」は測定値のバラツキの小ささ(再現性)、「正確度」は真の値との近さを指します。選択肢は正確度の説明なので×です。
  • 2.マルチルール:管理試料を用いるので×です。
  • 3.2シグマ法:2SD(標準偏差)を超える確率は約5%(20回に1回)です。10回に1回(10%)ではありません。×です。
  • 4.シフト vs トレンド:連続していくつかの点が平均値の片側に偏るのがシフト、連続して上昇または下降するのがトレンドです。選択肢はトレンドの説明なので×です。
  • 5.R(Range)の定義:これが正解です。Rは、同じ日に管理試料を複数回測定した際の、最大値と最小値の差(範囲)を示し、日内のバラツキ(併行精度)の指標となります。

【第69回 午前 問3】グラフから原因を読み解く思考法

クレアチニン(酵素法)の内部精度管理図(x管理図)を示す。原因として最も考えられるのはどれか。

  • 1.第1試薬と第2試薬を逆にして測定した。
  • 2.管理試料を半分の溶解液量で溶解した。
  • 3.標準物質の濃度を2倍にして測定した。
  • 4.使用期限が切れた試薬で測定した。
  • 5.未熟な技量のスタッフが測定した。

 

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正解:4

さい
さい
これは臨床現場でのトラブルシューティングそのものです!
管理図のパターンから「なぜこうなったのか?」を考える、探偵みたいな仕事です。これができると、安心して検査を任せられることができます。

グラフのパターンを読み解く

まず、管理図は「トレンド(連続した上昇)」を示しています。これは、ある日から徐々に、ゆっくりと測定値がズレていく現象です。突発的なエラーではなく、何かが少しずつ劣化・変化している可能性を示唆します。

原因を一つずつ吟味する

  • 1, 2, 3:これらはすべて、ある日突然、測定値が大きく跳ね上がる突発的なエラー(シフト)の原因になります。徐々に変化するトレンドとはパターンが異なります。×です。
  • 5.未熟な技量:スタッフの技量が原因の場合、測定値のバラツキが大きくなる(R管理図が外れる)ことはありますが、連続して上昇する原因とは考えにくいです。×です。
  • 4.使用期限が切れた試薬:これが正解です。試薬や標準液が少しずつ劣化していくことは、測定値が徐々にズレていく「トレンド」の典型的な原因です。他にも、光源ランプの劣化なども考えられます。

精度と正確度の違いと「標準化」

最後に、精度管理の根幹をなす「精密さ」と「正確度」の違いと、世界中の検査室が同じ基準でデータを出すための「標準化」について学びましょう。

精密さと正確度をダーツで例える!(絵が同じでごめんなさい)

① 精密だけど不正確

🎯
←矢が集中

バラツキは小さいが、
中心からズレている

② 不正確で不精密

🎯
バラバラ

中心からもズレて、
バラツキも大きい

③ 正確で精密

🎯
ど真ん中に集中

中心に近く、
バラツキも小さい(理想!)

【第70回 午前 問8】「正確度」を確認する方法

正確度の確認方法はどれか。2つ選べ。

  • 1.機種間差の確認
  • 2.室内精度の確認
  • 3.標準物質の測定
  • 4.標準法との比較
  • 5.併行精度の確認

 

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正解:3, 4

「正確度」、つまり「真の値にどれだけ近いか」を確認するには、「絶対的な正解(真の値)」が分かっているものと比較する必要があります。

  • 3.標準物質の測定:「標準物質」とは、濃度が正確にわかっている、いわば「答えの分かっている問題集」です。これを測定して、ちゃんとその通りの値が出るかを確認します。
    (僕らはキャリブレーターの打ち返しと呼んでいます)
  • 4.標準法との比較:「標準法(基準法)」とは、最も真の値に近い結果が得られると世界的に認められている、いわば「測定方法のお手本」です。自分たちの方法(常用法)と標準法で同じ検体を測定し、結果が一致するかを確認します。

【不正解の選択肢】

1, 2, 5:これらはすべて、測定値の「バラツキ」を評価する「精密さ」の確認方法です。

  • 機種間差:同じ検体を、同機種の別号機で測った時の差。
  • 室内精度(日差精度):毎日測定した時の日ごとの変動
  • 併行精度(日内精度):同じ日に連続して測定した時の変動

【第68回 午前 問1】検査室の信頼性を保証する国際規格

臨床検査室の品質と能力に関する国際規格はどれか。

  • 1.ISO 9001
  • 2.ISO 13485
  • 3.ISO 15189
  • 4.ISO 17025
  • 5.ISO 22870

 

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正解:3.ISO 15189

さい
さい
僕が最初に就職した検査センターは、このISO 15189の認定施設でした。
認定を維持するための内部監査や書類作成はガチで大変でしたが、その分、検査の品質に対する意識はめちゃくちゃ高かったです。

ISOは国際標準化機構のことで、様々な分野の国際的な規格を定めています。

  • 3.ISO 15189:これが正解です。
    臨床検査室(メディカルラボラトリー)に特化した規格で、検査の品質だけでなく、患者さんへの配慮や安全管理、スタッフの教育など、検査室全体の運営能力を保証するものです。「この検査室は、国際的な基準を満たした、信頼できる検査室ですよ」というお墨付きになります。

【その他のISO規格】

  • 1.ISO 9001:業種を問わない、一般的な「品質マネジメントシステム」の規格です。
  • 2.ISO 13485:体外診断用医薬品や医療機器など、「医療機器」の品質を保証するための規格です。
  • 4.ISO 17025:校正機関や試験所など、一般的な「試験所」の能力に関する規格です。ISO 15189は、これを臨床検査の分野に特化させたものと言えます。
    B○Lなどの大手検査センターなどは取得しています。
  • 5.ISO 22870:血糖測定器など、ベッドサイドで行う検査(POCT)の品質と能力に関する規格です。

まとめ

お疲れ様でした!精度管理は、臨床検査技師の専門性の根幹をなす分野です。最後に、今日学んだ重要ポイントを整理しましょう。

  • 内部精度管理には2種類ある:管理試料で測定系を、患者データで個々のエラーをチェックする。
  • X-R管理図は測定系のお医者さん:グラフの異常(シフト、トレンド)から、試薬や装置の不調を読み解く。
  • 精密さと正確度は違う:精密さ=バラツキ正確度=真の値との近さ。ダーツの的のイメージを忘れずに。
  • 正確度の確認は「答え合わせ」:標準物質標準法という「正解」と比べることで確認する。
  • 究極の目標は「標準化」:ISO 15189は、世界に通用する高品質な検査室の証。
さい
さい
僕たちが出すデータ一つひとつが、患者さんの診断や治療方針を左右します。そのデータに「信頼性」という魂を吹き込むのが、精度管理です。
将来、精度管理を担当する技師さんもたくさん出ると思います、ぜひこの知識を役立ててください👍