採血・検体取り扱い(分析前プロセス) PR

【臨床検査技師 国試】採血・検体取り扱いのミスで失点しない!過去問6問で学ぶ分析前プロセスの鉄則

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【国試対策】採血・検体取り扱いのミスで失点しない!
頻出6問で学ぶ分析前プロセスの鉄則

さい
さい
こんにちは、SAI-LABOのさいです!
今回は、臨床検査の品質を根底から支える「採血・検体取り扱い」、いわゆる分析前プロセスについて解説していきます。

📝 引用元について
この記事で解説している国家試験の問題文は、厚生労働省のウェブサイトで公開されているものを、学習目的で引用しています。(医療トピックス一覧に国家試験過去問のリンクがあります)

ラボくん
ラボくん
分析前プロセス…?なんだか難しそうな言葉ですね。採血のことですか?
さい
さい
そうです!採血ももちろん含まれるよ。
実は、検査エラーの約7割は、この「分析前プロセス」で起こると言われています。つまり、いくら高性能な分析装置を使っても、最初の採血や検体の扱いを間違えると、すべてのデータが台無しになってしまう
国試でも、その重要性を理解しているかを問う問題が割と出題されているので、一つずつマスターしていこう!

採血手技と合併症

まずは、僕たち臨床検査技師の基本手技である「採血」に関する問題から。特に、最も頻度の高い合併症については、症状と対処法をセットで覚えておく必要があります。

【第67回 午前 問7】最も多い採血合併症「血管迷走神経反射」

採血中に患者の顔面が蒼白になり、気分不快を訴えた。この採血合併症について誤っているのはどれか。

  • 1.徐脈になる。
  • 2.高齢者に多い。
  • 3.血圧が低下する。
  • 4.緊張が誘因となる。
  • 5.直ちに採血を中止する。
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正解:2.高齢者に多い。

さい
さい
これは、僕も現場で何度も経験したことがある場面です。患者さんが「クラっとする…」と言い出したら、この「血管迷走神経反射(VVR)」を真っ先に疑います。

血管迷走神経反射(VVR)とは?

強い緊張や不安、痛みといった精神的なストレスが引き金となって、自律神経のバランスが崩れてしまう状態です。副交感神経である「迷走神経」が過剰に興奮することで、様々な症状が現れます。

  • 1.徐脈になる → ○:迷走神経は心拍数を抑える働きがあるので、脈が遅くなります。
  • 3.血圧が低下する → ○:血管が拡張し、血圧が急激に低下します。これが、めまいや失神の原因です。
  • 4.緊張が誘因となる → ○:「注射が怖い」という強い不安が最大の誘因です。

なぜ「2.高齢者に多い」が誤りなのか?

VVRは、自律神経の反応が敏感な若年者、特に男性に多いとされています。また、睡眠不足や空腹時なども起こりやすいです。高齢者に全く起きないわけではありませんが、「高齢者に多い」という記述は明確な誤りです。

さい
さい
僕の勤めている病院でも、若い子がよく採血後に意識が朦朧としてベットで休んでいるので心電図をとりに来てください!という連絡が入ります。

現場での正しい対応は?

5.直ちに採血を中止する → ○:これが最も重要です。症状を訴えたら、すぐに針を抜き、患者さんの安全を確保します。その後、頭を低くして足を高くする体勢をとらせ、脳への血流を確保します。ほとんどの場合、安静にしていれば数分で回復します。

採血管・検体保存・生理的変動

ここからは、採血した後の検体の取り扱いや、患者さんの状態によってデータがどう変わるか、というテーマです。正しい知識がないと、誤った検査結果を報告してしまうリスクがあります。

【第68回 午前 問2】「分析前」のプロセスとは?

分析前プロセスの品質管理はどれか。2つ選べ。

  • 1.検体量の確認
  • 2.精度管理試料の測定
  • 3.精度管理成績の保存
  • 4.分析装置導入前の性能評価
  • 5.検体採取から測定開始までの時間の確認
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正解:1, 5

検査プロセスの3分類

検査業務は、大きく3つの段階に分けられます。この問題は、各選択肢がどこに分類されるかを理解しているかを聞いています。

  • 分析前プロセス:患者準備、採血、検体採取・輸送・保存など、分析装置にかけるまでのすべての段階。
  • 分析プロセス:分析装置での測定、精度管理、キャリブレーションなど。
  • 分析後プロセス:結果の確認・報告、データ保存、異常値の連絡など。

各選択肢の分類

  • 1.検体量の確認 → 分析前:採血管の規定量を満たしているか、量は十分かを確認する作業です。
  • 5.採取から測定までの時間確認 → 分析前:検体は時間と共に変化します。規定時間内に処理されているかを確認するのは、分析前の重要な品質管理です。(アンモニアや血清補体価などが特に重要です)
  • 2, 3, 4:これらはすべて、測定装置が正しく動いているかを確認する「分析プロセス」の品質管理に該当します。

【第70回 午前 問2】採血管と添加物の正しい組み合わせ

検査項目と採血管の添加物の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  • 1.PT – EDTA-2Na
  • 2.ALP – EDTA-2K
  • 3.血糖 – フッ化ナトリウム
  • 4.赤沈 – クエン酸溶液
  • 5.血小板数 – ヘパリンリチウム
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正解:3, 4

さい
さい
採血管のキャップの色と中身の薬品、そしてその作用機序をセットで覚えるのは、国試の基本中の基本ですし、現場に出てからも、採血官について看護師から毎日聞かれます笑

主要な抗凝固薬の作用機序

  • EDTA, クエン酸ナトリウム:血液中のカルシウムイオン(Ca²⁺)を奪う(キレートする)ことで、Ca²⁺を必要とする血液凝固反応を止める。
  • ヘパリン:アンチトロンビンⅢの働きを活性化させ、血液凝固の中心的な酵素であるトロンビンの働きを阻害する。
  • フッ化ナトリウム:赤血球の解糖系酵素を阻害し、グルコースが消費されるのを防ぐ。

各選択肢の解説

  • 3.血糖 – フッ化ナトリウム → ○:血糖(グルコース)は採血後、赤血球によってどんどん消費されてしまいます。それを防ぐ解糖阻害剤であるフッ化ナトリウムを使うのは正しい組み合わせです。
  • 4.赤沈 – クエン酸溶液 → ○:赤血球沈降速度(赤沈)の測定には、3.2%または3.8%のクエン酸ナトリウム溶液が入った黒キャップの採血管を用います。
  • 1.PT – EDTA-2Na → ×:プロトロンビン時間(PT)などの凝固検査には、必ずクエン酸ナトリウム採血管(黒色キャップ)を使います。EDTAは凝固因子に影響を与えるため使えません。
  • 2.ALP – EDTA-2K → ×:アルカリホスファターゼ(ALP)やカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)などの測定に、EDTA採血管は絶対に使ってはいけません。EDTAがこれらの金属イオンをキレートしてしまい、偽低値となるからです。
    抗凝固剤のないプレーン採血管で行うところが多いと思います。
  • 5.血小板数 – ヘパリンリチウム → ×:血小板数を含む血球算定(血算)には、EDTA-2K採血管(紫キャップ)が第一選択です。ヘパリンは血小板凝集を引き起こすことがあるため、血小板数の測定には不向きです。

【第68回 午前 問3 / 第69回 午前 問1 / 第69回 午前 問10】検体の変動要因

採血した全血検体をそのまま室温で一晩放置した。値の低下が予想されるのはどれか。(第68回)

  • 1. カリウム
  • 2. 無機リン
  • 3. アンモニア
  • 4. グルコース
  • 5. クレアチニン

EDTA-2K採血管で採取した血漿を用いた場合、測定値が血清より高くなるのはどれか。(第69回)

  • 1. ALP
  • 2. Ca
  • 3. CRP
  • 4. Mg
  • 5. TP

臥位に比べて座位で採血したときに高値となる血清成分はどれか。(第69回)

  • 1. 尿酸
  • 2. 尿素窒素
  • 3. アルブミン
  • 4. ナトリウム
  • 5. クレアチニン
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【上問】正解:4
【中問】正解:5
【下問】正解:3

【上問】検体放置の影響

全血のまま放置すると、赤血球などの細胞が活動を続けます。

  • 4.グルコース → 正解(低下):赤血球がエネルギー源として血中のグルコースを消費(解糖)するため、血糖値は時間と共に低下します。
  • 1, 2, 3 (K, P, アンモニア) → 上昇:赤血球内の成分が漏れ出したり(K, P)、代謝が進んだり(アンモニア)するため、これらは上昇します。
さい
さい
追加でアンモニア検査できますか?と医師から問い合わせがあり、ただ単にできませんと答えるのではなく、代謝により偽高値となります。と答えられる技師になりましょう。(実際にこの間、経験済み)

【中問】血漿 vs 血清

血漿と血清の決定的な違い

血漿は抗凝固薬で凝固を止めた血液の上清で、フィブリノゲンを含みます
血清は血液が自然に固まった後の上清で、凝固反応でフィブリノゲンが消費された状態です。

  • 5.TP (総蛋白) → 正解(高値):血漿は血清のタンパク成分に加えてフィブリノゲンも含むため、その分だけTPの値は高くなります。
  • 1, 2, 4 (ALP, Ca, Mg) → 低値:EDTAがこれらの測定に必要な金属イオンをキレートしてしまうため、著しい偽低値となります。

【下問】採血体位の影響

臥位(寝た状態)から座位(座った状態)になると、静水圧の影響で血管内の水分が組織へ移動し、血液が濃縮されます。

  • 3.アルブミン → 正解(高値):アルブミンや総蛋白などの分子の大きい物質や、細胞成分は血管内に留まるため、相対的に濃度が高くなります
  • 1, 2, 4, 5:尿素窒素や電解質などの小さい物質は水分と一緒に血管内外を移動しやすいため、体位による影響は比較的小さいです。

まとめ

お疲れ様でした!「分析前プロセス」の重要性が、過去問を通してよく分かったのではないでしょうか。最後に、現場でミスをしないための鉄則をまとめます。

  • 採血時はVVRを常に念頭に:患者さんの様子がおかしかったら、すぐに採血を中止し、安全な体勢を確保する。VVRは若年者に多い!
  • 正しいスピッツを選ぶ:検査項目ごとに、正しい採血管(添加物)を選ぶ知識は必須。特にEDTAは金属測定の天敵と覚えよう!
  • 検体はナマモノ:採血後の検体は、時間、温度、光、体位など、様々な要因で変化することを常に意識する。迅速な処理がデータの品質を守る!
  • 検査の3段階を意識する:自分が今やっている作業が「分析前・分析中・分析後」のどこに当たるのかを理解することで、品質管理への意識が高まる。
さい
さい
どんなに高価な分析装置も、最初の検体がダメなら意味がありません。
「神は細部に宿る」と言いますが、まさにこの分析前プロセスこそ、僕たち臨床検査技師の腕の見せ所です。今日の学びを、ぜひ日々の業務や国試対策に活かしてくださいね👍